IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図1
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図2
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図3
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図4
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図5
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図6
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図7
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図8
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図9
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図10
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図11
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図12
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図13
  • 特許-繊維シートの製造装置及び製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】繊維シートの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20240703BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20240703BHJP
   G01N 33/36 20060101ALI20240703BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
D01D5/04
D04H1/728
G01N33/36 Z
G01N21/59 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020034477
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021139052
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米内山 俊逸
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122155(JP,A)
【文献】特開2004-264144(JP,A)
【文献】特開2002-236004(JP,A)
【文献】特表2017-538873(JP,A)
【文献】特表2006-524739(JP,A)
【文献】特開2009-035839(JP,A)
【文献】特開平08-285535(JP,A)
【文献】特開2007-092237(JP,A)
【文献】特表2010-511808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D04H1/00-18/04
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸ノズルから原料液を吐出させ、電界紡糸法により紡糸し、紡糸された繊維で長尺帯状の繊維シートを製造する繊維シートの製造装置であって、
前記紡糸ノズルに前記原料液を送る送液ポンプと、
前記繊維シートを搬送する搬送手段と、
前記送液ポンプの駆動を制御して前記紡糸ノズルに供給する原料液の送液量又は前記搬送手段の駆動を制御して前記繊維シートの搬送量を制御する制御部と、
前記繊維シートの坪量を非接触方式で計測する計測部とを備え、
前記計測部は、前記繊維シートに光を照射する照射部と、該照射部から前記繊維シートに照射された光の透過量を検出する検出部と、該検出部で検出された光の透過量を実坪量値として換算する処理部とを有し、
前記制御部は、装置稼働時から、設定された搬送速度による定速運転になるまでの期間の経過後に、前記計測部による計測結果に基づき、前記送液ポンプの駆動に対するフィードバック制御を開始し、
前記フィードバック制御においては、目標坪量値と前記実坪量値とを比較し、該実坪量値が該目標坪量値となるように制御を行い、
前記紡糸ノズルは、前記繊維シートの幅方向における中央部と、該中央部よりも幅方向の外側にそれぞれ配置され、
前記送液ポンプを複数有し、
前記複数の紡糸ノズルは、前記複数の送液ポンプのうちの少なくとも2つ以上の送液ポンプの駆動を前記制御部で制御されることで各紡糸ノズルから吐出される繊維量が制御される、繊維シートの製造装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光の透過量に基づき、前記目標坪量値を制御する請求項に記載の繊維シートの製造装置。
【請求項3】
前記計測部による計測領域を複数有し、
前記処理部は、各計測領域で計測された光の透過量を平均化して実坪量値として換算する請求項記載の繊維シートの製造装置。
【請求項4】
前記計測部による計測領域を複数有し、
前記処理部は、各計測領域で計測された光の透過量を単位時間毎に平均化して移動平均値とし、該移動平均値から実坪量値を換算する請求項記載の繊維シートの製造装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記計測部で検出された坪量の情報に基づき坪量平均値を導出し、
前記坪量平均値が所定回数導出された場合、導出された坪量平均値に基づき、前記送液ポンプの駆動を制御する請求項記載の繊維シートの製造装置。
【請求項6】
前記計測部による計測領域は、前記繊維シートの幅に応じて選択可能に複数設定されていて、
前記処理部は、前記繊維シートの幅に応じて選択された計測領域で計測された光の透過量を平均化して実坪量値として換算する請求項記載の繊維シートの製造装置。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載の繊維シートの製造装置を用いて該繊維シートを製造する繊維シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維シートの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紡糸ノズルから原料液を吐出させ、電界紡糸法により紡糸し、紡糸された繊維で長尺帯状の繊維シートを製造する繊維シートの製造装置が知られている。例えば特許文献1に記載の繊維シートの製造装置では、電界紡糸部で紡糸された繊維を堆積させて搬送する搬送ベルトの背面に電極群を配置し、搬送ベルトに堆積された繊維の幅方向に沿う坪量分布を坪量分布測定部で測定し、測定された坪量分布に基づき電極群へ印加する電圧を増減することで、幅方向の坪量分布を均一な繊維シートを製造している。
特許文献2、3には、シートの目付けを計測する製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019―23361号公報
【文献】特開2014-224327号公報
【文献】特開平08-285535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の繊維シートの製造装置では、搬送ベルトの幅方向における坪量分布を計測し、搬送ベルトの背面側に配置した電極群へ印加する電圧を計測結果に基づき増減することで、搬送ベルトに吸着される幅方向における繊維量を調整して坪量の均一化を図っているが、坪量の均一化を図る新たな手法が模索されている。
また、特許文献2,3においては、シートの目付を計測してはいるが、計測結果に基づき坪量を制御するには至っていない。
【0005】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る繊維シートの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紡糸ノズルから原料液を吐出させ、電界紡糸法により紡糸し、紡糸された繊維で長尺帯状の繊維シートを製造する繊維シートの製造装置であって、前記紡糸ノズルに前記原料液を送る送液ポンプと、前記繊維シートを搬送する搬送手段と、前記送液ポンプの駆動を制御して前記紡糸ノズルに供給する原料液の送液量又は前記搬送手段の駆動を制御して前記繊維シートの搬送量を制御する制御部と、前記繊維シートの坪量又は厚みを非接触方式で計測する計測部と、前記計測部による計測結果に基づき、前記制御部による前記送液ポンプ又は前記搬送手段の駆動をフィードバック制御する、繊維シートの製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維シートの製造装置によれば、計測部による計測結果に基づき、制御部による送液ポンプ又は搬送手段の駆動をフィードバック制御するので、坪量に変動があった場合でも、坪量を調整することができ、品質の安定した繊維シートの製造が可能な繊維シートの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る繊維シートの製造装置の概略構成を説明する模式図である。
図2図2は、本発明に係る繊維シートの製造装置の制御系の一構成を説明するブロック図である。
図3図3は、繊維シートの製造装置の動作と製造工程を説明する図である。
図4図4は、照射部と検出部の配置と、検出部による計測領域と繊維シートの関係を説明する図であり(a)は搬送方向における計測領域と照明範囲と繊維シートの面積との関係を示し、(b)は搬送方向と同一平面内において直交する幅方向における計測領域と照射部からの照明範囲と繊維シートの関係を示し、(c)は計測領域の分割された1つの領域を説明する拡大図である。
図5図5は、透過光の強さ(明暗)の階調の一例を説明する図である。
図6図6は、一度の撮像による検出部の撮像範囲を説明する図である。
図7図7は、繊維シートの坪量と透過量の関係を説明する図である。
図8図8は、搬送速度の違いによる繊維シートの坪量と透過量の関係を説明する図である。
図9図9は、複数回計測された坪量を移動平均した際の結果を示す図である。
図10図10は、複数に分割された計測領域を説明する図である。
図11図11は、フィードバック制御の開始時期を説明する図である。
図12図12は、紡糸ノズルが1つの送液モータから送液される場合の制御形態を説明する図であり、(a)は、計測された坪量が目標坪量よりも低い場合、(b)は計測された坪量が目標坪量の場合、(c)は計測された坪量が目標坪量より高い場合をそれぞれ示す。
図13図13は、複数の紡糸ノズルが複数の送液モータから送液される場合の制御形態を説明する図であり、(a)は、繊維シートの幅方向の手前側と奥側の坪量が目標坪量よりも低い場合、(b)は計測された坪量が目標坪量の場合、(c)は、繊維シートの幅方向の中央部の坪量が目標坪量より低い場合をそれぞれ示す。
図14図14は、制御部が備える表示部に表示される制御画面の一形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の繊維シートの製造装置の一実施形態が模式的に示されている。図1に示す製造装置10は、原料供給部20、電界紡糸部30、捕集部40、計測部50、巻取部60及び制御部70を備えている。
【0010】
原料供給部20は、原料樹脂の溶液又は溶融液(以下「原料樹脂の溶液又は溶融液」を総称して「原料液」という)21が貯留されたタンク22と、タンク22内の原料液21を電界紡糸部30の紡糸ノズル31に送る送液ポンプ23を備えている。タンク22と紡糸ノズル31とは供給経路を構成する供給管24によって接続されている。送液ポンプ23は、吐出側が紡糸ノズル31側に位置するように供給管24に装着されている。送液ポンプ23は、駆動源となる送液モータ25によって回転駆動されることで、タンク22内の原料液21を、供給管24を介して紡糸ノズル31に供給(送液)する。送液ポンプ23の単位時間当たりの吐出量Pdは、ポンプ回転数によって制御される。送液ポンプ23には様々なタイプのものがあるが、本実施形態では、送液モータ25によりポンプ回転数が高くなると吐出量Pdが多く、送液モータ25によりポンプ回転数が低くなると吐出量が少なくなるタイプのポンプを使用している。つまり、送液ポンプ23の駆動が制御されると、紡糸ノズル31に供給される単位時間当たりの原料液21の送液量Aが変化する。
【0011】
電界紡糸部30は、原料供給部20から供給された原料液21を吐出して紡糸を行う装置である。電界紡糸部30は、原料液21を吐出する紡糸ノズル31と、帯電装置及び空気流噴射装置を備えた周知の構成のものである。電界紡糸部30は、紡糸ノズル31の噴射口が捕集部40と対向するように配置されている。紡糸ノズル31は、空気流噴射装置から供給される空気が噴射口から噴射されることで、帯電装置で帯電された原料液21が電界の作用によって細長く引き伸ばされて紡糸されて繊維Sとして吐出するように構成されている。
【0012】
本発明で製造する繊維シートの繊維径は特に制限されない。本発明においては、電界紡糸法により紡糸するため、例えば、繊維径がナノレベル又はそれに近いナノファイバを紡糸することもでき、ナノファイバを含む繊維シートを製造することも好ましい。本明細書において、ナノファイバとは、繊維径を円相当直径で表したときに、その平均繊維径が好ましくは0.1μm以上であり、更に好ましくは0.5μm以上であり、また好ましくは7μm以下であり、一層好ましくは4μm以下であり、更に好ましくは3μm以下であり、更に一層好ましくは2μm以下である繊維のことである。ナノファイバの繊維径は、例えば走査型電子顕微鏡観察による二次元画像から繊維の塊、繊維の交差部分、ポリマー液滴といった欠陥を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引いたときの横断長を測定し、これらの算術平均値とする。
【0013】
捕集部40は、吐出された繊維Sを捕集するものであり、搬送手段400を備えている。搬送手段400は、複数のローラ401,402間に巻き掛けられた無端状の搬送ベルト403と、紡糸ノズル31から吐出された繊維Sを搬送ベルト403上に吸着する吸引装置404と、搬送ベルト403を搬送方向MDに回転走行させる駆動源となる搬送モータ405を備えている。本実施形態においては、ローラ402が搬送モータ405によって回転駆動されるようになっている。搬送ベルト403には多数の吸引孔がベルト厚み方向に貫通して形成されている。搬送ベルト403としては、無端ベルトに代えて、例えば長尺帯状のベルトがロール状の巻回体から繰り出される構成のものであってもよい。搬送ベルト403としては、例えばフィルム、メッシュ、不織布、紙などを用いることができる。
【0014】
吸引装置404は、吸引ブロアで構成されていて、ブロア内部のファンが回転することで吸引力(負圧)を発生させるものである。吸引装置404は、紡糸ノズル31の噴射口と対向する搬送ベルト403のベルト搬送面403aよりも下方に配置されている。捕集部40は、吸引装置404により発生した吸引力が吸引孔を介してベルト搬送面403aに作用することで、紡糸ノズル31から吐出された繊維Sをベルト搬送面403aに吸着保持し、堆積させることで繊維Sのシート(以下、繊維Sのシートを「繊維シートSA」という)を形成する。搬送手段400は、搬送モータ405が駆動されて搬送ベルト403が回転走行することで、搬送ベルト403に堆積した繊維シートSAを搬送方向下流側へと搬送する。
【0015】
搬送手段400よりも搬送方向下流側には、ダンサー41と巻取部60が配されている。巻取部60は、巻取りロール61と巻取りモータ62を備えている。巻取りロール61は、巻取りモータ62によって回転駆動されることで、搬送ベルト403に堆積した繊維シートSAを巻き取ることにより回収するものである。搬送方向下流側に搬送された繊維シートSAは、ダンサー41を介して巻取りロール61へと案内され、巻取りロール61により巻き取られる。巻取りロール61の巻取方向C1は、繊維シートSAの巻取開始時に搬送方向МDと一致しており、搬送手段400による繊維シートSAの搬送に負荷を与えないように構成されている。また、巻取りロール61の巻取速度(回転速度)V2が搬送手段400による繊維シートSAの搬送速度Vよりも速いと、繊維シートSAに搬送方向MDへのテンションが作用し繊維シートSAの搬送速度Vにばらつきが生じることを考慮して、本実施形態では搬送速度Vと巻取速度V2とを等速としている。巻取径の増減が巻取速度に与える影響は、ダンサー41によって緩和される。
【0016】
ところで、繊維Sが堆積されてベルト搬送面403aに形成される繊維シートSAの坪量Gmは、紡糸ノズル31から吐出される繊維量と搬送ベルト403の搬送速度Vに相関している。すなわち、搬送速度Vが一定の場合、紡糸ノズル31から吐出される繊維量が多ければ堆積する繊維量が増えて坪量は高くなり、紡糸ノズル31から吐出される繊維量が少なければ、堆積する繊維量が減るので坪量は低くなる。また、紡糸ノズル31から吐出される繊維量を一定した場合、搬送速度Vが速くなると堆積される繊維量が減るので坪量は低く、搬送速度Vが遅くなると堆積される繊維量が増えるので坪量は高くなる。つまりベルト搬送面403aに堆積される単位時間当たりの繊維量が坪量に影響を与える。
このため、製造装置10では、設定した坪量Gmとなるように、原料供給部20から紡糸ノズル31へ供給された原料液21の送液量Aの目標値Aaと、搬送手段400の搬送速度Vの目標値Vaとが基準値として設定されている。製造装置10では、この基準値に基づき、送液モータ25と搬送モータ405を駆動している。しかし、実際に製造された繊維シートSAの坪量は、設定した坪量Gmからずれてしまうことがある。この要因は、搬送ベルト403のベルト搬送面403aに単位時間あたりに堆積する繊維量のバラツキが1つである。堆積する繊維量のバラツキの発生は、紡糸ノズル31への送液量Aのバラツキに伴う繊維量の変動と、搬送ベルト403の搬送速度Vの変動に起因する。
特許文献1では、搬送ベルトに静電的に繊維を吸着させて堆積して繊維シートを形成するため、搬送ベルトの帯電量を、測定された実際の坪量(実坪量)に応じて増減して堆積する繊維量を制御して坪量を調整していた。
【0017】
これに対し、本発明者は、紡糸ノズル31から吐出されることによって紡糸される繊維量と、搬送ベルト403の搬送速度Vに着目した。また、坪量Gmは、繊維シートSAの厚さと相関関係にある点にも着目し、これらを坪量変化のパラメータとして制御することで坪量Gmのバラツキの低減を図るようにした。
【0018】
本実施形態に係る製造装置10では、図1に示すように、繊維シートSAの坪量Gmを非接触方式で計測する計測部50と、送液ポンプ23の駆動を制御して紡糸ノズル31に供給する原料液21の送液量Aを調整(制御)する制御部70とを備えている。
計測部50は、搬送ベルト403に堆積された繊維シートSAが巻取りロール61へ搬送される過程で、繊維シートSAの坪量(坪量分布)を測定するものである。計測部50は、繊維シートSAに光52を照射する照射部51と、照射部51から繊維シートSAに照射された光52の透過量Xを検出する検出部となるカメラ53と、カメラ53で検出された光52の透過量Xを実坪量Gmnとして換算する処理部54を有している。光52の透過量Xを実坪量Gmnとして換算する処理部54の原理については後述する。
【0019】
制御部70は、図2に示すように、カメラ制御部71、送液制御部72及びコンベア制御部73を備えている。カメラ制御部71、送液制御部72及びコンベア制御部73は、中央演算部、記憶部及びタイマを備えたコンピュータで構成されている。
カメラ制御部71には、照射部51とカメラ53が信号線を介して接続されている。カメラ制御部71では、照射部51をオン/オフを制御するとともに、カメラ53による繊維シートSAの撮像タイミングを制御する。ここでは、照射部51がオンされて繊維シートSAに照明があたってからカメラ53による撮像を所定のタイミングで行うように制御する。
【0020】
カメラ53は、処理部54と信号線を介して接続されていて、カメラ53で撮像した画像情報を処理部54に送信するように構成されている。処理部54は、カメラ制御部71を経由して、送液制御部72と、コンベア制御部73に信号線を介して接続されている。処理部54は、カメラ53から送信された画像情報か光52の透過量Xを実坪量Gmnとして換算し、換算した実坪量Gmnを、カメラ制御部71を経由して送液制御部72とコンベア制御部73に送信する機能を備えている。
【0021】
送液制御部72及びコンベア制御部73の記憶部には、坪量判定に用いる目標坪量Gmaがそれぞれ設定されていて、坪量判定時に適宜、読み出し可能とされている。送液制御部72には、送液モータ25が信号線を介して接続されていて、送液モータ25の駆動を制御して送液ポンプ23の回転数を調整するように構成されている。
コンベア制御部73には、巻取りモータ62、吸引装置404及び搬送モータ405が信号線を介して接続されていて、繊維シートSAの搬送全般を制御するように構成されている。本実施形態において、搬送ベルト403は、搬送速度Vで定速回転走行するようにコンベア制御部73によって制御される。
【0022】
本実施形態では、計測部50での計測結果に基づき、制御部70による送液ポンプ23の駆動をフィードバック制御するようにしている。ここでは、制御部70(送液制御部72)による送液ポンプ23の駆動をフィードバック制御する。送液ポンプ23の駆動を制御するとは、送液モータ25を回転駆動して送液ポンプ23の回転数を制御することである。
制御部70では、目標坪量Gmaと実坪量Gmnとを比較し、実坪量Gmnが目標坪量Gmaとなるように、送液モータ25の駆動を送液制御部72で制御する。また、制御部70は、カメラ53で撮像した画像情報から光52の透過量Xを求め、この透過量Xに基づき、実坪量Gmnを制御する。
【0023】
図3は、製造装置10の動作と工程を説明する図である。本実施形態に係る製造装置10では、タンク22内で樹脂を溶融し、原料液21として貯める原料液準備工程後、送液ポンプ23によって原料液21を紡糸ノズル31へと送液する送液工程を実行する。次に紡糸ノズル31から原料液21を吐出して帯電させつつ紡糸して繊維Sを形成する紡糸工程を実行し、搬送ベルト403に堆積させて捕集してシート化することで繊維シートSAを形成するシート形成工程を行う。
製造装置10は、計測部50を用いて繊維シートSAの坪量計測を行う計測工程を行い、計測工程後に繊維シートSAを巻取りロール61で巻き取る巻取り工程を行う。また、本実施形態では、計測部50で計測された坪量計測結果に基づき送液ポンプ23の駆動をフィードバック制御する。
【0024】
このため、本実施形態に係る製造装置10によれば、紡糸ノズル31に対する原料液21の送液量Aが調整されるので、紡糸によって形成される繊維量を調整することができる。このため、繊維シートSAの坪量Gmに変動があった場合でも、搬送ベルト403上に堆積される単位時間当たりの繊維Sの堆積量を増減することができるので、繊維シートSAの坪量Gmを目標坪量Gmaに近づけることができ、結果、品質の安定した繊維シートSAの製造が可能となる。また、坪量が自動計測されるので、機械的に設定した坪量となるよう、繊維シートSAを製造できる。
すなわち、製造装置10によれば、初期設定された目標坪量より製造された繊維シートSAの坪量の計測結果に応じて、紡糸ノズル31から吐出される原料液21(S)や搬送手段400によるシートの搬送速度Vを加減して、坪量を設定された坪量となるようにフィードバック制御することができる。
また、製造装置10では、反射式、静電容量の検出による坪量計測ではなく、非接触で坪量検知を行える。
【0025】
次に、計測部50の具体的な構成について説明する。
照射部51は、図4(a)に示すように、繊維シートSAに対して搬送方向МDと直交する下方から繊維シートSAの下面に向かって光52を照射する照明装置で構成されている。照射された光52は、繊維シートSAを通過するものと反射されるものがあるが、カメラ53は、繊維シートSAを通過した光52を検出する。
カメラ53は、デジタルカメラであって、CMOS/CCDなどの撮像素子であるイメージセンサを備えている。このイメージセンサによる計測領域を符号501で示す。計測領域501は、幅方向CDに複数に分割された領域502によって形成されている。本実施形態において、計測領域501は、18個の領域502に分割されている。図4(c)は、分割された領域502の1つを示している。各領域502は、それぞれ幅方向CDへの幅502Wが搬送方向МDへの幅502Dよりも短い矩形とされていて、所定の画素数を備えている。計測領域501は、このような矩形の領域502を幅方向CDに複数隣接配置することで形成されている。また、領域502の各ドット単位で検出される照度は、領域502毎に処理部54によって平均化処理される。照射部51から照射される照明には光源直下と周囲で照度ムラがある。この照度ムラは、繊維シートSAを透過する光の透過量Xのバラツキとなってしまうことがあるため、平均化することで透過量Xのバラツキを抑えている。
【0026】
イメージセンサでは、照射部51から照射された繊維シートSAを照射部51と反対側から撮像して取り込み、撮像した画像情報の光の強弱度合から繊維シートSAを透過した透過量Xを判別する。イメージセンサは、図5に示すように、透過光の強さ(明暗)を所定階調として数値化する。ここでは、暗から明の範囲を0~255の段階で設定している。繊維シートSAを透過した光は、256段階(8ビット)の強さで認識される。
カメラ53は、図6に示すように、搬送方向МDに搬送される繊維シートSAに対し、照射部51から光52を照射した状態で所定間隔(時間)毎に撮像を行うように、カメラ制御部71でその動作が制御される。図6中、符号503は、一度の撮像による撮像範囲を示す。
【0027】
図7図8は、繊維シートSAの坪量Gmと透過量Xとの関係を示す。図7は、搬送ベルト403の搬送速度Vを定速運転し、紡糸ノズル31から吐出される繊維量を一定として、計測部50で繊維シートSAの透過量Xを計測するとともに、計測した繊維シートSAの坪量Gmを計測機器で計測した計測結果をプロットしたものである。図7において、横軸は繊維シートSAのシート幅(mm)を示し、縦軸は透過量と坪量(g/m)を示す。図7中おいて、◇は領域502毎の平均透過量を示し、□は領域502毎に計測機器で計測した坪量Gmを示す。
図7に示す計測結果によると、搬送速度Vが一定で、紡糸ノズル31から吐出される繊維量も一定の場合においては、各領域502で検出される透過量Xと計測機器で計測した坪量Gmとの関係は、同様の変化特性を示している。
【0028】
図8は、搬送ベルト403の搬送速度Vを変化させて運転し、紡糸ノズル31からの繊維量は図7と同一として、計測部50によって繊維シートSAの透過量Xを計測するとともに、計測した繊維シートSAの坪量Gmを計測機器で計測した計測結果をプロットしたものである。図8において、横軸は坪量(g/m)を示し、縦軸は透過量Xを示す。
図8中おいては、速度に応じてバラツキはあるが、搬送速度が下がるに従い坪量Gmは増え、透過量Xは低下するという特性が搬送速度Vを変化させた場合でも得られている。また、これら計測された計測データ〔プロット点〕の〔平均粗さ〕Raを演算したところ0.9以上の数値となり、搬送速度Vが変化しても、透過量Xと坪量Gmの増減特性は、同様の変化特性を示している。
【0029】
このような坪量Gmと透過量Xの関係から見て、繊維シートSAを透過する光の透過量Xは、繊維シートSAを形成する単位面積当たりの繊維量によって異なることから、本実施形態では、光の透過量Xを繊維シートSAの坪量Gmとしている。つまり、光の透過量Xが多く光の強度(明度)の数値が高い場合は繊維シートSaの坪量Gmは低く、光の透過量が少なく光の強度(明度)の数値が低い場合は、繊維シートSAの坪量Gmは高くなるものとしている。処理部54には、光の強度(明度)と坪量Gmとの関係が試験的に求められて記憶されていて、カメラ53から送られてくる画像情報から得られる光の強度(明度)を解析し、計測部50で計測された繊維シートSAの坪量Gm(実坪量)として換算している。
また、本実施形態においては、計測部50による計測領域501を複数有し、処理部54は、計測領域501で計測された光の透過量X(強度)を平均化して実坪量Gm1として処理部54で換算する。
【0030】
処理部54での処理の手法としては、上記のものに限定されるものではなく、別な手法で透過量Xを坪量(実坪量Gm1)に換算してもよい。例えば、図4に示したように、カメラ53の撮像素子が、複数の領域502で計測領域501が形成されている場合、処理部54は、各領域502で計測された光の透過量Xを単位時間毎に平均化して移動平均値とし、該移動平均値から実坪量Gm1を換算してもよい。
あるいは図9に示すように、計測部50による計測を単位時間毎に行い、一度の計測で計測された坪量Gmを平均化処理して移動平均してもよい。図9に示す例では計測回数nを10回としている。この場合においては、カメラ53の撮像素子で検知する検知の突発的な誤差(坪量Gmの突発的な誤差)を緩和するように、制御信号を生成することができるので、安定的に坪量Gmの制御を行える。
【0031】
別な制御形態としては、計測部50で計測された坪量Gm(実坪量Gm1)に基づき坪量平均値Gm2を制御部70で導出し、坪量平均値Gm2が所定回数導出された場合、導出された各坪量平均値Gm2に基づき、送液ポンプ23の回転数を送液モータ25の駆動を制御することで調整するように制御してもよい。このような制御形態としても、カメラ53の撮像素子で検知する検知の突発的な誤差を緩和するように、制御信号を生成することができるので、安定的に坪量Gmの制御を行える。
【0032】
上記実施形態において、計測領域501は、繊維シートSAの幅方向CDに18個に分割された領域502を備えている。このため、図10に示すように、計測領域501を幅方向CDにおいて、手前側、中央部、奥側の3つの領域501A,501B,501Cに分割し、領域501A,501B,501Cにそれぞれ同数の領域502を形成して設定している。
そして、一度の計測毎に、領域501A,501B,501C毎に透過量Xを算出し、算出した透過量X毎に坪量Gmに置換えし、当該領域毎の坪量となるようにフィードバック制御してもよい。このような制御形態の場合、繊維シートSAの幅方向CDにおける坪量Gmのバラツキを抑制して安定して繊維シートSAを製造することができる。
あるいは、一回の計測で領域501A,501B,501Cから得られる透過量から求めた坪量を平均化し、所定時間毎に行なう。例えば各領域の計測回数k時の平均値nを算出し、それを10回した場合、下記式1及び式2を用いて10回当たりの平均坪量値を算出することができる。
【数1】
【数2】
すなわち、計測部50による計測領域501は、繊維シートSAの幅に応じて選択可能に複数の領域501A,501B,501Cとして設定されていて、処理部54は、繊維シートSAの幅に応じて選択された計測領域で計測された光の透過量Xを平均化して実坪量Gm1として換算することが好ましい。
【0033】
製造装置10においては、図11に示すように、搬送ベルト403の搬送速度が装置稼働時〔スタート〕から設定された搬送速度による定速運転になるまでの期間が、搬送速度が加速する経過期間Taとなる。これは搬送モータ405が所定回転数に到達するまでに時間を要する点と、送液モータ25や送液ポンプ23のフリクションロスが主な要因となる。このため、制御部70では搬送ベルト403が設定された搬送速度になるまでの加速領域(経過期間Ta)においては、坪量均一化するためのフィードバックを実行せず、経過期間Taを経過して定常速度で搬送ベルト403が移動した後、フィードバックを実行するようにしてもよい。
【0034】
このよう制御形態によると、坪量均一化するためのフィードバックが搬送ベルト403の速度が安定した状態で行われるので、計測部50で計測された実坪量Gm1を効率よく目標坪量Gmaまで補正することができるので好ましい。
すなわち、制御部は70、装置稼働時から目標坪量Gmaに達するまでの経過期間Taにおいて搬送手段400を第1の速度V-1で駆動させ、目標坪量Gmaに到達した場合、搬送手段を第1の速度よりも速い定常速度(搬送速度)Vで駆動するように制御する。
制御部70は、装置稼働時から目標坪量Gmaに達するまでの経過期間Taにおいて搬送手段400を第1の速度V-1で駆動させ、目標坪量Gmaに到達した場合、搬送手段を第1の速度よりも速い定常速度(搬送速度)Vで駆動するように制御することになる。
【0035】
次に、図12図13を用いて紡糸ノズル31の配置と、各紡糸ノズル31に対する送液量Aの制御について説明する。
図12に示す形態は、紡糸ノズル31が繊維シートSAの幅方向CDに沿って複数配置されていて、各紡糸ノズル31が1つの送液ポンプ23から原料液21の送液を受ける形態である。そして制御部70では、計測された透過量Xから求められた坪量Gmに応じて、送液ポンプ23を制御し、紡糸ノズル31から吐出される繊維量を制御している。図12(a)は、計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値が目標坪量Gmaよりも低い場合の計測状態を示す。図12(b)は、計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値が目標坪量Gmaの場合の計測状態を示す。図12(c)は、計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値が目標坪量Gmaより高い場合の計測状態を示す。
【0036】
本実施形態において、処理部54は、透過量Xから求めた坪量Gmを平均化している。制御部70(送液制御部72)には、送液ポンプ23が基準速度(回転数)Bで駆動して際に得られる目標坪量Gmaのデータが基準速度(回転数)Bと関連付けて記憶されている。
制御部70(送液制御部72)では、図12(a)に示すように、計測部50によって計測された実坪量Gm1(ここでは平均値)が目標坪量Gmaを下回った場合には、実坪量Gm1(平均値)と目標坪量Gmaの差分αだけ坪量を増やすべく、送液モータ25の回転数を増速(基準速度+α)するように制御する。
一方、図12(c)に示すように、計測部50によって計測された実坪量Gm1(ここでは平均値)が目標坪量Gmaを上回った場合には、実坪量Gm1(平均値)と目標坪量Gmaの差分-αだけ坪量を減らすべく、送液モータ25の回転数を減速する(基準速度-α)ように制御する。
このため、本実施形態に係る製造装置10によれば、紡糸ノズル31に対する原料液21の送液量Aが、検出された坪量に応じて調整されるので、紡糸によって形成される繊維量を調整することができる。このため、繊維シートSAの坪量Gmに変動があった場合でも、搬送ベルト403上に堆積される単位時間当たりの繊維Sの堆積量を増減することができるため、繊維シートSAの坪量Gmを目標坪量Gmaに近づけることができ、結果、品質の安定した繊維シートSAの製造が可能となる。
また、製造装置10によれば、幅方向CDに沿う紡糸ノズル31を1つの送液ポンプ23で制御することができるので、簡易にシート全体の坪量の制御が可能となるので好ましい。
【0037】
図13に示す形態は、紡糸ノズル31が繊維シートSAの幅方向CDに沿って複数配置されていて、各紡糸ノズル31が複数の送液ポンプ23から原料液21の送液を受ける形態である。本形態では送液ポンプ23を2つ備えている。そして、一方の送液ポンプ23Aは、繊維シートSAの中央の領域501Bに配置された紡糸ノズル31Bに対して送液を行い、他方の送液ポンプ23Bは、繊維シートSAの手前側と奥側の領域501A,501Cに配置された紡糸ノズル31A,31Cに対して送液を行うように供給管24A,24Bによって接続されている。すなわち、紡糸ノズル31Bは、繊維シートSAの幅方向CDにおける中央部に配置され、紡糸ノズル31Aと紡糸ノズル31Cは、中央部よりも幅方向の外側にそれぞれ配置されている。送液ポンプ23Aは送液モータ25Aによって回転駆動され、送液ポンプ23Bは送液モータ25Bによって回転駆動される。
【0038】
本実施形態において、処理部54は、各領域の透過量Xから求めた坪量Gmを領域毎に平均化している。制御部70(送液制御部72)には、送液ポンプ23A,23Bが基準速度(回転数)Bで駆動して際に得られる目標坪量Gmaのデータが基準速度(回転数)Bと関連付けて記憶されている。
図13(a)は、各領域で計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値のうち、手前側と奥側の領域501A,501Cで計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値が目標坪量Gmaよりも低い場合の計測状態を示す。図13(b)は、各領域で計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値が目標坪量Gmaの場合の計測状態を示す。図13(c)は、各領域で計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値のうち、中央部の領域501Bで計測された坪量(実坪量Gmn)の平均値だけが目標坪量Gmaよりも低い場合の計測状態を示す。
【0039】
制御部70(送液制御部72)では、図13(a)に示すように、計測部50によって計測された実坪量Gm1(ここでは平均値)が、領域502Aと領域502Cにおいて目標坪量Gmaを下回った場合には、実坪量Gm1(平均値)と目標坪量Gmaの差分αだけ坪量を増やすべく、送液モータ25Bの回転数を増速(基準速度+α)するように制御する。
一方、図13(c)に示すように、計測部50によって計測された実坪量Gm1(ここでは平均値)が、領域502Bにおいて目標坪量Gmaを下回った場合には、実坪量Gm1(平均値)と目標坪量Gmaの差分αだけ坪量を増やすべく、送液モータ25Aの回転数を増速(基準速度+α)するように制御する。
【0040】
このため、本実施形態に係る製造装置10によれば、複数の紡糸ノズル31A~31Cに対する原料液21の送液量Aが、検出された個別な領域の坪量に応じて調整されるので、紡糸によって形成される繊維量を繊維シート32の幅方向CDの領域毎に調整することができる。このため、各領域で繊維シートSAの坪量Gmに変動があった場合でも、搬送ベルト403上に堆積される単位時間当たりの繊維Sの堆積量を各領域に増減することができるため、繊維シートSAの全体の坪量Gmを目標坪量Gmaに近づけることができ、結果、品質の安定した繊維シートSAの製造が可能となる。
つまり、本実施形態においては、複数の紡糸ノズル31A~31Cは、複数の送液ポンプ23A,23Bのうちの少なくとも2つ以上の送液ポンプの駆動を制御部70で制御されることで各紡糸ノズルから吐出される繊維量が制御される。このため紡糸ノズル31の制御を幅方向CD毎に個別に制御できるので、幅方向CDでの坪量を制御することが可能となるので好ましい。
【0041】
図13で説明した実施形態においては、2つの送液ポンプ23A,23Bで、3つの領域501A~501Cにそれぞれ配置された複数の紡糸ノズル31A~31Cに原料液21を送液し、制御部70で送液ポンプ23A,23Bの駆動を、各領域で計測された計測結果である坪量Gmに応じて制御したが、このような形成に限定されるものではない。
例えば、個別な領域に配置された紡糸ノズル31A,31B,31Cに対して同数の送液ポンプ23A,23B,23Cを供給管24A,24B,24Cでそれぞれ接続し、制御部70で送液ポンプ23A,23B,23Cを計測された坪量に基づき個別に制御するようにしてもよい。この場合、図13に示す形態に比べて、繊維シートSAの坪量のバラツキにより柔軟に対応することができる。つまり、繊維シートSAの全体の坪量Gmを目標坪量Gmaに近づけることができ、品質の安定した繊維シートSAの製造が可能となる。
つまり、複数の紡糸ノズル31A~31Cの数と同数の送液ポンプ23A~23Cを備え、各紡糸ノズルはノズル1つにつき1つの送液ポンプから原料液21の送液を受けるので、高い精度で幅方向での坪量を揃えられる。
【0042】
図14は、制御部70が備える表示部としての画面701に表示される制御画面の一例を示す。この画面701はタッチパネルで構成されていて、表示される操作部702,703,704を接触操作することで、目標坪量が変更可能に構成されている。操作部702は繊維シートSAの手前側の領域501Aの目標坪量を変更する際に操作する部位である。操作部703は繊維シートSAの中央部の領域501Bの目標坪量を変更する際に操作する部位である。操作部704は繊維シートSAの奥側の領域501Cの目標坪量を変更する際に操作する部位である。
また、画面701には、計測領域501で計測されている領域502毎の坪量の値が表示される坪量表示部705が設けられている。
【0043】
このような操作部702,703,704を備えることで、繊維シートSAの坪量を任意の値に変更することができる。また、各領域502で測定された坪量が坪量表示部705に表示されるので、計測部50による自動制御だけでなく、作業者の目視による確認が行える。このため、設定ミスなどをチェックすることができ、より品質の安定した繊維シートSAの製造が可能となる。
【0044】
上述の実施形態においては、計測部50による繊維シートSAの坪量の計測結果に基づき紡糸ノズル31から吐出される繊維量を増減すべく、送液ポンプ23,23A,23Bの駆動をフィードバック制御するようにしたが、このような形態に限定するものではない。例えば、紡糸ノズル31から吐出される繊維量を定量制御し、フィードバック制御の制御対象を搬送モータ405としてもよい。この場合、計測部50で計測された坪量の計測結果に基づき搬送ベルト403の搬送速度Vが増減され、ベルト搬送面403aに堆積される単位時間当たりの繊維量を、計測した坪量に応じて変更することができる。このような制御形態としても、繊維シートSAの坪量Gmを目標坪量Gmaに近づけることができ、品質の安定した繊維シートSAの製造が可能となる。
上記実施形態では、繊維シートSAを透過した透過量Xから坪量を求め、当該求めた坪量に基づき、搬送ベルト403に堆積する単位時間当たりの繊維量を調整したが、繊維シートSAから坪量を求めるパラメータとしては、透過量Xに限定するものでない。例えば、繊維シートSAの厚みは透過量Xと相関関係にあるので、シート厚に基づき透過量Xを求め、透過量Xから坪量を求めて、当該求めた坪量に基づき、送液ポンプ23、搬送モータ405の駆動を制御してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 製造装置
21 原料液
23,23A,23B 送液ポンプ
31,31A,31B 紡糸ノズル
50 計測部
51 照射部
52 光
53 検出部
54 処理部
70 制御部
400 搬送手段
501 計測領域
502 分割された計測領域
SA 繊維シート
X 透過量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14