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特許7514059フライアッシュ混合セメント、及び、モルタル又はコンクリート製品の製造方法
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  • 特許-フライアッシュ混合セメント、及び、モルタル又はコンクリート製品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】フライアッシュ混合セメント、及び、モルタル又はコンクリート製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/26 20060101AFI20240703BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240703BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240703BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240703BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C04B7/26
B28B11/24
C04B18/08 Z
C04B28/02
C04B40/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019054122
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152619
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】多田 真人
(72)【発明者】
【氏名】久我 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】中居 直人
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194475(JP,A)
【文献】特開2009-249272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライアッシュと、早強ポルトランドセメントを含むフライアッシュ混合セメントを製造するための方法であって、
1種以上のフライアッシュを用意し、該1種以上のフライアッシュの各種類について、測定対象となるフライアッシュを構成する粒子を、少なくとも1,000個以上選択し、選択した粒子の各々について化学組成を得る粒子解析工程と、
上記化学組成を用いて、上記選択した粒子から、Feの含有率が25質量%以上であり、かつ、SiOの含有率とAlの含有率の合計が50質量%未満である粒子を、酸化鉄と非晶質が混在した粒子として分類し、Alの含有率が25質量%未満であり、CaOの含有率が10質量%以上であり、かつ、SiOの含有率とAlの含有率の合計が50質量%以上である粒子を、Caを含む非晶質粒子として分類した後、分類された上記酸化鉄と非晶質が混在した粒子及び上記Caを含む非晶質粒子と、下記式(4)を用いて、粒子の種類ごとの球換算比表面積を算出する球換算比表面積算出工程と、
上記1種以上のフライアッシュのうち、下記(1)~(2)の条件を全て満たすフライアッシュを、上記フライアッシュ混合セメントに含まれるフライアッシュとして選択し、下記(1)~(2)の条件のいずれかを満たさないフライアッシュを、上記フライアッシュ混合セメントに含まれるフライアッシュとして選択しないフライアッシュ選択工程と、
選択されたフライアッシュと早強ポルトランドセメントを混合して、上記フライアッシュ混合セメントを得る混合工程を含み、
上記フライアッシュ混合セメント中、上記フライアッシュの含有率が10~30質量%であり、かつ、上記早強ポルトランドセメントの含有率が30質量%以上であることを特徴とするフライアッシュ混合セメントの製造方法。
(1)フライアッシュ中の、上記酸化鉄と非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が、2,800~11,000cm/cmであること
(2)フライアッシュ中の、上記Caを含む非晶質粒子の球換算比表面積が、2,100~22,500cm/cmであること
(上記式(4)中、S は球換算比表面積であり、Aは粒子の表面積であり、Vは粒子の体積であり、nは粒子の個数である。)
【請求項2】
上記球換算比表面積算出工程において、さらに、Alの含有率が25質量%以上であり、CaOの含有率が50質量%未満であり、かつ、SiOの含有率とAlの含有率の合計が50質量%以上である粒子を、ムライトと非晶質が混在した粒子として分類した後、分類された上記ムライトと非晶質が混在した粒子と、上記式(4)を用いて、粒子の種類ごとの球換算比表面積を算出し、
上記フライアッシュ選択工程において、上記(1)~(2)及び下記(3)の条件を全て満たすフライアッシュを、上記フライアッシュ混合セメントに含まれるフライアッシュとして選択し、上記(1)~(2)及び下記(3)の条件のいずれかを満たさないフライアッシュを、上記フライアッシュ混合セメントに含まれるフライアッシュとして選択しない請求項1に記載のフライアッシュ混合セメントの製造方法。
(3)フライアッシュ中の、上記ムライトと非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が、1,900~9,500cm/cmであること
【請求項3】
上記フライアッシュ混合セメントが、普通ポルトランドセメントを60質量%以下の含有率で含むものである請求項1又は2に記載のフライアッシュ混合セメントの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフライアッシュ混合セメントの製造方法によって、フライアッシュ混合セメントを得た後、該フライアッシュ混合セメント、骨材、及び水を混練して、混練物を得る混練工程と、
上記混練物を型枠内に収容した後、1時間以上気中養生する気中養生工程と、
気中養生後の上記混練物を、70~95℃の雰囲気下で2時間以上蒸気養生して、硬化体を得る蒸気養生工程と、
上記硬化体を上記型枠から脱型して、上記硬化体からなるモルタルまたはコンクリート製品を得る脱型工程、
を含むことを特徴とするモルタル又はコンクリート製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュ混合セメント、及び、モルタル又はコンクリート製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの一部をフライアッシュで置換してなるフライアッシュ混合セメントは、水酸化カルシウムとフライアッシュのポゾラン反応により、安定なケイ酸カルシウム水和物等の化合物を生成して緻密な組織を形成する。そのため、フライアッシュ混合セメントは、水密性、化学抵抗性、及び、長期強度発現性に優れている。
また、ポゾラン反応による発熱量は、ポルトランドセメントの水和による発熱量に比べて小さいため、フライアッシュ混合セメントの水和熱は、ポルトランドセメントの水和熱よりも小さくなる。また、フライアッシュは、それ自体、球状の微粒子であるから、ボールベアリング作用により、コンクリート等の流動性を向上させることができ、それゆえ、コンクリート等の製造における単位水量を少なくすることができ、フライアッシュ混合セメントを用いた硬化体の乾燥収縮を小さくすることができる。
さらに、フライアッシュ混合セメントは、セメント製造時のCO排出量や、原料である石灰石や化石燃料などの天然資源の使用量を少なくすることができる点や、副産物であるフライアッシュを有効活用できる点などで、環境負荷の低減効果を有している。
そのため、フライアッシュ混合セメントを、コンクリート製品用のセメントとして活用することが望まれている。
【0003】
フライアッシュを含むセメント組成物として、特許文献1には、鉄率(I.M.)が1.88~2.00である普通ポルトランドセメントクリンカー粉末と、石膏と、ブレーン比表面積が5,000cm/gを超える石灰石粉末と、フライアッシュ、を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量と、上記石膏の量(SO換算)の合計100質量%中の、石膏の量(SO換算)の割合が、1.0~3.0質量%であり、上記普通ポルトランドセメントクリンカー粉末の量、上記石膏の量(SO換算)、上記石灰石粉末の量、及び上記フライアッシュの量の合計100質量%中、石灰石粉末の割合が1.0~10.0質量%、フライアッシュの割合が10質量%を超え、40質量%以下であることを特徴とするセメント組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-104215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なコンクリート製品は、コンクリートを混練して成型した後、2時間程度常温(20℃程度)で前養生し、次いで、2~3時間かけて60~65℃に昇温して、60~65℃で3時間程度蒸気養生し、さらに、9~10時間かけて常温(20℃程度)まで降温した後、脱型することによって製造されている。
上述した製造サイクルでは、コンクリート製品の製造に18時間程度の時間が必要であり、該時間の短縮が望まれている。
【0006】
コンクリート製品の製造時間を短縮する方法の一例として、蒸気養生の温度を高くして、養生時間(特に、加熱しながら行われる養生の時間)を短縮する方法が知られている。しかし、該方法では、コンクリート製品の製造において65℃以上の条件下で養生を行った場合に生じる特有の現象として知られている、エトリンガイトの遅延生成(Delayed Ettringite Formation:DEF)による膨張劣化が懸念される。
また、セメントにフライアッシュを約20質量%以上の割合で混合することで、DEFによる膨張劣化をほとんど抑制できるものの、フライアッシュを約20質量%以上の割合で含むフライアッシュ混合セメントは、蒸気養生の温度を高くして、養生時間を短くすると、強度発現性が低下するという問題がある。
本発明の目的は、蒸気養生の温度を高くして、養生時間(特に、加熱しながら行われる養生の時間)を短縮した場合であっても、強度発現性が低下しないフライアッシュ混合セメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のフライアッシュと、早強ポルトランドセメントを含み、フライアッシュの含有率が10~30質量%であるフライアッシュ混合セメントによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
[1] フライアッシュと、早強ポルトランドセメントを含むフライアッシュ混合セメントであって、上記フライアッシュが下記(1)~(2)の条件を満たすものであり、上記フライアッシュ混合セメント中の上記フライアッシュの含有率が10~30質量%であることを特徴とするフライアッシュ混合セメント。
(1)フライアッシュ中の、酸化鉄と非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が、2,800~11,000cm/cmであること
(2)フライアッシュ中の、Caを含む非晶質粒子の球換算比表面積が、2,100~22,500cm/cmであること
[2] 上記フライアッシュが、さらに下記(3)の条件を満たすものである前記[1]に記載のフライアッシュ混合セメント。
(3)フライアッシュ中の、ムライトと非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が、1,900~9,500cm/cmであること
[3] 上記フライアッシュが、さらに下記(4)の条件を満たすものである前記[1]又は[2]に記載のフライアッシュ混合セメント。
(4)フライアッシュ中の、Caを含まない非晶質粒子の球換算比表面積が、2,100~9,000cm/cmであること
[4] 上記フライアッシュ混合セメント中の上記早強ポルトランドセメントの含有率が30質量%以上である前記[1]~[3]のいずれかに記載のフライアッシュ混合セメント。
[5] 上記フライアッシュ混合セメントが、普通ポルトランドセメントを60質量%以下の含有率で含むものである前記[1]~[4]のいずれかに記載のフライアッシュ混合セメント。
【0008】
[6] 前記[1]~[5]のいずれかに記載のフライアッシュ混合セメントと骨材と水を含むモルタル又はコンクリート。
[7] 前記[1]~[5]のいずれかに記載のフライアッシュ混合セメント、骨材、及び水を混練して、混練物を得る混練工程と、上記混練物を型枠内に収容した後、1時間以上気中養生する気中養生工程と、気中養生後の上記混練物を、70~95℃の雰囲気下で2時間以上蒸気養生して、硬化体を得る蒸気養生工程と、上記硬化体を上記型枠から脱型して、上記硬化体からなるモルタルまたはコンクリート製品を得る脱型工程、を含むことを特徴とするモルタル又はコンクリート製品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフライアッシュ混合セメントを用いてなるモルタルまたはコンクリートは、蒸気養生の温度を高くして、養生時間(特に、加熱しながら行われる養生の時間)を短縮した場合であっても、強度発現性が低下しないものである。
このため、モルタル又はコンクリート製品の製造において、強度を低下させることなく、製品の製造に要する時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例における、温度履歴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフライアッシュ混合セメントは、フライアッシュと、早強ポルトランドセメントを含むものであって、以下の(1)~(2)の条件を満たすものであり、フライアッシュ混合セメント中のフライアッシュの含有率が10~30質量%であるものである。
(1)フライアッシュ中の、酸化鉄と非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が、2,800~11,000cm/cmであること
上記酸化鉄と非晶質が混在した粒子の球換算比表面積は、2,800~11,000cm/cm、好ましくは4,000~10,500cm/cm、より好ましくは4,500~10,000cm/cm、特に好ましくは5,000~9,000cm/cmである。該球換算比表面積が上記数値範囲外であると、蒸気養生の温度を高くして、養生時間(加熱しながら行われる養生の時間)を短くした場合において、強度発現性が低下する。
【0012】
(2)フライアッシュ中の、Caを含む非晶質粒子の球換算比表面積が、2,100~22,500cm/cmであること
上記Caを含む非晶質粒子の球換算比表面積は、2,100~22,500cm/cm、好ましくは3,000~21,000cm/cm、より好ましくは4,000~20,000cm/cm、特に好ましくは7,000~ 19,000cm/cmである。該球換算比表面積が上記数値範囲外であると、蒸気養生の温度を高くして、養生時間(加熱しながら行われる養生の時間)を短くした場合において、強度発現性が低下する。
【0013】
また、本発明で用いられるフライアッシュは、強度発現性等の観点から、さらに、以下の(3)~(4)の条件を満たすものであることが好ましい。
(3)フライアッシュ中の、ムライトと非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が、1,900~9,500cm/cm(好ましくは2,500~9,200cm/cm、より好ましくは3,000~9,000cm/cm、特に好ましくは4,500~ 8,000cm/cm)であること
(4)フライアッシュ中の、Caを含まない非晶質粒子の球換算比表面積が、2,100~9,000cm/cm(好ましくは3,000~8,700cm/cm、より好ましくは4,000~8,500cm/cm、特に好ましくは4,500~8,000cm/cm)であること
【0014】
フライアッシュを構成する上述の4種類の粒子((i)酸化鉄と非晶質が混在した粒子、(ii)ムライトと非晶質が混在した粒子、(iii)Caを含まない非晶質粒子、(iv)Caを含む非晶質粒子)の球換算比表面積は、以下の(a)~(c)の工程を行うことで算出することができる。以下、詳しく説明する。
【0015】
[工程(a):試験片の作製工程]
本工程において、まず、フライアッシュと樹脂を混合して混合物を得た後、該混合物を硬化させて硬化体を作成する。
混合によって、フライアッシュを構成する粒子(以下、単に「粒子」ともいう。)を樹脂内に十分に分散させることにより、最終的に得られる試験片において、粒子が重なり合うことが起こりにくくなるため、後述する粒子解析工程において、粒子一つ一つを的確に抽出して、その特性値を計測することができる。
樹脂としては、硬化する際の収縮が小さく、ひび割れが生じないものが好ましい。このような樹脂の例としては、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びメタクリル系樹脂等が挙げられる。
フライアッシュと樹脂は、樹脂とフライアッシュの体積比(樹脂/フライアッシュ)が、0.8~4.0となる量で混合することが好ましい。上記体積比が上記数値範囲内であれば、複数の粒子が互いに接触することなく分散し、後述する研磨を実施して、多くの粒子の切断面を有する面(硬化体の研磨された面)を得ることができる。
【0016】
次に、硬化体の、反射電子像を撮影する面を研磨する。該面に、凹凸があったり、十分な数の粒子の切断面が表れない場合、粒子の粒径や形状を正確に測定できず、後述する粒子解析の精度が低下する。
研磨に用いられる研磨装置は、特に限定されず、通常用いられる研磨装置を使用することができる。また、研磨において使用される研磨材としては、特に限定されず、シリコンカーバイト研磨材、ボロンカーバイト研磨材、ダイヤモンドペースト、およびアルミナ粉末等が挙げられる。
好ましい研磨方法としては、粒度が0.3~3μmのアルミナ粉末等を研磨材として用いたバフ研磨や、アルゴンイオンビームを用いた断面試料作製装置(例えば、日本電子株式会社製、商品名「クロスセクションポリッシャ」)を用いた研磨が挙げられる。中でも、反射電子像を撮影する面の凹凸をより少なくすることができる観点から、アルゴンイオンビームを用いた断面試料作製装置を用いた研磨がより好ましい。
【0017】
最後に、硬化体の研磨された面(反射電子像を撮影する面)に蒸着膜を形成することで、硬化体に導電性を付与し、後述する粒子解析工程において使用される試験片を得ることができる。
後述する粒子解析工程において、上記試験片に電子線を照射するが、フライアッシュ及び樹脂は導電性を有しないため、試験片に蒸着膜を形成せずに反射電子像を撮影すると、試験片の表面が帯電して、正確な反射電子像を得ることができない。そこで、試験片の表面に導電性を有する蒸着膜を形成することで、正確な反射電子像を得ることができる。
上記蒸着膜としては、試験片の表面に導電性を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素、白金パラジウム、および金等からなるものが挙げられる。また、蒸着膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0018】
[工程(b):フライアッシュの粒子解析工程]
本工程において、工程(a)で得られた試験片から、電子顕微鏡を用いて、反射電子像(BSE)及び各粒子の化学組成を得ることができる。
電子顕微鏡としては、反射電子像及び微小領域の化学組成を測定できるものであれば特に限定されず、走査型電子顕微鏡(SEM)や電子線マイクロアナライザ(EPMA)等が挙げられる。なお、反射電子像は、その領域を構成する元素の平均原子番号が大きいほど明るく表示される。
解像度の高い反射電子像を得る観点から、反射電子像の解析条件として、加速電圧を10~15keV程度、照射電流を200~1000pA程度、観察倍率を500~2000倍に設定することが好ましい。
【0019】
フライアッシュの粒子解析は、まず、得られた反射電子像から、目視による輝度の比較や輝度のヒストグラムを参考にして、フライアッシュの粒子と樹脂を分離できる輝度の閾値を決定する。次いで、該閾値を用いて、2値化処理を行い、フライアッシュの粒子を抽出する。この抽出されたフライアッシュ粒子に対して、粒子ごとに幾何学的計量値を測定する。幾何学的計量値としては、円形度係数、円相当径(その粒子の断面積と等しい面積を有する円としたときの円の直径)、およびアスペクト比等が挙げられる。
【0020】
また、各粒子(フライアッシュを構成する各粒子)を化学分析することで、各粒子の化学組成を得ることができる。
化学組成を得る装置の例としては、波長分散型X線分光器(WDS)、エネルギー分散型X線分光器(EDS)等が挙げられる。中でも、短時間で化学組成を得ることができる観点から、エネルギー分散型X線分光器(EDS)が好ましい。
エネルギー分散型X線分光器を用いる場合、各粒子の化学組成を高い精度で迅速に得る観点から、加速電圧を10~15keV程度、照射電流を200~1000pA程度、分析時間を1分析点につき5~10秒に設定することが好ましい。また、分析領域径は、個々の粒子の全体とすることが好ましい。
【0021】
なお、幾何学的計量値の測定と化学分析の順序は問わない。また、測定対象となるフライアッシュの粒子の数は、化学分析と幾何学的計量値の測定の誤差を小さくする観点から、好ましくは1,000個以上、より好ましくは2,000個以上である。また、1粒子あたりのX線カウント数は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは100,000以上である。
粒子解析における画像処理の都合上、電子画像の端部において分割された粒子(一部分しか映っていない粒子)は、隣接する領域から撮影された電子画像とつなぎ合わせることで、一つの粒子としてカウントする。
粒子解析によって、各粒子のキャラクターとして、粒子の断面積と化学組成を取得することができる。
【0022】
[工程(c):フライアッシュの粒子の分類工程]
本工程は、前工程で得られた、フライアッシュの各粒子の化学組成と、表1に示すフライアッシュの粒子の化学組成の閾値を用いて、フライアッシュを構成する各粒子を、(i)酸化鉄と非晶質が混在した粒子、(ii)ムライトと非晶質が混在した粒子、(iii)Caを含まない非晶質粒子、(iv)Caを含む非晶質粒子のいずれかに分類する工程である。
なお、フライアッシュの粒子の抽出、化学組成の分析、および幾何学的計量値の算出は、電子顕微鏡に付属する粒子解析ソフト(例えば、Oxford Instrument社製、「Aztec」)を用いれば、自動的に測定することができる。
【0023】
【表1】
【0024】
フライアッシュの各粒子を粒子(i)~(iv)のいずれかに分類した後、粒子(i)~(iv)の各々の球換算比表面積を、下記の手順に従って算出することができる。
まず、粒子の種類(粒子(i)~(iv))ごとに、該種類に分類された粒子がすべて球状と仮定して、分類された各粒子の断面積から下記式(1)を用いて、各粒子の円相当径を算出する。
(上記式(1)中、Sは粒子の断面積であり、Dは粒子の円相当径である。)
次に、算出した各粒子の円相当径から、粒子が球状と仮定したときの、各粒子の表面積と体積を、下記式(2)~(3)を用いて算出する。
(上記式(2)中、Aは粒子の表面積であり、Dは粒子の円相当径である。)
(上記式(3)中、Vは粒子の体積であり、Dは粒子の円相当径である。)
最後に、分類された全ての粒子の体積と表面積の総和を算出し、下記式(4)を用いて、粒子の種類(粒子(i)~(iv))ごとに、球換算比表面積を算出する。
(上記式(4)中、Sは球換算比表面積であり、Aは粒子の表面積であり、Vは粒子の体積であり、nは粒子の個数である。)
【0025】
本発明において、フライアッシュのブレーン比表面積は、好ましくは2,500~6,000cm/g、より好ましくは2,700~5,000cm/g、特に好ましくは2,900~4,000cm/gである。該比表面積が2,500cm/g以上であれば、フライアッシュ混合セメントの強度発現性がより向上する。該比表面積が6,000cm/g以下であれば、モルタル又はコンクリート製品を製造する際の作業性がより向上する。
また、フライアッシュを、975±25℃で15分間加熱した後の質量減少率は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1~4.5質量%、特に好ましくは1.5~4.0質量%である。質量減少率が5質量%以下であれば、 フライアッシュ混合セメントの流動性及び強度発現性がより向上する 。
さらに、フライアッシュ中のSiOの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは51~70質量%、特に好ましくは52~65質量%である。該含有率が50質量%以上であれば、フライアッシュ混合セメントの強度発現性がより向上する。
【0026】
本発明のフライアッシュ混合セメント中の早強ポルトランドセメントの含有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。該含有率が30質量%以上であれば、強度発現性を低下することなく、養生時間をより短くすることができる。
また、本発明のフライアッシュ混合セメントは、早強ポルトランドセメント以外に、他のポルトランドセメントを含んでいてもよい。
他のポルトランドセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。中でも、材料にかかるコストを低減する観点から、普通ポルトランドセメントが好ましい。
フライアッシュ混合セメントが普通ポルトランドセメントを含む場合、フライアッシュ混合セメント中の普通ポルトランドセメントの含有率は、養生時間が長くなることを防ぐ観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
【0027】
ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは2,500~6,000cm/g、より好ましくは3,000~5,000cm/gである。該ブレーン比表面積が 2,500cm/g以上であれば、フライアッシュ混合セメントの強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が6,000cm/g以下であれば、モルタル又はコンクリート製品を製造する際の作業性がより向上する。
【0028】
本発明のフライアッシュ混合セメントは、必要に応じて、石灰石粉末及び石膏粉末の少なくともいずれか一方を含んでもよい。
本発明のフライアッシュ混合セメントが石灰石粉末を含む場合、フライアッシュ混合セメント100質量%中の石灰石粉末の含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。石灰石粉末が10質量%以下であれば、石灰石粉末を含んでいても、フライアッシュ混合セメントの強度発現性の低下が起こらない。
石灰石粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~10,000cm/g、より好ましくは4,000~9,000cm/gである。該ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、フライアッシュ混合セメントの強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が10,000cm/gを超えると、粉砕にかかるコストが大きくなる。
【0029】
本発明のフライアッシュ混合セメントが石膏粉末を含む場合、フライアッシュ混合セメント100質量%中の石膏粉末(ポルトランドセメントに含まれる石膏は除く)の含有率は、SO換算で、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下、特に好ましくは3.5質量%以下である。石膏の含有率が、SO換算で、5.0質量%以下であれば、石膏粉末を含んでいても、コンクリートの体積変化(膨張)が大きくなることはない。
石膏の例としては、無水石膏、半水石膏、及び2水石膏が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
石膏粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~15,000cm/g、より好ましくは3,500~13,000cm/gである。該ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、フライアッシュ混合セメントの強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が15,000cm/gを超えると、粉砕にかかるコストが大きくなる。
【0030】
本発明のフライアッシュ混合セメントは、水、骨材、及び、必要に応じて配合される他の材料(例えば、セメント分散剤、膨張材、収縮低減剤、空気量調整剤等)と混合されることによって、モルタル又はコンクリートとして使用される。
骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。
細骨材としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、および軽量細骨材から選ばれる1種以上が挙げられる。また、細骨材は天然骨材のほか、再生骨材を用いることができる。
粗骨材としては、砂利、砕石、スラグ粗骨材、および軽量粗骨材から選ばれる1種以上が挙げられる。また、粗骨材は、前記細骨材と同様に、天然骨材のほか再生骨材を用いることができる。
【0031】
骨材の配合量(細骨材と粗骨材を併用する場合はその合計量)は特に限定されず、モルタルやコンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、骨材の配合量は、骨材とフライアッシュ混合セメントの質量比(骨材/フライアッシュ混合セメント)が、好ましくは1~7より好ましくは2~5となる量である。
また、粗骨材を用いる場合、細骨材率は特に限定されず、モルタルやコンクリート等における一般的な数値であればよく、例えば、5~60%である。細骨材率が上記数値範囲内であれば、混練後のワーカビリティや成形のし易さが向上する。
【0032】
水としては、特に限定されるものでなく、水道水、下水処理水、生コンクリートの上澄水等が挙げられる。
水の配合量は、特に限定されず、モルタルやコンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、水の配合量は、水と、フライアッシュ混合セメントの質量比(水/フライアッシュ混合セメント)の値として、好ましくは0.2~0.6となる量である。
【0033】
セメント分散剤としては、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤及び高性能AE減水剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント分散剤に含まれる成分(減水成分)としては、ポリカルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸、およびこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、膨張材および収縮低減剤の少なくともいずれか一方を含むことで、収縮ひび割れを抑制することができる。
【0034】
本発明のモルタル又はコンクリート製品を製造する方法は、上述したフライアッシュ混合セメント、骨材、及び水を混練して、混練物を得る混練工程と、混練物を型枠内に収容した後、1時間以上気中養生する気中養生工程と、気中養生後の上記混練物を、70~95℃の雰囲気下で2時間以上蒸気養生して、硬化体を得る蒸気養生工程と、硬化体を型枠から脱型して、モルタルまたはコンクリート製品を得る脱型工程、を含むものである。
以下、各工程について、詳しく説明する。
【0035】
[混練工程]
本工程は、上述したフライアッシュ混合セメント、骨材、水、および必要に応じて配合される他の材料(セメント分散剤、膨張材、収縮低減剤、空気量調整剤等)を混練して、混練物を得る工程である。
各材料の混練に用いるミキサとしては、特に限定されるものではなく、パン型ミキサ、二軸ミキサ等の慣用のミキサを用いることができる。混練方法としては、特に限定されるものではなく、全ての材料を一括してミキサに投入して混練してもよく、ポルトランドセメント、フライアッシュ、細骨材および粗骨材をミキサに投入して空練りを行った後に、水、セメント分散剤等を投入して混練してもよい。
【0036】
[気中養生工程]
本工程は、前工程で得られた混練物を型枠内に収容した後、1時間以上、好ましくは2~6時間、より好ましくは3~5時間、気中養生する工程である。気中養生を行う際の温度は、通常、常温(例えば、5℃以上、40℃未満、好ましくは10~30℃)である。気中養生の時間が1時間未満であると、得られる硬化体の強度が低下する。
【0037】
[蒸気養生工程]
本工程は、気中養生後の混練物を、70~95℃の雰囲気下で2時間以上蒸気養生して、硬化体を得る工程である。
蒸気養生は、2~5時間(好ましくは2~4時間)かけて所望の最高温度となるまで昇温する。所望の最高温度となるまでの昇温速度(単位時間当たりの上昇する温度)は、好ましくは10~30℃/時間である。
蒸気養生における最高温度は、養生時間をより短くする観点からは、70℃以上、好ましくは73℃以上、より好ましくは80℃以上である。上記温度が70℃未満であると、養生時間を短くした場合に硬化体の強度が低下する。また、95℃を超える場合、加熱に要するエネルギーコストが高くなる。
70~95℃の雰囲気下において蒸気養生する時間は、硬化体の強度を大きくする観点から、2時間以上、好ましくは2時間15分間以上、より好ましくは2時間30分間以上である。また、上記時間は、コンクリートまたはモルタルの製造に要する時間を短くする観点から、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間30分間以下である。
【0038】
次いで、2~5時間(好ましくは3~4時間)かけて常温(20℃程度)まで降温する。なお、本発明のフライアッシュ混合セメントによれば、常温まで降温するのに要する時間を短く(降温速度を大きく)しても、硬化体の強度の低下を起こりにくくすることができる。常温(20℃程度)となるまでの降温速度(単位時間当たりの降下する温度)は、好ましくは10~40℃/時間、より好ましくは15~30℃/時間である。
蒸気養生工程に要する時間(昇温の開始から降温の終了までの時間)は、製品の製造にかかる時間を短くする観点から、好ましくは13時間以下、より好ましくは12時間以下である。
【0039】
[脱型工程]
本工程は、硬化体を型枠から脱型して、モルタルまたはコンクリート製品を得る工程である。
本発明のモルタルまたはコンクリートの製造方法によれば、11~13時間でコンクリート製品を製造できる。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)早強ポルトランドセメント;太平洋セメント社製、CS:65.1質量%、CS:8.6質量%、CA:9.5質量%、CAF:8.4質量%、石膏(SO換算):2.3質量%、ブレーン比表面積:4,600cm/g
(2)普通ポルトランドセメント;太平洋セメント社製、CS:60.1質量%、CS:13.1質量%、CA:9.0質量%、CAF:9.8質量%、石膏(SO換算):2.0質量%、ブレーン比表面積:3,250cm/g
(3)フライアッシュ1~6;ブレーン比表面積、質量減少率、SiO含有率を表2に示す。
(4)石灰石粉末;ブレーン比表面積:8,500cm/g
(5)石膏粉末;無水石膏粉末(ブレーン比表面積:6,000cm/g)
(6)細骨材;「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に定める標準砂
(7)水;水道水
【0041】
フライアッシュ1~6について、上述した方法に従って、試験片を作製し、フライアッシュの粒子を、(i)酸化鉄と非晶質が混在した粒子、(ii)ムライトと非晶質が混在した粒子、(iii)Caを含まない非晶質粒子、(iv)Caを含む非晶質粒子のいずれかに分類した後、粒子(i)~(iv)の球換算比表面積を算出した。
結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
[実施例1]
早強ポルトランドセメントとフライアッシュ1を、フライアッシュ1と早強ポルトランドセメントの合計量100質量%中のフライアッシュ1の含有率が18質量%となる量で混合して、フライアッシュ混合セメントを調製した。
水とフライアッシュ混合セメントの質量比(水/フライアッシュ混合セメント)が0.5であり、細骨材とフライアッシュ混合セメントの質量比(細骨材/フライアッシュ混合セメント)が3.0となる量で、フライアッシュ混合セメント1と水と細骨材を混合してモルタルを調製した。混合は、ホバート社製のミキサーを使用し、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して行った。
得られたモルタルを成型し、以下の(1)~(3)の温度履歴(図1参照)によって、蒸気養生を行い、20℃になった時点で脱型して、硬化体(モルタル製品)を得た。脱型後、硬化体を、常温(約20℃)の環境下で気中養生した。
【0044】
(1)温度履歴1(表3中、「65℃」と示す。):20℃を2時間保持後、2時間15分間かけて65℃まで昇温し、次いで65℃を3時間保持し、その後、9時間かけて20℃まで降温する。
(2)温度履歴2(表3中、「75℃」と示す。):20℃を2時間保持後、2時間45分間かけて75℃まで昇温し、次いで75℃を4時間15分間保持し、その後、2時間30分間かけて20℃まで降温する。
(3)温度履歴3(表3中、「90℃」と示す。):20℃を2時間保持後、3時間30分間かけて90℃まで昇温し、次いで90℃を2時間30分間保持し、その後、3時間30分間かけて20℃まで降温する。
なお、温度履歴1~3において、モルタルに加えられる熱量は、同じ量になるようにしている。
得られた硬化体の、脱型時及び14日経過時のモルタル圧縮強さを、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定した。
【0045】
[実施例2~4]
フライアッシュ1の代わりに表3に示す種類のフライアッシュを使用する以外は、実施例1と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
[実施例5]
フライアッシュ混合セメント100質量%中の2質量%となる量の早強ポルトランドセメントを石灰石粉末に置換する以外は実施例3と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
[実施例6]
フライアッシュ混合セメント100質量%中の3質量%となる量の早強ポルトランドセメントを無水石膏粉末に置換する以外は実施例3と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
【0046】
[実施例7]
早強ポルトランドセメントと普通ポルトランドセメントとフライアッシュ3を、早強ポルトランドセメントと普通ポルトランドセメントとフライアッシュ3の合計量100質量%中、早強ポルトランドセメントの含有率が41質量%、普通ポルトランドセメントの含有率が41質量%、フライアッシュ3の含有率が18質量%となる量で混合して、フライアッシュ混合セメントを調製する以外は実施例3と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
[実施例8]
フライアッシュ混合セメント100質量%中の3質量%となる量の早強ポルトランドセメントを無水石膏粉末に置換する以外は実施例7と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
【0047】
[比較例1~2]
フライアッシュ1の代わりに表3に示す種類のフライアッシュを使用する以外は、実施例1と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
[比較例3]
早強ポルトランドセメントの代わりに普通ポルトランドセメントを使用する以外は、実施例1と同様にして硬化体を得た。得られた硬化体のモルタル圧縮強さを実施例1と同様にして測定した。
結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3から、本発明のフライアッシュ混合セメントを使用した場合、蒸気養生に要する時間(昇温の開始時から高温の終了時下での時間)を短くしても(温度履歴2~3:9時間30分間)、得られる硬化体のモルタル圧縮強さを、温度履歴1(14時間15分)によって得られる硬化体のモルタル圧縮強さと、同程度にすることができる。
比較例1(Caを含まない非晶質粒子の球換算比表面積が1,570cm/cmのもの)、比較例2(酸化鉄と非晶質が混在した粒子の球換算比表面積が2,250cm/cmのもの)、及び比較例3(早強ポルトランドセメントを含まないもの)では、蒸気養生に要する時間を短くした場合(温度履歴2~3:9時間30分間)、得られる硬化体のモルタル圧縮強さは、温度履歴1(14時間15分間)によって得られる硬化体のモルタル圧縮強さよりも、小さくなることがわかる。
図1