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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】基板保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012317
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118319
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】米澤 良
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129267(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115384(WO,A1)
【文献】特開2016-114677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略板状の基板を略鉛直方向に保持する基板保持装置であって、
前記基板の鉛直方向下側に配置された下端面が当接する複数の保持ブロックと、
略鉛直方向に延設された略棒状の第1縦枠部及び第2縦枠部であって、前記基板の裏面が当接する基準面を有する第1縦枠部及び第2縦枠部と、
前記第1縦枠部及び前記第2縦枠部に設けられた複数のクランプ部であって、略水平方向に移動可能に設けられており、前記基板の鉛直方向に略沿った側面に当接して前記基板を前記基準面に押圧するクランプ部と、
を備え、
前記保持ブロックは、前記下端面に当接する上側ブロックと、前記上側ブロックの下側に設けられた下側ブロックと、前記上側ブロックと前記下側ブロックとを連結する板ばねと、を有するコンタクトブロックを有し、
前記上側ブロックは、鉛直上方向から見たときに前記上側ブロックが前記下側ブロックに完全に重なる第1状態と、鉛直上方向から見たときに前記上側ブロックが前記下側ブロックに対してずれている第2状態との間で、前記基板の厚さ方向に、前記下側ブロックに対して移動可能であり、
前記上側ブロック及び前記下側ブロックは、鉛直上方向から見たときの形状が略同一であり、
前記板ばねは、前記上側ブロック及び前記下側ブロックの鉛直方向に略沿った面であって、前記上側ブロックの移動方向に略直交する面に沿って設けられており、前記板ばねの上端近傍が前記上側ブロックに固定されており、前記板ばねの下端近傍が前記下側ブロックに固定されており、前記上側ブロックを前記第2状態から前記第1状態へと復元する
ことを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記上側ブロックと前記下側ブロックとの間には、合成油が塗布されている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記上側ブロックと前記下側ブロックとの間には、自己潤滑性を有する樹脂で形成されたシートが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記上側ブロックは、少なくとも前記下端面に当接する部分が結晶性の樹脂で形成されており、
前記下側ブロックは、金属で形成されている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記保持ブロックを含む保持ユニットを有し、
前記保持ブロックは、前記コンタクトブロックと、前記コンタクトブロックの下側に略水平方向に移動可能に設けられたベースブロックと、を有し、
前記保持ユニットは、前記ベースブロックを固定する固定部を有し、
前記コンタクトブロックの前記ベースブロックと対向する第1面及び前記ベースブロックの前記コンタクトブロックと対向する第2面は、略平行であり、水平面に対して傾いている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略板状の基板を略鉛直方向(縦置き)に保持する基板保持装置であって、複数のクランプ部を用いて縦枠部の基準面に基板の側面を押圧する基板保持装置が開示されている。クランプ部は、当接位置にあるときに基板と当接する第1先端面を有する第1ユニットと、第1ユニットとフレームとの間に略水平方向に移動可能に設けられた第2ユニットと、を有し、第2ユニットを基板側へ平行移動させると、第1ユニットが第2ユニットの先端面に沿って基準面側に移動することで、基準面に基板を押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-129267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、縦置きされた基板の側面を基準面に向けて移動させるときに、縦置きされた基板の下端面が保持ブロックに引っかかり移動しにくいことが原因で、基板が湾曲するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基板を基準面に押圧するときに、基板全体を基準面に向けて滑らかに移動させることができる基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る基板保持装置は、例えば、略板状の基板を略鉛直方向に保持する基板保持装置であって、前記基板の鉛直方向下側に配置された下端面が当接する複数の保持ブロックと、略鉛直方向に延設された略棒状の第1縦枠部及び第2縦枠部であって、前記基板の裏面が当接する基準面を有する第1縦枠部及び第2縦枠部と、前記第1縦枠部及び前記第2縦枠部に設けられた複数のクランプ部であって、略水平方向に移動可能に設けられており、前記基板の鉛直方向に略沿った側面に当接して前記基板を前記基準面に押圧するクランプ部と、を備え、前記保持ブロックは、前記下端面に当接する上側ブロックと、前記上側ブロックの下側に設けられた下側ブロックと、を有するコンタクトブロックを有し、前記上側ブロックは、前記基板の厚さ方向に、前記下側ブロックに対して移動可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る基板保持装置によれば、基板の鉛直方向下側に配置された下端面が当接する複数の保持ブロックは、基板の下端面に当接する上側ブロックと、上側ブロックの下側に設けられた下側ブロックと、を有し、上側ブロックは、基板の厚さ方向に、下側ブロックに対して移動可能である。これにより、基板を基準面に押圧するときに、基板全体を基準面に向けて滑らかに移動させることができる。
【0008】
ここで、前記コンタクトブロックは、前記上側ブロックと前記下側ブロックとを連結する復元手段を有し、前記上側ブロックは、鉛直上方向から見たときに前記上側ブロックが前記下側ブロックに完全に重なる第1状態と、鉛直上方向から見たときに前記上側ブロックが前記下側ブロックに対してずれている第2状態との間で移動可能であり、前記復元手段は、前記上側ブロックを前記第2状態から前記第1状態へと復元してもよい。これにより、保持ブロックと基板の下端面との当接が解除されたときに、復元手段の付勢力により、上側ブロックを元の位置に戻すことができ、次サンプルの受け入れ準備が自動的に可能になる。
【0009】
ここで、前記復元手段は、前記上側ブロックと前記下側ブロックとを連結する板ばねであり、前記上側ブロック及び前記下側ブロックは、鉛直上方向から見たときの形状が略同一であり、前記板ばねは、前記上側ブロック及び前記下側ブロックの鉛直方向に略沿った面であって、前記上側ブロックの移動方向に略直交する面に沿って設けられており、前記板ばねの上端近傍が前記上側ブロックに固定されており、前記板ばねの下端近傍が前記下側ブロックに固定されていてもよい。これにより、簡単な構成で、確実に上側ブロックを移動させることができる。
【0010】
ここで、前記上側ブロックと前記下側ブロックとの間には、合成油が塗布されていてもよい。これにより、上側ブロックと下側ブロックとの間の摩擦係数を小さくし、小さな力で上側ブロックを移動させることができる。また、合成油を用いることで、潤滑面に塗布された潤滑剤の量が減らず、安定して上側ブロックを摺動させることができる。
【0011】
ここで、前記上側ブロックと前記下側ブロックとの間には、自己潤滑性を有する樹脂で形成されたシートが設けられていてもよい。これにより、上側ブロックと下側ブロックとの間の摩擦係数を小さくし、小さな力で上側ブロックを移動させることができる。
【0012】
ここで、前記上側ブロックは、少なくとも前記下端面に当接する部分が結晶性の樹脂で形成されており、前記下側ブロックは、金属で形成されていてもよい。これにより、基板としてガラス製のマスクを用いる場合に、マスクが上側ブロックに当接しても、応力集中によるマスクの破損を防止することができる。
【0013】
ここで、前記保持ブロックを含む保持ユニットを有し、前記保持ブロックは、前記コンタクトブロックと、前記コンタクトブロックの下側に略水平方向に移動可能に設けられたベースブロックと、を有し、前記保持ユニットは、前記ベースブロックを固定する固定部を有し、前記コンタクトブロックの前記ベースブロックと対向する第1面及び前記ベースブロックの前記コンタクトブロックと対向する第2面は、略平行であり、水平面に対して傾いていてもよい。これにより、ベースブロックを水平に移動させることでコンタクトブロックを上下方向に移動させ、コンタクトブロックに基板を確実に当接させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板を基準面に押圧するときに、基板全体を基準面に向けて滑らかに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係るマスク保持装置1の概略を示す正面図である。
図2】マスク保持装置1の概略を示す側面図である。
図3】マスク保持装置1におけるマスク保持部10の概略を示す平面図である。
図4】クランプ部12aの概略を示す図である。
図5】保持ブロック21、22の概略を示す斜視図である。
図6】マスクMの移動の様子を説明する図であり、(A)はマスクMの上端部(+y側の端部)の様子を示す図であり、(B)はマスクMの下端部(-y側の端部)の様子であって、従来の保持ブロック21’、22’を用いた場合を示す図であり、(C)はマスクMの下端部(-y側の端部)の様子であって、本実施の形態の保持ブロック21、22を用いた場合を示す図である。
図7】変形例にかかる保持ブロック21Aの概略を示す図である。
図8】変形例にかかる保持ブロック21Bの概略を示す図である。
図9】変形例にかかる保持ブロック21Cの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、周縁に平面又は曲面の面取部が形成された透明な略板状の基板を略鉛直方向に保持する基板保持装置であり、基板を検査する基板検査機等の内部に設けられる。
【0017】
本発明では、基板としてマスクMを用いる。マスクMは、石英等により形成された透明な略板状の部材であり、例えば有機ELや液晶表示装置の表示装置用の基板を製造するために用いられる露光用マスクである。マスクMは、一辺が1m程度の大型な略矩形形状の基板上に、1個または複数個のイメージデバイス用転写パターンが形成されたものである。また、マスクMには、マスクエッジが欠けないようにするため、周縁に面取部が形成されている。
【0018】
面取部は、平面の面取部(いわゆるC面)であってもよいし、曲面の面取部(いわゆるR面)であってもよい。また、C面は、角度が略45度の通常面取りであってもよいし、角度が略30度の特別面取りであってもよい。以下、面取部として、角度が略45度、辺の長さが1mmの面取り(C1)を有する場合を例に説明する。
【0019】
図1は、第1の実施の形態に係るマスク保持装置1の概略を示す正面図である。図2は、マスク保持装置1の概略を示すx方向から見た側面図である。図2では、説明のため、主要構成以外の図示を省略する。
【0020】
以下、水平方向のうちのフレーム13の長手方向に略沿った方向をx方向と定義し、鉛直方向をy方向とし、x方向及びy方向と直交する方向をz方向と定義する。
【0021】
マスク保持装置1は、ベース30に載置されており、主として、マスク保持部10と、保持ユニット20と、図示しない撮像部及び照明部と、を有する。
【0022】
撮像部及び照明部は、マスクMを挟んで対向するように設けられている。照明部から光を照射しながら、撮像部でマスクMに形成されたパターンの画像を撮像する。このようにして、マスク保持装置1は、マスクMの検査を行う検査装置として機能する。撮像部、照明部は既に公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
マスク保持部10は、主として、略鉛直方向に延設された略棒状の縦枠部11a、11bと、マスクMを把持するクランプ部12と、略枠状のフレーム13と、樹脂シート14と、を有する。フレーム13は、鉛直に保持されるマスクMの外周を囲むよう、略枠状に形成されており、縦枠部11a、11bはフレーム13に設けられている。
【0024】
縦枠部11a、11bは、異なる大きさのマスクに対応するため、水平方向(x方向)に移動可能である。縦枠部11a、11bを移動可能に設ける形態及び移動機構については、既に公知の様々な技術を用いることができる。
【0025】
縦枠部11a、11bは、マスクMの表面と略直交する方向(z方向)からみて、マスクMの周縁と重なる部分を有する。縦枠部11a、11bは、マスクMの表面m1(パターンが形成される面、図3参照)がxy平面と略平行となるようにマスクMを保持する。
【0026】
縦枠部11a、11bのマスクMが当接する面(基準面11c、11d、図3参照)には、樹脂シート14が設けられている。樹脂シート14は、例えば、超高分子量ポリエチレン樹脂で形成されている。
【0027】
縦枠部11a、11bには、クランプ部12が設けられる。クランプ部12は、クランプ部12a~12jを有する。縦枠部11aには、クランプ部12a、12b、12c、12d、12eが設けられ、縦枠部11bには、クランプ部12f、12g、12h、12i、12jが設けられる。クランプ部12aとクランプ部12fは対向し、クランプ部12bとクランプ部12gは対向し、クランプ部12cとクランプ部12hは対向し、クランプ部12dとクランプ部12iは対向し、クランプ部12eとクランプ部12jは対向する。
【0028】
クランプ部12a~12jは、マスクMと当接する当接位置とマスクMと当接しない退避位置との間で、先端が略水平方向(x方向)に移動可能である。
【0029】
なお、本実施の形態では、縦枠部11aに5個のクランプ部12が設けられ、縦枠部11bに5個のクランプ部12が設けられているが、クランプ部12の位置及び数はこれに限られない。
【0030】
図3は、マスク保持装置1におけるマスク保持部10の概略を示すy方向から見た平面図である。図3では、一部の構成について図示を省略している。
【0031】
図3では、クランプ部12a~12j(図3ではクランプ部12b~12e、12g~12jは視認できず)は、マスクMと当接する当接位置にある。縦枠部11a、11bは、それぞれ、クランプ部12a~12jが当接位置にあるときに、マスクMの裏面m2が当接する基準面11c、11dを有する。クランプ部12a~12jがマスクMを押圧すると、裏面m2が基準面11c、11dに押圧される。なお、基準面11c、11dには樹脂シート14が設けられているが、以下、樹脂シート14を含めて基準面11c、11dという。
【0032】
マスクMの表面m1にはパターンが形成されており、撮像部及び照明部を用いてパターンの検査を行う。パターンは、マスクMの周縁から10mm~20mm程度内側の領域に形成されている。マスクMと基準面11c、11dとが当接する距離x2は、パターンが形成されていない部分のマスクMの周縁からの距離x1(距離x1は略10mm)より小さく、略5~6mm程度である。
【0033】
図4は、クランプ部12aの概略を示す図である。図3において、二点鎖線は、クランプ部12aが退避位置にある状態を示し、実線は、クランプ部12aが当接位置にある状態を示す。なお、クランプ部12a~12jは、同一の構成である。ただし、クランプ部12a~12eとクランプ部12f~12jとは左右対称である。
【0034】
クランプ部12aは、主として、クランプ121と、クランププレート122と、ストリッパーボルト123と、弾性部材124と、を有する。
【0035】
クランプ121は、クランプ部12aの先端に設けられる。クランププレート122は、クランプ121とフレーム13(図4では図示省略)との間に設けられている。クランププレート122は、フレーム13に対して移動可能に設けられ、図示しない駆動部により略水平方向に移動される。クランププレート122が略水平方向に移動してクランプ部12aが当接位置に移動すると、クランプ121がマスクMと当接する。
【0036】
クランプ121は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)等の耐熱性、機械的強度に優れた樹脂で形成される。クランプ121は、鉛直上方向(+y方向)又は鉛直下方向(-y方向)から見たときの形状が略台形形状である本体部121aと、クランププレート122側に突出する取付部121bと、を有する。
【0037】
本体部121aの先端面121cは、マスクMと当接する面であり、基準面11cと略直交する面Pに対して傾斜している。本体部121aの先端面121cの反対側の面は、クランププレート122と当接し、クランプ121とクランププレート122との摺動面である摺動面121dである。
【0038】
先端面121cと、基準面11cと略直交する面Pとのなす角度θ1は略45度より小さい。先端面121cと面Pとのなす角度θ1を略45度より小さくすることで、マスクMの稜線eを先端面121cと当接させて先端面121cがマスクMの表面m1に接触しないようにし、表面m1に形成されたパターン情報を損なう異物が表面m1に付着しないようにすることができる。本実施の形態では、角度θ1は略10度である。
【0039】
摺動面121dと面Pとのなす角度θ2は、角度θ1より大きい。本実施の形態では、角度θ2は略45度である。クランププレート122がクランプ121を下向きに押す力は、角度θ2が大きくなるにつれて強くなる。
【0040】
取付部121bは、本体部121aの略中央に、先端面121cと反対側に突出するように形成されている。取付部121bの先端面121cの反対側の面(摺動面121h)は、クランププレート122と当接し、クランプ121とクランププレート122との摺動面である。摺動面121hは摺動面121dと略平行であり、摺動面121hと面Pとのなす角度は角度θ2と等しい。
【0041】
クランププレート122は、鉄等の金属で形成され、クランプ121とクランププレート122との摺動面である摺動面122a、122bを有する。摺動面122aは、摺動面121dと当接し、摺動面122bは、摺動面121hと当接する。摺動面122a、122bは、摺動面121d、摺動面121hと略平行であり、摺動面122a、122bと面Pとのなす角度は角度θ2と等しい。
【0042】
クランプ121には、ねじ孔121kと、穴121lとが形成される。ねじ孔121kと穴121lとは一体であり、穴121lは摺動面121hに開口する。また、クランププレート122には、長孔122e及びザグリ穴122fが形成される。長孔122eは、クランププレート122を貫通する。長孔122e及びザグリ穴122fは、一体であり、一端は上面122gに開口し、他端は摺動面122bに開口する。長孔122e及びザグリ穴122fは、摺動面122bと略直交する。穴121l、長孔122e及びザグリ穴122fには、ストリッパーボルト123が挿入される。また、ねじ孔121kには、ストリッパーボルト123のねじ部が螺合される。
【0043】
ストリッパーボルト123を上面122g側から穴121l、長孔122e及びザグリ穴122fに挿入し、ストリッパーボルト123の先端のねじ部をねじ孔121kに螺合する。その結果、クランプ121がクランププレート122から離脱しないように、クランプ121とクランププレート122とがストリッパーボルト123により連結される。長孔122e及びザグリ穴122fの中心軸と略直交する方向から見て、長孔122e及びザグリ穴122fは長穴であるため、長孔122e及びザグリ穴122fの長手方向に沿ってストリッパーボルト123が長孔122e及びザグリ穴122fの内部を摺動可能である(図4の点線矢印参照)。但し、クランプ121とクランププレート122とを摺動可能に連結する方法はこれに限られない。
【0044】
クランプ121(本体部121a)には、穴121i、121jが形成される。穴121iと穴121jとは一体であり、穴121jは穴121iより太く、穴121iは穴121jより長い。また、クランププレート122には、穴122c、122dが形成される。穴122cと穴122dとは一体であり、穴122cは穴122dより太く、穴122dは穴122cより長い。穴121i、121j及び穴122c、122dには、弾性部材124が挿入される。
【0045】
弾性部材124は、例えばピアノ線等の弾性変形が可能な線材である。弾性部材124は、±y側から穴121j、穴121i、穴122c及び穴122dに挿入され、図示しないビスによりクランププレート122に固定される。穴121i、122dの幅は、弾性部材124の直径と略同一であり、穴121j、122cの幅は、弾性部材124の直径より大きい。
【0046】
クランププレート122が待機位置から当接位置に向けて移動(図4では、-x方向へ移動、図4黒矢印参照)すると、先端面121cがマスクMの側面sと面取部cとの稜線eに当接する。クランププレート122には、先端面121cが稜線eと当接した後も、図示しない駆動部により-x方向へ移動する方向の力が付勢される。
【0047】
鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときに、先端面121cと稜線eとが当接する位置を通り、先端面121cと略直交する線(図4一点鎖線参照)は、摺動面121d、122aと交差する。そのため、クランププレート122に加えられた付勢力によりクランプ121が平行移動する(クランプ121は回転しない)。
【0048】
本実施の形態では、角度θ2が略45度であるため、クランププレート122が図示しない駆動部により-x方向に付勢される力を力Fとすると、クランプ121は、クランププレート122から下向きの力Fが付勢される。
【0049】
このようにして、クランプ121は、摺動面122a、122bに沿って先端面121c側へ摺動する(図4黒矢印参照)。先端面121cと稜線eとの摩擦により、クランプ121がクランププレート122に対して摺動しても、先端面121cと稜線eとの位置関係は変化しない。そのため、マスクMはクランプ121により、マスクMの厚さ方向に、ここでは-z方向に押し込まれ、マスクMの裏面m2が基準面11cに力Fで押圧される。
【0050】
穴121i、122dの幅が弾性部材124の直径と略同一であり、穴121j、122cの幅が弾性部材124の直径より大きいため、弾性部材124は、クランプ121がクランププレート122に対して移動するのに伴って弾性変形する。
【0051】
弾性部材124が弾性変形することで、クランプ121には、弾性部材124により基準面11cから遠ざける方向の力が付勢される。図示しない駆動部によりクランププレート122が当接位置から待機位置に向けて移動(図3では、+x方向へ移動)すると、先端面121cが稜線eから離れ、弾性部材124によりクランプ121が+z方向へ押し上げられる。弾性部材124がクランプ121及びクランププレート122の±y側に設けられ、クランプ121がy方向の両側からバランスよく力を受けるため、クランプ121は平行移動する。
【0052】
図1、2の説明に戻る。マスク保持部10の下端近傍には、保持ユニット20が設けられる。保持ユニット20は、ベース30に載置されており、マスクMの鉛直方向下側に配置された下端面に当接する複数の保持ブロック21、22と、固定部26と、移動機構28と、を有する。保持ブロック21、22は、水平方向、ここではマスクMの長辺の延設方向であるx方向に沿って複数設けられている。本実施の形態では、保持ユニット20が保持ブロック21、22をそれぞれ2個有するが、保持ユニット20が有する保持ブロック21、22の数はこれに限られず、保持ブロック21、22を併せて複数あればよい。例えば、保持ユニット20が保持ブロック21、22を各1個有してもいてもよいし、保持ユニット20が保持ブロック21、22を各3個有していてもよい。
【0053】
保持ブロック21、22は、水平方向の幅が異なり、その他の構成は同様である。保持ブロック21、22は、主として、マスクMの下端面に当接するコンタクトブロック211、221と、コンタクトブロックの下側に略水平方向に移動可能に設けられたベースブロック212、222と、を有する。
【0054】
保持ブロック21、22は、ベースブロック212、222を略水平方向(ここでは、x方向)に移動させる移動機構28を有する。移動機構28は、ベースブロック212、222に設けられた孔を貫通するシャフト23と、弾性部材24とを有する。シャフト23はx方向に沿って延設されており、図示しない駆動部を介してシャフト23をx方向に移動させると、ベースブロック212、222が水平方向に移動する。弾性部材24は、ベースブロック212、222に+x方向の力を付勢する。
【0055】
また、保持ブロック21、22は固定部26を有する。固定部26は、移動機構28によりベースブロック212、222が移動された後で、ベースブロック212、222が移動しないようにベースブロック212、222を固定する。
【0056】
次に、保持ブロック21、22について詳細に説明する。図5は、保持ブロック21、22の概略を示す斜視図である。
【0057】
まず、コンタクトブロック211、221について説明する。コンタクトブロック211、221は、それぞれ、マスクMの下端面に当接する上側ブロック211a、221aと、上側ブロック211a、221aの下側に設けられた下側ブロック211b、221bと、を有する。上側ブロック211a、221aは、マスクMの厚さ方向(ここでは、-z方向)に、下側ブロック211b、221bに対して移動可能である。つまり、上側ブロック211a、221aは、鉛直上方向から見たときに上側ブロック211a、221aが下側ブロック211b、221bに完全に重なる状態と、鉛直上方向から見たときに上側ブロック211a、221aが下側ブロック211b、221bに対してずれている状態との間で移動可能である。
【0058】
上側ブロック211a、221aは、結晶性の樹脂で形成されている。本発明において、結晶性の樹脂とは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、モノマーキャストナイロンを含むポリアミド樹脂等の結晶性の樹脂、及び、四フッ化エチレン(PTFE)を主材料としたターカイト等の結晶性の樹脂を主原料とする樹脂を含む。これにより、100kg程度のガラス製のマスクMが上側ブロック211a、221aに当接しても、応力集中によるマスクMの破損を防止することができる。下側ブロック211b、221bは、鉄等の金属で形成されている。
【0059】
鉛直上方向又は鉛直下方向から見たときに、上側ブロック211a、221a及び下側ブロック211b、221bの形状は略同一である。
【0060】
コンタクトブロック211、221は、板ばね25を含む。板ばね25は、上側ブロック211aと下側ブロック211b及び上側ブロック221aと下側ブロック221bとを連結し、鉛直上方向から見たときに上側ブロック211a、221aが下側ブロック211b、221bに対してずれている状態から、鉛直上方向から見たときに上側ブロック211a、221aが下側ブロック211b、221bに完全に重なる状態へと復元する復元手段である。
【0061】
板ばね25は、上側ブロック211a及び下側ブロック211bの鉛直方向に略沿っており、マスクMの移動方向(z方向)に略直交する面211c、211dに沿って設けられており、上側ブロック211aと下側ブロック211bを連結する。また、板ばね25は、上側ブロック221a及び下側ブロック221bの鉛直方向に略沿っており、マスクMの移動方向(z方向)に略直交する面221c、221dに沿って設けられており、上側ブロック221aと下側ブロック221bを連結する。板ばね25は、上端近傍が上側ブロック211a、221aに固定されており、下端近傍が下側ブロック211b、221bに固定されている。つまり、上側ブロック211a、221aが-z方向に移動した状態(上側ブロック211a、221aが下側ブロック211b、221bに対してずれている状態)では、板ばね25は、上側ブロック211a、221aを移動前の状態(上側ブロック211a、221aが下側ブロック211b、221bに完全に重なる状態)に戻す向きの力、すなわち+z方向の力を上側ブロック211a、221aに付勢する。
【0062】
なお、本実施の形態では、板ばね25として、厚さが略0.1mm程度のステンレスの板材を用いる。特に、ステンレスのうち、ばね性を持ちやすいフェライト系ステンレスを用いる。ただし、板ばね25の形態(形状や材質)はこれに限られない。
【0063】
上側ブロック211aと下側ブロック211bとの間、及び、上側ブロック221aと下側ブロック221bとの間には、合成油が塗布されている。本発明において、合成油とは、基油が鉱物油を含まないものをいい、例えば、合成油をベースオイルとするエンジンオイル、合成油にリチウム石けんを増ちょう剤として添加したリチウム石けん系グリスを含む。
【0064】
上側ブロック211a、221aは、それぞれ、下側ブロック211b、221bに対して移動可能である。上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間には、それぞれ、合成油が塗布されているため、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間の摩擦係数が小さく、小さな力で上側ブロック211a、221aを移動させることができる。また、潤滑剤として蒸気圧が低い合成油を用いることで、潤滑面に塗布された潤滑剤の量が減らず、安定して上側ブロック211a、221aを摺動させることができる。
【0065】
なお、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間の摩擦係数を小さくするため、上側ブロック211a、221aの下側ブロック211b、221bと対向する摺動面及び下側ブロック211b、221bの上側ブロック211a、221aと対向する上側の摺動面は、高い面精度、ここでは最も高い点と最も低い点との差異が3μm以下とすることが望ましい。
【0066】
また、本実施の形態では、上側ブロック211a、221aに20kgfの荷重がかかると油膜が切れ、荷重を除去すると油膜が戻るように、低粘度の合成油を用いることが望ましい。また、合成油の粘度が低すぎると、油膜が薄くなりすぎることで、上側ブロック211a、221aや下側ブロック211b、221bの表面の凹凸を被覆することができず、摩擦係数を小さくする効果が十分に得られない。そのため、例えば、エンジンオイルを合成油として使用する場合には、100℃のときの動粘度が10m/s程度(9.3m/s~12.5m/s)のものが望ましい。
【0067】
次に、ベースブロック212、222の移動及びベースブロック212、222の移動に伴うコンタクトブロック211、221の移動について説明する。
【0068】
ベースブロック212、222には、ベース30に設けられたスライドレール21a、22aに沿って移動する可動部21b、22bが設けられている。また、ベースブロック212、222には、それぞれ孔212a、222aが設けられており、孔212a、222aには、シャフト23が挿入されている。ベースブロック212、222は、シャフト23が移動することにより、スライドレール21a、22aに沿ってx方向に移動する。
【0069】
また、孔212a、222aには、ザグリ穴212b、222bが設けられており、ザグリ穴212b、222bには、弾性部材24が挿入されている。弾性部材24の一端はザグリ穴212b、222bの底面に設けられており、弾性部材24の他端はシャフト23に設けられている。そのため、ベースブロック212、222には、弾性部材24により+x方向へ移動する方向の力が付勢される。
【0070】
可動部21b、22bには、それぞれ固定部26が設けられている。固定部26が可動部21b、22bをスライドレール21a、22aに対して固定することで、ベースブロック212、222のx方向の位置が固定される。
【0071】
コンタクトブロック211、221のベースブロック212、222と対向する面211e、221e及びベースブロック212、222のコンタクトブロック211、221と対向する面212c、222cは、略平行であり、水平面に対して傾いている。
【0072】
面212c、222cには、スライドレール21c、22cが設けられており、面211e、222eには、スライドレール21c、22cに沿って移動する可動部21d、22dが設けられている。したがって、ベースブロック212、222がx方向に移動すると、可動部21d、22dがスライドレール21c、22cに沿って移動することで、コンタクトブロック211、221が面212c、222cに沿って移動する。その結果、コンタクトブロック211、221が上下方向(y方向)に移動する。また、保持ブロック21、22は、それぞれ独立しているため、保持ブロック21、22毎に高さ方向(y方向)の位置を変更することができる。
【0073】
このように構成されたマスク保持装置1の作用について説明する。まず、移動機構28及び図示しない駆動部により、保持ブロック21、22を下方(-y方向)に移動させる。次に、ローダ(図示せず)でマスクMを把持し、マスクMをマスク保持装置1の内部へと挿入する。これにより、フレーム13の手前側(+z側)にマスクMが配置される(図1参照)。
【0074】
その後、移動機構28及び図示しない駆動部により、保持ブロック21、22を上方(+y方向)に移動させ、保持ブロック21、22とマスクMの下端面とを当接させる。上側ブロック211a、221aが樹脂製であるため、マスクMの割れ等は生じない。
【0075】
また、保持ブロック21、22の高さが別々に調整可能であるため、マスクMの下端面の位置のばらつきに関わらず、コンタクトブロック211、221にマスクMを確実に当接させることができる。
【0076】
次に、クランプ部12を待機位置から当接位置へと移動させる。その結果、クランプ部12は、マスクMを把持し、マスクMをマスクMの厚さ方向(ここでは、-z方向)に移動させる。その結果、マスクMの裏面m2が基準面11cに押圧される(図3参照)。
【0077】
クランプ部12がマスクMを-z方向へ移動させるときに、マスクMが当接している上側ブロック211a、221aがマスクMと共に-z方向に平行移動する。これにより、マスクMの変形を防止することができる。また、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間には合成油が塗布されているため、上側ブロック211a、221aがマスクMと共に移動しやすい。
【0078】
次に、図示しない撮像部及び照明部を用いてマスクMの検査を行う。マスクMの検査終了後、ローダ(図示せず)でマスクMを把持し、マスクMをマスク保持装置1の外へと搬出する。ローダ(図示せず)でマスクMが把持され、保持ブロック21、22とマスクMの下端面との当接が解除されると、板ばね25の付勢力により、上側ブロック211a、221aが+z方向に移動する。
【0079】
本実施の形態によれば、マスクMを基準面に押圧するときに、マスクM全体を基準面11c、11dに向けて滑らかに移動させることができる。その結果、マスクMの変形や、これによる検査時の不具合を防止することができる。
【0080】
図6は、マスクMの移動の様子を説明する図であり、(A)はマスクMの上端部(+y側の端部)の様子を示す図であり、(B)はマスクMの下端部(-y側の端部)の様子であって、従来の保持ブロック21’、22’を用いた場合を示す図であり、(C)はマスクMの下端部(-y側の端部)の様子であって、本実施の形態の保持ブロック21、22を用いた場合を示す図である。
【0081】
なお、マスクMは、一般的に石英ガラスの基板にクロムの膜を蒸着して形成しているが、その膜の張力が原因で、膜面(表面m1)が凹となる略椀型にマスクMが変形することが多い。そして、マスクMの左右両端が縦枠部11a、11bに押圧されることで、マスクMの左右両端は直線状に矯正される。そのため、図6では、鉛直上方向から見たときにマスクMが表面m1が凹となるように湾曲している状態を例に説明する。
【0082】
図6(A)に示すように、マスクMの上端部は保持ブロック21、22に当接していないため、マスクMの両端をクランプ部12が押圧することで、マスクMの左右両端を縦枠部11a、11bに押圧するときにマスクMの湾曲の程度は変化しない。これは、従来の保持ブロック21’、22’を用いる場合も本実施の形態も同様である。
【0083】
従来の例である図6(B)に示すように、z方向に移動できない保持ブロック21’、22’を用いる場合には、マスクMの下端部が保持ブロック21’、22’に当接しているため、保持ブロック21’、22’により保持されている部分についてはマスクMがz方向に移動できない。その結果、マスクMの左右両端をクランプ部12により縦枠部11a、11bに押圧すると、マスクMの下端部については、マスクMの両端部分のみが-z方向に移動し、マスクMが変形してしまう。
【0084】
マスクMの上端部については、マスクMの湾曲の程度は変化しないため、従来の保持ブロック21’、22’を用いる場合には、マスクMの左右両端が縦枠部11a、11bに押圧された状態では、マスクMの上端の湾曲は矯正されずにマスクMの下端が変形し、マスクMの上端と下端とで湾曲の方向や程度が変化する。その結果、マスクMに形成されたパターンの間隔(スケール)がマスクMの位置によって変わってしまう。
【0085】
それに対し、本実施の形態である図6(C)に示すように、マスクMの下端部が上側ブロック211a、221aと共にz方向に移動する場合には、マスクMが平行移動するときにマスクMの下端部における湾曲の程度は変化しない。つまり、マスクMの左右両端が縦枠部11a、11bに押圧された状態では、マスクMの上端も下端も同程度だけ湾曲(マスクMがハーフパイプ状に湾曲)している。したがって、マスクMの上端と下端とで湾曲の方向や程度が略一致し、マスクMの位置によってスケールが変わるという問題は発生しない。
【0086】
また、本実施の形態によれば、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間には合成油が塗布されているため、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間の摩擦係数が小さく、小さな力で上側ブロック211a、221a、すなわちマスクMをz方向に移動させることができる。また、合成油は蒸気圧が低いため、潤滑面に塗布された潤滑剤の量が減らず、長期間安定して良好な潤滑が得られる。また、合成油は蒸気圧が低く蒸発しないため、マスクMとマスクMに貼付したペリクルとの間に蒸発した油が入り込んで加工時に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、コンタクトブロック211、221が板ばね25を含み、板ばね25が上側ブロック211a、221aを-z方向に移動した状態から元の位置に戻すが、上側ブロック211a、221aを-z方向に移動した状態から元の位置に戻す方法はこれに限られない。上側ブロック211aと下側ブロック211b及び上側ブロック221aと下側ブロック221bとを連結し、上側ブロック211a、221aを-z方向に移動した状態から元の位置に戻す復元手段は、板ばね以外に、様々な弾性部材を用いることができる。弾性部材として、例えば、コイルばね、皿ばねを用いてもよいし、ゴム等の弾性体を用いてもよい。また、復元手段として、空気、油等の流体を用いたシリンダ機構や、アクチュエータを用いた機構などを用いてもよい。ただし、復元手段として板ばねを使用することで、簡単な構成で、確実に上側ブロック211aを移動させることができる。
【0088】
また、本実施の形態では、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間には潤滑剤(ここでは、合成油)が塗布されていたが、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間の摩擦係数を小さくする方法はこれに限られない。
【0089】
図7は、変形例にかかる保持ブロック21Aの概略を示す図である。保持ブロック22Aの構成は保持ブロック21Aの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
保持ブロック21Aは、上側ブロック211aと、下側ブロック211bと、樹脂シート21eと、を有する。樹脂シート21eは、自己潤滑性を有する樹脂で形成されたシートである。本実施の形態では、自己潤滑性を有する樹脂で形成されたシートとして、超高分子量ポリエチレン(UPE)で形成されたシートを用いるが、自己潤滑性を有する樹脂で形成されたシートはこれに限られない。例えば、自己潤滑性を有する樹脂であるシリコーンを、紙や樹脂シート等の薄膜状の部材の表面にコーティングしたシートも、自己潤滑性を有する樹脂で形成されたシートに含まれる。
【0091】
なお、本実施の形態では、樹脂シート21eは、略25μm~略100μm程度の薄膜状の部材であり、マスクMの荷重による樹脂シート21eの変形は無視できる。
【0092】
本変形例によれば、上側ブロック211aと下側ブロック211bとの間の摩擦係数を小さくし、小さな力で上側ブロック211aを移動させることができる。
【0093】
図8は、変形例にかかる保持ブロック21Bの概略を示す図である。保持ブロック22Bの構成は保持ブロック21Bの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
保持ブロック21Bは、上側ブロック211aと、下側ブロック211bと、樹脂シート21e、21fと、を有する。樹脂シート21fは樹脂シート21eと同様のものであり、樹脂シート21eと樹脂シート21fとの間の摩擦係数は小さい。
【0095】
本変形例によれば、樹脂シート21eと、樹脂シート21fとの間で滑りが発生するため、小さな力で上側ブロック211aを移動させることができる。
【0096】
また、本実施の形態では、上側ブロック211a、221aを結晶性の樹脂で形成したが、上側ブロックの形態はこれに限られない。
【0097】
図9は、変形例にかかる保持ブロック21Cの概略を示す図である。保持ブロック22Bの構成は保持ブロック21Bの構成と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
保持ブロック21Cは、上側ブロック211fと、下側ブロック211bと、を有する。上側ブロック211fは、樹脂ブロック211gと、金属ブロック211hとを有する。樹脂ブロック211gは、マスクMが当接したときの応力集中による破損を防ぐため、結晶性の樹脂で形成されている。金属ブロック211hは、下側ブロック211bと同様、金属、例えば鉄で形成されている。樹脂ブロック211gと金属ブロック211hとは、ねじ211jにより固定されている。
【0099】
金属ブロック211hの下側ブロック211bと対向する面及び下側ブロック211bの金属ブロック211hと対向する面は、平坦面に微小な窪みを形成するきさげ加工が施されたきさげ面である。これにより、上側ブロック211fに20kgfの荷重がかかると油膜が切れて摩擦係数が大きくなり、荷重を除去すると油膜が戻り摩擦係数が小さくなる。その結果、上側ブロック211fを小さな力で容易に移動させるとともに、上側ブロック211fの移動後は上側ブロック211fが容易に移動しないようにすることができる。
【0100】
また、図7~9に示す形態以外に、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間の摩擦係数を小さくするのに、例えば、静圧空気軸受を用いたエアスライドを用いてもよいし、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間に転動体(ボール、コロ等)を設けてもよいし、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間に磁石を同極が対向するように設けてもよい。
【0101】
また、本実施の形態では、上側ブロック211a、221aをポリアミド樹脂やターカイトで形成し、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間には合成油を塗布したが、合成油の塗布は必須ではない。この場合には、結晶性樹脂のうち、摩擦係数が小さい(0.1程度)超高分子量ポリエチレン(UPE)樹脂を用いることが望ましい。ただし、上側ブロック211a、221aと下側ブロック211b、221bとの間には合成油を塗布する場合には、20kg程度の荷重を受けてもほとんど変形しないポリアミド樹脂やターカイトを用いることが望ましい。
【0102】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0103】
本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略立方体形状とは、厳密に立方体形状の場合に限られない。また、例えば、単に鉛直、一致等と表現する場合において、厳密に鉛直、一致等の場合のみでなく、略鉛直、略一致等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0104】
1 :マスク保持装置
10 :マスク保持部
11a、11b:縦枠部
11c、11d:基準面
12、12a~12j:クランプ部
13 :フレーム
14 :樹脂シート
20 :保持ユニット
21、21’、21A、21B、22、22’、22A、22B:保持ブロック
21a、21c、22a、22c:スライドレール
21b、21d、22b、22d:可動部
21e、21f:樹脂シート
23 :シャフト
24 :弾性部材
25 :板ばね
26 :固定部
28 :移動機構
30 :ベース
121 :クランプ
121a :本体部
121b :取付部
121c :先端面
121d、121h:摺動面
121i、121j、121l:穴
121k :ねじ孔
122 :クランププレート
122a、122b:摺動面
122c、122d:穴
122e :長孔
122f :ザグリ穴
122g :上面
123 :ストリッパーボルト
124 :弾性部材
211、221:コンタクトブロック
211a、211f、221a:上側ブロック
211b、221b:下側ブロック
211c、211d、211e、221c、221d、222e:面
211g :樹脂ブロック
211h :金属ブロック
211j :ねじ
212、222:ベースブロック
212a、222a:孔
212b、222b:ザグリ穴
212c、222c:面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9