(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、治療システム、医用画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240703BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240703BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240703BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61B6/03 560B
A61B6/03 560G
A61B6/03 571
A61B6/03 577
A61B6/46 506Z
A61B5/055 380
(21)【出願番号】P 2020132537
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 昭行
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-189461(JP,A)
【文献】特開2007-282877(JP,A)
【文献】特開2017-035343(JP,A)
【文献】特開2016-150082(JP,A)
【文献】特開2016-059606(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145010(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/03
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対する放射線治療の治療計画の段階で、前記患者の体内
に存在する少なくとも治療対象の部位を撮影した三次元の第1画像を取得する第1画像取得部と、
前記放射線治療を開始する直前に、前記患者の体内
に存在する少なくとも前記治療対象の部位が撮影された三次元の第2画像を取得する第2画像取得部と、
治療室にお
いて治療用放射線を前記患者
に照射することができる照射方向
を含む方向情報を取得する方向取得部と、
前記第1画像に設定された
、前記放射線治療において前記患者に照射する前記治療用放射線
が前記治療対象の部位を通過する第1経路と
、前記
方向情報とに基づいて、
前記治療室において前記照射方向から前記患者に照射され、前記第2画像に写された前記治療対象の部位を通過する前記治療用放射線の第2経路が、前記第1経路となるように、前記第2画像に写された前記患者の位置を前記第1画像に写された前記患者の位置に合わせるために移動させる前記第2画像の移動量を表す移動量信号を出力する移動量計算部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記方向情報は、前記治療室において前記患者の体位が変化するよう前記患者の位置をそれぞれ異なる向きに移動させるための複数の移動方向の情報を含み、
前記移動量計算部は、
前記
第1経路と前記
方向情報とに基づいて、前記第1画像を
、前記治療室において前記患者の体位
を変化
させることができるそれぞれの前記移動方向ごとに所定幅ずらして生成される近似画像を計算する近似画像計算部と、
前記近似画像を用いて前記第1画像と前記第2画像とのずれ量を計算し、計算したずれ量に基づいて前記移動量を決定し、決定した前記移動量を表す前記移動量信号を出力するレジストレーション部と、
を備える、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記方向情報は、前記治療室において前記患者の体位が変化するよう前記患者の位置をそれぞれ異なる向きに移動させるための複数の移動方向の情報を含み、
前記移動量計算部は、
前記
第1経路と前記
方向情報とに基づいて、
三次元の前記第1画像を
二次元の平面に写像した二次元の近似画像を計算する近似画像計算部と、
前記近似画像を用いて前記第1画像と前記第2画像とのずれ量を計算し、計算したずれ量に基づいて前記移動量を決定し、決定した前記移動量を表す前記移動量信号を出力するレジストレーション部と、
を備える、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記移動量計算部は、
前記第1画像に含まれ、前記
第1経路で前記
治療用放射線が通過する三次元の第1画素の画素値を積分した第1積分画像と、前記第2画像に含まれ、前記
第2経路で前記
治療用放射線が通過する三次元の第2画素の画素値を積分した第2積分画像とを計算する積分画像計算部、をさらに備え、
前記近似画像計算部は、前記第1積分画像に基づいて前記近似画像を計算し、
前記レジストレーション部は、前記第2積分画像と前記近似画像とのずれ量に基づいた前記移動量信号を出力する、
請求項2または請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記積分画像計算部は、
前記
第1経路上に位置する前記第1画素の画素値と前記
第2経路上に位置する前記第2画素の画素値とのそれぞれを、所定の非線形変換によって変換した後に積分して、前記第1積分画像と前記第2積分画像とのそれぞれを計算する、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記積分画像計算部は、
前記非線形変換によって、前記
第1経路上に位置する前記第1画素の画素値と前記
第2経路上に位置する前記第2画素の画素値とのそれぞれを、前記
治療用放射線がそれぞれの画素に到達する到達エネルギーを表す値に変換する、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記積分画像計算部は、
前記
治療用放射線が照射対象の領域に到達するまでの間に位置する前記
第1経路上の前記第1画素の画素値と、前記
治療用放射線が
前記第2経路上で前記照射対象の領域に到達するまでの間に位置する前記第2画素の画素値とのそれぞれを変換したエネルギー損失量の値を積分して、前記第1積分画像と前記第2積分画像とのそれぞれを計算する、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記患者に対する
前記治療計画の情報に基づいて、前記患者の体内の腫瘍の領域に関する領域情報を取得する領域取得部、をさらに備え、
前記移動量計算部は、
前記第1画像、前記第2画像、および前記領域情報に基づいて、前記腫瘍の動きを推定する動き推定部、をさらに備え、
前記レジストレーション部は、前記動き推定部が推定した前記腫瘍の動きを含めた前記ずれ量に基づいた前記移動量信号を出力する、
請求項2から請求項7のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記領域情報は、少なくとも前記腫瘍の領域と、前記腫瘍の周辺に位置する危険臓器の領域とを含む、
請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記レジストレーション部が計算したずれ量を確認するための画像を少なくとも表示する表示装置を備えたユーザーインターフェース部、をさらに備える、
請求項2から請求項9のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記ユーザーインターフェース部は、前記表示装置に表示された画像に基づいて設定される前記移動量を調整するための調整値を入力する入力装置、をさらに備え、
前記レジストレーション部は、前記入力装置に入力された前記調整値で前記移動量を調整した前記移動量信号を出力する、
請求項10に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記移動量信号は、
治療装置が具備する寝台を制御する寝台制御部に出力される、
請求項1から請求項11のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記
治療用放射線の照射対象の領域は、
前記患者の体内に存在する腫瘍の領域であり、
前記
第1経路は、
前記腫瘍の領域を含む、
請求項1から請求項12のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記
第2経路は、
前記移動量計算部が出力した移動量信号が表す移動量で前記第2画像が移動された場合に、前記
治療用放射線の照射を避ける領域を含む、
請求項1から請求項13のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
前記患者に
治療用放射線を照射する照射部と、前記第1画像および前記第2画像を撮影する撮像装置と、前記患者を乗せて固定する寝台と、前記移動量信号に応じて前記寝台の移動を制御する寝台制御部と、を具備した治療装置と、
を備える治療システム。
【請求項16】
コンピュータが、
患者に対する放射線治療の治療計画の段階で、前記患者の体内
に存在する少なくとも治療対象の部位を撮影した三次元の第1画像を取得し、
前記放射線治療を開始する直前に、前記患者の体内
に存在する少なくとも前記治療対象の部位が撮影された三次元の第2画像を取得し、
治療室にお
いて治療用放射線を前記患者
に照射することができる照射方向
を含む方向情報を取得し、
前記第1画像に設定された
、前記放射線治療において前記患者に照射する前記治療用放射線
が前記治療対象の部位を通過する第1経路と
、前記
方向情報とに基づいて、
前記治療室において前記照射方向から前記患者に照射され、前記第2画像に写された前記治療対象の部位を通過する前記治療用放射線の第2経路が、前記第1経路となるように、前記第2画像に写された前記患者の位置を前記第1画像に写された前記患者の位置に合わせるために移動させる前記第2画像の移動量を表す移動量信号を出力する、
医用画像処理方法。
【請求項17】
コンピュータに、
患者に対する放射線治療の治療計画の段階で、前記患者の体内
に存在する少なくとも治療対象の部位を撮影した三次元の第1画像を取得させ、
前記放射線治療を開始する直前に、前記患者の体内
に存在する少なくとも前記治療対象の部位が撮影された三次元の第2画像を取得させ、
治療室にお
いて治療用放射線を前記患者
に照射することができる照射方向
を含む方向情報を取得させ、
前記第1画像に設定された
、前記放射線治療において前記患者に照射する前記治療用放射線
が前記治療対象の部位を通過する第1経路と
、前記
方向情報とに基づいて、
前記治療室において前記照射方向から前記患者に照射され、前記第2画像に写された前記治療対象の部位を通過する前記治療用放射線の第2経路が、前記第1経路となるように、前記第2画像に写された前記患者の位置を前記第1画像に写された前記患者の位置に合わせるために移動させる前記第2画像の移動量を表す移動量信号を出力させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、治療システム、医用画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、放射線を患者の体内にある腫瘍(病巣)に対して照射することによって、その腫瘍を破壊する治療方法である。放射線は、患者の体内の正常な組織に照射してしまうと正常な組織にまで影響を与える場合があるため、放射線治療では、腫瘍の位置に正確に放射線を照射する必要がある。このため、放射線治療を行う際には、まず、治療計画の段階において、例えば、予めコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)が行われ、患者の体内にある腫瘍の位置が三次元的に把握される。そして、把握した腫瘍の位置に基づいて、放射線を照射する方向や照射する放射線の強度が計画される。その後、治療の段階において、患者の位置を治療計画の段階の患者の位置に合わせて、治療計画の段階で計画した照射方向や照射強度に従って放射線が腫瘍に照射される。
【0003】
治療段階における患者の位置合わせでは、治療を開始する直前に患者を寝台に寝かせた状態で撮影した患者の体内の透視画像と、治療計画のときに撮影した三次元のCT画像から仮想的に透視画像を再構成したデジタル再構成X線写真(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)画像との画像照合を行って、それぞれの画像の間での患者の位置のずれを求める。そして、求めたずれに基づいて寝台を移動させることによって、患者の体内の腫瘍や骨などの位置を治療計画のときのそれらと合わせる。
【0004】
患者の位置のずれは、透視画像と最も類似するDRR画像が再構成されるように、CT画像中の位置を探索することによって求める。従来から、患者の位置の探索をコンピュータによって自動化する方法は多数提案されている。しかしながら、従来では、自動で探索した結果は、利用者(医師など)が透視画像とDRR画像とを見比べることによって確認していた。
【0005】
このとき、透視画像に写された腫瘍の位置を目視によって確認することが難しい場合があった。これは、腫瘍は、骨などに比べてX線の透過性が高いため、透視画像に腫瘍がはっきり写らないためである。そこで、治療を行う際に、透視画像の代わりにCT画像を撮影して腫瘍の位置を確認することも行われている。この場合、患者の位置のずれは、治療計画のときに撮影したCT画像と、治療段階において撮影したCT画像とを画像照合する、つまり、CT画像同士の画像照合によって求める。
【0006】
CT画像同士の画像照合では、一方のCT画像の位置をずらしながら、他方のCT画像と最も類似する位置を求める。CT画像同士の画像照合を行う方法の一例として、例えば、特許文献1に開示されている方法がある。特許文献1に開示されている方法では、治療計画のときに撮影したCT画像に含まれる腫瘍周辺の画像をテンプレートとして用意し、治療段階において撮影したCT画像に対してテンプレートマッチングを行うことによって、最も類似した画像の位置を腫瘍の位置として探索する。そして、探索した位置に基づいて、患者の位置のずれを求め、上記と同様にずれに応じて寝台を移動させて、治療計画のときと同じ体位に患者の位置を合わせる。特許文献1に開示されている方法には、用意したテンプレートを三次元的に走査するだけでなく、テンプレートを傾けるなどして姿勢を変えて走査する探索方法についても言及されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、テンプレートとして用意した腫瘍周辺のCT画像に、注目する腫瘍周辺の位置を合わせることを重視している。このため、特許文献1に開示されている方法では、腫瘍の周辺以外においても患者の体内組織の位置が正確に合うとは限らない。つまり、特許文献1に開示されている方法で患者の位置を合わせた場合には、照射した放射線が腫瘍に届いたとしても、放射線が通過する経路にある患者の体内の組織によっては、計画した放射線のエネルギーを腫瘍に与えることができない場合があった。
【0008】
ところで、放射線治療において用いる放射線は、物質を通過する際にエネルギーを失う。このため、従来の治療計画では、撮影したCT画像に基づいて、照射する放射線のエネルギー損失量を仮想的に算出することによって放射線の照射方法を定めていた。このことを考えると、治療段階において患者の位置を合わせる際には、照射する放射線が通過する経路にある患者の体内の組織も一致していることが重要になる。
【0009】
この点に着目したCT画像同士の画像照合を行う方法の一例として、例えば、特許文献2に開示されている方法がある。特許文献2に開示されている方法では、画素ごとに放射線の到達エネルギーを計算して変換したCT画像を用いて、CT画像の画像照合を行っている。しかしながら、特許文献2に開示されている方法でも、画像照合を行う際には、変換したCT画像から再構成したDRR画像で画像照合を行っている。つまり、特許文献2に開示されている方法でも、画像照合に用いる画像は、CT画像が持っている立体的な画像の情報を失った状態である。
【0010】
さらに、特許文献2に開示されている方法に特許文献1に開示されている方法を組み合わせ、変換したCT画像を用いてテンプレートマッチングにより患者の位置合わせをする方法が考えられる。しかしながら、到達エネルギーの計算方法は、放射線を照射する方向によって変化するため、テンプレートマッチングで用いるテンプレートの姿勢を変えると、都度、到達エネルギーを再計算することが必要になる。このため、特許文献2に開示されている方法に特許文献1に開示されている方法を組み合わせた場合でも、姿勢に応じて多数のテンプレートを用意しておく必要があることや、腫瘍周辺に注目して位置を合わせることを考えると、放射線が通過する経路にある患者の体内組織も含めた位置合わせは、容易に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5693388号公報
【文献】米国特許出願公開第2011/0058750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、三次元の画像照合を好適に行って患者の位置を合わせることができる医用画像処理装置、治療システム、医用画像処理方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態の医用画像処理装置は、第1画像取得部と、第2画像取得部と、方向取得部と、移動量計算部とを持つ。第1画像取得部は、患者に対する放射線治療の治療計画の段階で、前記患者の体内に存在する少なくとも治療対象の部位を撮影した三次元の第1画像を取得する。第2画像取得部は、前記放射線治療を開始する直前に、前記患者の体内に存在する少なくとも前記治療対象の部位が撮影された三次元の第2画像を取得する。方向取得部は、治療室において治療用放射線を前記患者に照射することができる照射方向を含む方向情報を取得する。移動量計算部は、前記第1画像に設定された、前記放射線治療において前記患者に照射する前記治療用放射線が前記治療対象の部位を通過する第1経路と、前記方向情報とに基づいて、前記治療室において前記照射方向から前記患者に照射され、前記第2画像に写された前記治療対象の部位を通過する前記治療用放射線の第2経路が、前記第1経路となるように、前記第2画像に写された前記患者の位置を前記第1画像に写された前記患者の位置に合わせるために移動させる前記第2画像の移動量を表す移動量信号を出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、治療計画のときと治療段階とにおいて撮影されたCT画像同士の画像照合を高速・高精度に行って患者の位置を合わせることができる医用画像処理装置、治療システム、医用画像処理方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態の医用画像処理装置において寝台の移動量を計算する処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】第2の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図5】第2の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムにおける放射線の出射と放射線の照射対象との関係の一例を説明する図。
【
図6】第2の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムにおける放射線の出射と放射線の照射対象との関係の別の一例を説明する図。
【
図7】第3の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図8】第4の実施形態の医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図9】第4の実施形態の医用画像処理装置が備えるユーザーインターフェース部が表示装置に表示させる表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態の医用画像処理装置、治療システム、医用画像処理方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図である。治療システム1は、例えば、治療装置10と、医用画像処理装置100と、を備える。治療装置10は、例えば、寝台12と、寝台制御部14と、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)装置16(以下、「CT撮影装置16」という)と、治療ビーム照射門18と、を備える。
【0018】
寝台12は、放射線による治療を受ける被検体(患者)Pを、例えば、固定具などによって寝かせた状態で固定する可動式の治療台である。寝台12は、寝台制御部14からの制御に従って、開口部を有する円環状のCT撮影装置16の中に、患者Pを固定した状態で移動する。寝台制御部14は、医用画像処理装置100により出力された移動量信号に従って、寝台12に固定された患者Pに治療ビームBを照射する方向を変えるために、寝台12に設けられた並進機構および回転機構を制御する。並進機構は三軸方向に寝台12を駆動することができ、回転機構は三軸回りに寝台12を駆動することができる。このため、寝台制御部14は、例えば、寝台12の並進機構および回転機構を制御して寝台12を六自由度で移動させる。寝台制御部14が寝台12を制御する自由度は、六自由度でなくてもよく、六自由度よりも少ない自由度(例えば、四自由度など)や、六自由度よりも多い自由度(例えば、八自由度など)であってもよい。
【0019】
CT撮影装置16は、三次元のコンピュータ断層撮影を行うための撮像装置である。CT撮影装置16は、円環状の開口部の内側に複数の放射線源が配置され、それぞれの放射線源から、患者Pの体内を透視するための放射線を照射する。つまり、CT撮影装置16は、患者Pの周囲の複数の位置から放射線を照射する。CT撮影装置16においてそれぞれの放射線源から照射する放射線は、例えば、X線である。CT撮影装置16は、円環状の開口部の内側に複数配置された放射線検出器によって、対応する放射線源から照射され、患者Pの体内を通過して到達した放射線を検出する。CT撮影装置16は、それぞれの放射線検出器が検出した放射線のエネルギーの大きさに基づいて、患者Pの体内を撮影したCT画像を生成する。CT撮影装置16によって生成される患者PのCT画像は、放射線のエネルギーの大きさをデジタル値で表した三次元のデジタル画像である。CT撮影装置16は、生成したCT画像を医用画像処理装置100に出力する。CT撮影装置16における患者Pの体内の三次元での撮影、つまり、それぞれの放射線源からの放射線の照射や、それぞれの放射線検出器が検出した放射線に基づいたCT画像の生成は、例えば、撮影制御部(不図示)によって制御される。
【0020】
治療ビーム照射門18は、患者Pの体内に存在する治療対象の部位である腫瘍(病巣)を破壊するための放射線を治療ビームBとして照射する。治療ビームBは、例えば、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線などである。治療ビームBは、治療ビーム照射門18から直線的に患者P(より具体的には、患者Pの体内の腫瘍)に照射される。治療ビーム照射門18における治療ビームBの照射は、例えば、治療ビーム照射制御部(不図示)によって制御される。治療システム1では、治療ビーム照射門18が、特許請求の範囲における「照射部」の一例である。
【0021】
治療システム1が設置された治療室では、
図1に示したような基準位置の三次元の座標が予め設定されている。そして、患者Pに治療ビームBを照射する治療室では、予め設定された基準位置の三次元の座標に従って、治療ビーム照射門18の設置位置や、治療ビームBを照射する方向(照射方向)、寝台12の設置位置、CT撮影装置16の設置位置、患者Pの体内を撮影したCT画像の撮影位置などが把握されている。以下の説明においては、治療室において予め設定されている基準位置の三次元の座標系を、「部屋座標系」と定義する。そして、以下の説明において、「位置」とは、部屋座標系に従って表される、寝台12が備える並進機構による三軸方向(三次元)の座標のことであり、「姿勢」とは、部屋座標系に従って表される、寝台12が備える回転機構による三軸回りの回転角度のことであるものとする。例えば、寝台12の位置とは、寝台12に含まれる所定の点の位置を三次元の座標で表したものであり、寝台12の姿勢とは、寝台12の回転角度をヨー、ロール、ピッチで表したものである。
【0022】
放射線治療においては、治療室を模擬した状況において治療計画が立てられる。つまり、放射線治療では、治療室において患者Pが寝台12に乗せられた状態を模擬して、治療ビームBを患者Pに照射する際の照射方向や強度などが計画される。このため、治療計画の段階(治療計画段階)のCT画像には、治療室内における寝台12の位置および姿勢を表すパラメータなどの情報が付与されている。これは、放射線治療を行う直前に撮影されたCT画像や、以前の放射線治療の際に撮影されたCT画像においても同様である。つまり、CT撮影装置16によって患者Pの体内を撮影したCT画像には、撮影したときの寝台12の位置および姿勢を表すパラメータが付与されている。
【0023】
図1では、CT撮影装置16と、固定された1つの治療ビーム照射門18とを備える治療装置10の構成を示したが、治療装置10の構成は、上述した構成に限定されない。例えば、治療装置10は、CT撮影装置16に代えて、1組の放射線源と放射線検出器とが円環状の開口部の内側を回転する構成のCT撮影装置や、コーンビーム(Cone-Beam:CB)CT装置、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、超音波診断装置など、患者Pの体内を三次元で撮影した画像を生成する撮影装置を備える構成であってもよい。例えば、治療装置10は、患者Pに水平方向から治療ビームを照射する治療ビーム照射門をさらに備えるなど、複数の治療ビーム照射門を備える構成であってもよい。例えば、治療装置10は、
図1に示した1つの治療ビーム照射門18が、
図1に示した水平方向Xの回転軸に対して360度回転するなど、患者Pの周辺を回転することによって様々な方向から治療ビームを患者Pに照射する構成であってもよい。例えば、治療装置10は、CT撮影装置16に代えて、放射線源と放射線検出器との組で構成される撮像装置を一つあるいは複数備え、この撮像装置が、
図1に示した水平方向Xの回転軸に対して360度回転することによって、患者Pの体内を様々な方向から撮影する構成であってもよい。このような構成は、回転ガントリ型治療装置と呼ばれる。この場合、例えば、
図1に示した1つの治療ビーム照射門18が、撮像装置と同じ回転軸で同時に回転する構成であってもよい。
【0024】
医用画像処理装置100は、CT撮影装置16により出力されたCT画像に基づいて、放射線治療を行う際に患者Pの位置を合わせるための処理を行う。より具体的には、医用画像処理装置100は、例えば、治療計画段階など、放射線治療を行う前に撮影した患者PのCT画像と、放射線治療を行う治療の段階(治療段階)においてCT撮影装置16によって撮影された現在の患者PのCT画像とに基づいて、患者Pの体内に存在する腫瘍や組織の位置を合わせるための処理を行う。そして、医用画像処理装置100は、治療ビーム照射門18から照射される治療ビームBの照射方向を治療計画段階において設定した方向に合わせるために寝台12を移動させる移動量信号を、寝台制御部14に出力する。つまり、医用画像処理装置100は、放射線治療において治療を行う腫瘍や組織に治療ビームBが適切に照射させる方向に患者Pを移動させるための移動量信号を、寝台制御部14に出力する。
【0025】
医用画像処理装置100と、治療装置10が備える寝台制御部14やCT撮影装置16とは、有線によって接続されていてもよいし、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)などの無線によって接続されていてもよい。
【0026】
以下、第1の実施形態の医用画像処理装置100について説明する。
図2は、第1の実施形態の医用画像処理装置100の概略構成を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、例えば、第1画像取得部102と、第2画像取得部104と、方向取得部106と、移動量計算部120と、を備える。移動量計算部120は、例えば、近似画像計算部122と、レジストレーション部124と、を備える。
【0027】
医用画像処理装置100が備える構成要素のうち一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。これらの構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め医用画像処理装置100が備えるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が医用画像処理装置100が備えるドライブ装置に装着されることで医用画像処理装置100が備えるHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。プログラムは、他のコンピュータ装置からネットワークを介してダウンロードされて、医用画像処理装置100が備えるHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0028】
第1画像取得部102は、治療前の患者Pに関する第1画像と、その第1画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得する。第1画像は、放射線治療を行う際の治療計画段階において、例えば、CT撮影装置16によって撮影される、患者Pの体内の立体形状を表す三次元のCT画像である。第1画像は、放射線治療において患者Pに照射する治療ビームBの方向(傾きや距離などを含む経路)や強さを決定するために用いられる。第1画像には、決定された治療ビームBの方向(照射方向)や強さが設定される。第1画像は、寝台12に固定することによって患者Pの位置および姿勢(以下、「体位」という)を一定に維持した状態で撮影される。第1画像を撮影したときの患者Pの体位を表すパラメータは、第1画像を撮影したときのCT撮影装置16の位置や姿勢(撮影方向や撮影倍率)であってもよいし、例えば、第1画像を撮影したときの寝台12の位置および姿勢、つまり、患者Pの体位を一定に維持するために寝台12に設けられた並進機構および回転機構に設定した設定値であってもよい。第1画像取得部102は、取得した第1画像とパラメータとを移動量計算部120に出力する。第1画像は、放射線治療を行う前に撮影された画像であれば、例えば、治療室において治療を行う直前に撮影された画像や、以前の放射線治療の際に撮影された画像であってもよい。第1画像取得部102は、治療装置10が備えるCT撮影装置16と接続するためのインターフェースを備えていてもよい。
【0029】
第2画像取得部104は、放射線治療を開始する直前の患者Pに関する第2画像と、その第2画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得する。第2画像は、放射線治療において治療ビームBを照射する際の患者Pの体位を合わせるために、例えば、CT撮影装置16によって撮影された患者Pの体内の立体形状を表す三次元のCT画像である。つまり、第2画像は、治療ビーム照射門18から治療ビームBを照射していない状態でCT撮影装置16によって撮影された画像である。言い換えれば、第2画像は、第1画像を撮影した時刻と異なる時刻に撮影されたCT画像である。この場合、第1画像と第2画像とは、撮影された時刻が異なるが、それぞれの画像の撮影方法は同様である。このため、第2画像は、第1画像を撮影したときの体位と同様の体位に近づけた状態で撮影される。第2画像を撮影したときの患者Pの体位を表すパラメータは、第2画像を撮影したときのCT撮影装置16の位置や姿勢(撮影方向や撮影倍率)であってもよいし、例えば、第2画像を撮影したときの寝台12の位置および姿勢、つまり、患者Pの体位を第1画像を撮影したときの体位と同様の体位に近づけるために寝台12に設けられた並進機構および回転機構に設定した設定値であってもよい。第2画像取得部104は、取得した第2画像とパラメータとを移動量計算部120に出力する。第2画像取得部104は、治療装置10が備えるCT撮影装置16と接続するためのインターフェースを備えていてもよい。このインターフェースは、第1画像取得部102が備えるインターフェースと共通のものであってもよい。
【0030】
第2画像は、CT撮影装置16によって撮影されたCT画像に限定されるものではなく、例えば、CBCT装置、MRI装置、超音波診断装置など、CT撮影装置16とは異なる撮像装置で撮影された三次元の画像であってもよい。例えば、第1画像がCT画像であり、第2画像がMRI装置で撮影された三次元の画像であってもよい。逆に、第1画像がMRI装置で撮影された三次元の画像であり、第2画像がCT画像であってもよい。
【0031】
方向取得部106は、治療室内における方向に関する情報(以下、「方向情報」という)を取得する。方向情報は、予め設定された部屋座標系で表された情報である。方向情報には、例えば、治療ビームBの照射方向を表す情報と、寝台12の移動方向を表す情報とが含まれる。
【0032】
治療ビームBの照射方向を表す情報は、治療室内において治療ビーム照射門18が患者Pに治療ビームBを照射する方向を表す情報である。治療装置10は、
図1に示したように、治療ビーム照射門18が固定されている構成である場合もあるが、上述したように、例えば、垂直方向と水平方向とから治療ビームBを照射することができる構成や、治療ビーム照射門18が撮像装置と同じ回転軸で同時に回転して様々な方向から治療ビームBを照射することができる構成である場合も考えられる。さらに、治療ビームBは、放射線のビームを走査(ラスタスキャン)したり、所定の大きさの平面状の範囲内に照射したりすることによって、患者Pの体内に存在する腫瘍の領域(範囲)に照射される場合もある。つまり、治療ビームBの照射方向は、患者Pの体内の腫瘍に実際に照射されるときの経路が複数存在する場合もある。これらの場合、方向取得部106は、治療室内において治療ビームBを照射することができる全ての照射方向(複数の経路を含む)を、治療ビームBの照射方向を表す情報として取得する。
【0033】
寝台12の移動方向を表す情報は、治療室に設置された寝台12によって治療ビームBを照射する際に固定された患者Pを移動させることができる方向を表す情報である。寝台12の移動方向を表す情報には、寝台12によって患者Pの体位を変えることができる角度を表す情報も含む。例えば、寝台12は、上述したように、並進機構および回転機構により六自由度で位置および姿勢を移動させることができる。このため、寝台12の移動方向を表す情報は、寝台12における六自由度の方向の情報であってもよい。寝台12の移動方向を表す情報は、並進機構および回転機構に設定することができる設定値の範囲を表す情報であってもよい。前述したように、寝台12が六自由度よりも少ない自由度(例えば、四自由度など)で移動する場合、方向取得部106は、寝台12が移動する自由度に応じた情報を取得する。寝台12の移動は、治療室において予め設定された部屋座標系とは異なる独自の座標系に従っている場合も考えられる。この場合、方向取得部106は、寝台12が従っている独自の座標系での移動方向の情報を、寝台12の移動方向を表す情報として取得してもよい。
【0034】
方向取得部106は、取得した治療ビームBの照射方向を表す情報と、寝台12の移動方向を表す情報とのそれぞれの情報を、方向情報として移動量計算部120に出力する。
【0035】
移動量計算部120は、第1画像取得部102により出力された第1画像と、方向取得部106により出力された方向情報とに基づいて、第2画像取得部104により出力された第2画像に写された患者Pの体位を第1画像に写された患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定する。これにより、移動量計算部120は、照射する治療ビームBによって患者Pの体内の腫瘍に与えるエネルギーが、治療計画段階において計画したエネルギーに近くなるように、現在の患者Pの体位を治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定する。移動量計算部120は、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を治療装置10が備える寝台制御部14に出力する。これにより、寝台制御部14は、移動量計算部120により出力された移動量信号に応じて、現在の患者Pの体位が治療計画段階における患者Pの体位に近くなるように寝台12を移動させる。
【0036】
近似画像計算部122は、第1画像取得部102により出力された第1画像と、第1画像の位置および姿勢を表すパラメータと、方向取得部106により出力された方向情報とに基づいて、第1画像を微小に移動させた近似画像を計算する。より具体的には、近似画像計算部122は、まず、方向情報が表す一つないし複数の座標軸それぞれに対して独立に、部屋座標空間において第1画像を微小に移動した画像を計算する。例えば、寝台の六自由度の移動方向それぞれに、所定幅だけずらした六枚の画像を計算する。次に、これら六枚の画像と、移動前の画像との六枚の差分画像を計算し、さらにそれぞれの差分画像に対して所定幅の逆数を乗じた近似画像を計算する。近似画像計算部122は、計算した近似画像をレジストレーション部124に出力する。近似画像計算部122は、レジストレーション部124により出力された移動量によって移動した第1画像と、第2画像との間にずれがあることを表す情報(第1画像と第2画像とのずれ量の情報であってもよい)に基づいて、移動後の第1画像に対して同様の手順によって近似画像を計算し、計算した近似画像を再びレジストレーション部124に出力する。
【0037】
レジストレーション部124は、近似画像計算部122により出力された近似画像と、第2画像取得部104により出力された第2画像と、第2画像の位置および姿勢を表すパラメータとに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算する。近似画像計算部122が第1画像に写された患者Pの体位が変化する方向(自由度)ごとに所定幅だけずらして生成される近似画像を計算した場合、レジストレーション部124は、それぞれの方向ごとに第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算する。レジストレーション部124は、計算したずれ量に基づいて、第2画像に写された現在の患者Pの体位を第1画像に写された治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。
【0038】
移動量計算部120では、現在の患者Pの体位が治療計画段階の患者Pの体位に合っていると判定されるまで、近似画像計算部122による近似画像の計算と、レジストレーション部124によるずれ量の計算および寝台12の移動量の決定とを繰り返す。この判定は、レジストレーション部124が行う。この判定は、移動量計算部120が備える不図示の判定部が行ってもよい。移動量計算部120では、レジストレーション部124が現在の患者Pの体位が治療計画段階の患者Pの体位に合っていると判定したときに、決定した最終的な寝台12の移動量(傾きや距離などを含む)を表す移動量信号を、寝台制御部14に出力する。これにより、寝台制御部14は、移動量計算部120により出力された移動量信号に応じて並進機構および回転機構を制御して寝台12を移動させ、寝台12に固定された患者Pの体位が実際に移動される。これにより、医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、治療計画段階において計画したエネルギーの治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射することができる状態に現在の患者Pの体位を合わせて、放射線治療を行うことができる。
【0039】
以下、医用画像処理装置100において、現在の患者Pの体位を治療計画段階の患者Pの体位に合わせるために寝台12を移動させる移動量を決定する処理(移動量計算処理)の流れについて説明する。
図3は、第1の実施形態の医用画像処理装置100において寝台12の移動量を計算する処理の流れを示すフローチャートである。医用画像処理装置100が移動量計算処理を行う前、つまり、放射線治療を行う前(例えば1週間程度前)には、撮影した第1画像に基づいて治療計画が立てられる。さらに、医用画像処理装置100が移動量計算処理を行う直前、つまり、放射線治療を開始する直前には、第2画像が撮影される。放射線治療においては、同じ患者Pを治療するために、治療ビームBの照射を複数回(同日でない場合も含む)に渡って行うことがある。このため、同じ患者Pに対する放射線治療が2回目以降である場合には、前回の治療の際に患者Pの位置を合わせた第2画像を第1画像として利用して、さらに別の治療計画が立てられてもよい。
【0040】
本発明は、主に治療システム1において放射線治療を行う際に患者Pの位置を合わせる処理に着目したものであるため、第1画像と第2画像とのそれぞれの画像(ここでは、CT画像)を撮影する際の処理に関するさらに詳細な説明については省略する。そして、以下の説明においては、第1画像に基づいた治療計画が完了し、治療システム1において第2画像の撮影がすでに完了しているものとして説明する。
【0041】
まず、医用画像処理装置100が移動量計算処理を開始すると、第1画像取得部102が第1画像とその第1画像の位置および姿勢を表すパラメータとを取得し、第2画像取得部104が第2画像とその第2画像の位置および姿勢を表すパラメータとを取得する(ステップS100)。第1画像取得部102は、取得した第1画像とその第1画像のパラメータとを移動量計算部120が備える近似画像計算部122に出力する。第2画像取得部104は、取得した第2画像とその第2画像のパラメータとをレジストレーション部124に出力する。
【0042】
次に、方向取得部106は、治療室内の方向情報を取得する(ステップS102)。方向取得部106は、取得した方向情報を移動量計算部120が備える近似画像計算部122に出力する。
【0043】
次に、近似画像計算部122は、第1画像取得部102により出力された第1画像とその第1画像の位置および姿勢を表すパラメータと、方向取得部106により出力された方向情報とに基づいて、第1画像の近似画像を計算する(ステップS104)。近似画像計算部122は、計算した近似画像をレジストレーション部124に出力する。
【0044】
次に、レジストレーション部124は、近似画像計算部122により出力された近似画像と、第2画像取得部104により出力された第2画像とその第2画像のパラメータとに基づいて、第1画像と第2画像との間の位置および姿勢のずれ量を計算する(ステップS106)。
【0045】
次に、レジストレーション部124は、計算した第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量が、第1画像と第2画像とのずれがないと判定することができるずれ量以内であるか否かを判定する(ステップS108)。言い換えれば、レジストレーション部124は、現在の患者Pの体位が治療計画段階の患者Pの体位に合っているか否かを判定する。現在の患者Pの体位が治療計画段階の患者Pの体位に合っているとは、例えば、計算した第1画像と第2画像との間のずれ量が、予め定めたずれ量の許容範囲を表す閾値以内であることである。
【0046】
ステップS108における判定の結果、第1画像と第2画像とのずれがあると判定した場合、レジストレーション部124は、計算した第1画像と第2画像とにずれがあることを表す情報を、近似画像計算部122に出力する。これにより、医用画像処理装置100における移動量計算処理は、ステップS104に戻って、ステップS104~ステップS108の処理を繰り返す。つまり、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像計算部122による第1画像の近似画像の計算と、レジストレーション部124による第1画像と第2画像との間のずれ量の計算、および計算したずれ量の判定と、を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS108における判定の結果、第1画像と第2画像との間にずれがないと判定した場合、レジストレーション部124は、計算した第1画像と第2画像とのずれ量に基づいて寝台12の移動量を決定する。そして、レジストレーション部124は、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する(ステップS110)。
【0048】
これにより、治療システム1では、寝台制御部14が、医用画像処理装置100(より具体的には、移動量計算部120が備えるレジストレーション部124)により出力された移動量信号に基づいて寝台12を移動させ、患者Pの位置が実際に移動される。
【0049】
次に、医用画像処理装置100の移動量計算処理において、医用画像処理装置100が備える構成要素が行う処理(処理方法)の一例について説明する。
【0050】
まず、医用画像処理装置100において移動量計算処理を行う前に行われる治療計画について説明する。治療計画では、患者Pに照射する治療ビームB(放射線)のエネルギー、照射方向、照射範囲の形状、複数回に分けて治療ビームBを照射する場合における線量の配分などを定める。より具体的には、まず、治療計画の立案者(医師など)が、治療計画段階において撮影した第1画像(例えば、CT撮影装置16により撮影したCT画像)に対して、腫瘍(病巣)の領域と正常な組織の領域との境界、腫瘍とその周辺にある重要な臓器との境界などを指定する。そして、治療計画では、治療計画の立案者(医師など)が指定した腫瘍に関する情報から算出した、患者Pの体表面からの腫瘍の位置までの深さや、腫瘍の大きさに基づいて、治療ビームBを照射する方向(治療ビームBが通過する経路)や強度などを決定する。
【0051】
腫瘍の領域と正常な組織の領域との境界の指定は、腫瘍の位置および体積を指定することに相当する。この腫瘍の体積は、肉眼的腫瘍体積(Gross Tumor Volume:GTV)、臨床的標的体積(Clinical Target Volume:CTV)、内的標的体積(Internal Target Volume:ITV)、計画標的体積(Planning Target Volume:PTV)などと呼ばれている。GTVは、画像から肉眼で確認することができる腫瘍の体積であり、放射線治療においては、十分な線量の治療ビームBを照射する必要がある体積である。CTVは、GTVと治療すべき潜在性の腫瘍とを含む体積である。ITVは、予測される生理的な患者Pの動きなどによってCTVが移動することを考慮し、CTVに予め定めた余裕(マージン)を付加した体積である。PTVは、治療を行う際に行う患者Pの位置合わせにおける誤差を考慮して、ITVにマージンを付加した体積である。これらの体積には、下式(1)の関係が成り立っている。
【0052】
【0053】
一方で、放射線の感受性が高く、照射された放射線の線量の影響が強く表れる腫瘍の周辺に位置する重要な臓器の体積は、危険臓器(Organ At Risk:OAR)と呼ばれている。このOARに予め定めた余裕(マージン)を付加した体積として計画危険臓器体積(Planning Organ At Risk Volume:PRV)が指定される。PRVは、放射線によって破壊したくないOARを避けて放射線を照射させる体積(領域)をマージンとして付加して指定される。これらの体積には、下式(2)の関係がある。
【0054】
【0055】
治療計画段階においては、実際の治療において生じる可能性がある誤差を考慮したマージンに基づいて、患者Pに照射する治療ビームB(放射線)の方向(経路)や強さを決定する。
【0056】
その後、放射線治療の治療段階において、医用画像処理装置100が移動量計算処理を行う際、まず、第1画像取得部102は、第1画像とその第1画像の位置および姿勢を表すパラメータとを取得して移動量計算部120が備える近似画像計算部122に出力する。第2画像取得部104は、治療を開始する直前の患者Pの第2画像とその第2画像の位置および姿勢を表すパラメータとを取得して移動量計算部120が備えるレジストレーション部124に出力する。方向取得部106は、治療室内における方向情報を取得して移動量計算部120が備える近似画像計算部122に出力する。
【0057】
上述したように、第1画像と第2画像とは、共に三次元のCT画像である。そして、第2画像を撮影する際には、患者Pの体位を、第1画像を撮影したときと同様の体位に近づけた状態にしている。しかしながら、第2画像は、患者Pの体位を、第1画像を撮影したときと完全に同一の体位で撮影することは困難である。つまり、患者Pの体内の状態に変化を抑えることや、固定具を用いても同一の体位に固定することは困難である。このため、第1画像と第2画像とのそれぞれを所定の三次元空間内に仮想的に同一に配置したとしても、わずかながら(例えば、数mm)のずれが生じてしまい、第2画像を撮影するのみでは、第1画像を撮影したときの患者Pの体位を再現することは困難である。そこで、医用画像処理装置100では、移動量計算処理において、移動量計算部120が備える近似画像計算部122が第1画像の近似画像を計算し、レジストレーション部124が、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算して、第1画像に写された患者Pの体位と第2画像に写された患者Pの体位との位置を合わせるための寝台12の移動量を決定する。つまり、医用画像処理装置100は、移動量計算処理によって、第1画像を撮影したときの患者Pの体位を再現するための寝台12の移動量を決定する。所定の三次元空間とは、治療室において予め設定された部屋座標系の空間のことである。
【0058】
(移動量の計算方法)
次に、医用画像処理装置100における移動量計算処理において移動量計算部120が寝台12を移動させる移動量を計算する計算方法について説明する。まず、移動量計算部120が備える近似画像計算部122における近似画像の計算方法について説明する。
【0059】
以下の説明においては、部屋座標系に従う所定の三次元空間内に仮想的に配置した第1画像が含む画素(ボクセル)をIi(V)とする。画素Ii(V)において、数式(3)は部屋座標系内での三次元の位置を表し、Vは第1画像を所定の三次元空間内に配置したときの位置および姿勢のベクトルを表す。ベクトルVは、方向取得部106から出力された方向情報が示す軸の数と同じ次元であり、例えば、上記六自由度の場合には六次元のベクトルである。
【0060】
【0061】
ベクトルVは、上述したように、寝台12の移動を制御する際の自由度の方向に応じた少ない次元数であってもよい。例えば、寝台12の移動を制御する自由度の方向が四自由度方向である場合、ベクトルVは、四次元のベクトルであってもよい。一方、ベクトルVは、方向取得部106により出力された方向情報に基づいて、寝台12の移動方向に治療ビームBの照射方向を加えることにより、次元数を多くしてもよい。例えば、方向情報に含まれる治療ビームBの照射方向が、垂直方向と水平方向との二方向であり、寝台12の移動方向が六自由度の方向である場合、ベクトルVは、合計で八次元のベクトルであってもよい。
【0062】
近似画像計算部122は、第1画像を微少な移動量ΔVだけ移動(並進および回転)させた近似画像を計算する。ここで、移動量ΔVは、パラメータとして予め設定された微少な移動量である。近似画像計算部122は、第1画像が含むそれぞれの画素Ii(V)に対応する近似画像が含むそれぞれの画素Ii(V+ΔV)を、下式(4)とテイラー展開とによって計算(近似)する。
【0063】
【0064】
上式(4)において、右辺の第3項のεは、画素Ii(V+ΔV)における2次以降をまとめて表記した項である。∇i(V)は、ベクトルVの張る三次元空間の自由度ごとに変化するベクトルの変化量を表す一次微分の値である。∇i(V)は、移動前(近似前)の第1画像と微少に移動させた近似画像とにおいて部屋座標系内で同じ位置iにある、対応する画素の画素値(例えば、CT値)の変化量を表すベクトルVと同じ次元数のベクトルで表される。例えば、寝台12の移動方向が六自由度の方向である場合、第1画像において部屋座標系の中心の位置iにある画素Ii(V)に対応する六次元のベクトル∇i(V)は、下式(5)で表される。
【0065】
【0066】
上式(5)において、Δθx、Δθy、およびΔθzは、部屋座標系における三軸をx軸、y軸、およびz軸とした場合におけるそれぞれの軸を中心とした回転角度を表し、Δtx、Δty、およびΔtzは、それぞれの軸に並進する移動量を表す。上式(5)における右辺のそれぞれの要素は、第1画像の部屋座標系の位置iにおける画素値を表す。例えば、上式(5)における右辺の第1の要素「数式(6)」は、第1画像の部屋座標系の位置iにある画素Ii(V)を、x軸回りで回転角度Δθxだけ回転させたときの画素値である。この場合の数式(7)は、下式(8)で表される。上式(5)の右辺におけるその他の要素も同様に表すことができるが、それぞれの要素に関する詳細な説明は省略する。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
近似画像計算部122は、上述したように第1画像を微少な移動量ΔVだけ移動(並進および回転)させる計算を行った近似画像を、レジストレーション部124に出力する。近似画像計算部122は、レジストレーション部124により第1画像と第2画像とにずれがあることを表す情報が出力された場合、さらに微少な移動量ΔVだけ第1画像を移動(並進および回転)させた新たな近似画像を同様に計算し、計算を行った新たな近似画像をレジストレーション部124に出力する。
【0071】
次に、医用画像処理装置100における移動量計算処理において、移動量計算部120が備えるレジストレーション部124が第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算する計算方法について説明する。
【0072】
ここで、レジストレーション部124が求めたい第1画像と第2画像との間の位置および姿勢のずれ量が、移動量ΔVであるとすると、このずれ量は、下式(9)を用いて求めることができる。下式(9)は、Lucas-Kanade法(LK法)の最適化方法の考え方(アルゴリズム)に基づいてずれ量(移動量ΔV)を求める式の一例である。
【0073】
【0074】
上式(9)において、Ωは、部屋座標系において第1画像と第2画像とが重なっている領域に含まれる画素Ii(V)の位置iを全て含む集合である。集合Ωは、治療計画において立案者(医師など)が指定したPTVや、GTV、OARなど、腫瘍の領域に治療ビームBを照射する際に臨床的に意味のある空間的な領域を表す位置の集合であってもよい。また、集合Ωは、部屋座標系のビーム照射位置を中心とした所定の大きさの空間(球体、立方体、直方体)領域を表す位置の集合であってもよい。所定の大きさとは、患者Pの大きさ、または平均的な人体の大きさに基づいて設定する。集合Ωは、または、PTVやGTVを所定のスケールで広げた範囲としてもよい。
【0075】
レジストレーション部124は、上式(9)の右辺のコスト関数E(ΔV,Ω)を用いて、第1画像と第2画像とを比較する。コスト関数E(ΔV,Ω)は、下式(10)で表される。
【0076】
【0077】
上式(10)において、Ti(V)は、部屋座標系の位置iにある、ベクトルVの第2画像が含むそれぞれの画素の画素値(例えば、CT値)を表す。
【0078】
レジストレーション部124が第1画像と第2画像とを比較するために用いるコスト関数E(ΔV,Ω)は、下式(11)で表されるような、連結していない2つの空間で設定されるコスト関数であってもよい。
【0079】
【0080】
レジストレーション部124が第1画像と第2画像とを比較するために用いるコスト関数E(ΔV,Ω)は、部屋座標系の位置iに応じた重みを指定する関数数式(12)を使用して下式(13)のように表されるコスト関数であってもよい。
【0081】
【0082】
【0083】
関数数式(12)において、w(i)は、位置iと照射した治療ビームBの経路とに応じた値を戻り値として返す関数である。関数w(i)は、例えば、位置iが治療ビームBが通過する経路上の位置である場合には“1”、治療ビームBが通過する経路上の位置ではない場合には“0”というような2値を返す関数である。関数w(i)は、例えば、位置iと治療ビームBが通過する経路との間の距離が近いほど戻り値が高くなる関数であってもよい。
【0084】
関数w(i)は、例えば、位置iと、治療計画において立案者(医師など)が指定したPTVや、GTV、OARなど、腫瘍の領域に治療ビームBを照射する際に臨床的に意味のある空間的な領域を表す位置の集合とに応じた値を戻り値として返す関数であってもよい。関数w(i)は、例えば、位置iが空間的な領域を表す位置の集合である場合には“1”、位置iが空間的な領域を表す位置の集合ではない場合には“0”というような2値を返す関数であってもよい。関数w(i)は、例えば、位置iと空間的な領域との間の距離が近いほど戻り値が高くなる関数であってもよい。
【0085】
近似画像計算部122により出力された近似画像に基づいて上式(9)は、下式(14)のように書き換えることができる。
【0086】
【0087】
上式(14)においては、近似画像計算部122により出力された近似画像の画素Ii(V+ΔV)を表す上式(4)における右辺の第3項のεを無視している。これは、上式(4)において2次以降をまとめて表記したεは、極小の値であるため、無視しても以降の処理に大きな影響を与えないためである。
【0088】
上式(14)の右辺に対して、移動量ΔVの極小値を求めるために、右辺を移動量ΔVで微分して0とおくと、移動量ΔVは、下式(15)で表される。
【0089】
【0090】
ここで、上式(15)における右辺のHは、下式(16)である。
【0091】
【0092】
レジストレーション部124は、上式(15)により求めた移動量ΔVを用いて、第1画像の位置および姿勢のベクトルVを、下式(17)のように更新する。
【0093】
【0094】
上式(17)においては、更新後の第1画像の位置および姿勢のベクトルVを、ベクトルV1としている。
【0095】
レジストレーション部124は、更新後の第1画像のベクトルV1の変化が少なくなるまで、上式(15)による移動量ΔVの計算を繰り返す。ベクトルV1の変化が少なくなるまでとは、移動量ΔVのノルム、すなわち、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量が、所定の閾値以下になることである。言い換えれば、第2画像に写された患者Pの体位が、第1画像に写された治療計画段階の患者Pの体位に合っている判定されることである。移動量ΔVのノルムとは、ベクトルのノルムであればよく、例えば、l0ノルム、l1ノルム、あるいはl2ノルムのいずれかを用いる。
【0096】
集合Ωが上述のようにPTVやGTVの領域の場合、第1画像の位置および姿勢が更新されると、集合Ωの要素も更新する必要がある。つまり、集合Ωは、部屋座標系における座標位置の集合であり、第1画像の部屋座標系での移動に伴って位置が変わるからである。このような更新を不要にするために、位置および姿勢が更新される第1画像には、集合Ωを規定する領域が含まれないことが望ましい。例えば、治療直前に撮影されたCT画像(これまでの第2画像)を第1画像とし、治療計画情報を含むCT画像(これまでの第1画像)を第2画像と入れ替えてもよい。
【0097】
レジストレーション部124における移動量ΔVの計算の繰り返しは、予め設定された繰り返し計算回数を超えるまでとしてもよい。この場合、レジストレーション部124が移動量ΔVの計算に要する時間を短くすることができる。しかしながら、この場合には、予め設定された繰り返し計算回数を超えた時点でレジストレーション部124は移動量ΔVの計算を終了するものの、移動量ΔVのノルムが所定の閾値以下になるとは限らない。言い換えれば、患者Pの位置合わせの計算に失敗している可能性が高いことも考えられる。この場合、レジストレーション部124は、予め設定された繰り返し計算回数を超えたことにより移動量ΔVの計算を終了したことを表す警告信号を、例えば、医用画像処理装置100または治療システム1が備える不図示の警告部に出力するようにしてもよい。これにより、不図示の警告部が、患者Pの位置合わせの計算に失敗している可能性があることを、医師などの放射線治療の実施者、つまり、治療システム1の利用者に通知することができる。
【0098】
レジストレーション部124は、上述したように計算した移動量ΔV、つまり、第1画像と第2画像との間の位置および姿勢のずれ量を、上式(5)におけるそれぞれの自由度ごとに計算する。そして、レジストレーション部124は、計算したそれぞれの自由度ごとのずれ量に基づいて、寝台12の移動量(並進量および回転量)を決定する。このとき、レジストレーション部124は、例えば、第1画像から近似画像を計算する際に移動した移動量ΔVをそれぞれの自由度ごとに合計する。そして、レジストレーション部124は、現在の患者Pの位置を、合計した移動量だけ移動させるような寝台12の移動量を、それぞれの自由度ごとに決定する。そして、レジストレーション部124は、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。
【0099】
このような処理によって、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像計算部122が、第1画像から近似画像を計算し、レジストレーション部124が、近似画像と第2画像とに基づいて、治療計画段階の患者Pの体位と現在の患者Pの体位とのずれ量を計算する。つまり、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像と第2画像とに基づいて、治療ビームBの照射方向(経路)のずれを判定する。医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像の計算とずれ量の計算とを繰り返す。そして、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像と第2画像との計算したずれ量が所定の閾値以下になると、これまで計算したずれ量の総和に基づいて、現在の患者Pの体位を治療計画段階の患者Pの体位に合わせるために寝台12を移動させる移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。言い換えれば、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、治療計画段階において計画したエネルギーに近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射することができるように、現在の患者Pの体位を治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定して移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、医用画像処理装置100の移動量計算処理によって決定された寝台12の移動量に応じて実際に患者Pを移動させて、治療計画において計画したエネルギー量の治療ビームBを腫瘍に照射することができ、計画通りに放射線治療を行うことができる。
【0100】
上述したように、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像計算部122が、寝台制御部14が寝台12の移動方向を制御することができる自由度に対応したベクトル(上式(5)参照)に基づいて、第1画像を微少な移動量ΔVだけ移動(並進および回転)させた近似画像を計算する。そして、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、レジストレーション部124が、近似画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算する。このため、医用画像処理装置100では、従来のように第1画像と第2画像とをそのまま用いて患者Pの位置合わせを行うよりも、三次元のCT画像同士の画像照合による患者Pの位置合わせを、より高速に行うことができる。しかも、医用画像処理装置100において照合に用いる近似画像は、第1画像を微少な移動量ΔVだけ移動させたものであり、患者Pの位置合わせの精度は、移動量ΔVに応じた高い精度となる。
【0101】
医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像の計算とずれ量の計算とを繰り返す際に、第1画像を移動(並進および回転)させた新たな近似画像を計算する。言い換えれば、医用画像処理装置100の移動量計算処理では、近似画像とずれ量の計算との繰り返しにおいて、近似画像を作り直す。このため、医用画像処理装置100または医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、近似画像を計算する元の画像(ここでは、第1画像)の画像サイズを、ずれ量を計算する基準の画像(ここでは、第2画像)よりも小さくした方が、繰り返し行う近似画像の計算の負荷を少なくする、つまり、近似画像の計算時間を短縮することができる。
【0102】
上述したように、医用画像処理装置100では、第1画像取得部102が、治療前に撮影された患者Pの第1画像と、その第1画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得し、第2画像取得部104が、治療を開始する直前に撮影された患者Pの第2画像と、その第2画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得する。医用画像処理装置100では、方向取得部106が、治療室内における方向に関する情報を取得する。そして、医用画像処理装置100では、移動量計算部120が備える近似画像計算部122が、第1画像と、第1画像の位置および姿勢を表すパラメータと、方向情報とに基づいて、第1画像を変換(近似)した近似画像を計算する。さらに、医用画像処理装置100では、移動量計算部120が備えるレジストレーション部124が、近似画像と、第2画像と、第2画像の位置および姿勢を表すパラメータとに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算する。そして、医用画像処理装置100では、レジストレーション部124が、計算したずれ量が第2画像に写された現在の患者Pの体位と、第1画像に写された治療計画段階の患者Pの体位に合っている判定した場合に、計算したずれ量に基づいて寝台12の移動量、つまり、最終的な患者Pの移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、寝台制御部14が、移動量信号に基づいて寝台12を移動させることによって、患者Pの位置が実際に移動される。これにより、医用画像処理装置100を備えた治療システム1では、治療計画段階において決定したエネルギーに近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射することができる状態に現在の患者Pの位置を合わせて、計画通りの放射線治療を行うことができる。
【0103】
上記説明したように、医用画像処理装置100は、患者Pの体内を撮影した三次元の第1画像を取得する第1画像取得部102と、第1画像とは異なる時刻に撮影された患者Pの体内の三次元の第2画像を取得する第2画像取得部104と、治療室における患者Pへの治療ビームBの照射方向に関する方向情報を取得する方向取得部106と、第1画像に設定された治療ビームBの経路と照射方向に関する方向情報とに基づいて、第2画像に写された患者Pの位置を第1画像に写された患者Pの位置に合わせるために移動させる第2画像の移動量を表す移動量信号を出力する移動量計算部120と、を備える。これによって、医用画像処理装置100は、第1画像取得部102が取得した第1画像と、第2画像取得部104が取得した第2画像と、方向取得部106が取得した方向情報とに基づいて、治療計画段階の患者Pの体位と現在の患者Pの体位とのずれ量を計算し、現在の患者Pの位置を治療計画段階において第1画像を撮影したときの位置に合わせるための移動量を決定することができる。
【0104】
上記説明したように、移動量計算部120は、治療ビームBの経路と照射方向に関する方向情報とに基づいて、第1画像を患者Pの体位が変化する自由度ごとに所定幅(例えば、微少な移動量)ずらして生成(変換(近似))される近似画像を計算する近似画像計算部122と、近似画像を用いて第1画像と第2画像とのずれ量を計算し、計算したずれ量に基づいて移動量を決定し、決定した移動量を表す移動量信号を出力するレジストレーション部124と、を備えてもよい。上記説明したように、移動量計算部120は、治療ビームBの経路と照射方向に関する方向情報とに基づいて、第1画像を平面に写像した二次元の近似画像を計算する近似画像計算部122と、近似画像を用いて第1画像と第2画像とのずれ量を計算し、計算したずれ量に基づいて移動量を決定し、決定した移動量を表す移動量信号を出力するレジストレーション部124と、を備えてもよい。これによって、医用画像処理装置100は、第1画像を近似した近似画像を計算し、近似画像(言い換えれば、第1画像)と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算し、計算したずれ量に基づいて、第2画像に写された現在の患者Pの体位を第1画像に写された治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定して、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を出力することができる。
【0105】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、所定の三次元空間(部屋座標系)内に第1画像と第2画像とのそれぞれを仮想的に配置し、第1画像と第2画像とのそれぞれにおいて空間的に同じ位置iでの画素値の差分が小さくなるように寝台12の移動量を計算する計算方法について説明した。しかしながら、この計算方法では、第1画像と第2画像とのそれぞれにおける画素値の差分は小さくなるものの、必ずしも、放射線治療において重要な治療計画において立案者(医師など)が指定した腫瘍に対する治療ビームBの線量分布まで一致するように計算されるとは限らない。放射線(ここでは、治療ビームB)は、物質を通過する際にエネルギーを失うため、治療計画ではCT画像を用いて仮想的に照射した放射線のエネルギー損失量を計算することによって、放射線の照射方法を定めることが行われる。このことを考えると、治療段階において患者Pの位置を合わせる際には、照射する治療ビームBが通過する経路上に存在する患者Pの体内の組織も一致していることが重要になる。そこで、第2の実施形態では、照射する治療ビームBによって患者Pの体内の腫瘍に与えるエネルギーが治療計画段階において計画したエネルギーにより近くなるように、現在の患者Pの体位を治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定するための構成および計算方法を提案する。
【0106】
第2の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの構成は、
図1に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成において、医用画像処理装置100が第2の実施形態の医用画像処理装置200に代わった構成である。以下の説明においては、医用画像処理装置200を備えた治療システムを、「治療システム2」という。
【0107】
以下の説明においては、医用画像処理装置200を備えた治療システム2の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0108】
医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、CT撮影装置16により出力されたCT画像に基づいて、放射線治療を行う際に患者Pの位置を合わせるための処理を行い、治療ビーム照射門18から照射する治療ビームBの照射方向を治療計画段階において設定した方向に合わせるために寝台12を移動させる移動量信号を寝台制御部14に出力する。医用画像処理装置200では、第1の実施形態の医用画像処理装置100よりも、照射する治療ビームBによって患者Pの体内の腫瘍に与えるエネルギーが治療計画段階において計画したエネルギーに近くなるような寝台12の移動量を決定することができる。
【0109】
以下、治療システム2を構成する医用画像処理装置200の構成について説明する。
図4は、第2の実施形態の医用画像処理装置200の概略構成を示すブロック図である。医用画像処理装置200は、例えば、第1画像取得部102と、第2画像取得部104と、方向取得部106と、移動量計算部220と、を備える。移動量計算部220は、例えば、積分画像計算部221と、近似画像計算部222と、レジストレーション部124と、を備える。積分画像計算部221は、例えば、第1積分画像計算部221-1と、第2積分画像計算部221-2と、を備える。
【0110】
積分画像計算部221は、第1画像取得部102により出力された第1画像に対応する積分画像(以下、「第1積分画像」という)と、第2画像取得部104により出力された第2画像に対応する積分画像(以下、「第2積分画像」という)とのそれぞれを計算する。積分画像計算部221は、第1積分画像を近似画像計算部222に、第2積分画像をレジストレーション部124に、それぞれ出力する。積分画像は、画像内において治療ビームBの照射経路に沿って、画素値を積分した画像である。
【0111】
第1積分画像計算部221-1は、第1画像取得部102により出力された第1画像と、第1画像の位置および姿勢を表すパラメータと、方向取得部106により出力された方向情報とに基づいて、第1画像内を治療ビームBが通過する経路上に存在する画素(ボクセル)の画素値(CT値)を積分した第1積分画像を計算する。第1積分画像計算部221-1は、計算した第1積分画像を近似画像計算部222に出力する。このとき、第1積分画像計算部221-1は、第1画像の位置および姿勢を表すパラメータも、第1積分画像とともに近似画像計算部222に出力してもよい。
【0112】
第2積分画像計算部221-2は、第2画像取得部104により出力された第2画像と、第2画像の位置および姿勢を表すパラメータと、方向取得部106により出力された方向情報とに基づいて、第2画像内を治療ビームBが通過する経路上に存在する画素(ボクセル)の画素値(CT値)を積分した第2積分画像を計算する。第2積分画像計算部221-2は、計算した第2積分画像をレジストレーション部124に出力する。このとき、第2積分画像計算部221-2は、第2画像の位置および姿勢を表すパラメータも、第2積分画像とともにレジストレーション部124に出力してもよい。
【0113】
近似画像計算部222は、積分画像計算部221が備える第1積分画像計算部221-1により出力された第1積分画像に基づいて、第1画像を変換(近似)した近似画像を計算する。近似画像計算部222は、計算した近似画像をレジストレーション部124に出力する。近似画像計算部222における近似画像の計算方法は、第1の実施形態の医用画像処理装置100内の移動量計算部120が備える近似画像計算部122における近似画像の計算方法と同様に考えることができる。
【0114】
ここで、積分画像計算部221による積分画像の計算方法の概略について、第1画像に対応する第1積分画像を計算する第1積分画像計算部221-1を例として説明する。第1積分画像計算部221-1による第1積分画像の計算では、まず、第1画像取得部102により出力された第1画像に含まれる画素の中から、治療ビームBが通過する経路上に位置する画素を抽出する。治療ビームBが通過する経路は、方向取得部106により出力された方向情報に含まれる治療ビームBの照射方向に基づいて、治療ビーム照射門18から照射された治療ビームBが患者Pを通過する経路を、部屋座標系の三次元の座標として得ることができる。治療ビームBが通過する経路は、部屋座標系の三次元の座標で表される治療ビーム照射門18の位置を起点とした三次元のベクトルとして得てもよい。
【0115】
以下、治療ビーム照射門18から照射する治療ビームBの照射方向について説明する。以下の説明においては、治療ビームBの経路が三次元のベクトルであるものとする。
図5は、第2の実施形態の医用画像処理装置200を備えた治療システム2における放射線(治療ビームB)の出射と放射線(治療ビームB)の照射対象(患者Pの体内に存在する腫瘍)との関係の一例を説明する図である。
図5には、治療ビーム照射門18から照射した治療ビームBが照射対象である患者Pの体内に存在する腫瘍の領域(範囲)に到達するまでの経路の一例を示している。
図5は、治療ビーム照射門18から治療ビームBを出射する構成である場合の一例である。
【0116】
治療ビーム照射門18が治療ビームBを出射する構成である場合、治療ビーム照射門18は、
図5に示したように、平面状の出射口を持っている。治療ビーム照射門18から出射された治療ビームBは、コリメータ18-1を経由して照射対象の腫瘍に到達する。つまり、治療ビーム照射門18から出射された治療ビームBの内、コリメータ18-1を通過した治療ビームB’のみが、照射対象の腫瘍に到達する。コリメータ18-1は、不要な治療ビームB”を遮断するための金属製の器具である。コリメータ18-1は、治療ビームBが患者Pの体内に存在する腫瘍以外の領域に照射されないようにするため、例えば、照射対象の腫瘍の形状に合わせて治療ビームBが通過する領域が調整される。コリメータ18-1は、例えば、不要な治療ビームB”を遮断する領域を機械的に変化させることができるマルチリーフコリメータなどであってもよい。
図5には、治療ビームBの内、コリメータ18-1を通過した治療ビームB’が、第1画像内の照射対象の腫瘍に照射される場合の一例を模式的に示している。この場合、治療ビームB’の経路における起点は、治療ビーム照射門18の平面状の出射口の範囲内に位置する治療ビームB’の出射点の位置である。治療ビーム照射門18の三次元の位置は、例えば、出射口の平面の中心の位置(座標)である。
【0117】
方向取得部106は、治療ビームB’の照射方向を治療ビームBの照射方向を表す情報として含む方向情報を、第1積分画像計算部221-1に出力する。第1積分画像計算部221-1は、治療ビームB’が第1画像内の照射対象の腫瘍まで到達する経路を、所定の三次元空間内に照射される治療ビームB’の経路とする。ここで、照射対象の腫瘍位置を部屋座標系での位置iによって表し、その位置に到達する治療ビームB’の経路b(i)は、三次元ベクトルの集合によって、下式(18)のように、離散的に表すことができる。
【0118】
【0119】
それぞれの経路の起点、つまり、三次元のベクトルb(i)の起点は、それぞれの経路b(i)で照射対象の腫瘍まで到達する治療ビームB’の出射点の位置である。この起点の三次元位置をSで表す。また、Ωは第1の実施形態における上式(9)の定義と同様に、照射対象の腫瘍位置、つまり、PTVやGTVの部屋座標系での位置の集合である。
【0120】
図6は、第2の実施形態の医用画像処理装置200を備えた治療システム2における放射線(治療ビームB)の出射と放射線(治療ビームB)の照射対象(患者Pの体内に存在する腫瘍)との関係の別の一例を説明する図である。
図6にも、治療ビーム照射門18から照射した治療ビームBが照射対象である患者Pの体内に存在する腫瘍の領域(範囲)に到達するまでの経路の一例を示している。
図6は、治療ビーム照射門18が、出射した治療ビームBを走査する構成である場合の一例である。この構成の場合、治療ビーム照射門18は、
図6に示したように、コリメータ18-1を備えず、1つの出射口を持っている。治療ビーム照射門18の1つの出射口から出射された治療ビームBは、例えば、磁石などによって方向が曲げられることにより、照射対象の腫瘍の全体の領域を塗りつぶす(スキャンする)ように走査されて、照射対象の腫瘍に照射される。
図6には、治療ビームBの照射方向が走査されて、第1画像内の照射対象の腫瘍に照射される場合の一例を模式的に示している。この場合、走査された治療ビームBのそれぞれの経路における起点は、治療ビーム照射門18の出射口の位置である。治療ビーム照射門18の三次元の位置は、1つの出射口の位置(座標)である。この場合の部屋座標系のある位置iに到達する治療ビームBの経路b(i)は、上式(18)と同様に、離散的に表すことができる。
【0121】
方向取得部106は、治療ビームBが走査される照射方向を治療ビームBの照射方向を表す情報として含む方向情報を、第1積分画像計算部221-1に出力する。第1積分画像計算部221-1は、走査された治療ビームBが第1画像内の照射対象の腫瘍の位置を表す部屋座標系の座標iまで到達する経路b(i)を、所定の三次元空間内に照射される治療ビームBの経路とする。この場合の治療ビームBの経路も、三次元ベクトルの集合によって、上式(18)のように、離散的に表すことができる。それぞれの経路の起点、つまり、三次元のベクトルb(i)の起点は、治療ビーム照射門18の出射口の位置である。
【0122】
(積分画像の生成方法)
次に、積分画像計算部221がそれぞれの積分画像を計算する方法について説明する。以下の説明においては、所定の三次元空間(部屋座標系)のある1点の位置iを点iと表す。そして、所定の三次元空間内に仮想的に配置した第1画像に含まれる点iに対応する三次元の画素の画素値をIi(V)と表す。同様に、所定の三次元空間内に仮想的に配置した第2画像に含まれる点iに対応する三次元の画素の画素値をTi(V)と表す。第1画像または第2画像内に点iに対応する画素がない場合の画素値は“0”とする。Vは、所定の三次元空間内における第1画像または第2画像の位置および姿勢を表すベクトルVのパラメータである。
【0123】
治療ビームBにおける治療ビーム照射門18の出射口の位置、すなわち、起点Sの三次元ベクトル0から点iまでのベクトルは下式(19)で表すことができる。
【0124】
【0125】
この場合、第1積分画像計算部221-1が第1画像において点iまでの治療ビームBの経路上に位置するそれぞれの画素の画素値を積算した第1積分画像に含まれる画素の画素値(以下、「積分画素値」という)数式(20)は、下式(21)によって計算することができる。
【0126】
【0127】
【0128】
同様に、第2積分画像計算部221-2が第2画像において点iまでの治療ビームBの経路上に位置するそれぞれの画素の画素値を積算した第2積分画像に含まれる画素の積分画素値数式(22)は、下式(23)によって計算することができる。
【0129】
【0130】
【0131】
上式(21)および上式(23)において、tは媒介変数であり、f(x)はCT画像の画素値(CT値)を変換する関数である。関数f(x)は、例えば、放射線のエネルギー損失量を水等価厚に変換する変換テーブルに従った関数である。上述したように、放射線は、物質を通過する際にエネルギーを失う。このとき、放射線が失うエネルギー量は、CT画像のCT値に応じたエネルギー量である。つまり、放射線のエネルギー損失量は均一ではなく、例えば、骨や脂肪など、患者Pの体内の組織によって異なる。水等価厚は、組織(物質)ごとに異なる放射線のエネルギー損失量を、同じ物質である水の厚みとして表した値であり、CT値に基づいて換算することができる。例えば、CT値が骨を表す値である場合には、放射線が骨を通過する際のエネルギー損失量は多いため、水等価厚は大きな値となる。例えば、CT値が脂肪を表す値である場合には、放射線が脂肪を通過する際のエネルギー損失量は少ないため、水等価厚は小さな値となる。例えば、CT値が空気を表す値である場合には、放射線が空気を通過する際のエネルギー損失量はないため、水等価厚は“0”となる。CT画像に含まれるそれぞれのCT値を水等価厚に変換することによって、治療ビームBの経路上に位置するそれぞれの画素によるエネルギー損失量を、同じ基準で表すことができる。CT値を水等価厚に変換する変換式としては、例えば、実験的に求めた非線形の換算データに基づいた回帰式を用いる。実験的に求めた非線形の換算データに関しては、種々の文献が発表されている。関数f(x)は、例えば、恒等写像をするための関数であってもよい。
【0132】
第1積分画像計算部221-1は、第1画像に対応する積分画素値数式(20)の第1積分画像を、レジストレーション部124に出力する。第2積分画像計算部221-2は、第2画像に対応する積分画素値数式(22)の第2積分画像を、レジストレーション部124に出力する。
【0133】
これにより、レジストレーション部124は、第1の実施形態において示した上式(10)と同様の考え方に基づいた下式(24)で表されるコスト関数E(ΔV,Ω)を用いて、第1画像と第2画像との間の位置および姿勢のずれ量である移動量ΔVを計算する。
【0134】
【0135】
そして、レジストレーション部124は、上式(24)のコスト関数E(ΔV,Ω)を用いて計算した移動量ΔVに基づいて、寝台12の移動量(並進量および回転量)を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。
【0136】
医用画像処理装置200における移動量計算処理は、
図3に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における移動量計算処理において、積分画像計算部221による処理を追加すればよい。より具体的には、
図3に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100の移動量計算処理において、ステップS104の前に、積分画像計算部221においてそれぞれの積分画像を計算する処理を追加すればよい。従って、医用画像処理装置200における移動量計算処理の流れに関する詳細な説明は省略する。
【0137】
このような構成および動作によって、医用画像処理装置200は、移動量計算処理において、第1画像から第1積分画像を、第2画像から第2積分画像をそれぞれ計算する。そして、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、近似画像計算部222が、第1積分画像から近似画像を計算し、レジストレーション部124が、近似画像と第2積分画像とに基づいて、治療ビームBの照射方向(経路)のずれ、つまり、治療計画段階の患者Pの体位と現在の患者Pの体位とのずれ量の計算をする。医用画像処理装置200の移動量計算処理でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100の移動量計算処理と同様に、近似画像の計算とずれ量の計算とを繰り返し、近似画像と第2積分画像とのずれ量が所定の閾値以下になったときのずれ量に基づいて寝台12を移動させる移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置200を備えた治療システム2でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、医用画像処理装置200の移動量計算処理によって決定された寝台12の移動量に応じて実際に患者Pを移動させて、治療計画において計画したエネルギー量の治療ビームBを腫瘍に照射することができ、計画通りに放射線治療を行うことができる。
【0138】
しかも、医用画像処理装置200では、積分画像計算部221が、予め定めた非線形変換(実験的に求めた非線形の換算データ)によって第1画像に対応する第1積分画像と、第2画像に対応する第2積分画像とを計算する。これにより、医用画像処理装置200では、第1の実施形態の医用画像処理装置100において懸念される腫瘍に対する治療ビームBの線量分布まで一致させて、寝台12の移動量を決定することができる。つまり、医用画像処理装置200では、放射線治療において重要となる、腫瘍に照射する治療ビームBが通過する経路上に存在する患者Pの体内の組織も一致している状態で、寝台12の移動量を決定することができる。
【0139】
ただし、医用画像処理装置200では、移動量計算処理においてずれ量の計算をする近似画像は、第1積分画像に基づくものである。このため、レジストレーション部124が近似画像とずれ量の計算(つまり、移動量ΔVの計算)をして第1積分画像のベクトルV1を更新した際には、新たな近似画像を計算する(作り直す)のに伴って、第1積分画像計算部221-1も新たな第1積分画像を計算する(作り直す)必要がある。つまり、第1積分画像計算部221-1は、第1画像内を治療ビームBが通過する新たな経路上に存在する画素(ボクセル)の画素値(CT値)を積分した第1積分画像を再度計算する必要がある。例えば、寝台12の移動方向が六自由度の方向である場合、第1積分画像計算部221-1は、上式(5)で表される六次元のベクトル∇i(V)におけるそれぞれの自由度に対応する六つの経路の第1積分画像を新たに計算する必要がある。つまり、第1積分画像計算部221-1は、第1積分画像の計算を再度6回行う。第1積分画像計算部221-1における第1積分画像の再計算は、計算時間が増大してしまう要因となってしまうと考えられる。このため、医用画像処理装置200では、第1の実施形態において上式(10)、上式(11)、または上式(13)に示したコスト関数E(ΔV,Ω)を用いてずれ量の計算を行って患者Pの位置合わせを行った後、さらに、上式(24)に示したコスト関数E(ΔV,Ω)を用いてずれ量の計算を行って患者Pの位置合わせを行うようにしてもよい。これにより、医用画像処理装置200では、移動量計算処理において近似画像の計算とずれ量の計算とを繰り返す際に、第1積分画像を再度計算することが必要となる回数を削減し、移動量計算処理に要する全体の計算時間を短縮することができる。
【0140】
上述したように、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、第1画像取得部102が、治療前に撮影された患者Pの第1画像と、その第1画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得し、第2画像取得部104が、治療を開始する直前に撮影された患者Pの第2画像と、その第2画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得する。さらに、医用画像処理装置200でも、方向取得部106が、治療室内における方向に関する情報を取得する。そして、医用画像処理装置200では、移動量計算部220が備える積分画像計算部221が、第1画像と第2画像とのそれぞれに対応する積分画像を計算し、近似画像計算部222が、第1積分画像に基づいて、第1画像を変換(近似)した近似画像を計算する。その後、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、レジストレーション部124が、近似画像と第2画像に対応する第2積分画像とに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を計算し、計算したずれ量に基づいて寝台12の移動量、つまり、最終的な患者Pの移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置200を備えた治療システム2でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、寝台制御部14が、移動量信号に基づいて寝台12を移動させることによって、患者Pの位置が実際に移動される。これにより、医用画像処理装置200を備えた治療システム2でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、治療計画段階において決定したエネルギーに近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射することができる状態に現在の患者Pの位置を合わせて、計画通りの放射線治療を行うことができる。しかも、医用画像処理装置200を備えた治療システム2では、腫瘍に照射する治療ビームBが通過する経路上に存在する患者Pの体内の組織も一致している状態で、寝台12の移動量を決定することができるため、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1よりも、治療計画段階において決定したエネルギーにより近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射して、放射線治療を行うことができる。
【0141】
上記説明したように、医用画像処理装置200において、移動量計算部220は、第1画像に含まれ、治療ビームBの経路で治療ビームBが通過する三次元の第1画素(ボクセル)の画素値(CT値)を積分した第1積分画像と、第2画像に含まれ、照射方向から照射された治療ビームBが通過する三次元の第2画素(ボクセル)の画素値(CT値)を積分した第2積分画像とを計算する積分画像計算部221、をさらに備え、近似画像計算部222は、第1積分画像に基づいて近似画像を計算し、レジストレーション部124は、第2積分画像と近似画像とのずれ量に基づいた移動量信号を出力する。これによって、医用画像処理装置200は、第1画像に含まれるボクセルのCT値を積分した第1積分画像と、第2画像に含まれるボクセルのCT値を積分した第1積分画像とに基づいて、治療計画段階の患者Pの体位と現在の患者Pの体位とのずれ量を計算し、現在の患者Pの位置を治療計画段階において第1画像を撮影したときの位置に合わせるための移動量を決定することができる。
【0142】
上記説明したように、積分画像計算部221は、治療ビームBの経路上に位置する第1画素(ボクセル)の画素値(CT値)と、照射方向から照射された治療ビームBが通過する経路上に位置する第2画素(ボクセル)の画素値(CT値)とのそれぞれを、所定の非線形変換(実験的に求めた非線形の換算データ)によって変換した後に積分して、第1積分画像と第2積分画像とのそれぞれを計算してもよい。これによって、医用画像処理装置200は、第1画像に含まれるボクセルのCT値および第2画像に含まれるボクセルのCT値を、実験的に求めた非線形の換算データに基づいた回帰式によって変換した後に積分した第1積分画像と第2積分画像とに基づいて、現在の患者Pの位置を治療計画段階において第1画像を撮影したときの位置に合わせるための移動量を決定することができる。
【0143】
上記説明したように、積分画像計算部221は、非線形変換(実験的に求めた非線形の換算データ)によって、治療ビームBの経路上に位置する第1画素(ボクセル)の画素値(CT値)と照射方向から照射された治療ビームBが通過する経路上に位置する第2画素(ボクセル)の画素値(CT値)とのそれぞれを、治療ビームBがそれぞれの画素(ボクセル)に到達する到達エネルギーを表す値(例えば、水等価厚)に変換してもよい。これによって、医用画像処理装置200は、第1画像に含まれるボクセルのCT値および第2画像に含まれるボクセルのCT値を、例えば、水等価厚に換算した後に積分した第1積分画像と第2積分画像とに基づいて、現在の患者Pの位置を治療計画段階において第1画像を撮影したときの位置に合わせるための移動量を決定することができる。
【0144】
上記説明したように、積分画像計算部221は、治療ビームBが照射対象の領域(腫瘍)に到達するまでの間に位置する治療ビームBの経路上の第1画素(ボクセル)の画素値(CT値)と、照射方向から照射された治療ビームBが通過する経路上で照射対象の領域(腫瘍)に到達するまでの間に位置する第2画素(ボクセル)の画素値(CT値)とのそれぞれを変換したエネルギー損失量の値(水等価厚)を積分して、第1積分画像と第2積分画像とのそれぞれを計算してもよい。これによって、医用画像処理装置200は、第1積分画像と第2積分画像とを生成する際の処理量(演算量)を、少なくすることができる。
【0145】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。放射線治療における治療計画では、上述したように、治療計画の立案者(医師など)が、治療計画段階において撮影した第1画像(例えば、CT撮影装置16により撮影したCT画像)に対して、腫瘍(病巣)の領域と正常な組織の領域との境界、腫瘍とその周辺にある重要な臓器との境界などを指定する。つまり、治療計画では、患者Pごとに、照射する治療ビームBの方向や強度などを決定するための腫瘍の位置やOARなどの情報を指定する。この治療計画における腫瘍の位置やOARなどの情報の指定には、ある程度の時間を要する。従って、治療を開始する直前の患者Pの第2画像に対しては、一般的に、治療計画段階のような腫瘍の位置やOARなどの情報を入力することは行われない。このため、従来の放射線治療では、治療を開始する直前の患者Pの体内に存在する腫瘍の位置は、治療計画のときと同じ位置であると仮定して、治療を行っていた。このため、従来の放射線治療では、治療中に起こり得る可能性が高い腫瘍の位置の経時変化への対応は容易ではなかった。そこで、第3の実施形態では、治療計画において第1画像に対して指定した腫瘍の画像パターンと類似する箇所を、治療を開始する直前の患者Pの第2画像に対して同定することにより、腫瘍が存在する局所の部分に注目し、現在の患者Pの体位を治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量の決定を、腫瘍の位置の経時変化に対応させるための構成および計算方法を提案する。
【0146】
第3の実施形態の医用画像処理装置を備えた治療システムの構成は、
図1に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成において、医用画像処理装置100が第3の実施形態の医用画像処理装置300に代わった構成である。以下の説明においては、医用画像処理装置300を備えた治療システムを、「治療システム3」という。
【0147】
以下の説明においては、医用画像処理装置300を備えた治療システム3の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0148】
医用画像処理装置300は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、CT撮影装置16により出力されたCT画像に基づいて、放射線治療を行う際に患者Pの位置を合わせるための処理を行い、治療ビーム照射門18から照射する治療ビームBの照射方向を治療計画段階において設定した方向に合わせるために寝台12を移動させる移動量信号を寝台制御部14に出力する。医用画像処理装置300では、患者Pの体内の腫瘍が存在する局所の部分に注目して、照射する治療ビームBによって患者Pの体内の腫瘍に与えるエネルギーが治療計画段階において計画したエネルギーに近くなるような寝台12の移動量を決定することができる。
【0149】
以下、治療システム3を構成する医用画像処理装置300の構成について説明する。
図7は、第3の実施形態の医用画像処理装置300の概略構成を示すブロック図である。医用画像処理装置300は、第1画像取得部102と、第2画像取得部104と、方向取得部106と、領域取得部308と、移動量計算部320と、を備える。移動量計算部320は、近似画像計算部122と、動き推定部323と、レジストレーション部324と、を備える。
【0150】
領域取得部308は、治療計画段階において患者Pの第1画像に対して指定された腫瘍に関する領域の情報を取得する。領域取得部308は、例えば、腫瘍の位置や、PTV、OARなどの領域の情報を、腫瘍に関する領域の情報(以下、「領域情報」という)として取得する。領域取得部308が領域情報を取得する画像は、第1画像に限らず、治療計画段階において腫瘍に関する領域が指定された画像であれば、例えば、第2画像や、以前の放射線治療の際に撮影された画像において推定された腫瘍に関する領域が含まれる画像であってもよい。領域取得部308は、取得した領域情報を移動量計算部320、より具体的には、動き推定部323に出力する。
【0151】
動き推定部323は、第1画像取得部102により出力された第1画像と、第2画像取得部104により出力された第2画像と、領域取得部308により出力された領域情報とに基づいて、第1画像に含まれる腫瘍や、PTV、OARなどの領域を第2画像にコピーする。動き推定部323は、第2画像にコピーした腫瘍などの領域に基づいて、第2画像内での腫瘍の位置などの変化(動き)を推定した動きモデルを生成する。動き推定部323は、生成した動きモデルをレジストレーション部324に出力する。
【0152】
レジストレーション部324は、近似画像計算部122により出力された第1画像の近似画像と、第2画像取得部104により出力された第2画像と、動き推定部323により出力された動きモデルとに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を腫瘍の動きを含めて計算する。レジストレーション部324は、計算したずれ量に基づいて、第2画像に写された現在の患者Pの体位を第1画像に写された治療計画段階の患者Pの体位に合わせるための寝台12の移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。
【0153】
(動きモデルの推定方法)
次に、動き推定部323が動きモデルを推定する方法について説明する。以下の説明においては、領域取得部308により出力された領域情報が表す第1画像に対して指定された腫瘍に関する領域に基づいて、第2画像内に存在する腫瘍の位置などの動きを特定するための動きモデルを推定する推定方法について説明する。
【0154】
動き推定部323における動きモデルの推定では、第1画像に対して指定された腫瘍の領域内の画像と類似している第2画像内の領域の動きを求める。その方法として動き推定部323は、例えば、テンプレートマッチングの技術を用いる。より具体的には、動き推定部323は、第1画像に対して指定された腫瘍の領域を表す画像をテンプレートとし、第2画像に対してテンプレートマッチングを行うことによって、最も類似した画像の位置を第2画像内の腫瘍の位置として探索する。そして、動き推定部323は、探索した第2画像内の腫瘍の位置の動きベクトルを求め、求めた全ての動きベクトルを動きモデルとする。動き推定部323は、テンプレートとした腫瘍の領域を複数の小さな領域(以下、「小領域」という)に分割し、分割したそれぞれの小領域を表す画像をそれぞれのテンプレートとしてもよい。この場合、動き推定部323は、それぞれの小領域のテンプレートごとにテンプレートマッチングを行って、最も類似した第2画像内の腫瘍の位置を、それぞれの小領域ごとに探索する。そして、動き推定部323は、探索したそれぞれの小領域ごとに対応する第2画像内の腫瘍の位置の動きベクトルを求め、それぞれ求めた全ての動きベクトルを動きモデルとする。動き推定部323は、求めた動きベクトルの平均ベクトルや、メディアンベクトルなどを、動きモデルとしてもよい。
【0155】
動き推定部323は、第1画像に対して指定された腫瘍の領域内の画素値の分布と類似している第2画像内の領域の動きを求めてもよい。その方法として動き推定部323は、例えば、画素値のヒストグラムが類似する位置を、ミーンシフト(Mean Shift)やメドイドシフト(Medoid Shift)などで探索して物体を追跡する技術を利用してもよい。このとき、動き推定部323は、第1画像に対して指定された腫瘍の領域内の全ての画素値を用いて求めた画素値のヒストグラムの分布を利用して、動きモデルを生成する。動き推定部323は、第1画像に対して指定された腫瘍の領域を複数の小領域に分割し、分割したそれぞれの小領域ごとに、領域内の画素値を用いて求めた画素値のヒストグラムの分布を利用して、それぞれの小領域に対応する動きモデルを生成してもよい。この場合、動き推定部323は、それぞれの小領域に対応する複数の動きモデルをまとめて動きモデル群としてもよいし、動きモデル群の平均ベクトルや、メディアンベクトルなどを、動きモデルとしてもよい。
【0156】
動き推定部323は、このようにして生成した動きモデルを、レジストレーション部324に出力する。
【0157】
これにより、レジストレーション部324は、上述したように第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を腫瘍の動きを含めて計算する。このとき、レジストレーション部324は、下式(25)で表されるコスト関数E(ΔV,Ω)を用いて、第1画像と第2画像との間の位置および姿勢のずれ量である移動量ΔVを、腫瘍の動きを含めて計算する。
【0158】
【0159】
上式(25)において、Ωは、領域取得部308が取得した、第1画像に対して指定された腫瘍に関する領域内の位置の集合である。数式(26)は、第1画像に対して指定された腫瘍に関する領域を動きモデルによって変換した位置の関数である。動きモデルが、例えば、第2画像内の腫瘍の位置の全ての動きベクトルの平均ベクトルの一つをモデル化した動きモデルである場合、関数数式(26)は、腫瘍の位置が平行移動していることを表す。
【0160】
【0161】
そして、レジストレーション部324は、上式(25)のコスト関数E(ΔV,Ω)を用いて計算した移動量ΔVに基づいて、寝台12の移動量(並進量および回転量)を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。
【0162】
医用画像処理装置300における移動量計算処理は、
図3に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における移動量計算処理において、領域取得部308による処理と、動き推定部323による処理とを追加すればよい。より具体的には、
図3に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100の移動量計算処理において、例えば、ステップS102の後に、領域取得部308において第1画像に対して指定された腫瘍の領域情報を取得する処理を追加し、ステップS106の前に、動き推定部323において第2画像内での腫瘍の位置などの動きを推定して動きモデルを生成する処理を追加すればよい。従って、医用画像処理装置300における移動量計算処理の流れに関する詳細な説明は省略する。
【0163】
このような構成および動作によって、医用画像処理装置300は、移動量計算処理において、第1画像に対して指定された腫瘍の領域情報を取得し、取得した領域情報に基づいて腫瘍の領域を第2画像にコピーして、第2画像内での腫瘍の位置などの変化(動き)を推定した動きモデルを生成する。そして、医用画像処理装置300でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、近似画像計算部122が、第1画像から近似画像を計算する。その後、レジストレーション部324が、近似画像と、第2画像と、動きモデルに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量、つまり、治療計画段階の患者Pの体位と現在の患者Pの体位とのずれ量を、腫瘍の動きを含めて計算する。医用画像処理装置300の移動量計算処理でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100の移動量計算処理と同様に、近似画像の計算とずれ量の計算とを繰り返し、近似画像と第2画像とのずれ量が所定の閾値以下になったときのずれ量に基づいて寝台12を移動させる移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置300を備えた治療システム3でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、医用画像処理装置300の移動量計算処理によって決定された寝台12の移動量に応じて実際に患者Pを移動させて、治療計画において計画したエネルギー量の治療ビームBを腫瘍に照射することができ、計画通りに放射線治療を行うことができる。
【0164】
しかも、医用画像処理装置300では、領域取得部308と、動き推定部323と、レジストレーション部324との構成によって、治療計画段階において患者Pの第1画像に対して指定された腫瘍が存在する局所の部分に注目して、患者Pの現在の体位と治療計画段階の患者Pの体位とのずれ量を、腫瘍の動きを含めて計算する。これにより、医用画像処理装置300では、放射線治療の治療中に起こり得る可能性が高い腫瘍の位置の経時変化に対応した患者Pの位置合わせを行うことができる。
【0165】
上述したように、医用画像処理装置300でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、第1画像取得部102が、治療前に撮影された患者Pの第1画像と、その第1画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得し、第2画像取得部104が、治療を開始する直前に撮影された患者Pの第2画像と、その第2画像を撮影したときの位置および姿勢を表すパラメータとを取得する。さらに、医用画像処理装置300でも、方向取得部106が、治療室内における方向に関する情報を取得する。そして、医用画像処理装置300でも、移動量計算部320が備える近似画像計算部122が、第1画像を変換(近似)した近似画像を計算する。さらに、医用画像処理装置300では、領域取得部308が、治療計画段階において患者Pの第1画像に対して指定された腫瘍に関する領域の領域情報を取得し、移動量計算部320が備える動き推定部323が、第2画像内での腫瘍の位置などの変化(動き)を推定した動きモデルを生成する。その後、医用画像処理装置300では、移動量計算部320が備えるレジストレーション部324が、近似画像と、第2画像と、動きモデルとに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を腫瘍の動きを含めて計算し、計算したずれ量に基づいて寝台12の移動量、つまり、最終的な患者Pの移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置300を備えた治療システム3でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、寝台制御部14が、移動量信号に基づいて寝台12を移動させることによって、患者Pの位置が実際に移動される。これにより、医用画像処理装置300を備えた治療システム3でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、治療計画段階において決定したエネルギーに近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射することができる状態に現在の患者Pの位置を合わせて、計画通りの放射線治療を行うことができる。しかも、医用画像処理装置300を備えた治療システム3では、患者Pの体内の腫瘍の動きを含めて、寝台12の移動量を決定することができるため、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1よりも、治療計画段階において決定したエネルギーにより近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射して、放射線治療を行うことができる。
【0166】
医用画像処理装置300では、
図2に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100の構成に、腫瘍の動きの推定に関連する構成要素を追加または取り替えた構成を示した。より具体的には、医用画像処理装置300では、第1の実施形態の医用画像処理装置100に領域取得部308を追加し、医用画像処理装置100が備える移動量計算部120に動き推定部323を追加し、レジストレーション部124をレジストレーション部324に取り替えた構成を示した。この腫瘍の動きの推定に関連する構成要素の変更は、
図4に示した第2の実施形態の医用画像処理装置200の構成に対しても同様に行うことができる。この場合の構成、動作、処理、および計算方法は、上述した医用画像処理装置300の構成、動作、処理、および計算方法と等価なものになるように構成すればよい。従って、第2の実施形態の医用画像処理装置200を腫瘍の動きを推定する構成にした場合の構成、動作、処理、および計算方法に関する詳細な説明は省略する。
【0167】
上述したように、医用画像処理装置300では、領域取得部308が、治療計画段階において患者Pの第1画像に対して指定された腫瘍に関する領域の領域情報を取得し、移動量計算部320が備える動き推定部323が、第2画像内での腫瘍の位置などの変化(動き)を推定した動きモデルを生成する。その後、医用画像処理装置300では、移動量計算部320が備えるレジストレーション部324が、近似画像と、第2画像と、動きモデルとに基づいて、第1画像と第2画像との位置および姿勢のずれ量を腫瘍の動きを含めて計算し、計算したずれ量に基づいて寝台12の移動量、つまり、最終的な患者Pの移動量を決定し、決定した寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置300を備えた治療システム3でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、寝台制御部14が、移動量信号に基づいて寝台12を移動させることによって、患者Pの位置が実際に移動される。これにより、医用画像処理装置300を備えた治療システム3でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1と同様に、治療計画段階において決定したエネルギーに近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射することができる状態に現在の患者Pの位置を合わせて、計画通りの放射線治療を行うことができる。しかも、医用画像処理装置300を備えた治療システム3では、患者Pの体内の腫瘍の動きを含めて、寝台12の移動量を決定することができるため、第1の実施形態の医用画像処理装置100を備えた治療システム1よりも、治療計画段階において決定したエネルギーにより近いエネルギー量の治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射して、放射線治療を行うことができる。
【0168】
上記説明したように、医用画像処理装置300において、患者Pに対する治療計画の情報に基づいて、患者Pの体内の腫瘍の領域に関する領域情報を取得する領域取得部308、をさらに備え、移動量計算部320は、第1画像、第2画像、および領域情報に基づいて、腫瘍の動きを推定する動き推定部323、をさらに備え、レジストレーション部324は、動き推定部323が推定した腫瘍の動きを含めたずれ量に基づいた移動量信号を出力する。これによって、医用画像処理装置300は、第1画像と、第2画像と、方向情報と、領域情報とに基づいて、治療計画段階の患者Pの体位と現在の患者Pの体位とのずれ量を腫瘍の変化(動き)を含めて計算し、現在の患者Pの位置を治療計画段階において第1画像を撮影したときの位置に合わせるための移動量を決定することができる。
【0169】
上記説明したように、領域情報は、少なくとも腫瘍(病巣)の領域と、腫瘍(病巣)の周辺に位置する危険臓器(OAR)の領域とを含んでもよい。
【0170】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。第1~第3の実施形態の医用画像処理装置によって患者Pの位置合わせを行った後、放射線治療の実施者、つまり、治療システムの利用者である医師などは、位置合わせの結果を確認して、さらに患者Pの位置や姿勢を微調整することも考えられる。そこで、第4の実施形態では、医用画像処理装置によって患者Pの位置合わせを行った結果の確認、および患者Pの位置や姿勢を微調整するための構成について説明する。以下の説明においては、
図2に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を代表例として、患者Pの位置合わせの結果確認および微調整をする構成について説明する。以下の説明においては、第4の実施形態の医用画像処理装置100aを、「医用画像処理装置100a」といい、医用画像処理装置100aを備えた治療システムを、「治療システム1a」という。
【0171】
図8は、第4の実施形態の医用画像処理装置100aの概略構成を示すブロック図である。医用画像処理装置100aは、例えば、第1画像取得部102と、第2画像取得部104と、方向取得部106と、移動量計算部120と、ユーザーインターフェース部130と、を備える。移動量計算部120は、例えば、近似画像計算部122と、レジストレーション部124と、を備える。医用画像処理装置100aは、第1の実施形態の医用画像処理装置100aにユーザーインターフェース部130が追加された構成である。
【0172】
第2画像取得部104は、取得した第2画像をユーザーインターフェース部130にも出力する。移動量計算部120が備える近似画像計算部122は、計算した近似画像をユーザーインターフェース部130にも出力する。これに代えて、または加えて、第1画像取得部102は、取得した第1画像をユーザーインターフェース部130にも出力してもよい。
【0173】
ユーザーインターフェース部130は、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aの利用者(医師など)に患者Pの位置合わせを行った結果を提示する表示装置と、利用者(以下、「ユーザー」という)による様々な操作の入力を受け付ける入力装置とを備えている。ユーザーインターフェース部130が備える表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)などである。ユーザーインターフェース部130は、例えば、近似画像計算部122により出力された近似画像(第1画像取得部102により出力された第1画像であってもよい)と、第2画像取得部104により出力された第2画像とを重畳した画像を生成し、生成した画像を患者Pの位置合わせを行った結果として表示装置に表示させる。
【0174】
ユーザーインターフェース部130が備える入力装置は、キーボードなどの入力デバイス、マウスやペン型のスタイラスなどのポインティングデバイス、ボタンやスイッチ類などの操作デバイスである。ユーザーインターフェース部130は、ユーザーによる入力装置の操作、より具体的には、患者Pの位置や姿勢の微調整の操作を受け付け、受け付けた操作が表す情報を移動量計算部120が備えるレジストレーション部124に出力する。ユーザーインターフェース部130が受け付ける操作は、例えば、三次元空間内の領域を指定するパラメータの設定や、コスト関数におけるパラメータの設定であってもよい。ユーザーインターフェース部130が受け付ける操作は、例えば、方向取得部106が取得する治療室内の方向を設定する操作であってもよい。この場合、ユーザーインターフェース部130は、受け付けた操作が表す情報を方向取得部106に出力する。
【0175】
ユーザーインターフェース部130は、入力装置として押圧センサを備え、表示装置と組み合わせたタッチパネルとして構成されてもよい。この場合、ユーザーインターフェース部130は、表示装置に表示している画像の上で行ったユーザーの各種のタッチ(タップやフリックなど)操作を押圧センサが検出して受け付け、受け付けたユーザーの入力操作が表す情報をレジストレーション部124(あるいは方向取得部106)に出力する。
【0176】
ここで、ユーザーインターフェース部130における画像の表示および操作の入力について説明する。近似画像(第1画像であってもよい)および第2画像は、三次元の画像であるため、二次元の表示を行う表示装置には直接表示させることができない。そこで、ユーザーインターフェース部130は、近似画像と第2画像とのそれぞれに対応する1ないし複数の断面画像を生成して表示装置に表示させる。このとき、ユーザーインターフェース部130は、近似画像と第2画像とのそれぞれの比較を目視にて行いやすくするために、それぞれの断面画像の差分画像を表示させる。ユーザーインターフェース部130は、それぞれの断面画像の差分値の大小に応じて色分けをしたカラーマップ表示をさせてもよい。ユーザーインターフェース部130は、PTVやPRVなどの輪郭を重畳して表示させてもよい。ユーザーインターフェース部130は、PTVやPRVごとのコスト関数の値を情報として表示させてもよい。これにより、ユーザーは、表示装置に表示された近似画像と第2画像とのそれぞれの断面画像を確認し、近似画像と第2画像とのずれの判定、つまり、患者Pの位置や姿勢を微調整するか否かを判断することができる。ユーザーが入力装置を操作して患者Pの位置や姿勢を微調整すると、ユーザーインターフェース部130は、入力装置によって入力された微調整の調整値を表す情報を、レジストレーション部124に出力する。これにより、レジストレーション部124は、ユーザーインターフェース部130により入力された調整値を反映した移動量信号を寝台制御部14に出力する。寝台制御部14は、移動量計算部120が備えるレジストレーション部124により出力された移動量信号に応じて、現在の患者Pの体位がユーザーにより微調整された体位になるように寝台12を移動させる。
【0177】
ユーザーインターフェース部130が表示装置に表示させる画像の一例について説明する。
図9は、第4の実施形態の医用画像処理装置100aが備えるユーザーインターフェース部130が表示装置に表示させる表示画面の一例を示す図である。
図9には、ユーザーインターフェース部130が画像を表示させた表示装置の画面IMの一例を示している。
図9では、画面IMの左右に、異なる方向(例えば、患者Pの左右)から見た場合の画像IMLと画像IMRとを表示させている。画像IMLと画像IMRとのそれぞれは、近似画像の断面画像PI1と第2画像の断面画像PI2とのそれぞれの断面画像を重畳した画像である。画像IMLと画像IMRとのそれぞれには、対応する方向から見たときの腫瘍Fも重畳して表示させている。さらに、画像IMLと画像IMRとのそれぞれには、断面画像PI1と断面画像PI2とがずれている箇所(つまり、患者Pの体表面や体内の組織の輪郭部分がずれている箇所)を色づけすることによって、患者Pの現在の体位と治療計画段階の患者Pの体位とのずれを強調している(目立たせている)。
【0178】
ユーザーは、画面IM内の画像IMLと画像IMRとのそれぞれを見ることによって、患者Pの現在の体位と治療計画段階の患者Pの体位とのずれを容易に確認することができる。そして、ユーザーは、画像IMLと画像IMRとのそれぞれによって、患者Pの現在の体位と治療計画段階の患者Pの体位とのずれを目視で確認しながら、入力装置に対して患者Pの位置や姿勢を微調整する操作をすることができる。このとき、ユーザーインターフェース部130は、ユーザーにより操作された微調整を仮想的に画像IMLと画像IMRとのそれぞれに反映させた新たな画像を生成して、現在表示させている画像IMLと画像IMRとのそれぞれを逐次更新させてもよい。つまり、ユーザーインターフェース部130は、ユーザーによる微調整の結果を逐次提示してもよい。これにより、ユーザーは、画像IMLと画像IMRとのそれぞれにおいて強調された(目立たせた)断面画像PI1と断面画像PI2とがずれている箇所が微調整によって解消されていく様子を逐次確認しながら、微調整の操作をすることができる。そして、ユーザーは、断面画像PI1と断面画像PI2とがずれている箇所がなくなる、あるいは許容範囲となったときに、治療ビームBを患者Pの体内の腫瘍に照射して、放射線治療を行うことができる。
【0179】
医用画像処理装置100aにおける移動量計算処理は、ユーザーインターフェース部130における表示や入力があることが異なる以外は、
図3に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100における移動量計算処理と同様である。従って、医用画像処理装置100aにおける移動量計算処理の流れに関する詳細な説明は省略する。
【0180】
このような構成および動作によって、医用画像処理装置100aは、治療計画段階の患者Pの位置と現在の患者Pの位置との位置合わせを行った結果を、ユーザーインターフェース部130が備える表示装置に表示させることによって、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aのユーザー(医師など)に提示する。これにより、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aのユーザーは、治療計画段階の患者Pの位置と現在の患者Pの位置とのずれを目視で確認し、現在のPの体位を微調整するか否かを判断することができる。そして、ユーザーは、患者Pの体位を微調整すると判断した場合、表示装置に表示された患者Pの体位のずれを目視で確認しながら、ユーザーインターフェース部130を構成する入力装置を操作して、表示装置に表示された近似画像と第2画像とのそれぞれの断面画像の上で、患者Pの位置や姿勢を微調整する操作をすることができる。そして、医用画像処理装置100aは、ユーザーにより微調整された調整値を反映した最終的な移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、寝台制御部14は、医用画像処理装置100aにより出力された移動量信号に応じて、現在の患者Pの体位がユーザーにより微調整された体位になるように寝台12を移動させる。つまり、これにより、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aでは、患者Pの体位が放射線治療を行うのに適した体位となったときに、治療計画において計画したエネルギー量の治療ビームBを腫瘍に照射することができ、計画通りに放射線治療を行うことができる。
【0181】
上述したように、第4の実施形態の医用画像処理装置100aでは、第1の実施形態の医用画像処理装置100aと同様に、寝台12の移動量を表す移動量信号を寝台制御部14に出力する。さらに、第4の実施形態の医用画像処理装置100aでは、ユーザーへの患者Pの位置合わせを行った結果の提示し、ユーザーによる患者Pの位置の微調整を受け付ける。そして、第4の実施形態の医用画像処理装置100aでは、ユーザーにより入力された微調整を反映した移動量信号を寝台制御部14に出力する。これにより、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aでは、寝台制御部14が、移動量信号に基づいて寝台12を移動させることによって、患者Pの位置がユーザーによる微調整が反映された位置に実際に移動される。これにより、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aでは、放射線治療を行うのに適したユーザーが所望する位置に現在の患者Pの位置を実際に移動させて、治療計画において計画したエネルギー量の治療ビームBを腫瘍に照射し、計画通りの放射線治療を行うことができる。
【0182】
医用画像処理装置100aでは、
図2に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100の構成に、ユーザーインターフェース部130を備える構成を示した。しかし、ユーザーインターフェース部130は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備える構成に限定されるものではなく、第2の実施形態の医用画像処理装置200や、第3の実施形態の医用画像処理装置300に備える構成であってもよい。さらに、ユーザーインターフェース部130は、医用画像処理装置の構成要素として備える構成に限定されるものではなく、治療システムが備える構成、つまり、医用画像処理装置の外部に備える構成であってもよい。このような場合の構成、動作、処理、および計算方法は、上述した医用画像処理装置100aの構成、動作、処理、および計算方法と等価なものになるように構成すればよい。従って、ユーザーインターフェース部130を備える他の医用画像処理装置、あるいは医用画像処理装置を備えた治療システムの構成、動作、処理、および計算方法に関する詳細な説明は省略する。
【0183】
上記説明したように、医用画像処理装置100aは、レジストレーション部124が計算したずれ量を確認するための画像を少なくとも表示する表示装置を備えたユーザーインターフェース部130、をさらに備える。これによって、医用画像処理装置100aは、治療計画段階の患者Pの位置と現在の患者Pの位置との位置合わせを行った結果を、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aのユーザー(医師など)に提示することができる。
【0184】
上記説明したように、医用画像処理装置100aにおいて、ユーザーインターフェース部130は、表示装置に表示された画像に基づいて設定される移動量を調整するための調整値を入力する入力装置、をさらに備え、レジストレーション部124は、入力装置に入力された調整値で移動量を調整した移動量信号を出力してもよい。これによって、医用画像処理装置100aは、医用画像処理装置100aを備えた治療システム1aのユーザー(医師など)によって入力された調整値を反映した移動量信号を出力することができる。
【0185】
第2の実施形態、第3の実施形態、および第4の実施形態では、第1の実施形態の医用画像処理装置100にそれぞれの実施形態において特徴となる構成要素を追加した構成を説明した。しかし、それぞれの実施形態において特徴となる構成要素は排他的なものではなく、併存可能である。例えば、第2の実施形態の医用画像処理装置200が備える積分画像計算部221と、第3の実施形態の医用画像処理装置300が備える領域取得部308および動き推定部323と、第4の実施形態の医用画像処理装置100aが備えるユーザーインターフェース部130とは、一つの医用画像処理装置に備えられてもよい。この場合、医用画像処理装置が備えるその他の構成要素は、適宜変更することによって、それぞれの構成要素に対応する機能を実現する。
【0186】
各実施形態では、近似画像計算部122(あるいは、近似画像計算部222)が、近似画像を計算する元の画像が第1画像(あるいは、第1画像に対応する第1積分画像)である場合について説明した。言い換えれば、レジストレーション部124(あるいは、レジストレーション部324)がずれ量を計算する基準の画像が第2画像(あるいは、第2画像に対応する第2積分画像)である場合について説明した。しかし、近似画像を計算する元の画像と、ずれ量を計算する基準の画像とは、互いに入れ替えられてもよい。つまり、近似画像計算部122(あるいは、近似画像計算部222)が、第2画像(あるいは、第2画像に対応する第2積分画像)を移動(並進および回転)させた近似画像を計算し、レジストレーション部124(あるいは、レジストレーション部324)が、第1画像(あるいは、第1画像に対応する第1積分画像)を基準としてずれ量を計算してもよい。この場合の各実施形態の医用画像処理装置の構成、動作、処理、および計算方法は、上述した各実施形態の医用画像処理装置100の構成、動作、処理、および計算方法と等価なものになるように構成すればよい。
【0187】
各実施形態では、医用画像処理装置と治療装置10とのそれぞれが別体の装置である構成を説明した。しかし、医用画像処理装置と治療装置10とは、別体の装置である構成に限定されるものではなく、医用画像処理装置と治療装置10とが一体になった構成であってもよい。
【0188】
上記説明したように、例えば、医用画像処理装置100が実行する医用画像処理方法は、コンピュータ(プロセッサなど)が、患者Pの体内を撮影した三次元の第1画像(例えば、CT画像)を取得し、第1画像とは異なる時刻に撮影された患者Pの体内の三次元の第2画像(例えば、CT画像)を取得し、治療室における患者Pへの治療ビームBの照射方向に関する方向情報を取得し、第1画像に設定された治療ビームBの経路と照射方向に関する方向情報とに基づいて、第2画像に写された患者Pの位置を第1画像に写された患者Pの位置に合わせるために移動させる第2画像の移動量を表す移動量信号を出力する、医用画像処理方法である。
【0189】
上記説明したように、例えば、医用画像処理装置100が実行するプログラムは、コンピュータ(プロセッサなど)に、患者Pの体内を撮影した三次元の第1画像(例えば、CT画像)を取得させ、第1画像とは異なる時刻に撮影された患者Pの体内の三次元の第2画像(例えば、CT画像)を取得させ、治療室における患者Pへの治療ビームBの照射方向に関する方向情報を取得させ、第1画像に設定された治療ビームBの経路と照射方向に関する方向情報とに基づいて、第2画像に写された患者Pの位置を第1画像に写された患者Pの位置に合わせるために移動させる第2画像の移動量を表す移動量信号を出力させる、プログラムである。
【0190】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、患者(P)の体内を撮影した三次元の第1画像を取得する第1画像取得部(102)と、第1画像とは異なる時刻に撮影された患者(P)の体内の三次元の第2画像を取得する第2画像取得部(104)と、治療室における患者(P)への放射線(治療ビームB)の照射方向に関する情報(方向情報)を取得する方向取得部(106)と、第1画像に設定された放射線(治療ビームB)の経路と照射方向に関する情報(方向情報)とに基づいて、第2画像に写された患者(P)の位置を第1画像に写された患者(P)の位置に合わせるために移動させる第2画像の移動量を表す移動量信号を出力する移動量計算部(120)と、を持つことにより、治療計画において計画したエネルギー量の放射線(治療ビームB)を腫瘍(病巣)に照射することができるように、寝台(12)に固定された患者(P)を移動させることができる。
【0191】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0192】
1,1a,2,3・・・治療システム、10・・・治療装置、12・・・寝台、14・・・寝台制御部、16・・・CT撮影装置、18・・・治療ビーム照射門、18-1・・・コリメータ、100,100a,200,300・・・医用画像処理装置、102・・・第1画像取得部、104・・・第2画像取得部、106・・・方向取得部、120,220,320・・・移動量計算部、122,222・・・近似画像計算部、124,324・・・レジストレーション部、130・・・ユーザーインターフェース部、221・・・積分画像計算部、221-1・・・第1積分画像計算部、221-2・・・第2積分画像計算部、308・・・領域取得部、323・・・動き推定部