(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】卓上型ミキサーセトラー及びそれを利用した抽出方法
(51)【国際特許分類】
B01D 11/04 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B01D11/04 101
(21)【出願番号】P 2020146130
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/088120(WO,A1)
【文献】特開2017-113706(JP,A)
【文献】特開2018-199113(JP,A)
【文献】特開平11-323453(JP,A)
【文献】特開2013-144270(JP,A)
【文献】特開2013-103155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00-12/00
B01J 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体を混合する混合部と、
混合部で混合された複数の液体を貯留して分離させる分離槽とを有するミキサーセトラーであり、
混合部は、所定の厚みを有する基材に設けられた凹溝又はスリット状の貫通孔からなる流路であり、
分離槽は、前記基材に設けられた凹穴又は貫通孔であり、
混合部と分離槽とは、連通しており、
基材に蓋体が被せられた状態で、基材と蓋体とを液密な状態で固定することにより、混合部と分離槽とを一体化して一つの装置と
され、
前記混合部と前記分離槽とはチューブによって連通され、前記混合部で混合された混合液は前記チューブを通って前記分離槽へ供給され、前記チューブは卓上型ミキサーセトラーの外に露出している卓上型ミキサーセトラー。
【請求項2】
蓋体は透視可能な素材で構成された請求項1に記載の卓上型ミキサーセトラー。
【請求項3】
蓋体には保護部材が固定されており、
保護部材には、混合部又は分離槽の位置に貫通孔を有する窓が配置されている請求項2に記載の卓上型ミキサーセトラー。
【請求項4】
前記蓋体とは別の第2蓋体をさらに備えており、
前記蓋体は、基材の一方の面に固定され、
第2蓋体は、基材の一方の面の反対側に配置される他方の面に固定される請求項1ないし3のいずれかに記載の卓上型ミキサーセトラー。
【請求項5】
第2蓋体には蓋体の破損を防止する前記保護部材とは別の第2保護部材が固定された請求項4に記載の卓上型ミキサーセトラー。
【請求項6】
基材と蓋体とは、複数の螺子で固定されている請求項1ないし5のいずれかに記載の卓上型ミキサーセトラー。
【請求項7】
混合部と分離槽とは、チューブで接続されており、
チューブは、卓上型ミキサーセトラーに対して着脱可能に構成された請求項1ないし6のいずれかに記載の卓上型ミキサーセトラー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のミキサーセトラーを用いて液液抽出を行う方法であり、
互いに非相溶性であり、互いに比重の異なる第1の液体と第2の液体とを混合部において混合することで、第1の液体及び第2の液体のうち一方の液体に含まれる抽出物質を他方の液体に移動させ、
混合液を分離槽において比重分離させて、一方の液体を排出し、他方の液体を回収する抽出方法。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか記載の複数台の前記ミキサーセトラーをつないで液液抽出を行う方法であり、
互いに非相溶性であり、互いに比重の異なる第1の液体と第2の液体とを第1ミキサーセトラーの混合部において混合することで、第1の液体及び第2の液体のうち一方の液体に含まれる抽出物質を他方の液体に移動させ、
混合液を第1ミキサーセトラーの分離槽において比重分離させて、一方の液体を排出し、他方の液体を回収し、
回収された他方の液体と、抽出物質を含む第3の液体とを、第2ミキサーセトラーの混合部において混合することで、第3の液体に含まれる抽出物質を他方の液体に移動させ、
混合液を第2ミキサーセトラーの分離槽において比重分離させて、第3の液体を排出し、他方の液体を回収する工程を含む抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓上型のミキサーセトラーとそれを利用した抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図5には、互いに交じり合わない液体である連続相と分散相とをマイクロリアクターで混合することで、乳化液を生成することが記載されている。当該乳化液は、水槽に収容された容器に貯留される。当該乳化液に対して超音波を照射することで、連続相と分散相を分離する。連続相及び分散相のいずれか一方には、溶質が溶解している。乳化、分離の過程で、溶質は液液抽出によって、連続相及び分散相のうちの一方から他方へと移動するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、ミキサーセトラーは公知である。特許文献1のミキサーセトラーは、混合器としてマイクロリアクターを利用しているため、大型の撹拌子と大型のタンクとからなる撹拌装置と、大型タンクからなる分離槽とを利用するようなミキサーセトラーに比べれば、取り扱いやすい。しかしながら、特許文献1のような、従来のミキサーセトラーは、混合器と、分離槽とが、別々に構成されている。ミキサーセトラーを使用するには、混合器と分離槽とを、それぞれ卓上に設置して、搬送経路で接続するなど手間のかかる準備が必要である。また、ミキサーセトラーを使用した後には、混合器と分離槽とを分離して洗浄するなどの手間がかかる。ミキサーセトラーを移動させる際には、混合器と分離槽とを分離させた状態で運び、再び混合器と分離槽とを接続する手間がかかる。このように、従来のミキサーセトラーでは、ミキサーセトラーの使用に際して、手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、混合部と分離槽とを一体化することにより、混合部と分離槽と一つの装置として取り扱うことができる卓上型のミキサーセトラーとそれを利用した抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数の液体を混合する混合部と、混合部で混合された複数の液体を貯留して分離させる分離槽とを有するミキサーセトラーであり、混合部は、所定の厚みを有する基材に設けられた凹溝又はスリット状の貫通孔からなる流路であり、分離槽は、前記基材に設けられた凹穴又は貫通孔であり、混合部と分離槽とは、連通しており、基材に蓋体が被せられた状態で、基材と蓋体とを液密な状態で固定することにより、混合部と分離槽とを一体化して一つの装置とした卓上型ミキサーセトラーにより、上記の課題を解決する。このミキサーセトラーでは、混合部と分離槽とは、基材に設けられている。蓋体を基材に対して固定することにより、混合部及び分離槽は、液密な状態とされ、一体化される。混合部と分離槽とは一体化されており、一つの装置として取り扱うことができるので、ミキサーセトラーを例えば卓上に設置する際には、混合部と分離槽とを別々に卓上に設置する動作を要せず、ミキサーセトラーを卓上に設置する動作を1度行うだけでよい。混合部と分離槽とは、基材に集約されているため、使用後は基材を洗浄することで混合部と分離槽とを同時に洗浄することができる。
【0007】
上記のミキサーセトラーにおいて、蓋体は透視可能な素材で構成することが好ましい。これによって、混合部において液体が混合される様子、又は分離槽において混合された液体が分離される様子を観察することができる。また、ミキサーセトラーの外部から、蓋体を介して紫外線等の光を照射して光を要する化学反応を生じさせることも可能である。
【0008】
上記のミキサーセトラーにおいて、蓋体には保護部材が固定されており、保護部材には、混合部又は分離槽の位置に貫通孔を有する窓が配置された構成とすることが好ましい。保護部材により、透視可能に構成した蓋体が損傷することを防止することができる。保護部材には、窓が配置されているため、窓から混合部又は分離槽を観察したり、窓から混合部又は分離槽に光を照射したりすることができる。
【0009】
上記のミキサーセトラーは、前記蓋体とは別の第2蓋体をさらに備えており、前記蓋体は、基材の一方の面に固定され、第2蓋体は、基材の一方の面の反対側に配置される他方の面に固定される構成とすることができる。この構成は、混合部又は分離槽を貫通孔とする場合に、好適に採用することができる。混合部又は分離槽を貫通孔で構成する場合は、凹穴の深さについて加工精度に注意を払う必要がなくなり、基材の加工が比較的に容易になるという利点がある。
【0010】
上記のミキサーセトラーにおいて、第2蓋体には蓋体の破損を防止する前記保護部材とは別の第2保護部材が固定された構成にすることができる。これによって、第2蓋体が破損することを防ぐことができる。
【0011】
上記のミキサーセトラーにおいて、基材と蓋体とは、複数の螺子で固定することができる。この構成によれば、基材と蓋体とを強固に締結できる。また、螺子を緩めることにより、基材と蓋体とを容易に分解することができる。
【0012】
上記のミキサーセトラーにおいて、混合部と分離槽とは、チューブで接続されており、チューブは、卓上型ミキサーセトラーに対して着脱可能に構成されたものとすることが好ましい。この構成によれば、例えば、長さの短い一のチューブを取り外して、長さの長い他のチューブに取り換えて、混合部の下流において複数の液体が混合される時間の長さ、すなわち一の液体と他の液体とを接触させる時間を調節することができる。
【0013】
上記のミキサーセトラーは一台で使用してもよいし、複数台で使用してもよい。例えば、互いに非相溶性であり、互いに比重の異なる第1の液体と第2の液体とを混合部において混合することで、第1の液体及び第2の液体のうち一方の液体に含まれる抽出物質を他方の液体に移動させ、混合液を分離槽において比重分離させて、一方の液体を排出し、他方の液体を回収する抽出方法である。
【0014】
また、例えば、互いに非相溶性であり、互いに比重の異なる第1の液体と第2の液体とを第1ミキサーセトラーの混合部において混合することで、第1の液体及び第2の液体のうち一方の液体に含まれる抽出物質を他方の液体に移動させ、混合液を第1ミキサーセトラーの分離槽において比重分離させて、一方の液体を排出し、他方の液体を回収し、回収された他方の液体と、抽出物質を含む第3の液体とを、第2ミキサーセトラーの混合部において混合することで、第3の液体に含まれる抽出物質を他方の液体に移動させ、混合液を第2ミキサーセトラーの分離槽において比重分離させて、第3の液体を排出し、他方の液体を回収する工程を含む抽出方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、混合部と分離槽とを一体化することにより、混合部と分離槽と一つの装置として取り扱うことができる卓上型のミキサーセトラーと、それを利用した抽出方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】卓上型ミキサーセトラーの第1実施形態の分解斜視図である。
【
図2】
図1の卓上型ミキサーセトラーの斜視図である。
【
図3】
図1の卓上型ミキサーセトラーの正面図である。
【
図4】
図1の卓上型ミキサーセトラーの平面図である。
【
図5】
図1の卓上型ミキサーセトラーにおける第1蓋体の正面図である。
【
図6】
図1の卓上型ミキサーセトラーにおける第1保護部材の正面図である。
【
図7】
図1の卓上型ミキサーセトラーにおける基材の正面図である。
【
図8】卓上型ミキサーセトラーの第2実施形態の分解斜視図である。
【
図9】
図8の卓上型ミキサーセトラーの斜視図である。
【
図10】卓上型ミキサーセトラーの第3実施形態の分解斜視図である。
【
図12】
図1の卓上型ミキサーセトラーの使用方法の一例を示す斜視図である。
【
図13】
図1の卓上型ミキサーセトラーの使用方法の他の例を示す正面図である。
【
図14】
図1の卓上型ミキサーセトラーの正面を示す写真である。
【
図15】
図1の卓上型ミキサーセトラーの背面を示す写真である。
【
図16】
図1の卓上型ミキサーセトラーの右側面を示す写真である。
【
図17】
図1の卓上型ミキサーセトラーの左側面を示す写真である。
【
図18】
図1の卓上型ミキサーセトラーの平面を示す写真である。
【
図19】
図1の卓上型ミキサーセトラーの底面を示す写真である。
【
図20】
図1の卓上型ミキサーセトラーを斜め上方から見た形状を示す写真である。
【
図21】
図1の卓上型ミキサーセトラーの使用状態を説明する写真である。
【
図22】
図1の卓上型ミキサーセトラーの使用状態を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の卓上型ミキサーセトラー(以下、単にミキサーセトラーと称する。)の例と、その使用方法の一例について説明する。以下に示すミキサーセトラーとその使用例とは、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0018】
図1ないし
図7には、ミキサーセトラーの第1実施形態を示す。
図8及び
図9には、ミキサーセトラーの第2実施形態を示す。
図10及び
図11には、ミキサーセトラーの第3実施形態を示す。
図12及び
図13には、ミキサーセトラーの使用例を示す。
図14以降には、
図1のミキサーセトラーの写真を示す。
【0019】
[第1実施形態]
本実施形態のミキサーセトラー1aは、
図1に示したように、複数の液体を混合する混合部11aと、混合部11aで混合された複数の液体とを貯留して分離させる分離槽12aとを有する。混合部11aと分離槽12aとは、所定の厚みを有する基材13aに設けられる。
【0020】
混合部の流路の形状は、基材に設けられる凹溝又はスリット状の貫通孔からなる流路を備えており、複数の液体を混合できる形状であればよい。本実施形態のミキサーセトラー1aでは、
図1及び
図3に示したように、ふたつの液体の注入口111aと、当該注入口111aに接続されるふたつの流入経路112aと、ふたつの流入経路112aが合流する合流点と、合流点に接続される一つの搬送経路113aと、当該搬送経路113aに接続される排出口114aとを有する。混合部11aは、Y字状である。流入経路112aと搬送経路113aとは、基材13aに設けられた有底の凹溝で構成されている。なお、
図3においては、第1保護部材15a等に隠れている構成は破線で示した。
【0021】
分離槽の形状は、基材に設けられた凹穴又は貫通孔であり、混合された複数の液体を貯留して、比重によって相分離させることができるものであればよい。本実施形態のミキサーセトラー1aでは、分離槽12aは、基材13aを貫通する三角形状の貫通孔で構成される。
【0022】
基材は、混合部を構成する凹溝又はスリット状の貫通孔と分離槽を構成する凹穴又は貫通孔とを形成できる形状であり、蓋体を固定できる形状であればよい。本実施形態のミキサーセトラー1aでは、基材13aは、正面視において方形状の板で構成される。
【0023】
図1及び
図2に示したように、本実施形態のミキサーセトラー1aでは、基材13aの一方の面には第1蓋体14aが被せられた状態で、基材13aと第1蓋体14aとが液密な状態で固定され、基材の他方の面には第2蓋体16aが被せられた状態で、基材13aと第2蓋体16aとが液密な状態で固定される。これにより、混合部11aと分離槽12aとを一体化して一つの装置として取り扱うことが可能になり、また、混合部11a及び分離槽12aが液密に保たれる。
【0024】
本実施形態のミキサーセトラー1aでは、第1蓋体14aと第2蓋体16aとは、透視可能な素材である石英ガラスで構成されている。そして、第1蓋体14aには、混合部11a又は分離槽12aの位置に貫通孔を有する窓157が設けられた第1保護部材15aが固定される。第2蓋体16aには、窓が設けられていない第2保護部材17aが固定される。混合部11a又は分離槽12aの内部の様子は、第1蓋体14aと第1保護部材15aの窓157とを介して観察することができる。また、混合部11a又は分離槽12aに対して、第1蓋体14aと第1保護部材15aの窓157とを介して、紫外線などの光を照射することも可能である。
【0025】
本実施形態のミキサーセトラー1aにおいては、混合部11aの窓157は角を円弧状にした長方形であり、分離槽12aの窓157は角を円弧状にした三角形状である。それぞれの窓157は、混合部11a又は分離槽12aに比して、正面視において大きさが小さく構成されている。これにより、第1保護部材15aに、後述するように、第1孔151から第6孔156までの貫通孔を設けている。
【0026】
本実施形態のミキサーセトラー1aでは、基材13aと、第1蓋体14aと、第1保護部材15aと、第2蓋体16aと、第2保護部材17aとは、それぞれの部材に設けられた貫通孔182と螺子穴183に複数本の螺子181を挿通して複数本の螺子181を締結することで、相互に固定されている。このため、螺子181を緩めることによって、各部材を分解して洗浄したり、破損した部材を新しいものに取り換えたりすることができる。
【0027】
第1蓋体14a及び、第1保護部材15aには、基材13aに設けた注入口111a、排出口114a、又は分離槽12aと、連通する複数の貫通孔が設けられている。本実施形態のミキサーセトラー1aの第1蓋体14aには、
図5に示したように、第1孔141、第2孔142、第3孔143、第4孔144、第5孔145、及び第6孔146が設けられる。同様に第1保護部材15aには、
図6に示したように、第1孔151、第2孔152、第3孔153、第4孔154、第5孔155、及び第6孔156が設けられる。
【0028】
第1孔141、151は、
図7に示した混合部11aの注入口111aと連通する。第2孔142、152も、同様に、混合部11aの注入口111aと連通する。第1孔141、151と第2孔142、152には、シリンジポンプなどにより、反応を生じさせる液体が供給される。混合部11aの注入口111a、流入経路112a、合流点、及び搬送経路113aを通過した複数の液体の混合液は、排出口114aへと流れる。排出口114aは、第3孔143、153と連通する。
【0029】
第3孔143、153には、
図12に示したように、混合部11aと分離槽12aとを接続するチューブ16が接続される。チューブ16は、第1保護部材15aの外部に露出しており、その一端部が第3孔143、153に接続され、その他端部が第4孔144、154に接続される。
【0030】
第4孔144、154は、
図3及び
図7に示したように、三角形の分離槽12aと連通する。混合部11aで混合された混合液は、チューブ16を通って、分離槽12aへと供給され、貯留される。貯留槽では、混合液を貯留して、混合液を分離させる。分離槽12aの上部は、第5孔145、155と連通している。分離槽において分離した液体のうち上部に位置する液体は、第5孔145、155から装置の外へと液体が排出される。分離槽12aの下部は、第6孔146、156と連通している。分離槽12aにおいて分離した液体のうち下部に位置する液体は、第6孔146、156を経て装置の外へと液体が排出される。
【0031】
チューブ16は、一端部と他端部とが雄螺子となっており、第3孔143、153、第4孔144、154に設けた雌螺子に対して螺合することにより、着脱可能に構成されている。複数の長さ、形状が異なるチューブを用意しておき、チューブを取り換えることによって、チューブ内における混合時間、混合の強さなどを任意に調節することが可能になる。チューブの形状は、直線状、螺旋状などにすることができる。
【0032】
本実施形態のミキサーセトラー1aでは、チューブ16は、装置の外に露出している。チューブ16が他の物品に干渉して邪魔になったり、チューブ16が破損したりしないようにする目的で、チューブ16は可撓性を有する素材で構成されている。具体的には、チューブ16の素材はポリテトラフルオロエチレンある。
【0033】
本実施形態のミキサーセトラー1aは、
図2に示したように、混合部11aと分離槽12aとが、基材13aと第1蓋体14aと第2蓋体16aとによって、一体化されている。このため、ミキサーセトラー1aを使用する際には、混合部11aと分離槽12aと別々に運搬する必要がなく、一つの装置として扱うことが可能である。混合部11aと分離槽12aとは、基材13aに設けられているため、混合部11aと分離槽12aとを別々に洗浄する必要がない。例えば、基材13aを水と界面活性剤とを含有する液体に浸漬し、超音波を照射することによって、混合部と分離槽とを同時に洗浄することができる。
【0034】
[第2実施形態]
第1実施形態のミキサーセトラー1aは、第2蓋体16a、第2保護部材17aを備えるものである。第2実施形態のミキサーセトラー1bは、
図8及び
図9に示したように、第2蓋体16aと第2保護部材17aとを備えておらず、基材13bに設けられた分離槽12bを有底の凹穴で構成した点において相違する。
図8及び
図9においては、第1実施形態のミキサーセトラー1aと共通する構成については、
図1から
図7で用いたのと同様の符号を使用した。
【0035】
本実施形態のミキサーセトラー1bにおいては、撹拌槽12bは、基材13bを貫通するものではない。このため、基材13bの他方の面を第2蓋材で覆わない状態で液密な状態となっており、上述の通り、第2蓋体16aと第2保護部材17aとを設ける必要がない。第2蓋体16aと第2保護部材17aとが省略可能であるため、その分だけ装置を小型かつ軽量にすることができる。本実施形態のミキサーセトラー1bにおいては、基材13bと第1蓋体14aと第1保護部材15aとによって、一体化されている。
【0036】
[第3実施形態]
第3実施形態のミキサーセトラー1cは、
図10及び
図11に示したように、基材13cの構成が、第1実施形態に係るミキサーセトラー1aと相違する。
図10及び
図11においては、第1実施形態のミキサーセトラー1aと共通する構成については、
図1から
図7で用いたのと同様の符号を使用した。
【0037】
本実施形態のミキサーセトラー1cでは、基材13cはブロック状の部材で構成されている。基材13cは、正面視において方形の形状である。ブロック状の基材13cの正面から背面に向かって貫通する三角形状の貫通孔により、分離槽12cが構成されている。混合部11cは、第1実施形態に係るミキサーセトラー1aと同様に、有底の凹溝から構成されているが、より凹溝の深さが大きく構成されている。液体の流れ方については、第1実施形態に係るミキサーセトラー1aの混合部11aと同様である。第3実施形態のミキサーセトラー1cは、上記のような構成を備えており、第1実施形態のミキサーセトラー1aに比して、単位時間内に処理することができる液体の量が大きく構成されている。
【0038】
次に、第1実施形態に係るミキサーセトラー1aを例にして、液液抽出を行う方法について説明する。
【0039】
図12に示したように、第1孔141、151と第2孔142、152とを経て、混合部11aの注入口111aに第1の液体と第2の液体とを供給する。なお、液体の供給に際しては、シリンジポンプなどの送液手段を利用することができる。第1の液体と第2の液体とは、互いに非相溶性であり、互いに比重が異なる。第2の液体には、抽出物質が溶け込んでいる。抽出物質は、第2の液体及び第1の液体の両方に対して親和性を有するが、第2の液体に比べて、第1の液体に対してより親和性が高いものである。
【0040】
第1の液体と第2の液体は、流入経路112aを通過し、合流点で合流し、搬送経路113a、第3孔143、153、及びチューブ16を通過する過程において混合される。搬送経路113a及びチューブ16内において、混合液はスラグ流の状態となって流れる。混合された液体は、分離槽12aに排出される。この混合の過程において、抽出物質は、親和性の違いにより、第2の液体から第1の液体へと移動する。分離槽12aでは、比重の差によって、第1の液体と第2の液体とは、分離した状態となる。抽出物質を含む第1の液体は、第5孔145、155を介して、装置外に排出して、回収する。第2の液体は、第6孔146、156を介して、装置外に排出して、廃棄する。このようにして、第2の液体から抽出物質を抽出して、第1の液体へと移動させることができる。
【0041】
上記の例では、第2の液体から第1の液体へと、抽出物を移動させるが、第1の液体から第2の液体へ抽出物質を移動させるようにしてもよい。
【0042】
第1の液体及び第2の液体の組み合わせとしては、例えば、水などの親水性の液体と、油などの疎水性の液体との組み合わせが挙げられる。抽出物質としては、水にも油にも溶解する両親媒性物質など任意の物質が挙げられる。
【0043】
上記の方法では、ミキサーセトラーを1台使用したが、2
台以上のミキサーセトラーを使用してもよい。
図13に複数台のミキサーセトラーを使用して液液抽出を行う方法の例を示す。
【0044】
図13の方法では、互いに非相溶性であり、互いに比重の異なる第1の液体と第2の液体とを第1ミキサーセトラー1aの混合部において混合する。混合の過程で、第2の液体に含まれる抽出物質を第1の液体に移動させる。混合液を第1ミキサーセトラー1aの分離槽において比重分離させて、第2の液体を排出し、第1の液体を回収する。なお、第2の液体から第1の液体へと、抽出物を移動させるが、第1の液体から第2の液体へ抽出物質を移動させるようにしてもよい。
【0045】
回収した第1の液体と、抽出物質を含む第3の液体とを、第2ミキサーセトラー1aの混合部において混合することで、第3の液体に含まれる抽出物質を第1の液体に移動させる。混合液を第2ミキサーセトラー1bの分離槽において比重分離させて、第3の液体を排出し、第1の液体を回収する工程を行う。ここで液液抽出処理を終えてもよいし、
図13に示すように、3台目以降のミキサーセトラーを用いて、さらに液液抽出処理を行ってもよい。
【0046】
図13の例では、第2ミキサーセトラー1aで回収した第1の液体と、抽出物質を含む第4の液体とを、第3実施形態のミキサーセトラー1cの混合部において混合することで、第4の液体に含まれる抽出物質を第1の液体に移動させる。混合液を第3実施形態のミキサーセトラー1cの分離槽において比重分離させて、第4の液体を排出し、第1の液体を回収する工程を行う。この方法では、液液抽出を多段階に行うので、抽出物質の含有量が段階的に高まっていく。これによって、より抽出物質の濃度をより高めることができる。なお、上記の例では、第1の液体と、第3の液体、又は第4の液体は、互いに非互溶性であり、互いに比重の異なる物質である。
【0047】
上記に示したミキサーセトラーとその使用方法は、例示に過ぎず、例えば、以下に示すように、変形してもよい。
【0048】
上記の例では、混合部は凹溝とした。混合部は、基材に設けられたスリット状の貫通孔としてもよい。また、上記の例では、注入口、流入経路の数はふたつとし、合流点の数はひとつとした。混合部の構成は、この構成に限定されない。例えば、注入口、流入経路、の数は2に限定されず任意の数にすることができる。合流点の数、搬送経路の数、又は排出口の数も1に限定されず任意の数にすることができる。
【0049】
上記の例では、分離槽の形状は、正面視において三角形状とした。分離槽の形状は、三角形に限定されない。例えば、分離槽の形状は、真円及び楕円を含む円形、又は三角形以上の多角形などにしてもよい。
【0050】
流入経路、又は搬送経路などの流路の造形方法は、特に限定されない。例えば、金属または合成樹脂材料で構成される基材を切削して有底の凹溝又は貫通孔を形成したり、金型を用いて合成樹脂で成形したりしてもよい。分離槽の造形方法、第1蓋部又は第2蓋部を含む蓋部の造形方法、第1保護部材又は第2保護部材を含む保護部材の造形方法についても、同様である。
【0051】
上記の例では、基材、蓋体、又は保護部材の形状は、正面視において、方形状とした。基材、蓋体、又は保護部材の正面視における形状は、これに限定されず、例えば、真円及び楕円を含む円形、又は三角形以上の多角形などにしてもよい。基材、蓋体、又は保護部材の全体の形状も、特に限定されず、例えば、板状、又はブロック状などにすることができる。
【0052】
上記の例は、何れも保護部材を備える。第1保護部材又は第2保護部材を含む保護部材は省略してもよい。例えば、蓋体が破損しにくい素材で構成されている場合などは、保護部材は省略することができる。
【0053】
上記の例では、蓋体を構成する透視可能な素材として、石英ガラスを使用した。透視可能な素材は、これに限定されず、例えば、サファイアガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0054】
基材の厚みは、特に限定されず、例えば、1~100mmにすることができる。
【0055】
ミキサーセトラーは、実験室の作業台などの卓上で好適に使用することができる。具体的な寸法は特に限定されないが、例を挙げると、幅50~300mm、高さ50~300mm、奥行き10~300mmの寸法にすることができる。
【0056】
上記の例では、混合部と分離槽とをチューブで連通させた。混合部と分離槽とを連通させる構成は、これに限定されず、例えば、混合部と分離槽とを接続するスリット状又は凹溝からなる流路を基材に設けてもよい。
【0057】
チューブの素材、基材の素材、蓋体の素材、保護部材の素材は、特に限定されず、ミキサーセトラーの用途に合わせて任意の素材を使用すればよい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、又はシリコーンを使用してもよい。
【0058】
上記の例では、窓の形状は、方形又は三角形にした。窓の形状はこれに限定されず、例えば、円形、三角形以上の多角形にすることができる。窓は、第1保護部材に設ける例に限定されず、第1保護部材、及び第2保護部材のうち、少なくともいずれか一方に設けられる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1a ミキサーセトラー
11a 混合部
12a 分離槽
13a 基材
14a 第1蓋体(蓋体)
16a 第2蓋体
15a 第1保護部材(保護部材)
17a 第2保護部材
157 窓
181 螺子
16 チューブ
1b ミキサーセトラー
12b 分離槽
13b 基材
1c ミキサーセトラー
11c 混合部
12c 分離槽
13c 基材