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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】治療システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20240703BHJP
【FI】
G16H50/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021156311
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047415
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花輪 由美子
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-500360(JP,A)
【文献】特開2020-177707(JP,A)
【文献】国際公開第2020/081617(WO,A1)
【文献】特開2020-113186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバー(10)を有し、
前記サーバー(10)は、
患者を特定のクラスタに分類し、分類されたクラスタとリンク付けされたワークを選択する機能を有するワーク選択パート(10B)と、
前記ワークを実行した結果から、前記ワークによる治癒を評価する機能を有する評価パート(10D)と、
患者側の情報処理用端末(3)から日常生活下データを取得し、取得した日常生活下データにより、心理社会的問題、生活適応やストレスに対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有し、量的測定指標を用いて評定を行い、心理社会的問題、生活適応やストレスに対して適応的な行動を評定することにより、アクセスした患者の心理的柔軟性を評定する診断横断的アセスメントパート(10A1)を有し、
前記ワーク選択パート(10B)は、診断横断的アセスメントパート(10A1)の評定結果についてクラスタ分析を行い患者をクラスタに分類する機能を有し、且つ、診断横断的アセスメントパート(10A1)の評定に基づいてワークを選択する機能を有し、
前記評価パート(10D)は、ワークを達成したか否かを判断するワーク達成・未達判断ブロック(10D1)と、ワーク達成・未達判断ブロック(10D1)の判断結果から患者がワークを達成した場合のタグと患者がワークを未達成の場合のタグを付与するワークタグ付与ブロック(10D2)と、ワーク達成・未達判断ブロック(10D1)の判断結果から患者に提供すべきワークを判断し決定するワーク提供判断ブロック(10D3)と、前記ワークタグ付与ブロック(10D2)からタグを付与されたワーク情報を取得し且つ前記ワーク提供判断ブロック(10D3)の判断結果からワーク情報を作成するワーク情報作成ブロック(10D4)を有し、
前記ワーク情報判断ブロック(10D3)は、患者がワークを達成している場合は患者が分類されたクラスタに対して当該達成されたワークに次いで効果があると考えられているワークを選択し、患者がワークを未達成だった場合は患者が達成できなかったワークは患者が苦手とするワーク或いは相性の悪いワークであると判断し、前記ワーク情報作成ブロック(10D4)から取得したワーク情報に基づいて患者が達成できる可能性が高いワークを選択し、患者にワークを提供しても未達であることが続く場合は新たなワーク或いはアプリの提供を停止すべきか否かをチェックする機能を有していることを特徴とする治療システム(100)。
【請求項2】
前記ワーク選択パート(10B)は、
患者を特定のカテゴリーに分類するブロック(10B1)と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けするブロック(10B3)と、
前記評価パート(10D)で生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報に基づいて、前記リンク付けするブロックでリンク付けされたワークから患者との適正及び/又は患者との相性が悪いワークを選択しない機能を有するブロック(10B5)を有する請求項1の治療システム(100)。
【請求項3】
前記ワーク選択パート(10B)は、
患者を特定のカテゴリーに分類するブロック(10B1)と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けするブロック(10B3)を有し、
前記分類するブロック(10B1)は、前記評価する機能を有するパートで生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報により、ワークと患者との適正及び/又はワークと患者との相性に基づいて患者を特定のカテゴリーに分類する機能を有する請求項1の治療システム(100)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項の治療システム(100)を用いる方法において、
患者を特定のカテゴリーに分類し、分類されたカテゴリーとリンク付けされたワークを選択する工程と、
ワークを実行した結果を評価する工程を有し、
前記評価する工程では、ワークを達成したか否かの事例からワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報を生成し、
前記ワークを選択する工程では、ワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報に基づいてワークを選択することを特徴とする方法。
【請求項5】
前記ワークを選択する工程は、
患者を特定のカテゴリーに分類する工程と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けする工程と、
前記ワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報に基づいて、リンク付けされたワークから患者との適正及び/又は患者との相性が悪いワークを選択しない工程を有する請求項4の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末(例えばスマートフォン)及び情報処理ネットワークシステム(例えばインターネット)を介して、医者と患者が直接面会することなく診断・治療・予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムを介して、医者と患者が直接面会することなく治療を行うための技術(所謂「医療用のアプリ」)が開発されている。
係る技術によれば、医療施設へ通うのが困難な過疎地や遠隔地に居住する患者の治療が可能である。
また、プライバシーの関係で「治療を行っている」という事実を出来る限り秘匿したいという要請を有し、専門医師或いは専門家による治療を望まない患者であっても受診率を向上することが可能である。
【0003】
係る医療用のアプリでは、例えば心因性の疾病の患者に対してアセスメントを実行し、患者の疾病の状態に応じて、当該患者の治療に好適と思われるワークを提供する。そして、患者が提供されたワークを終了できなかった場合には別のワークを提供している。
ここで、従来の医療用のアプリでは、同一疾患の患者に対して提供するワークの順番が固定されており、どの患者に対しても最初に提供するワーク、当該ワークを終了できない場合に提供される次のワーク、当該次のワークを終了できない場合に更に提供されるワーク・・・という提供されるワークとその順序が同一である。そのため、患者の個性、環境等を考慮することなく、同一疾病の患者に対して提供されるワークとその順番を変動しない。
しかし、同一疾病の患者の症状に個人差があるのと同様に、ワークの効果、適不適(向き不向き)等にも個人差が存在する。そのため、同一の疾病であっても、罹患した患者の個性を考慮して、提供するワークを変えることが好ましい場合が存在するが、従来の医療用のアプリでは、同一疾病の患者に対して提供されるワーク及びその順番(ワーク提供の順序)は同一である。
【0004】
その他の従来技術として、妊婦の装身具に胎児の月齢等の情報等を表示させて、異常事態等が発生した際に医療関係者や周囲の人々に前記情報を迅速に取得させる技術が提供されている(特許文献1参照)。
しかし係る技術(特許文献1)は、前記送信具を見た人々に胎児の情報を認識させるものであり、医療用のアプリにおいて患者毎に提供するワークの順番を変更することは企図していない。
また、出願人はアセスメントの結果に基づいて患者に適した治療を実施する技術を提案しており(特許文献2)、当該技術は有用である。しかし、係る技術においても、同一疾病の患者について提供されるワーク及びその順番(ワーク提供の順序)は同一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6378458号公報
【文献】特願2020-146925号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提供されたものであり、患者の個性、条件、特性等に基づいて、医療用のアプリのシステムから患者に対して提供されるワークを変更することが出来る治療用システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の治療システム(100)はサーバー(10)を有し、
前記サーバー(10)は、
患者を特定のカテゴリー(スタック、クラスタ或いはグループ:個人が一つのカテゴリーを構成する場合を含む)に分類し、分類されたカテゴリーとリンク付けされたワークを選択する機能を有するパート(10B:ワーク選択パート)と、
ワークを実行した結果(より、当該ワークによる治癒)を評価する機能を有するパート(10D:評価パート)を有し、
前記評価する機能を有するパート(10D)は、ワークを達成したか否かの事例からワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)を生成する機能を有し、
前記ワークを選択する機能を有するパート(10B)は、前記評価する機能を有するパート(10D)で生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)に基づいてワークを選択する機能を有していることを特徴としている。
ここでサーバー(10)としては、コンピューターその他の情報処理機械により構成される。
また本発明の治療システム(100)は患者側の情報処理端末(3)を備え、患者側の情報処理端末(3)は、日常生活下データを取得する装置(例えばスマートフォン、パーソナルコンピュータ等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置)を備えていることが好ましい。
そして本発明の治療システム(100)は、医療機関側で使用される情報処理用端末(4)を備えることが好ましい。
【0008】
また本発明の治療システム(100)において、前記ワークを選択する機能を有するパート(10B:ワーク選択パート)は、
患者を特定のカテゴリー(スタック、クラスタ或いはグループ:個人が一つのカテゴリーを構成する場合を含む)に分類するブロック(10B1:分析ブロック)と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けするブロック(10B3:リンク付けブロック)と、
前記評価する機能を有するパート(10D:評価パート)で生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)に基づいて、前記リンク付けするブロック(10B3)でリンク付けされたワークから患者との適正及び/又は患者との相性が悪いワークを選択しない機能を有するブロック(10B5:ワーク決定ブロック)を有するのが好ましい。
【0009】
或いは本発明の治療システム(100)において、前記ワークを選択する機能を有するパート(10B:ワーク選択パート)は、
患者を特定のカテゴリーに分類するブロック(10B1:分析ブロック)と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けするブロック(10B3:リンク付けブロック)を有し、
前記分類するブロック(10B1)は、前記評価する機能を有するパート(10D)で生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)により、ワークと患者との適正及び/又はワークと患者との相性に基づいて患者を特定のカテゴリーに分類する機能を有するのが好ましい。
【0010】
本発明の方法(請求項1~3のシステムを用いる方法)は、
患者を特定のカテゴリー(スタック、クラスタ或いはグループ:個人が一つのカテゴリーを構成する場合を含む)に分類し、分類されたカテゴリーとリンク付けされたワークを選択する工程と、
ワークを実行した結果(より、当該ワークによる治癒)を評価する工程を有し、
前記評価する工程では、ワークを達成したか否かの事例からワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)を生成し、
前記ワークを選択する工程では、ワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)に基づいてワークを選択することを特徴としている。
【0011】
また本発明の方法において、前記ワークを選択する工程は、
患者を特定のカテゴリー(スタック、クラスタ或いはグループ:個人が一つのカテゴリーを構成する場合を含む)に分類する工程と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けする工程と、
前記ワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)に基づいて、リンク付けされたワークから患者との適正及び/又は患者との相性が悪いワークを選択しない工程を有するのが好ましい。
【0012】
或いは本発明の方法において、前記ワークを選択する工程は、
患者を特定のカテゴリーに分類する工程と、
分類されたカテゴリーとワークをリンク付けする工程を含み、
前記分類する工程では、ワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)に基づいて、ワークと患者との適正及び/又はワークと患者との相性に基づいて患者を特定のカテゴリーに分類するのが好ましい。
【0013】
ここで「患者」なる文言は、本発明のシステムによる治療の対象となる疾病(例えば不妊症、不安障害、うつ病、心因性ED等)に罹患している可能性が有ることを自ら認識しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味している。換言すれば、「患者」なる文言は、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者のみに限定される訳ではなく、第三者が見れば「健常」と判断されるような者も包含し得る。
本明細書において、情報処理装置なる文言は、コンピューター、スマートフォン、タブレット等、情報処理機能を有する機器を意味している。
【発明の効果】
【0014】
上述の構成を具備する本発明によれば、前記評価する機能を有するパート(評価パート10D)は、過去においてワークを達成したか否かの事例からワークにおける当該患者の適正、相性等(ワーク情報)を導き出し、係るワーク情報をワークを選択する機能を有するパート(ワーク選択パート10B)に送信するので、ワークを選択する機能を有するパート(10B)は、患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークを患者に提供(選択)することはなく、患者が達成できる可能性が高いワークを提供(選択)する。
仮に患者が提供されたワークを達成できない場合でも、ワークが達成できなかったという事実に基づいて、ワークを選択する機能を有するパート(10B)は、患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークを患者に提供せず、患者が達成できる可能性が高いワークを提供するので、患者がワークを達成できる可能性が高くなり、患者が医療用アプリを続行しようとするモチベーションを高めることが出来る。
【0015】
本発明において、前記分類するブロック(10B1:分析ブロック)が、前記評価する機能を有するパート(10D:評価パート)で生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)に基づいて、ワークと患者との適正及び/又はワークと患者との相性に基づいて患者を特定のカテゴリーに分類する機能を有すれば、患者の病状やワークとの相性等を考慮した精度の高い分類(クラスタへの分類)が行われるので、クラスタとリンク付けされたワークは、当然に患者の病状や相性等を考慮した内容が選択される。
係る精度の高い分類は、患者がワークを達成できたか未達成であるかのデータの情報量が非常に大きければ可能である。
上述した様に、カテゴリーという文言は個人が一つのカテゴリーを構成する場合を含むので、本発明は、パーソナライズされた医療サービスを提供する場合の様に、個々の患者毎にカテゴリーを構成する場合についても適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るシステムの概要を示す機能ブロック図である。
図2】実施形態で用いられるサーバーの要部を示す機能ブロック図である。
図3図2におけるワーク選択パートの機能ブロック図である。
図4図2における評価パートの機能ブロック図である。
図5】ワークを患者に提供しつつ、評価パートにおいてワーク情報を生成する手順のフローチャートである。
図6図1図5の実施形態の変形例を示す機能ブロック図である。
図7】実施形態で用いられる患者側電子装置の機能ブロック図である。
図8】実施形態で用いられる医療機関側電子装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示すシステム(治療システム)は、制御装置1とデータベース10Fを含むサーバー10(例えばコンピューター)、患者に使用される情報処理端末3(患者側の情報処理用端末)、医療機関で使用される情報処理端末4(医療機関側の情報処理端末)を有しており、これらは例えば情報処理ネットワーク20(例えばローカルエリアネットワーク或いはインターネット)により相互に接続されている。
サーバー10については図2図6を参照して説明するが、図1における制御装置1は、図2図6における各種パートを包括的に表示した機能ブロックである。
ここで「患者」なる文言は、心因性ED等に罹患している可能性が有ることを自ら認識しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味している。換言すれば、「患者」なる文言は、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者のみに限定される訳ではなく、第三者が見れば「健常」と判断されるような者も包含し得る。
【0018】
図1において、患者側の情報処理用端末3は、サーバー10と接続する機能を有すると共に、患者の日常生活下データを取得する機能を有しており、例えばスマートフォン或いはパーソナルコンピュータ(PC、パソコン)等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置により構成することが出来る。或いは、日常生活下データを取得する機能を有する患者側の情報処理用端末3は、ウェアラブル機器等を含むことも出来る。日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データを含み、また、例えば心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データも含んでいる。
日常生活下データの計測やサーバー10への送信という機能は、例えば、係る機能を実行するための専用アプリを、患者側の情報処理用端末3であるスマートフォンにインストールすることにより可能になる。
そのような専用アプリをインストールする場合には、患者側の情報処理用端末3とネットワーク20とを接続する情報伝達ライン3L(有線或いは無線の場合が存在する)は、サーバー10にアクセスするためのアクセスラインであり、且つ、情報処理用端末3で計測した患者の日常生活下データをサーバー10に送信するための情報伝達ラインでもある。
医療機関側の情報処理端末4は、情報処理機能及び通信機能を有する電子装置(例えばPC)を利用することが出来るが、スマートフォンを利用することも可能である。
【0019】
サーバー10におけるデータベース10Fには、患者の情報(例えば患者のIDに対応させた診療履歴情報等)や治療に関する情報(治療方法、服薬履歴を含む情報、プロセスベースドCBTに関する情報等)が記憶されている。なお、診療履歴における診療には、情報端末を介しての診療及び医療機関での診療が含まれる。
図1には示されていないが、複数の患者側の情報処理端末3及び複数の医療機関側の情報処理端末4をネットワーク20に接続することも出来る。
また、図1ではデータベース10Fは制御装置1と共にサーバー10に内蔵されている。ただし、データベース10Fをサーバー10とは別個に構成し、ネットワーク20を介してサーバー10に接続することも可能である。
【0020】
サーバー10はビックデータ或いはビックデータを用いたシステム(図示せず)と結合可能である。後述するように、図示の実施形態によるシステムによるワークの提供の事例が多数となりビックデータとなれば、ワーク選択がよりきめ細かく且つ適切に行われ、クラスタの種類を多くして、クラスタ分類の精度を高くすることが出来る。
サーバー10と医療機関側の情報処理端末4は、図1ではシステム100内の別個の情報処理装置として図示されているが、サーバー10と医療機関側の情報処理端末4が直接リンク付けされていても良く、或いは、サーバー10内に医療機関側の情報処理端末4が組み込まれていても良い。
【0021】
図示の実施形態に係るシステム100におけるサーバー10について、機能ブロックである図2を参照して説明する。
図2において、サーバー10(図2では一点鎖線で示す)は、ログイン・認証パート10H、質問パート10Q、診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2、ワーク選択パート10B、ワークパート10C、評価パート10Dを有している。
また図2において、情報伝達ラインSL1、SL2・・・は有線で表現されているが、無線であっても良い。
【0022】
サーバー10に対する通信の入口に相当するログイン・認証パート10Hでは、患者側の情報処理端末3からのID、パスワードが情報伝達ラインSL3を介して入力されると、当該患者の認証を実施する。ログイン・認証パート10Hは、当該患者の正当性、信頼性を以前のデータを確認して、認証結果(偽物ではない正当な患者である旨の情報)を質問パート10Qに送信する。
明確に図示はされていないが、サーバー10において、患者への成りすまし防止等のセキュリティ対策は、例えば公知技術を用いて実行することが出来る。そして、係るセキュリティ対策は、図示の実施形態ではログイン・認証パート10Hに施されており、患者への成りすまし、その他の不正行為に対してシステム100を保護している。アクセスしてきた者が患者に成りすました偽者の場合には、ログイン・認証パート10Hで当該アクセスを遮断し、質問パート10Q以降への情報伝達を遮断する。
ログイン・認証パート10Hでは、例えばIDとパスワードを発行し、アクセスしてきた者(患者)の本人確認を行う機能を有している。図示はされていないが、例えば患者本人の同意により、システム100にアクセスする回数や最初にアクセスしてからの期間を適宜設定して、設定した回数や期間を超えた場合には非アクティベートすること、或いは、アクセスに制限を掛けることが可能である。そして、非アクティベートした場合でも、担当医師の指示により、患者が再びシステム100にアクセスすることが出来る様に構成することが可能である。
明確には図示されていないが、ログイン認証に際して、IDとパスワード入力の他に、例えば患者側の情報処理端末3がスマートフォンやPCであればそのカメラ等を用いて、患者の顔、音声(声紋)、網膜、虹彩等を患者本人固有の生体情報を撮影(取得)して、当該生体情報を用いて本人認証を行い、以て、所謂「成りすまし」やアカウントの譲渡を防止することが出来て、患者から入力或いは取得されるデータの信頼性を確保することが出来る。ここで、上述した様な生体情報の取得はログイン時のみならず、患者のデータを入力(取得)する際であれば可能である。
【0023】
情報伝達ラインSL1を介してログイン・認証パート10Hに接続している質問パート10Qにおいて、アクセスしてきた患者(対象者)は、主訴、現病歴、既往歴等を入力する。それと共に質問パート10Qでは、アセスメントの指標(操作的診断基準も含む)に基づいて、アクセスしてきた患者に対して問診を行う。例えば心因性EDの場合には、質問パート10Qでは、例えば、心因性EDの症状チェックリスト、及びDSM-IV及びICD-10に準拠した精神疾患簡易構造化面接法によるチェックリスト形式の質問を、アクセスしてきた患者に対して実行する。
アクセスしてきた患者の質問パート10Qにおける入力や回答に基づき、特定の疾患が顕在しているか否かの判断や、リスクファクターの有無についての判断が可能になり、アセスメントパート(診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2)におけるアセスメントに役立つ。
【0024】
質問パート10Qにおける入力や回答は、情報伝達ラインSL2を介して診断横断的アセスメントパート10A1に送信される。
診断横断的アセスメントパート10A1は、患者側の情報処理用端末3(日常生活下データを取得する装置)により、情報伝達ラインSL11を介して取得された日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有しており、量的測定指標を用いて評定を行う。そして、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して適応的な行動を評定することにより、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性を評定する。心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、適応的な行動が見られる対象者であれば、健康的であり、生活の質が高く、ストレスが低く、各種疾患に対する抵抗力が高い状態にあると判断できる。
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメント結果は、情報伝達ラインSL5を介して、ワーク選択パート10Bに送信される。
【0025】
診断横断的アセスメントパート10A1では疾患を特定するための評定はせず、疾患に特徴的な症状の評定も行わない。上述した様に、診断横断的アセスメントパート10A1では、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定するからである。その様な評定を行う結果、診断横断的アセスメントパート10A1では、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することが可能であり、プロセスベースドCBTが実行可能である。
診断横断的アセスメントパート10A1で、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することは、図示の実施形態における重要な特徴の一つであり、従来の各種医療用のアプリケーション(例えば特許文献1、特許文献2参照)と明確に相違している点である。
【0026】
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントが終了した対象者の情報は、情報伝達ラインSL31を介して疾患特異的アセスメントパート10A2に送信される。
疾患特異的アセスメントパート10A2は、対象者(アクセスしたユーザー)が、当該疾患に特徴的な症状に対して、どの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有しており、量的測定指標を用いて評定を行う。
疾患特異的アセスメントパート10A2において、対象者が、疾患に特徴的な症状に対して非適応的な行動が評定されたならば、情報伝達ラインSL4を介して、当該対象者の情報が、アセスメントパート10A1、10A2の評定と共に、ワーク選択パート10Bに送信される。
【0027】
図3を参照して後述するが、図2において、ワーク選択パート10Bでは、統計学的手法(例えばクラスタ分析)を用いて対象者を特定のグループに分類し(クラスタ分析の場合にはクラスタに分類し)、当該グループ或いはクラスタとリンク付けされたワークを選択する。それに加えて図示の実施形態では、過去においてワークを達成したか否かの事例からワークにおける当該患者の適正、相性等(ワーク情報)を導き出し、ワーク情報をも参照して、ワークを選択して患者に提供する。そのため、患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークを患者に提供することなく、患者が達成できる可能性が高いワークが提供されることになる。
換言すれば、ワーク選択パート10Bは、診断横断的アセスメントパート10A1の評定、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定、過去の事例から導き出された適正、相性等(ワーク情報)に基づいてワークを選択する機能を有している。
上述の例では、診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2のそれぞれについてクラスタ分析を行っているが、診断横断的アセスメントパート10A1の評定及び疾患特異的アセスメントパート10A2の評定を統合して、クラスタ分析を行っても良い。
【0028】
明確には図示されていないが、図示の実施形態に係るシステム100を診断用アプリと治療・予防用アプリとに分離して構成することが出来る。その様に分離して構成した場合においても、診断用アプリにおけるアセスメントパートにおけるクラスタ判定による各クラスタに対して、自動的に、診断横断的アセスメントに基づくワーク、及び/又は、疾患特異的アセスメントに基づくワークが選択、指示される。ここで、診断用アプリと治療・予防用アプリとが一体に構成されたシステム100においても、図示しない別体に構成されているシステムにおいても、ワークの選択、指示については、医師がアセスメント結果に基づいて手動によりワークを選択、指示することが可能である。
ワーク選択パート10Bで選択されたワークは、情報伝達ラインSL6によりワークパート10Cに送信される。
【0029】
ワーク選択パート10Bは、図示しないインターフェース及び情報伝達ラインSL7を介して、選択したワークを患者側の情報処理端末3に伝達する機能を有しており、ワーク及び治療に有用な情報(TipS)の一部を患者側端末3に送信することが出来る。係る機能により、ネット環境が整っていない場所で、或いはオフラインで、当該治療プログラムを実行できる。そのため、例えば通信・ネット環境の不具合発生時や、治療が終了してシステム100にアクセスできなくなった場合(非アクティベート化された場合)でも、当該患者はワークに含まれるエクササイズ、治療に有用な情報(TipS)の一部を引き続きオフラインで実行・閲覧することで、治療の中断を予防し、また治療終了後も治療効果の持続と再発予防に役立てることが出来る。
ただし、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、TipSについて、介入の記録としてシステム100側で記録されず、適切な評価が出来なくなる可能性を防止するため、図示はされていないが、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、TipSをシステム100側に送信する機能を有する様に構成することが可能である。
【0030】
ワークパート10Cは、ワーク選択パート10Bで選択された当該ワークを患者に対して伝達(供給)する機能を有している。或いは、ワークパート10Cは、ワーク選択パート10Bで選択されたワークに対する患者側からの情報を、情報伝達ラインSL14を介して受信する機能を有している。
ワーク選択パート10Bで選択されるワークにより、例えば診断横断的な介入では、「心理的柔軟性」の評定結果に対して、健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入が行われる。
本明細書において、心理療法の実行を、患者に対する「介入」と表現する場合がある。
【0031】
疾患特異的な介入では、各疾患に特有な場面、状況等に対して、各クラスタに適切な技法で、当該疾患に応じた健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。
ワークパート10Cにおいて、「仮想現実」を用いたワークの提供が可能である。例えば、不安症の患者の場合であれば、仮想現実により「電車に乗る」という体験(仮想現実上の体験)をさせることが出来る。
図示の実施形態では、診断横断的な介入が疾患特異的な介入に優先する場合がある。ただし、それに限定されない場合も存在する。
【0032】
ワークパート10Cには、分類されたクラスタに対応して、患者が実行するべきホームワークが用意されている。ワークパート10Cがホームワークを選択するに際して、ホームワークは図2では図示しない記憶装置(データベース)に記憶されており、ワーク毎にリンク付けされたホームワークを参考にすることが出来る。係るホームワークは、患者が実施すると症状の改善が期待でき、且つ、患者の主体性を向上させる様な内容に、予め編集されている。
ワークパート10Cで実行したワークとその結果(ワークを達成したか否かを含む)は、情報伝達ラインSL8により評価パート10Dに送信される。ホームワーク及びその達成状況についても、評価パート10Dに送信される場合がある。
【0033】
評価パート10Dは、ワークパート10Cで実行したワークとその結果(治療の効果:ワークを達成したか否かを含む)を評価する機能を有している。評価については、既存の評価尺度等を用いて、所定のアルゴリズムに従って治療の効果を評価する。例えば、心因性EDでは、当該疾患に特徴的な症状である勃起機能の評価尺度(測定指標)として、国際勃起機能スコア(IIEF)を用いて評価を行う。評価のためのツールである評価尺度或いは測定指標はワークパート10Dに記憶されている。或いは、図2では図示しない記憶装置(データベース)にワーク毎の評価尺度或いは測定指標が記憶されていても良い。
ここで、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録し、治療前後の効果測定の結果をレポート形式にすることが可能である。そして評価パート10Dは、患者(或いは医師)に対してその様なフィードバックを実行する機能を有することが可能である。
また、評価パート10Dによる治療効果の評価結果は、情報伝達ラインSL9により患者側の情報端末3に送信される。例えばワークとしてチャットボットを用いた場合に、チャットボットによる治療効果の評価が患者に表示される。
患者に送信される評価内容には、例えば、症状を改善するための助言等が含まれる。
【0034】
それに加えて評価パート10Dは、過去においてワークを達成したか否かの事例からワークにおける当該患者の適正、相性等(ワーク情報)を導き出し、係るワーク情報を、情報伝達ラインSL10を介してワーク選択パート10Bに送信する機能を有している。これにより、患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークが患者に提供されることを防止して、患者が達成できる可能性が高いワークが提供される様にせしめる機能が発揮される。
患者が提供されたワークを達成できない場合、ワークが達成できなかったという事実に基づいて、ワーク選択パート10Bは患者に対して新たなワークを提供する。ここで、従来の医療用アプリにおいては、患者に対してワークを提供する順番は予め定められており、個々の患者と各ワークとの相性、適不適等については全く考慮されずに、定められた順番に従って、次のワーク(患者が実行できなかったワークに代えて、当該患者に提供されるワーク)が提供されていた。そのため、患者と相性の悪いワークが連続して患者に提供される場合も生じ得てしまい、患者がワークを達成できなかったという事例が続き、患者が医療用アプリを続行するためのモチベーションが低下してしまう恐れが存在した。
図示の実施形態では、評価パート10Dにおける上述した機能により、患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークを患者に提供することなく、患者が達成できる可能性が高いワークが提供されるので、患者がワークを達成できる可能性が高くなり、患者が医療用アプリを続行しようとするモチベーションを高めることが出来る。
【0035】
図示されていないが、治療の効果の測定指標に対して患者が回答(入力)するに際して、入力までの時間を記録するための計時手段及び記録手段、心拍数や血圧を測定する測定手段、患者の瞳孔開閉の様子や視線の向きや瞬きの回数を計測する手段(例えば患者側端末3がスマートフォンやPCである場合にはそのカメラ)、呼吸の回数の計測手段、体温の計測手段、或いは、顔色を観察する手段(例えば、患者側端末3のカメラ)を設け、指標入力時における客観的な情報をモニタリングして、回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けることが出来る。
回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けることにより、回答の精度や回答者の状態を客観的にモニタリングすることが出来る。回答者の状態としてモニタリングする事項としては、例えば、回答者である患者が測定指標をいい加減に入力していないか、「改善された」という結果を得るために偽りの入力をしていないか、測定指標を入力することでストレスが掛かっていないか、深く考え込んでいるかどうか、患者の反応性、患者の認知機能等である。この様なモニタリングにより、クラスタ分析の際の要因として取り入れることが出来る。
また、回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置として、患者側端末3としてのスマートフォンやPCのカメラを用いた場合、当該カメラに専用のフィルターやレンズ等を装着して、上述したモニタリングを行うことが出来る。さらに、心拍数、血圧等の計測装置(図示せず)やアプリケーションを使用することが可能である。
さらに、匂いセンサー、脳波センサー等のデバイスを装着して回答者の客観的な情報を取得することが可能である。それにより、回答者の心身の状態を計測して、クラスタ分析の際の要因とすることも可能になる。そして、例えば脳波等を測定するヘッドセット状のデバイス等を装着すれば治療の実感が高まり、治療効果がさらに向上する。
【0036】
評価パート10Dにおいて、治療効果について良好な評価がされない場合には、その評価結果が、情報伝達ラインSL10によりワーク選択パート10Bに送信される。評価パート10Dからの良好ではない評価を受信した場合には、ワーク選択パート10Bは提供したワークは効果が低かったと判断して、新たにワークを選択、提供する。ワークパート10Cは当該新たなワークを患者に送信(提供)し、評価パート10Dは新たなワークによる治療効果を評価する。
また、評価パート10Dは、報伝達ラインSL10を介して上述したワーク情報をワーク選択パート10Bに送信する。ワーク情報には、治療効果に対して良好な評価がされなかった旨の情報と、治療効果に対して良好な評価がされた旨の情報の双方を含むことが可能である。
【0037】
図2において、患者側の情報端末3は、情報伝達ラインSL11により、診断横断的アセスメントパート10A1に接続している。図1を参照して前述したように、患者側の情報処理用端末3は、患者の「日常生活下データ」を計測して診断横断的アセスメントパート10A1に送信する機能を有しており、係る機能を実行するため、情報伝達ラインSL11を介して診断横断アセスメントパート10A1に患者の「日常生活下データ」を送信する。
また、ログイン・認証パート10Hは、情報伝達ラインSL12を介してワークパート10Cに接続しており、情報伝達ラインSL13を介して評価パート10Dに接続している。患者(対象者)からの2回目以降のアクセスでは、先ずワークパート10Cにアクセスして患者がワークを実行する場合が存在するからである。
【0038】
次に図3を参照して、ワーク選択パート10Bについて説明する。
ここで、ワーク選択パート10Bでは、診断横断的アセスメントパート10A1の評定及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて、ワークを選択する。それと共に、過去においてワークを達成したか否かの事例からワークにおける当該患者の適正、相性等のワーク情報(患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークを患者に提供することなく、患者が達成できる可能性が高いワークが提供される様にするための情報)にも基づいて、ワークを選択する。
図3において、ワーク選択パート10Bは、分析ブロック10B1、分類ブロック10B2、リンク付けブロック10B3、記憶装置10B4、ワーク決定ブロック10B5を含んでいる。
診断横断的アセスメントパート10A1の評定結果は、情報伝達ラインSL5を介して、ワーク選択パート10Bの分析ブロック10B1に送信される。そして疾患特異的アセスメントパート10A2の評定結果は、情報伝達ラインSL4を介して、分析ブロック10B1に送信される。
【0039】
分析ブロック10B1では、診断横断的アセスメントパート10A1の評定結果及び疾患特異的アセスメントパート10A2の評定結果の各々についてクラスタ分析を行い、患者を所定のクラスタに分類する機能を有している。診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づく分析ブロック10B1の分析結果は、情報伝達ラインSL22を介して分類ブロック10B2に送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づく分析ブロック10B1の分析結果は、情報伝達ラインSL24を介して分類ブロック10B2に送信される。
ただし、図6を参照して後述する様に、ワーク情報が増加して、患者を多数のクラスタに分類することが出来る場合には、分析ブロック10B1には評価パート10Dからワーク情報が提供され、当該膨大な情報量のワーク情報に基づいて、クラスタの数が多数となり、患者の病状やワークとの相性等を考慮した木目細かいクラスタ分析を行うことが出来る。
【0040】
図3において、分類されたクラスタの情報は、分類ブロック10B2から、情報伝達ラインSL28を介してリンク付けブロック10B3に送信される。
クラスタと当該クラスタに有効なワークとをリンク付ける情報が、記憶装置10B4に記憶されている。当該「リンク付ける情報」は、クラスタとクラスタに有効なワークとを関連付ける図表であっても良いし、関数或いは関係式であっても良い。
リンク付けブロック10B3には、記憶装置10B4から、情報伝達ラインSL30を介して、前記「リンク付ける情報」が伝達され、分類ブロック10B2で分類されたクラスタに対して有効なワークが決定される。換言すれば、リンク付けブロック10B3は、「リンク付ける情報」により、患者が分類されたクラスタに対して有効なワークをリンク付けして決定する機能を有している。
【0041】
リンク付けブロック10B3で決定されたワークに対する情報(分類されたクラスタに対して有効なワークの情報)は、情報伝達ラインSL40を介してワーク決定ブロック10B5に送られる。ワーク決定ブロック10B5には、信号伝達ラインSL10を介して評価パート10Dからワーク情報が送信される。
ワーク決定ブロック10B5は、評価パート10Dからのワーク情報に基づいて、リンク付けブロック10B3で決定されたワークが「患者が苦手とするワーク、相性の悪いワーク」でないかを判断し、或いは、リンク付けブロック10B3で決定されたワークが「患者が達成できる可能性が高いワーク」であるか否かを判断する機能を有している。そして、リンク付けブロック10B3で決定されたワークが「患者が苦手とするワーク、相性の悪いワーク」であると判断した場合には、当該ワークを削除して(当該ワークを選択せず)、「患者が達成できる可能性が高いワーク」を選択する機能を有している。
換言すると、図1図5で示す実施形態では、患者に提供されるワークは、患者が分類されたクラスタと、記憶装置10B4に記憶されている「リンク付ける情報」にのみよって決定される訳ではなく、過去においてワークを達成したか否かの事例から導き出された情報、すなわち、ワークにおける当該患者の適正、相性等のワーク情報をも考慮して決定される。係るワーク情報は、患者が苦手とするワーク、相性の悪いワークを患者に提供することなく、患者が達成できる可能性が高いワークを提供するために活用される情報である。
上述の機能に加えて、ワーク決定ブロック10B5は、選択された「患者が達成できる可能性が高いワーク」を、情報伝達ラインSL6を介して、ワークパート10Cに送信する機能を有している。さらにワーク決定ブロック10B5は、情報伝達ラインSL7を介して、選択したワークを患者側の情報処理端末3に伝達する機能を有している。
【0042】
図示の実施形態では、患者に対して、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づくワークと、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づくワークの双方が提供可能である。換言すれば、診断横断的な介入と疾患特異的な介入の双方が可能である。
また、統計学的手法としてクラスタ分析が例示されているが、患者(対象者)を正確に分類して、適切なワークとリンク付けできるのであれば、クラスタ分析以外の統計学的手法を採用することも可能である。
【0043】
次に図4を参照して、評価パート10Dにおいてワーク情報を生成する機序について説明する。
図4において、評価パート10Dは、ワーク達成・未達判断ブロック10D1、ワークタグ付与ブロック10D2、ワーク提供判断ブロック10D3、ワーク情報作成ブロック10D4を有している。
ワーク達成・未達判断ブロック10D1は、ワークパート10Cで受信したワークに関する患者からの情報(ワークを達成したか否かを含む)を、情報伝達ラインSL8を介してワークパート10Cから取得し、患者が当該ワークを達成したか或いは未達成であったかを判断する機能を有している。当該判断は、患者がワークを開始した旨の情報、患者が開始したワークを終了した旨の情報を取得して実行する。
ワーク達成・未達判断ブロック10D1の判断結果は、情報伝達ラインSL15を介してワークタグ付与ブロック10D2に送信されると共に、情報伝達ラインSL16を介してワーク提供判断ブロック10D3に送信される。
【0044】
ワークタグ付与ブロック10D2は、ワーク達成・未達判断ブロック10D1の判断結果を受け、患者が実行したワークに対してタグを付与する機能を有している。例えば、患者が当該ワークを達成した場合には「OKタグ」を付与し、患者が当該ワークを未達成の場合には「NGタグ」を付与する。
ここで、ワークタグ付与ブロック10D2において、患者が当該ワークを達成した過程、未達であった過程を詳細に分析し、例えば「患者にとって問題なく達成した」、「実行しにくい箇所はあるが何とか達成した」、「未達であるが改善により達成出来るのではないか」、「達成するのは至難である」等、より詳細な分析を行い、当該分析に応じたより細分化されたタグを付与することも可能である。
ワークタグ付与ブロック10D2により種々のタグを付与されたワークの情報は、情報伝達ラインSL18を介してワーク情報作成ブロック10D4に送信される。
【0045】
図4において、ワーク提供判断ブロック10D3は、ワーク達成・未達判断ブロック10D1の判断結果を受け、加えて後述するワーク情報作成ブロック10D4から、情報伝達ラインSL19(双方向ライン)を介してワーク情報を取得し、患者に提供すべきワーク(次に患者に提供すべきワーク)を判断し、決定する機能を有している。
例えばワーク達成・未達判断ブロック10D1の判断の結果、患者がワークを達成している場合、ワーク提供判断ブロック10D3は、ワーク選択パート10Bのリンク付けブロック10B3が決定した(患者が分類されたクラスタに対して)当該達成されたワークに次いで効果があると考えられているワークを選択することが想定される。明確には図示されないが、ワーク提供判断ブロック10D3は、ワーク選択パート10Bの記憶装置10B4或いはそれに相当するデータベースと図示しない情報伝達ラインで接続されており、(患者が分類されている)クラスタに属する患者に対して有効と考えられている医療用のアプリを提供することが出来る。
一方、ワーク達成・未達判断ブロック10D1の判断の結果、患者がワークを完了できなかった(未達成だった)場合、ワーク提供判断ブロック10D3は、当該患者に提供されたワーク(患者が達成できなかったワーク)は「患者が苦手とするワーク、相性の悪いワーク」であると判断し、それに代わって「患者が達成できる可能性が高いワーク」を、ワーク情報作成ブロック10D4から取得したワーク情報に基づき選択し、決定する。
【0046】
また、患者にワークを提供しても未達であることが続く場合は、それ以上ワークを提供することは医療的に宜しくない場合がある。或いは、患者が問題なくワークを達成することが続く場合等、これ以上のワークの提供は意味がない場合がある。それ等の場合を考慮して、新たなワークを提供しても宜しいか否か(或いは、医療用のアプリの提供を停止すべきか否か)は、ワーク提供判断ブロック10D3で常にチェックされている。その際、ワーク提供判断ブロック10D3は、医療機関側(の情報処理端末4)と、情報伝達ラインSL17を介して情報の授受を可能にして、医師の診断が可能となる様に構成されている。
さらに、ワーク提供判断ブロック10D3が提供するワークを判断する際、医療機関側の見解、助言を得ることが出来る様に構成されている。
ワーク提供判断ブロック10D3の判断結果、すなわち、(次に)患者に提供すべきワークの情報は、情報伝達ラインSL19(双方向ライン)を介してワーク情報作成ブロック10D4に送信される。
【0047】
図4において、ワーク情報作成ブロック10D4は、ワークタグ付与ブロック10D2からタグを付与されたワーク情報を取得すると共に、ワーク提供判断ブロック10D3の判断結果(提供すべきワークの情報)を受け、ワーク情報を作成する機能を有している。
ここで、ワークは種々存在し、例えば「選択式で回答を行うワーク」、「(動画等)を見るのみのワーク」、「自由記述により回答するワーク」等々が存在する。そして、患者がワークを何回か実行すると、それぞれの患者について、実行し難い(苦手な)ワーク、達成し易い(得意な)ワークの傾向が出てくる。ワーク情報作成ブロック10D4ではその様な患者の傾向を「ワーク情報」として作成し、ワーク選択に利用する。
ワーク情報作成ブロック10D4によるワーク情報は、ワーク提供判断ブロック10D3による判断結果(次に患者に提供すべきワークの情報)と共に、情報伝達ラインSL10を介してワーク選択パート10Bのワーク決定ブロック10B5に送信される。
【0048】
主として図5を参照して、評価パート10Dにおけるワーク情報の生成の手順について説明する。
図5において、ステップS1でワーク選択パート10Bが選択したワークを患者に提供した後、ステップS2で、ステップS1で提供したワークを患者が達成したか、或いは未達成であったかを判断する。ステップS2における判断は、ワークパート10Cで患者からワークの情報(達成したか否か等の情報)を受けて、評価パート10Dのワーク達成・未達判断ブロック10D1により判断する。明確に図示されていないが、ステップS2による判断結果は、評価パート10D(ワーク情報作成ブロック10D4)におけるワーク情報の作成に利用される。
ステップS2の判断の結果、患者がワークを達成した場合(ステップS2が「達成」)はステップS3に進み、ワークが未達成の場合(ステップS2が「未達成」)はステップS4に進む。
【0049】
ステップS3(患者がワークを達成した場合)では、患者がワークを達成したことに基づいて、患者が達成した当該ワークに「OKタグ」を付与する。ワークへのタグの付与は、評価パート10Dのワークタグ付与ブロック10D2により実行される。
一方、ステップS4(ワークが未達成の場合)では、患者がワークを未達成だったことに基づいて、患者が達成できなかった当該ワークに「NGタグ」を付与する。明確には図示されていないが、ステップS3、ステップS4におけるワークへのタグ付けは、評価パート10D(ワーク情報作成ブロック10D4)によるワーク情報の作成に活用される。
ここで、患者が当該ワークを達成した過程、未達成であった過程を詳細に分析し、当該分析に応じたより細分化されたタグを付与することが可能である。
【0050】
ステップS5では、患者がワークを達成し、当該ワークに「OKタグ」が付与されたことに基づいて、医療用のアプリを終了するか否かを判断する。当該判断は、評価パート10Dのワーク提供判断ブロック10D3により実行されるが、医療機関における医師の判断に委ねることが出来る。
ステップS5における判断の結果、医療用のアプリを終了する場合(ステップS5が「Yes」)、図示の実施形態におけるシステム100による治療は終了する。
医療用のアプリを終了しない場合(ステップS5が「No」)はステップS6に進む。
【0051】
ステップS6では、直前のワークを達成した患者が次の(他の)ワークを選択して実行することが必要か否かを判断する。当該判断は、ワーク提供判断ブロック10D3により実行されるが、最終的には、医療機関における医師の判断に委ねることが出来る。ワーク提供判断ブロック10D3は、リンク付けブロック10B3の記憶装置10B4或いはそれに相当するデータベースを介して、当該患者が分類されたクラスタに対して既に設定されている次のワークがあるか否かを確認する。
ステップS6の判断の結果、患者が次の(他の)ワークを選択して実行することが必要な場合(ステップS6が「Yes」)はステップS8に進み、患者が次の(他の)ワークを選択して実行することが必要でない場合(ステップS6が「No」)は、図示の実施形態におけるシステム100による治療は終了する。
【0052】
患者がワークを未達成である場合に、ステップS4に続いてステップS7に進む。
ステップS7では、患者がワークを未達成であり、当該ワークに「NGタグ」が付与されたことに基づいて、医療用のアプリを終了するか否かを判断する。当該判断は、評価パート10Dのワーク提供判断ブロック10D3により実行されるが、医療機関における医師の判断に委ねることが出来る。ステップS7において、患者の意向により医療用のアプリを終了することも可能である。
ステップS7において医療用のアプリを終了する場合(ステップS7が「Yes」)は、図示の実施形態におけるシステム100による治療は終了する。
医療用のアプリを終了しない場合(ステップS7が「No」)はステップS8に進む。
【0053】
ステップS8では、患者に対して、「OKタグ」が多く付与され、「NGタグ」の少ないワークを患者に提供する。換言すれば、「患者が苦手とするワーク、相性の悪いワーク」ではなく、患者との相性が良く、「患者が達成できる可能性が高いワーク」を選択して、提供する。
ステップS8において、患者へ提供されるワークは、評価パート10D(ワーク提供判断ブロック10D3)からのワーク情報を受信したワーク選択パート10Bが選択する。
【0054】
図6を参照して、図1図5で示す実施形態の変形例を説明する。
図1図5で示す実施形態では、患者がワークを達成できたか未達成であるかのデータ数が膨大ではなく、クラスタ分類においては、全ての患者の性向や個性を考慮した対応は考えていない。
しかし、患者がワークを達成できたか未達成であるかのデータの情報量が非常に大きくなり、患者を多数のクラスタに分類することが出来る様になれば、分析ブロック10B1は、評価パート10Dで生成されたワークに対する患者の適正及び/又はワークと患者との相性を包含する情報(ワーク情報)により、患者の個性、性向等と良く合致したクラスタに分類することが可能になる。すなわち、患者の病状やワークとの相性等を考慮した木目細かいクラスタ分析を行うことが出来る。
その様な場合には、評価パート10Dからのワーク情報は、情報伝達ラインSL10-1を介して分析パート10B1に送信され、患者の病状やワークとの相性等を考慮した精度の高いクラスタ分析に寄与する。精度が高く、患者毎に細かくクラスタが設定されていれば、クラスタとリンク付けされたワークは、当然に患者の病状や相性等を考慮した内容が選択される。
図6の変形例においては、図1図5の実施形態におけるワーク決定ブロック10B5は有しておらず、選択されたワーク(患者が達成できる可能性が高いワーク)は、リンク付けブロック10B3から、情報伝達ラインSL6を介してワークパート10Cに送信されると共に、情報伝達ラインSL7を介して患者側の情報処理端末3に送信される。クラスタ分析がきめ細かく行われる結果として、クラスタとリンク付けされるワークは、当該クラスタに属する患者の病状やワークとの相性を反映される内容のものが(患者の属するクラスタに)リンク付けされるからである。
図6の変形例のその他の構成及び作用効果は、図1図5の実施形態と同様である。
【0055】
図7図8を参照して、患者側の情報処理端末3と、医療機関側の情報処理端末4を説明する。
図7において、患者側の情報処理端末3は、制御ブロック3A、表示ブロック3B、入力ブロック3C、記憶ブロック3D及び通信ブロック3Eを有している。
制御ブロック3Aは、患者側の情報処理端末3における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック3Bは、患者側の情報処理端末3の使用者(患者)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック3Cは、使用者(患者)が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック3Dは既存の記憶用機器により構成され、患者側の情報処理端末3のために、符号3Fで示す患者用プログラムが記憶されている。データベース10F(図1参照)を記憶ブロック3Dとして用いることが可能である。通信ブロック3Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク20と接続する機能を有している。
患者側の情報処理端末3は、情報処理機能及び通信機能を有する電子機器であれば、特に限定はしない。ただし、昨今の普及を考慮すると、スマートフォンの様な携帯型情報端末が好ましい。
【0056】
図8において、医療機関側の情報処理端末4は、制御ブロック4A、表示ブロック4B、入力ブロック4C、記憶ブロック4D及び通信ブロック4Eを有している。
制御ブロック4Aは、医療機関側の情報処理端末4における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック4Bは、医療機関側の情報処理端末4の使用者(医師、医療機関の関係者等)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック4Cは、医師、医療機関の関係者等が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック4Dは既存の記憶用機器で構成され、医療機関側の情報処理端末4のため、符号4Fで示す医療機関用プログラムが記憶されている。データベース10F(図1参照)を記憶ブロック4Dとして用いることも可能である。通信ブロック4Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク20と接続する機能を有している。
【0057】
図示はされていないが、システム100において、定期或いは不定期に医療用のアプリ使用を促すリマインド通知や励まし等のメッセージを送信する機能を有する装置を設けることが出来る。ゲーム的な要素を応用することも可能である。さらに、システム100にアクセスすることについて患者に何かしらの報酬を与える機能を備えることが可能である。そして、システム100にアクセスして医療用のアプリを積極的に実行しようとする動機付けを高める様上記のような機能を有するウェアラブル機器等を備えることが可能であり、治療を継続する(医療用のアプリを継続使用する)という「正」の行動を強化することが出来る。
これ等の機能を発揮することにより、患者がシステム100にアクセスしてワークを実行し続けたいという継続使用の意欲を高めて、治療途中でシステム100にアクセスしなくなる(治療途中で脱落する)事態を抑制し、システム100による治療効果(或いは医療用のアプリの効果)を向上することが出来る。
或いは、システム100を利用している患者の日常下データ、例えばメールやスケジュールをチェックして、適正なタイミングで、当該患者に対して、必要なワークの実行を促すメッセージをシステム100側から発信する機能を具備することが出来る。
それに加えて、患者がワークの実行を緊急に必要とする場合(すなわち患者にとっての緊急時)に、当該患者が即時にワークやTipSを実行できる機能(所謂「レスキュー的な」機能)を備えることも可能である。
【0058】
さらに、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント、ワーク、ホームワーク、TipS、評価等を実行するに際して、スマートスピーカー等を用いて、音声による質問項目の読み上げ、指示、ガイダンスその他に対して、患者が音声により入力し、記録し、応答すること等を可能にして、音声により相互に作用する機能(インタラクティブな機能)を具備する様に構成することが可能である。ここで、スマートスピーカー(AIスピーカー)は対話型の音声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカーであり、内蔵されているマイクで音声を認識し、情報の検索や連携家電の操作を行う。
また、システム100にアクセスした患者に対して、治療に関連する或いは治療に役立つ動画や音楽、音声、その他のコンテンツ(例えばマインドフルネス瞑想)を順次視聴させるコンテンツ(TipS)を提供する機能を有する装置を設けることが出来る。係るコンテンツは、例えば、マインドフルネス瞑想、香り、音楽、映像、振動、好ましい食品/食事の情報等であり、五感を使うことにより治療効果とその持続、満足度を表す指標であるQOLの向上をもたらす。
【0059】
図示されてはいないが、患者側の情報処理端末3或いは端末3に情報的に接続された機器により日常生活下データを取得し、取得された日常生活下データを患者の情報として治療に役立てることが出来る。
例えば、所謂「ひきこもり」の患者の情報処理端末3がスマートフォンであれば、スマートフォンの位置が変わることにより、患者が移動したことが確認され、その事実(患者が移動したという事実)を把握することが出来る。
そして、端末3を家電と接続することにより、家電の使用により患者が日常生活を送っていることを確認出来る。
そして、所有者の行動を自動的に送信する様なアプリケーションソフトを患者の情報処理端末3であるスマートフォンにインストールすることにより、患者の所有するスマートフォンを介して日常生活下データを取得することが可能である。その様なアプリケーションソフトを患者のスマートフォンにインストールする際に、患者の同意を得たうえで、日常生活下データを獲得することも可能である。
なお、モーションセンサーによる動き、バイオマーカー、臭気は有効な日常生活下データとなり得る。
【0060】
予め想定された危機的状況が生じていることが、日常生活下データから推定される場合には、当該危機的状況にある患者或いは当該患者のサポーターに対して、非常警報(アラート)を発生する機能が、サーバー10に備わっていることが好ましい。すなわち、危機的状況において、システム100が患者に対して介入し(例えばコンテンツの提供等)、医療機関や当該患者のサポーターに連絡出来る様に構成することが望ましい。
例えば、日常生活下データから長時間に亘って患者が動いていないことが推定される場合には、患者側情報処理端末3と情報的に接続された機器から強烈な臭気(例えば、ワサビ臭)を発生する様に構成することも可能である。
さらに、救助を呼ぶことが出来ないうつ病患者の場合に、当該患者の日常生活下データからはシステム100が危険な状況を判断して、ソーシャルワーカー等に対してメール(ショートメッセージ)を送信することも可能である。
【0061】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有する診断横断的アセスメントパート10A1、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有する疾患特異的アセスメントパート10A2と、
診断横断的アセスメントパート10A1及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2)のアセスメント(評定)を分析して患者を特定のカテゴリー(スタック或いはグループ:個人が一つのカテゴリーを構成する場合を含む)に分類し、分類されたカテゴリーとリンク付けされたワークを選択する機能を有するワーク選択パート10B、
を有するサーバー10を含むシステム100について、本発明を適用した場合を示している。しかし、本発明は、それ以外の医療用のアプリのシステムに対しても適用可能である。
また本発明は、パーソナライズされた医療サービスを提供する場合の様に、個々の患者が一つのカテゴリーを構成する場合についても適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
3・・・患者側の情報処理端末
4・・・医療機関側の情報処理用端末
10・・・サーバー
10B・・・ワーク選択パート
10B1・・・分析ブロック
10B3・・・リンク付けブロック
10B5・・・ワーク決定ブロック
10C・・・ワークパート
10D・・・評価パート
100・・・治療システム
図1
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図8