IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社栗本鐵工所の特許一覧

<>
  • 特許-回転弁 図1
  • 特許-回転弁 図2
  • 特許-回転弁 図3
  • 特許-回転弁 図4
  • 特許-回転弁 図5
  • 特許-回転弁 図6
  • 特許-回転弁 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】回転弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20240703BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16K5/06 Z
F16K5/06 G
F16K47/02 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020012277
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116909
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】桑原 隆
(72)【発明者】
【氏名】真本 英光
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-253067(JP,A)
【文献】特公昭46-5342(JP,B1)
【文献】特開平11-30340(JP,A)
【文献】特開2012-47239(JP,A)
【文献】特開平10-132140(JP,A)
【文献】特開2001-116246(JP,A)
【文献】特表2002-538386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
F16K 3/22,47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流動する管状の流路が内部に形成され、該流路の流入口側に第一弁箱弁座(9)が、流出口側に第二弁箱弁座(10)がそれぞれ形成された弁箱(2)と、
前記第一弁箱弁座(9)と接離して前記流入口を開閉する第一弁体弁座(13)が形成された第一弁体(14)と、前記第二弁箱弁座(10)と接離して前記流出口を開閉する第二弁体弁座(15)が形成された第二弁体(16)とを有し、該第一弁体(14)と該第二弁体(16)との間に流体が通る貫通路(17)が形成された弁体(3)と、
前記弁体(3)に連結され、該弁体(3)をその軸周りに回動する弁棒(4)と、
前記弁箱(2)の前記第一弁箱弁座(9)の下流側かつ前記第二弁箱弁座(10)の上流側に、該弁箱(2)の外部から内部に気体を送り込む気体導入路(5)と、
を有し、
前記気体導入路(5)が、前記弁体(3)の半開状態において前記流路内に開口している回転弁。
【請求項2】
流体が流動する管状の流路が内部に形成され、該流路の流入口側に第一弁箱弁座(9)が、流出口側に第二弁箱弁座(10)がそれぞれ形成された弁箱(2)と、
前記第一弁箱弁座(9)と接離して前記流入口を開閉する第一弁体弁座(13)が形成された第一弁体(14)と、前記第二弁箱弁座(10)と接離して前記流出口を開閉する第二弁体弁座(15)が形成された第二弁体(16)とを有し、該第一弁体(14)と該第二弁体(16)との間に流体が通る貫通路(17)が形成された弁体(3)と、
前記弁体(3)に連結され、該弁体(3)をその軸周りに回動する弁棒(4)と、
前記弁箱(2)の前記第一弁箱弁座(9)の下流側かつ前記第二弁箱弁座(10)の上流側に、該弁箱(2)の外部から内部に気体を送り込む気体導入路(5)と、
を有し、
前記気体導入路(5)が、前記弁箱(2)の流路の内面に周方向に沿って形成された周溝(11、12)と接続している回転弁。
【請求項3】
前記弁箱(2)の前記第二弁箱弁座(10)の下流側に、該弁箱(2)の外部から内部に気体を送り込む気体導入路(5)をさらに有する請求項1又は2に記載の回転弁。
【請求項4】
前記気体導入路(5)が、前記弁箱(2)の流路の内面に周方向に沿って形成された周溝(11、12)と接続している請求項1に記載の回転弁。
【請求項5】
前記気体導入路(5)が、前記弁棒(4)の内部を経由して形成されている請求項1に記載の回転弁。
【請求項6】
前記流路の流入口側の流路断面積よりも、流出口側の流路断面積の方が大きい請求項1からのいずれか1項に記載の回転弁。
【請求項7】
前記第一弁箱弁座(9)と前記第一弁体弁座(13)との間、及び、前記第二弁箱弁座(10)と前記第二弁体弁座(15)との間が、楕円球面同士、楕円錐面同士、又は、楕円球面と楕円錐面との接触となっており、かつ、前記各弁座(9、10、13、15)の軸心(c1、c2)が、前記弁箱(2)の軸心(o)から該弁棒(4)の閉弁方向に同角度偏心している請求項1からのいずれか1項に記載の回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダム放流設備、上水道、石油化学プラント、工業用水等の液体運搬用配管において、遮断弁や流量調整弁として使用される回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
バタフライ弁やボール弁等の回転弁においては、弁体が半開状態のときに流動が部分的に狭められることによって縮流が生じ、その縮流に伴う圧力低下によって流体内に気泡が発生するキャビテーションが生じることがある。キャビテーションによって生じた気泡は、圧力の回復とともに崩壊し、その際に騒音や振動等の不具合を生じる。このキャビテーションに係る問題は、例えばダムのように水が高落差・高流速で流動する環境下で回転弁を用いる際に特に顕著となる。
【0003】
上記の問題を解決すべく、例えば下記特許文献1においては、キャビテーションが生じやすい区域aに、吸気管5から吸入された大気を混入する構成を採用している。このように、キャビテーションが生じやすい区域aを流体と気体の混合体で充満させることによって、キャビテーションを防止できるとしている(特許文献1の第1ページ第2欄第3~22行目、第2図等参照)。
【0004】
また、下記特許文献2においては、弁箱10の両側面の下流側に、吸気口が形成された空気管51を挿入し、弁箱10内の流体流による負圧によって空気管51から弁箱10内に吸気される構成を採用している。このように、吸気を行うことによって、特に、小開度及び中開度において、弁体弁座14等と弁箱弁座15の間を通る流体aのキャビテーションの発生を抑制できるとしている(特許文献2の段落0024、0028、図2A等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭46-5342号公報
【文献】特開2015-203444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の構成においては、回転弁の下流側に吸気口が形成されており、この回転弁の下流側でのキャビテーションの発生を抑制している。しかしながら、回転弁においては、ボール弁のように流路の上流側と下流側の2か所に弁座を有するものがあり、この特許文献1、2の構成では、回転弁の下流側におけるキャビテーションの発生を抑制できたとしても、上流側でのキャビテーションの発生を抑制できないという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、回転弁におけるキャビテーションの発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、流体が流動する管状の流路が内部に形成され、該流路の流入口側に第一弁箱弁座が、流出口側に第二弁箱弁座がそれぞれ形成された弁箱と、前記第一弁箱弁座と接離して前記流入口を開閉する第一弁体弁座が形成された第一弁体と、前記第二弁箱弁座と接離して前記流出口を開閉する第二弁体弁座が形成された第二弁体とを有し、該第一弁体と該第二弁体との間に流体が通る貫通路が形成された弁体と、前記弁体に連結され、該弁体をその軸周りに回動する弁棒と、前記弁箱の前記第一弁箱弁座の下流側かつ前記第二弁箱弁座の上流側に、該弁箱の外部から内部に気体を送り込む気体導入路と、を有する回転弁を構成した。
【0009】
このように、第一弁箱弁座の下流側かつ第二弁箱弁座の上流側に気体を送り込むことによって、流体が第一弁体を通過する際のキャビテーションの発生を確実に抑制することができる。しかも、送り込まれた気体は、流体とともに上流側から下流側に向かって流れ、この気体によるキャビテーション防止作用は下流側でもそのまま持続するため、流体が第二弁体を通過する際のキャビテーションの発生も抑制することができる。
【0010】
前記構成においては、前記弁箱の前記第二弁箱弁座の下流側に、該弁箱の外部から内部に気体を送り込む気体導入路をさらに有する構成とすることができる。
【0011】
このように、第二弁箱弁座の下流側にも気体導入路を設けることにより、流体が第二弁体を通過する際のキャビテーションの発生を一層抑制することができる。
【0012】
前記各構成においては、前記気体導入路が、前記弁箱の流路の内面に周方向に沿って形成された周溝と接続している構成とすることができる。
【0013】
このように、気体導入路と周溝を接続することにより、導入された気体をキャビテーションが発生しやすい領域に満遍なく行き渡らせることができるため、キャビテーションの発生を一層抑制することができる。
【0014】
この回転弁においては、前記気体導入路が、前記弁棒の内部を経由して形成されている構成とすることができる。
【0015】
このように、弁箱に形成された貫通孔に挿入された弁棒の内部を気体導入路として利用することにより、弁箱に気体導入路用の貫通孔を別途形成する必要がない。
【0016】
前記各構成においては、前記流路の流入口側の流路断面積よりも、流出口側の流路断面積の方が大きい構成とすることができる。
【0017】
上記のように、気体導入路から弁箱内に気体を導入することによりキャビテーションの発生を抑制できる反面、例えば、流路の下流側に曲管が接続されている場合に、曲管の損失係数と流路の平均流速分だけ内圧が上昇して大気圧を上回り、流路内の流体がその内圧によって気体導入路から吹き上がる可能性がある。そこで、流路の流入口側よりも流出口側の流路断面積を大きくすることにより、弁箱に導入された気体によって内圧が上昇するのを防止するとともに、気体導入路からの気体の導入をスムーズに行うことができる。
【0018】
前記各構成においては、前記第一弁箱弁座と前記第一弁体弁座との間、及び、前記第二弁箱弁座と前記第二弁体弁座との間が、楕円球面同士、楕円錐面同士、又は、楕円球面と楕円錐面との接触となっており、かつ、前記各弁座の中心軸が、前記弁棒の軸心から該弁棒の閉弁方向に同角度偏心している構成とすることができる。
【0019】
このように構成されたいわゆる偏心弁は、開閉弁に伴う弁箱弁座と弁体弁座との間の摺動が小さいため、耐圧性の高いメタルシールを採用できる等のメリットがある反面、小中流量領域における流体の流速変化が大きく、キャビテーションが生じやすい問題がある。そこで、この偏心弁に前記各構成に係る構成を採用することによって、偏心弁のメリットを確保しつつキャビテーションの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、回転弁に上記のように気体導入路を設けたので、この回転弁におけるキャビテーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明に係る回転弁の第一実施形態を側面から見た断面図
図2図1に示す回転弁を上から見た断面図(全閉状態)
図3図1に示す回転弁を上から見た断面図(全開状態)
図4図1に示す回転弁を上から見た断面図(一部開弁状態)
図5図1に示す回転弁の構成を説明する上から見た断面図(全閉状態)
図6図1に示す回転弁の弁体の斜視図
図7】本願発明に係る回転弁の第二実施形態を上から見た断面図(一部開弁状態)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明に係る回転弁1の第一実施形態を図1から図6を用いて説明する。この回転弁1は、図1等に示すように、流体が流動する円管状の流路が内部に形成された弁箱2と、弁箱2内に設けられる弁体3と、弁体3に連結され、この弁体3をその軸周りに回動する弁棒4と、弁箱2の内部に気体を送り込む気体導入路5とを主要な構成要素としている。流体は、図2等に示した白抜き矢印wの方向に流動する。この回転弁1は、後述するように、弁箱2の軸心oに対して弁体3の軸心が所定の角度θだけ傾斜した偏心弁である。弁箱2、弁体3、及び、弁棒4はいずれも鋳鉄製であるが、所定の剛性を有する他の素材に変更することも可能である。
【0023】
弁箱2は、この弁箱2の流入口側に配置される流入口側部材6と流出口側に配置される流出口側部材7の2部材からなり、両部材6、7がボルト8による固定で一体化されている。流入口側部材6の流路内面には第一弁箱弁座9が、流出口側部材7の流路内面には第二弁箱弁座10がそれぞれ設けられている。両弁箱弁座9、10は、いずれも金属製のシートリングである。弁箱2の流路内面の第一弁箱弁座9と第二弁箱弁座10の下流側近傍には、この流路内面の周方向に沿って周溝(以下、第一弁箱弁座9の下流側の周溝を第一周溝11、第二弁箱弁座10の下流側の周溝を第二周溝12と称する。)がそれぞれ形成されている。
【0024】
弁箱2内の流路の流路断面積(流体の流動方向に垂直な面で流路を切断したときのその切断面の面積)は、流入口側よりも流出口側の方が大きく形成されている。すなわち、本実施形態では流路が円管状なので、流出口側の流路の内径D2は、流入口側の流路の内径D1よりも大きくなっている(D1<D2)。両内径D1、D2の比は、例えば、D1:D2=1:1.1から1:1.2の範囲とするのが好ましいが、気体導入路5からの吸気量に対応して適宜変更することもできる。
【0025】
弁体3は、第一弁体弁座13が形成された第一弁体14と、第二弁体弁座15が形成された第二弁体16とを有し、第一弁体14と第二弁体16との間に、流体が通る貫通路17が形成されたボール弁である。第一弁体14と第二弁体16は、弁棒4の軸心aに対して180度回転対称に一体に形成されている。第一弁体弁座13は第一弁箱弁座9と接離して流路の流入口を開閉する一方で、第二弁体弁座15は第二弁箱弁座10と接離して流路の流出口を開閉する。
【0026】
第一弁箱弁座9、第二弁箱弁座10、第一弁体弁座13、及び、第二弁体弁座15は、いずれも楕円錐面を有している。閉弁時には、第一弁箱弁座9と第一弁体弁座13、及び、第二弁箱弁座10と第二弁体弁座15の楕円錐面同士がそれぞれ接触することによって液密が確保される。なお、この液密が確保される限りにおいて、楕円球面同士、又は、楕円球面と楕円錐面との接触とすることもできる。
【0027】
この回転弁1は、既述の通り偏心弁であり、弁体3(第一弁体弁座13、第二弁体弁座15)は、図5に示すように、その軸心(楕円錐中心線)c1が、弁箱2の軸心oに対して閉弁方向(図3中の矢印の方向)に所定の角度θだけ傾いて弁棒4に取り付けられている。また、第一弁箱弁座9及び第二弁箱弁座10の軸心(楕円錐中心線)c2も同様に所定の角度θだけ傾いている。このように、弁体3の軸心c2と両弁箱弁座9、10の軸心c2を同角度θだけ傾けることにより、閉弁時において、弁箱2の軸心oに対して両軸心c1、c2が傾いた状態で両弁箱弁座9、10と両弁体弁座13、15を互いに密接させることができる。このとき、両楕円錐面の傾斜の角度θを適宜な値とすることにより、この両楕円錐面を弁箱2の軸心oに対して垂直な面で切断したときの切断面を真円とすることができる。
【0028】
第一弁体14と第二弁体16との間に形成された貫通路17の内部には、図6に示すように、流体の流動方向に沿って複数枚の整流板18が設けられている。整流板18を設けることによって、流体が貫通路17内をスムーズに流動するため、流量の制御特性の向上を図ることができる。
【0029】
また、第一弁体14及び第二弁体16の外周面の閉弁位置から開弁方向(図2中の矢印参照)に向かう先端部には、図6に示すように、流路の上端部から下端部に至る円弧状の突条19が形成されている。この突条19には、その全長に亘って溝20が形成されている。このようにすると、弁体3の開弁時(図2から図3への変化を参照)に、第一弁体14及び第二弁体16の開弁方向前側に形成された突条19に形成された溝20が第一弁箱弁座9と第二弁箱弁座10にそれぞれ近接して、弁箱2の流路内面と弁体3の表面との隙間を通って流体が流れる裏漏れを防止することができる。
【0030】
弁棒4は、弁箱2に形成された貫通孔を通ってこの弁箱2内に挿入されている。弁棒4の弁箱2の外側に突出した端部には、作業者が手動で弁棒4の回動操作を行うためのハンドルや、弁棒4の回動を自動的に行うためのアクチュエータ等の回動手段(図示せず)が設けられる。
【0031】
気体導入路5は、図2等に示すように、弁箱2の第一弁箱弁座9の下流側かつ第二弁箱弁座10の上流側(以下、この位置に形成された気体導入路5を第一気体導入路5aと称する。)、及び、第二弁箱弁座10の下流側(以下、この位置に形成された気体導入路5を第二気体導入路5bと称する。)の2か所に形成されている。第一気体導入路5a及び第二気体導入路5bは、弁箱2内に空気を注入する空気注入口(図示せず)に接続される第一フランジ21、第二フランジ22の内部を通って弁箱2の外部と内部を貫通する貫通孔であり、第一気体導入路5aは第一周溝11と、第二気体導入路5bは第二周溝12とそれぞれ接続されている。
【0032】
各フランジ21、22にそれぞれ接続される空気注入口への空気の供給は、独立した2系統から行ってもよいし、共通の1系統の配管を途中で分岐させることによって行ってもよい。
【0033】
流体の流動に伴う自然吸気によって、第一気体導入路5a及び第二気体導入路5bを通じて、弁箱2の外部から内部に空気が送り込まれる。なお、気体導入路5の数は2か所に限定されず、吸気をスムーズに行うために3か所以上に形成することもできる。また、第一気体導入路5aからの気体の導入のみでキャビテーションの発生を十分に抑制できるのであれば、第二気体導入路5bを省略できる可能性もある。また、各気体導入路5a、5bに、それぞれ複数のフランジ21、22を形成することもできる。また、気体を気体導入路5を通じて自然吸気する代わりに、ポンプ等の輸送手段によって強制的に弁箱2の内部に送り込む構成とできる場合もある。
【0034】
また、この実施形態においては、第一周溝11及び第二周溝12を流路内面の周方向の全周に亘る環状としたが、キャビテーションが生じやすい部分のみに延設された非環状の周溝11、12とすることもできる。あるいは、周溝11、12を形成せずに、気体導入路5を通じて弁箱2の内部に直接空気を送り込むようにできる可能性もある。
【0035】
回転弁1の作用を図2から図4を用いて説明する。この回転弁1は、図2に示す閉弁状態と、図3に示す開弁状態との間で弁体3をその軸周りに回動することによって、弁箱2の内部に形成された流路を開閉するように構成されている。既述の通り、この回転弁1は、弁体3(第一弁体弁座13、第二弁体弁座15)の軸心c1、並びに、第一弁箱弁座9及び第二弁箱弁座10の軸心c2が、弁箱2の軸心oに対して所定の角度θだけ傾いた偏心弁である。
【0036】
このように偏心した偏心弁においては、閉弁状態(図2参照)における弁体3の回動中心aと、両弁箱弁座9、10と両弁体弁座13、15の当接部との間の距離L(図5参照)よりも、この回動中心aと弁体の前記当接部以外の任意の表面との間の距離L’(図5参照)の方が短い。このため、弁体3を閉弁状態から開弁状態に少しでも回動させると、両弁箱弁座9、10と両弁体弁座13、15との間でほとんど摺動が生じることなく速やかに両者が離間する。また、弁体3が開弁状態から閉弁状態に回動する際においても、両弁箱弁座9、10と両弁体弁座13、15との間でほとんど摺動が生じることなく速やかに両者が当接する。このため、両弁箱弁座9、10と両弁体弁座13、15の摺動に伴う摩耗を極力防止することができる。
【0037】
弁体3を開閉する際においては、図4に示すように、この弁体3が半開状態のときに、両弁箱弁座9、10の下流側で流動が部分的に狭められることによって縮流が生じる。この回転弁1においては、縮流が生じやすい位置(図4中のA、B参照)のすぐ下流側に周溝(第一周溝11、第二周溝12)を形成し、気体導入路5(第一気体導入路5a、第二気体導入路5b)を通じて空気を送り込むことによって、縮流に伴う流体の圧力低下を抑制して、キャビテーションの発生を抑制することができる。このため、騒音や振動などの不具合を防止することができる。
【0038】
また、流路の流入口側よりも流出口側の流路断面積を大きくする(流入口側の流路の内径D1よりも、流出口側の流路の内径D2を大きくする)ことにより、弁箱2に導入された気体による内圧の増大を緩和して、気体導入路5からの気体の導入をスムーズに行うことができる。この効果は、回転弁1の下流側にエルボ管等の曲管が接続されているときに特にメリットがある。
【0039】
本願発明に係る回転弁1の第二実施形態を図7に示す。第二実施形態に係る回転弁1は、弁箱2内部への気体の導入経路が第一実施形態に係る回転弁1と相違している。すなわち、第二実施形態に係る回転弁1においては、気体導入路5が、弁棒4の内部を経由して形成されている。そして、この気体導入路5は、弁体3に形成された貫通路17内の第一弁箱弁座9のすぐ下流側の近傍に開口している。
【0040】
弁棒4は、弁箱2に形成された貫通孔に挿入されており、この弁棒4を気体導入路5として利用することにより、弁箱2に気体導入路5用の貫通孔を別途形成する必要がない。この実施形態においては、第一弁箱弁座9のすぐ下流側にのみ気体導入路5の開口を形成したが、気体導入路5をその途中で二股に分岐させ、第二弁箱弁座10のすぐ上流側にも気体導入路5の開口を形成してもよい。このようにすると、流路内のキャビテーションをさらに効果的に抑制できる。
【0041】
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 回転弁
2 弁箱
3 弁体
4 弁棒
5 気体導入路
5a 第一気体導入路
5b 第二気体導入路
6 流入口側部材
7 流出口側部材
8 ボルト
9 第一弁箱弁座
10 第二弁箱弁座
11 第一周溝(周溝)
12 第二周溝(周溝)
13 第一弁体弁座
14 第一弁体
15 第二弁体弁座
16 第二弁体
17 貫通路
18 整流板
19 突条
20 溝
21 第一フランジ
22 第二フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7