(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】湾曲部深さ検出装置及び湾曲部深さ検出方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/18 20060101AFI20240703BHJP
G01B 11/22 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G01B5/18
G01B11/22 Z
(21)【出願番号】P 2021205956
(22)【出願日】2021-12-20
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593007095
【氏名又は名称】有限会社中村鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】中村 宜史
(72)【発明者】
【氏名】中村 径仙
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-159499(JP,A)
【文献】特開2021-067663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/18
G01B 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに形成された湾曲部の深さを検出する湾曲部深さ検出装置であり、
水平方向に一定の距離で往
動または復動する移動体と、
該移動体に回転自在に支持されており、回転中心軸を水平方向としている回転軸部と、
該回転軸部から外方に突出しており、前記回転軸部と一体的に前記回転中心軸周りに回動する
ものであり、前記移動体の往動または復動に伴い前記湾曲部に当接させるための当接部と、
該当接部とは異なる位置で前記回転軸部から外方に延出しており、前記回転軸部と一体的に前記回転中心軸周りに回動する回動体と、
前記移動体に固定されており、前記当接部が前記回転中心軸周りに回動していない状態で前記回動体と対面する非回動体と、
それぞれ投光部と受光部とが対をなしている三以上の光センサと、を具備し、
三以上の前記光センサそれぞれの前記投光部が、前記回動体及び前記非回動体の一方に距離をあけて取り付けられていると共に、三以上の前記光センサそれぞれの前記受光部が、前記回動体及び前記非回動体の他方に距離をあけて取り付けられている
ことを特徴とする湾曲部深さ検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の湾曲部深さ検出装置を使用した湾曲部深さ検出方法であり、
前記当接部を前記ワークの前記湾曲部に当接させたときに、前記回動体が前記回転中心軸周りに回動する角度の大きさを反映して、三以上の前記光センサそれぞれの受光量が変化することに基づいて、前記湾曲部の深さを検出する
ことを特徴とする湾曲部深さ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲部を有するワークについて、湾曲部の深さを検出するための湾曲部深さ検出装置、及び、湾曲部深さ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属板の曲げ加工など、湾曲部を有する形状にワークを量産加工する際、誤差が生じることは不可避であり、目的とする形状より湾曲部が僅かに浅いワークや僅かに深いワークが生じる。この誤差を把握することができれば、その結果を仕上げ工程など後の工程に反映させて、誤差を修正することができる。或いは、誤差を把握することにより、誤差が許容範囲内にある良品と、誤差が許容範囲を超えている不良品とに、ワークを分別することができる。そのため、湾曲部を有するワークについて、湾曲部の深さを検出する技術が要請されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、湾曲部を有するワークについて、湾曲部の深さを検出することができる湾曲部深さ検出装置、及び、この装置を使用して行う湾曲部深さ検出方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる湾曲部深さ検出装置は、
「ワークに形成された湾曲部の深さを検出する湾曲部深さ検出装置であり、
水平方向に一定の距離で往動または復動する移動体と、
該移動体に回転自在に支持されており、回転中心軸を水平方向としている回転軸部と、
該回転軸部から外方に突出しており、前記回転軸部と一体的に前記回転中心軸周りに回動するものであり、前記移動体の往動または復動に伴い前記湾曲部に当接させるための当接部と、
該当接部とは異なる位置で前記回転軸部から外方に延出しており、前記回転軸部と一体的に前記回転中心軸周りに回動する回動体と、
前記移動体に固定されており、前記当接部が前記回転中心軸周りに回動していない状態で前記回動体と対面する非回動体と、
それぞれ投光部と受光部とが対をなしている三以上の光センサと、を具備し、
三以上の前記光センサそれぞれの前記投光部が、前記回動体及び前記非回動体の一方に距離をあけて取り付けられていると共に、三以上の前記光センサそれぞれの前記受光部が、前記回動体及び前記非回動体の他方に距離をあけて取り付けられている」ものである。
【0005】
本構成の湾曲部深さ検出装置を使用してワークの湾曲部の深さを検出する際は、移動体の往動または復動に伴い当接部をワークの湾曲部に当接させる。当接部は、移動体に回転自在に支持されている回転軸部と一体的に、回転軸部の回転中心軸周りに回動する構成である。そのため、移動体を一定の距離で往動または復動させることによって、当接部をワークの湾曲部に当接させたとき、湾曲部の深さに応じて当接部がワークに押し返される距離が異なることを反映して、当接部が回転軸部と一体的に異なる回動角度で回動する。回転軸部からは、当接部と異なる位置で回動体が延出しているため、当接部と共に回動体も回転軸部と一体的に回動する。
【0006】
そして、三以上の光センサのそれぞれにおいて、投光部及び受光部の一方は回動体に取り付けられており、投光部及び受光部の他方は、移動体と共に往復動するが回動はしない非回動体に取り付けられている。そのため、三以上の光センサそれぞれにおいて、投光部及び受光部の光軸が一致する度合いは、回動体の回動する角度に伴って変化する。つまり、回動体と共に回転軸部と一体的に回動する当接部の回動角度の変化は、三以上の光センサそれぞれにおいて、投光部から投射された光を受光部が受ける受光量の変化としてあらわれる。
【0007】
従って、移動体の往動または復動によって当接部をワークの湾曲部に当接させたとき、三以上の光センサそれぞれについて受光量を測定することにより、ワークの湾曲部の深さを検出することができる。
【0008】
次に、本発明にかかる湾曲部深さ検出方法は、
「前記当接部を前記ワークの前記湾曲部に当接させたときに、前記回動体が前記回転中心軸周りに回動する角度の大きさを反映して、三以上の前記光センサそれぞれの受光量が変化することに基づいて、前記湾曲部の深さを検出する」ものである。
【0009】
これは、上述したように、上記構成の湾曲部深さ検出装置を使用して行う湾曲部深さ検出方法の構成である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、湾曲部を有するワークについて、湾曲部の深さを検出することができる湾曲部深さ検出装置、及び、この装置を使用して行う湾曲部深さ検出方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は本発明の一実施形態である湾曲部深さ検出装置の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)の湾曲部深さ検出装置を異なる方向から見た斜視図である。
【
図2】
図2(a)は
図1の湾曲部深さ検出装置について、ピストンロッドを前進させた状態(当接部がワークから離隔している状態)の平面図であり、
図2(b)は
図1の湾曲部深さ検出装置について、ピストンロッドを後退させた状態(当接部がワークに当接している状態)の平面図である。
【
図3】
図3(a)はA-A線断面図であり、
図3(b)はB-B線断面図である。
【
図4】
図4(a)は
図1の湾曲部深さ検出装置について、当接部がワークから離隔している状態の側面図であり、
図4(b)は
図1の湾曲部深さ検出装置について、当接部がワークに当接している状態であって、ワークの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲内にある場合の側面図である。
【
図5】
図5(a)は
図1の湾曲部深さ検出装置について、当接部がワークに当接している状態であって、ワークの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より浅い場合の側面図であり、
図5(b)は
図1の湾曲部深さ検出装置について、当接部がワークに当接している状態であって、ワークの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より深い場合の側面図である。
【
図6】
図6(a)は
図4(b)の要部及びその部分拡大図であり、
図6(b)は
図5(a)の要部及びその部分拡大図であり、
図6(c)は
図5(b)の要部及びその部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態である湾曲部深さ検出装置1(以下、単に「検出装置1」と称する)、及び、この検出装置1を使用して行う湾曲部深さ検出方法について、図面を用いて説明する。ここでは、湾曲部を有するワークWが爪切りであり、刃部となる部分に湾曲部を形成する第一加工工程の後で、検出装置1を使用して湾曲部の深さを検出し、その検出結果を反映させて刃付け工程である第二加工工程を行う場合を例示する。
【0013】
検出装置1は、架台10と、移動体20と、往復動駆動機構と、回転軸部40と、当接部42と、回動体44と、非回動体24と、往復動距離可変機構と、三以上の光センサと、を主に具備している。
【0014】
架台10は、架台本体11と脚部12とを備えている。架台本体11は平面視及び側面視の外形が矩形で、ほぼ中央に上下に貫通する第一孔部15を有している。架台本体11において対向する一対の辺からは、それぞれ架台本体11の上面より高く立壁部13a,13bが立設されている。つまり、一対の立壁部13a,13bは平行である。一対のうちの一方の立壁部13aにはガイドシャフト14の一端が固定されており、他方の立壁部13bにはガイドシャフト14の他端が固定されている。ガイドシャフト14の軸方向は水平方向である。本実施形態では、ガイドシャフト14は二本ある。脚部12は、設置面に立脚し、架台本体11を設置面より高い位置に保持している。
【0015】
移動体20は、筒状部分21を有しており、そこにガイドシャフト14を挿通させている。本実施形態では、ガイドシャフト14一本当たり二つの筒状部分21を有している。筒状部分21の孔径はガイドシャフト14の外径より僅かに大きく、移動体20はガイドシャフト14に沿ってスライド自在である。移動体20は、ガイドシャフト14と干渉しない位置に、上下に貫通する第二孔部25を有している。更に、移動体20は、第二孔部25を挟んで対向するように上方に立設している一対の軸保持部22a,22bを有している。加えて、移動体20は、ガイドシャフト14の軸方向に直交する方向に、外方に向かって延出しているロッド固定部23を備えている。
【0016】
ガイドシャフト14に沿ってスライド自在な移動体20は、往復動駆動機構による駆動により、ガイドシャフト14に沿って往復動する。往復動駆動機構は、移動体20を一定の距離だけ往復動させることができる機構であり、エアまたは油圧によりピストンロッドを進退させるシリンダ装置を使用した機構、回転運動を直線運動に変換するボール螺子やラックとピニオンを使用した機構とすることができる。本実施形態では、往復動駆動機構として、エア駆動によりピストンロッド30rを進退させるシリンダ装置30を使用している。
【0017】
シリンダ装置30は、一対のうちの一方の立壁部13aに固定されている。つまり、シリンダ装置30は、架台10に固定されている。シリンダ装置30のピストンロッド30rは、ガイドシャフト14と平行に延びており、移動体20から外方に延出しているロッド固定部23にピストンロッド30rの先端が固定されている。これにより、エア駆動によってピストンロッド30rが進退すると、移動体20がガイドシャフト14に沿って一定の距離だけ往復動する。
【0018】
回転軸部40は、移動体20が有している上記の一対の軸保持部22a,22bによって回転自在に保持されている。回転軸部40の軸方向は水平方向であり、且つ、ガイドシャフト14の軸方向に対して直交している。
【0019】
当接部42は、湾曲部の深さを検出する対象のワークWに当接させる部分であり、本実施形態では円柱状である。これは、当接部42とワークWとの当接を、点接触または線接触とするためである。当接部42は、回転軸部40と一体化された連結部41を介して回転軸部40と一体化されている。当接部42は、その軸方向が回転軸部40の軸方向に対して直交するように、回転軸部40から突出している。
【0020】
連結部41には、細長い板状の部分を有する回動体44の上端が固定されている。これにより、回動体44は、連結部41を介して回転軸部40と一体化されている。回動体44は、回転軸部40の回転中心軸に対して、当接部42が延出している方向とは反対側に延出しており、移動体20の第二孔部25、及び、架台10の第一孔部15を貫通して架台本体11より下方まで延びている。回動体44の長さは、その下端が設置面に当接しない長さに設定されている。
【0021】
回転軸部40は、一対のうちの一方の軸保持部22bを貫通して更に延びており、その先端にゲージ保持部47が固定されている。ゲージ保持部47は、回転軸部40の軸方向と交差する方向に延出している部分を有しており、その部分にダイヤルゲージ70が取り付けられている。一方、軸保持部22bには、ダイヤルゲージ70の接触子70cを受ける接触子受け部27が固定されている。
【0022】
上記構成により、回転軸部40が回転中心軸周りに回転すると、当接部42、回動体44、ゲージ保持部47、及び、ダイヤルゲージ70が、回転軸部40と一体的に回転中心軸周りに回動する。
【0023】
非回動体24は、細長い板状の部分を有しており、その上端が移動体20の下面に固定されている。非回動体24は、鉛直に下方に向かって延出しており、架台10の第一孔部15を貫通して架台本体11より下方まで延びている。非回動体24の長さは、下端が設置面に当接しない長さに設定されている。非回動体24と回動体44とは、当接部42がワークWに当接していないことにより回動体44が回転中心軸周りに回動しておらず、自重によって垂れ下がっている状態で、ほぼ対面するように位置関係が設定されている。
【0024】
往復動距離可変機構は、移動体20が往復動する距離を変化させるための機構である。本実施形態の往復動距離可変機構は、外筒81と、外筒81に対して進退する内ロッド82を備えている。外筒81は、一対の立壁部13a,13bの内、シリンダ装置30が固定されている立壁部13aではない方の立壁部13bに、貫通した状態で固定されている。内ロッド82は、回転式の操作部83を一方向に回転させることによって外筒81内に進入し、他方向に回転させることにより外筒81から進出するものである。内ロッド82の先端は移動体20を貫通した上で、ロッド端取付板84に固定されている。ロッド端取付板84は、第二孔部25の内周壁に取り付けられている。
【0025】
このような構成により、外筒81から内ロッド82を進出させることにより、外筒81と内ロッド82の合計の長さを大きくすれば、ピストンロッド30rが本来的に進退することに伴って移動体20が前進する距離より短い距離で、ピストンロッド30rの動きを止めることができ、ピストンロッド30rが往復動する距離、すなわち移動体20が往復動する距離を、小さくすることができる。これにより、移動体20が往復動する距離が過剰になることを防止し、多数のワークWの湾曲部の深さを検出する作業の効率を高めることができる。なお、本実施形態の往復動距離可変機構は、外筒81に対する内ロッド82の位置を固定するためのストッパ87を備えている。
【0026】
本実施形態の検出装置1を使用してワークWの湾曲部深さを検出する際は、ピストンロッド30rの進退に伴い移動体20が往動または往動したときの何れか一方で、当接部42がワークWの湾曲部に当接するように、移動体20に対するワークWの保持位置を設定する。加えて、ワークWの湾曲部の深さに生じ得る誤差の全範囲にわたり、当接部42がワークWの湾曲部に当接し、湾曲部の深さの差に応じて当接部42がワークWによって押し返される距離が変化するように、移動体20に対するワークWの保持位置を設定する。湾曲部の深さに生じ得る誤差の範囲は、ワークWを構成する材料の種類やワークWに湾曲部を形成する第一加工工程の方法等により異なるが、過去の経験や事前のサンプル計測によって把握することができる。
【0027】
事前のサンプル計測は、ワークWの中から所定数だけ抽出されたサンプルについて湾曲部の深さを測定し、湾曲部の深さに生じる誤差の範囲を把握するものである。本実施形態の検出装置1はダイヤルゲージ70を備えているため、これを使用してサンプル計測を行うことができる。ダイヤルゲージ70は、当接部42と共に回転軸部40と一体的に回転中心軸周りに回動する構成であり、ダイヤルゲージ70の接触子70cを受ける接触子受け部27は、回転軸部40を回転自在に保持している軸保持部22bに固定されている。そのため、ダイヤルゲージ70の表示は、回転軸部40の回転角度、すなわち当接部42の回動角度を反映しており、当接部42の回動角度はワークWの湾曲部の深さを反映している。従って、サンプルをワークホルダ90に保持させた状態で、移動体20を往動または復動させて当接部42を湾曲部に当接させ、そのときのダイヤルゲージ70の表示を目視で読み取る作業を、所定数のサンプルについて行うことにより、ワークWの湾曲部の深さに生じる誤差の大きさの範囲を、予め調べることができる。
【0028】
本実施形態では、ピストンロッド30rの後退に伴い移動体20が復動したときに当接部42がワークWに当接し、ピストンロッド30rの前進に伴い移動体20が往動したときに、当接部42がワークWから離隔するように、ワークWの保持位置が設定されている。すなわち、検出装置1に対して、一対の立壁部13a,13bのうちシリンダ装置30が固定されている立壁部13aの側にワークホルダ90が設置される。複数のワークWについて湾曲部の深さを検出する際は、ピストンロッド30rの前進によりワークホルダ90から当接部42を離隔させた状態で、ワークホルダ90に保持させるワークWを交換し、ピストンロッド30rの後退により当接部42をワークWに当接させてそのワークWの湾曲部の深さを検出し、再びピストンロッド30rの前進によりワークホルダ90から当接部42を離隔させた状態でワークWの交換を行う、という手順を繰り返す。
【0029】
湾曲部の深さを検出する対象の複数のワークWは、何れについても湾曲部における同一の位置で当接部42に当接するように、ワークホルダ90に保持される。本実施形態のワークWは爪切りであり、湾曲部は刃付け前の刃部である。例えば、湾曲部の中央が当接部42と点接触するように、ワークWの位置決めをすることができるが、上述したように全てのワークWについて湾曲部の同じ位置を当接部42に当接させれば、当接させる位置は湾曲部の中央に限定されるものではない。
【0030】
また、架台10の第一孔部15と移動体20の第二孔部25の大きさは、移動体20と一体的に往復動すると共に回転軸部40と一体的に回動する回動体44が、往復動及び回動の過程で第一孔部15及び第二孔部25の双方と干渉しない大きさに設定される。また、非回動体24も移動体20の下面に固定されて下方に延出しており、移動体20と一体的に往復動するため、その往復動の過程で架台10の第一孔部15と干渉しないように、互いの大きさ及び位置関係が設定される。
【0031】
加えて、当接部42がワークWと当接することによって回動体44が回転軸部40の回転中心軸周りに回動する過程で、回動体44と非回動体24が少なくとも一部で対面するように、両者の大きさ及び位置関係が設定される。ここで、回動体44が回動する範囲として想定する範囲は、湾曲部の深さに生じ得る誤差の範囲から求めることができ、湾曲部の深さに生じ得る誤差の範囲は、上述したように過去の経験や事前のサンプル計測によって把握することができる。なお、通常、ワークWの湾曲部の深さに生じ得る誤差の範囲はさほど大きなものではないため、回動体44が回動しておらず自重によって垂れ下がっている状態で、回動体44と非回動体24がほぼ対面するような位置関係とすれば、湾曲部の深さの差に応じて回動体44が回動する角度が異なっても、回動体44と非回動体24は大きな面積割合で対面する。
【0032】
そして、検出装置1は、投光部50と受光部60が対をなす光センサを三以上備えており、回動体44及び非回動体24の一方に、それぞれの光センサの投光部50が取り付けられ、回動体44及び非回動体24の他方に、それぞれの光センサの受光部60が取り付けられる。投光部50及び受光部60は、回動体44または非回動体24それぞれにおいて細長く延びている部分で、その軸方向に間隔をあけて取り付けられる。
【0033】
このように、投光部50及び受光部60の一方は回動体44に取り付けられているのに対し、他方は回動しない非回動体24に取り付けられているため、三以上の光センサそれぞれにおいて、投光部50及び受光部60の光軸が一致する度合いは、回動体44が回動する角度に伴って変化する。つまり、回動体44と共に回転軸部40と一体的に回動する当接部42の回動角度の変化は、三以上の光センサそれぞれについて、投光部50から投射された光を受光部60が受ける受光量の変化としてあらわれる。
【0034】
そして、上述したように、検出装置1では、ワークWの湾曲部の深さに生じ得る誤差の全範囲にわたり、当接部42がワークWの湾曲部に当接し、湾曲部の深さの差に応じて当接部42がワークWによって押し返される距離が異なるように設定されており、湾曲部の深さの差に応じて、当接部42が回動体44と共に回転軸部40と一体的に回動する角度が異なる。そのため、三以上の光センサについて受光量を測定することにより、ワークWの湾曲部の深さを検出することができる。
【0035】
具体的に説明すると、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より浅いとき、移動体20が同一の距離だけ移動して当接部42がワークに当接したときに、ワークWによって当接部42が押し返される距離が大きくなるため、当接部42及び回動体44が回転軸部40の回転中心軸周りに回動する角度が大きくなる。逆に、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より深いとき、移動体20が同一の距離だけ移動して当接部42がワークに当接したときに、ワークWによって当接部42が押し返される距離が小さくなるため、当接部42及び回動体44が回転軸部40と一体的に回転中心軸周りに回動する角度が小さくなる。回動体44が回動する角度が変化すれば、三以上の光センサそれぞれの受光量が変化するため、受光量を測定することによりワークWの湾曲部の深さを検出することができる。
【0036】
また、上述したように、回動体44は、回転軸部40の回転中心軸に対して、当接部42が突出している方向とは反対側に延出している。加えて、本実施形態では、回動体44及び非回動体24において光センサが取り付けられている部分と回転軸部40の回転中心軸との間の距離は、当接部42においてワークWと当接する部分と回転軸部40の回転中心軸との間の距離の5倍以上と長い。そのため、ワークWの湾曲部の深さの誤差が非常に僅かであり、その誤差に起因して当接部42が回転軸部40の回転中心軸周りに回動する角度(回動体44が回動する角度と同一)の差が非常に僅かであっても、各光センサにおける受光量の差を大きなものとすることができるため、ワークWの湾曲部の深さの差を精密に検出することができる。
【0037】
検出装置1を使用して行う湾曲部深さ検出方法の原理は以上の通りであるが、具体例を挙げてより詳細に説明する。ここでは、説明をシンプルにするために、検出装置1が光センサを三つ備える場合を例示する。それぞれの光センサでは、投光部50が非回動体24に取り付けられ、受光部60が回動体44に取り付けられている。三つの投光部50を非回動体24の上端に近い方から順に第一投光部51、第二投光部52、第三投光部53と称すると共に、受光部60を回動体44の上端に近い方から順に第一受光部61、第二受光部62、第三受光部63と称し、第一投光部51と第一受光部61が対をなす光センサを第一光センサ、第二投光部52と第二受光部62が対をなす光センサを第二光センサ、第三投光部53と第三受光部63が対をなす光センサを第三光センサと称する。
【0038】
また、それぞれの光センサは、受光量をデジタル変換し、設定した閾値と対比して閾値以上のときはON信号を送出すると共に、閾値未満のときはOFF信号を送出するセンサアンプ(図示を省略)を備えている。それぞれのセンサアンプは、受光部60で受光量を検出しないときに「0」と表示すると共に、受光量を検出したときに「1~9999」の自然数にデジタル変換するものであり、数値が大きいほど受光量が大きい。
【0039】
受光量の閾値は、光センサごとに異なる値に設定する。第一投光部51から投射され第一受光部61で受けた受光量の閾値を「a」に、第二投光部52から投射され第二受光部62で受けた受光量の閾値を「b」に、第三投光部53から投射され第三受光部63で受けた受光量の閾値を「c」とする。これにより、第一光センサは、受光量がa以上のときにON信号を送出すると共に、a未満のときにOFF信号を送出する。第二光センサは、受光量がb以上のときにON信号を送出すると共に、b未満のときにOFF信号を送出する。第三光センサは、受光量がc以上のときにON信号を送出すると共に、c未満のときにOFF信号を送出する。
【0040】
ここでは、三つの投光部50(51,52,53)を直線上に位置させると共に、三つの受光部60(61,62,63)を直線上に位置させており、回動体44が回動することなく自重で垂れ下がっている状態で、投光部50が並んでいる直線に対して受光部60が並んでいる直線を傾斜させることにより、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容範囲にあるときに、第三受光部63の受光量が最も大きくなるようにしている。
【0041】
加えて、閾値a,b,cは、c<b<aの関係で、且つ、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲内にあるときに(
図4(b)及び
図6(a)を参照)、第三受光部63の受光量のみが閾値以上で第三光センサからON信号が送出され、第一光センサ及び第二センサからはOFF信号が送出されるように設定されている。各光センサから、このような組み合わせでON信号及びOFF信号が送出される信号を総合して「A信号」と称すると共に、A信号が送出される状態を「湾曲部深さ許容状態」と称する。
【0042】
ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より浅いとき、「湾曲部深さ許容状態」のときより当接部42がワークWによって大きく押し返されるため、
図5(a)及び
図6(b)に示すように、当接部42及び回動体44は回転軸部40の回転中心軸周りに、より大きな角度で回動する。上述したように、「湾曲部深さ許容状態」のときに第三受光部63の受光量が最も大きくなるように投光部50及び受光部60を配置しているため、回動体44がより大きく回動することにより、「湾曲部深さ許容状態」のときより上端側の光センサの受光量が増える。これにより、「湾曲部深さ許容状態」では閾値未満であった第二受光部62の受光量が閾値以上となり、ON信号が送出される。すなわち、第一光センサからOFF信号が送出され、第二光センサ及び第三光センサからON信号が送出される。各光センサから、このような組み合わせでON信号及びOFF信号が送出される信号を総合して「B信号」と称する。
【0043】
ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より深いとき、「湾曲部深さ許容状態」のときより当接部42がワークWによって押し返される距離が小さくなるため、
図5(b)及び
図6(c)に示すように、当接部42及び回動体44が回転軸部40の回転中心軸周りに回動する角度が小さくなる。これにより、「湾曲部深さ許容状態」のときには閾値以上あった第三受光部63の受光量が減少して閾値未満となり、OFF信号が送出される。すなわち、第一光センサ、第二光センサ、及び第三光センサの全てからOFF信号が送出される。このように全ての光センサからOFF信号が送出される信号を総合して「C信号」と称する。
【0044】
従って、検出装置1からA信号が送出された場合は、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲内にあると判定し、B信号が送出された場合は、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より浅いと判定し、C信号が送出された場合は、ワークWの湾曲部の深さが目的とする深さとして許容される範囲より深いと判定することができる。
【0045】
そして、この判定結果を反映させて、第二加工工程である刃付け工程において、B信号が送出された場合は、A信号が送出された場合の刃付け工程より湾曲部の仕上がり深さが距離Xだけ深くなるように加工し、C信号が送出された場合は、A信号が送出された場合の刃付け工程より湾曲部の仕上がり深さが距離Xだけ浅くなるように加工することができる。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0047】
例えば、上記の具体例では、それぞれ投光部50と受光部60が対をなす光センサを三つ備える場合を例示した。これに限定されず、光センサの数を四以上とすることができる。光センサの数を増やすことにより、検出装置1から送出される信号の種類数が増えるため、ワークWの湾曲部の深さをより細かい区分に分けることができ、湾曲部の深さをより精密に検出することができる。
【0048】
また、上記の具体例では、各光センサの投光部50が非回動体24に取り付けられ、受光部60が回動体44に取り付けられている場合を例示したが、これとは逆に、投光部50が回動体44に取り付けられ、受光部60が非回動体24に取り付けられている構成とすることができる。
【0049】
加えて、上記では、ピストンロッド30rが前進したときに当接部42がワークWから離隔し、ピストンロッド30rが後退したときに当接部42がワークWに当接する実施形態を例示したが、これとは逆に、ピストンロッド30rが後退したときに当接部42がワークWから離隔し、ピストンロッド30rが前進したときに当接部42がワークWに当接する構成とすることができる。
【0050】
また、上記では、第二加工工程が刃付け工程である場合を例示したが、研磨工程など刃付け以外の工程であってもよい。或いは、第二加工工程は行わず、良品と不良品とにワークWを分けることを目的として、湾曲部の深さを検出することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 検出装置(湾曲部深さ検出装置)
10 架台
20 移動体
24 非回動体
40 回転軸部
42 当接部
44 回動体
50 投光部
51 第一投光部(投光部)
52 第二投光部(投光部)
53 第三投光部(投光部)
60 受光部
61 第一受光部(受光部)
62 第二受光部(受光部)
63 第三受光部(受光部)
W ワーク