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特許7514074コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルを含むフィルタを有するモータードライブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルを含むフィルタを有するモータードライブ
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/12 20060101AFI20240703BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240703BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240703BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H02M1/12
H02M7/48 Z
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F37/00 C
H01F37/00 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227474
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2020103029
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】18215512
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504103641
【氏名又は名称】シャフナー・エーエムファウ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・セシル・タッカー
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・ダレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ヤリ・タパリ・ヘイニネン
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-318031(JP,A)
【文献】特開2013-225988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0261939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/12
H02M 7/48
H01F 17/04
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源側入力部と、モーター側入力部と、この電源側入力部とこのモーター側入力部との間の、電源とモーターとの間のモータードライブに電流を通電するための導体と、この導体中の接続点とをそれぞれの相ごとに有する三相ディファレンシャルモードフィルタにおいて、
前記フィルタは、星形結線及び/又はデルタ結線で3つの前記相の前記導体の前記接続点に接続された3つのコンデンサを有し、
前記フィルタは、前記電源側入力部と前記接続点との間の第1三相ディファレンシャルモードリアクトルと、前記モーター側入力部と前記接続点との間の第2三相ディファレンシャルモードリアクトルと、星形結線及び/又はデルタ結線によって前記接続点に接続された第3三相ディファレンシャルモードリアクトルとのうちの少なくとも2つの三相ディファレンシャルモードリアクトルを有し、
前記少なくとも2つの三相ディファレンシャルモードリアクトルのうちの1つの三相ディファレンシャルモードリアクトルが、以下の構成要素である:
第1コア要素(2.1)と、
第2コア要素(2.2)と、
第3コア要素(2.3)と、
第1相の電流を通電し、この第1相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1コイル(1.1)と、 第2相の電流を通電し、この第2相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2コイル(1.2)と、 第3相の電流を通電し、この第3相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3コイル(1.3)と、から成る、コモンモードを相殺する三相ディファレンシャルモードリアクトルであり、
前記第1相中と前記第2相中と前記第3相中とのコモンモード電流が、1つの補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)中に誘導されるように、前記コモンモードを相殺する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられた前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)を有し、
前記第1相のディファレンシャルモード成分と前記第2相のディファレンシャルモード成分と前記第3相のディファレンシャルモード成分とが、前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)中で互いに相殺するように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられている当該のフィルタ。
【請求項2】
前記第1コイル(1.1)に通電するコモンモード電流が、第1コモンモード磁束を第1コア要素(2.1)中に生成し、
前記第2コイル(1.2)に通電するコモンモード電流が、第2コモンモード磁束を第2コア要素(2.2)中に生成し、
前記第3コイル(1.3)に通電するコモンモード電流が、第3コモンモード磁束を第3コア要素(2.3)中に生成し、
前記第1コモンモード磁束と前記第2コモンモード磁束と前記第3コモンモード磁束とが、前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)内で加算されるように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられている請求項に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)の第1端部が、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)の第2端部に直接に又はインピーダンスを介して接続されている請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記補助コイル(6)が、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)とをこのループ又はコイル内で包囲する請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記補助コイルは、前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1サブ補助コイル(6.1)と、前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2サブ補助コイル(6.2)と、前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3サブ補助コイル(6.3)とから成り、
前記補助コイルの第1端部が、前記第1サブ補助コイル(6.1)の第1端部に相当し、
前記第1サブ補助コイル(6.1)の第2端部が、前記第2サブ補助コイル(6.2)の第1端部に接続されていて、
前記第2サブ補助コイル(6.2)の第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第1端部に接続されていて、
前記補助コイルの第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第2端部に相当する請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1コア要素(2.1)は、三相コアの第1巻線脚部であり、前記第2コア要素(2.2)は、前記三相コアの第2巻線脚部であり、前記第3コア要素(2.3)は、前記三相コアの第3巻線脚部であり、
前記三相コアは、前記第1巻線脚部と前記第2巻線脚部と前記第3巻線脚部とに結合している少なくとも1つのヨークから成る請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記第1コア要素(2.1)、前記第2コア要素(2.2)及び前記第3コア要素(2.3)は、別々の3つのコアである請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項8】
別々の3つのコアのそれぞれが、リング形を成す請求項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記コモンモードを相殺する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、前記フィルタの最も大きいインダクタンスを有する前記三相ディファレンシャルモードリアクトルである請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項10】
第1相、第2相及び第3相中のコモンモード電流が、1キロヘルツより上の周波数範囲内で補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)によって減衰されるように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、第1コア要素(2.1)と第2コア要素(2.2)と第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられている請求項1~のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルタと電源電流をモーター電流に変換するためのAC-ACコンバータとから成るモーター制御部。
【請求項12】
前記フィルタは、電源側とAC-ACコンバータとの間に配置されている請求項11に記載のモーター制御部。
【請求項13】
第1相(L1)と第2相(L2)と第3相(L3)とを有する三相ディファレンシャルモードリアクトルであって、このリアクトルは、
第1コア要素(2.1)と、
第2コア要素(2.2)と、
第3コア要素(2.3)と、
第1相の電流を通電し、この第1相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1コイル(1.1)と、 第2相の電流を通電し、この第2相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2コイル(1.2)と、 第3相の電流を通電し、この第3相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3コイル(1.3)と、から成る当該リアクトルにおいて、
前記第1相中と前記第2相中と前記第3相中とのコモンモード電流が、1つの補助コイル中に誘導されるように、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられた前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)が設けられていて、
前記第1相のディファレンシャルモード成分と前記第2相のディファレンシャルモード成分と前記第3相のディファレンシャルモード成分とが、前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)中で互いに相殺するように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられていることを特徴とするリアクトル。
【請求項14】
請求項13に記載のリアクトルにおいて、
前記補助コイル(6)が、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)とをこのループ又はコイル内で包囲するように、この補助コイル(6)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)とに巻き付けられた帯コイル(6)から成ること、又は
前記補助コイル(6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1サブ補助コイル(6.1)と、前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2サブ補助コイル(6.2)と、前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3サブ補助コイル(6.3)とから成り、前記補助コイルの第1端部が、前記第1サブ補助コイル(6.1)の第1端部に相当し、前記第1サブ補助コイル(6.1)の第2端部が、前記第2サブ補助コイル(6.2)の第1端部に接続されていて、前記第2サブ補助コイル(6.2)の第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第1端部に接続されていて、前記補助コイルの第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第2端部に相当する当該リアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンモードフィルタリングとディファレンシャルモードフィルタリングとを結合したモータードライブ用のフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
三相モータードライブシステムは、パワートレインの全体を通じて電源からモーターに循環するコモンモードノイズ電流を本質的に生成する。一般に、当該コモンモードノイズ電流は、基本周期と50kHzの高周波リンギングとを有する。当該コモンモードノイズ電流は、リアクトルと導体とに熱負荷を印加し、したがってこれらの寿命を減少させる。また、このことは、当該コモンモード電流に耐えるために必要以上に大きい寸法のリアクトルを形成することを要求する。また、当該コモンモードノイズ電流は、モーターの絶縁を損なわせ、モーターを故障させる。
【0003】
共振リンギングを減少させるため、大型のRC及びRL減衰技術が使用され得る。当該減衰技術は、特に高出力の用途に対して追加のスペースを必要とし、コストを増大させ、システム全体の効率を減少させる。
【0004】
RC減衰器は、大地と例えばDCリンク、モーターケーブル又はモーターとの間の抵抗とコンデンサとの直列接続である。しかしながら、このことは、複雑で、高価で且つ大型である丈夫な高電圧コンデンサを必要とする。さらに、追加の接地コンデンサが、望まない別の副作用を有し得る。
【0005】
独国特許実用新案第29506951号明細書は、コモンモード電流をフィルタリングするために当該電流を相殺するコモンモードチョークを開示する。この解決手段も、大型であり、大きくて重くて高価な追加のチョークを必要とする。
【0006】
独国特許出願公開第102011086112号明細書は、1つの実施の形態において二相ディファレンシャルモードリアクトルを開示する。当該リアクトルは、2つの巻線脚部を有する1つのコアと、1つの抵抗を介して閉じられた補助巻線を有する第3脚部とから成る。当該補助巻線中に当該抵抗が、コモンモードノイズ電流を減衰し得るように、当該2つの相のコモンモード磁束が、当該第3脚部中で加算されるように、この第3脚部は配置されている。しかしながら、この解決手段には、特に三相システムに適用される場合に、ディファレンシャルモードリアクトルのコアの第3脚部が、当該リアクトルの寸法を著しく増大させるという欠点がある。
【0007】
モータードライブ内のコモンモードノイズ電流を減少させるための現時点の全ての解決手段は、大型で扱いにくい。
【0008】
米国第3863109号明細書は、他のシステムの構成要素のさらなる損傷を回避するためにリアクトル中の短絡を直接に検出するための解決手段を開示する。したがって、当該リアクトルは、当該リアクトル中のこのような短絡を検出するために対称な磁束分布からの偏差を検出する検出コイルを有する。この検出コイルは、リレーに接続されている。当該リアクトルの磁束分布が、当該リアクトル中の短絡に起因して非対称になるときに、このリレーは開く。1つの実施の形態が、三相リアクトル用のこのような検出コイルを開示する。しかしながら、当該検出コイルは、システムのコモンモードノイズ電流を検出せず、特にこのシステムのコモンモードノイズ電流を減少させない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許実用新案第29506951号明細書
【文献】独国特許出願公開第102011086112号明細書
【文献】米国第3863109号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、モータードライブ内のコモンモードノイズ電流を減少させるために簡単で軽量で且つ小型の解決手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項に記載のモーター制御部、三相ディファレンシャルモードフィルタ及び三相ディファレンシャルモードリアクトルによって解決される。
【0012】
1つの補助コイルを三相ディファレンシャルモードリアクトルに追加するだけで、当該システムのコモンモード電流が著しく減少される。当該補助コイルは、三相ディファレンシャルモードリアクトルコイルのために必要なコア要素の周りに既に巻き付けられているので、この補助コイルは、追加のスペースをほとんど必要としない。特別なコモンモードコア脚部のような追加のコア要素は不要である。したがって、リアクトル、フィルタ及び/又はモーター制御部の寸法及び/又は重量を増大させることなしに、コモンモード電流が著しく減少され得る。
【0013】
従属請求項は、本発明のさらなる実施の形態に関する。
【0014】
1つの実施の形態では、補助コイルは、フィルタ又はモーター制御部の最も大きいインダクタンスを有するリアクトルに配置されている。コモンモード電流は、システムの最も大きいインダクタンスによって著しく影響を及ぼされる。当該補助コイルを当該最も大きいインダクタンスに追加することによって、コモンモード電流が、最も効率的に減少され得る。このコイルをその他のより小さいインダクタンスに含めることも必要でない(が、当然に、同様に当該その他のより小さいインダクタンスに含められてもよい)。
【0015】
1つの実施の形態では、補助コイルは、コンバータに向かう接続点側の電力線中のフィルタのリアクトルに配置されている。好ましくは、このリアクトルも、モーターと電源との間のフィルタ及び/又は電力線の最も大きいリアクトルである。
【0016】
1つの実施の形態では、補助コイルは短絡している。その結果、この補助コイル中に誘導されたコモンモード電流が、この補助コイル中で循環し、コモンモード逆磁束をディファレンシャルモードリアクトルの3つの巻線コア要素中に生成する。このコモンモード逆磁束は、コモンモード逆電流を3つのコイル中にそれぞれ生成する。システムのコモンモード電流が、このコモンモード逆電流だけによって著しく減少される。特に、コモンモード電流を減衰するための抵抗(又は他のインピーダンス素子)が、補助コイルにおいて必要でない。さらに、このことは、リアクトル中のサーマルホットスポットを回避する。
【0017】
1つの実施の形態では、補助コイルは、インダクタンスを介して短絡されている。このことは、コモンモードノイズ電流の減衰効果を増大させることを可能にする。当該インピーダンスは、好ましくはオーミック抵抗である。しかしながら、当該インピーダンスは、コンデンサ又はリアクトル又はこれらの組み合わせのような複素インピーダンスでもよい。当該インピーダンス又は抵抗は、好ましくはディスクリート素子であるが、寄生インピーダンス又は補助コイルの抵抗でもよい。
【0018】
1つの実施の形態では、1kHzよりも上のコモンモードノイズ電流が減衰されるように、補助コイルは、第1コア要素と第2コア要素と第3コア要素との周りに巻き付かれている。
【0019】
本発明は、例示され且つ図示された1つの実施の形態を説明することによってより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】モータードライブシステムの実施の形態を示す。
図2】モータードライブシステムのモーター制御用のフィルタの実施の形態を示す。
図3】ディファレンシャルモードリアクトル中のコモンモード減衰を呈しないコモンモード電流の等価回路を示す。
図4】ディファレンシャルモードリアクトル中のコモンモード減衰を呈するコモンモード電流の等価回路を示す。
図5図6に示された側面V-Vから見たコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第1の実施の形態を示す。
図6図5に示された側面VI-VIから見たコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第1の実施の形態を示す。
図7図8に示された側面VII-VIIから見たコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第2の実施の形態を示す。
図8図7に示された側面VIII-VIIIから見たコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第2の実施の形態を示す。
図9】側面から見たコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第3の実施の形態を示す。
図10図9に示された断面X-Xに沿ったコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第3の実施の形態を示す。
図11】三相ディファレンシャルモードリアクトルがあるときのコモンモード減衰を呈するコモンモードノイズを示す。
図12】三相ディファレンシャルモードリアクトルがないときのコモンモード減衰を呈するコモンモードノイズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明によるモータードライブシステムを示す。このモータードライブシステムは、電源G、モーター制御部及びモーターMを有する。
【0022】
電源Gは、任意の三相交流電流源、例えば三相交流網である。供給周波数は、通常は50Hz又は60Hzであるが、他の供給周波数を有してもよい。
【0023】
モーターMは、好ましくは三相交流モーターである。このモーターMは、モーター制御部の三相交流電流又は電源によって制御及び/又は給電される。したがって、このモーター制御部は、三相導体又は電力線16を介してモーターMに接続されている。用語のモーターは、原則としてモーターとは反対に動作する発電機も含む。発電機を有するこのようなモータードライブシステムに対する例は、風力原動機でもよい。用語のモーターは、時としてモーターとして動作し、時として(例えば、制動中に)発電機として動作するモーター/発電機も含む。
【0024】
モーター制御部は、モーターMのために必要な制御及び/又は電力を提供する。モーターとしての発電機の場合、当該モーター制御部は、電力を発電機Mから供給網Gに供給する。
【0025】
モーター制御部は、1つのAC/ACコンバータ11と、好ましくはフィルタ12内の本発明によるコモンモード減衰を呈する少なくとも1つの三相ディファレンシャルモードリアクトルとから成る。
【0026】
AC/ACコンバータ11は、供給する交流電流をモーターの交流電流に変換し、及び/又はモーターの交流電流を供給する交流電流に変換する。当該AC/ACコンバータは、好ましくは整流器(交流から直流)と、直流リンク及びインバータ(直流から交流)とから成る。しかしながら、当然に、他のAC/ACコンバータが使用されてもよい。AC/ACコンバータ11、特にインバータは、(コモンモード)ノイズに対するコモンソースである。
【0027】
好ましくは、モーター制御部は、三相ディファレンシャルモードフィルタ12を有する。フィルタ12は、電源GとモーターMとの間の給電線15,16に配置されている。好ましくは、フィルタ12は、電源GとAC/ACコンバータ11との間、すなわちモーター制御部の電源側入力部とAC/ACコンバータ11との間に配置されている。しかしながら、別の実施の形態では、フィルタ12は、モーターMとAC/ACコンバータ11との間、すなわちモーター制御部のモーター側入力部とAC/ACコンバータ11との間に配置されてもよい。
【0028】
図2は、フィルタ12の実施の形態を示す。フィルタ12は、電源GとモーターMとの間で、すなわち電源側入力部とモーター側入力部との間で三相交流電力を提供するように構成された、三相導体15を介して接続された電源側入力部とモーター側入力部とをそれぞれ有する。3つのコンデンサ24が、当該電源側入力部と当該モーター側入力部との間の接続点25で、星形結線で及び/又はデルタ結線で導体15に接続されている。図2は、星形結線を示す。しかしながら、当該回路は、電気力学的な挙動における任意の変化なしに対応するデルタ結線に等価に変更され得ることは当業者にとって自明である。フィルタ12は、好ましくは以下の複数の三相ディファレンシャルモードリアクトル21,22及び23のうちの1つの三相ディファレンシャルモードリアクトルを有し、さらに好ましくは2つの三相ディファレンシャルモードリアクトルを有し、3つの三相ディファレンシャルモードリアクトルを有してもよい。第1三相ディファレンシャルモードリアクトル21は、当該供給側入力部と当該接続点との間に配置されている。第2三相ディファレンシャルモードリアクトル22は、当該モーター側入力部と当該接続点との間に配置されている。第3三相ディファレンシャルモードリアクトル23は、(コンデンサ24と一緒に)星形結線で及び/又はデルタ結線で接続点25に接続されている。フィルタ12が、これらのコンデンサ24から成る星形結線及び/又はデルタ結線において第3三相ディファレンシャルモードリアクトル23又は別の構成要素を有する場合、結合された星形結線及びデルタ結線が同様に可能である。その他の構成要素は、コンデンサ24に対して並列にある抵抗でもよい。当該星形結線の中性点は、好ましくは接地されていない。しかしながら、幾つかのフィルタでは、当該星形結線の中性点は、(直接に又はさらなる接地コンデンサのような別の構成要素を介して)接地されてもよい。上記の回路又は別の回路を有するフィルタ12は、LCLフィルタ、PHFフィルタ、ラインフィルタ、高調波フィルタ、EMCフィルタ、入力フィルタ及び出力フィルタでもよい。LCLフィルタは、第1リアクトル21と第2リアクトル22とによって(そして第3リアクトル23なしに)達成され得る。出力フィルタは、第3リアクトル23と第2リアクトル22とによって(そして第1リアクトル21なしに)達成され得る。
【0029】
モーター制御部は、EMCフィルタ13のようなさらなるフィルタを有し得る。EMCフィルタ13は、電源内のリアクトルLCM,Fと、当該電源と大地との間に接地されているコンデンサCCM,Fとを有するLCフィルタでもよい。当該EMCフィルタは、好ましくは電源GとAC/ACコンバータ11との間に配置されている。
【0030】
図5~10に示された実施の形態によって以下で説明するように、モーター制御部、好ましくは、フィルタ12は、コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルを有する。好ましくは、当該コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、電源側入力部とモーター側入力部との間の導体15又は16に配置されている(好ましくは、第3三相ディファレンシャルモードリアクトル23内に配置されていない)。好ましくは、当該コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、フィルタ12の第1リアクトル21又は第2リアクトル22に相当する。好ましくは、当該コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、接続点25に対してコンバータ側にある第1リアクトル21又は第2リアクトル22に相当する。好ましくは、当該コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、当該モーター制御部若しくはフィルタ12の最も大きいインダクタンスを有するリアクトル又は第1リアクトル21及び第2リアクトル22のうちの最も大きいインダクタンスを有するリアクトルである。
【0031】
図5及び6は、コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第1の実施の形態を示す。図7及び8は、コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第2の実施の形態を示す。図9及び10は、コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルの第3の実施の形態を示す。当該コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、第1相に対して第1コア要素2.1及び第1コイル1.1を有し、第2相に対して第2コア要素2.2及び第2コイル1.2を有し、第3相に対して第3コア要素2.3及び第3コア1.3を有する。
【0032】
第1コイル1.1は、第1コア要素2.1の周りに巻き付けられている。第1コイル1.1は、第1相の電流を(好ましくは、電源からモーターに)誘導するように構成されている。好ましくは、第1コイル1.1の1つの端部が、リアクトルの第1入力端子に接続されていて、第1コイル1.1の反対の端部が、当該リアクトルの第1出力端子に接続されている。したがって、第1相の電流は、第1入力端子から第1コイル1.1を経由して第1出力端子に通電し得る(又は第1出力端子から第1コイル1.1を経由して第1入力端子に通電し得る)。第1コア要素2.1の周りに巻き付かれた第1コイル1.1は、第1相に対するリアクトルの第1インダクタンスを提供する。
【0033】
第2コイル1.2は、第2コア要素2.2の周りに巻き付けられている。第2コイル1.2は、第2相の電流を(好ましくは、電源からモーターに)誘導するように構成されている。好ましくは、第2コイル1.2の1つの端部が、リアクトルの第2入力端子に接続されていて、第2コイル1.2の反対の端部が、当該リアクトルの第2出力端子に接続されている。用語の入力及び出力は、電流の任意の方向を示さない。したがって、第2相の電流は、第2入力端子から第2コイル1.2を経由して第2出力端子に通電し得る(又は第2出力端子から第2コイル1.2を経由して第2入力端子に通電し得る)。第2コア要素2.2の周りに巻き付かれた第2コイル1.2は、第2相に対するリアクトルの第2インダクタンスを提供する。
【0034】
第3コイル1.1は、第3コア要素2.1の周りに巻き付けられている。第3コイル2.1は、第3相の電流を(好ましくは、電源からモーターに)誘導するように構成されている。好ましくは、第3コイル1.1の1つの端部が、リアクトルの第3入力端子に接続されていて、第3コイル1.1の反対の端部が、当該リアクトルの第3出力端子に接続されている。用語の入力及び出力は、電流の任意の方向を示さない。したがって、第3相の電流は、第3入力端子から第3コイル1.1を経由して第3出力端子に通電し得る(又は第3出力端子から第3コイル1.1を経由して第3入力端子に通電し得る)。第3コア要素2.3の周りに巻き付かれた第3コイル1.3は、第3相に対するリアクトルの第3インダクタンスを提供する。
【0035】
以下では、幾つかの用語が明確にされる。用語の「端子」は、好ましくは、クランプ、ねじ又ははんだ接点のようなケーブル又は導体を固定するための手段である。しかしながら、当該端子は、それぞれのコイルに対するケーブル又は導体の連続する接続部分でもよい。用語の「コモンモード」及び「ディファレンシャルモード」を簡単に説明する。モータードライブシステム、モーター制御部及び/又はリアクトルの3つの相に通電する電流は、コモンモード電流とディファレンシャルモード電流とから成る。当該「ディファレンシャルモード電流」は、全ての相で加算すると零になる電流である。交流電流で使用される電力は、ディファレンシャルモード電流である。しかしながら、当該交流電流で使用される電力周波数は、専ら50Hz又は60Hzであることが望ましい。残りのディファレンシャルモード電流は、「ディファレンシャルモードノイズ電流」とみなされる。当該「ディファレンシャルモード電流」は、特により高い周波数で発生し、高調波フィルタ、EMCフィルタ、入力フィルタ等のようなそれぞれのフィルタによってフィルタリングされる。加算して零にならない当該3つの相上の残りの電流は、給電線上を(モーターM又は電源Gに向かって)共通の方向に「進行」する「コモンモード電流」である。このとき、当該コモンモード電流は、大地に帰還する。当該コモンモード電流は、通常は望ましくなく、コモンモードノイズ電流とも呼ばれる。当該コモンモードノイズ電流は、多くの場合に≪コモンモードリンギングノイズ電流≫を含む。当該コモンモードリンギングノイズ電流は、コモンモードノイズ電流のうちのより高い高調波を含み、及び/又は、当該コモンモードリンギングノイズ電流は、1キロヘルツ(kHz)よりも高いコモンモードノイズ電流を含む。
【0036】
3つのコア要素2.1,2.2及び2.3は、第3の実施の形態に示されたように同じコアの一部でもよく、又は第1及び第2の実施の形態のように別々のコアの一部でもよい。第1及び第2の実施の形態のように別々にリング状に形成された3つのコアの使用は、コモンモード減衰を呈する本発明のリアクトルに対して特別な利点を奏する。当該リング状に形成されたコアは、好ましくは閉じられている、したがって空隙なしに閉じられている。当該リングの外形及び/又は内形は、(図6及び8に示されたように)好ましくは円形である。しかしながら、三角形、長方形、n角形等のようにその他のリング形状が可能である。当該リングの横断面形状は、図5及び7に示されたように好ましくは(場合によっては、湾曲された辺部を有する)長方形である。しかしながら、(円形のリングである円環と組み合わせた)円形の断面のように、その他の形の当該リングの断面を有することも可能である。しかしながら、Iコア、Cコア、Eコア、EIコア等のように異なって形成された別々の複数のコアを使用することも可能である。3つのコア要素2.1,2.2及び2.3が、第3の実施の形態で例示されたように同じコアの一部でもよい。ここでは、それぞれのコア要素2.1,2.2,2.3は、当該コアの巻き付かれた脚部に相当する。当該3つの巻き付かれた脚部は、少なくとも第1ヨークによって結合されている。図示された実施の形態では、当該3つの巻き付かれた脚部は、(空隙を有しない巻き付かれた複数の脚部に結合された)第1ヨークと(空隙を有する巻き付かれた複数の脚部に結合された)第2ヨークとによって結合されている。当然に、3つのコア要素2.1,2.2及び2.3のためのコモンコアの様々な別のデザインが可能である。
【0037】
第1コア要素2.1の周りに巻き付けられた第1コイル1.1が、第1相中のディファレンシャルモードノイズ電流、すなわち第1コイル1.1に通電する電流を減衰し、第2コア要素2.2の周りに巻き付けられた第2コイル1.2が、第2相中のディファレンシャルモードノイズ電流、すなわち第2コイル1.2に通電する電流を減衰し、第3コア要素2.3の周りに巻き付けられた第3コイル1.3が、第3相中のディファレンシャルモードノイズ電流、すなわち第3コイル1.3に通電する電流を減衰するように、3つのコイル1.1,1.2,1.3は、コア要素2.1,2.2,2.3の周りに巻き付けられている。第1コイル1.1に通電するディファレンシャルモード電流によって生成された第1ディファレンシャルモード磁束が、(コモンモードチョーク中で相殺される電流とは逆に)その他の2つのコイル1.2,1.3によって生成された(第2及び第3)ディファレンシャルモード磁束によって第1コア要素2.1中で相殺されないように、3つのコイル1.1,1.2,1.3は、3つのコア要素2.1,2.2,2.3に巻き付かれている。同じことが、第2コイル1.2と第3コイル1.3とに対して成立する。したがって、第1ディファレンシャルモード磁束は、第1コイル1.1に通電するディファレンシャルモードノイズ電流を減少させるために第1ディファレンシャルモードノイズ逆電流をこの第1コイル1.1中に誘導する。
【0038】
本発明によれば、三相ディファレンシャルモードリアクトルは、補助コイルを有する。好ましくは、第1相と第2相と第3相とに通電するコモンモード電流が、当該補助コイル中に誘導されるように、当該補助コイルは、第1コア要素2.1と第2コア要素2.2と第3コア要素2.3との周りに巻き付けられている。これは、第1の実施の形態と第3の実施の形態とに示されているように全ての3つのコア要素2.1,2.2,2.3を(帯コイル又はコモンコイルのそれぞれの巻線のそれぞれのループごとに)包囲する帯コイル又はコモンコイル6によって達成され得るか、又は第2の実施の形態に示されているように第1コア要素2.1の周りに巻き付けられた第1サブ補助コイル6.1と第2コア要素2.2の周りに巻き付けられた第2サブ補助コイル6.2と第3コア要素2.3の周りに巻き付けられた第3サブ補助コイル6.3とを組み合わせることによって達成され得る。3つのサブ補助コイル6.1,6.2及び6.3は、好ましくは互いに直列に接続されている。当該補助コイル、すなわち帯コイル6又はそれぞれのサブ補助コイル6.1,6.2,6.3の巻き数は、任意であるが、好ましくは10未満、好ましくは5未満、好ましくは3未満である。好ましくは、当該補助コイルの巻き数は、少なくとも1の全周巻きである。
【0039】
好ましくは、第1相又は第1コイル1.1に通電するコモンモード電流によって生成された第1コモンモード磁束と、第2相又は第2コイル1.2に通電するコモンモード電流によって生成された第2コモンモード磁束と、第3相又は第3コイル1.3に通電するコモンモード電流によって生成された第3コモンモード磁束とが、補助コイル6又は6.1,6.2,6.3に生じる(非零の)コモンモード電流を誘導するように、補助コイル6又は6.1,6.2,6.3が、第1コア要素2.1と第2コイル2.2と第3コア要素2.3との周りに巻き付けられている。好ましくは、同じコモンモード電流成分が、それぞれのコイル1.1,1.2及び1.3によって補助コイル6又は6.1,6.2,6.3中に誘導される。補助コイル6又は6.1,6.2,6.3は短絡している。補助コイル6又は6.1,6.2,6.3中に誘導されたコモンモード電流は、3つのコイル1.1,1.2,1.3中に逆誘導されるコモンモード逆磁束を生成する。当該コモンモード逆磁束は、3つのコイル1.1,1.2,1.3でコモンモード電流を相殺又は減衰する。補助コイル6又は6.1,6.2,6.3は、第1コア要素2.1と第2コア要素2.2と第3コア要素2.3との1つの位置の周りに巻き付けられている。この位置では、同じコモンモード逆磁束が、それぞれのコイル1.1,1.2,1.3に通電する同じコモンモード電流によって生成される。リングを形成するこれらのコア要素にとって、この位置は、当該リングの周りの任意の位置である。好ましくは、補助コイル6又は6.1,6.2,6.3は、第1コア要素2.1と第2コア要素2.2と第3コア要素2.3との1つの位置の周りに巻き付けられている。この位置では、それぞれの相又はコイルのそれぞれのコモンモード磁束が、最大であり、及び/又はコアの磁束通路に分割されない。リングを形成するこれらのコア要素にとって、この位置は、当該リングの周りの任意の位置である。
【0040】
帯コイル6による実施の形態では、帯コイル6内で一緒に包囲された第1コモンモード磁束と第2コモンモード磁束と第3コモンモード磁束とが、生じる1つのコモンモード磁束に合算又は統合される。このとき、当該生じるコモンモード磁束は、生じるコモンモード電流を帯コイル6中に誘導する。帯コイル6中のコモンモード逆電流は、コモンモード逆磁束を生成する。このコモンモード逆磁束は、それぞれのコモンモード逆電流を3つのコイル1.1,1.2及び1.3に生成する。当該それぞれのコモンモード逆電流は、それぞれのコイル1.1,1.2,1.3中のコモンモード電流を減衰する。したがって、帯コイル6のそれぞれの巻き線が、全ての3つのコア要素2.1,2.2及び2.3を包囲する。帯コイル6の実施の形態には、存在するディファレンシャルモード三相リアクトルの構成が変更されないで済むという利点がある。帯コイル6は、製造工程の終わりに簡単に追加され得るか又は後で追加導入され得る。好ましくは、帯コイル6は、三相リアクトルのポッティングによって絶縁され及び/又は所定の場所に保持される。
【0041】
サブ補助コイル6.1,6.2,6.3による実施の形態では、第1コモンモード磁束が、第1コモンモード電流を第1サブ補助コイル6.1中に誘導し、第2コモンモード磁束が、第2コモンモード電流を第2サブ補助コイル6.2中に誘導し、第3コモンモード磁束が、第3コモンモード電流を第3サブ補助コイル6.3中に誘導する。第1サブ補助コイル6.1中の第1コモンモード電流と、第2サブ補助コイル6.2中の第2コモンモード電流と、第3サブ補助コイル6.3中の第3コモンモード電流とが、当該補助コイル6.1,6.2,6.3の生じるコモン電流に結合、好ましくは合算されるように、サブ補助コイル6.1,6.2,6.3が結合されている。このとき、当該補助コイル6.1,6.2,6.3中の生じるコモンモード電流は、第1サブ補助コイル6.1によって第1コア要素2.1中に第1コモンモード逆電流を生成し、第2サブ補助コイル6.2によって第2コア要素2.2中に第2コモンモード逆電流を生成し、第3サブ補助コイル6.3によって第3コア要素2.3中に第3コモンモード逆電流を生成する。第1コモンモード逆磁束が、第1コイル1.1中のコモンモード電流を減衰するために第1コモンモード逆電流をこの第1コイル1.1中に誘導する。第2コモンモード逆磁束が、第2コイル1.2中のコモンモード電流を減衰するために第2コモンモード逆電流をこの第2コイル1.2中に誘導する。第3コモンモード逆磁束が、第3コイル1.3中のコモンモード電流を減衰するために第3コモンモード逆電流をこの第3コイル1.3中に誘導する。
【0042】
当該コモンモードの減衰の効果は、インピーダンスを介して補助コイル6又は6.1,6.2,6.3を近づけるか又は短絡させることによって増大され得る。当該インピーダンスは、好ましくはオーミック抵抗である。しかしながら、さらに、当該インピーダンスは、コンデンサ又はリアクトル又はこれらの組み合わせのような複素インピーダンスでもよい。当該インピーダンス又は当該抵抗は、好ましくはディスクリート素子であるが、寄生インピーダンス又は補助コイルの抵抗でもよい。当該ディスクリート素子には、当該ディスクリート素子がホットスポットを生成するという欠点がある。当該コモンモード減衰の効果は、このような抵抗なしでも十分である。
【0043】
図3は、モータードライブシステム内の三相ディファレンシャルモードリアクトル中のコモンモード減衰を呈しないコモンモード電流の等価回路を示す。当該コモンモード電流は、電源Gから3つの相を介してモーターMに通電し、大地に戻る(又は反対方向に戻る)。当該コモンモード電流の挙動が、モータードライブシステムのインダクタンスLCMと大地に対するこのモータードライブシステムのキャパシタンスとによって決定される。当該大地に対するキャパシタンスは、図1に示されているように、例えばモーターのキャパシタンスCCM,M、コンバータのキャパシタンスCCM,RI及びEMCフィルタのキャパシタンスCM,Fである。当該モータードライブシステムに対するコモンモードノイズ減衰係数は、
【0044】
【数1】
に比例する。
【0045】
したがって、従来の技術では、ディファレンシャルモードフィルタリングの大きいインダクタンスが、小さいコモンモード減衰係数に寄与する。その結果、特に、図11に示されているように減衰されていないコモンモードリンギングノイズ電流が、より高い周波数で発生する。図11は、モータードライブ内のコモンモード減衰を呈しないフィルタ12中及び/又はリアクトル中のコモンモード電流を示す。
【0046】
次いで、図4は、三相ディファレンシャルモードリアクトルにおけるコモンモード減衰の効果を示す。コモンモードノイズ減衰係数が、
【0047】
【数2】
によって増大されるように、コモンモードの実効インダクタンスが減少される。
【0048】
図12は、モータードライブ内のコモンモード減衰を呈するフィルタ12中及び/又はリアクトル中のコモンモード電流を示す。図12で見て取れるように、コモンモードノイズリンギング電流が、図11に比べて著しく減衰されている。したがって、コモンモードノイズを減衰するための補助コイルによるリアクトルの構成の最小の変更が、コモンモードリンギングノイズ電流の著しい減少を引き起こす。
【0049】
コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードフィルタ12及び/又は三相ディファレンシャルモードリアクトルは、モータードライブシステムのモーターの制御において説明してきた。しかしながら、コモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードフィルタ12及び/又は三相ディファレンシャルモードリアクトルは、他のあらゆる制御又はコンバータ回路で使用されてもよい。好ましくは、このような制御又はコンバータ回路は、少なくとも1つのコンバータ、例えばインバータやコモンモード減衰を呈する三相ディファレンシャルモードフィルタ12及び/又は三相ディファレンシャルモードリアクトルから構成される。この場合、フィルタ12又はリアクトルの供給側の入力部は、一般に一次側入力部とみなされ得て、フィルタ12又はリアクトルのモーター又はコンバータ側の入力部は、一般に二次側入力部とみなされる。当該三相ディファレンシャルモードリアクトルは、好ましくは(特定の周波数範囲内の)ディファレンシャルモードノイズ電流をフィルタリングするために使用され、例えばディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために使用される。しかしながら、当該三相ディファレンシャルモードリアクトルは、ディファレンシャルモード電流を(相当に)生成又は処理するために別の用途で使用されてもよい。減衰は、ディファレンシャルモード電流を生成又は処理することの好適な1つの形態である。その他の処理は、ディファレンシャルモード電流を積分することでもよい。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
電源側入力部と、モーター側入力部と、この電源側入力部とこのモーター側入力部との間の、電源とモーターとの間のモータードライブに電流を通電するための導体と、この導体中の接続点とをそれぞれの相ごとに有する三相ディファレンシャルモードフィルタにおいて、
前記フィルタは、星形結線及び/又はデルタ結線で3つの前記相の前記導体の前記接続点に接続された3つのコンデンサを有し、
前記フィルタは、前記電源側入力部と前記接続点との間の第1三相ディファレンシャルモードリアクトルと、前記モーター側入力部と前記接続点との間の第2三相ディファレンシャルモードリアクトルと、星形結線及び/又はデルタ結線によって前記接続点に接続された第3三相ディファレンシャルモードリアクトルとのうちの少なくとも2つの三相ディファレンシャルモードリアクトルを有し、
前記少なくとも2つの三相ディファレンシャルモードリアクトルのうちの1つの三相ディファレンシャルモードリアクトルが、以下の構成要素である:
第1コア要素(2.1)と、
第2コア要素(2.2)と、
第3コア要素(2.3)と、
第1相の電流を通電し、この第1相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1コイル(1.1)と、 第2相の電流を通電し、この第2相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2コイル(1.2)と、 第3相の電流を通電し、この第3相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3コイル(1.3)と、から成る、コモンモードを相殺する三相ディファレンシャルモードリアクトルであり、
前記第1相中と前記第2相中と前記第3相中とのコモンモード電流が、1つの補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)中に誘導されるように、前記コモンモードを相殺する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられた前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)を有する当該フィルタ。
2.
前記第1相のディファレンシャルモード成分と前記第2相のディファレンシャルモード成分と前記第3相のディファレンシャルモード成分とが、前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)中で互いに相殺するように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられている上記1に記載のフィルタ。
3.
前記第1コイル(1.1)に通電するコモンモード電流が、第1コモンモード磁束を第1コア要素(2.1)中に生成し、
前記第2コイル(1.2)に通電するコモンモード電流が、第2コモンモード磁束を第2コア要素(2.2)中に生成し、
前記第3コイル(1.3)に通電するコモンモード電流が、第3コモンモード磁束を第3コア要素(2.3)中に生成し、
前記第1コモンモード磁束と前記第2コモンモード磁束と前記第3コモンモード磁束とが、前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)内で加算されるように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられている上記1~2のいずれか1つに記載のフィルタ。
4.
前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)の第1端部が、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)の第2端部に直接に又はインピーダンスを介して接続されている上記1~3のいずれか1つに記載のフィルタ。
5.
前記補助コイル(6)が、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)とをこのループ又はコイル内で包囲する上記1~4のいずれか1つに記載のフィルタ。
6.
前記補助コイルは、前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1サブ補助コイル(6.1)と、前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2サブ補助コイル(6.2)と、前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3サブ補助コイル(6.3)とから成り、
前記補助コイルの第1端部が、前記第1サブ補助コイル(6.1)の第1端部に相当し、
前記第1サブ補助コイル(6.1)の第2端部が、前記第2サブ補助コイル(6.2)の第1端部に接続されていて、
前記第2サブ補助コイル(6.2)の第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第1端部に接続されていて、
前記補助コイルの第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第2端部に相当する上記1~4のいずれか1つに記載のフィルタ。
7.
前記第1コア要素(2.1)は、三相コアの第1巻線脚部であり、前記第2コア要素(2.2)は、前記三相コアの第2巻線脚部であり、前記第3コア要素(2.3)は、前記三相コアの第3巻線脚部であり、
前記三相コアは、前記第1巻線脚部と前記第2巻線脚部と前記第3巻線脚部とに結合している少なくとも1つのヨークから成る上記1~6のいずれか1つに記載のフィルタ。
8.
前記第1コア要素(2.1)、前記第2コア要素(2.2)及び前記第3コア要素(2.3)は、別々の3つのコアである上記1~6のいずれか1つに記載のフィルタ。
9.
別々の3つのコアのそれぞれが、リング形を成す上記8に記載のフィルタ。
10.
前記コモンモードを相殺する三相ディファレンシャルモードリアクトルは、前記フィルタの最も大きいインダクタンスを有する前記三相ディファレンシャルモードリアクトルである上記1~9のいずれか1つに記載のフィルタ。
11.
第1相、第2相及び第3相中のコモンモード電流が、1キロヘルツより上の周波数範囲内で補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)によって減衰されるように、この補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)は、第1コア要素(2.1)と第2コア要素(2.2)と第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられている上記1~10のいずれか1つに記載のフィルタ。
12.
上記1~11のいずれか1つに記載のフィルタと電源電流をモーター電流に変換するためのAC-ACコンバータとから成るモーター制御部。
13.
前記フィルタは、電源側とAC-ACコンバータとの間に配置されている上記12に記載のモーター制御部。
14.
第1相(L1)と第2相(L2)と第3相(L3)とを有する三相ディファレンシャルモードリアクトルであって、このリアクトルは、
第1コア要素(2.1)と、
第2コア要素(2.2)と、
第3コア要素(2.3)と、
第1相の電流を通電し、この第1相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1コイル(1.1)と、 第2相の電流を通電し、この第2相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2コイル(1.2)と、 第3相の電流を通電し、この第3相中のディファレンシャルモードノイズ電流を減衰するために前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3コイル(1.3)と、から成る当該リアクトルにおいて、
前記第1相中と前記第2相中と前記第3相中とのコモンモード電流が、1つの補助コイル中に誘導されるように、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)との周りに巻き付けられた前記補助コイル(6;6.1,6.2,6.3)が設けられている当該リアクトル。
15.
上記14に記載のリアクトルにおいて、
前記補助コイル(6)が、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)とをこのループ又はコイル内で包囲するように、この補助コイル(6)は、前記第1コア要素(2.1)と前記第2コア要素(2.2)と前記第3コア要素(2.3)とに巻き付けられた帯コイル(6)から成ること、又は
前記補助コイル(6.1,6.2,6.3)は、前記第1コア要素(2.1)の周りに巻き付けられた第1サブ補助コイル(6.1)と、前記第2コア要素(2.2)の周りに巻き付けられた第2サブ補助コイル(6.2)と、前記第3コア要素(2.3)の周りに巻き付けられた第3サブ補助コイル(6.3)とから成り、前記補助コイルの第1端部が、前記第1サブ補助コイル(6.1)の第1端部に相当し、前記第1サブ補助コイル(6.1)の第2端部が、前記第2サブ補助コイル(6.2)の第1端部に接続されていて、前記第2サブ補助コイル(6.2)の第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第1端部に接続されていて、前記補助コイルの第2端部が、前記第3サブ補助コイル(6.3)の第2端部に相当する当該リアクトル。
【符号の説明】
【0050】
1.1 第1コイル
1.2 第2コイル
1.3 第3コイル
2.1 第1コア要素
2.2 第2コア要素
2.3 第3コア要素
6.1 第1サブ補助コイル
6.2 第2サブ補助コイル
6.3 第3サブ補助コイル
6 帯コイル、コモンコイル
11 AC/ACコンバータ
12 フィルタ
13 EMCフィルタ
15 三相導体
16 電力線
21 第1リアクトル
22 第2リアクトル
23 第3リアクトル
24 コンデンサ
25 接続点
G 電源
M モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12