(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】気圧制御システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240703BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20240703BHJP
G01L 7/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F24F7/007 B
G08C17/00 Z
G01L7/00 A
(21)【出願番号】P 2019124693
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100134599
【氏名又は名称】杉本 和之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
(72)【発明者】
【氏名】今井 達
(72)【発明者】
【氏名】森重 公康
(72)【発明者】
【氏名】小吹 尚也
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024450(JP,A)
【文献】特開2010-240282(JP,A)
【文献】特開平06-094261(JP,A)
【文献】特開2006-292280(JP,A)
【文献】特開2013-140523(JP,A)
【文献】特開2009-019871(JP,A)
【文献】特開2018-128184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
G08C 17/00
G01L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部屋に配され当該第1の部屋の絶対圧を検出する第1の絶対圧センサと、
第2の部屋に配され当該第2の部屋の絶対圧を検出する第2の絶対圧センサと、
前記第1の部屋及び前記第2の部屋の外の基準域に配され、当該基準域の絶対圧を検出する基準絶対圧センサと、
前記第1の絶対圧センサ、前記第2の絶対圧センサ、前記基準絶対圧センサに気圧の検出を指示する1つの制御信号を無線通信により送信し、前記第1の絶対圧センサ、前記第2の絶対圧センサ、前記基準絶対圧センサから絶対圧の情報を無線通信により受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記第1の部屋の絶対圧の情報及び前記基準域の絶対圧の情報に基づいて
、予め設定された第1の目標値に基づくフィードバック制御により前記第1の部屋の差圧を制御する第1の気圧制御装置と、
前記通信部が受信した前記第2の部屋の絶対圧の情報及び前記基準域の絶対圧の情報に基づいて
、予め設定された第2の目標値に基づくフィードバック制御により前記第2の部屋の差圧を制御する第2の気圧制御装置と、を備えることを特徴とする気圧制御システム。
【請求項2】
第1の部屋に配され当該第1の部屋の絶対圧を検出する第1の絶対圧センサと、
前記第1の部屋の外の基準域に配され、当該基準域の絶対圧を検出する基準絶対圧センサと、
前記第1の絶対圧センサ、前記基準絶対圧センサに気圧の検出を指示する1つの制御信号を無線通信により送信し、前記第1の絶対圧センサ、前記基準絶対圧センサから絶対圧の情報を無線通信により受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記第1の部屋の絶対圧の情報及び前記基準域の絶対圧の情報に基づいて
、予め設定された第1の目標値に基づくフィードバック制御により前記第1の部屋の差圧を制御する第1の気圧制御装置と、を備えることを特徴とする気圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部屋の気圧と当該部屋の外の基準域の気圧である基準圧との差圧(室圧ともいう)に基づいて前記部屋の気圧を制御する気圧制御システムが知られている(例えば、特許文献1)。従来の気圧制御システムでは、前記の差圧を、差圧センサにより検出することが一般的であり、前記部屋の気圧及び基準域の基準圧それぞれを、ナイロンチューブなどの中空管により差圧センサまで導いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の気圧制御システムでは、中空管にねじれ又は曲げが生じていると、部屋の気圧と基準圧との差圧の検出誤差が大きくなってしまう場合がある。このようなねじれ又は曲げが生じないように中空管を配置するには特別の注意及び工夫が必要となり、気圧制御システムの施工費用がかさんでしまう。このような不都合は、部屋又は基準域と差圧センサとの距離が離れているときなど、中空管の長さが長いときに、顕著である。
【0005】
本発明は、施工費用が少ない気圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る気圧制御システムは、第1の部屋に配され当該第1の部屋の絶対圧を検出する第1の絶対圧センサと、第2の部屋に配され当該第2の部屋の絶対圧を検出する第2の絶対圧センサと、前記第1の部屋及び前記第2の部屋の外の基準域に配され、当該基準域の絶対圧を検出する基準絶対圧センサと、前記第1の絶対圧センサ、前記第2の絶対圧センサ、前記基準絶対圧センサに気圧の検出を指示する1つの制御信号を無線通信により送信し、前記第1の絶対圧センサ、前記第2の絶対圧センサ、前記基準絶対圧センサから絶対圧の情報を無線通信により受信する通信部と、前記通信部が受信した前記第1の部屋の絶対圧の情報及び前記基準域の絶対圧の情報に基づいて、予め設定された第1の目標値に基づくフィードバック制御により前記第1の部屋の差圧を制御する第1の気圧制御装置と、前記通信部が受信した前記第2の部屋の絶対圧の情報及び前記基準域の絶対圧の情報に基づいて、予め設定された第2の目標値に基づくフィードバック制御により前記第2の部屋の差圧を制御する第2の気圧制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部屋の気圧を検出する気圧センサは、当該部屋に配置され、基準域の気圧である基準圧を検出する基準圧センサは、当該基準域に配置されるので、従来の中空管が必要でなく、気圧制御システムの施工費用を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る気圧制御システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る気圧制御システム100を、図面を参照して説明する。
【0016】
(気圧制御システム100の構成)
気圧制御システム100は、
図1に示すように、給気機構110と、排気機構120と、気圧センサ131~134と、基準圧センサ135と、主制御盤151と、コントローラ155A~155Dと、を備え、施設Fに設けられた4つの部屋R1~R4それぞれの気圧P1~P4を制御するように構成されている。
【0017】
施設Fとしては、例えば、製薬工場、食品製造工場、半導体集積回路などの電子機器の製造工場、再生医療設備が挙げられる。部屋R1~R4としては、例えば、クリーンルームが挙げられる。部屋R1~R4のうち、部屋R1と部屋R2とが隣り合っており、部屋R2と部屋R3とが隣り合っており、部屋R3と部屋R4とが隣り合っている。部屋R1~R4のうちの隣り合う部屋は、開閉可能なドアを介して繋がっているものとする。さらに、部屋R1~R4それぞれは、部屋R1~R4の外の領域である部屋外領域(施設Fの廊下、施設Fの他の部屋、施設Fの屋外など)とも開閉可能なドアそれぞれを介して繋がっているものとする。
【0018】
前記の部屋外領域は、気圧が制御されない領域であり、その気圧P5は、大気圧である。一方、部屋R1の気圧P1、部屋R2の気圧P2、部屋R3の気圧P3、及び、部屋R4の気圧P4は、気圧制御システム100により、部屋外領域の気圧P5(より具体的には部屋外領域のうちの基準域R5(詳細は後述)の気圧P5)よりも、高くなるように制御される。気圧P5は、前記のように大気圧であり、気圧P1~P4に対して基準となるので、基準圧ともいう。気圧P1~P4それぞれを気圧P5よりも高くすることで、例えば、部屋R1と部屋外領域との間のドアが開いたとしても、部屋外領域の空気が部屋R1に流れ込むことを防止する。部屋R1の気圧P1は、部屋R2の気圧P2よりも低く設定されている。これにより、部屋R1と部屋R2との間のドアが開いたとしても部屋R1の空気が部屋R2に流れ込むことを防止する。同様に、部屋R2の気圧P2は、部屋R3の気圧P3よりも低く設定されており、部屋R3の気圧P3は、部屋R4の気圧P4よりも低く設定されている。
【0019】
気圧制御システム100の給気機構110は、部屋R1~R4に当該部屋R1~R4の外の空気である外気を給気する。外気は、部屋R1~R4の外かつ前記施設F内の空気でもよいし、屋外(施設Fの外)の空気でもよい。給気機構110は、給気ファン111と、第1給気路113と、第2給気路115A~115Dと、定風量装置117A~117Dと、を備える。
【0020】
給気ファン111は、部屋R1~R4に外気を給気するためのファンである。第1給気路113は、空気の流路を形成しており、給気ファン111に接続されている。第2給気路115A~115Dは、一端が第1給気路113に接続されている。第2給気路115A~115Dそれぞれの他端は、部屋R1~R4それぞれに接続されている。第2給気路115A~115Dそれぞれは、空気の流路を形成している。定風量装置117A~117Dそれぞれは、第2給気路115A~115Dそれぞれの途中に設けられ、第2給気路115A~115Dそれぞれを流れる空気の流量を調整する。
【0021】
給気ファン111は、外気を第1給気路113に送り込む。送り込まれた空気は、第1給気路113を流れ、第2給気路115A~115Dそれぞれを介して部屋R1~R4それぞれに供給される。定風量装置117A~117Dそれぞれは、部屋R1~R4それぞれに供給される空気の流量(給気風量)が一定となるよう第2給気路115A~115Dそれぞれを流れる空気の流量を調整及び維持する。例えば、定風量装置117Aは、第2給気路115Aから部屋R1に供給される空気の流量を調整及び維持する。
【0022】
排気機構120は、部屋R1~R4それぞれの空気を排気する。排気機構120は、排気ファン121と、第1排気路123と、第2排気路125A~125Dと、気圧制御装置127A~127Dと、を備える。
【0023】
排気ファン121は、部屋R1~R4の空気を外部に排気するためのファンである。前記の外部は、例えば、部屋R1~R4の外かつ前記施設F内の領域、又は、屋外(施設Fの外)である。第1排気路123は、空気の流路を形成しており、排気ファン121に接続されている。第2排気路125A~125Dは、一端が第1排気路123に接続されている。第2排気路125A~125Dそれぞれの他端は、部屋R1~R4それぞれに接続されている。気圧制御装置127A~127Dそれぞれは、室圧制御ダンパ(PCD)等からなる。気圧制御装置127A~127Dそれぞれは、第2排気路125A~125Dそれぞれの途中に設けられ、第2排気路125A~125Dを流れる空気の流量を調整する。
【0024】
排気ファン121の稼働により、第1排気路123及び第2排気路125A~125Dを介して、部屋R1~R4それぞれの空気が部屋R1~R4の外部に排気される。気圧制御装置127A~127Dそれぞれは、コントローラ155A~155Dそれぞれによる制御のもとで動作し、部屋R1~R4それぞれから外部に排気される空気の量を制御する。この制御により、部屋R1~R4それぞれの気圧P1~P4が個別に制御される。例えば、気圧制御装置127Aは、コントローラ155Aの制御のもとで、部屋R1から第2排気路125A及び第1排気路123を介して排気される空気の量を制御することで、部屋R1の気圧P1を制御する。
【0025】
気圧センサ131~134それぞれは、部屋R1~R4それぞれに配置されている。気圧センサ131~134それぞれは、部屋R1の気圧P1~部屋R4の気圧P4それぞれを検出する。気圧センサ131は、従来の、検出対象の気圧P1と当該気圧P1以外の気圧(大気圧)との差圧を検出する差圧センサではなく、検出対象の気圧P1以外の気圧(例えば、気圧P5)が当該気圧センサ131の外部から供給されることを必要とせずに、当該気圧P1を検出可能な非差圧センサである。気圧センサ132~134それぞれも、気圧センサ131と同じ非差圧センサである。非差圧センサとしては、例えば、絶対圧センサ(絶対圧を検出するセンサ)、シールドゲージ圧センサ(大気圧等の所定の気圧が背圧として封入されたセンサ)が挙げられる。気圧センサ131~134それぞれは、主制御盤151と通信可能である。
【0026】
基準圧センサ135は、部屋外領域の気圧P5を基準圧として検出する。基準圧センサ135は、部屋外領域内に配置されている。部屋外領域内のうち基準圧センサ135が配置される領域を基準域R5ともいう。基準域R5は、風等の影響を受けて、実際の部屋外領域の気圧P5とは異なる気圧が基準圧センサ135により誤検出されてしまわないよう、風等の動圧の影響を受けにくく、気圧P5を精度良く検出できる領域であることが望ましい。このような基準域R5は、例えば、施設Fの屋内メンテナンススペースである。当該屋内メンテナンススペースとしては、例えば、ISS(Interstitial Space System)内の空間等の天井裏のスペースが挙げられる。基準域R5は、前記屋内メンテナンススペース又はその他の場所に設置された、風等の動圧の影響は受けないかつ密閉度が低い基準圧タンク内であってもよい。基準圧センサ135は、気圧センサ131~134と同じ、非差圧センサ(絶対圧センサ、シールドゲージ圧センサなど)である。基準圧センサ135は、主制御盤151と通信可能である。
【0027】
主制御盤151は、各種コンピュータを含んで構成され、気圧制御システム100全体を制御する。主制御盤151は、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135に加えてコントローラ155A~155Dとも通信可能である。主制御盤151は、
図2に示すように、記憶部151Aと、処理実行部151Bと、操作部151Cと、表示部151Dと、通信部151Eと、を備える。
【0028】
記憶部151Aは、処理実行部151Bにより実行されるプログラム、処理実行部151Bが各種処理(特に、部屋R1~R4の気圧を制御する処理)を行うときに使用されるデータなどが記憶されている。処理実行部151Bは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサからなり、記憶部151Aに記憶されているプログラムを実行することで、主制御盤151の後述の動作を実現する処理を実行する。
【0029】
操作部151Cは、操作スイッチ、テンキー等からなり、ユーザによる操作を受け付ける。表示部151Dは、液晶表示装置等からなり、各種情報を表示する。操作部151Cと表示部151Dとは、タッチパネルにより構成されてもよい。通信部151Eは、処理実行部151B(主制御盤151)が、気圧センサ131~134、基準圧センサ135、及び、コントローラ155A~155Dと通信するときに使用される。当該通信は、ここでは、無線とする。通信部151Eは、アンテナ、通信モジュール等を含んで構成されている。
【0030】
詳細は後述するが、主制御盤151(処理実行部151B)は、通信部151Eを介して気圧センサ131~134及び基準圧センサ135から部屋R1~R4及び基準域R5の気圧P1~P5を取得する。そして、主制御盤151は、取得した気圧P1~P5に基づいて部屋R1~R4の室圧D1~D4を特定する。部屋R1の室圧D1は、気圧P1と気圧P5(基準圧)との差圧である。部屋R2の室圧D2は、気圧P2と気圧P5との差圧である。部屋R3の室圧D3は、気圧P3と気圧P5との差圧である。部屋R4の室圧D4は、気圧P4と気圧P5との差圧である。主制御盤151は、特定した室圧D1~D4それぞれを、コントローラ155A~155Dそれぞれに供給する。気圧P1~P5の取得から室圧D1~D4の供給までの処理は定期的に実行される。
【0031】
コントローラ155A~155Dそれぞれは、気圧制御装置127A~127Dそれぞれを制御する。コントローラ155A~155Dそれぞれは、PLC(Programmable Logic Controller)等の各種コンピュータからなる。コントローラ155A~155Dそれぞれには、室圧D1~D4それぞれの目標値N1~N4が設定されている。目標値N1~N4それぞれは、正の値であり、かつ、N4>N3>N2>N1の大小関係となる値、つまり、気圧P1~P5の各値が、P4>P3>P2>P1>P5となる値に設定されている。コントローラ155A~155Dそれぞれには、主制御盤151から室圧D1~D4それぞれが定期的に供給される。コントローラ155A~155Dそれぞれは、定期的に供給される室圧D1~D4(フィードバック値)それぞれと目標値N1~N4それぞれとに基づいて、PID(Proportional-Integral-Differential)制御等のフィードバック制御を行い、部屋R1~R4それぞれの室圧D1~D4(その後の室圧D1~D4)それぞれが目標値N1~N4それぞれとなるよう、気圧制御装置127A~127Dそれぞれ(換言すると第2排気路125A~125Dそれぞれを通る空気の流量それぞれ)を制御する。
【0032】
(気圧制御システム100の動作)
(動作1)
主制御盤151及びコントローラ155A~155D等の動作、つまり、気圧制御システム100の動作を、
図3を参照して説明する。主制御盤151は、処理実行部151Bが記憶部151Aに記憶されているプログラムを実行することで、下記の動作を行う。また、主制御盤151による通信は、処理実行部151Bが通信部151Eを介して行う。
【0033】
主制御盤151は、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれと定期的に通信し、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれに気圧P1~P5それぞれの検出を指示する制御信号S1~S5それぞれを送信する。主制御盤151は、気圧P1~P5の各検出タイミングが同じ(気圧制御の技術分野において実質的に同じといえる場合を含む)となるよう、制御信号S1~S5を一度に送信する(例えば、1回のタイマ割り込み内にて送信する)。
【0034】
気圧センサ131は、制御信号S1の受信をトリガとして、気圧P1を検出し、検出した気圧P1を示す信号を主制御盤151に返信する。気圧センサ132は、制御信号S2の受信をトリガとして、気圧P2を検出し、検出した気圧P2を示す信号を主制御盤151に返信する。気圧センサ133は、制御信号S3の受信をトリガとして、気圧P3を検出し、検出した気圧P3を示す信号を主制御盤151に返信する。気圧センサ134は、制御信号S4の受信をトリガとして、気圧P4を検出し、検出した気圧P4を示す信号を主制御盤151に返信する。基準圧センサ135は、制御信号S5の受信をトリガとして、気圧P5を検出し、検出した気圧P5を示す信号を主制御盤151に返信する。
【0035】
気圧センサ131~134及び基準圧センサ135は、前記制御信号S1~S5に依存しないで気圧を例えば連続的に検出し、前記制御信号S1~S5が供給されたことをトリガとして、検出した最新の気圧を主制御盤151に返信するようにしてもよい。
【0036】
主制御盤151は、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれからの気圧P1~P5それぞれを示す各信号を受信すると、当該気圧P1~P5に基づいて、室圧D1~D4を特定する。例えば、主制御盤151は、気圧P1の値から気圧P5の値を減じて室圧D1を算出し、気圧P2の値から気圧P5の値を減じて室圧D2を算出する。主制御盤151は、気圧P3の値から気圧P5の値を減じて室圧D3を算出し、気圧P4の値から気圧P5の値を減じて室圧D4を算出する。室圧D1~D4は、記憶部151Aに格納されたテーブルを参照して特定されてもよい。当該テーブルとしては、例えば、気圧P1~P4が取り得る第1の値と気圧P5が取り得る第2の値との組合せそれぞれと、当該組合せそれぞれに対応した差圧それぞれであって、対応する組合せの第1の値から第2の値を減じた差圧と、を対応付けたテーブルが挙げられる。
【0037】
主制御盤151は、算出した室圧D1~D4それぞれを示す信号を、コントローラ155A~155Dそれぞれに送信する。
【0038】
コントローラ155Aは、室圧D1の信号を受信すると、当該室圧D1と、当該コントローラ155Aに設定されている目標値と、に基づくフィードバック制御により、部屋P1の室圧D1が目標値となるように、気圧制御装置127A(換言すると第2排気路125Aを通る空気の流量)を制御する。コントローラ155Bは、室圧D2の信号を受信すると、当該室圧D2と、当該コントローラ155Bに設定されている目標値と、に基づくフィードバック制御により、部屋P2の室圧D2が目標値となるように、気圧制御装置127B(換言すると第2排気路125Bを通る空気の流量)を制御する。
【0039】
コントローラ155Cは、主制御盤151から供給される室圧D3と、当該コントローラ155Cに設定されている目標値と、に基づくフィードバック制御により、部屋P3の室圧D3が目標値となるように、気圧制御装置127C(換言すると第2排気路125Cを通る空気の流量)を制御する。コントローラ155Dは、主制御盤151から供給される室圧D4と、当該コントローラ155Dに設定されている目標値と、に基づくPID制御等のフィードバック制御により、部屋P4の室圧D4が目標値となるように、気圧制御装置127D(換言すると第2排気路125Dを通る空気の流量)を制御する。
【0040】
上記のようなコントローラ155A~155Dによる室圧D1~D4に基づく制御により、部屋R1~R4の気圧P1~P4及び室圧D1~D4が所望の気圧ないし差圧となり、気圧の高低の逆転が防止される。
【0041】
(動作2)
上記のように、主制御盤151は、1組の信号S1~S5の定期的な送信により、気圧P1~P5及び室圧D1~D4を定期的に順次得る。主制御盤151は、1組の信号S1~S5の送信ごとに順次得られる気圧P1~P5及び室圧D1~D4(気圧P1~P5と室圧D1~D4とのいずれか一方であってもよい。以下同じ)それぞれを示すデータの組を時系列順に当該組ごとに記憶部151Aに順次格納する。このとき、主制御盤151は、1組における気圧P1~P5及び室圧D1~D4それぞれを示す各データを互いに対応付けて記憶部151Aに格納する。
【0042】
主制御盤151は、記憶部151Aに格納した気圧P1~P5及び室圧D1~D4のデータに基づいて、気圧P1~P5及び室圧D1~D4の時系列に沿った推移を表示部151Dに表示する。当該表示は、例えば、ユーザによる操作部151Cへの操作(例えば、気圧P1~P5及び室圧D1~D4の推移の表示を要求する操作)を契機として行われる。
【0043】
主制御盤151は、1組の気圧P1~P5及び室圧D1~D4を記憶部151Aに格納するときに、これら情報を受信した又は記憶部151Aに格納したタイミングの時刻の情報(例えば、タイムスタンプ)も格納する。主制御盤151は、気圧P1~P5及び室圧D1~D4の推移を表示する際、当該時刻も表示部151Dに表示するとよい。主制御盤151は、例えば、時刻を横軸にし、気圧及び室圧を縦軸としたグラフにより、気圧P1~P5及び室圧D1~D4の推移を表示する。
【0044】
主制御盤151は、気圧P1~P5又は室圧D1~D4に基づき、部屋R1の気圧と部屋R2の気圧との差圧、部屋R2の気圧と部屋R3の気圧との差圧、及び、部屋R3の気圧と部屋R4の気圧との差圧、を表示部151Dに表示してもよい。
【0045】
気圧センサ131は、検出した気圧P1を示す信号とともに、当該気圧P1の検出時刻の情報(例えば、タイムスタンプ)を示す信号を送信してもよい。同様に、気圧センサ132~134及び基準圧センサ135それぞれは、検出した気圧P2~P5それぞれを示す信号とともに、当該気圧P2~P5それぞれの検出時刻の情報(例えば、タイムスタンプ)を示す信号を送信してもよい。主制御盤151は、当該検出時刻の情報も、気圧P1~P5に対応付けて格納してもよい。この場合、主制御盤151は、気圧P1~P5及び室圧D1~D4の推移を表示する際、当該検出時刻も表示部151Dに表示するとよい。主制御盤151は、例えば、検出時刻を横軸にし、気圧及び室圧を縦軸としたグラフにより、気圧P1~P5及び室圧D1~D4の推移を表示する。
【0046】
(効果等)
従来の気圧制御システムにより部屋R1~R4の各気圧P1~P4を制御する場合、コントローラ155A~155Dそれぞれに差圧センサが設けられ、各差圧センサに、気圧P1~P4それぞれが4つの第1の中空管それぞれにより導かれ、基準圧が4つの第2の中空管それぞれにより導かれる。このような場合、外気温などの影響により第1の中空管又は第2の中空管にねじれ又は曲げが生じるとそれにより差圧の検出誤差が大きくなってしまう不都合が生じ得る。このようなねじれ又は曲げを生じないように第1の中空管又は第2の中空管を配置しようとすると、第1の中空管又は第2の中空管の配置に特別な注意及び工夫が必要となりその費用が増大する。この実施の形態では、気圧センサ131~134それぞれを部屋R1~R4それぞれに配置し、基準圧センサ135を基準域R5に配置したので、気圧P1~P5を従来の気圧制御装置で使用される中空管を用いずに検出できる。従って、気圧制御システムの施工費用を、中空管が使用される場合よりも、少なくすることができる。
【0047】
従来の気圧制御システムにより部屋R1~R4の各気圧P1~P4を制御する場合、上記のように第1の中空管及び第2の中空管が使用されるので、差圧センサが、部屋R1~R4及び基準域R5から離れれば離れるほど、気圧の変動が差圧センサに伝達されるまでに時間差が生じ(気圧の変動の伝搬速度が音速のため)、差圧の検出に遅延が生じる不都合が生じ得る。上記実施の形態では、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれにより、気圧P1~P5を、中空管を用いることなく検出し、かつ、検出された気圧P1~P5は、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれから無線通信により主制御部151に供給される。そして、主制御部151では、気圧P1~P5に基づく計算により室圧D1~D4が特定される。これにより、気圧P1~P5が検出されてから時間がかからずに室圧D1~D4が特定されるので、前記遅延が軽減される。
【0048】
上記実施の形態の、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135による気圧P1~P5の検出、主制御盤151と気圧センサ131~134及び基準圧センサ135との無線通信、主制御盤151とコントローラ155A~155Dとの無線通信により、気圧P1~P5の検出指示のタイミングから、検出された気圧P1~P5に基づく室圧D1~D4の特定ないしコントローラ155A~155Dへの供給のタイムラグを極力無くすことができ、精度の良いリアルタイムでの室圧D1~D4の特定、及び、精度の良いフィードバック制御等が可能となる。
【0049】
さらに、従来の気圧制御システムでは、第1中空管の長さと第2中空管の長さとが異なる場合(差圧センサから部屋までの距離と基準域までの距離とを同じにすることが困難なので、略全ての場合で両者の長さは異なる)、気圧の伝達時間が異なってしまう。この場合、検出する差圧が同じタイミングにおける気圧の差とはいえないので、当該差圧は正確なものとはならない不都合が生じる。上記実施の形態では、主制御盤151が、気圧P1~P5の検出タイミングが同じとなるよう制御信号S1~S5を供給することで気圧センサ131~134及び基準圧センサ135を制御する。従って、精度の良い差圧(つまり室圧D1~D4)が得られる。
【0050】
従来の気圧制御システムの差圧センサを、上記実施の形態のように、気圧センサ及び基準圧センサに変更する場合(ただし、従来は差圧センサを使用することが技術常識であったので、当該変更は容易なものではない)、気圧センサ131及び基準圧センサ135により検出される気圧P1及び気圧P5をコントローラ155Aに供給し、コントローラ155Aにて室圧D1を計算することになる。同様に、気圧センサ132及び基準圧センサ135により検出される気圧P2及び気圧P5をコントローラ155Bに供給し、コントローラ155Bにて室圧D2を計算することになる。気圧センサ133(又は134)及び基準圧センサ135により検出される気圧P3(又はP4)及び気圧P5をコントローラ155C(又は155D)に供給し、コントローラ155C(又は155D)にて室圧D3(又はD4)を計算することになる。このような場合、基準圧センサ135は、コントローラ155A~155Dそれぞれに基準圧を供給しなければならず、処理負担が大きい。上記実施の形態では、コントローラ155A~155Dの上位の主制御盤151に基準圧センサ135から基準圧を供給するので、処理負担が少なくなっている。また、主制御盤151にて、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135により検出した気圧P1~P5及び室圧D1~D4を記憶及び管理できる。
【0051】
無線通信及び非差圧センサの採用により、有線通信を採用する場合及び差圧センサを採用する場合よりも、コスト的に有利となる。通信線及び前記中空管が必要なくなるからである。なお、上記実施の形態における無線通信を適宜有線通信に変更してもよい。有線通信の場合でも、従来の気圧制御システムにおける差圧の検出の遅延等を軽減できるが、信号を伝送する配線の浮遊容量等により信号の遅延が生じ得るので、このような遅延が生じない無線通信の方が有線通信よりも有利である。
【0052】
気圧センサ131~134及び基準圧センサ135を絶対圧センサとすることで、部屋R1~R4及び基準域R5の絶対圧を把握でき、各絶対圧に基づき室圧D1~D4を特定できる。気圧センサ131~134及び基準圧センサ135は、シールドゲージ圧センサよりも絶対圧センサであることが好ましい。気圧センサ131~134及び基準圧センサ135がシールドゲージ圧センサである場合、正確な室圧D1~D4の特定には、シールドゲージ圧センサに封入された大気圧の値が同じである必要がある。しかし、当該大気圧は、当該シールドゲージ圧センサの配置箇所の温度などの周囲の環境によって変動し得るので、例えば部屋R1~R4及び基準域R5それぞれの温度が異なる場合に、正確な室圧D1~D4の特定に影響が生じ得る。絶対圧センサでは、大気圧の封入がなく、このような不都合が生じない。従って、気圧センサ131~134及び基準圧センサ135は、絶対圧センサであることが好ましい。
【0053】
上記構成によれば、既存の給気機構及び排気機構を利用して、気圧制御システム100を構築できるので、気圧制御システム100の導入のコストを抑えることができる。
【0054】
気圧P1~P5又は室圧D1~D4の推移を表示することで、これらのモニタリングが可能となる。さらに、上記のような従来の気圧制御システムで生じ得る遅延の不都合は、気圧制御システム100では軽減されるので、主制御盤151が気圧P1~P5及び室圧D1~D4等をリアルタイムで表示部151Dに表示することもでき、リアルタイムでの気圧P1~P5又は室圧D1~D4のモニタリングも可能となる。
【0055】
(変形例)
本願発明は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態に種々の変形を施してもよい。
【0056】
(変形例1)
部屋R1~R4の気圧P1~P4は、基準圧である気圧P5よりも低く設定されてもよい。例えば、施設Fは、ウィルスを保管する管理施設などであってもよく、この場合、部屋R1~R4は、ウィルスを保管する部屋として使用される。部屋R1~R4内それぞれの気圧P1~P4を、基準域R5の気圧P5よりも低くし、気圧P1~P4の大小をP1>P2>P3>P4とすることで、部屋R1~R4それぞれの空気(ウィルスを含む空気)が他に漏れ出すこと(バイオハザードなど)を防止できる。
【0057】
(変形例2)
主制御盤151は、制御信号S1~S5の代わりに、気圧の検出を指示する1つの制御信号を気圧センサ131~134及び基準圧センサ135全てに送信してもよい。気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれは、当該制御信号をトリガとして、気圧P1~P5それぞれを検出して主制御盤151に供給してもよい。これにより、気圧P1~P5それぞれが同時に検出される。
【0058】
(変形例3)
主制御盤151に目標値N1~N4を設定し、主制御盤151が、室圧D1~D4それぞれと目標値N1~N4それぞれとに基づくフィードバック制御を行ってもよい。この場合、主制御盤151が、コントローラ155A~155Dを介して気圧制御装置127A~127Dの動作を制御してもよいし、コントローラ155A~155Dを介さず直接気圧制御装置127A~127Dを制御してもよい。これらにより、主制御盤151により、室圧D1~D4を一括で制御できる。また、主制御盤151が、直接、気圧制御装置127A~127Dを制御することで、コントローラ155A~155Dを削減できる。
【0059】
(変形例4)
上記のように、気圧センサ131及び基準圧センサ135により検出される気圧P1及び気圧P5をコントローラ155Aに供給し、コントローラ155Aにて室圧D1を特定し、特定した室圧D1に基づいて、気圧制御装置127Aを制御してもよい(他の気圧センサ132~134、コントローラ155B~155Dについても同様)。
【0060】
(変形例5)
基準圧センサ135から、気圧センサ131~134それぞれに対して気圧の検出を指示する制御信号を供給し、気圧センサ131~134それぞれは、当該制御信号に基づいて、気圧P1~P4それぞれを検出し、検出した気圧P1~P4を基準圧センサ135に供給するようにしてもよい。この場合、基準圧センサ135が、室圧D1~D4それぞれを特定してコントローラ155A~155Dそれぞれに供給する。
【0061】
(変形例6)
主制御盤151と気圧センサ131~134及び基準圧センサ135それぞれとの間の各無線通信、及び、主制御盤151とコントローラ155A~155Dそれぞれとの間の各無線通信は、同じ情報(気圧P1~P5、室圧D1~D4等の各種情報)を複数種類の伝送媒体を利用して伝送する通信であるとよい。つまり、1回の無線通信において、複数種類の伝送媒体を利用するとよい。例えば、伝送媒体として、電波を用いる場合、気圧センサ131等は、第1の電波を搬送波として気圧P1を示す信号を送信するとともに、当該第1の電波とは異なる第2の電波を搬送波として前記気圧P1を示す信号を送信する。このように、複数種類の伝送媒体を利用することで、電波干渉又は定在波等による悪影響、又は、データ欠損等の不都合を防止できる。なお、無線通信状況が良好であれば、複数種類の伝送媒体を利用する必要がないので、上記各無線通信のうちの少なくとも1つについて、1種類のみの伝送媒体を利用してもよい。
【0062】
(変形例7)
気圧センサ131~134、基準圧センサ135のうちの一部のセンサを絶対圧センサとする一方、残りのセンサをシールドゲージ圧センサとしてもよい。この場合、主制御盤151等は、絶対圧センサが検出した気圧について、当該シールドゲージ圧センサに封入された背圧を減じ、室圧を計算するとよい。又は、主制御盤151等は、シールドゲージ圧センサが検出した気圧について、当該シールドゲージ圧センサに封入された背圧を足し、室圧を計算するとよい。
【0063】
(変形例8)
気圧センサ131~134及び又は基準圧センサ135に、気温、及び、湿度等の気圧以外の1種類以上の物理量を検出するセンサ機能を付加し、気圧P1~P4に加え、前記物理量を検出して、主制御盤151に供給してもよい。主制御盤151は、供給された物理量に基づき部屋R1~R4それぞれに設けられた空調設備を制御してもよいし、これら物理量を表示部151Dに表示してもよい。
【0064】
(変形例9)
気圧を制御する対象の部屋の数は、任意であり、1つであってもよいし、複数であってもよい。なお、上記「効果等」で説明した不都合は、制御対象の部屋の数が多くなればなるほど顕著となるが、上記気圧制御システム100は、制御対象の部屋の数が多くなっても、上記不都合を解消できる。
【符号の説明】
【0065】
100 気圧制御システム
110 給気機構
111 給気ファン
113 第1給気路
115A~115D 第2給気路
117A~117D 定風量装置
120 排気機構
121 排気ファン
123 第1排気路
125A~125D 第2排気路
127A~127D 気圧制御装置
131~134 気圧センサ
135 基準圧センサ
151 主制御盤
155A~155D コントローラ
F 施設
P1~P5 気圧
R1~R4 部屋
R5 基準域
D1~D4 室圧
S1~S5 制御信号