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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】スプール弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240703BHJP
   F16K 31/128 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F16K31/128
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020042552
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143710
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 誠司
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256993(JP,A)
【文献】特公平07-099161(JP,B2)
【文献】特開平11-141696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
31/12-31/165
31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流路および摺動穴が形成された第1ハウジングと、
前記摺動穴内に摺動可能に挿入されたスプールと、
前記摺動穴と同軸上のサーボ室を形成する第2ハウジングと、
前記サーボ室内に摺動可能に挿入された、前記サーボ室を前記第1ハウジングに隣接する第1圧力室と前記第1ハウジングから離れた第2圧力室とに仕切るスリーブであって、前記第1圧力室内で前記スプールと連結されたスリーブと、
前記スリーブと摺動可能に嵌合する、前記スリーブ内から前記第2圧力室を超えて延びるピストンと、
前記ピストンに固定されたナットと、
前記ナットと螺合するねじ軸と、
前記ねじ軸を回転させる電動モータと
前記ナットが内部に位置するように配置された、前記スプールを中立位置に維持するための付勢力を前記ピストンに与えるコイルばねと、を備え、
前記第2ハウジングには、作動液の圧力源と接続されるべき入力ポートと、ドレンポートが形成され、
前記第1圧力室は、前記入力ポートと連通し、
前記第2圧力室は、前記第1圧力室内の作動液が前記スリーブに作用する力と前記第2圧力室内の作動液が前記スリーブに作用する力がつり合うつり合い状態では前記ピストンにより前記入力ポートおよび前記ドレンポートから遮断され、前記つり合い状態から前記ピストンが前記スプールに近づく方向に移動したときに前記入力ポートと連通し、前記つり合い状態から前記ピストンが前記スプールから遠ざかる方向に移動したときに前記ドレンポートと連通する、スプール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによりスプールを移動させるスプール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧回路に用いられる流量制御弁の一つとしてスプール弁が知られている。このようなスプール弁では、ハウジングの摺動穴内にスプールが摺動可能に挿入されており、スプールの位置によってハウジングに形成された流路間を流れる流体の流量が制御される。
【0003】
スプール弁には、パイロット圧によりスプールを移動させるものと、電動モータによりスプールを移動させるものがある。例えば、特許文献1には、電動モータとスプールとの間に、回転運動を直線運動に変換する直動機構が設けられたスプール弁が開示されている。具体的に、このスプール弁では、スプールがピストンと連結され、そのピストンにナットが固定され、ナットと螺合するねじ軸が電動モータにより回転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/138945号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたスプール弁では、スプールの直径が大きい場合、流路間を流れる流体からスプールが受ける力(フローフォースともいう)が大きくなる。そのため、スプールの位置を精密に制御するには出力の大きな電動モータが必要になり、コストが増加するとともにスプール弁自体のサイズが大きくなる。
【0006】
そこで、本発明は、電動モータの出力が小さくてもスプールの位置を精密に制御することができるスプール弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のスプール弁は、複数の流路および摺動穴が形成された第1ハウジングと、前記摺動穴内に摺動可能に挿入されたスプールと、前記摺動穴と同軸上のサーボ室を形成する第2ハウジングと、前記サーボ室内に摺動可能に挿入された、前記サーボ室を前記第1ハウジングに隣接する第1圧力室と前記第1ハウジングから離れた第2圧力室とに仕切るスリーブであって、前記第1圧力室内で前記スプールと連結されたスリーブと、前記スリーブと摺動可能に嵌合する、前記スリーブ内から前記第2圧力室を超えて延びるピストンと、前記ピストンに固定されたナットと、前記ナットと螺合するねじ軸と、前記ねじ軸を回転させる電動モータと、を備え、前記第2ハウジングには、作動液の圧力源と接続されるべき入力ポートと、ドレンポートが形成され、前記第1圧力室は、前記入力ポートと連通し、前記第2圧力室は、前記第1圧力室内の作動液が前記スリーブに作用する力と前記第2圧力室内の作動液が前記スリーブに作用する力がつり合うつり合い状態では前記ピストンにより前記入力ポートおよび前記ドレンポートから遮断され、前記つり合い状態から前記ピストンが前記スプールに近づく方向に移動したときに前記入力ポートと連通し、前記つり合い状態から前記ピストンが前記スプールから遠ざかる方向に移動したときに前記ドレンポートと連通する、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、つり合い状態から電動モータによりピストンがスプールに近づく方向に移動されたときには、第2圧力室が入力ポートと連通する。このため、第2圧力室の圧力が高くなり、スリーブもスプールに近づく方向に移動する。しかし、スリーブがつり合い状態の位置を超えて移動すると、第2圧力室がドレンポートと連通し、第2圧力室の圧力が低くなる。このような作用により、スリーブは、再びつり合い状態が形成される位置で停止する。すなわち、スリーブは、ピストンの移動に追従して移動する。つり合い状態からピストンが電動モータによりスプールから遠ざかる方向に移動されたときも同様である。
【0009】
一方、ピストンが移動しなければ、つり合い状態が保たれる。つまり、第2圧力室はピストンによって入力ポートおよびドレンポートから遮断されている。従って、第1ハウジングの流路間に流れる流体からスプールが力を受けたとしても、第2圧力室内の作動液の非圧縮性によりスリーブが移動することはない。
【0010】
このように、本発明では、流路間を流れる流体からスプールが受ける力が電動モータに影響を及ぼさないので、電動モータの出力が小さくてもスプールの位置を精密に制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動モータの出力が小さくてもスプールの位置を精密に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るスプール弁の全体を示す断面図である。
図2図1に示すスプール弁の一部の断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一実施形態に係るスプール弁1を示す。本実施形態では、スプール弁1が3つのポート2a~2cを有する3位置弁である。ただし、スプール弁1は、2位置弁であってもよい。また、スプール弁1のポート数は、適宜変更可能である。
【0014】
具体的に、スプール弁1は、外表面にポート2a~2cが形成された第1ハウジング2と、第1ハウジング2に保持されたスプール3を含む。また、スプール弁1は、スプール3と同軸上に配置された第2ハウジング4、ケーシング73および電動モータ74を含む。第2ハウジング4は第1ハウジング2に取り付けられており、電動モータ74はケーシング73を介して第2ハウジング4に取り付けられている。
【0015】
第1ハウジング2の内部には、摺動穴21が形成されている。スプール3は、この摺動穴21に摺動可能に挿入されている。さらに、第1ハウジング2には、摺動穴21からポート2a~2cに至る3つの流路22~24が形成されている。なお、第1ハウジング2に形成される流路の数は、ポート数に応じて適宜変更可能である。
【0016】
スプール3には、2つの環状溝31,32が形成されている。以下では、説明の便宜上、スプール3の軸方向の一方(図1の右側)を右方、他方(図1の左側)を左方という。スプール3は、中立位置では、流路22を流路23,24の双方から遮断する。スプール3が中立位置から右方に移動すると流路22が環状溝31を介して流路23と連通し、スプール3が中立位置から左方に移動すると流路22が環状溝32を介して流路24と連通する。
【0017】
本実施形態では、スプール3が中立位置に位置するときに、スプール3の左端が第1ハウジング2から張り出している。ただし、スプール3の長さは適宜変更可能であり、スプール3が中立位置に位置するときに、スプール3の左端が第1ハウジング2内に収まってもよい。また、本実施形態では、スプール3の左端が摺動穴21よりも小径に形成されているが、スプール3の左端は摺動穴21と同径に形成されてもよい。あるいは、スプール3の可動範囲でスプール3の左端が第1ハウジング2と干渉しなければ、スプール3の左端は摺動穴21よりも大径に形成されてもよい。
【0018】
第2ハウジング4は、図2に示すように、第1ハウジング2の摺動穴21と同軸上のサーボ室41を形成する。すなわち、第2ハウジング4には、摺動穴21と中心線が合致する深い有底穴が形成されており、この有底穴が第1ハウジング2およびスプール3で覆われることにより、サーボ室41が形成されている。
【0019】
サーボ室41内には、スリーブ5が摺動可能に挿入されている。すなわち、スリーブ5は、サーボ室41を、第1ハウジング2に隣接する第1圧力室42と、第1ハウジング2から離れた第2圧力室43とに仕切る。スリーブ5は、内部空間を取り囲む筒状部と、内部空間を右方から閉塞する閉塞部を含む。つまり、スリーブ5の内部空間は左方にのみ開口する。
【0020】
スリーブ5は、第1圧力室42内でスプール3と連結されている。本実施形態では、ユニバーサルジョイントにより、スリーブ5の右端とスプール3の左端とが連結されている。具体的には、スプール3の左端に溝35が設けられており、この溝35にボール15が保持されている。一方、スリーブ5の右端には、溝35内に挿入される板状の突起45が設けられており、この突起45にボール15と嵌合する穴が設けられている。
【0021】
ただし、本実施形態とは逆に、スリーブ5の右端にボール15を保持する溝35が設けられ、スプール3の左端に溝35内に挿入される突起45が設けられてもよい。あるいは、スリーブ5の右端とスプール3の左端とは、ユニバーサルジョイント以外のジョイント(例えば、ボールジョイントや球面ジョイントなど)により連結されてもよい。
【0022】
スリーブ5内からはピストン6が第2圧力室43を超えて左方に延びている。ピストン6は、スリーブ5と摺動可能に嵌合する。ピストン6は、第2ハウジング4における第2圧力室43の左方に位置する部分を貫通している。ピストン6における第2ハウジング4の外側に位置する左側部分は、ケーシング73内に収容されている。
【0023】
ピストン6の左側部分には、ナット71が固定されている。より詳しくは、ピストン6の左側部分には、当該ピストン6の中心線上に、左方に開口する保持穴65が設けられており、この保持穴65内にナット71が挿入されている。なお、ピストン6は、図略のガイド機構により、左右方向にのみ移動可能となる(すなわち、回転が禁止される)ようにガイドされている。
【0024】
ナット71には、ねじ軸72が螺合している。ねじ軸72は、上述した電動モータ74により回転される。すなわち、電動モータ74がねじ軸72を一方向に回転させると、ナット71が固定されたピストン6が右方に移動し、電動モータ74がねじ軸72を逆方向に回転させると、ナット71が固定されたピストン6が左方に移動する。また、詳しくは後述するが、スリーブ5はピストン6の移動に追従して移動するので、スリーブ5と連結されたスプール3もピストン6と同方向に同量だけ移動する。
【0025】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、ピストン6の左側部分とケーシング73との間に、電動モータ74に電力が供給されていないときにスプール3を中立位置に維持するための機構が設けられている。この機構は、ナット71が内部に位置するように配置されたコイルばね81と、コイルばね81の両端部を支持する第1ばね受け82および第2ばね受け83を含む。
【0026】
コイルばね81は、スプール3を中立位置に維持するための付勢力をピストン6に与える。第1ばね受け82および第2ばね受け83のそれぞれは、リング状であり、ピストン6の左側部分と摺動可能に嵌合している。
【0027】
ピストン6の左端には、第1ばね受け82との当接用のフランジ66が設けられている。また、フランジ66から右側に離間する位置では、第2ばね受け83との当接用のストッパー67がピストン6に取り付けられている。
【0028】
さらに、筒状のケーシング73の内側面には、フランジ66と対応する位置に第1段差部84が設けられているとともに、ストッパー67と対応する位置に第2段差部85が設けられている。
【0029】
このような構造により、電動モータ74に電力が供給されていないときは、コイルばね81の付勢力によって第1ばね受け82がフランジ66と第1段差部84の双方に当接するとともに第2ばね受け83がストッパー67と第2段差部85の双方に当接する。これにより、スプール3が中立位置に維持される。
【0030】
スプール3が中立位置に位置する状態からピストン6が右方に移動したときは、第1ばね受け82がフランジ66に押されて第1段差部84から離間するとともに、ストッパー67が第2ばね受け83から離間する。逆に、スプール3が中立位置に位置する状態からピストン6が左方に移動したときは、フランジ66が第1ばね受け82から離間するとともに、第2ばね受け83がストッパー67に押されて第2段差部85から離間する。
【0031】
次に、図2を参照して、第2ハウジング4およびその内部の構造をより詳しく説明する。
【0032】
第2ハウジング4の外表面には、作動液の圧力源11(例えば、液圧ポンプ)と接続されるべき入力ポート4aと、例えば作動液用のタンク12などと接続されるドレンポート4bが形成されている。例えば、第1ハウジング2の流路22~24間に流れる流体がオイルである場合、圧力源11から入力ポート4aに供給される作動液は、そのオイルと同じオイルであってもよい。
【0033】
第2ハウジング4には、入力ポート4aから第1圧力室42に至る第1流路44が形成されている。すなわち、第1圧力室42は、第1流路44を介して入力ポート4aと連通する。
【0034】
スリーブ5の内部空間の底部(右側部分)には、ピストン6の右端面に面するドレン室53が形成されている。また、スリーブ5には、ドレン室53から径方向外向きに延びる複数の横穴54,55が設けられている。
【0035】
第2ハウジング4のサーボ室41の内周面には、横穴54,55と対応する位置に環状溝46が設けられている。さらに、第2ハウジング4には、環状溝46の底からドレンポート4bに至る第2流路47が形成されている。
【0036】
ピストン6には、当該ピストン6の中心線に沿って縦穴63が設けられている。この縦穴63は、ドレン室53と上述した保持穴65とを連通する。
【0037】
さらに、ピストン6の外周面には、第1環状溝61と、第1環状溝61よりも右方に位置する第2環状溝62が設けられている。これにより、第1環状溝61と第2環状溝62の間にランド部60が形成されている。
【0038】
スリーブ5には、第1圧力室42と第1環状溝61とを連通する第1流路51が形成されているとともに、第2圧力室43を第1環状溝61または第2環状溝62と連通させるための第2流路52が形成されている。第2流路52は、スリーブ5の内周面上に、第1環状溝61用の第1開口52aと、第2環状溝62用の第2開口52bを有している。
【0039】
第1開口52aの左端から第2開口52bの右端までの距離は、ランド部60の幅(第1環状溝61から第2環状溝62までの距離)と等しく設定されている。さらに、ピストン6には、第2環状溝62の底から縦穴63に至る複数の横穴64が設けられている。
【0040】
スリーブ5の外径は、摺動穴21内のスプール3の最大径よりも大きく設定されている。このため、スリーブ5には、第1圧力室42内の作動液により左向きの力F1が作用する。第1圧力室42の圧力をP1、摺動穴21内のスプール3の最大径をDa、スリーブ5の外径をDbとしたとき、
F1=P1×π×((Db/2)-(Da/2)
である。
【0041】
一方、スリーブ5には、第2圧力室43内の作動液により右向きの力F2も作用する。第2圧力室43の圧力をP2、スリーブ5の外径をDb、ピストン6の直径をDcとしたとき、
F2=P1×π×((Db/2)-(Dc/2)
である。
【0042】
以上説明したような構成では、第2圧力室43の圧力P2が、スリーブ5に作用する左向きの力F1と右向きの力F2がつり合う(F1=F2)ように調整される。そのつり合い状態では、スリーブ5が、第2流路52の第1開口52aおよび第2開口52bがピストン6のランド部60により閉塞される位置に位置する。それ故、第2圧力室43は、ピストン6により入力ポート4aおよびドレンポート4bから遮断される。
【0043】
つり合い状態から電動モータ74によりピストン6が右方(スプール3に近づく方向)に移動されたときには、第2圧力室43が、第2流路52、第1環状溝61、第1流路51、第1圧力室42および第1流路44を介して入力ポート4aと連通する。このため、第2圧力室43の圧力が高くなり、スリーブ5も右方に移動する。しかし、スリーブ5がつり合い状態の位置を超えて右方に移動すると、第2圧力室43が、第2流路52、第2環状溝62、横穴64、縦穴63、ドレン室53、横穴54,55、環状溝46および第2流路47を介してドレンポート4bと連通し、第2圧力室43の圧力が低くなる。このような作用により、スリーブ5は、再びつり合い状態が形成される位置で停止する。すなわち、スリーブ5は、ピストン6の右方への移動に追従して右方に移動する。
【0044】
逆に、つり合い状態から電動モータ74によりピストン6が左方(スプール3から遠ざかる方向)に移動されたときには、第2圧力室43が、第2流路52、第2環状溝62、横穴64、縦穴63、ドレン室53、横穴54,55、環状溝46および第2流路47を介してドレンポート4bと連通する。このため、第2圧力室43の圧力が低くなり、スリーブ5も左方に移動する。しかし、スリーブ5がつり合い状態の位置を超えて左方に移動すると、第2圧力室43が、第2流路52、第1環状溝61、第1流路51、第1圧力室42および第1流路44を介して入力ポート4aと連通し、第2圧力室43の圧力が高くなる。このような作用により、スリーブ5は、再びつり合い状態が形成される位置で停止する。すなわち、スリーブ5は、ピストン6の左方への移動に追従して左方に移動する。
【0045】
一方、ピストン6が移動しなければ、つり合い状態が保たれる。つまり、第2圧力室43はピストン6によって入力ポート4aおよびドレンポート4bから遮断されている。従って、第1ハウジング2の流路22~24間に流れる流体からスプール3が力を受けたとしても、第2圧力室43内の作動液の非圧縮性によりスリーブ5が移動することはない。
【0046】
このように、本発明では、流路22~24間に流れる流体からスプール3が受ける力が電動モータ74に影響を及ぼさないので、電動モータ74の出力が小さくてもスプール3の位置を精密に制御することができる。
【0047】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、スプール3を中立位置に維持するためのコイルばね81は設けられなくてもよい。ただし、前記実施形態のようにコイルばね81が設けられれば、電動モータ74に電力が供給されているか否かに拘らず、流路22~24間に流れる流体からスプール3が受ける力が大きい場合でもスプール3を一定位置に維持することができる。しかも、コイルばね81はナット71が内部に位置するように配置されているので、コイルばね81の配置のためにスプール弁1全体の長さを長くする必要はない。
【0049】
(まとめ)
本発明のスプール弁は、複数の流路および摺動穴が形成された第1ハウジングと、前記摺動穴内に摺動可能に挿入されたスプールと、前記摺動穴と同軸上のサーボ室を形成する第2ハウジングと、前記サーボ室内に摺動可能に挿入された、前記サーボ室を前記第1ハウジングに隣接する第1圧力室と前記第1ハウジングから離れた第2圧力室とに仕切るスリーブであって、前記第1圧力室内で前記スプールと連結されたスリーブと、前記スリーブと摺動可能に嵌合する、前記スリーブ内から前記第2圧力室を超えて延びるピストンと、前記ピストンに固定されたナットと、前記ナットと螺合するねじ軸と、前記ねじ軸を回転させる電動モータと、を備え、前記第2ハウジングには、作動液の圧力源と接続されるべき入力ポートと、ドレンポートが形成され、前記第1圧力室は、前記入力ポートと連通し、前記第2圧力室は、前記第1圧力室内の作動液が前記スリーブに作用する力と前記第2圧力室内の作動液が前記スリーブに作用する力がつり合うつり合い状態では前記ピストンにより前記入力ポートおよび前記ドレンポートから遮断され、前記つり合い状態から前記ピストンが前記スプールに近づく方向に移動したときに前記入力ポートと連通し、前記つり合い状態から前記ピストンが前記スプールから遠ざかる方向に移動したときに前記ドレンポートと連通する、ことを特徴とする。
【0050】
上記の構成によれば、つり合い状態から電動モータによりピストンがスプールに近づく方向に移動されたときには、第2圧力室が入力ポートと連通する。このため、第2圧力室の圧力が高くなり、スリーブもスプールに近づく方向に移動する。しかし、スリーブがつり合い状態の位置を超えて移動すると、第2圧力室がドレンポートと連通し、第2圧力室の圧力が低くなる。このような作用により、スリーブは、再びつり合い状態が形成される位置で停止する。すなわち、スリーブは、ピストンの移動に追従して移動する。つり合い状態からピストンが電動モータによりスプールから遠ざかる方向に移動されたときも同様である。
【0051】
一方、ピストンが移動しなければ、つり合い状態が保たれる。つまり、第2圧力室はピストンによって入力ポートおよびドレンポートから遮断されている。従って、第1ハウジングの流路間に流れる流体からスプールが力を受けたとしても、第2圧力室内の作動液の非圧縮性によりスリーブが移動することはない。
【0052】
このように、本発明では、流路間を流れる流体からスプールが受ける力が電動モータに影響を及ぼさないので、電動モータの出力が小さくてもスプールの位置を精密に制御することができる。
【0053】
上記のスプール弁は、前記ナットが内部に位置するように配置された、前記スプールを中立位置に維持するための付勢力を前記ピストンに与えるコイルばねをさらに備えてもよい。この構成によれば、電動モータに電力が供給されているか否かに拘らず、流路間に流れる流体からスプールが受ける力が大きい場合でもスプールを一定位置に維持することができる。しかも、コイルばねはナットが内部に位置するように配置されているので、コイルばねの配置のためにスプール弁全体の長さを長くする必要はない。
【符号の説明】
【0054】
1 スプール弁
11 圧力源
2 第1ハウジング
21 摺動穴
22~24 流路
3 スプール
4 第2ハウジング
4a 入力ポート
4b ドレンポート
41 サーボ室
42 第1圧力室
43 第2圧力室
5 スリーブ
6 ピストン
71 ナット
72 ねじ軸
74 電動モータ
81 コイルばね
図1
図2
図3