(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】制御装置、クレーン、及びクレーンの制御方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/12 20060101AFI20240703BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B66C23/12
B66C23/00 C
(21)【出願番号】P 2023517193
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015505
(87)【国際公開番号】W WO2022230562
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2021075171
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】菅井 芳朗
(72)【発明者】
【氏名】谷住 和也
(72)【発明者】
【氏名】市川 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 真児
(72)【発明者】
【氏名】多田野 有司
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206351(JP,A)
【文献】特開2016-120996(JP,A)
【文献】特開平08-073183(JP,A)
【文献】米国特許第05961563(US,A)
【文献】Ying SHEN, 外3名,旋回クレーンの起伏・旋回・巻上げ同時動作による直線搬送方式での荷物の最短時間制御,計測自動制御学会産業論文集,第3巻第10号,日本,公益社団法人計測自動制御学会,2004年,p.70-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム及びウインチの動作を制御して始点から終点まで荷物を搬送するクレーンの制御装置であって、
前記始点の位置情報及び前記終点の位置情報を取得する取得部と、
前記始点と前記終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表される前記ブームの先端部の水平軌道を、前記荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて生成する水平軌道生成部と、
前記水平軌道に沿うように前記荷物を搬送するための前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの回転動作の軌道を生成する動作軌道生成部と、
前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する動作制御部と、を備
え、
前記水平軌道は、前記始点から前記終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされ、
前記動作軌道生成部は、前記定速域の間における前記荷物の高さを変更可能に、前記ウインチの回転動作の軌道を作成する、
制御装置。
【請求項2】
ブーム及びウインチの動作を制御して始点から終点まで荷物を搬送するクレーンの制御装置であって、
前記始点の位置情報及び前記終点の位置情報を取得する取得部と、
前記始点と前記終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表される前記ブームの先端部の水平軌道を、前記荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて生成する水平軌道生成部と、
前記水平軌道に沿うように前記荷物を搬送するための前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの回転動作の軌道を生成する動作軌道生成部と、
前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する動作制御部と、を備
え、
前記水平軌道は、前記始点から前記終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされ、
前記動作軌道生成部は、前記加速域の間に、前記荷物を一定の高さで搬送し、前記定速域の間に、前記始点と前記終点との高さの差だけ前記荷物を高さ方向に搬送し、前記減速域の間に、前記荷物を一定の高さで搬送するように前記ウインチの回転動作の軌道を作成する、
制御装置。
【請求項3】
ブーム及びウインチの動作を制御して始点から終点まで荷物を搬送するクレーンの制御装置であって、
前記始点の位置情報及び前記終点の位置情報を取得する取得部と、
前記始点と前記終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表される前記ブームの先端部の水平軌道を、前記荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて生成する水平軌道生成部と、
前記水平軌道に沿うように前記荷物を搬送するための前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの回転動作の軌道を生成する動作軌道生成部と、
前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する動作制御部と、を備
え、
前記水平軌道は、前記始点から前記終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされ、
前記動作軌道生成部は、前記加速域と前記定速域と前記減速域との間に、前記ウインチの回転動作を行わないように前記ウインチの回転動作の軌道を作成し、
前記動作制御部は、前記加速域の前に、前記始点と前記終点との高さの差だけ前記荷物を高さ方向に搬送するように前記ウインチを動作させる、
制御装置。
【請求項4】
前記ブームの動作の軌道は、前記ブームの旋回動作の軌道、及び、前記ブームの起伏動作の軌道を含む、請求項1
~3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記水平軌道生成部は、前記水平軌道を時間の関数として生成する、請求項1
~3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
ブーム及びウインチの動作を制御して始点から終点まで荷物を搬送するクレーンであって、
請求項1
~3の何れか一項に記載の制御装置を搭載した
クレーン。
【請求項7】
ブーム及びウインチの動作により始点から終点まで荷物を搬送するクレーンに搭載されたコンピュータにおいて実行されるクレーンの制御方法であって、
前記始点の位置情報及び前記終点の位置情報を取得し、
前記始点と前記終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表される前記ブームの先端部の水平軌道を、前記荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて作成し、
前記水平軌道に沿うように前記荷物を搬送するための前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの回転動作の軌道を生成し、
前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する
クレーンの制御方法において、
前記水平軌道は、前記始点から前記終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされ、
前記ウインチの回転動作の軌道は、前記定速域の間における前記荷物の高さを変更可能な軌道を含む、
クレーンの制御方法。
【請求項8】
ブーム及びウインチの動作により始点から終点まで荷物を搬送するクレーンに搭載されたコンピュータにおいて実行されるクレーンの制御方法であって、
前記始点の位置情報及び前記終点の位置情報を取得し、
前記始点と前記終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表される前記ブームの先端部の水平軌道を、前記荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて作成し、
前記水平軌道に沿うように前記荷物を搬送するための前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの回転動作の軌道を生成し、
前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する
クレーンの制御方法において、
前記水平軌道は、前記始点から前記終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされ、
前記ウインチの回転動作の軌道は、前記加速域の間に、前記荷物を一定の高さで搬送し、前記定速域の間に、前記始点と前記終点との高さの差だけ前記荷物を高さ方向に搬送し、前記減速域の間に、前記荷物を一定の高さで搬送するような軌道である、
クレーンの制御方法。
【請求項9】
ブーム及びウインチの動作により始点から終点まで荷物を搬送するクレーンに搭載されたコンピュータにおいて実行されるクレーンの制御方法であって、
前記始点の位置情報及び前記終点の位置情報を取得し、
前記始点と前記終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表される前記ブームの先端部の水平軌道を、前記荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて作成し、
前記水平軌道に沿うように前記荷物を搬送するための前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの回転動作の軌道を生成し、
前記ブームの動作の軌道及び前記ウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する
クレーンの制御方法において、
前記水平軌道は、前記始点から前記終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされ、
前記ウインチの回転動作の軌道は、前記加速域と前記定速域と前記減速域との間に、前記ウインチの回転動作を行わないような軌道を含み、
前記加速域の前に、前記始点と前記終点との高さの差だけ前記荷物を高さ方向に搬送するように前記ウインチを動作させる、
クレーンの制御方法。
【請求項10】
前記ブームの動作の軌道は、前記ブームの旋回動作の軌道、及び、前記ブームの起伏動作の軌道を含む、請求項
7~9
の何れか一項に記載のクレーンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、クレーンの制御方法、及びクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、移動式クレーン及びタワークレーン等のクレーンが知られている。クレーンは、フックに吊り下げられた荷物を搬送可能である。
【0003】
ところで、荷物を平面視直線状に搬送するクレーンの制御方法が知られている(特許文献1参照)。かかるクレーンの制御方法では、直線変換搬送モデルを用いて荷物の振れ角の加速度が0になるような仮想起伏角加速度を算出し、仮想起伏角加速度を用いた入力逆変換によりブームの旋回角加速度及び起伏角加速度を算出する。
【0004】
そして、旋回角加速度及び起伏角加速度に基づいてブームの旋回動作及び起伏動作を制御することにより、終点の位置まで荷振れを抑制して荷物を搬送する。
【0005】
しかし、かかるクレーンの制御方法は、ワイヤロープのロープ長の変化及び荷物の高さの変化を制御対象に含まない。そのため、特に荷物の搬送途中にロープ長が変化した場合、終点の位置における荷振れの抑制効果が小さくなる。
【0006】
そこで、制御対象としてロープ長の変化及び荷物の高さの変化を含み、平面視直線状に搬送する荷物の終点の位置における荷振れを抑制することができるクレーンの制御方法及びクレーンが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ロープ長の変化及び荷物の高さの変化を考慮しつつ、搬送する荷物の終点の位置における荷振れを抑制できるクレーンの制御方法及びクレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御装置の一態様は、
ブーム及びウインチの動作を制御して始点から終点まで荷物を搬送するクレーンの制御装置であって、
始点の位置情報及び終点の位置情報を取得する取得部と、
始点と終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表されるブームの先端部の水平軌道を、荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて生成する水平軌道生成部と、
水平軌道に沿うように荷物を搬送するためのブームの動作の軌道及びウインチの回転動作の軌道を生成する動作軌道生成部と、
ブームの動作の軌道及びウインチの動作の軌道に基づいて、ブーム及びウインチの動作を制御する動作制御部と、を備える。
上述のような制御装置を実施する場合に、好ましくは、水平軌道は、始点から終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされてよい。
そして、動作軌道生成部は、定速域の間における荷物の高さを変更可能に、ウインチの回転動作の軌道を作成してよい。
【0010】
本発明に係るクレーンの一態様は、
ブーム及びウインチの動作を制御して始点から終点まで荷物を搬送するクレーンであって、
上述の制御装置が搭載されている。
【0011】
本発明に係るクレーンの制御方法の一態様は、
ブーム及びウインチの動作により始点から終点まで荷物を搬送するクレーンに搭載されたコンピュータにおいて実行されるクレーンの制御方法であって、
始点の位置情報及び終点の位置情報を取得し、
始点と終点とを結ぶ直線の水平方向成分により表されるブームの先端部の水平軌道を、荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて作成し、
水平軌道に沿うように荷物を搬送するためのブームの動作の軌道及びウインチの回転動作の軌道を生成し、
ブームの動作の軌道及びウインチの動作の軌道に基づいて、前記ブーム及び前記ウインチの動作を制御する。
上述のようなクレーンの制御方法を実施する場合に、好ましくは、水平軌道は、始点から終点に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされてよい。
又、ウインチの回転動作の軌道は、定速域の間における荷物の高さを変更可能な軌道を含んでよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御対象としてロープ長の変化及び荷物の高さの変化を含み、平面視直線状に搬送する荷物の終点の位置における荷振れを抑制することができるクレーンの制御方法及びクレーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、クレーンの制御構成を示す図である。
【
図3】
図3は、制御装置による処理の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、平面視直線状に移動するブーム先端部分の軌道を説明する図である。
【
図5】
図5は、ブーム先端部分を簡略化したモデルを示す図である。
【
図6】
図6は、一次フィルタ型の重み関数を説明する図である。
【
図7】
図7は、ブーム先端部分の軌道を説明する図である。
【
図8】
図8は、荷振れの周期に乗じる定数毎のブーム先端部分の速度波形を示す図である。
【
図9】
図9は、O-XY平面に対するブーム先端部分の射影の軌道を示す図である。
【
図11】
図11は、O-XY平面に対するブーム先端部分の射影の軌道を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、X方向、Y方向、及びXY方向のブーム先端部分の軌道を示す図。
【
図12B】
図12Bは、X方向、Y方向、及びXY方向のブーム先端部分の軌道速度を示す図である。
【
図12C】
図12Cは、X方向、Y方向、及びXY方向のブーム先端部分の軌道加速度を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、旋回角度、旋回角速度、及び旋回角加速度の軌道を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、起伏角度、起伏角速度、及び起伏角加速度の起動を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、ブーム先端部分とフックの高さ方向(Z方向)の軌道を示す図である。
【
図16A】
図16Aは、ブーム先端部分とフックの高さ方向(Z方向)の軌道を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願に開示する技術的思想は、以下に説明する実施形態のほか、他の実施形態にも適用できる。
【0015】
まず、
図1を用いて、第一実施形態に係るクレーン1について説明する。なお、本願においては、クレーン1を移動式クレーンとして説明する。ただし、本発明は、制御装置によってブームの旋回動作及び起伏動作とウインチの回転動作とを制御して、フックに吊り下げられた荷物を搬送する他種のクレーンに対しても適用できる。例えば、他種のクレーンは、タワークレーンである。
【0016】
図1に示すように、クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
【0017】
走行体2は、左右一対の前輪4と後輪5とを備えている。また、走行体2は、荷物Bの搬送作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。なお、走行体2は、アクチュエータによって、その上部に支持する旋回体3を旋回自在としている。
【0018】
旋回体3は、ブーム7を支持している。ブーム7は、旋回用アクチュエータである旋回用油圧モータ51の動力に基づいて旋回自在である(矢印A1参照)。また、ブーム7は、伸縮用アクチュエータである伸縮用油圧シリンダ52の動力に基づいて伸縮自在でもある(矢印A2参照)。更に、ブーム7は、起伏用アクチュエータである起伏用油圧シリンダ53の動力に基づいて起伏自在である(矢印A3参照)。
【0019】
加えて、ブーム7には、ワイヤロープ8が架け渡されている。ブーム7の先端部分11(以下、「ブーム先端部分11」という)から垂下するワイヤロープ8には、フック9が取り付けられている。
【0020】
また、ブーム7の基端側近傍には、ウインチ10が設けられている。ウインチ10は、巻回用アクチュエータである巻回用油圧モータ54と一体的に構成されており、巻回用油圧モータ54の動力に基づいて、ワイヤロープ8の繰り入れ及び繰り出しを行う。そのため、フック9は、昇降自在である(矢印A4参照)。
【0021】
次に、
図2を用いて、クレーン1の制御構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、クレーン1は、制御装置20を備えている。制御装置20は、クレーン1に搭載されたコンピュータであって、実体的には、CPU、ROM、RAM、及びHDD等がバスで接続されている。又は、制御装置20は、ワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置20には、各種操作具(図示されていない)が接続されている。また、制御装置20には、各種バルブ31~34が接続されている。
【0023】
更に、制御装置20には、吊荷重センサ45のほか、各種センサ41~44が接続されている。なお、吊荷重センサ45は、荷物Bの重さを検出する。そのため、制御装置20は、荷物Bの重さを認識できる。また、制御装置20は、荷物Bの重さに基づいて、ブーム7の縦方向の撓み量を算出する。
【0024】
上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって旋回自在である(
図1における矢印A1参照)。本願においては、かかるアクチュエータを旋回用油圧モータ51と定義する(
図1参照)。
【0025】
旋回用油圧モータ51は、方向制御弁である旋回用バルブ31によって適宜に稼動される。つまり、旋回用油圧モータ51は、旋回用バルブ31が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。
【0026】
なお、旋回用バルブ31は、オペレータによる旋回操作具(図示されていない)の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の旋回角度は、旋回角センサ41によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の旋回角度(例えば、走行体2の前進方向に対するブーム7の時計回り方向の角度)を認識できる。
【0027】
また、上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって伸縮自在である(
図1における矢印A2参照)。本願においては、かかるアクチュエータを伸縮用油圧シリンダ52と定義する(
図1参照)。
【0028】
伸縮用油圧シリンダ52は、方向制御弁である伸縮用バルブ32によって適宜に稼動される。つまり、伸縮用油圧シリンダ52は、伸縮用バルブ32が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。
【0029】
なお、伸縮用バルブ32は、オペレータによる伸縮操作具(図示されていない)の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7のブーム長さは、ブーム長さセンサ42によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7のブーム長さを認識できる。
【0030】
更に、上述したように、ブーム7は、アクチュエータによって起伏自在である(
図1における矢印A3参照)。本願においては、かかるアクチュエータを起伏用油圧シリンダ53と定義する(
図1参照)。
【0031】
起伏用油圧シリンダ53は、方向制御弁である起伏用バルブ33によって適宜に稼動される。つまり、起伏用油圧シリンダ53は、起伏用バルブ33が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。
【0032】
なお、起伏用バルブ33は、オペレータによる起伏操作具(図示されていない)の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の起伏角度は、起伏角センサ43によって検出される。そのため、制御装置20は、ブーム7の起伏角度(水平方向とブーム7のなす角度)を認識できる。
【0033】
加えて、上述したように、フック9は、アクチュエータによって昇降自在である(
図1における矢印A4参照)。本願においては、かかるアクチュエータを巻回用油圧モータ54と定義する(
図1参照)。
【0034】
巻回用油圧モータ54は、方向制御弁である巻回用バルブ34によって適宜に稼動される。つまり、巻回用油圧モータ54は、巻回用バルブ34が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。
【0035】
なお、巻回用バルブ34は、オペレータによる巻回操作具(図示されていない)の操作に基づいて稼動される。また、繰り出されたワイヤロープ8の長さ(以下、「繰出長さ」という)は、ロープ長さセンサ44によって検出される。そのため、制御装置20は、ワイヤロープ8の繰出長さを認識することができる。
【0036】
なお、制御装置20は、起伏角度及びブーム長さに基づいて、旋回体3の旋回中心とブーム先端部分11との間の水平方向の距離である作業半径を算出できる。また、制御装置20は、ブーム長さ及び繰出長さに基づいて、ブーム先端部分11から荷物Bまでの長さであるロープ長を算出できる。
【0037】
具体的には、制御装置20は、例えば、ブーム長さ及び繰出長さに基づいて算出されるブーム先端部分11からフック9までの長さに、フック9から荷物Bの重心までの長さに相当する予め定められた定数を加算することによって、ロープ長を算出できる。
【0038】
また、制御装置20は、例えば、ブーム長さ及び起伏角度に基づいて算出される地面からブーム先端部分11までの高さから、ロープ長を減算することによって、地面から荷物Bの重心までの高さを算出できる。
【0039】
加えて、制御装置20には、操作部46が接続されている。
【0040】
操作部46は、クレーン1を稼働させるためのオペレータの操作を受け付けるものである。操作部46は、上述の旋回操作具、伸縮操作具、起伏操作具、及び巻回操作具を備える。
【0041】
また、操作部46は、終点の位置を指定するためのインターフェースと制御開始スイッチとを備える。終点の位置を指定するインターフェースは、例えば、タッチパネル式モニタや、表示部を備える遠隔操作端末等である。
【0042】
制御開始スイッチは、荷物Bの搬送を開始するためのものである。制御装置20は、操作部46を通じて受け付けたオペレータの操作に基づいて、走行体2と旋回体3とを稼働させる。
【0043】
次に、
図3から
図10を用いて、クレーン1の制御方法について説明する。なお、本説明では、原点Oをクレーン1の旋回中心とするXYZ座標系を規定している。
【0044】
図3に示すように、本発明の第一実施形態に係るクレーン1の制御方法は、位置取得工程K1、位置軌道作成工程K2、動作軌道作成工程K3、搬送工程K4を実施する。このような各工程の主体は、制御装置20である。
【0045】
[位置取得工程]
制御装置20は、荷物Bの搬送を開始する始点の位置と、荷物Bの搬送を終了する終点の位置を取得する。すなわち、制御装置20は、荷物Bの搬送を開始する始点の位置情報と荷物Bの搬送を終了する終点の位置情報を取得する取得部201(
図2参照)を有する。
【0046】
ここで、始点の位置は、搬送開始時の荷物Bの位置であり、本願において、搬送開始時の旋回角度、作業半径、ロープ長から示されるものである。終点の位置は、搬送終了時の荷物Bの位置であり、本実施形態において、搬送終了時の旋回角度、作業半径、ロープ長から示されるものである。
【0047】
制御装置20は、始点の位置の取得に際して、例えば、旋回角度、ブーム長さ、起伏角度、繰出長さをセンサ41~44から取得する。そして、制御装置20は、取得したブーム長さ及び起伏角度に基づいて、搬送開始時における作業半径を算出する。更に、制御装置20は、ブーム長さ及び繰出長さに基づいてロープ長を算出する。
【0048】
制御装置20は、終点の位置の取得に際して、例えば、オペレータが入力する旋回角度、作業半径、ロープ長を、操作部46から取得する。
【0049】
[位置軌道作成工程]
制御装置20は、ブーム先端部分11の軌道を、荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて作成する。
図4に示すように、ブーム先端部分11の軌道は、加速域と定速域と減速域とから順に構成され、平面視直線状に移動するものである。換言すれば、ブーム先端部分11の軌道は、始点P1と終点P2とを結ぶ直線の水平成分により表される水平軌道である。水平軌道は、始点P1から終点P2に向かって、加速域、定速域、減速域の順に区分けされている。
【0050】
すなわち、制御装置20は、始点P1と終点P2とを結ぶ直線の水平方向成分により表されるブームの先端部の水平軌道を、荷物の荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いて生成する水平軌道生成部202(
図2参照)を有する。
【0051】
具体的には、まず、制御装置20は、始点P1と終点P2の高さの差である△Hを算出する。そして、制御装置20は、O-XY平面に対するブーム先端部分11の射影が直線状に動くように、荷振れの周波数重みを考慮した最適制御理論を用いてXY方向のブーム先端部分11の軌道を作成する。
【0052】
制御装置20は、本実施形態における最適制御理論において、加速域では始点P1におけるロープ長を用い、減速域では終点P2におけるロープ長を用いる。
【0053】
以下では、最適制御理論について詳しく説明する。
図5に示すように、本願では、ブーム7の起伏動作によるブーム先端部分11の高さの変化を無視し、簡略化したモデルを扱う。
【0054】
即ち、本願では、ブーム先端部分11を天井クレーンモデルとして扱う。このモデルの運動方程式は、数1となる。数1のsは、ブーム先端部分11の変位である。φ
siは、荷物Bの振れ角である。l
iは、ロープ長である。なお、
図5においては、ブーム先端部分11の移動開始位置を原点Oとしている。また、荷物Bの振れ角は、鉛直方向とワイヤロープ8のなす角である。
【0055】
【0056】
ここで、ωniは、数2で示される。gは、重力加速度である。
【0057】
【0058】
また、本願では、荷振れの周波数重みを考慮した評価関数を扱う。評価関数は、数3となる。
【0059】
【0060】
ここで、v(t)は、数4で示される。数4のsは、ラプラス演算子である。
【0061】
【0062】
V(jω)は、数5で示される。数5のブーム先端部分11の変位Sは、制御入力であり、W(jω)を重み関数とする。S(jω)は、S(t)のフーリエ変換である。
【0063】
【0064】
また、重み関数W(jω)は、例えば、1次フィルタ型を扱う。重み関数W(jω)は、数6となる。なお、重み関数W(jω)は、1次フィルタ型ではなく、2次フィルタ型でもよい。重み関数W(jω)を2次フィルタ型にすることにより、加速開始時及び加速終了時のブーム先端部分11の加速度をより小さくすることができる。
【0065】
【0066】
ここで、αは、数7で示される。
【0067】
【0068】
βは、数8で示される。
【0069】
【0070】
図6は、横軸を周波数ω、縦軸を重み関数W(jω)として、数6~数8を表したボード線図である。重みγは、ω
c以上となるように設計する。また、高周波数域に重みをつけることにより、荷振れの高周波数成分の発生を抑制することができる。
【0071】
数5~数8を用いて、数1の運動方程式は数9のように書き換えられる。
【0072】
【0073】
ここで、フィルタの状態量zは、数10となる。
【0074】
【0075】
数9、数10を拘束条件として、数3の評価関数を最小化する関数v(t)、z(t)、S(t)をオイラーの公式を使って算出すると、ブーム先端部分11の変位s(t)は、数11となる。また、荷物Bの振れ角φsi(t)は、数12となる。
【0076】
【0077】
【0078】
数11、数12のCk(k=1~8)は、ラグランジュの未定乗数である。数13に示すように、Ck(k=1~8)は、時間0の初期条件と終了時間Tcの終端条件を与えることによって特定される。具体的には、Ck(k=1~8)は、8個の未定乗数を未知数とした8元連立方程式を解くことにより算出される。Vは、定速域におけるブーム先端部分11の速度である。
【0079】
【0080】
なお、
図7に示すように、減速域のブーム先端部分11の軌道は、加速域の逆操作を行うことで荷物Bが搬送される軌道となる。即ち、減速域のブーム先端部分11の軌道速度は、加速域と同様に算出し、t=T
c(
図7の横軸の1を通る鉛直線)に対して線対称にすることにより、算出することができる。また、定速域の時間を変更することにより、ブーム先端部分11の移動距離を調整することができる。
【0081】
図8は、荷振れの周期Tに定数を乗じた値を用いて、数11により算出したブーム先端部分11の速度波形である。荷振れの周期Tは、数2により算出される。定数は、例えば、0.5,0.6,0.8,1.0を用いている。
【0082】
加速域及び減速域において、算出した速度波形の速度でブーム先端部分11を移動させることにより、加速終了後又は減速終了後に荷振れのない状態とすることができる。即ち、加速域と減速域を短くすることにより、より短い時間で荷振れのない挙動を実現することができる。
【0083】
また、加速終了後に荷振れのない状態とすることにより、定速域における力の平衡点がブーム先端部分11の鉛直方向(鉛直下方)に位置するため、荷振れを抑制して荷物Bの高さを自由に変更することができる。
【0084】
なお、上述の定数は、アクチュエータが応答可能な範囲で設定可能であり、油圧アクチュエータ(例えば、旋回用油圧モータ51及び起伏用油圧シリンダ53)を想定した場合、0.5以上を設定可能である。
【0085】
[動作軌道作成工程]
制御装置20は、作成した軌道に沿ってブーム先端部分11を移動させるための、ブーム7の旋回動作及び起伏動作の軌道をそれぞれ作成するとともに、荷物Bを終点P2の位置に搬送するための、ウインチ10の回転動作の軌道を作成する。
【0086】
すなわち、制御装置20は、水平軌道生成部202により生成されたブームの先端部の水平軌道に沿うように荷物を搬送するためのブームの動作の軌道及びウインチの回転動作の軌道を生成する動作軌道生成部203(
図2参照)を有する。
【0087】
まず、ブーム7の旋回動作及び起伏動作の軌道の作成について説明する。
図9に示すように、ブーム先端部分11のO-XY平面に対する射影は、始点P1(γ
0,0)と終点P2(γ
Tcosθ
T,γ
Tsinθ
T)を結ぶ線分上を移動する。
【0088】
線分上の点P3(X,Y)は、幾何学関係により数14となる。γ0は、始点P1における作業半径である。γTは、終点P2における作業半径である。θTは、始点P1から終点P2までの旋回角度である。
【0089】
【0090】
ブーム長さをL、ブーム根本支点から旋回中心までの水平長さをEとすると、ブーム7の起伏角度Ψ及び旋回角度Θは、数15となる。制御装置20は、数15により算出される起伏角度Ψ及び旋回角度Θでブーム7が起伏動作及び起伏動作するように、ブーム7の起伏動作及び起伏動作の軌道を作成する。
【数15】
【0091】
次に、ウインチ10の回転動作の軌道の作成について説明する。制御装置20は、始点P1の位置から荷物Bの高さが一定となるように、ブーム先端部分11の高さ方向の移動速度と同じ大きさで、且つ、ブーム先端部分11の高さ方向の移動方向に対して逆方向となるロープ長速度(ウインチ速度パターン)を算出する(
図14Bの実線R1参照)。
【0092】
また、制御装置20は、定速域において、ΔHに相当するロープ長速度(台形速度パターン)を算出する(
図14Bの一点鎖線R2参照)。そして、制御装置20は、上述のウインチ速度パターンに台形速度パターンを加算する。
【0093】
制御装置20は、加算されたウインチ速度パターンでウインチ10が回転動作するように、ウインチ10の回転動作の軌道を作成する。このように、制御装置20は、加速域及び減速域では、荷物Bの高さを一定に搬送し、定速域では、始点P1と終点P2の間の高さ変化とブーム先端部分11の位置の変化を考慮して搬送することにより、高速で、終点P2の位置における荷振れのない状態を作ることができる。
【0094】
なお、荷物Bの高さが一定であるとき、
図10に示すように、ロープ長速度L
0は、幾何学関係により数16となる。起伏角速度Ψは、数15のクレーン1の起伏角度Ψを微分することにより算出される。
【0095】
【0096】
ブーム撓みによる高さ方向の変位速度をDとすると、ブーム撓みを考慮したロープ長速度L0は、数17となる。なお、ロープ長の軌道は、数16又は数17を積分することにより算出される。
【0097】
【0098】
[搬送工程]
制御装置20は、オペレータが制御開始スイッチをオンにすると、ブーム7の旋回動作及び起伏動作の軌道に追従させてブーム7を動作させるとともに、ウインチ10の回転動作の軌道に追従させてウインチ10を動作させ、荷物Bを搬送する。
【0099】
すなわち、制御装置20は、動作軌道生成部203により生成されたブームの動作の軌道及びウインチの動作の軌道に基づいて、ブーム及びウインチの動作を制御する動作制御部204(
図2参照)を有する。
【0100】
具体的には、制御装置20は、作成されたブーム7の旋回動作の軌道に追従させて、旋回用バルブ31を稼働させる。また、制御装置20は、作成されたブーム7の起伏動作の軌道に追従させて、起伏用バルブ33を稼働させる。更に、制御装置20は、作成されたウインチ10の回転動作の軌道に追従させて、巻回用油圧モータ54を稼働させる。
【0101】
[実施形態の作用効果]
図11に示すように、始点P1から終点P2まで荷物Bを搬送する場合を想定する。終点P2は、始点P1よりも高い位置にあるものとする。
【0102】
図12Aに示すように、制御装置20は、数11を用いてX方向、Y方向、及びXY方向のブーム先端部分11の軌道を算出し、更に、
図12B及び
図12Cに示すように、X方向、Y方向、及びXY方向のブーム先端部分11の軌道速度及び軌道加速度を算出する。
【0103】
図13Aに示すように、制御装置20は、数15を用いてブーム7の旋回角度を算出し、更に、ブーム7の旋回角速度及び旋回角加速度を算出する。即ち、制御装置20は、ブーム7の旋回動作の軌道を作成する。
【0104】
図13Bに示すように、制御装置20は、数15を用いてブーム7の起伏角度を算出し、更に、ブーム7の起伏角速度及び起伏角加速度を算出する。即ち、制御装置20は、ブーム7の起伏動作の軌道を作成する。
【0105】
図14A及び
図14Bに示すように、制御装置20は、加速域と定速域と減速域において、数17により荷物Bの高さを一定にするロープ長速度(ウインチ速度パターン)を算出する(点線R3参照)。
【0106】
また、制御装置20は、定速域において、ΔHに相当するロープ長速度(台形速度パターン)を算出する(
図14Bの一点鎖線R2参照、巻上方向は負号)。そして、制御装置20は、上述のウインチ速度パターンに台形速度パターンを加算しロープ長速度(
図14Bの実線R1参照)を算出する。即ち、制御装置20は、ウインチ10の回転動作の軌道を作成する。
【0107】
制御装置20は、ブーム7の旋回動作及び起伏動作の軌道に追従させてブーム7を動作させるとともに、ウインチ10の回転動作の軌道に追従させてウインチ10を動作させる。
図15A及び
図15Bに示すように、制御装置20は、搬送終了時の荷振れを抑制して荷物Bを搬送することができる。
【0108】
このように、クレーン1の制御方法において、ブーム7の旋回動作及び起伏動作に併せて、ウインチ10の回転動作が制御される。従って、制御対象としてロープ長の変化及び荷物Bの高さの変化を含み、平面視直線状に搬送する荷物Bの終点P2の位置における荷振れを抑制することができる。また、作成した軌道にアクチュエータを追従させるため、荷物Bの振れ角を検出するためのセンサが不要である。
【0109】
また、クレーン1の制御方法において、定速域における荷物Bの高さを任意に変更可能となる。従って、定速域における荷物Bを任意の高さで搬送することができる。
【0110】
更に、クレーン1の制御方法において、荷物Bが平面視直線状に搬送されるのと同時に、終点P2の位置に向かって荷物Bが高さ方向に搬送される。従って、平面視直線状に荷物Bを搬送することと高さ方向に荷物Bを搬送することを分けて行うよりも高速に荷物Bを搬送することができる。
【0111】
加えて、クレーン1の制御方法において、繰り返し計算ではなく、時間の関数(数11)により直接的に平面視の軌道が算出される。従って、平面視の軌道の計算負荷を小さくすることができる。
【0112】
次に、
図16A、
図16B、
図17A、及び
図17Bを用いて、第二実施形態に係るクレーン1の制御方法について説明する。なお、以下においては、第一実施形態に係るクレーン1の制御方法の説明で用いた名称と符号を用いることで、同じものを指すこととする。また、第一実施形態に係るクレーン1の制御方法に対して相違する部分を中心に説明する。
【0113】
[動作軌道作成工程]
制御装置20は、加速域と定速域と減速域との間に、ウインチ10の回転動作を行わないようにウインチ10の回転動作の軌道を作成する。なお、制御装置20は、本実施形態における最適制御理論において、始点P1におけるロープ長に対してΔHだけ移動させたロープ長、即ち、終点P2におけるロープ長を用いる。
【0114】
[搬送工程]
制御装置20は、加速域の前に、ΔHだけ荷物Bを高さ方向に搬送するようにウインチ10を動作させる。制御装置20は、ΔHが正である場合、ΔHだけワイヤロープ8を繰り入れ、ΔHが負である場合、ΔHだけワイヤロープ8を繰り出す。その後、制御装置20は、ロープ長が一定の状態で、ブーム7の旋回動作及び起伏動作の軌道に追従させてブーム7を動作させる。
【0115】
[実施形態の作用効果]
図16A及び
図16Bに示すように、制御装置20は、ウインチ10の回転動作を行わないウインチ速度パターンを作成する。
【0116】
制御装置20は、ブーム7の旋回動作及び起伏動作の軌道に追従させてブーム7を動作させるとともに、ウインチ10の回転動作の軌道に追従させてウインチ10を動作させる。
図17A及び
図17Bに示すように、制御装置20は定速域でロープ長を変化させる場合よりも搬送終了時の荷振れを抑制して荷物Bを搬送することができる。
【0117】
このように、クレーン1の制御方法において、ロープ長が一定の状態で平面視直線状に荷物Bが搬送されるため、理論上、終点P2の位置における荷振れを完全に抑制することができる。
【0118】
なお、以上の実施形態では、ブーム7を用いて荷物Bを搬送する場合を説明したが、ジブを用いて荷物を搬送する場合でも、同様の方法を用いて、ジブ先端部分を平面視直線状に移動させ、終点の位置における荷振れを抑制することができる。
【0119】
また、メインフックを扱った1自由度系の場合に限らず、サブフックを含めた並列2自由度系の場合でも、同様の方法を用いて、ブーム先端部分を平面視直線状に移動させ、メインフック及びサブフックを吊り下げるワイヤロープが互いに絡むことなく、高速に荷物を搬送し、終点の位置における荷振れを抑制することができる。
【0120】
更に、ブーム先端に荷物監視カメラが設けられている場合、オペレータは、荷物監視カメラが撮影した画像により周辺の状況を確認しながら、終点の位置を入力できる。
【0121】
加えて、BIM(Building Information Modeling)で設計した資材の搬送経路として、始点の位置と終点の位置を設定することにより、自動搬送を行うことができる。
【0122】
加えて、数17では、ブーム撓みを考慮したが、ウインチ10のドラム層数による繰出長さの速度変化を考慮することにより、より精度よく荷物Bの高さを一定にして、荷物Bを搬送することができる。
【0123】
最後に、発明の対象をクレーン1の制御方法を実行可能な制御装置20を備えたクレーン1とすることも考えられる。
【0124】
本クレーン1において、上述の効果と同様の効果を奏する。
【0125】
2021年4月27日出願の特願2021-075171の日本出願に含まれる明細書、図面、及び要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、種々のクレーンに適用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 クレーン
2 走行体
3 旋回体
4 前輪
5 後輪
6 アウトリガ
7 ブーム
8 ワイヤロープ
9 フック
10 ウインチ
11 ブームの先端部分(ブーム先端部分)
20 制御装置
201 取得部
202 水平軌道生成部
203 動作軌道生成部
204 動作制御部
31 旋回用バルブ
32 伸縮用バルブ
33 起伏用バルブ
34 巻回用バルブ
41 旋回角センサ
42 ブーム長さセンサ
43 起伏角センサ
44 ロープ長さセンサ
45 吊荷重センサ
46 操作部
51 旋回用油圧モータ
52 伸縮用油圧シリンダ
53 起伏用油圧シリンダ
54 巻回用油圧モータ
B 荷物
K1 位置取得工程
K2 位置軌道作成工程
K3 動作軌道作成工程
K4 搬送工程
P1 始点
P2 終点