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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】折り畳み式椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/04 20060101AFI20240703BHJP
   A47C 4/04 20060101ALI20240703BHJP
   A47C 5/10 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A47C3/04
A47C4/04 Z
A47C5/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020039721
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137449
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 友希
(72)【発明者】
【氏名】中村 保弘
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-210153(JP,A)
【文献】実開平02-040233(JP,U)
【文献】特許第3477014(JP,B2)
【文献】特開2017-153585(JP,A)
【文献】特開2020-031904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/04
A47C 4/04
A47C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれと、座と、前記背もたれ及び前記座を直接的又は間接的に支持する左右の前脚部及び左右の後脚部と、を備えており、
前記前脚部と後脚部とはそれぞれ左右に脚杆を有し、
これら前脚部と後脚部とは、側面視で夾角を変化させ得るように相対回動可能に直接的又は間接的に連結されていると共に、
前記前脚部における左右脚杆の左右間隔と後脚部における左右脚杆の左右間隔とが異なり、
前記座は、前記前脚部と後脚部とが閉じ回動して折り畳まれるとこれに連動して側面視上下長手の姿勢に回動するように前記前脚部及び後脚部のうち少なくとも一方に連結されており、
前記前後脚部を閉じ回動させた折畳み状態で、前後にネスティング可能であると共に、自立させ得るように前脚部と後脚部との下端間の間隔が設定されている折り畳み式椅子であって、
前記座よりも高い位置に配置されて肘掛けとして機能する左右のアーム部を備えており、前記前脚部および前記後脚部は前記アーム部に連結されている、
折り畳み式椅子。
【請求項2】
背もたれと、座と、前記背もたれ及び前記座を直接的又は間接的に支持する左右の前脚部及び左右の後脚部と、を備えており、
前記前脚部と後脚部とはそれぞれ左右に脚杆を有し、
これら前脚部と後脚部とは、側面視で夾角を変化させ得るように相対回動可能に直接的又は間接的に連結されていると共に、
前記前脚部における左右脚杆の左右間隔と後脚部における左右脚杆の左右間隔とが異なり、
前記座は、前記前脚部と後脚部とが閉じ回動して折り畳まれるとこれに連動して側面視上下長手の姿勢に回動するように前記前脚部及び後脚部のうち少なくとも一方に連結されており、
前記前後脚部を閉じ回動させた折り畳み状態で、前後にネスティング可能であると共に、自立させ得るように前脚部と後脚部との下端間の間隔が設定されている折り畳み式椅子であって、
前記前脚部と後脚部とが閉じ回動する前の着座可能状態において、前記前脚部の全体が前記後脚部よりも前に位置するように設定されて、
前記折畳み状態において、前記前脚部と後脚部とは交差し、前記前脚部の下端は前記後脚部の下端よりも後に位置して前記前脚部の上端は前記後脚部の上端よりも前に位置するように設定されている、
り畳み式椅子。
【請求項3】
背もたれと、座と、前記背もたれ及び前記座を直接的又は間接的に支持する左右の前脚部及び左右の後脚部と、を備えており、
前記前脚部と後脚部とはそれぞれ左右に脚杆を有し、
これら前脚部と後脚部とは、側面視で夾角を変化させ得るように相対回動可能に直接的又は間接的に連結されていると共に、
前記前脚部における左右脚杆の左右間隔と後脚部における左右脚杆の左右間隔とが異なり、
前記座は、前記前脚部と後脚部とが閉じ回動して折り畳まれるとこれに連動して側面視上下長手の姿勢に回動するように前記前脚部及び後脚部のうち少なくとも一方に連結されており、
前記前後脚部を閉じ回動させた折り畳み状態で、前後にネスティング可能であると共に、自立させ得るように前脚部と後脚部との下端間の間隔が設定されている折り畳み式椅子であって、
前記前脚部と後脚部とは前記座よりも高い位置において連結されており、前記前脚部には前記背もたれが取り付けられている、
り畳み式椅子。
【請求項4】
背もたれと、座と、前記背もたれ及び前記座を直接的又は間接的に支持する左右の前脚部及び左右の後脚部と、を備えており、
前記前脚部と後脚部とはそれぞれ左右に脚杆を有し、
これら前脚部と後脚部とは、側面視で夾角を変化させ得るように相対回動可能に直接的又は間接的に連結されていると共に、
前記前脚部における左右脚杆の左右間隔と後脚部における左右脚杆の左右間隔とが異なり、
前記座は、前記前脚部と後脚部とが閉じ回動して折り畳まれるとこれに連動して側面視上下長手の姿勢に回動するように前記前脚部及び後脚部のうち少なくとも一方に連結されており、
前記前後脚部を閉じ回動させた折り畳み状態で、前後にネスティング可能であると共に、自立させ得るように前脚部と後脚部との下端間の間隔が設定されている折り畳み式椅子であって、
前記座は、前端が下で後端が上になる姿勢に折り畳まれるように前記前脚部の左右脚杆に回動自在に連結されている、
り畳み式椅子。
【請求項5】
背もたれと、座と、前記背もたれ及び前記座を直接的又は間接的に支持する左右の前脚部及び左右の後脚部と、を備えており、
前記前脚部と後脚部とはそれぞれ左右に脚杆を有し、
これら前脚部と後脚部とは、側面視で夾角を変化させ得るように相対回動可能に直接的又は間接的に連結されていると共に、
前記前脚部における左右脚杆の左右間隔と後脚部における左右脚杆の左右間隔とが異なり、
前記座は、前記前脚部と後脚部とが閉じ回動して折り畳まれるとこれに連動して側面視上下長手の姿勢に回動するように前記前脚部及び後脚部のうち少なくとも一方に連結されており、
前記前後脚部を閉じ回動させた折り畳み状態で、前後にネスティング可能であると共に、自立させ得るように前脚部と後脚部との下端間の間隔が設定されている折り畳み式椅子であって、
前記前脚部を構成する左右脚杆の上端に後ろ向きのアーム部を設け、
前記背もたれは、その左右両端がそれぞれ前記アーム部の後端に連なっており、
前記後脚部における左右脚杆は、上端近傍の部分が前記アーム部に連結されている、
り畳み式椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、折り畳んだ状態で前後にネスティングできる(嵌め合わせできる)椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば会議場用の椅子のように、不使用時に倉庫や部屋の隅に片付けておく必要がある椅子において、できるだけ狭いスペースに収納できるようにする手段が講じられている。この手段には、椅子を折り畳み式に構成することと、重ね合わせできる構成にすることとが含まれ、後者には、前後に重ね合わせできるネスティングタイプがある。
【0003】
ネスティングできる椅子では、座を跳ね上げ式に構成すると共に、前後の脚部の左右幅を異ならせることにより、複数の椅子を前後に重ね合わせできるようになっていることが多い(例えば特許文献1)。
【0004】
そして、折り畳み式椅子は折り畳むことによって保管に要するスペースを小さくできるが、保管するに当たっては壁際等に立て掛けているため、倒れやすいという問題がある。また、人が手で持ち上げて移動させなければならないため、格納作業や使用状態に並べるのに手間が掛かるという問題もある(折り畳み作業及び展開作業も面倒である)。
【0005】
他方、ネスティングタイプの椅子では、背もたれ等を手で掴んで床上を押したり引いたりして移動できるため、使用後の格納作業や使用前の準備作業の手間を大幅に軽減できる利点がある。そして、ネスティングタイプの椅子は、常に床上に自立して移動させやすいようにキャスタを備えていることが多い。
【0006】
ネスティングタイプの椅子は上記のような利点を有するが、単に座を跳ね上げできるだけの構成では、ネスティング状態で前後の椅子の間隔を詰めることに限度があり、従って、格納スペースの縮小に限度があるという問題がある。
【0007】
これに対して特許文献2には、Xリンク状に連結された前後の脚部を互いに重なる方向に相対回動可能としつつ、座と背もたれとを閉じ回動させ得るようにした折り畳み式椅子において、折り畳んだ状態で前後脚部の下端間に自立を許容する間隔が空くように設定することにより、折り畳み状態でネスティングを可能にした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-086364号公報
【文献】特開2000-210153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2の椅子は、背もたれと座と前後脚部との4つの部材が相対回動可能に連結された4点リンク機構になっており、背もたれの下端部と座の後端部とがヒンジ機構によって連結されており、折り畳んだ状態で、背もたれは使用状態と上下逆の姿勢になり、座は後端が上で前端が下に位置した上下長手の姿勢になっている。
【0010】
そして、前脚部を側面視で斜め前方に膨れたく字形に形成し、後脚部を側面視で斜め後方に膨れたく字形に形成して、折り畳み式椅子で前脚部と後脚部の下部とを側面視で交叉させることにより、前脚部の下端と後脚部の下端との間に自立のための間隔を空けている。
【0011】
特許文献2の椅子は、折り畳んだ状態で自立しているため、前後間隔を詰めた状態にネスティングできる利点がある。
【0012】
しかし、特許文献2では、座と背もたれとは互いに重なり合うように連結されているため、背もたれは平板状の形態にならざるを得ず、このため、デザインの自由性が低いという問題がある。また、背もたれと座とは重なり合っているため、使用状態に展開するに際しては、いったん持ち上げてから前後脚部を広げるなどせねばならず、展開作業はかなり面倒であると解される。
【0013】
本願発明は、上記課題を解決することを図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明の椅子は折り畳み式であり、各請求項の構成を含んでいる。このうち請求項1の発明は、
「背もたれと、座と、前記背もたれ及び前記座を直接的又は間接的に支持する左右の前脚部及び左右の後脚部と、を備えており、
前記前脚部と後脚部とはそれぞれ左右に脚杆を有し、
これら前脚部と後脚部とは、側面視で夾角を変化させ得るように相対回動可能に直接的又は間接的に連結されていると共に、
前記前脚部における左右脚杆の左右間隔と後脚部における左右脚杆の左右間隔とが異なり、
前記座は、前記前脚部と後脚部とが閉じ回動して折り畳まれるとこれに連動して側面視上下長手の姿勢に回動するように前記前脚部及び後脚部のうち少なくとも一方に連結されており、
前記前後脚部を閉じ回動させた折畳み状態で、前後にネスティング可能であると共に、自立させ得るように前脚部と後脚部との下端間の間隔が設定されている
という基本構成において、
「前記座よりも高い位置に配置されて肘掛けとして機能する左右のアーム部を備えており、前記前脚部および前記後脚部は前記アーム部に連結されている
という構成になっている。
【0015】
求項2の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記前脚部と後脚部とが閉じ回動する前の着座可能状態において、前記前脚部の全体が前記後脚部よりも前に位置するように設定されて、
前記折畳み状態において、前記前脚部と後脚部とは交差し、前記前脚部の下端は前記後脚部の下端よりも後に位置して前記前脚部の上端は前記後脚部の上端よりも前に位置するように設定されている
という構成になっている。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記前脚部と後脚部とは前記座よりも高い位置において連結されており、前記前脚部には前記背もたれが取り付けられている」
という構成になっている。
【0017】
請求項4の発明は請求項1と同じ基本構成において、
「前記座は、前端が下で後端が上になる姿勢に折り畳まれるように前記前脚部の左右脚杆に回動自在に連結されている」
という構成になっている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記前脚部を構成する左右脚杆の上端に後ろ向きのアーム部を設け、
前記背もたれは、その左右両端がそれぞれ前記アーム部の後端に連なっており、
前記後脚部における左右脚杆は、上端近傍の部分が前記アーム部に連結されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0019】
本願発明では、折り畳んだ状態で自立できるため、折り畳み式椅子でありながら、多数の脚部を安定的にネスティングできる。従って、ネスティングタイプの椅子でありながら、格納スペースの利用効率を向上できる。
【0020】
また、前脚部と後脚部との夾角の変化に連動して座が回動するものであるため、例えば、座の後端部分や背もたれを掴んで持ち上げることにより、脚部の自重を利用して自動的に折り畳むことも可能であり、従って、折り畳み操作を軽快に行えると共に、折り畳んだ椅子を展開させることも容易に行える。
【0021】
更に述べると、折り畳みに際しては、前後脚部の下端を床に当てた状態で座の後端部分を持ち上げて前後脚部を閉じ回動させることが可能であり、従って、折り畳み作業に際して人の負担を軽減できる。また、展開作業も同様であり、背もたれ等を掴んで持ち上げて傾けることによって前後の脚部を広げ回動させ得るため、展開作業も容易に行える。
【0022】
また、既述のとおり、本願発明では、前後脚部の下端を床に当てた状態で折り畳み作業と展開作業とを行うことが可能であるが、実施形態のようにキャスタを設けると、床に対する移動抵抗が無くなるため、持ち上げによって前後脚部を閉じ回動させることが一層容易になると共に、折り畳んだ状態で背もたれを下向きに押して前後脚部を広げ回動させることも一層容易になる。従って、折り畳み作業と展開作業との作業性向上を確実化できる。
【0023】
請求項2では、人が着座する展開状態で前脚部と後脚部とは側面視で交差することなく前後に分離しているため、座の前後支持スパンを大きくして、座の安定性を高めて高い支持強度を保持できる。
また、請求項2のように前後脚部を交叉した姿勢に折り畳む構成を採用すると、折り畳んだ状態で何らかの理由で背もたれに上から力が掛かっても、展開することなく折り畳み状態を保持できる。従って、折り畳まれた状態で不測に展開することを防止できる。
【0024】
また、請求項3のように、前脚部と後脚部とを座よりも高い位置において連結すると、座を前脚部と後脚部とに直接的に連結してリンク機構を構成することができるため、構造を簡単化できる。また、背もたれを前脚部の上端に設けると、着座した人の荷重が前脚部と後脚部とを押すように作用するため、使用状態での椅子の安定性を向上できる。
【0025】
また、折り畳んだ状態で背もたれと座及び脚部とが当たることはないため、ネスティング状態で前後の椅子を密着させることができる。従って、折り畳んだ状態でのコンパクト化を促進して、格納スペースの有効利用を促進できる。
【0026】
請求項4のように、座をその後端が上にした姿勢で折り畳むと、折り畳んだ状態で座の表面が手前に露出するため、折り畳み状態で見栄えがよいという利点がある。
【0027】
請求項5の構成を採用すると、着座者の上半身が左右のアーム部と背もたれとで囲われた状態になるため、着座者の上半身の安定性を向上できる。また、アーム部は、肘掛けとして使用したり、子に腰掛けたり立ち上がったりするに際して手を当てる支えとして使用することもできるため、使い勝手がよい。また、第1実施形態のように、前脚部と後脚部とは、その上端の間隔を広げて側面視でハ字の姿勢にできるため、座の前後支持スパンを大きくして支持安定性を向上できる利点も有する。この点は、請求項1も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は前方から見た斜視図、(B)は側面図、(C)は下方から見た斜視図、(D)は底面図である。
図2】(A)(B)とも第1実施形態の分離斜視図である。
図3】(A)は展開状態での縦断側面図、(B)は折り畳み状態での縦断側面図である。
図4】(A)(B)は折り畳み状態の斜視図、(C)はネスティング状態の側面図である。
図5】第2実施形態の斜視図である。
図6】背もたれを仮想線で表示した平面図である。
図7】(A)は側面図、(B)は要部の縦断側面図、(C)は(B)のC-C視断面図である。
図8】折り畳み途中の模式的な側面図である。
図9】折り畳んでネスティングしている状態の側面図である。
図10】第3実施形態の模式的な側面図である。
図11】第4実施形態の模式的な側面図である。
図12】第5実施形態の模式的な側面図である。
図13】第6実施形態の模式的な側面図である。
図14】第7実施形態の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この方向は、椅子に普通に腰掛けた人の向きを基準にしている。正面視は着座した人と対向した方向である。
【0030】
(1).第1実施形態(図1~4)
まず、図1~4に示す第1実施形態を説明する。実施形態の椅子は、会議室や講堂、飲食店、或いは家庭などで使用できる高汎用タイプであり、図1に示すように、座1と背もたれ2及びこれらを支持する前脚部3及び後脚部4を備えている。前脚部3及び後脚部4の上端は、座1よりも上に位置している。
【0031】
図1に示すように、座1は、木製又は樹脂製で板状になっている。すなわち、1枚の座板の構造になっている。但し、座1は、座板(インナー板)にクッション材を張った構造や、第2実施形態のようなメッシュタイプなども採用できる。背もたれ2は合成樹脂を使用した成型品であるが、木製でもよい。或いは、前面にクッション材を張った構造も採用できる。
【0032】
例えば図2に明示するように、前脚部3は左右の前脚杆5を備えて、後脚部4は左右の後脚杆6を備えており、左右の前脚杆5は中途高さ部位が前横桟7で連結され、左右の後脚杆6は中途高さ部位が後横桟8で連結されている。前脚部3を構成する左右前脚杆5の上端に後ろ向きのアーム部5aを設け、アーム部5aの後端に背もたれ2が連続している。なお、アーム部5aは背もたれ2の前向き部として捉えることも可能である。なお、実施形態の脚杆5,6は及び横桟7,8は木製であるが、金属製や樹脂製も採用できる。
【0033】
椅子の展開状態において、前脚部3は後傾して後脚部4は前傾しており、従って、側面視でハ字状(前脚部3と後脚部4の間隔が、概ね、下端に近づくほど大きい状態)の姿勢になっている。アーム部5aの前端は、前脚部3を構成する前脚杆5に固定されている一方、後脚部4を構成する後脚杆6の上端部は、アーム部5aの内側面に上支軸9によって前後傾動可能に連結されている。これにより、前後脚部3,4の夾角が変化して側面視でX字状に交叉することを許容している。
【0034】
座1の下面部にはリンク装置10が配置されている。リンク装置10は、前横桟7に上向き回動可能に連結された前リンク材11と、後横桟8に上向き回動可能に連結された後リンク材12とを備えている。両者は前後方向に噛み合った下向きの重合部11a,12a有しており、これら下向きの重合部11a,12aが左右長手のセンター支軸13によって相対回動可能に連結されている。前後のリンク材11,12は前後幅よりも左右幅が大きい板状に形成されているが、棒状等の形態であってもよい。また、リンク装置10を左右に分離することも可能である。
【0035】
例えば図2に示すように、前後リンク材11,12は横桟7,8よりも短い左右幅であり、前リンク材11の前端を半円状のフロントボス部14と成している一方、前横桟7にはフロントボス部14が入り込む前切り欠き部15を形成しており、フロント支軸16によってフロントボス部14を前横桟7に連結している。
【0036】
フロント支軸16は、切り欠き部15の左右両側において前横桟7の後面に固定された軸受け部材17によって離脱不能に保持されている。従って、軸受け部材17と前横桟7には、フロント支軸16が半分ずつ嵌まる凹溝18が形成されている。なお、フロント支軸16は、横桟7に固定してもよいしフロントボス部14に固定してもよい。或いは、横桟7とフロントボス部14との両方に対して回転可能であってもよい。
【0037】
後リンク材12の後端も断面半円状のリアボス部19に形成されている一方、後横桟8にはリアボス部19が上から入り込む後切り欠き部20を形成しており、リアボス部19が横桟8に左右長手のリア支軸21によって回動可能に連結されている。リア支軸21は一方の後脚杆6に挿通されている。
【0038】
図3に示すように、座1は前後のスペーサ22を介して前リンク材11に固定されており、また、座1の後部には、後リンク材12のリアボス部19に載る当たり部23を設けている。座1は多少撓み変形するため、自由状態で当たり部23が後リンク材12から多少浮いていても、人が着座すると当たり部23がリアボス部19に当たって姿勢が一定に保持される。
【0039】
(2).第1実施形態のまとめ
本実施形態では、椅子は展開状態で前後脚部3、4が側面視ハ字状の姿勢を成しているため、座1の前後支持スパンを大きくできる。従って、座1の安定性を高めて高い支持強度を保持できる。
【0040】
他方、図3(B)に示すように、背もたれ2に手を掛けて上向きに落ち上げると、自重で後脚部4が前向きに回動する傾向を呈して、リンク装置10がそのリンク材11,12を重ねるように屈曲して、前後の脚杆5,6が交叉する姿勢まで相対回動する。すなわち、椅子が折り畳まれる。折り畳んだ状態では、後脚部4が前横桟7の左右両側部7aに当たっており、これによって折り畳み状態が保持されている。
【0041】
そして、図4(C)に示すように、折り畳んだ状態で前後脚杆5,6の下端間にある程度の間隔Eが空くが、座1やリンク装置10、後脚部4はその全体がEの範囲に含まれていると共に、前脚部3の大部分とアーム部5aの大部分もEの範囲に含まれているため、椅子の重心は、概ね前後脚部3,4の下端間の略中間部の上方に位置している。従って、折り畳んだ椅子を安定的に自立させることができる。
また、折り畳んだ状態で背もたれ2に下向きの力がかかると、その力は前後脚部3,4の下端間の間隔を広げるように作用するが、前後脚部3,4の下端は広がり不能に保持されているため、外力によって折り畳み状態から不測に展開することはない。従って、折り畳み姿勢の保持機能に優れている。
【0042】
そして、後脚部4は前脚部3の上端に設けたアーム部5aの内面に連結されて、左右前脚杆5の間隔よりも左右後脚杆6の左右幅が大きくなっているため、前に配置した椅子における左右前脚杆5の間に、後ろに配置した椅子における左右後脚杆6を入り込ませることができる。従って、多数の椅子を前後方向にネスティングできる。
【0043】
本願発明では、図1(D)に示すように、平面視及び底面において、座1の左右側面背もたれ2の前向き部2aとの間に、後脚部4の外径よりもやや大きい間隔の空間24が空いている。このため、椅子を上下に積み重ねる(スタッキングする)ことができる。この点、本実施形態の利点の一つである。なお、積み重ねた状態では、上の椅子が下の椅子から手前にはみ出ることになる。
【0044】
椅子を折り畳むに際しては、手で座1の後端を掴んで軽く持ち上げると、後脚部4が折り畳み方向に回動するため、容易に椅子を折り畳むことができる。
【0045】
前脚部3の下端を床に当てた状態で背もたれ2を持ち上げることによって椅子全体を前傾させ、その状態で座1の後端を後ろに持ち上げることによってリンク装置10の屈曲のきっかけを作り、それから椅子全体を持ち上げることによっても、折り畳むことができる。
【0046】
或いは、図3に矢印25で示すように、背もたれ2の内側から手を入れて座1の後端を持ち上げていくと、前後脚部3,4の下端を床面に当てた状態のままで折り畳むことができる。つまり、座1の持ち上げ回動に伴って、前後脚部3,4の下端が床面を滑り移動していき、夾角を狭めつつ交叉姿勢に変化していく。
【0047】
折り畳んだ椅子を展開するには、例えば、手で座1の後端を後ろに倒していったらよい。この場合、前後脚部3,4の下端を床に当てた状態で座1の後端を押し下げていくと、前後脚部3,4の下端が床面を滑り移動することにより、前後脚部3,4を交叉した姿勢からハ字の姿勢に移行させることができる。また、例えば、両手で両側のアーム部5aを掴んで上方に持ち上げながら奥側(背もたれ側)が下方となるように傾けることでも、前後脚部3,4を交叉した姿勢からハ字の姿勢に移行させることができる。
【0048】
この実施形態では、前後の脚部3,4はハ字の姿勢になっているため、脚部3,4の安定性は高く、また、展開状態において座1は前後脚部3,4の横桟7,8で支持されている。すなわち、座1は、安定性が高い脚部3,4により、前後の支持スパンを大きくした状態で支持されている。従って、椅子は堅牢で支持強度に優れている。
【0049】
本実施形態では、アーム部5aは上面が平坦な角形になっており、前脚部3の外径と同じ程度の左右幅になっている。このため、アーム部5aを肘掛けとして使用することが可能になっている。なお、前後脚部3,4の下端にキャスタを設けてもよい。実施形態のように横桟7,8にリンク装置10を連結すると、前後の脚部3,4を直接に連結することなく椅子の堅牢性を格段に向上できる。
【0050】
(3).第2実施形態(図5~9)
次に、図5~9に示す第実施形態を説明する。第1実施形態と同じ機能の部材は同じ符号を付しており、特に必要がない限り説明は省略する。本実施形態の椅子は、図5に示すように、座1と背もたれ2及びこれらを支持する前脚部3及び後脚部4を備えている。前脚部3及び後脚部4の上端は、座1よりも上に位置している。
【0051】
図5に示すように、座1は、上下に開口した平面視略四角形の枠体27にメッシュ材を張った構造になっている。他方、背もたれ2は合成樹脂を使用した成型品であり、第1実施形態と同様に、左右のアーム部5aと一体に連続している。
【0052】
本実施形態では、前後脚部3,4を構成する脚杆5,6の下端にキャスタ28a,28bを取り付けている。これら脚杆5,6は、平断面視で前後に長い小判形のアルミ管又はスチールのような金属管が使用されているが、丸パイプやオーバル管、中実の棒材、アルミダイキャスト品なども使用できる。また、前脚部3と後脚部4とで材質や断面形状を異ならせることも可能である。
【0053】
図8(A)に明示するように、前脚杆5は直線状の形態を成して側面視で後傾姿勢になっており、その中途高さ部位に、座1の前寄り部位が左右長手の1本の支軸29によって連結されている。従って、座1は、支軸29を中心にして(支点にして)回動させることができる。支軸29は鋼管のような円形の金属管から成っている。支軸29を前脚杆5に回転不能に固定してもよいし、支軸29を座1の枠体27に溶接後、後脚部4で固定して、その両端部を、前脚杆5に固定された軸受けピンに嵌め込むことも可能である。また、左右の前脚杆5を左右長手のフロントステー(補強ステー)で連結してもよい。
【0054】
図5図8(A)のとおり、後脚部4を構成する後脚杆6は、基本的には、上端よりも後端が後ろに位置した前傾姿勢になっており、座1よりも少し低い位置に頂点部30が位置するように、側面視でく字形に曲がっている。すなわち、後脚杆6は、その上端と下端とを結ぶ基準線Oに対して前向きに突出した(或いは膨れた)状態に曲がっており、頂点部12を挟んだ上部6aと下部6bとは直線状の形態を成している。全体に弓形に湾曲させてもよいし、下部6bだけを湾曲させてもよい。
【0055】
後脚杆6のうち頂点部30よりも上に位置した上部6aの内側板に、請求項に記載したガイド手段の一例として上下長手のガイド長穴31を形成しており、このガイド長穴31に、座1の外側面にブラケット板32を介して横向き突設したスライドピン33が、スライド自在に嵌め込まれている。図8(C)に示すように、ガイド長穴31には、スライドピン33のスライドを静粛かつスムースに行わせるため、樹脂製のエッジ材34を装着している。
【0056】
また、図8(A)(B)のとおり、ブラケット板32は座1の下方にはみ出しており、スライドピン33は、座1の下面よりも少し下方に配置されている。すなわち、スライドピン33は、座1の下面から下方にオフセットされている。
【0057】
左右の後脚杆6は、概ね頂点部30の箇所において左右長手の補強杆35で連結されている。補強杆35は丸パイプのような金属管からなっており、後脚杆6に溶接等で固定されている。
【0058】
ガイド手段としては、コ字形やC字形等のガイドレール使用し、これを後脚杆6の内側面にビス止め等で固定する一方、座2の側面に、ガイドレールにスライド自在に嵌まるピン又はコロを突設するといったことも可能である。
【0059】
左右の後脚杆6の上端には前向き部36を設けており、前向き部36と前脚杆5の上端部とが、左右長手の枢支ピン37によって相対回動可能に連結されている。従って、前後の脚部3,4は基本的には逆V形の形態に連結されており、枢支ピン37を支点にして相対回動することによって夾角が変化する。すなわち、前後の脚部3,4は、枢支ピン37を支点にして折り畳まれたり展開したりする。
【0060】
前脚杆5の上端にはブラケット板38が溶接によって固定されており、後脚杆6の前向き部36とブラケット板38とが枢支ピン37で連結されている。後脚杆6の前向き部36はブラケット板38の内側に位置している。
【0061】
また、図6に明示するように、後脚部4の左右外幅L1よりも前脚部3の左右内幅L2を大きくしている。換言すると、後脚部4は前脚部3の左右内側に位置しており、これにより、前後に配置した椅子をネスティングすることが可能になっている。図6に示すように、前キャスタ28aは前脚杆5の左右両側に一対ずつ配置されているが、後キャスタ28bは後脚杆6の内側に位置している。
【0062】
図示は省略しているが、アーム部5aの前端には、前脚杆5に上から嵌入するボス体を設けており、前脚杆5とボス体とはビスによって固定されている。なお、実施形態では前アーム部5aと背もたれ2とを一体に形成しているが、背もたれ2をアーム部5aと別体に構成してもよい。更に、左右のアーム部5aの後端を横杆で一体に連続させることによって平面視U型のフレーム体を構成し、フレーム体の横杆に背もたれ2を取り付けることも可能である。
【0063】
(4).第2実施形態のまとめ
本実施形態では、前脚部3後脚部4とは互いに逆向きに傾斜して側面視で基本的に逆V形の姿勢を成しているため、図8に矢印39で示すように、背もたれ2や座1の後端部等を手で掴んで椅子を上に持ち上げると、前脚部3と後脚部4とが互いに接近するように回動し(夾角を狭めるように回動し)、これに連動して、ガイド長穴31のガイド作用により、座1はその前端が下降し後端が上昇するように回動する。
【0064】
そして、図9に示すように、補強杆35又は後脚杆6が座1の後面に当たることによって各部材の回動が停止して、折り畳み状態になる。この状態では、側面視で座1は前脚杆5に重なった状態になっているが、後脚杆6は、上端の前向き部36が前脚杆5に連結されていることにより、前脚部3及び座1と前後に重なった姿勢になる。更に、スライドピン33は座1の下方にはみ出ているため、折り畳まれた状態で、座1と後脚杆6とが前後に重なった状態に移行できる。
【0065】
そして、前脚部3と後脚部4とは逆V形に連結されているため、背もたれ2や座1の後端部等を手で掴んで椅子を持ち上げると、図8に示すように、前キャスタ28aと後キャスタ28bとを設置させた状態を維持しつつ、前後脚部3,4閉じ回動させることができる。
【0066】
すなわち、前キャスタ28aは殆ど動かずに後キャスタ28bが床上を転動する状態と、後キャスタ28bは殆ど動かずに前キャスタ28aが床上を転動する状態と、前後のキャスタ28a,28bが床上を転動して互いに接近する状態とが有り得るが、いずれにしても、前後のキャスタ28a,28bを接地させた状態で折り畳むことができる。従って、折り畳み作業を軽い力でかつ簡単に行える。
【0067】
本実施形態では、背もたれ2は前脚部3の上端に設けているため、折り畳んだ状態で背もたれ2と座1とが重なることはない。従って、図9のとおり、多数の椅子を、前の椅子の座1に後ろの椅子の補強杆35が重なる状態に、間隔を詰めた状態でネスティングできる。従って、スペースを有効利用できる。
【0068】
実施形態の椅子はキャスタ28a,28bを備えているため、折り畳んだ椅子は、背もたれ2等に手を掛けて押したり引いたりして移動させることができる。従って、特許文献1のように持ち上げて移動させるものに比べて、移動作業の負担を軽減できる。ネスティングされた多数の椅子を纏めて移動させることも可能である。
【0069】
また、後キャスタ28bは後脚杆6の内側のみに配置しているため、前脚部3の左右内幅L2を小さくできる利点がある。なお、前キャスタ28aを前脚杆5の外側のみに配置すると、前脚部3の左右内幅L2を更に小さくできて好適である。
【0070】
本実施形態では、図8に矢印43で示すように、座1の後端を掴んで持ち上げることによっても椅子を折り畳むことができる。この場合は、座1が強制的に回動させられるため、持ち上げるだけの操作で折り畳むことを確実化できる。背もたれ2を持ち上げるにしても座1を持ち上げるにしても、座1の回動割合と前後脚部3,4の閉じ割合とはあまり違わないため、折り畳み途中で抵抗が増大するようなことはなくて、折り畳み作業を違和感無くスムースに行える。
【0071】
折り畳んだ状態から展開するに当たっては、座1を後ろ下方に押し倒してもよいし、背もたれ2の後端を下向きに押して、前後脚部3,4を広げ回動させてもよい。背もたれ2を手先で掴んで、後キャスタ28bを接地させつつ前キャスタ28aは少し浮かした状態で背もたれ2を下向きに押すと、後脚部4に対して前傾荷重が掛かるため、簡単に開き回動させることができる。
【0072】
折り畳まれた状態で後脚杆6の上部6aは後傾しているため、前後脚部3,4を広がり回動させるためには、後脚杆6の上部6aを前傾姿勢に移行させなければならない。従って、後脚部4が折り畳み状態を保持する役割を果たしている。
【0073】
さて、椅子の重心は前後キャスタ28a,28bの間のエリアの上に位置しているため椅子が自立するが、重心の下向き荷重は、前後キャスタ28a,28bを離反させる水平分力を有している。この場合、重心が前に寄るほど、後キャスタ28bに対する後ろ向きの水平分力は大きくなって開脚部しやすくなるが、本実施形態では背もたれ2が後ろに大きく張り出しているため、重心をできるだけ後ろに寄せて、後キャスタ28bに対する後ろ向きの水平分力を低減できる。これにより、折り畳み状態の保持機能を向上できる。
【0074】
折り畳み状態を保持する弾性的なロック手段を設けることは可能である。例えば、折り畳んだ状態で重なり合う部材にマグネットを配置して、磁力によって折り畳み状態を保持しつつ、ある程度の力を掛けると展開できる構成を実現できる。重なり合う部材のうち少なくとも一方が鋼板のような磁性体の場合は、マグネットは他方の部材のみに設けたらよい。
【0075】
ボールをばねで押したボールキャッチや、板ばね製又は樹脂製の係止爪を使用し、ボールや係止爪のようなキャッチ部材を相手部材の係合部に弾性に抗して係合させることも可能である。
【0076】
(5).他の実施形態
次に、図10以下に示す他の実施形態を説明する。各実施形態において第1,2実施形態と同じ部分は同じ符号を使用して、説明は省略している。
【0077】
図10に示す第3実施形態では、前後の脚杆5,6を側面視で直線状に形成して、前後脚杆5,6のうちいずれか一方に設けたストッパー41によって折り畳み角度を規制している。そして、第2実施形態と同様に、座1の前寄り部位は支軸29によって前脚杆5に連結され、後ろ寄り部位はスライドピン33によって後脚杆6のガイド長穴31にスライド自在に係合している。
【0078】
図11に示す第4実施形態では、前後の脚杆5,6を側面視で直線状に形成した場合において、スライドピン33を座1の側面から突設している一方、後脚杆6の上部に前広がり部42を形成し、ガイド長穴31に、側面視で前脚杆5と重なる前向き延長部31aを形成している。この実施形態では、前後脚杆5,6は直線状に形成しつつ、座1と前脚部3が重なる姿勢まで折り畳むことができる。図示は省略しているが、この実施形態でも第3実施形態と同様のストッパー44を設けている。
【0079】
図12に示す第5実施形態では、前後脚杆5,6を側面視で直線状に形成しつつ、座1の前寄り部を前脚杆5に支軸29で連結した構成において、左右の後脚杆6から回動自在に吊支したリンク45にガイドピン46を横向きに突設して、ガイドピン46を座1に形成された前後長手のガイド長穴47にスライド自在に嵌め入れている。左右のガイドピン46は一体に連続しているのが好ましい。この実施形態では、前後脚部3,4の折り畳み終期にリンク45が回動することにより、側面視で座1が前脚部3と重なる状態に折り畳むことができる。
【0080】
図10~12の各実施形態では、前後の脚杆5,6が側面視で直線状の姿勢になっているが、これらの図10~12と図9との比較から理解できるように、第2実施形態では、後脚杆6の上部6aと前脚杆5とを側面視で密着させて、折り畳み厚さをできるだけ薄くできる利点がある。
【0081】
図13に示す第6実施形態では、第2実施形態とは異なって、前脚部3にガイド長穴47を形成して座1にスライドピン33を設けている。座1は、左右の後脚杆6に対して、上向きに突出したブラケット49を介して左右の支軸29によって連結されている。この実施形態では、座1は、前端が上になるように跳ね上げ回動される。
【0082】
図14に示す第7実施形態では、第2実施形態とは異なって、前脚部3を側面視く字形に屈曲させており、かつ、前脚杆5の上部5cにガイド長穴50を形成し、座1の後部はブラケット49を介して後脚杆6に支軸29で連結している。この実施形態では、折り畳みに際しては、座1を前端に手を掛けて、座を上向きに跳ね上げ回動させるのが好ましい。
【0083】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、前脚杆と後脚杆との両方をく字形に曲げることも可能である。ネスティングの許容条件としては、前脚部の左右外幅を後脚部の左右内幅より小さくすることも可能である。第1実施形態の変形例として、座1の前端部を前横桟7又は左右の前脚杆5に回動自在に連結して、前リンク材11を座1の下面に固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本願発明は、折り畳み式椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 座
2 背もたれ
3 前脚部
4 後脚部
5 前脚杆
5a アーム部
6 後脚杆
10 リンク装置
11 前リンク材
12 後リンク材
28a,28b キャスタ
30 曲がりの頂点部
31 ガイド手段の一例としてのガイド長穴
33 スライドピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14