(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】オカラベースの飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240703BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240703BHJP
A23L 33/14 20160101ALI20240703BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240703BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20240703BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20240703BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240703BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240703BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240703BHJP
A61P 1/00 20060101ALN20240703BHJP
A61P 1/14 20060101ALN20240703BHJP
A61P 37/04 20060101ALN20240703BHJP
A61P 1/12 20060101ALN20240703BHJP
A61P 29/00 20060101ALN20240703BHJP
A61K 35/744 20150101ALN20240703BHJP
A61K 35/745 20150101ALN20240703BHJP
A61K 36/064 20060101ALN20240703BHJP
A61K 36/48 20060101ALN20240703BHJP
A61K 47/46 20060101ALN20240703BHJP
A61K 47/22 20060101ALN20240703BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240703BHJP
A61K 31/352 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/135
A23L33/14
A23L11/00 Z
A23L11/65
A23L33/21
A23L2/00 A
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K131:00
A61P1/00
A61P1/14
A61P37/04
A61P1/12
A61P29/00
A61K35/744
A61K35/745
A61K36/064
A61K36/48
A61K47/46
A61K47/22
A61P43/00 121
A61K31/352
(21)【出願番号】P 2020548779
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 SG2019050135
(87)【国際公開番号】W WO2019177536
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】10201802068P
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャオ チュエン
(72)【発明者】
【氏名】ボン,ウォン チャン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-126375(JP,A)
【文献】PeerJ 4:e2701; DOI 10.7717/peerj.2701
【文献】Food Science and Technology 74 (2016) 456-464
【文献】Food Microbiology 34 (2013) 382-389
【文献】J. Sci. Food Agric. 2017; 97: 135-143
【文献】Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi Vol. 58, No. 11, 559-566 (2011),No. 11, 559-566 (2011)
【文献】Trends in Food Science and Technology,2016年,52,139-147
【文献】Appl Microbiol Biotechnol,2017年,101,7129-7140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティクス及び酵母、可溶性食物繊維、遊離イソフラボン及びエステルを含むオカラベースのプロバイオティック飲料であって、プロバイオティクスが1mlあたり5.0 log CFU以上の細胞数を有
し、
前記飲料は、
- オカラを炭水化物分解酵素で処理して処理済みオカラを形成するステップ;
- 前記処理済みオカラに前記プロバイオティクスと前記酵母とを添加するステップ;並びに
- 所定の期間及び所定の温度で前記処理済みオカラを発酵させ、オカラベースのプロバイオティック飲料を形成するステップ
を含む方法によって調製され、
前記添加される前記プロバイオティクスの量は1mlあたり5~7 log CFUであり、かつ
前記添加される前記酵母の量は1mlあたり5~7 log CFUである、
前記飲料。
【請求項2】
6週間の保存の後、前記飲料中に含まれるプロバイオティクスが1mlあたり5 log CFU以上の細胞数を有し、
可溶性食物繊維の70%;
遊離イソフラボンの90%;及び
エステルの20%
が少なくとも保持される、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記プロバイオティクスが、乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料中に含まれるプロバイオティクスが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
前記プロバイオティクスが1mlあたり6.0 log CFU以上の細胞数を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
前記飲料が、前記飲料に利用される乾燥オカラ1gあたり0.1~100μgのエステルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
前記飲料が、前記飲料に利用される乾燥オカラ1gあたり50~500μgの遊離イソフラボンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
前記飲料が添加物をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のオカラベースのプロバイオティック飲料を形成する方法であって、
- オカラを炭水化物分解酵素で処理して処理済みオカラを形成するステップ;
- 前記処理済みオカラにプロバイオティクスと酵母とを添加するステップ;並びに
- 所定の期間及び所定の温度で前記処理済みオカラを発酵させ、オカラベースのプロバイオティック飲料を形成するステップ
を含
み、
前記添加される前記プロバイオティクスの量は1mlあたり5~7 log CFUであり、かつ
前記添加される前記酵母の量は1mlあたり5~7 log CFUである、
前記方法。
【請求項10】
前記方法が廃棄物のない(zero-waste)方法である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処理が、炭水化物分解酵素での加水分解を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭水化物分解酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペントサナーゼ(pentosanase)、アラバナーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、グリコシダーゼ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プロバイオティクスが、乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属酵母、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プロバイオティクスが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌である、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記酵母が、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、非サッカロミセス属(non-Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせである、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記酵母が、サッカロミセス(S.)セレビシエ(Saccharomyces (S.) cerevisiae)、トルラスポラ(T.)デルブレッキイ(Torulaspora (T.) delbrueckii)、ピキア(P.)クルイベリ(Pichia (P.) kluyveri)、リンドネラ(L.)サトゥルヌス(Lindnera (L.) saturnus)、又はそれらの組み合わせである、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記添加が、プロバイオティクスを添加して、1mlあたり7 log CFUのプロバイオティクスの初期プロバイオティック細胞数を得ることを含む、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記添加が、酵母を添加して、1mlあたり5 log CFUの酵母の初期酵母数を得ることを含む、請求項9~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記所定の期間が8~96時間である、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記所定の温度が15~45℃である、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記処理前にオカラのpHを調整することをさらに含む、請求項9~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記処理前にオカラを熱処理することをさらに含む、請求項9~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記処理済みオカラを、前記添加前に所定の温度まで冷却することをさらに含む、請求項9~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オカラベースの飲料に関する。特に、オカラベースの飲料は、プロバイオティクスを含むことができる。
【背景技術】
【0002】
オカラは豆乳及び豆腐の製造からの食品加工副産物である。世界的には、大豆食品会社によって年間数百万トンものオカラが生成されており、通常、そのオカラは処分されている。オカラ‐大豆製品は製剤化されているものの、オカラの好ましくない質感及び香りのために、消費者の間では普及していない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、これらの課題に対処すること、並びに/又は改善されたオカラベースの飲料を提供すること、及び、いかなる廃棄物流も生成させることなく、オカラを適切な飲料にバイオトランスフォーム(biotransforming)するための改善された方法を提供することを目的とする。
【0004】
概して、本発明は、消費者にとって健康上の利益を有し得るプロバイオティクスを含むオカラベースの飲料に関する。さらに、飲料中の不溶性食物繊維(IDF)の量を減少させ、エステルの量を増加させるための本発明の方法による飲料を作製する方法によるオカラのバイオトランスフォーメーションによって、本発明のオカラベースの飲料はより口当たりが良くなる可能性がある。
【0005】
第1の態様において、本発明は、プロバイオティクス、可溶性食物繊維、遊離イソフラボン及びエステルを含むオカラベースのプロバイオティック飲料を提供し、ここで、プロバイオティクスが1mLあたり5.0 log CFU以上の細胞数を有する。特に、プロバイオティクスは1mLあたり6.0 log CFU以上の細胞数を有し得る。
【0006】
プロバイオティクスは、本発明の目的に適した任意のプロバイオティクスであり得る。特定の態様において、プロバイオティクスは、乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせを含むことができる。具体的には、プロバイオティクスは、限定されるものではないが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌を含むことができる。具体的には、プロバイオティクスは、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含むことができる。さらに具体的には、プロバイオティクスは、サッカロミセス・セレビシエ(CNCM I-3856)を含むことができる。
【0007】
特定の態様において、6週間の保存の後、飲料に含まれるプロバイオティクスが1mLあたり5 log CFU以上の細胞数を有し、可溶性食物繊維の70%;遊離イソフラボンの90%;及びエステルの20%が少なくとも保持される。
【0008】
飲料は適量のエステルを含み得る。例えば、この飲料は、乾燥オカラ1gあたり0.1~100μgのエステル(乾燥オカラを5重量%含有する飲料1Lあたり5~5000μgに相当)を含むことができる。
【0009】
飲料は適量の遊離イソフラボンを含み得る。例えば、この飲料は、乾燥オカラ1gあたり50~500μgの遊離イソフラボン(乾燥オカラを5重量%含有する飲料1Lあたり2.5~25mgに相当)を含むことができる。
【0010】
飲料はさらに、追加の添加物を含んでもよい。添加物は、任意の適切な添加物であり得る。例えば、添加物は、甘味料、香料、安定剤、着色剤、防腐剤、酸性調節剤、又はそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0011】
本発明の第2の態様において、上記のオカラベースのプロバイオティック飲料を形成する方法が提供され、この方法は、以下を含む:
- オカラを炭水化物分解酵素で処理して処理済みオカラを形成するステップ;
- 処理済みオカラにプロバイオティクスと酵母とを添加するステップ;並びに
- 所定の期間、所定の温度で処理済みオカラを発酵させ、オカラベースのプロバイオティック飲料を形成するステップ。
【0012】
具体的には、本発明の方法は廃棄物のない(zero-waste)方法である。
【0013】
特定の態様において、処理は炭水化物分解酵素での加水分解を含み得る。処理に使用される炭水化物分解酵素は、本発明の目的に適した任意の炭水化物分解酵素であり得る。例えば、炭水化物分解酵素は、限定されるものではないが、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペントサナーゼ(pentosanase)、アラバナーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、グリコシダーゼ、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0014】
この方法で使用されるプロバイオティクスは、任意の適切なプロバイオティクスであり得る。例えば、プロバイオティクスは、本発明の第1の態様に関して上記したようであり得る。
【0015】
この方法で使用される酵母は、任意の適切な酵母であり得る。例えば、酵母はサッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、非サッカロミセス属(non-Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせであり得る。具体的には、酵母は、限定されるものではないが、サッカロミセス (S.)セレビシエ(Saccharomyces (S.) cerevisiae)、トルラスポラ(T.)デルブレッキイ(Torulaspora (T.) delbrueckii)、ピキア(P.)クルイベリ(Pichia (P.) kluyveri)、リンドネラ(L.)サトゥルヌス(Lindnera (L.) saturnus)、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0016】
添加は、適量のプロバイオティクス及び適量の酵母を添加することを含み得る。特定の態様において、添加は、プロバイオティクスを添加して、1mLあたり5~7 log CFUのプロバイオティクスの初期プロバイオティック細胞数を得ることを含むことができる。特定の態様において、添加は、酵母を添加して、1mLあたり5 log CFUの酵母の初期酵母数を得ることを含むことができる。
【0017】
発酵は、適切な条件下で実施することができる。特定の態様において、所定の期間は8~96時間であり得る。特定の態様において、所定の温度は15~45℃であり得る。
【0018】
特定の態様において、この方法は、処理前にオカラのpHを調整することをさらに含み得る。
【0019】
特定の態様において、この方法は、処理前にオカラを熱処理することをさらに含み得る。熱処理は適切な温度であり得る。
【0020】
特定の態様において、この方法は、添加前に処理済みオカラを所定の温度に冷却することをさらに含み得る。
【0021】
本発明が完全に理解され、容易に実用的な効果を発揮するために、ここでは、非限定的な例、単なる例示的な実施形態の形で説明し、その説明は添付の例示的な図の参照を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、異なる処理における不溶性及び可溶性繊維の変化を示す。E:酵素処理済みオカラ;EL:プロバイオティクス(Lb.カゼイ)で発酵させた酵素処理済みオカラ;EY:酵母(L.サトゥルヌス)で発酵させた酵素処理済みオカラ。異なる文字は、不溶性繊維(小文字)の中、及び可溶性繊維(大文字)の中におけるp<0.05での有意な差異を示す。
【
図2】
図2は、異なる処理におけるグリコシド及び遊離イソフラボンの変化を示す(n = 3)。図中、E:酵素処理済みオカラ;EL:プロバイオティクス(Lb.カゼイ)で発酵させた酵素処理済みオカラ;EY:酵母(L.サトゥルヌス)で発酵させた酵素処理済みオカラ;EYL:プロバイオティクス(Lb.カゼイ)及び酵母(L.サトゥルヌス)で発酵させた酵素処理済みオカラ。異なる文字は、グリコシド型イソフラボン(小文字)の中、及び遊離イソフラボン(大文字)の中におけるp<0.05での有意な差異を示す。
【
図3】
図3は、異なる処理における総アルデヒド及び総エステルの変化を示す(n = 3)。図中、E:酵素処理済みオカラ;EL:プロバイオティクス(Lb.カゼイ)で発酵させた酵素処理済みオカラ;EY:酵母(L.サトゥルヌス)で発酵させた酵素処理済みオカラ;EYL:プロバイオティクス(Lb.カゼイ)及び酵母(L.サトゥルヌス)で発酵させた酵素処理済みオカラ。ND:検出なし。異なる文字は、総アルデヒド(小文字)の中、及び総エステル(大文字)の中におけるp<0.05での有意な差異を示す。
【
図4】
図4は、炭水化物分解酵素処理済み処理及びオカラにおける可溶性繊維に対する加熱の影響を示す。異なる文字(a、b、c)は処理間での有意な差異を示す。
【
図5】
図5は、イソフラボングリコシド(白抜き棒)及びアグリコン(黒塗り棒)に対する炭水化物分解酵素及び加温の影響を示す。異なる文字(a、b、c、A、B、C)は、処理間でのイソフラボングリコシド又はアグリコンの間の有意な差異を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述したように、オカラをよりよく利用するためにはオカラの加工が必要とされる。現在、オカラは飼料として堆肥化に使用されたり、又は埋め立て地に直接投棄されたりしている。しかし、オカラは多くの栄養素を保持している。乾燥基準では、オカラは不溶性食物繊維(IDF)を40~50重量%、可溶性食物繊維(SDF)を4~15重量%及びタンパク質を15~30重量%含有する。したがって、本発明は、オカラを完全に利用し、実質的な廃棄物なしを達成するオカラベースの飲料に関する。
【0024】
概して、本発明は、オカラベースの飲料及びそれを形成する方法に関する。オカラベースの飲料は、高い細胞数の生きたプロバイオティクス、可溶性繊維、顕著に少ない不溶性繊維、並びに、多量の遊離アミノ酸、遊離イソフラボン(イソフラボンアグリコン)及びフルーティなエステルを有しているため、健康上の利益を有し得る。さらに、6~8週間の保存の後、飲料中のプロバイオティクスの生存度は、低温で保存した場合には有意に変化せず、周囲温度で保存した場合には最小限度で低下した。実際、プロバイオティクスの生存度は、健康上の利益を付与するための最低用量を超えていた。
【0025】
第1の態様において、本発明は、プロバイオティクス、可溶性食物繊維、遊離イソフラボン及びエステルを含むオカラベースのプロバイオティック飲料を提供し、ここで、プロバイオティクスが1mLあたり5.0 log CFU以上の細胞数を有する。
【0026】
飲料に含まれるプロバイオティクスは、任意の適当なプロバイオティクスであり得る。プロバイオティクスは、十分な量で提供される場合に、宿主に健康上の利益を付与する、任意の適切な生きた微生物であり得る。例えば、プロバイオティクスは、乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせを含むことができる。具体的には、プロバイオティクスは、限定されるものではないが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌を含むことができる。さらに具体的には、乳酸桿菌は、Lb.プランタルム(299v)、Lb.ヘルヴェティクス(L10)、Lb.パラカゼイ(L26)、Lb.ラムノサス(LGG)又はそれらの組み合わせを含むことができる。具体的には、プロバイオティクスは、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含むことができる。さらに具体的には、プロバイオティクスは、サッカロミセス・セレビシエ(CNCM I-3856)を含むことができる。
【0027】
適量のプロバイオティクスをオカラベースの飲料中に含み得る。例えば、プロバイオティクスは1mLあたり5.0 log CFU以上の細胞数を有することができる。特定の態様において、プロバイオティクスは1mLあたり6.0 log CFU以上の細胞数を有することができる。さらに具体的には、プロバイオティクスは1mLあたり7.0 log CFU以上の細胞数を有することができる。
【0028】
具体的には、飲料に含まれるプロバイオティクスは、1mLあたり5.0~10.0 log CFU、1mLあたり5.5~9.5 log CFU、1mLあたり6.0~9.0 log CFU、1mLあたり6.5~8.5 log CFU、1mLあたり7.0~8.0 log CFUの細胞数を有し得る。さらに具体的には、飲料に含まれるプロバイオティクスは1mLあたり約7.0~10.0 log CFUの細胞数を有することができる。
【0029】
飲料は適量のエステルを含み得る。例えば、この飲料は、乾燥オカラ1gあたり0.1~100μgのエステル(乾燥オカラを5重量%含有する飲料1Lあたり5~5000μgに相当)を含むことができる。飲料中のエステルの存在は、飲料が発酵を経たことを示す。特に、飲料に含まれるエステルは、飲料にフルーティな及び/又はフローラルな特徴を与え得る。このことは、エステルが、当初オカラに存在したかもしれない豆臭さ及び/又は青臭さを隠すのに役立つことができるため、有利であり得る。
【0030】
飲料に含まれるエステルは、任意の適切なエステルであり得る。例えば、エステルは、エチルエステル、酢酸エステル、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。具体的には、エステルは、酢酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、酢酸2-フェニルメチル、酢酸2-フェニルエチル、酢酸イソブチル、1-ブチル-3-メチル-アセテート(酢酸イソアミル)、酢酸ヘキシル、ヘキサン酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0031】
飲料は適量の遊離イソフラボンを含み得る。遊離イソフラボンはイソフラボンアグリコンと呼ばれる。例えば、この飲料は、乾燥オカラ1gあたり50~500μgの遊離イソフラボン(乾燥オカラを5重量%含有する飲料1Lあたり2.5~25mgに相当)を含むことができる。
【0032】
本発明の目的のためには、遊離イソフラボンは、それに結合した糖分子を含まない植物ベースの生理活性植物エストロゲン様化合物として定義される。遊離イソフラボンとしては、ダイゼイン、グリシテイン及びゲニステインが挙げられるが、これらに限定されない。飲料に含まれる遊離イソフラボンは、飲料の消費者の消化管でより容易に吸収されるため有益である。大豆イソフラボンは、抗発癌性、抗酸化性及び抗アテローム性の活性を有する植物エストロゲンである。発酵大豆食品中においては、遊離イソフラボンは、グリコシド型よりも、ヒトにおいてより生物学的に利用可能であることが示唆されている。
【0033】
特定の態様において、この飲料は、乾燥オカラ1gあたり0.2~1mgの総イソフラボン(乾燥オカラを5重量%含有する飲料1Lあたり10~50mgに相当)の総イソフラボン含有量を有することができる。総イソフラボンは、飲料中の遊離イソフラボン及び結合イソフラボン(イソフラボングリコシド)からなるイソフラボンの総量によって測定される。
【0034】
特定の態様において、6~8週間の保存の後に、飲料中に含まれるプロバイオティクスが1mLあたり5 log CFU以上の細胞数を有し、生産当初の飲料と比較して、可溶性食物繊維の70%;遊離イソフラボンの90%;及びエステルの20%が少なくとも保持され得る。
【0035】
特に、飲料を6~8週間周囲温度で保存する場合、飲料に含まれるプロバイオティクスは1mLあたり7 log CFU以上の細胞数を有し、生産当初の飲料の可溶性食物繊維、遊離イソフラボン及びエステルがほぼ全て保持され得る。
【0036】
特に、飲料を低い温度(例えば約5~7℃)で保存する場合、飲料に含まれるプロバイオティクスは、1mLあたり7 log CFU以上の細胞数を有し、生産当初の飲料と比較して、可溶性食物繊維の70%;遊離イソフラボンの90%;及びエステルの20%が少なくとも保持され得る。
【0037】
したがって、飲料の製造後一定期間が経過しても、飲料が消費者に健康上の利益を付与し得ることがわかる。したがって、飲料は適切な保存寿命を有し得る。
【0038】
飲料は、プロバイオティクスが適切なレベルに維持されるように、適切な温度で保存し得る。例えば、飲料は約25℃以下の温度で保存することができる。好ましくは、飲料は20℃以下の温度で保存することができる。具体的には、飲料は約1~20℃、5~15℃、7~10℃の温度で保存してもよい。
【0039】
飲料はさらに、追加の添加物を含み得る。添加物は、より完成した(finished)消費者製品をもたらすのに適した添加物であり得る。特定の態様において、添加物は、甘味料、香料、安定剤、増粘剤、着色剤、防腐剤、酸性調節剤、又はそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の第2の態様において、上記のオカラベースのプロバイオティック飲料を形成する方法が提供され、この方法は、以下を含む:
- オカラを炭水化物分解酵素で処理して処理済みオカラを形成するステップ;
- 処理済みオカラにプロバイオティクスと酵母とを添加するステップ;並びに
- 所定の期間、所定の温度で処理済みオカラを発酵させ、オカラベースのプロバイオティック飲料を形成するステップ。
【0041】
具体的には、本発明の方法は廃棄物のない(zero-waste)方法である。すなわち、本発明の方法によれば、いかなる廃棄物も生成されず、オカラは完全にオカラベースの飲料の生産に利用される。したがって、本発明の方法は、豆乳及び豆腐の製造から形成されたオカラの適切な処分方法を見い出すという課題を克服し、またさらに、有用で有益な飲料を形成する。
【0042】
本発明の目的に使用されるオカラは、任意の適切なオカラであり得る。オカラは、炭水化物分解酵素によるオカラの処理の前に処理を経てもよい。特定の態様において、この方法は、オカラを水と混合して、オカラの水性スラリーを形成することをさらに含むことができる。任意の適量のオカラを添加してスラリーを形成することができる。例えば、オカラの量は、1~10重量%(オカラの乾燥重量基準)であり得る。具体的には、オカラの量は約2~5重量%であってもよい。さらに具体的には、オカラの量は約5重量%であってもよい。
【0043】
この方法は、処理前にオカラのpHの調整をさらに含み得る。具体的には、pHは、処理に使用される炭水化物分解酵素の作動pHに調整され得る。したがって、pHの調整により、オカラの処理において炭水化物分解酵素が効果的に機能することができる。例えば、pHを2~7のpHに調整することができる。pHの調整は、任意の適当な方法によることができる。例えば、調整は、適切な酸を添加することを含み得る。調整に使用する酸は、消費されるのに適した酸でなければならない。具体的には、酸は、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0044】
特定の態様において、この方法は、処理前にオカラの加熱をさらに含み得る。加熱には、オカラの軽い低温殺菌を含めることができる。加熱は、処理前のオカラの保存寿命を延長し、処理中の汚染の危険性も減少させ得る。加熱は適切な条件下で実施し得る。例えば、加熱は、約60~140℃の温度で実施することができる。具体的には、温度は約100~125℃とすることができる。
【0045】
加熱は適切な期間で実施し得る。例えば、加熱は2秒~60分間であり得る。具体的には、加熱は約10~30分間であり得る。さらに具体的には、加熱は約15~20分間でもよい。
【0046】
特定の態様において、オカラスラリーは、処理前に冷却され得る。処理に使用される炭水化物分解酵素は、本発明の目的に適した任意の炭水化物分解酵素であり得る。例えば、炭水化物分解酵素は、限定されるものではないが、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペントサナーゼ(pentosanase)、アラバナーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、グリコシダーゼ、又はそれらの組み合わせであり得る。適量の炭水化物分解酵素をオカラスラリーに添加することができる。
【0047】
処理は炭水化物分解酵素での加水分解を含むことができる。炭水化物分解酵素での加水分解は適切な条件下であり得る。例えば、炭水化物分解酵素での加水分解は、適切な期間及び適切な温度であり得る。具体的には、炭水化物分解酵素での加水分解は2~12時間、3~10時間、4~9時間、5~8時間、6~7時間であり得る。さらに具体的には、加水分解は約3時間でもよい。加水分解は、約30~70℃、35~65℃、40~60℃、45~55℃、48~50℃の温度で実施することができる。さらに具体的には、加水分解は約50℃の温度で実施してもよい。
【0048】
処理はオカラ中のIDF量を顕著に減少させ、SDF量を増加させる。具体的には、炭水化物分解酵素によってオカラIDFはSDF(オリゴ糖)と単糖とに分解され、SDF、ブドウ糖、及びガラクトースの増加が導かれる。さらに、SDFは、その後の発酵ステップにおけるプロバイオティック増殖を補助するためのプレバイオティクス(prebiotic)の良い供給源であり得る。
【0049】
処理に続いて、処理済みオカラが形成され得る。処理済みオカラは、酵素変性及び滅菌のために加熱し得る。加熱は適切な条件下で実施し得る。例えば、加熱は適切な温度で実施することができる。温度は、処理に使用する炭水化物分解酵素に依存し得る。具体的には、温度は約90~140℃とすることができる。さらに具体的には、温度は約100~125℃でもよい。
【0050】
加熱は適切な期間で実施し得る。例えば、加熱は1~30分間であり得る。具体的には、加熱は約15~20分間でもよい。
【0051】
この方法はさらに、プロバイオティクス及び酵母の添加前に、加熱された処理済みオカラを冷却することを含み得る。
【0052】
添加は、適切なプロバイオティクスを添加することを含み得る。例えば、プロバイオティクスは乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせであり得る。具体的には、プロバイオティクスは、限定されるものではないが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌を含むことができる。さらに具体的には、乳酸桿菌は、Lb.プランタルム(299v)、Lb.ヘルヴェティクス(L10)、Lb.パラカゼイ(L26)、Lb.ラムノサス(LGG)又はそれらの組み合わせを含むことができる。具体的には、プロバイオティクスは、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含むことができる。さらに具体的には、プロバイオティクスは、サッカロミセス・セレビシエ(CNCM I-3856)を含むことができる。
【0053】
添加は、適量のプロバイオティクスを添加することを含み得る。処理済みオカラ中の初期プロバイオティック細胞数が1mLあたり5.0 log CFU以上になるようにプロバイオティクスを添加し得る。例えば、プロバイオティクスの添加量は1mLあたり5~9 log CFUであり得る。具体的には、プロバイオティクスの添加量は1mLあたり約6~8 log CFU、1mLあたり6.5~7 log CFUであってもよい。さらに具体的には、プロバイオティクスの添加量は1mLあたり5~7 log CFUであってもよい。特定の態様において、添加は、プロバイオティクスを添加して、1mLあたり7 log CFUプロバイオティクスの初期プロバイオティック細胞数を得ることを含むことができる。
【0054】
添加は、適切な酵母を添加することを含み得る。例えば、酵母はサッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、非サッカロミセス属(non-Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせであり得る。具体的には、酵母は、限定されるものではないが、サッカロミセス (S.)セレビシエ(Saccharomyces (S.) cerevisiae)、トルラスポラ(T.)デルブレッキイ(Torulaspora (T.) delbrueckii)、ピキア(P.)クルイベリ(Pichia (P.) kluyveri)、リンドネラ(L.)サトゥルヌス(Lindnera (L.) saturnus)、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0055】
添加は、適量の酵母を添加することを含み得る。例えば、酵母の添加量は、1mLあたり3~9 log CFUであり得る。具体的には、その量は1mLあたり約5~7 log CFUであり得る。特定の態様において、添加は、酵母を添加して、1mLあたり5 log CFUの酵母の初期酵母数を得ることを含むことができる。
【0056】
プロバイオティクスの添加及び酵母の添加は同時に実施してもよいし、連続的に実施してもよい。
【0057】
プロバイオティクス及び酵母の組み合わせは具体的に選択し得る。プロバイオティクス並びに酵母の選択は、酵母の以下の能力に基づくことができる:発酵中に香ばしい香りがするエステルの生成;周囲温度及び冷却温度保存中のプロバイオティクスの生存力の補助。
【0058】
発酵は、適切な条件下で実施することができる。例えば、発酵は所定の期間、所定の温度であり得る。所定の期間は、本発明の目的に適した任意の期間であり得る。特定の態様において、所定の期間は8~96時間であり得る。具体的には、所定の期間は、約10~90時間、12~84時間、18~72時間、24~60時間、36~48時間であってもよい。さらに具体的には、所定の期間は約24~48時間であってもよい。
【0059】
所定の温度は、本発明の目的に適した任意の温度であり得る。特定の態様において、所定の温度は15~45℃であり得る。具体的には、所定の温度は20~40℃、25~35℃、30~34℃であってもよい。さらに具体的には、所定の温度は約30℃であってもよい。発酵中のいかなる時点でも温度を変えることができる。
【0060】
特定の態様において、形成されたオカラベースのプロバイオティック飲料は、発酵後に適切な温度で保存され得る。例えば、飲料は30℃以下の温度で保存することができる。具体的には、飲料は約25℃以下の温度で保存してもよい。さらに具体的には、飲料は約1~5℃の温度で保存してもよい。
【0061】
本発明の方法にはいくつかの利点がある。例えば、炭水化物分解酵素での処理は、オカラ中の不溶性繊維を可溶性繊維に変換する。後者はプレバイオティクスとしても作用し、その後のプロバイオティクスの増殖を補助する。処理済みオカラは、単なるプロバイオティクスの送達媒体又は担体としてではなく、豊富な発酵培地として作用する。オカラスラリー中の不溶性繊維の減少もまた、流動をより容易にし、これは、飲料において栄養的及び物理的により望ましい。
【0062】
発酵中に、オカラに自然に存在する不快な望ましくない匂い物質(unpleasant off-odourant)であるアルデヒドを、酵母がエステルに変換し、オカラの芳香プロファイルをグリーン系(green)で青臭いものから香ばしく(pleasant)フルーティなものに変える。また、酵母は、少なくとも6~8週間の周囲及び冷却保存中のプロバイオティクス生存力を補助し、オカラの栄養的価値を改善する。オカラを含有する培地におけるこの相互作用は予想外のものである。
【0063】
酵母及びプロバイオティクスの両者は相乗的に作用し、結合イソフラボン(生物学的利用可能性が低い)を遊離イソフラボン(生物学的利用可能性が高い)に変換する。
【0064】
プロバイオティクス及び酵母株の選択された組み合わせのみが、前述の良好な効果をもたらすであろう。
【0065】
別の態様において、医薬における使用のための上記のオカラベースのプロバイオティック飲料が提供される。具体的には、本発明のオカラベースのプロバイオティック飲料は、飲料の消費者の腸の健康及び/又は消化の改善、並びに、使用される具体的なプロバイオティクスによって付与されるその他の健康上の利益のために使用することができ、これには、限定されるものではないが、免疫応答の増強、抗生物質関連下痢の助け、及び粘膜炎症の軽減が挙げられる。
【0066】
前の記載が例示的な実施形態を説明しているが、本発明から逸脱することなく多くのバリエーションがなされ得ることは、関係する当業者に理解されるであろう。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[1]プロバイオティクス、可溶性食物繊維、遊離イソフラボン及びエステルを含むオカラベースのプロバイオティック飲料であって、プロバイオティック菌が1mlあたり5.0 log CFU以上の細胞数を有する、前記飲料。
[2]6週間の保存の後、前記飲料中に含まれるプロバイオティクスが1mlあたり5 log CFU以上の細胞数を有し、
可溶性食物繊維の70%;
遊離イソフラボンの90%;及び
エステルの20%
が少なくとも保持される、[1]に記載の飲料。
[3]前記プロバイオティクスが、乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせを含む、[1]又は[2]に記載の飲料。
[4]前記飲料中に含まれるプロバイオティクスが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌である、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]前記プロバイオティクスが1mlあたり6.0 log CFU以上の細胞数を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]前記飲料が、乾燥オカラ1gあたり0.1~100μgのエステルを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の飲料。
[7]前記飲料が、乾燥オカラ1gあたり50~500μgの遊離イソフラボンを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8]前記飲料が添加物をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のオカラベースのプロバイオティック飲料を形成する方法であって、
- オカラを炭水化物分解酵素で処理して処理済みオカラを形成するステップ;
- 前記処理済みオカラにプロバイオティクスと酵母とを添加するステップ;並びに
- 所定の期間及び所定の温度で前記処理済みオカラを発酵させ、オカラベースのプロバイオティック飲料を形成するステップ
を含む、前記方法。
[10]前記方法が廃棄物のない(zero-waste)方法である、[9]に記載の方法。
[11]前記処理が、炭水化物分解酵素での加水分解を含む、[9]又は[10]に記載の方法。
[12]前記炭水化物分解酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペントサナーゼ(pentosanase)、アラバナーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ、グリコシダーゼ、又はそれらの組み合わせを含む、[9]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記プロバイオティクスが、乳酸桿菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属酵母、又はそれらの組み合わせを含む、[9]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記飲料中に含まれるプロバイオティクスが、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、Lb.カゼイ(Lb. casei)、Lb.パラカゼイ(Lb. paracasei)、Lb.ラムノサス(Lb. rhamnosus)、Lb.ヘルヴェティクス(Lb. helveticus)、Lb.プランタルム(Lb. plantarum)、又はそれらの組み合わせから選択される乳酸桿菌である、[9]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]前記酵母が、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、非サッカロミセス属(non-Saccharomyces)酵母、又はそれらの組み合わせである、[9]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]前記酵母が、サッカロミセス(S.)セレビシエ(Saccharomyces (S.) cerevisiae)、トルラスポラ(T.)デルブレッキイ(Torulaspora (T.) delbrueckii)、ピキア(P.)クルイベリ(Pichia (P.) kluyveri)、リンドネラ(L.)サトゥルヌス(Lindnera (L.) saturnus)、又はそれらの組み合わせである、[9]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]前記添加が、プロバイオティクスを添加して、1mlあたり7 log CFUのプロバイオティクスの初期プロバイオティック細胞数を得ることを含む、[9]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記添加が、酵母を添加して、1mlあたり5 log CFUの酵母の初期酵母数を得ることを含む、[9]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]前記所定の期間が8~96時間である、[9]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記所定の温度が15~45℃である、[9]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]前記処理前にオカラのpHを調整することをさらに含む、[9]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記処理前にオカラを熱処理することをさらに含む、[9]~[21]のいずれかに記載の方法。
[23]前記処理済みオカラを、前記添加前に所定の温度まで冷却することをさらに含む、[9]~[22]のいずれかに記載の方法。
【0067】
ここで、本発明を一般的に記載したが、これと同じことは、例示として提供され、限定することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【0068】
【0069】
方法
オカラ(大豆の残渣/パルプ)を得るために、ろ過前に、浸漬した大豆を細かい粒に粉砕し、残渣を採取した。オカラを5重量%(オカラの乾燥重量基準)で水に添加して水性スラリーを得て、次に、これを選択された炭水化物分解酵素の最適pHに調整した。スラリーを121℃で15分間かけて熱処理し、冷却した。次に、炭水化物分解酵素を、3体積%の酵素:基質比(オカラの乾燥重量基準)で添加し、50℃、150rpmで3時間にわたり炭水化物分解酵素での加水分解を実施した。
【0070】
次に、微生物播種の前に処理済みスラリーを30℃に冷却した。好ましくは、使用される炭水化物分解酵素は、以下の少なくとも1つを含有する:セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及び/又はペクチナーゼ。これらの酵素(Celluclast 1.5L、Viscozyme L、Pectinex Ultra SP-L、全てノボザイムから)は、オカラの不溶性繊維を効果的に分解することが示されている。
【0071】
冷却した処理済みオカラスラリーに、プロバイオティクス及び酵母を添加し、1mLあたり約7 log CFUのプロバイオティクス及び1mLあたり5 log CFUの酵母の初期細胞数を達成した。その後、30℃で48時間にわたり発酵を行った。次に、得られた最終生成物を、食物繊維含有量、イソフラボン含有量、芳香、並びに周囲温度及び冷却温度でのその保存寿命(プロバイオティクスの生存度に基づく)について、さらに分析した。
【0072】
結果
プロバイオティクス(Lb.カゼイ L26)と酵母(L.サトゥルヌス NCYC 22)による発酵は好ましい効果をもたらした。オカラスラリーを炭水化物分解酵素処理すると、その不溶性繊維が有意に減少し、その結果、飲料はより良好な流動特性を有し、ざらついた食感が少なかった。プロバイオティクスによる消費から観察されるように、発酵中のプロバイオティック増殖を補助するプレバイオティクスの良好な供給源として作用する可溶性繊維の量も増加した(
図1を参照)。
【0073】
発酵後、飲料は1mLあたり約6.5 log CFUの酵母及び1mLあたり9 log CFUのプロバイオティクスを含有していた。宿主に健康上の利益を発揮させるための推奨用量は、製品1回分あたり9 log CFU以上の生きたプロバイオティクスを消費することである。100mLの1回分の中に、オカラプロバイオティクス飲料は11 log CFUのプロバイオティクスを含有し、推奨用量を大きく上回った。
【0074】
さらに、このオカラ飲料は、相当量の遊離イソフラボン(
図2に示す)、及び大量のエステル(
図3に示す)も含有していた。酵母の添加によって、アルデヒドはエステルに変換された。
【0075】
酵母は周囲保存中のプロバイオティクスの生存力も補助した。これを表1に示す。
【表1】
【0076】
5℃で6週間保存した場合、プロバイオティクスの量は1mLあたり9.27 log CFUに維持されており、初期細胞数とほぼ変わらなかった。25℃で6週間保存した場合、プロバイオティクスの量は1mLあたり7.88 log CFUに維持されていた。これは100mLあたり9.88 log CFUに相当し、依然として、1回分あたりの推奨用量である9 log CFUを超えている。よって、オカラベースの飲料は、プロバイオティクスの生存度に基づく長く安定した保存寿命を有することがわかる。)
【0077】
【0078】
組み合わせ
炭水化物分解酵素、プロバイオティクス及び酵母の異なる組み合わせを使用して検討を行った。その異なる組み合わせは表2に示すとおりである。表2中、炭水化物分解酵素‐非加熱とは、炭水化物分解酵素の変性前に解析を行った、炭水化物分解酵素処理済みオカラを指す。炭水化物分解酵素‐加熱とは、炭水化物分解酵素の変性後に解析を行った、炭水化物分解酵素処理済みオカラを指す。これを全ての発酵処理の対照とした。全てのこの発酵処理において、加熱によって、炭水化物分解酵素を変性させた。
【表2】
【0079】
方法
オカラ(大豆の残渣/パルプ)を得るために、ろ過前に、浸漬した大豆を細かい粒に粉砕し、残渣を採取した。オカラを5重量%(オカラの乾燥重量基準)で水に添加して水性スラリーを得て、次に、これを選択された炭水化物分解酵素の最適pHに調整した。例えば、CC、PX及びVZについて、最適pHは、それぞれ、5、3.5及び4.5であった。
【0080】
次に、炭水化物分解酵素を、3体積%の酵素:基質比(オカラの乾燥重量基準)で添加し、炭水化物分解酵素の最適温度、150rpmで3時間にわたり炭水化物分解酵素での加水分解を実施した。炭水化物分解酵素での加水分解の温度は、CC及びVZでは50℃、PXでは35℃であった。
【0081】
次に、処理済みスラリーを酵素変性及び滅菌のために熱処理した。具体的には、CC及びVZ-の組み合わせでは121℃で15分間加熱し、PX-の組み合わせでは115℃で20分間加熱した。
【0082】
冷却後、酵母とプロバイオティクスをそれぞれ1体積%でスラリーに添加し、よく混合した。初期プロバイオティック細胞数は1mLあたり約7 log CFUであり、一方、初期酵母数は1mLあたり約5 log CFUであった。その後、30℃で24時間にわたり発酵を行った。次に、得られた最終生成物を、25℃及び10℃の両方でのプロバイオティクスの生存度(それぞれ、周囲及び冷却保存中のその保存寿命を示す)、食物繊維含有量、イソフラボン含有量、並びに芳香について、さらに解析した。全ての値は乾燥オカラ(DW、乾燥重量)100gあたりの化合物のgで表した。
【0083】
結果
プロバイオティクスの生存度
25℃及び5℃で8週間保存後の異なる発酵処理におけるプロバイオティクスの生存度、酵母数及びpHを集計した。その結果は表3に示すとおりである。
【表3】
【0084】
プロバイオティクス及び酵母の添加の、プロバイオティック細胞の生存度に対する影響を調べるため、表4に示すように、選択されたAll、MonoP及びMonoY処理間においても8週間後の細胞の生存度の比較を行った。
【0085】
【0086】
表4から、共培養及び単培養における生存可能なプロバイオティック細胞数に反映されるように、冷却及び周囲保存中のオカラベースのプロバイオティック飲料におけるプロバイオティクスの生存度において、酵母の存在が重要であることがわかる。25℃で8週間後、生存可能なプロバイオティクスの低下は、共培養(All)において、対応する単培養(MonoP)と比較して低かった。
【0087】
5℃で8週間保存した場合、対応する単培養(MonoP)において観察された低下と比較して、共培養(All)において、生存可能なプロバイオティック細胞数は実際に増加した。したがって、プロバイオティクスの生存力は、酵母の存在によって、これらの組み合わせにおいて増強されるようであった。さらに、酵母は、共培養(All)においてpHの過度な下落を妨げ、それによってpHストレスに対してプロバイオティクスが緩衝された可能性がある。
【0088】
食物繊維
オカラにおける食物繊維の組成の変化を調べた。具体的には、可溶性食物繊維(SDF)に対する加熱の影響を調べた。結果は
図4に示すとおりである。
【0089】
図4からわかるように、加熱によって、炭水化物分解酵素処理された全ての処理において可溶性繊維の量が有意に増加した。さらに、炭水化物分解酵素間では、PXとVZはCCよりもSDFの増量に効果的であった。
【0090】
オカラベースの飲料の保存中のIDF及びSDFの含有量の影響についても検討し、その結果を表5に提示する。
【0091】
【0092】
表5に見られるように、5℃で8週間の保存後、オカラベースのプロバイオティック飲料は依然として、DW100gあたり少なくとも6.8~7.3gのSDF (All 3及びAll 6処理)を含有していたが、一方、25℃での保存では、飲料はDW100gあたり少なくとも10.7~15.7gのSDFを含有していた。しかしながら、飲料中で微生物によって利用されることにより、SDFの量は発酵及び貯蔵中に低下する可能性がある。これは表5からわかり、CCを含有する処理(CC-heat、All_3、MonoP_3及びMonoY_3処理)では、炭水化物分解酵素処理後に残存したSDFが8週間後に概して低下した。また、オカラプロバイオティック飲料を冷却温度で保存すると、周囲温度で保存した場合よりもSDFを大幅に減少させるようであった。これは、8週間後に、25℃で保存された対応する対応物(counterpart)と比較して、5℃で保存されたAll 3及びAll 6処理の両方でSDFの量が少なかったことに反映されている。
【0093】
さらに、Co_6処理とAll_6処理との間の、IDF及びSDFの違いに反映されるように、炭水化物分解酵素はIDFを減少させ、SDFを増加させる鍵となる。このように、播種された微生物は、ある程度食物繊維を経時的に分解するかもしれないが、その程度は炭水化物分解酵素での前処理(carbohydrase pre-treatment)ほど広範囲ではないことがわかる。
【0094】
イソフラボン
動物モデルにおいて、イソフラボンアグリコンは血しょうコレステロールを減少させ、炭水化物の代謝を改善する。
図5に見られるように、炭水化物分解酵素処理の後、ほとんどのグリコシド型イソフラボン(ダイジン、ゲニスチン及びグリシチン)は、そのアグリコン型(それぞれ、ダイゼイン、ゲニステイン及びグリシテイン)に変換された。この加水分解は、炭水化物分解酵素のうちエンドβグリコシダーゼによって触媒された。
【0095】
加熱によって、イソフラボンアグリコンはやや低下したが、グリコシド型イソフラボンの量の増加も導かれた。発酵によりグリコシド型イソフラボンの量がさらに減少した(CC-heat、All_2及びCo_2処理の比較)。
【0096】
8週間後の、保存の後にはイソフラボン含有量の変化も認められた。結果は表6に示すとおりである。
【0097】
【0098】
表6から、5℃で8週間の保存後、オカラベースのプロバイオティック飲料(All_1及びAll_2の組み合わせ)はDW1gあたり少なくとも350μgのイソフラボンアグリコンを含有していたことがわかる。25℃で8週間保存した場合、イソフラボンアグリコンの量はやや高かった。したがって、All_1処理と比較してMonoY_1処理においてイソフラボンアグリコンの量がより高いことから明らかなように、この酵母は、経時的にグリコシド型イソフラボンをアグリコンに変換するグリコシダーゼを生成したと考えられる。
【0099】
揮発性物質
異なるクラスの揮発性物質の変化は表7に示すとおりである。未発酵のオカラは主に、グリーン系で青臭い望ましくない匂いを持つアルデヒドを含有していた。これらのアルデヒドは、低温粉砕中の大豆多価不飽和脂肪酸の分解により形成された可能性が高い。この酵素処理はオカラ細胞壁を分解し、自発的に酸化される不飽和脂肪酸をより多く放出した可能性が高い。
【0100】
発酵により、大きく異なる揮発性物質プロファイルが導かれた。オカラスラリーにプロバイオティクスのみを添加すると(例えば、MonoP_3、MonoP_5)、主に酸及びアルコールがもたらされ、酸っぱい腐臭が導かれた。さらに、一部のプロバイオティクス(例えば、MonoP_5のもの)は、他のプロバイオティクス(例えば、MonoP_3のもの)よりも多くの酸を生成する可能性がある。オカラスラリーへの酵母の添加によって、芳香プロファイルが大幅に変化した。しかしながら、それは選ばれた酵母のみで起きた。例えば、MonoY_3及びMonoY_5のみが大量のエステルを含有しており、一方、MonoY_1及びMonoY_7はエステルの量が増加しなかった。
【0101】
オカラプロバイオティクス飲料における適切な酵母の重要性は、All_1及びAll_3の芳香プロファイルに反映されている。All_1では、使用した酵母(MonoY_1のものと同じ酵母)が多くのエステルを生成しなかったため、揮発性物質の主なクラスはアルコールであった。対照的に、All_3では、使用した酵母(MonoY_3のものと同じ酵母)が多量のエステルを生成したため、揮発性物質の主なクラスはエステルであり、オカラベースのプロバイオティック製品は香ばしいフルーティな匂いがした。
【0102】
そのエステルには、とりわけ、酢酸イソアミル(バナナ様の匂い)、酢酸ヘキシル(フルーティな匂い)及び酢酸2-フェニルエチル(フローラルで、バラ様の匂い)が含まれた。大量のエステルが形成されたため、EYL共培養処理は、かなりの量の揮発性酸が存在するにもかかわらず、依然としてフルーティな匂いがした。
【0103】
【0104】
全般として、処理All_3及びAll_5によって、オカラベースの飲料に含まれるエステルがより多くの量もたらされた。そこで、処理All_3及びAll_5から形成されたオカラベースの飲料の揮発性物質プロファイルの変化を調べた。結果は表8に示すとおりである。
【0105】
【0106】
5℃で8週間の保存後も、表8に見られるように、オカラプロバイオティック飲料はエステルの当初の量の少なくとも20%を依然として保持しており、エステルはオカラベースのプロバイオティック飲料中の揮発性物質の主要な群として残存していた。エステルの量の下落は、エステルが加水分解されてアルコールや酸となったためである可能性があり(その一部は微生物によって異化された可能性がある)、一方、一部は経時的に蒸発した可能性がある。
【0107】
一方で、25℃で8週間の保存後も、オカラベースのプロバイオティック飲料はエステルの当初の量の少なくとも100%を依然として保持していた。実際、酵母は継時的に増殖を続けてより高い個体数を維持し、エステルの増加がもたらされた。したがって、エステルは、保存後のAll_3及びAll_5処理の両方で揮発性物質の主要なクラスとして残存した。
【0108】
結論
したがって、オカラベースのプロバイオティック飲料は、可溶性繊維、プロバイオティクス、イソフラボンアグリコン、多量のエステルによる香ばしい芳香、及び生存プロバイオティック細胞数が1mLあたり7 log CFU以上で残存する8週間に及ぶ安定した周囲保存寿命のような種々の健康上利益のある成分を含有することがわかる。
【0109】
5℃で8週間保存した場合、最終的なオカラベースのプロバイオティック飲料は、当初の製品と比較して、SDFの少なくとも70%、イソフラボンアグリコンの少なくとも90%、エステルの少なくとも20%を保持していた。25℃で8週間保存した場合、最終的なオカラベースのプロバイオティック飲料は、当初の製品と比較して、ほぼ同量のSDF、イソフラボンアグリコン及びエステルを保持していた。