(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240703BHJP
G01G 19/44 20060101ALI20240703BHJP
A61B 5/0537 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
G16H10/00
G01G19/44 D
A61B5/0537
(21)【出願番号】P 2022151537
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2017067426の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】雪野 皐月
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081519(JP,A)
【文献】特開2006-162589(JP,A)
【文献】特開2016-122348(JP,A)
【文献】特開2015-014913(JP,A)
【文献】特開2011-209871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G01G 19/44
A61B 5/0537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を取得する取得手段と、
前記計測情報に基づいて前記利用者が自己の前記身体情報を計測する計測頻度及び規則
性を示すパターン指標を取得するパターン指標取得手段と、
前記計測情報に基づいて前記利用者の前記身体情報の変動を示す変動指標を取得する変動指標取得手段と、
前記パターン指標及び前記変動指標に基づいて前記利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定する判定手段と、を備え
、
前記変動指標は、前記利用者の前記身体情報の変動量と平常の変動量との比較に基づいて求められるものである、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記変動指標は、前記身体情報の分散値に基づいて前記利用者の前記身体情報の変動量が前記平常の変動量よりも大きいか否かを調べるものである、
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記比較が行われる前記身体情報は、前記利用者の体重及び生体インピーダンスの少なくともいずれか一方である、
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記計測情報は、前記利用者が自己の体重を計測する際の荷重の変化を示す乗り方指標を含み、
前記乗り方指標は、前記荷重が増加する場合の増加傾き、前記荷重の変動の最大値、及び増加した荷重が収束するまでの時間の少なくとも1つに基づいて定められる指標を含む、
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記パターン指標及び前記変動指標に基づいて前記意識レベルを計る指標としての無精度指標を算出する無精度指標算出手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記無精度指標算出手段が算出した前記無精度指標に基づいて前記意識レベルを判定する、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の情報処理装置であって、
前記無精度指標算出手段は、前記計測情報に対して、前記意識レベルへの寄与度に応じた重み付けをする、
情報処理装置。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載の情報処理装置であって、
前記無精度指標算出手段は、前記利用者の体重の計測頻度及び前記利用者の体重の変動に基づいて、前記無精度指標を算出する、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記意識レベルに応じた健康に関する情報を前記利用者に報知する報知手段を備える、
情報処理装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の情報処理装置であって、
前記判定手段が判定した前記意識レベルに応じて、前記報知手段における健康に関する情報の量及び専門性の高さの少なくとも一方を変更する制御手段をさらに備える、
情報処理装置。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載の情報処理装置であって、
前記計測情報の変動原因を判定する変動原因判定手段をさらに備え、
前記報知手段は、前記変動原因判定手段が判定した前記変動原因に応じた健康に関する情報を前記利用者に報知する、
情報処理装置。
【請求項11】
利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を処理するコンピュ
ータに、
前記計測情報に基づいて前記利用者が自己の前記身体情報を計測する計測頻度及び規則
性を示すパターン指標を取得するパターン指標取得ステップと、
前記計測情報に基づいて前記利用者の前記身体情報の変動を示す変動指標を取得する変動指標取得ステップと、
前記パターン指標及び前記変動指標に基づいて前記利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定する判定ステップと、
を実行させるためのプログラム
であって、
前記変動指標は、前記利用者の前記身体情報の変動量が平常の変動量との比較に基づいて求められるものである、
プログラム。
【請求項12】
情報処理装置で実行される方法であって、
利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を取得する取得ステップと、
前記計測情報に基づいて前記利用者が自己の前記身体情報を計測する計測頻度及び規則
性を示すパターン指標を取得するパターン指標取得ステップと、
前記計測情報に基づいて前記利用者の前記身体情報の変動を示す変動指標を取得する変動指標取得ステップと、
前記パターン指標及び前記変動指標に基づいて前記利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定する判定ステップと、を含
み、
前記変動指標は、前記利用者の前記身体情報の変動量と平常の変動量との比較に基づいて求められるものである、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の自己の健康に関する情報を報知する情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置として、所定期間において利用者の日内の体重変動が基準幅以内であると判定された日数を求め、その所定期間における日数の割合を表示する体重計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような体重計の利用者であっても、自己の健康に対する関心の度合いは日々変化していくものである。しかしながら、上述の体重計では、利用者の健康に対する関心の度合いに変化があった場合でも、単に、所定期間における体重変動が少なかった日数の割合が表示されるだけであるため、利用者の生活行動改善のためのモチベーションを維持するのが困難な場合がある。
【0005】
本発明は、利用者の生活行動改善のためのモチベーションの維持、向上を図る情報処理装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、情報処理装置は、利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した計測情報に基づき前記利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定する判定手段と、前記意識レベルに応じた健康に関する情報を前記利用者に報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、ある態様によれば、前記計測情報は、前記利用者が自己の身体情報を計測する際の計測頻度及び規則性の少なくともいずれか一方を示すパターン指標を含む。
【0008】
また、ある態様によれば、前記計測情報は、前記利用者が自己の身体情報を時系列に計測した複数の計測値に基づいて算出される前記身体情報の変動量を示す変動指標を含む。
【0009】
また、ある態様によれば、前記身体情報は、前記利用者の体重及び生体インピーダンスの少なくともいずれか一方である。
【0010】
また、ある態様によれば、前記計測情報は、前記利用者が自己の体重を計測する際の荷重の変化を示す乗り方指標を含む。
【0011】
また、ある態様によれば、前記計測情報から特定されるパターンに基づいて前記意識レベルを計る指標としての無精度指標を算出する無精度指標算出手段をさらに備え、前記判定手段は、前記無精度指標算出手段が算出した前記無精度指標に基づいて前記意識レベルを判定する。
【0012】
また、ある態様によれば、前記無精度指標算出手段は、前記取得手段が取得した計測情報に対して、前記意識レベルへの寄与度に応じた重み付けをする。
【0013】
また、ある態様によれば、前記判定手段が判定した前記意識レベルに応じて、前記報知手段における前記健康に関する情報の量及び専門性の高さの少なくとも一方を変更する制御手段をさらに備える。
【0014】
また、ある態様によれば、前記計測情報の変動原因を判定する変動原因判定手段をさらに備え、前記報知手段は、前記変動原因判定手段が判定した前記変動原因に応じた健康に関する情報を前記利用者に報知する。
【0015】
また、本発明のある態様のプログラムは、利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を処理するコンピュータに、前記計測情報に基づいて前記利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定する判定ステップと、前記意識レベルに応じた健康に関する情報を前記利用者に報知する報知ステップと、を実行させる。
【0016】
また、本発明のある態様の方法は、情報処理装置で実行される方法であって、利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を取得する取得ステップと、前記計測情報に基づいて前記利用者が自己の前記身体情報を計測する計測頻度及び規則性の少なくとも一方を示すパターン指標を取得するパターン指標取得ステップと、前記計測情報に基づいて前記利用者の前記身体情報の変動を示す変動指標を取得する変動指標取得ステップと、前記パターン指標及び前記変動指標に基づいて前記利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この態様によれば、利用者の自己の健康に対する意識レベルを判定することにより、利用者の意識レベルに合わせた健康に関する情報を利用者に報知することが可能となるので、利用者の生活行動改善のためのモチベーションの維持、向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における情報処理装置が適用される体組成計の外観を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態における情報処理装置が備える機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施形態における情報処理装置が備える健康意識レベル判定部の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、利用者が体組成計へ乗る際の荷重の変化の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態における情報処理方法に関する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施形態における健康意識レベル判定に関する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、一実施形態において利用者の計測頻度及び規則性を判定するために用いられるテーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、一実施形態において体重及びインピーダンス変動の変動原因を判定するために用いられるテーブルの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、一実施形態における体組成計の表示部に表示される健康に関する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面等を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る情報処理装置を、体重および体脂肪等の身体情報の計測が可能な体組成計に適用した例について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る体組成計10の外観を示す図である。
図1に示すとおり、体組成計10は、利用者の生体インピーダンスを計測するための電極部1及び2と、表示部3と、操作部4とを備える。また、体組成計10は、
図1で示す外観には表れていないが、その内部に、利用者の体重を計測するための荷重センサ5と、時刻及び年月日を取得するためのタイマ6とを備える(
図2参照)。
【0021】
電極部1及び2は、利用者の左右の足にそれぞれ電流を流すための通電電極1a、2aと、両足の電圧を計測するための計測電極1b、2bとから構成される。また、電極部1及び2は、利用者が体組成計10に乗った時に、両足のつま先が通電電極1a、2aに、両足の踵が計測電極1b、2bにそれぞれ接触するように互いに離間して配置される。
【0022】
表示部3は、利用者に計測結果等を報知するための報知手段として機能する。表示部3には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の液晶表示パネルが採用される。表示する計測結果等の内容の詳細については後述する。
【0023】
操作部4は、利用者の入力操作を受け付ける入力インターフェースとして機能する。具体的には、操作部4は、複数の操作ボタンから構成されており、身長、性別、年齢等の基礎生体情報を入力するための入力ボタン、及び、体組成計10の電源をON/OFFするための電源ボタン等を含む。なお、表示部3に入力インターフェースとして機能するタッチパネルが採用された場合は、操作部4を削除し、操作部4の機能を表示部3に含ませてもよい。
【0024】
荷重センサ5は、例えばロードセルであり、体組成計10の上面から加わる荷重を計測することにより利用者の体重を計測する。また、利用者の体重を単に計測するだけでなく、利用者が体組成計10に乗った際の荷重の変化を計測することができる。
【0025】
タイマ6は、現在の年月日、及び時刻を取得する。
【0026】
図2は、本実施形態における体組成計10の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0027】
体組成計10は、その機能構成として、上述した表示部3、操作部4、荷重センサ5、及び、タイマ6に加えて、生体インピーダンス計測部7と、記憶部8と、生体インピーダンス算出部21及び健康意識レベル判定部22を含む制御部20と、を主に備える。
【0028】
生体インピーダンス計測部7は、通電電極1a、2aに接続された電流供給部7xと、計測電極1b、2bに接続された電圧計測部7yとから構成される。そして、電流供給部7xが利用者に通電電極1a、2aを介して交流電流を供給するとともに、電圧計測部7yが計測電極1b、2bを介して利用者の電圧を計測する。
【0029】
生体インピーダンス算出部21は、生体インピーダンス計測部7により供給された電流及び計測された電圧の各値に基づいて利用者の生体インピーダンスを算出し、算出結果を記憶部8に格納する。なお、生体インピーダンスを算出する方法としては、いわゆるBIA(Bioelectrical impedance analysis;生体電気インピーダンス法)を用いればよく、公知の体組成計と同様で構わない。また、本実施形態においては両足間の生体インピーダンスを計測した例を示しているが、必ずしも両足間である必要はなく、両手間の生体インピーダンスを計測してもよい。
【0030】
記憶部8は、体組成計10の動作を制御する制御プログラムが格納されている。すなわち、記憶部8は、本実施形態の情報処理装置の機能を実現するプログラムを格納する記憶媒体として機能する。記憶部8は、不揮発性メモリ(ROM;Read Only Memory)、及び揮発性メモリ(RAM;Random Access Memory)などにより構成される。
【0031】
また、記憶部8は、操作部4に入力された基礎生体情報、生体インピーダンス計測部7からの生体インピーダンス情報、及び荷重センサ5からの体重に関する情報を、タイマ6からの時間情報に関連付けて記憶する。
【0032】
また更に、記憶部8には、利用者の身体及び健康に関する情報、利用者の健康増進に資する情報、及び、利用者の生活の乱れを改善するためのアドバイス等を表示部3に表示するために用いられる文字データ及び画像データ等も記憶されている。
【0033】
制御部20は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)と、上述したような各機能構成と接続される入出力インターフェースと、これらを相互に接続するバスと、により構成される。制御部20は、記憶部8に格納されている制御プログラムを読み出して中央演算処理装置に実行させることにより、入出力インターフェースを介して体組成計10の各部を制御する。
【0034】
より具体的には、制御部20は、表示部3、操作部4、荷重センサ5、タイマ6、生体インピーダンス計測部7、記憶部8、生体インピーダンス算出部21、及び、後述する健康意識レベル判定部22の各々を制御する。
【0035】
ここで、健康意識レベル判定部22を説明する前に、健康意識レベルについて説明する。
【0036】
本実施形態において使用する「健康意識レベル」は、行動変容ステージモデルという概念に関連する。行動変容ステージモデルとは、人が行動を変える場合には、「無関心期」から始まり、「関心期」、「準備期」、「実行期」を経て「維持期」に至るまで、5つのステージ(行動変容ステージ)を通るという考え方に基づいて創られたモデルである。これらの各ステージでは、自己の行動を変化させることに対する意識の程度(意識レベル)が異なっている。このため、行動変容ステージモデルでは、ステージを先に進ませて人の行動を変えさせるためには、その人が今どのステージにいるかを把握して、それぞれの意識レベルに合わせた働きかけをすることが必要(有効)と考えられている。
【0037】
すなわち、「健康意識レベル」とは、上記の行動変容ステージを健康に関する生活改善行動に適用させたものであり、利用者が自己の健康をどれだけ意識しているかの指標と定義される。上述の行動変容ステージの考え方に基づけば、利用者の健康意識レベルを判定し、把握することにより、利用者の行動を改善させるためのより適切な働きかけを選択することができる。
【0038】
本実施形態に係る体組成計10は、このような考え方に基づいて、利用者の自己の健康に対する意識の高低(健康意識レベル)を判定する健康意識レベル判定部22を備えることにより、判定した健康意識レベルに応じて選択あるいは作成した健康に関する情報を利用者に提供する。より具体的には、本実施形態に係る体組成計10は、利用者の健康意識レベルに合わせた、利用者の行動改善に資するより適切なアドバイスを選択あるいは作成して、利用者に提供する。以下、健康意識レベル判定部22の構成の詳細について説明する。
【0039】
図3は、健康意識レベル判定部22の主要な機能構成を示す図である。健康意識レベル判定部22は、計測頻度・規則性評価部11と、体重変動算出部12と、インピーダンス変動算出部13と、乗り方変動算出部14と、無精度指標算出部15と、レベル判定部16と、を備える。さらに、健康意識レベル判定部22は、体重変動算出部12、インピーダンス変動算出部13、及び乗り方変動算出部14の各々の算出結果に基づいて、それらの変動の原因を判定する変動原因判定部17を備える。
【0040】
計測頻度・規則性評価部11は、記憶部8に記憶された情報であって利用者が体組成計10を使用した年月日および時刻に関する情報に基づいて、利用者の計測頻度・規則性(パターン指標)を算出する。ここでの計測頻度は、日単位、あるいは週単位の所定期間における使用回数から算出される。なお所定期間は、例えば月単位等、他の期間であってもよい。規則性は、複数回計測された際の計測日または計測時刻から算出される。算出された利用者の計測頻度・規則性から、利用者による自己の身体情報の計測に関する習慣(計測習慣)を把握することができる。
【0041】
例えば、把握した計測習慣から、利用者が以前と比べてより多く、より規則的に自己の身体情報を計測していることが分かれば、該利用者の健康意識レベルが向上していると推察することができる。
【0042】
体重変動算出部12は、記憶部8に記憶された少なくとも2以上の体重計測値に基づいて、利用者の体重x1の変動値を算出する。ここでの変動値x1(体重変動値x1)は、利用者の体重変動の度合を数値化したものであり、例えば記憶された複数の体重計測値の分散値が用いられる。
【0043】
インピーダンス変動算出部13は、記憶部8に記憶された少なくとも2以上の生体インピーダンス計測値に基づいて、利用者のインピーダンスの変動値x2を算出する。ここでの変動値x2(インピーダンス変動値x2)は、利用者のインピーダンス変動の度合を数値化したものであり、体重と同様に、記憶部8に記憶された複数の生体インピーダンス計測値の分散値が用いられる。
【0044】
乗り方変動算出部14は、記憶部8に記憶された荷重センサ5の計測データに基づいて、体組成計10への利用者の乗り方の変動値x3を算出する。変動値x3(乗り方変動値x3)の算出方法について、
図4を参照して説明する。
【0045】
図4は、利用者が体組成計10に乗った時の荷重センサ5の計測データの変化(乗り方指標)を示す図である。
図4の横軸は時間を示し、縦軸は荷重を示している。また、同図のFは、人が体組成計10に乗る際の一連の動作における荷重変動の最大値を示し、wは、利用者の体重計測値を示している。
【0046】
同図からわかるように、人の体重が計測される際は、体組成計10に乗った瞬間から荷重が急峻に増加して最大値Fに到達した後、減少と増加を繰り返しながら実際の体重wに収束していく。この時、荷重の増加傾き、最大値F、及び収束するまでの時間等は、体組成計への乗り方によって変動する。例えば雑に勢いよく乗った場合は、増加傾きと最大値Fは相対的に大きくなり、値が収束するまでに要する時間は長くなる。逆に、落ち着いてゆっくり乗った場合は、増加傾きと最大値Fは相対的に小さくなり、値が収束するまでに要する時間は短くなる。
【0047】
したがって、体組成計10への利用者の乗り方の変動値x3は、荷重センサ5の計測データの変化に基づいて、荷重の変化の傾きの大きさ、実際の体重wと最大値Fとの差分、及び、実際の体重wに収束するまでの時間のいずれか1以上の計測値を過去の同種の計測値と比較することにより算出することができる。例えば、利用者の生活が乱れた場合には、体組成計10に普段よりも雑に乗る傾向があるため、乗り方変動値x3は大きくなる。したがって、健康意識レベルを計る指標として乗り方変動値x3を用いることで、利用者の生活の乱れ度を考慮して健康意識レベルを判定することができる。
【0048】
図3に戻って説明を続ける。無精度指標算出部15は、体組成計10が計測した種々の計測値(計測情報)から特定されるパターンに基づいて、利用者の健康意識レベルを計る指標として数値化された無精度指標Zを算出する。より具体的には、無精度指標算出部15は、利用者の計測頻度・規則性、体重の変動値x1、インピーダンスの変動値x2、及び、体組成計10への乗り方の変動値x3の各要素指標に基づいて、無精度指標Zを算出する。本実施形態では、無精度指標Zが大きい数値であればあるほど、利用者の健康意識レベルは低いと判定される。無精度指標Zの具体的な算出方法については後述する。
【0049】
レベル判定部16は、無精度指標算出部15において算出された無精度指標Zに基づいて、利用者の健康意識レベルを判定する。判定方法は、無精度指標Zと予め設定された閾値との比較に基づいて行われる。ただし、該閾値は、高/低の2段階で判定可能な一つの値が設定されてもよいし、例えば5段階、あるいはそれ以上の段階で判定可能なように複数の値が設定されてもよい。また、利用者の意識レベルが変化する傾向に応じて、該閾値の値を補正してもよい。すなわち、レベル判定部16において利用者の健康意識レベルを判定するための閾値は、適宜設定可能である。判定結果は、制御部20へ出力され、記憶部8に記憶される。
【0050】
変動原因判定部17は、体重変動算出部12が算出した体重変動値x1、インピーダンス変動算出部13が算出したインピーダンス変動値x2、及び乗り方変動算出部14が算出した乗り方変動値x3の少なくとも一つ以上の変動値に基づいて、その変動原因を判定する。例えば、体重の変動値x1とインピーダンスの変動値x2との双方が平常値よりも大きければ、その原因として過食、脱水、及び睡眠不足を推測することができる。これにより、体組成計10は、体重変動等の変動値から推測される原因を考慮したうえで、利用者の健康意識レベルに応じたアドバイスを利用者に提供することができる。
【0051】
以上、体組成計10が備える各構成について説明した。体組成計10は、上述した各構成を備え、それらが適宜協調して制御されることにより、利用者の身体に関する計測結果を単に表示するだけではなく、利用者の健康意識レベルに応じて選択あるいは作成された健康に関する情報としてのアドバイスを利用者に提供することができる。
【0052】
続いて、体組成計10において、利用者の健康意識レベルに応じたアドバイスを利用者に提供するための制御の詳細を説明する。
【0053】
図5は、本実施形態の体組成計10の制御方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS1では、制御部20が、荷重センサ5により取得された利用者の体重計測値及び体重計測時の荷重の変化データと、生体インピーダンス算出部21により算出された利用者のインピーダンス計測値とを、タイマ6からの時間情報と関連付けて記憶部8に記憶させる。
【0055】
ステップS2では、制御部20が、利用者の健康意識レベルを算出可能か否か判定するために、記憶部8に記憶されたデータを参照して、ステップS1で取得されたデータ(利用者の体重及びインピーダンスの計測値)がn個以上記憶されているか否かを判定する。本実施形態におけるn数は少なくとも2以上の値とするが、健康意識レベルを精度よく判定するためにはより多い数値が望ましい。例えば、n数が30であれば利用者の計測習慣及び/又は体重等の変動傾向がわかりやすくなる。特に、1日1回の計測を想定して、1ヶ月分の計測回数としてn数が30あれば、変動傾向がより正確にわかる。
【0056】
また、ステップS2で比較されるnは、時刻帯毎に別個に設定されてもよい。例えば、利用者によっては、朝の起床後と夜の入浴後の1日2回計測するのが通常の場合もある。また、人の体重及び生体インピーダンスは時刻帯によって変化する。したがって、nを時刻帯毎に別個に設定することで、各時刻帯における計測習慣及び/又は体重などの変動傾向を検出することができるので、より正確に利用者の健康意識レベルを把握することができる。
【0057】
ステップS2において、ステップS1で取得されたデータがn個以上であれば、n個以上の取得データに基づいて健康意識レベルを判定するために、続くステップS3の処理が実行される。ステップS1で取得されたデータがn個未満であれば、利用者の計測頻度及び規則性を正確に算出することができないと判断して、本フローチャートで示す健康意識レベルの判定に係る処理を終了する。
【0058】
ステップS3では、制御部20が健康意識レベル判定部22を制御して、利用者の健康意識レベルを判定する。健康意識レベルの判定に係る制御の処理手順については
図6を参照して説明する。
【0059】
図6は、本実施形態における健康意識レベル判定部22が実行する利用者の健康意識レベルを判定するための処理(健康意識レベル判定処理)の処理手順例を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS30では、健康意識レベル判定部22が、利用者の計測頻度及び規則性を判定する。より具体的には、健康意識レベル判定部22は、後述する無精度指標Zを算出するために、記憶部8に記憶されている利用者の計測データに関連付けられた時間情報から、
図7で示すテーブルを参照することにより、利用者の計測頻度及び規則性を数値化して評価する。
【0061】
数値化された利用者の計測頻度及び規則性は、計測頻度・規則性判定値b(以下、計測習慣判定値bと称する)として無精度指標Zの算出に用いられる。なお、計測習慣判定値bが小さいほど、無精度指標Zも小さくなり、健康意識レベルは高いと判定される。
【0062】
図7は、利用者の計測頻度及び規則性を判定するためのテーブル(以下、計測習慣テーブルと称する)の一例を示す図である。計測習慣テーブルでは、利用者の計測データから知得できる計測日の規則性と、計測時刻の規則性とが互いに対応付けられている。テーブルに示すA-1乃至Dの各マスは計測習慣判定値bの大きさに関連している。すなわち、計測習慣判定値bの値は、A-1が最も小さく、A-2からA-4、B-1からC-2と次第に大きくなり、Dが最も大きい値となるように設定される(A-1<A-2<A-3<A-4<B-1<B-2<C-1<C-2<D)。
【0063】
図7で示す計測習慣テーブルにおいては、計測日の規則性は「あり」と「なし」に分けられており、計測日の規則性がある方が規則性がない場合に比べて、計測習慣判定値bが小さくなるように設定されている。例えば、週に1回の計測であっても、それが毎週月曜日であれば規則性があると判定される。また、計測日の規則性がある場合でも、計測頻度の観点から、週に7日毎日計測した場合と、週に6日以下計測した場合とで分けられており、計測習慣判定値bは、計測頻度が高い方(週に7日計測)がより小さくなるように設定される。
【0064】
計測時刻の規則性も「あり」と「なし」に分けられており、計測時刻の規則性がある方が規則性がない場合に比べて計測習慣定値bが小さくなるように設定される。また、計測時刻の規則性がある場合でも、計測頻度の観点から、1日に2回以上計測した場合と、日に1回しか計測しない場合とで分けられており、計測習慣判定値bは、計測頻度が高い方(1日2回以上計測)がより小さくなるように設定される。
【0065】
すなわち、本実施形態の計測習慣テーブルによれば、計測日の規則性と計測時刻の規則性との両者を対応づけて評価することにより、利用者の計測頻度及び規則性が健康意識レベルに寄与する度合を数値化して判定することができる。なお、本実施形態の計測習慣テーブルでは、計測時刻の規則性よりも計測日の規則性がある場合の方が、計測習慣判定値bがより小さくなるように設定されている。これは、意識の持続性の観点から、自己の健康への関心を長期的に維持している程、健康意識レベルが高いと推察できるからである。ここで、計測日の規則性の方が、計測時刻の規則性と比較して、長期的な計測の規則性を反映している。
【0066】
なお、
図7で示す計測習慣テーブルに示す回数及び日数に係る各数値は例示であり、適宜変更してもよい。
【0067】
図6のステップS31では、健康意識レベル判定部22が、体重、インピーダンス、及び乗り方に係る各要素指標の変動を数値化した体重変動値x1、インピーダンス変動値x2、及び乗り方変動値x3を算出する。本実施形態における各々の変動値としては、上述したとおり各要素指標の分散値を用いてよいが、必ずしも分散値である必要はなく、例えば、要素指標それぞれの最大値と最小値との差分などでもよく、各々の計測値の変動量に比例する値(変動指標)であればよい。
【0068】
また、各要素指標の変動値は計測時刻帯別に算出されるのがより好ましい。上述したとおり、人の体重及び生体インピーダンスは時刻帯によって変化する。例えば人の体重は、代謝と摂食とのバランス等に起因して、通常、朝よりも夜の方が数百グラム重くなることが知られている。他方、人の生体インピーダンスは、起床時の方が就寝前よりも高くなることが知られている。また、体組成計10への乗り方も、起床後すぐと就寝直前ではその傾向が若干変化することが考えられる。したがって、上記の通り各要素指標の変動値を計測時刻帯別に算出すれば、計測時刻帯が異なることに起因する各要素指標のブレを排除することができるので、利用者の健康意識レベルをより正確に判定することができる。
【0069】
また、例えば、30回計測した場合において、3回は朝に計測され、27回は夜に計測されている等、計測時刻帯に大きな偏りがあるときには、多数計測された計測時刻帯を特定し、特定した計測時刻帯の計測値のみから各要素指標の変動値を算出してもよい。
【0070】
このようにして、ステップS31において各要素指標の変動値(x1、x2、及びx3)が算出されると、健康意識レベル判定部22は、各要素指標の変動値に基づいて無精度指標Zを算出するために、ステップS32の処理を実行する。
【0071】
ステップS32では、健康意識レベル判定部22が無精度指標Zを算出する。無精度指標Zは、健康意識レベルを計る指標として、利用者の自己の健康を増進するための生活改善行動に対する無精度合、無関心度合を数値化したものである。無精度指標Zは、上述の計測習慣判定値bと、各要素指標の変動値x1、x2、x3とに基づいて算出される。無精度指標Zは、例えば次式(1)を用いて算出される。
【0072】
【0073】
ただし、式(1)中のZは無精度指標、x1は体重変動値、x2はインピーダンス変動値、x3は乗り方変動値、bは計測習慣判定値、a1,a2,a3は各要素指標に対して重みづけをするための係数である。また、(a1x1+a2x2+a3x3)を割る数値の3は、要素指標の数である。
【0074】
本実施形態における係数a1,a2,a3は、上記の各要素指標の健康意識レベルへの寄与度を考慮して別個に設定されてもよいし、寄与度を考慮するのに加えて、或いは代えて、計測頻度・規則性を考慮して設定されてもよい。
【0075】
係数a1,a2,a3が、各要素指標の健康意識レベルへの寄与度を考慮して設定される場合、例えば各要素指標の健康意識レベルへの寄与度が同じであれば、3つの要素指標の数値を均一に扱うことができるように、要素指標毎の平均値の相対的な大小差を補償するような係数が設定される。また特定の要素指標の健康意識レベルへの寄与度を大きく或いは小さくしたい場合は、平均値の相対的な大小差を補償したうえで、対象の要素指標毎に係数の値の大小を適宜調整すればよい。
【0076】
また、係数a1,a2,a3が、各要素指標の計測頻度・規則性を考慮して設定される場合は、計測習慣判定値bと同様に、
図7に示すテーブルを参照してa1,a2,a3の各係数の値を設定してもよい。ただし、本実施形態の体組成計10によれば、各要素指標は同じタイミングで計測されるので、a1,a2,a3の各係数における計測頻度・規則性に基づく大小差は原則生じない。しかしながら、各係数がこのように設定されることにより、利用者の計測頻度・規則性が無精度指標Zの大小に大きく作用するので、利用者の計測頻度・規則性をより重要視して、利用者の健康意識レベルを判定することができる。
【0077】
ステップS33では、健康意識レベル判定部22は、利用者の健康意識レベルを判定するために、無精度指標Zが所定の閾値以上か否か判定する。本実施形態では、利用者の健康意識レベルは高いか低いかの2段階で判定されるので、該閾値は予め定められた一つの値である。この場合の閾値は、例えば、一般成人の平均値を考慮した値、又は利用者の過去データにおける所定期間の平均値などに基づいて、適宜設定される。
【0078】
なお、該閾値は無精度指標Zの算出方法に応じて適宜変更されてもよい。例えば、無精度指標Zを、式(1)に示すように、(a1x1+a2x2+a3x3)を要素指標の数(3)で割らずに算出し、その代わりに、その要素指標の数(3)を該閾値に乗じた値に該閾値を変更してもよい。
【0079】
また、上記式(1)に代えて、例えば以下式(2)を用いて無精度指標Zを算出してもよい。
【0080】
【0081】
ただし、c1,c2,c3は、各要素指標に対して重みづけをするための母数である。
【0082】
式(2)によれば、式(1)で示す係数a1,a2,a3に代えて、各要素指標の母数c1,c2,c3の値を変更することにより、各要素指標の健康意識レベルへの寄与度を調整することができる。例えば、インピーダンス変動値x2の健康意識レベルへの寄与度を大きくしたい場合は、c2の値を小さくすればよい。
【0083】
ステップS33において、健康意識レベル判定部22は、無精度指標Zが閾値以上であれば、利用者の健康意識レベルは低いと判定して(ステップS34)、健康意識レベル判定処理を終了する。
【0084】
他方、無精度指標Zが閾値より小さければ、健康意識レベル判定部22は、利用者の健康意識レベルは高いと判定して(ステップS35)、健康意識レベル判定処理を終了する。
【0085】
以上が
図5で示すフローのステップS3において実行される健康意識レベル判定処理の詳細である。以下、
図5に戻って説明を続ける。
【0086】
ステップS4では、変動原因判定部17が、健康意識レベル判定処理において算出した各変動値(x1、x2、x3)に基づいて、各要素指標が変動した原因(変動原因)を判定する。変動原因は、利用者の生活(行動)及び身体の状態の少なくとも1つを推定することにより特定される。また、変動原因は、一つの要素指標から特定されてもよいし、複数の要素指標から特定されてもよい。例えば、一つの要素指標である体重変動が大きい場合は、過食又は睡眠不足などが考えられる。また、体重変動とインピーダンス変動とを対応付けて判定することで、より詳細な変動原因を判定することもできる(
図8参照)。
【0087】
図8は、体重及びインピーダンス変動の変動原因を判定する際に用いられる判定テーブル(変動原因判定テーブル)の一例を示す図である。変動原因判定部17は、
図8で示す変動原因判定テーブルを参照して、体重及びインピーダンスの変動原因を判定する。
【0088】
図8で示す変動原因判定テーブルにおいては、体重変動とインピーダンス変動は共に、各々の変動量が平常より大きいか平常通りかの二つに分けられている。そして、変動量が平常より大きい場合は、その変動が平常よりマイナス側に変動しているか、プラス側に変動しているかの二つにさらに分けられる。すなわち、
図8で示す変動原因判定テーブルでは、体重変動およびインピーダンス変動がそれぞれ3通りに分けて対応付けられているので、9通りのカテゴリから変動原因を判定することができる。
【0089】
なお、変動量の大小を判定する基準となる「平常」の値は、利用者の身長及び性別等を考慮して、例えば一般成人男性の平均値から予め設定されてもよいし、利用者が計測した過去の所定期間における計測値の平均値から設定されてもよい。
【0090】
図8で示す変動原因判定テーブルによれば、体重変動とインピーダンス変動とが共にプラス側に大きく変動していれば、その変動原因は脱水、過食、及び/又は睡眠不足であると判定することができる。また、このような判定がなされれば、その変動原因から、利用者の生活において健康を害するようなイベントがあったことが推察される。例えば、変動原因が脱水、過食、及び/又は睡眠不足であった場合は、前日に、アルコール摂取、過食、及び/又は睡眠不足を引き起こす飲み会等のイベントがあったと推察することができる。
【0091】
また、イベントだけではなく、アルコール摂取、過食、及び/又は睡眠不足が続いている場合は、ストレスを多く抱えている傾向がある等、利用者の精神状態等を推察することもできる。
【0092】
このようにして判定された変動原因、及び、変動原因から推察されるイベント等に関する情報は、健康意識レベルの判定結果とともに記憶部8に一旦格納され、ステップS5において表示部3に表示されるアドバイスの内容に反映される。
【0093】
ステップS5では、制御部20が、ステップS3において判定された利用者の健康意識レベルに応じたアドバイスを表示部3に表示する。利用者の健康意識レベル別に表示されるアドバイスは、例えば
図9に示すとおりである。
【0094】
図9は、健康意識レベル別に利用者へ提示するアドバイスの一例を示す図である。図示するとおり、本実施形態において利用者に提示されるアドバイスは、健康意識レベルに依らない基本的アドバイスと、利用者の健康意識レベルに応じて追加される追加アドバイスとで構成される。
【0095】
上述の追加アドバイスは、健康意識レベルに応じてその情報量と内容が変わっている。具体的には、健康意識レベルが高ければ、情報量は多くなり、且つその内容はより専門性が高いものとなる。他方、健康意識レベルが低ければ、情報量は少なく、またその内容の専門性は低くなる。なお、専門性が高くなるほど情報の内容がより具体的になる一方で、専門性が低くなるほど情報の内容がより汎用的になる。
【0096】
利用者に提示するアドバイスをこのように設定することで、健康意識レベルが高まれば高まるほど、より専門性の高いアドバイスがより多く提供される。したがって、健康意識レベルが高く、自己の健康改善に対するより有効な指針又は知識を欲する利用者は、自己の生活改善に対するモチベーションを維持、向上しやすくなる。他方、健康意識レベルが低い人に専門性が高い情報を多く提供してしまうと、利用者が重荷に感じる等して、自己の生活改善に対するモチベーションを下げてしまう場合がある。そのため、健康意識レベルが低い人に専門性の高い情報を多く提供することを抑制することで、利用者の生活改善に対するモチベーションを下げてしまうような事態を排除することができる。
【0097】
このように、健康意識レベルに応じてアドバイスを変更することで、利用者の健康意識レベルに合わせたアドバイスを利用者に提供することができるので、利用者の健康増進、或いは生活の乱れを改善するためのモチベーションの維持・向上をより有効に図ることができる。
【0098】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0099】
本実施形態によれば、体組成計10(情報処理装置)が備える制御部20は、利用者が自己の身体情報を計測する際の計測習慣に関する計測情報を、荷重センサ5と、タイマ6と、生体インピーダンス計測部7とから取得する。そして、制御部20は、その計測情報に基づいて利用者の自己の健康に対する意識レベル(健康意識レベル)を判定し、表示部3を介して健康意識レベルに応じた健康に関する情報を利用者に報知する。
【0100】
これにより、本実施形態の体組成計10は、利用者の健康意識レベルに応じた健康に関する情報を利用者に提供することができるので、利用者の生活行動改善のためのモチベーションの維持、向上を有効に図ることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、制御部20が取得する計測情報には、利用者が自己の計測情報を計測する際の計測頻度及び規則性の少なくともいずれか一方を示すパターン指標が含まれる。これにより、健康意識レベル判定部22において利用者の健康意識レベルを判定する際に、利用者の計測習慣を示す計測頻度又は規則性を考慮することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、上記取得手段が取得する計測情報には、利用者が自己の身体情報を時系列に計測した複数の計測値に基づいて算出される上記身体情報の変動量を示す変動指標が含まれる。これにより、健康意識レベル判定部22において利用者の健康意識レベルを判定する際に、利用者の身体、或いは行動の所定期間における実際の変化状況を考慮することができる。
【0103】
なお、上記身体情報には、利用者の体重及び生体インピーダンスの少なくともいずれか一方が含まれるので、健康意識レベル判定部22は、利用者の体重及びインピーダンスの少なくともいずれか一方の変動量(体重変動値x1、インピーダンス変動値x2)を考慮して利用者の健康意識レベルを判定することができる。
【0104】
また、上記計測情報には、利用者が自己の体重を計測する際の荷重の変化を示す乗り方指標が含まれる。これにより、健康意識レベル判定部22は、利用者が体組成計10に乗って自己の身体情報を計測する際の行動の変化(乗り方変動値x3)を考慮して利用者の健康意識レベルを判定することができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、上記計測情報から特定されるパターン(傾向)に基づいて、利用者の健康意識レベルを計る指標としての無精度指標Zを算出する無精度指標算出手段を構成する無精度指標算出部15を備える。そして、健康意識レベル判定部22は、無精度指標Zに基づいて利用者の健康意識レベルを判定する。
【0106】
これにより、利用者の身体及び行動に係る計測情報から導き出される計測結果のパターンを数値化することができるので、健康意識レベルをより定量的に評価することができる。また、各々の計測情報を、健康意識レベルを計る指標としての無精度指標Zとしてまとめて数値化できるので、健康意識レベルを計る要素指標の数の増減に容易に対応することができる。
【0107】
また、無精度指標算出部15は、上記計測情報に対して、健康意識レベルへの寄与度に応じた重みづけを行う。これにより、各々の計測情報から算出される変動値をそのまま用いるのに比べて、より正確に利用者の健康意識レベルを判定することができる。
【0108】
また、本実施形態では、健康意識レベル判定部22が判定した健康意識レベルに応じて、表示部3に表示される健康に関する情報を変更する制御部20を備える。これにより、利用者の健康意識レベルに合わせた健康に関するアドバイス等を利用者に提供することができるので、利用者の生活行動改善のためのモチベーションの維持、向上を有効に図ることができる。
【0109】
また、本実施形態では、上記計測情報の変動原因を判定する変動原因判定手段を構成する変動原因判定部17を備える。そして、表示部3は、変動原因判定部17が判定した変動原因に応じた健康に関するアドバイスを利用者に提供する。これにより、利用者の健康意識レベルに合わせた、より具体的な健康に関するアドバイスを利用者に提供することができるので、利用者の生活行動改善のためのモチベーションの維持、向上をより有効に図ることができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。本発明は、例えば、以下のような変形例も含む。
【0111】
<変形例>
例えば、上述した健康意識レベルは、利用者が自己の身体情報を計測する際の計測頻度及び規則性と、体重、インピーダンス、及び乗り方の変動値とから算出された無精度指標Zから判定されると説明したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、本発明に係る健康意識レベルは、利用者の計測頻度及び規則性のいずれか一方のみから判定されてもよい。その場合は、例えば、利用者の計測頻度が週に3回以上か未満かの2段階に分けて、計測頻度が週に3回以上であれば健康意識レベルが高く、週に3回未満であれば健康意識レベルが低いと判定してもよい。
【0112】
また、上述した無精度指標Zの算出において用いた要素指標は、体重、インピーダンス、及び乗り方の3つに限定する必要はなく、少なくとも1つ以上であればよいし、他の要素指標を追加あるいは代用してもよい。
【0113】
他の要素指標としては、例えば、利用者の心拍、活動量、睡眠(睡眠時間、就寝時間、起床時間、睡眠の質)、スイッチへの反応度、体組成計10の扱い方などを用いてもよい。これらの要素指標は公知の方法で計測すればよい。また、他の公知の計測機器を用いた場合、体組成計10は、該計測機器による計測データを通信等により取得して、各要素指標の変動値を算出することができる。
【0114】
また、スイッチへの反応度は、例えば、表示部3にスイッチ押下の指示を表示して、利用者が該指示に応じて操作部4のスイッチを押下するまでの時間(反応時間)から算出することができる。また、体組成計10の扱い方は、体組成計10が加速度センサをさらに備えることで、例えば体重を計るために体組成計10を所定の位置に移動させる際の振動及び移動速度などから定量的に計測することができる。
【0115】
また、上述の実施形態において説明した荷重センサ5は、
図4で示した荷重変化データから計測できる上記変動値(乗り方変動値x3)の算出に用いるだけでなく、左右どちらの足を先に載せたかどうか(効き足)、姿勢(立位姿勢)に関連する情報としての重心位置(荷重バランス)又は重心動揺を要素指標として取得するように構成することもできる。
【0116】
このような要素指標を取得したい場合は、荷重センサ5を、例えば、矩形の体組成計10の左右に計2つ、或いは、四隅近辺に計4つ配置する等すればよい。このような構成において、荷重センサ5の各々が荷重を計測することにより、利用者が体組成計10に乗る際の効き足、利用者の重心位置、及び重心動揺を計測することができる。
【0117】
なお、要素指標を4つ以上用いて無精度指標Zを算出する場合は、上記(1)式に代えて、以下(3)式を用いればよい。
【0118】
【0119】
ただし、(3)式中に示すnは、要素指標の数とする。
【0120】
また、上述した実施形態において健康意識レベルを判定するために用いられた閾値は、例えば以下のように設定することもできる。すなわち、該閾値は、健康意識レベルを無精度指標Zに基づいて段階的に判定するだけでなく、多数のタイプに分けて判定できるように要素指標ごとに設定されてもよい。閾値をこのように設定することにより、利用者の健康意識レベルを、各要素指標の判定結果の組み合わせで多様なタイプに分類することができる。
【0121】
例えば、計測頻度及び規則性に係る計測習慣判定値bを段階的に分けた9通りと、体重変動の有り無しで分けた2通りと、インピーダンス変動の有り無しで分けた2通りと、乗り方変動の有り無しで分けた2通りとを組み合わせることにより、利用者の健康意識レベルを72通りに分けて判定することもできる。
【0122】
また、他の公知の方法により判定される利用者の体型及びボディバランス等の判定結果を組み合わせることで、利用者の健康意識レベルを更に多様なタイプに分類してもよい。
【0123】
また、計測頻度及び規則性の変化傾向、要素指標としての体重、インピーダンスの変動傾向、及び、利用者の乗り方の癖等からは、利用者の健康意識レベルとともに、利用者の生活リズム、及び生活の乱れ度を推察することもできる。したがって、健康意識レベルとともに、利用者の生活リズム及び生活の乱れ度を考慮したアドバイスを利用者に提供してもよい。
【0124】
また、表示部3に表示する利用者の健康に関する情報は、
図9で示すようなアドバイスに限定されず、例えば、健康意識レベルの判定結果のみ、あるいは無精度指標Zに係る点数のみを表示してもよい。また表示態様も、数値又は文字を単に表示するだけでなく、バーグラフ、図形、及び/又は動物などのキャラクター等が健康意識レベルに応じて変化するように表示してもよい。
【0125】
また、特に毎日計測を行うような利用頻度が高い利用者に対しては、表示するアドバイス又は図形等を日毎に変化させる等して、利用者を飽きさせないような工夫をしてもよい。また、例えば、健康意識レベルが向上したと判定された時にのみ表示される、300日間欠かさず計測した場合にのみ表示される等、ある特定のタイミングにのみ出現するレアな言葉又はキャラクター等を設定してもよい。このように、表示部3の表示内容を、利用者の健康意識レベルに資する計測習慣及び/又は健康改善状況と連動して変化させることで、日々の計測にゲーム性を加えることができるので、利用者をより飽きさせずに、自己の健康改善に対するモチベーションの維持・向上を図ることもできる。
【0126】
また、表示部3は、体組成計10に一体的に備わる構成である必要は必ずしもなく、利用者が有するスマートフォン等の通信端末の画面を代用してもよい。その場合、該通信端末は、体組成計10が判定した健康意識レベル、及びそれに応じたアドバイス等に関するデータを通信にて受信して、該画面に表示すればよい。また、該通信端末は、体組成計10及び他の計測機器が計測した計測情報を取得して、該通信端末内で、取得した計測情報から利用者の健康意識レベルを判定し、判定結果に応じた健康に関する情報を該画面に表示してもよい。
【0127】
また、本願発明に係る情報処理装置は、体組成計10の機能として実現されていることに限定されない。例えば、該情報処理装置は、体組成計10と直接又は間接的に通信可能なサーバ、又は、スマートフォン等の他の装置の機能によって実現されてもよい。
【0128】
なお、報知手段として説明した表示部3は一例であり、健康に関する情報を利用者に伝達可能な手段であれば、音声又は振動等を用いてもよく、特に限定されない。
【符号の説明】
【0129】
1、2 電極
3 表示部(報知手段)
4 操作部
5 荷重センサ
6 タイマ
7 生体インピーダンス計測部
8 記憶部
10 体組成計(情報処理装置)
15 無精度指標算出部(無精度指標算出手段)
17 変動原因判定部(変動原因判定手段)
20 制御部(取得手段、判定手段、制御手段)
21 生体インピーダンス算出部
22 健康意識レベル判定部(判定手段)
S1、S30、S31 (取得ステップ)
S3、S33~35 (判定ステップ)
S5 (報知ステップ)