(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240703BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E04G21/02 101
(21)【出願番号】P 2023033532
(22)【出願日】2023-03-06
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】399035386
【氏名又は名称】株式会社本久
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】小布施 栄
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218031(JP,A)
【文献】特開2015-078118(JP,A)
【文献】特表2012-521343(JP,A)
【文献】特開2010-077748(JP,A)
【文献】特開2004-218337(JP,A)
【文献】特開2022-035219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現地発生土砂が含む粗骨材、細骨材、細粒分の質量を求め、前記現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、
前記細粒分の量と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材
の質量との比率から流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量
を算出し、
次いで
前記粉体総量に対応した水量とセメントまたはセメント系固化材の量を求める、
ことを特徴とする流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法。
【請求項2】
現地発生土砂が含む粗骨材、細骨材、細粒分の質量を求め、前記現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、
前記細粒分の量
と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材
の質量との比率
が設定した比率になるよう演算して、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を求める、
ことを特徴とする流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法。
【請求項3】
現地発生土砂が含む粗骨材、細骨材、細粒分の質量を求め、前記現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、
前記細粒分の量と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材
の質量との比率
が設定した比率になるよう演算して、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を求め、
次いで
前記粉体総量に対応した水量とセメントまたはセメント系固化材の量を求める、
ことを特徴とする流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法。
【請求項4】
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材の質量との比率を、前記粉体総量が前記細骨材の質量の1/3以上となるように設定する、
ことを特徴とする
請求項2又は請求項3に記載の流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法に係り、特に、流動タイプの砂防ソイルセメント生成の際に使用される現地発生土砂に含まれる細粒分量などを分析、評価して、材料分離抵抗性に優れる流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、コンクリート生成における材料の配合については、まず骨材を細骨材と粗骨材に分け、その混入割合を決定した上でコンクリートの配合を組み立てている。これに対し、本発明では、流動タイプの砂防ソイルセメント生成に際しては、現地発生土砂を細粒分と細骨材と粗骨材とに分け、前記分けた細粒分を粉体量に組み入れてセメントなどの配合を考えるものとした。
【0003】
流動タイプの砂防ソイルセメント生成の際の材料配合にあっては、例えば、流動タイプの砂防ソイルセメント工法の原型となるISM工法では、骨材の間隙を満たすセメントミルク量を調整することでの配合を行うことが基本となっていた。
【0004】
過去に発刊された砂防ソイルセメント便覧においてISM工法は、流動タイプの砂防ソイルセメント工法の一つとされたものの、その後、流動タイプの砂防ソイルセメントにつき明確に配合方法を定めたものは示されておらず、スランプといったコンシステンシーをもとに水量を決定する提案例が知られている程度であり、現状では、コンクリートの配合形式に準じて流動タイプの砂防ソイルセメントの配合を行っている状況となっている。
【0005】
近年、日本のいたるところで山地から生産される土砂が堆積し、該土砂の利活用が進まない状態にある。膨大に生産される土砂が増える一方で、利用する技術も進展しつつあるものの、土砂の扱いが難しいことや、品質の安定性の欠如から利活用が進まないのが現状である。
また、昨今、環境負荷低減に対する世界的な意識の向上に加えて、資材高騰に伴う現地発生土砂のニーズが増すなかで、活用を容易にする方法もない。
【0006】
よって、上記の状況に鑑み、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合については、現地発生土砂の使用を前提とした上で、該現地発生土砂に含まれる細粒分量などを分析評価し、もって、適切な細粒分量を算出すると共に、算出された細粒分量とセメント量、さらには水量との適切な比率を算出し、また細粒分量のみならず細骨材などの分析評価によって材料分離抵抗性に優れた流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法の提案が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記要望に対処すべく創案されたものであって、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合につき、現地発生土砂に含まれる細粒分量を分析評価し、適切な細粒分量を算出すると共に、算出された細粒分量とセメント量、さらには水量との適切な比率を算出し、また細粒分量のみならず細骨材などの分析評価によって材料分離抵抗性に優れた流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法であって、
現地発生土砂が含む粗骨材、細骨材、細粒分の質量を求め、前記現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、前記細粒分の量と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材の質量との比率から流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を算出し、
次いで前記粉体総量に対応した水量とセメントまたはセメント系固化材の量を求める、
ことを特徴とし、
または、
現地発生土砂が含む粗骨材、細骨材、細粒分の質量を求め、前記現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、前記細粒分の量と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材の質量との比率が設定した比率になるよう演算して、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を求める、
ことを特徴とし、
または、
現地発生土砂が含む粗骨材、細骨材、細粒分の質量を求め、前記現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、前記細粒分の量と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材の質量との比率が設定した比率になるよう演算して、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を求め、
次いで前記粉体総量に対応した水量とセメントまたはセメント系固化材の量を求める、
ことを特徴とし、
または、
前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材の質量との比率を、前記粉体総量が前記細骨材の質量の1/3以上となるように設定する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合につき、現地発生土砂に含まれる細粒分量を分析評価し、適切な細粒分量を算出すると共に、算出された細粒分量とセメント量さらには水量との適切な比率を算出して、材料分離抵抗性に優れた流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法を提供出来るとの優れた効果を奏する。また、細粒分量を分析評価することで、生成後のソイルセメント材の状態予測が可能となる点で品質合理性を向上させることが出来るとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】流動タイプの砂防ソイルセメント生成の際の配合につき、約3.0N/mm
2程度の圧縮強度の得られる最少のセメント量200kg/m
3の値で流動タイプの砂防ソイルセメント生成の際の配合を計算した表である。
【
図2】
図1の配合表を修正し、流動タイプの砂防ソイルセメント生成の際の配合につき、セメント量305kg/m
3の値で流動タイプの砂防ソイルセメント生成の際の配合を計算した表である。
【
図3】
図1の配合によって生成した流動タイプの砂防ソイルセメントの断面写真である。材料分離抵抗性が小さく、バラバラな状態になっていることが認識出来る。
【
図4】
図2の配合によって生成した流動タイプの砂防ソイルセメントの断面写真である。材料分離抵抗性が大きく、この材料分離抵抗性により一体性のある状態になっていることが認識出来る。
【
図5】同じセメント量でも細分量の相違で性状が異なる例を示す説明図である。
【
図6】細粒分量や細骨材量の分析により不適切な性状となる予測が可能な例を示す説明図である。
【
図7】細骨材量がしっかりあることで材料分離抵抗性に優れた材料となるケースを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、該粉体と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量を併せた粉体量を粉体総量として設定し、前記設定した粉体総量と現地発生土砂の細骨材量との比率から材料分離抵抗性に優れた流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を求めるものである。
【0013】
ここで、セメント系固化材とは、例えば、JIS 規格適合品のセメント(JIS セメント)では固化しにくい含水比の高い土や有機物を多く含む土を効果的に固化するため、 セメントを母材に特定成分や粒度の調整が行われているセメントを指標するものである。
【0014】
地盤改良を必要とする軟弱な土には、多量の水分を含んでいたり、セメントの反応を阻害する、有機質(腐植質)が含まれていたりする場合がある。また、関東地方などの表層地盤で一般的な関東ロームなどの火山灰質土には、アロフェンという粘土鉱物が含まれていて、これがセメントの固化反応を阻害する場合がある。このため、セメントを地盤改良に用いると、土質によっては、大量にセメントを添加しても、なかなか強度が出にくい場合もある。
セメント系固化材は、前記のようにセメントをベースにし、対象土質に応じて、強度発生阻害成分などに対処する特別な材料を配合したり、土の余分な水分をあらかじめ減らして固まりやすくしたりする材料が配合されているセメントで、土質によっては、セメントを使う場合に比べて、添加量が半分でも充分強度が出るような場合もあり、結果として、セメントを使うよりも材料費が安く、経済的となる場合もある。
【0015】
そして、さらに、前記で求められた流動タイプの砂防ソイルセメント量と細粒分量とに対応した水量をそれぞれ求めることが出来、求められた水量の総量を水の量とするものである。
【0016】
以下本発明の実施例につき説明する。
第1実施例(良質な河床砂礫を現地発生土砂に用いる場合)
第1実施例は、良質な河床砂礫を現地発生土砂として用い、材料分離抵抗性に優れた良質な流動タイプの砂防ソイルセメントを生成する流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法を示す。
【0017】
ここで、砂防ソイルセメントが目標とする圧縮強度は、約3.0N/mm2程度とされており、コンクリートの18N/mm3に比べると小さな値でもよいとされているが、重要なのは砂防ソイルセメントは優れた材料分離抵抗性を有している必要があるということである。
【0018】
通常、砂防ソイルセメントにおいて単位セメント量が多いと(例えば、250kg/m3以上となる場合など)過剰な単位セメント量の配合量という印象がもたれることがある。
【0019】
また、砂防ソイルセメントにとって便利で良質な材料となる河床砂礫は、強度発現の確保が容易であることから、セメントの多量添加量は過剰設計と敬遠され、少量のセメント添加量で砂防ソイルセメント材を製造することが求められる。
【0020】
しかしながら、少量のセメント添加量では材料分離抵抗性が小さく、生コンのような滑らかさに欠く荒々しい性状を示すこともある(
図3参照)。
図3から理解されるように、材料分離抵抗性が小さく、仕上がりの材料としてガサガサで全く使い物にならないといえる。
【0021】
当業界全体からみると、流動タイプの砂防ソイルセメントについてはその強度面に関心が向いており、たとえ強度があったとしても使える性状になっていないということに気付いていないのが現状である。
【0022】
このような材料では骨材にかみ合わせが生じ、スランプの体をなさないことが多い、こうした場合ISM工法マニュアルでは単位セメント量を増量することを示しているが、増量するとの抽象的な言葉のみで、優れた材料分離抵抗性を有する砂防ソイルセメントの配合について明確かつ具体的な配合方法は示されてはいない。
【0023】
また、少量のセメントで製造する砂防ソイルセメント材で適切なスランプを得るために水を加えようにもペーストの粘性が小さいために材料分離してしまうため適切な性状とならないか、ペーストの絶対量が不足するといった事態も生ずる可能性がある。
【0024】
この点について、例えば、コンクリート示方書では材料分離抵抗性を得るのに単位粉体量として1m3当たり250~300kg/m3のセメントを配合することを示している。
【0025】
ところが、コンクリートでは、モルタル部をなす細骨材が適切な量で配合されているのに対し、砂防ソイルセメント生成に必要な現地発生土砂にあっては細骨材の含有率が採取地それぞれで異なるのが常であり、さらに細粒分の含有により粘性も変わってしまうことが指摘されている。
つまり、それぞれ細骨材などの含有率が異なる現地発生土砂においては適切な砂防ソイルセメントなどの配合量を設定する判断目安がないといえる。
【0026】
このため、砂防ソイルセメントの配合方法は特殊な熟練技術と認識されてしまい、結果として敬遠されてしまうばかりでなく、本来良質で活用価値の大きな河床材料(現地発生土砂)が砂防ソイルセメント生成につき活用困難な材料として扱われることにもなっていたのである。
【0027】
(本発明の配合方法)
コンクリートの生成に際しては、一般に骨材に細粒分が入り込むことはなく、骨材を細骨材と粗骨材に分けて配合を行っており、その骨材に対して、材料分離抵抗性を有する適切なセメント量が決定される。また、セメント量から水量も導くことができる。
【0028】
これに対して、流動性タイプの砂防ソイルセメントの生成に使用される良質な河床砂礫である現地発生土砂は、その礫、砂、細粒分は、質・量、粒度など多くの点で、それぞれの箇所で取得された現地発生土砂との間で異なるものとなっている。
【0029】
しかし、前記礫、砂、細粒分のうち細粒分は材料分離抵抗性に優れた材料、すなわち粉体であるともと考えられる。そして、この細粒分を材料分離抵抗性に優れたすなわちセメント粉体(セメントまたはセメント系固化材)と同じ粉体に区分すれば、適切な粉体量として数値化することができるのである。
【0030】
さらに、一般的に粉体量と骨材量の関係は1:3モルタルといった適用目安の通念が存在するため、この通念を応用すれば、細骨材量に対する粉体量の割合として適切なセメント量と細粒分量の目安を把握することが可能かつ容易となるのである。
例えば、細骨材量の1/3が適切な粉体量と把握できるため、その計算値から求めた粉体総量から、細粒分量を引いた値がセメント量の目安とすることが出来る。
【0031】
そして、前記の値は骨材量の多少にかかわらず適用可能なのである。また、こうして、粉体量を数値化することができることにより適切な水量も容易に導くことができる。
例えば、粉体量の50~70%が適切な添加水量となると考えられ、かかる値も流動タイプの砂防ソイルセメント配合に際して適用出来る数値となる。
【0032】
しかるに、こうした配合方法によれば、従来において配合してみるまで、あるいは配合してもわからなかった、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合目安を得ることは格段に容易となるのである。
特に、材料分離を生じやすい河床砂礫における必要セメント量の把握が容易となるのである。
【0033】
また、例えば、河床砂礫のように細粒分が少ない材料の場合、セメント量が過剰となることを是としないのであれば、周辺で発生する細粒土砂を混入し、もってセメント量と細粒分量の合計から求まる単位粉体量から細粒土砂の混入率を決定することもできるようになる。
【0034】
一方、細粒分が多い土砂では、粉体量とみなす細粒分量が多くなり、セメントの添加に伴う粉体総量の増加と共に扱いにくくなることから、こうした場合は砂礫材料等を添加することで調整が可能となる。
【0035】
ところで、地盤改良は一般に軟弱な土質を扱い、粘性土もその対象となっている。セメントミルクを添加する地盤改良工法では、一般にセメントミルクの調合は、コンクリートの場合に、セメントと水の割合が1:0.6であるのに対し、軟弱土質の場合は1:1(0.8~1.2)の割合で行われその混合性を確保している。
この関係を用いれば、細骨材に対しては1:0.6、細粒分に対しては1:1の割合でセメントミルクを製造すれば概ねの水量が設定可能である。
【0036】
また、細粒分が多くなることでワーカビリティに欠き、発現強度が小さくなることも考えられるが、大きくなる粘性を混和剤で緩和することや低強度材料として利活用すればそれで事が足りることも考えられる。
【0037】
単位水量が多ければ発現強度が小さくなるが、このようにセメント量と細粒分量と水量の関係を把握することができれば、発現強度の予見イメージも容易となる。
【0038】
こうして、土砂に含まれる細粒分量を数値化し、単位粉体量として組み込むことで、様々に異なる現地発生土砂における配合目安が容易に得られるとともに、これにより多くの現地発生土砂の利活用が進むことが考えられるのである。
【0039】
ここで、
図1、
図2を参照して具体的に説明する。
セメント量(容積)と水量(容積)と土の量(容積)は常にその合計が1000にならなければならない。
このうち、流動タイプの砂防ソイルセメントにつき、最初から決まっている割合が、細骨材と粗骨材及び細粒分の割合である。次に水量の割合は、セメント量が決まれば決定出来る。
しかし、骨材の量があってセメント量が決まるのではなく、セメント量を仮りに決めておき、その後、水の量を決めることで、土砂量が求まるというプロセスになる。
【0040】
よって、本発明では、任意のセメント量を決めて、水の量や細骨材、粗骨材、細粒分などの土砂量を算出していき、その後、前記算出値から適切なセメント量を探り出して、そのセメント量における細骨材、細粒分の量を算出するのである。
【0041】
すなわち、仮に決めたセメント量に基づいて細骨材、細粒分の量を算出する。そして、前記セメント量と細粒分量とを粉体総量とし、前記算出された細骨材量の1/3が適切な粉体量と把握できるとの数式を使用してその計算値を求め、求めた粉体総量から、細粒分量を引いた値が優れた材料分離抵抗性を有する流動タイプの砂防ソイルセメント量の目安となるのである。
【0042】
ここで、土砂量は最初から割合が決まっているので、前記セメント量と水量が決まれば残りの容積から土砂の質量が決まり、質量の配分から細骨材量、粗骨材量、細粒分量が算出できることとなる。
【0043】
そして前記セメントと細粒分の合計の質量が、細骨材の質量の1/3程度、もしくはそれ以上であれば、優れた材料分離抵抗性を有する性状の流動タイプの砂防ソイルセメントの配合であると確定できるものとなる。
【0044】
次に、第2実施例として細粒分が多い現地発生土砂を用いて良質な砂防ソイルセメントを生成する配合方法を考える。
細粒分を20%以上含むような土砂の場合、粘性が大きく扱いにくいことが多い。それだけでなく細粒分を多く含む場合は強度発現が小さいことが多く、セメントを多量に用いることがある。しかし、セメントを多量に用いることによりさらに粘性が大きくなって扱いにくい砂防ソイルセメント材になってしまうことがある。
【0045】
このような細粒分が多い土砂では、粉体量とみなす細粒分量が多くなり、セメントの添加に伴う粉体総量の増加と共に扱いにくくなることから、こうした場合は現地において砂礫材料等を添加することで調整が可能であると思量される。
【0046】
また、一般的に地盤改良においても軟弱な土質を扱い、粘性土もその対象である。セメントミルクを添加する地盤改良工法では、一般にセメントミルクの調合は、コンクリートの場合に、セメントと水の割合が1:0.6であるのに対し、軟弱土質の場合は1:1(0.8~1.2)の割合で行われその混合性を確保している。
【0047】
この関係を用いれば、細骨材に対しては1:0.6、細粒分に対しては1:1の割合でセメントミルクを製造すれば概ねの水量が設定可能となる。そして、細粒分が多くなることでワーカビリティに欠き、発現強度が小さくなることも考えられるが、大きくなる粘性を混和剤で緩和することや低強度材料として利活用すればそれで事が足りることも考えられる。
【0048】
次に、具体的な数値を入れて本発明の配合方法を説明する。
図1は、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合につき、任意のセメント量(容積)として200kg/m
3の値を使用し、水の量(容積)、水とセメントの量(容積)、全骨材の量(容積)、全骨材の質量、細粒分の質量、細粒分を抜いた骨材の質量、細骨材の質量、粗骨材の質量を算出したものである。
これら算出された値を使用し、細骨材の3分の1の値から細粒分を差し引くと、セメントの量は331kg/m
3となり、前記任意に設定したセメント量より遙かに多い。
すなわち、当初、目安値として設定した値である200kg/m
3よりはるかに多い値であり、当初設定した値の200kg/m
3が不適切であることがわかる。
【0049】
そこで、
図2に示すごとく任意のセメント量を305kg/m
3に設定をして計算をし直すと、細骨材の量は932.5kg/m
3となった。そして、「細骨材量の1/3が適切な粉体量である」との目安にあてはめて算出すると、311kg/m
3との値が得られた。
【0050】
この311kg/m3から細粒分の9kg/m3を差し引くと、302kg/m3との値のセメント量が算出されたのである。すなわち、設定した流動タイプの砂防ソイルセメントの量305kg/m3が前記したように、セメントと細粒分の合計の質量が、細骨材の質量の1/3程度の302kg/m3もしくは302kg/m3以上であり、もって流動タイプの砂防ソイルセメントの量305kg/m3の値が優れた材料分離抵抗性を有する性状の流動タイプの砂防ソイルセメントの配合の値であると認識出来るものとなる。
【0051】
次いで、
図2に示す水の量(容積)、水とセメントの量(容積)、全骨材の量(容積)、全骨材の質量、細粒分の質量、細粒分を抜いた骨材の質量、細骨材の質量、粗骨材の質量に基づく材料を配合すれば優れた材料分離抵抗性を有する性状の流動タイプの砂防ソイルセメントの配合ということとなる。
【0052】
すなわち、本発明の配合方法は、優れた材料分離抵抗性を有する性状の流動タイプの砂防ソイルセメントを取得すべく、セメントの量、水の量(容積)、水とセメントの量(容積)、全骨材の量(容積)、全骨材の質量、細粒分の質量、細粒分を抜いた骨材の質量、細骨材の質量、粗骨材の質量に基づく材料の量が算出されるのである。
【0053】
よって、
図5乃至
図7に示す様に、細粒分量、細骨材料の算出によって優れた材料分離抵抗性を有する性状の流動タイプの砂防ソイルセメントを取得出来るものとなっている。
【0054】
尚、細粒分の径は0.075mm以下のものとされるが、0.075mm±0.03mmの径の範囲まで許容される。また、細骨材とされる砂、礫の径は0.5乃至0.075mmとされるが、0.5乃至0.075mm±0.04mmの範囲の径まで許容される。
【要約】
【課題】本発明は、流動タイプの砂防ソイルセメントの配合につき、現地発生土砂に含まれる細粒分量を分析評価し、適切な細粒分量を算出すると共に、算出された細粒分量とセメント量、さらには水量との適切な比率を算出し、また細粒分量のみならず細骨材などの分析評価によって材料分離抵抗性に優れた流動タイプの砂防ソイルセメントの配合方法を提供する。
【解決手段】本発明は、現地発生土砂の細粒分を粉体として扱い、該粉体の量と流動タイプの砂防ソイルセメントに用いられるセメントまたはセメント系固化材の量とを併せて粉体総量とし、前記粉体総量と現地発生土砂の細骨材量との比率から流動タイプの砂防ソイルセメントの配合量を算出し、次いで前記求められた流動タイプの砂防ソイルセメント量と細粒分量とに対応した各々の水量を求め、該各々の水量の総量で水の量を求めることを特徴とする。
【選択図】
図1