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  • 特許-ホヤ加工物の製造方法及びホヤ加工物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ホヤ加工物の製造方法及びホヤ加工物
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20240703BHJP
【FI】
A23L17/00 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023189693
(22)【出願日】2023-11-06
【審査請求日】2023-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトを通じた商品販売,販売者:サン・クロレラジャパン株式会社,販売日:令和5年8月21日,ウェブサイトを通じた商品販売に係るウェブサイトのアドレス:https://sunchlorellashop.jp/plasmalogen/sunneuro
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596120326
【氏名又は名称】株式会社サン・クロレラ
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】村上 修
(72)【発明者】
【氏名】平見 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 英夫
(72)【発明者】
【氏名】藤島 雅基
(72)【発明者】
【氏名】三大寺 正州
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263518(JP,A)
【文献】特開2019-162042(JP,A)
【文献】特開2006-083115(JP,A)
【文献】特開2006-089385(JP,A)
【文献】特開2009-050173(JP,A)
【文献】特開平11-178545(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112472723(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、25℃の環境で2月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の30%以上であるホヤ加工物。
【請求項2】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、35℃の環境で2月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の20%以上であるホヤ加工物。
【請求項3】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、25℃の環境で6月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の20%以上であるホヤ加工物。
【請求項4】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、35℃の環境で6月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の10%以上であるホヤ加工物。
【請求項5】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライの後に、室温で2月間以上経過し、所定質量中のプラズマローゲン含有量が、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の50%以上であるホヤ加工物。
【請求項6】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライの後に、室温で2月間以上経過し、所定質量中のプラズマローゲン含有量が、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の30%以上であるホヤ加工物。
【請求項7】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであり、
フリーズドライの後に、室温で2月間以上経過し、所定質量中のプラズマローゲン含有量が、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の10%以上であるホヤ加工物。
【請求項8】
上記プラズマローゲンとして、1-アルケニル-2-ドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-燐酸を含有する請求項1乃至7の何れか1項に記載のホヤ加工物。
【請求項9】
上記プラズマローゲンとして、下記式[1]で表されるアルケニルエーテル型燐脂質を含有する請求項1乃至7の何れか1項に記載のホヤ加工物。
【化1】
....[1]
式[1]中、R は炭素数1乃至20のアルキル基、R CO-基はドコサヘキサエノイル基、Xはエタノールアミン、コリン、セリン、イノシトール、又はグリセロールである。
【請求項10】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施したホヤ加工物であって、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で2月間以上保存した後、含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物。
【請求項11】
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施したホヤ加工物であって、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で4月間以上保存した後、含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物。
【請求項12】
上記プラズマローゲンとして、1-アルケニル-2-ドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-燐酸を含有する請求項10又は11記載のホヤ加工物。
【請求項13】
上記プラズマローゲンとして、下記式[1]で表されるアルケニルエーテル型燐脂質を含有する請求項10又は11記載のホヤ加工物。
【化1】
....[1]
式[1]中、R は炭素数1乃至20のアルキル基、R CO-基はドコサヘキサエノイル基、Xはエタノールアミン、コリン、セリン、イノシトール、又はグリセロールである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マボヤ又はその他のホヤの加工物の製造方法及びホヤ加工物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-210696号公報には、健常な哺乳動物に対して用いられる学習記憶能力増強剤として、プラズマローゲンを含み、そのプラズマローゲンの90%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、当該プラズマローゲンは鳥組織から抽出されたものであり、好ましくは、そのプラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:5)~(5:1)であるものが開示されている。
【0003】
また特開2019-162042号公報には、魚介類又は水産動物からの抽出物であって、プラズマローゲン型リン脂質を高純度に含有し、且つ、ヒ素の含量が低減された、プラズマローゲン型リン脂質高含有抽出物及びその製造方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-210696号公報
【文献】特開2019-162042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、含有するプラズマローゲンの経時安定性が良好なホヤ加工物の製造方法及び含有するプラズマローゲンの経時安定性が向上したホヤ加工物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のホヤ加工物の製造方法及びホヤ加工物は、次のように表わすことができる。
【0007】
(1) 含有するプラズマローゲンの経時安定性が良好なホヤ加工物を製造する方法であって、
被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施すことを特徴とするホヤ加工物の製造方法。
【0008】
(2) 上記フリーズドライを施す前に、上記被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤを熱湯で処理する上記(1)記載の製造方法。
【0009】
(3) 上記マボヤ又はその他のホヤに対し、実質的に水以外の物質を加えない上記(1)又は(2)記載の製造方法。
【0010】
(4) フリーズドライ後のホヤ加工物の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、25℃の環境で2月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲン含有量の50%以上である上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の製造方法。
【0011】
(5) フリーズドライ後のホヤ加工物の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、35℃の環境で2月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲン含有量の40%以上である上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の製造方法。
【0012】
(6) フリーズドライ後のホヤ加工物の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、25℃の環境で6月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲン含有量の40%以上である上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の製造方法。
【0013】
(7) フリーズドライ後のホヤ加工物の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、35℃の環境で6月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲン含有量の30%以上である上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の製造方法。
【0014】
(8) 被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものであることを特徴とするホヤ加工物。
【0015】
(9) 上記マボヤ又はその他のホヤ以外に実質的に水以外の物質を含有しない上記(8)記載のホヤ加工物。
【0016】
(10) フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、25℃の環境で2月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の30%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0017】
(11) フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、35℃の環境で2月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の20%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0018】
(12) フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、25℃の環境で6月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の20%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0019】
(13) フリーズドライ後の所定質量中のプラズマローゲン含有量が、35℃の環境で6月間経過後において、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の10%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0020】
(14) フリーズドライの後に、室温で2月間以上経過し、所定質量中のプラズマローゲン含有量が、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の50%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0021】
(15) フリーズドライの後に、室温で2月間以上経過し、所定質量中のプラズマローゲン含有量が、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の30%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0022】
(16) フリーズドライの後に、室温で2月間以上経過し、所定質量中のプラズマローゲン含有量が、フリーズドライ直後の前記所定質量中のプラズマローゲンの含有量の10%以上である上記(8)又は(9)記載のホヤ加工物。
【0023】
(17) 被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施したホヤ加工物であって、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で2月間以上保存した後、含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物。又は、被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施し、得られたホヤ加工物を、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で2月間以上保存した後、当該ホヤ加工物が含有するプラズマローゲンを利用する方法。
【0024】
(18) 被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施したホヤ加工物であって、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で4月間以上保存した後、含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物。又は、被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施し、得られたホヤ加工物を、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で4月間以上保存した後、当該ホヤ加工物が含有するプラズマローゲンを利用する方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法によれば、含有するプラズマローゲンの経時安定性が良好なホヤ加工物を製造し得る。本発明のホヤ加工物は、含有するプラズマローゲンの経時安定性が向上したものである。また、本発明の含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物によれば、室温乃至35℃で所定期間以上保存した後でも、含有するプラズマローゲンを有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例のホヤ加工物100g中のプラズマローゲン含有量の経時的な変化を示すグラフである。
図2】比較例のホヤエキス粉末100g中のプラズマローゲン含有量の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
(1) 本発明の製造方法は、含有するプラズマローゲンの経時安定性が良好な(すなわち、例えばプラズマローゲン分解や漏出などがしにくい)ホヤ加工物を製造する方法であって、
被嚢を除くマボヤ(Halocynthia roretzi)又はその他のホヤ(例えば、むき身のマボヤ又はその他のホヤ、或いは、マボヤ又はその他のホヤの可食部)の全部又は部分にフリーズドライを施すものである。
【0029】
フリーズドライを施す工程としては、被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの全部又は部分を予備凍結させる工程と、予備凍結されたマボヤ又はその他のホヤを減圧により昇華乾燥させる工程を有する。更に、例えば、マボヤ又はその他のホヤに水分の残留がないように乾燥させる工程を有するものとすることができる。
【0030】
なお、前記マボヤ又はその他のホヤに対しては、実質的に水以外の物質を加えないものとすることができる。また、有機溶媒による抽出を行わないものとすることができる。
【0031】
(2) 本発明のホヤ加工物は、被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの全部又は部分の加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したものである。また本発明の含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物は、被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施したホヤ加工物であって、前記フリーズドライの後に、室温乃至35℃で所定期間以上保存したものである。何れにおいても、フリーズドライを施す工程は、前記本発明の製造方法における工程と同様とすることができる。また、前記マボヤ又はその他のホヤに対しては、実質的に水以外の物質を加えないものとすることができる。また、有機溶媒による抽出を行わないものとすることができる。
【0032】
(3) 本発明の製造方法により得られるホヤ加工物及び本発明のホヤ加工物が含有するプラズマローゲンは、グリセロール分子のsn-1(α)位にビニルエーテル結合を有する1-アルケニル-2-アシル-sn-グリセロ-3-燐酸同族体であって、一般に下記式[1]で表されるアルケニルエーテル型燐脂質である。
【0033】
【化1】
....[1]
【0034】
式[1]中、Rは一般には炭素数1乃至20のアルキル基(例えば、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコサニル基)であり、Rは一般には多価不飽和脂肪酸(DHA、EPA、アラキドン酸などを含む)又はオレイン酸などの一価の不飽和脂肪酸の残基に相当する脂肪族炭化水素基(例えば、RCO-基として、オクタデカジエノイル基、オクタデカトリエノイル基、イコサテトラエノイル基、イコサペンタエノイル基、ドコサテトラエノイル基、ドコサペンタエノイル基、ドコサヘキサエノイル基が挙げられる。好ましくはイコサペンタエノイル基又はドコサヘキサエノイル基である。)、Xは例えばエタノールアミン(下記式[2])、コリン(下記式[3])、セリン、イノシトール、又はグリセロール(好ましくはエタノールアミン又はコリン)である。
【0035】
【化2】
....[2]
【0036】
【化3】
....[3]
【0037】
(4) ホヤ加工物の製造は、例えば次のように行うことができる。
【0038】
被嚢を除いたマボヤ又はその他の被嚢を除いたホヤであって、被嚢以外の全部又は部分(冷凍されたものであれば、好ましくはできるだけ自然解凍したもの)を、熱湯(例えば90-95℃の熱湯)で処理(ブランチング)する。好ましくは熱湯に浸漬して(例えば攪拌しつつ)処理する。
【0039】
所定時間(例えば10分間)処理した後、被嚢を除いたホヤを、予備凍結させた上で、乾燥庫内において減圧して昇華乾燥させ、更に、水分の残留がないように乾燥させることにより、フリーズドライされたホヤ加工物を製造することができる。
【0040】
得られたホヤ加工物は、必要に応じ粗粉砕、微粉砕、篩過などを経て用いることができる。
【0041】
(5) 本発明の製造方法により得られたホヤ加工物、本発明のホヤ加工物、又は本発明の含有するプラズマローゲンを利用するためのホヤ加工物は、例えば、粉末、錠剤、硬カプセル剤又はその他の形態としてヒトの服用に供するものとすることができるが、その他の用途にも用い得る。本発明の製造方法により得られたホヤ加工物又は本発明のホヤ加工物のヒトに対する経口投与量は、プラズマローゲンの含有量において例えば0.1mg乃至1000mg/日程度が好ましい。
【実施例
【0042】
1.実施例
【0043】
(1) 冷凍された状態のホヤむき身(被嚢を除いたマボヤ(Halocynthia roretzi))(952kg)を、室温で自然解凍させ、完全に解凍しきる前に冷蔵庫に入れて更に解凍させた。
【0044】
冷蔵庫で解凍したホヤむき身に対し2.5倍の重量の水を、タンク内で90-95℃まで加熱する際に、約70℃の水温において前記解凍したホヤむき身を当該水中に投入した。
【0045】
その後、加熱を続行し、90-95℃の水温において10分間攪拌してホヤむき身を処理(ブランチング)した後、お湯と共にホヤむき身をタンクから排出させ、ホヤむき身を取り出した。
【0046】
取り出したホヤむき身(343.8kg)を、フリーズドライ用のバットに詰め、12時間以上かけて-40℃に予備凍結させた。凍結乾燥機における予備凍結したホヤむき身を収容した乾燥庫内を4-8Paに減圧して65時間以上かけて昇華乾燥させ、更に、水分の残留がないように乾燥させることにより、60℃の温度のフリーズドライされたホヤ加工物(113.8kg)を得た。
【0047】
得られたホヤ加工物を、8φ(8mm径)スクリーンの粉砕機により粗粉砕(約1700rpm)後、1.5φ(1.5mm径)スクリーンの微粉砕機により微粉砕(8000rpm)した上で、32メッシュで篩過してホヤ加工物の微粉砕品(113.1kg)を得た。必要に応じ磁力などを利用する異物除去装置による異物除去を行ってもよい。
【0048】
(2) 得られたホヤ加工物の微粉砕品100g中のプラズマローゲンの含有量を測定したところ、1129mgであった。プラズマローゲンの含有量を測定はHPLC-ESI-MS/MS法により行った。以下の例においても同様である。
【0049】
(a) そのホヤ加工物の微粉砕品を、35℃の環境(湿度コントロール無し)において保管し、2月間経過時、4月間経過時及び6月間経過時に、同ホヤ加工物微粉砕品100g中のプラズマローゲンの含有量を測定したところ、それぞれ、2月間:832mg(73.7%)、4月間:632mg(56.0%)及び6月間:663mg(58.7%)であった。外観・粉末性状及び臭いに異常は認められなかった。括弧内は、保管前の100g中のプラズマローゲンの含有量1129mgに対する比率である。
【0050】
(b) 前記ホヤ加工物の微粉砕品を、室温において保管し、6月間経過時に、同ホヤ加工物微粉砕品100g中のプラズマローゲンの含有量を測定したところ、788mg(69.8%)であった。外観・粉末性状及び臭いに異常は認められなかった。括弧内は、保管前の100g中のプラズマローゲンの含有量1129mgに対する比率である。
【0051】
ホヤ加工物100g中のプラズマローゲンの含有量の経時的な変化を、保管前の含有量に対する百分率を縦軸、経過月を横軸として、図1に示す。
【0052】
所定質量のホヤ加工物中のプラズマローゲン含有量は、(例えば室温前後の温度において、或いはそれ以外の温度において)保管温度が高いほど、経時的に減少する率が高くなる。
【0053】
前記測定結果及び図1よりすれば、フリーズドライ後における所定質量の前記ホヤ加工物の微粉砕品中のプラズマローゲン含有量は、フリーズドライ直後のプラズマローゲン含有量に対し、経過月に応じ、次のような比率であると言い得る。
【0054】
2月間経過時:
35℃の環境(湿度コントロール無し)での保管において5-74%(例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、又は70%以上)であり、
室温保管において5-90%(例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は85%以上)と言い得る。
【0055】
4月間経過時:
35℃の環境(湿度コントロール無し)での保管において5-56%(例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上)であり、
室温保管において5-80%(例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は75%以上)と言い得る。
【0056】
6月間経過時:
35℃の環境(湿度コントロール無し)での保管において5-59%(例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、又は55%以上)であり、
室温保管において5-70%(例えば、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、又は65%以上)と言い得る。
【0057】
2.比較例
【0058】
(1) 特開2019-162042号公報の実施例1に記載の方法「ホヤ可食部のフリーズドライ粉末を50.8g秤量し、ヘキサン66mL、エタノール121mL、及び水11mLを仕込み、混合し、撹拌しながら常温で30分間抽出した後、定性濾紙(型式:No.2)にて濾過し、抽出液と残渣を分離し、残渣には、再度、ヘキサン66mL、エタノール121mL、及び水11mLを仕込み、混合し、撹拌しながら常温で30分間抽出した後、定性濾紙(型式:No.2)にて濾過し、抽出液と残渣を分離した。抽出液2回分を併せて真空乾燥による溶媒除去を行い、ホヤ抽出物を得る」に準じてホヤエキス粉末0.9446gを得た。
【0059】
(2) 得られたホヤエキス粉末中のプラズマローゲンの含有量を測定したところ、ホヤエキス粉末100gに対し5540mgであった。
【0060】
(a) そのホヤエキス粉末を、40℃の環境において保管し、10日間経過時、20日間経過時、1月間経過時、2月間経過時、及び3月間経過時に、同ホヤエキス粉末中のプラズマローゲンの含有量を測定したところ、それぞれ、ホヤエキス粉末100gに対し10日間:2770mg(50%)、20日間:831mg(15%)、1月間:0mg(0%)、2月間:0mg(0%)及び3月間:0mg(0%)であった。括弧内は、保管前の100g中のプラズマローゲンの含有量5540mgに対する比率である。
【0061】
(b) 前記ホヤエキス粉末を、25℃の環境において保管し、10日間経過時、20日間経過時、1月間経過時、2月間経過時、及び3月間経過時に、同ホヤエキス粉末中のプラズマローゲンの含有量を測定したところ、それぞれ、ホヤエキス粉末100gに対し10日間:5097mg(92%)、20日間:3712mg(67%)、1月間:2936mg(53%)、2月間:0mg(0%)及び3月間:0mg(0%)であった。括弧内は、保管前の100g中のプラズマローゲンの含有量5540mgに対する比率である。
【0062】
ホヤエキス粉末100gに対するプラズマローゲンの含有量の経時的な変化を、保管前の含有量に対する百分率を縦軸、経過月を横軸として、図2に示す。
【要約】
【課題】 含有するプラズマローゲンの経時安定性が良好なホヤ加工物の製造方法及び含有するプラズマローゲンの経時安定性が向上したホヤ加工物の提供。
【解決手段】 被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤにフリーズドライを施し、含有するプラズマローゲンの経時安定性が良好なホヤ加工物を製造する方法。被嚢を除くマボヤ又はその他のホヤの加工物であって、含有するプラズマローゲンの経時安定性がフリーズドライによって向上したもの。
【選択図】 なし
図1
図2