(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】熱電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20240703BHJP
H02N 3/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H10N10/17 A
H02N3/00 A
(21)【出願番号】P 2020051619
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】西山 秋浩
(72)【発明者】
【氏名】吉見 仁志
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-013434(JP,A)
【文献】特開2003-051624(JP,A)
【文献】特開2005-333083(JP,A)
【文献】特開2000-049391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/17
H02N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1基板と各第1基板に形成された第1電極とを有する第1基板群と、前記第1基板群の周囲を囲う第1フレームとを備えた第1プレートを作成する第1プレート作成工程と、
複数の第2基板と各第2基板に形成された第2電極とを有する第2基板群と、前記第2基板群の周囲を囲う第2フレームとを備えた第2プレートを作成する第2プレート作成工程と、
前記各第1基板と前記各第2基板との間に配置される第1熱電素子及び第2熱電素子を形成する工程であって、前記第1熱電素子又は前記第2熱電素子の形成対象となる前記第1プレートの前記第1フレーム又は前記第2プレートの前記第2フレームを位置決めした状態で、前記第1熱電素子又は前記第2熱電素子を前記第1電極上又は前記第2電極上に形成する素子形成工程と、
前記第1プレートの電極形成面と前記第2プレートの電極形成面とを相対向させるとともに、前記第1電極と前記第2電極との間に前記第1熱電素子及び前記第2熱電素子を挟みながら前記第1プレートと前記第2プレートとを一体化し、前記第1基板群と前記第2基板群とが一体化されることによって形成された熱電モジュール群を備えた中間体を得る一体化工程と、
前記中間体を個々の熱電モジュールに分離する分離工程と、
を備えた熱電モジュールの製造方法であって、
前記第1プレート
では、
前記第1基板群
は、四角形状をなす前記第1基板が縦横に並ぶことにより全体として四角形状をなしており、前記第1フレームも四角形状をなして、第1基板群と第1フレームとの互いに隣接する一辺同士が平行をなすように形成されており、
複数の縦基板列と複数の横基板列とのうち一方
は、各基板列がその並び方向の両外側で前記第1フレームと連結され
るとともに、当該基板列を形成する前記第1基板同士が連結され、
各縦基板列が前記第1フレームと連結されている場合には、前記各縦基板列と前記第1フレームとの連結部で前記第1プレートを横断し、各横基板列が前記第1フレームと連結されている場合には、前記各横基板列と前記第1フレームとの連結部で前記第1プレートを縦断する第1フレーム分離切込みが直線状に形成されており、
複数の縦基板列と複数の横基板列とのうち他方は、各基板列がその並び方向の両外側で前記第1フレームと非連結とされるとともに、当該基板列をなす前記第1基板同士も非連結とされ、
前記第2プレート
では、
前記第2基板群
は、四角形状をなす前記第2基板が縦横に並ぶことにより全体として四角形状をなしており、前記第2フレームも四角形状をなして、第2基板群と第2フレームとの互いに隣接する一辺同士が平行をなすように形成されており、
複数の縦基板列と複数の横基板列とのうち
一方は、各基板列がその並び方向の両外側で前記第2フレームと連結され
るとともに、当該基板列を形成する前記第2基板同士が連結され、
各縦基板列が前記第2フレームと連結されている場合には、前記各縦基板列と前記第2フレームとの連結部で前記第2プレートを横断し、各横基板列が前記第2フレームと連結されている場合には、前記各横基板列と前記第2フレームとの連結部で前記第2プレートを縦断する第2フレーム分離切込みが直線状に形成されており、
複数の縦基板列と複数の横基板列とのうち
他方は、各基板列がその並び方向の両外側で前記第2フレームと非連結とされるとともに、当該基板列をなす前記第2基板同士も非連結とされ、
前記一体化工程では、前記第1プレートと前記第2プレートとを、それぞれの基板群とフレームとの連結方向がクロスするようにして一体化し、
前記分離工程では、
前記第1フレーム分離切込みに沿って当該第1フレーム分離切込みよりも外側部分を折ることにより当該外側部分を分離し、
前記第2フレーム分離切込みに沿って当該第2フレーム分離切込みよりも外側部分を折ることにより当該外側部分を分離する、
ことを特徴とする熱電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1プレートにおいて、
前記各縦基板列が前記第1フレームと連結されている場合は、前記各横基板列は前記第1フレームと非連結とされ、
前記各横基板列が前記第1フレームと連結されている場合は、前記各縦基板列は前記第1フレームと非連結とされ、
前記第2プレートにおいて、
前記各縦基板列が前記第2フレームと連結されている場合は、前記各横基板列は前記第2フレームと非連結とされ、
前記各横基板列が前記第2フレームと連結されている場合は、前記各縦基板列は前記第2フレームと非連結とされている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の熱電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第1基板群では、
前記各縦基板列と前記各横基板列とのうち一方において、当該列を構成する前記第1基板同士がその並び方向で連結され、他方の並び方向では非連結とされ、
前記各縦基板列の前記第1基板同士が縦方向に連結されている場合には、前記第1基板同士の連結部で複数の前記縦基板列を直線状に横断し、前記各横基板列の前記第1基板同士が横方向に連結されている場合には、前記第1基板同士の連結部で複数の前記横基板列を直線状に縦断する第1基板分離切込みが形成されており、
前記第2基板群では、
前記各縦基板列と前記各横基板列とのうち他方において、当該列を構成する前記第2基板同士がその並び方向で連結され、前記一方の並び方向では非連結とされ、
前記各縦基板列の前記第2基板同士が縦方向に連結されている場合には、前記第2基板同士の連結部で複数の前記縦基板列を直線状に横断し、前記各横基板列の前記第2基板同士が横方向に連結されている場合には、前記第2基板同士の連結部で複数の前記横基板列を直線状に縦断する第2基板分離切込みが形成されており、
前記一体化工程では、縦に熱電モジュールが並ぶ複数の熱電モジュール縦列が、第1基板側及び第2基板側のうち一方の基板側で互いに連結され他方の基板側では非連結となっており、横に熱電モジュールが並ぶ複数の熱電モジュール横列が、前記他方の基板側で互いに連結され前記一方の基板側では非連結となっており、
前記分離工程では、互いに連結された前記熱電モジュール縦列同士又は前記熱電モジュール横列同士を、
それぞれの列が連結されている基板側で前記基板分離切込みに沿って折って列ごとに分離し、分離された熱電モジュール列の熱電モジュール同士が連結されている基板側で前記基板分離切込みに沿って折って個々の熱電モジュールに分離する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の熱電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記第1基板群において、前記第1基板は、前記第1基板の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対称となる状態で、隣接する他の第1基板又は第1フレームと連結され、
前記第2基板群において、前記第2基板は、前記第2基板の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対称となる状態で、隣接する他の第2基板又は第2フレームと連結されている、
ことを特徴とする請求項
3に記載の熱電モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記第1プレートにおいて、前記第1基板、前記第1基板群及び前記第1フレームは四角形状をなし、前記第1フレームの一辺は前記第1基板群の一辺と平行をなし、
前記第2プレートにおいて、前記第2基板、前記第2基板群及び前記第2フレームは四角形状をなし、前記第2フレームの一辺は前記第2基板群の一辺と平行をなしている、
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の熱電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるゼーベック効果又はペルチェ効果を利用した熱電モジュール(熱電変換モジュールとも称される。)が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の熱電モジュールは、電極パターンが形成された一対の基板間に複数の熱電素子(熱電変換素子とも称される。)が配列されている。当該熱電モジュールでは、熱電素子としてP型素子及びN型素子が用いられ、これら極性の異なる熱電素子が各基板の電極パターンを通じて電気的に直列接続されるように、各基板の電極パターン及び各熱電素子の配列パターンが定められている。
【0003】
従来の熱電モジュールは、例えば次のような方法で製造される(特許文献1の従来技術の記載を参照)。すなわち、先ず、粉末状の熱電材料を焼結してインゴットを作成し、これを所定の厚さ寸法にカットしてプレートを作成する。その後、そのプレートをダイサー等によってダイシングし、所定形状(例えば角柱状)を有する複数の熱電素子を作成する。これらの工程をP型の熱電素子及びN型の熱電素子のそれぞれについて行う。
【0004】
その後、一方の基板に形成された電極上に接合材としてのはんだクリーム等を塗布し、電極上に複数の熱電素子を配置していく。その際、P型素子とN型素子とが直列接続となるように、各熱電素子を所定の配列パターンで配列していく。次いで、熱電素子が配列された一方の基板の上方から、電極上に接合材が塗布された他方の基板を電極形成面が素子側となるようにして被せる。それをリフロー炉等の加熱炉に導入してはんだ付け処理を行い、各熱電素子と各基板の電極とを接合する。
【0005】
なお、一対の基板のそれぞれに別々の熱電素子を配置して、両者を一体化する方法も提案されている(例えば特許文献1の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の製造方法では、熱電モジュールが単品ごとに製造される。そのため、熱電モジュールが有する一対の基板を一つ一つ治具に設置し、当該基板に対して熱電素子の配置や接合材の塗布作業が行われる。このような方法では、基板一つ一つを治具に設置する作業に手間がかかるし、治具に設置された基板に対して接合材を塗布する場合に、治具に設置された基板ごとで位置決めにばらつきが生じやすい。位置決めが不十分であると、所望する塗布位置からずれたところに接合材が塗布されてしまい、電極と熱電素子との接合が不良となるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、製造時における治具への設置作業を簡略化して複数の熱電モジュールを効率的に製造可能であり、かつ基板の位置決め不良も低減できる熱電モジュールの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の熱電モジュールの製造方法は、
複数の第1基板と各第1基板に形成された第1電極とを有する第1基板群と、前記第1基板群の周囲を囲う第1フレームとを備えた第1プレートを作成する第1プレート作成工程と、
複数の第2基板と各第2基板に形成された第2電極とを有する第2基板群と、前記第2基板群の周囲を囲う第2フレームとを備えた第2プレートを作成する第2プレート作成工程と、
前記各第1基板と前記各第2基板との間に配置される第1熱電素子及び第2熱電素子を形成する工程であって、前記第1熱電素子又は前記第2熱電素子の形成対象となる前記第1プレートの前記第1フレーム又は前記第2プレートの前記第2フレームを位置決めした状態で、前記第1熱電素子又は前記第2熱電素子を前記第1電極上又は前記第2電極上に形成する素子形成工程と、
前記第1プレートの電極形成面と前記第2プレートの電極形成面とを相対向させるとともに、前記第1電極と前記第2電極との間に前記第1熱電素子及び前記第2熱電素子を挟みながら前記第1プレートと前記第2プレートとを一体化し、前記第1基板群と前記第2基板群とが一体化されることによって形成された熱電モジュール群を備えた中間体を得る一体化工程と、
前記中間体を個々の熱電モジュールに分離する分離工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、
前記第1プレートにおいて、
前記第1基板群では前記第1基板が縦横に並んで設けられ、
複数の縦基板列と複数の横基板列とのうち少なくとも一方において、各基板列がその並び方向の両外側で前記第1フレームと連結され、
各縦基板列が前記第1フレームと連結されている場合には、前記各縦基板列と前記第1フレームとの連結部で前記第1プレートを横断し、各横基板列が前記第1フレームと連結されている場合には、前記各横基板列と前記第1フレームとの連結部で前記第1プレートを縦断する第1フレーム分離切込みが直線状に形成されており、
前記第2プレートにおいて、
前記第2基板群では前記第2基板が縦横に並んで設けられ、
複数の縦基板列と複数の横基板列とのうち少なくとも一方において、各基板列の並び方向の両外側で前記第2フレームと連結され、
各縦基板列が前記第2フレームと連結されている場合には、前記各縦基板列と前記第2フレームとの連結部で前記第2プレートを横断し、各横基板列が前記第2フレームと連結されている場合には、前記各横基板列と前記第2フレームとの連結部で前記第2プレートを縦断する第2フレーム分離切込みが直線状に形成されており、
前記分離工程では、前記フレーム分離切込みに沿って前記フレーム分離切込みよりも外側部分を折ることにより前記第1フレーム又は前記第2フレームの前記外側部分を分離する、
ことを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、
前記第1プレートにおいて、前記各縦基板列と前記各横基板列とのうち一方が前記第1フレームと連結され、他方が前記第1フレームと非連結とされ、
前記第2プレートにおいて、前記各縦基板列と前記各横基板列とのうち一方が前記第2フレームと連結され、他方が前記第2フレームと非連結とされている、
ことを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、
前記第1基板群では、
前記各縦基板列と前記各横基板列とのうち一方において、当該列を構成する前記第1基板同士がその並び方向で連結され、他方の並び方向では非連結とされ、
前記各縦基板列の前記第1基板同士が縦方向に連結されている場合には、前記第1基板同士の連結部で複数の前記縦基板列を直線状に横断し、前記各横基板列の前記第1基板同士が横方向に連結されている場合には、前記第1基板同士の連結部で複数の前記横基板列を直線状に縦断する第1基板分離切込みが形成されており、
前記第2基板群では、
前記各縦基板列と前記各横基板列とのうち他方において、当該列を構成する前記第2基板同士がその並び方向で連結され、前記一方の並び方向では非連結とされ、
前記各縦基板列の前記第2基板同士が縦方向に連結されている場合には、前記第2基板同士の連結部で複数の前記縦基板列を直線状に横断し、前記各横基板列の前記第2基板同士が横方向に連結されている場合には、前記第2基板同士の連結部で複数の前記横基板列を直線状に縦断する第2基板分離切込みが形成されており、
前記一体化工程では、縦に熱電モジュールが並ぶ複数の熱電モジュール縦列が、第1基板側及び第2基板側のうち一方の基板側で互いに連結され他方の基板側では非連結となっており、横に熱電モジュールが並ぶ複数の熱電モジュール横列が、前記他方の基板側で互いに連結され前記一方の基板側では非連結となっており、
前記分離工程では、互いに連結された前記熱電モジュール縦列同士又は前記熱電モジュール横列同士を、両列が連結されている基板側で前記基板分離切込みに沿って折って列ごとに分離し、分離された熱電モジュール列の熱電モジュール同士が連結されている基板側で前記基板分離切込みに沿って折って個々の熱電モジュールに分離する、
ことを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、
前記第1基板群において、前記第1基板は、前記第1基板の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対称となる状態で、隣接する他の第1基板又は第1フレームと連結され、
前記第2基板群において、前記第2基板は、前記第2基板の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対称となる状態で、隣接する他の第2基板又は第2フレームと連結されている、
ことを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、
前記第1プレートにおいて、前記第1基板、前記第1基板群及び前記第1フレームは四角形状をなし、前記第1フレームの一辺は前記第1基板群の一辺と平行をなし、
前記第2プレートにおいて、前記第2基板、前記第2基板群及び前記第2フレームは四角形状をなし、前記第2フレームの一辺は前記第2基板群の一辺と平行をなしている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、第1基板群を有する第1プレートと第2基板群を有する第2プレートとを、両者の間に第1熱電素子及び第2熱電素子を挟みながら一体化することで、複数の熱電モジュールを有する熱電モジュール群が形成される。熱電モジュール群を個々の熱電モジュールに分割すれば、一連の工程により、一挙に複数の熱電モジュールを製造することができる。これにより、基板一つ一つを治具に設置しながら熱電モジュールを単品で製造していた従来の製造方法に比べ、治具への設置作業が簡略され、複数の熱電モジュールを効率的に製造できる。また、基板上の電極に接合材を塗布する場合は、フレームを位置決めすることで基板群を構成する各基板が位置決めされるため、各基板における位置決め不良を低減できる。これにより、位置決め不良に伴う電極と熱電素子との接合不良を低減し、熱電モジュール製造時の歩留まりを向上させることができる。
【0016】
第2の発明によれば、分離工程において、フレーム分離切込みに沿って当該切込みよりも外側部分を折るだけで、その外側部分が分離される。そのため、切断具等を用いて両者を分離する場合に比べ、両者の分離作業を容易に行うことができる。
【0017】
第3の発明によれば、分離工程において、プレートごと、フレームと連結された基板列の両外側で、フレーム分離切込みよりも外側部分を当該切込みに沿って折って分離させると、基板列と非連結となっているフレームの残りの部分を自然に基板群から分離できる。これにより、フレームを折る回数を少なくし、フレームと基板群との分離作業をより一層容易に行うことができる。
【0018】
第4の発明によれば、一体化工程で得られた熱電モジュール群では、熱電モジュール縦列同士又は熱電モジュール横列同士を連結しているのは、第1基板側と第2基板側のうち一方の基板側だけで、他方の基板側では非連結となっている。そのため、分離工程において、熱電モジュール縦列同士又は熱電モジュール横列同士を分離する場合、互いに連結されている基板側において、直線状をなす基板分離切込みに沿って折れば分離できる。これにより、熱電モジュール縦列又は熱電モジュール横列同士を分離しやすい。
【0019】
第5の発明によれば、各基板群における基板は、その連結方向の両側で、当該基板と隣接する基板やフレームとの連結状態のバランスが保たれる。これにより、一体化工程において、電極と熱電素子との接合を促すために両プレートが近づく方向へ荷重をかけた場合に、当該荷重を第1基板及び第2基板に均等に作用させることができる。
【0020】
第6の発明によれば、基板群での基板の配置における無駄を少なくし、製造コストの増加を抑制できる。また、基板が四角形状をなしているため、直線状をなすフレーム分離切込みや基板分離切込みが形成されている場合に、当該切込みを基板の一辺に沿わせることが可能となる。この場合、折り跡の加工としてはバリ取り程度の簡易な処理で済ませることができ、工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】各基板を電極側から見た平面図であり、(a)は下電極が形成された下基板を、(b)は上電極が形成された上基板を示している。
【
図3】熱電モジュールの製造方法の全体像を説明する説明図。
【
図5】下プレートに対する熱電素子形成工程を説明する説明図。
【
図6】熱電素子が形成された下プレートの電極形成面を示す平面図。
【
図8】上プレートに対する接合材塗布工程を説明する説明図。
【
図10】フレーム分離工程において、フレームを切り離す様子を示す平面図。
【
図11】フレーム分離工程において、フレームを切り離す様子を示す断面図であり、(a)は
図10におけるXI-XI断面図、(b)及び(c)は(a)の各端部において下フレームの横辺部を折る様子を示す拡大断面図。
【
図12】フレーム分離工程において、フレームを切り離す様子を示す断面図であり、(a)は
図10におけるXII-XII断面図、(b)及び(c)は(a)の各端部において上フレームの縦辺部を折る様子を示す拡大断面図。
【
図13】熱電モジュール分離工程において、熱電モジュール群から熱電モジュール縦列、熱電モジュール単品を順次分離する様子を示す平面図。
【
図14】熱電モジュール分離工程において、熱電モジュール群から熱電モジュール縦列を分離する様子を示す断面図であり、(a)は
図13におけるXIV-XIV断面図、(b)は(a)の端部において熱電モジュール列を折る様子を示す拡大断面図。
【
図15】下プレート及び上プレートの別形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。初めに、熱電モジュール10の構成についてその概略を説明した後、当該熱電モジュール10の製造方法について説明する。
【0023】
まず、
図1に示すように、熱電モジュール10は、対向配置された下基板11及び上基板12と、これら基板11,12間に配置された複数の熱電素子20とを備えている。熱電モジュール10における下基板11と上基板12との対向方向の厚さは、3~4mm程度のものである
【0024】
下基板11は絶縁基板となっており、本実施形態では、表面に絶縁処理(例えばアルマイト処理)が施されたアルミニウム基板によって構成されている。下基板11は、厚さ0.1mm~2mmの薄板となっている。
図2(a)に示すように、下基板11は平面視で四角形をなしており、その表面には、第1電極としての下電極13が複数形成されている。各下電極13は、例えば銅やモリブデン又はこれらの合金等の導電材料によって形成されており、2個の熱電素子20を配置可能な薄板状をなしている。
【0025】
上基板12も下基板11と同様に絶縁基板となっており、下基板11と同じ素材、厚さの薄板によって構成されている。
図2(b)に示すように、上基板12の表面には、第2電極としての上電極14が複数形成されている。各上電極14は、下基板11の各下電極13と同様の形状及び大きさを有しているが、その配置位置は、各下電極13に対して半ピッチ分(素子1個分)ずれたものとなっている。
【0026】
図1に示すように、下基板11に形成された下電極13に2個の熱電素子20の下端部が接合されているとともに、上基板12に形成された上電極14に各熱電素子20の上端部が接合されている。本実施の形態における熱電素子20は、長さ方向(各電極13,14の対向方向)を起電力発生方向として使用されるものとなっており、詳しくは、上端部と下端部との温度差によって起電力を発生させるように構成されている。熱電素子20は、鉄-バナジウム系の熱電材料によって形成されている。
【0027】
熱電素子20としては、P型の熱電素子(P型素子)20pとN型の熱電素子(N型素子)20nとを有している。P型素子20p及びN型素子20nが、熱電素子20の配列方向において交互に配置されている。1つのP型素子20pと、それに隣り合う1つのN型素子20nとが一対とされている。下基板11の側では、これら両素子20p,20nの各下端部が1つの下電極13と接合されている。上基板12の側でも、両素子20p,20nの各上端部が1つの上電極14と接合されている。ただ、下電極13と上電極14との配置位置が半ピッチ分ずれているため、同じ下電極13に設けられた両素子20p,20nの各上端部が異なる上電極14に接合されている。
【0028】
なお、
図2(a)では、下電極13に対するP型素子20p及びN型素子20nの各接合面21をそれぞれ符号21p,21nで示し、
図2(b)では、上電極14に対するP型素子20p及びN型素子20nの各接合面22を符号22p,22nで示している。また、これらの図では、P型素子20pの接合面21p,22pと、N型素子20nの接合面21n,22nとの区別を容易化するため、両者に異なるハッチングを付している。
【0029】
P型素子20p及びN型素子20nが下電極13及び上電極14に対して上記のように接合されることで、それら両素子20p,20nが電気的に直列接続された状態となり、直列経路が構成される。この直列経路の両端となる上電極14aのランド部15からはリード線16が引き出されており、このリード線16を介して、熱電モジュール10で発生した電力を取り出すことが可能となっている。
【0030】
上記熱電モジュール10は、例えば、加熱ダクト等の熱源と冷却ダクト等の冷却装置との間に配置される。これにより、熱電モジュール10に温度差が付与され、各熱電素子20が発電する。なお、必ずしも熱源及び冷却装置の両方を用いる必要はなく、いずれか一方のみの使用であってもよい。
【0031】
次に、上記熱電モジュール10を製造する製造方法について説明する。熱電モジュール10の製造にあたっては、熱電モジュール10を単品ずつ製造するのではなく、複数の熱電モジュール10が連結された状態の熱電モジュール群82(後述する
図10参照)を有する中間体81(同じく
図10を参照)を製造した上で、中間体81から単品の熱電モジュール10を得る。
【0032】
図3に示すように、本実施の形態の熱電モジュール10の製造方法は、大きくは、下プレート作成工程、熱電素子形成工程、上プレート作成工程、接合材塗布工程、プレート一体化工程、加熱処理工程、フレーム分離工程及び熱電モジュール分離工程を有している。以下、それぞれの工程について詳しく説明する。なお、以下の説明で縦横とは、図面に示された状態を基準とする。
【0033】
第1プレート作成工程としての下プレート作成工程では、第1基板としての下基板11が複数設けられた下プレート30を作成する。下プレート30は、下基板11を構成する素材によって形成されている。
図4に示すように、下プレート30は、第1基板群としての下基板群31と、第1フレームとしての下フレーム41とを有している。
【0034】
下基板群31は、平面視において四角形をなす複数の下基板11を有している。各下基板11は同一形状かつ同一寸法を有し、それぞれに下電極13が同じ配列で形成されている。下基板群31では、縦横の四角格子状をなすように各下基板11が配列されている。そのため、複数の下基板11が等間隔で縦に一直線状に並んで縦基板列32が形成され、複数の縦基板列32が等間隔で横に平行に並んで設けられている。換言すれば、下基板11は横方向にみても一直線状に等間隔で並んだ横基板列33が形成され、複数の横基板列33が等間隔で縦に平行に並んで設けられている。本実施の形態では、下基板11が3×3の縦横列で、合計9個の下基板11を有しており、下基板群31の外形も平面視において四角形をなしている。
【0035】
下基板群31において、縦基板列32を構成する下基板11同士は連結部としての下基板連結部34によって連結されている。下基板連結部34と下基板11との接続部は、各下基板11が有する一対の横辺の中央部において、横辺全域の一部(例えば5分の1程度)の幅を有している。一方、横基板列33の各下基板11は非連結となっている。
【0036】
下フレーム41は平面視において四角形状をなす枠体であり、下基板群31を囲うように設けられている。下フレーム41の四隅には、それぞれ位置決め孔42が形成されている。下フレーム41は、下基板群31における縦基板列32と平行をなす一対の縦辺部43と、横基板列33と平行をなす一対の横辺部44とを有している。一対の横辺部44は下プレート30の横方向全域にわたって設けられ、両横辺部44の両端部の間が縦辺部43によってつながれている。
【0037】
下フレーム41の各横辺部44は、下基板群31における各横基板列33のうち縦方向の両端に存在する横基板列33と隣接している。各横辺部44は、隣接する横基板列33から離間して設けられた内縁45と、連結部としての下フレーム連結部46とを有している。
【0038】
内縁45は横方向に沿って延び、隣接する横基板列33において各下基板11が有する横辺(下基板群31の外縁における横辺)と平行をなしている。下フレーム連結部46は、下基板群31における各縦基板列32において、下基板11同士の連結方向である縦方向の両端側と一対の横辺部44との間を連結している。下フレーム連結部46と下基板11との接続部は、下基板連結部34と下基板11との接続部と同じく、下基板11が有する一対の横辺の中央部において、横辺全域の一部(例えば5分の1程度)の幅を有している。
一方、下フレーム41の各縦辺部43は、下基板群31における縦基板列32のうち横方向の両端に存在する縦基板列32と隣接している。各縦辺部43は、隣接する縦基板列32との間が非連結となっている。
【0039】
上記のように、下プレート30においては、下基板連結部34によって下基板11が連結された複数の縦基板列32が、それぞれ縦方向の両外側で下フレーム連結部46によって下フレーム41の各横辺部44に連結され、それにより全体が一体化されている。縦基板列32を構成する各下基板11は、その連結方向の両側で、下基板連結部34及び下フレーム連結部46によって連結されている。下基板連結部34及び下フレーム連結部46は下基板11の横辺中央部で当該下基板11と接続されている。そのため、各下基板11は、それぞれの中心を通る縦横の直線に対して線対称となる状態で、縦に隣接する下基板11及び下フレーム41の横辺部44と連結されている。
【0040】
併せて、下基板連結部34には、下基板11との接合部(境界)に、下基板11の横辺に沿って第1基板分離切込みとしての下基板分離切込み35が設けられている。下基板分離切込み35は表裏両面に設けられ、断面V字状等の凹状をなしている(後述する
図14(b)を参照)。下基板分離切込み35の溝底部は、平面視において下基板11の横辺の延長線上に設けられている。そのため、横基板列33を構成する各下基板11では、平面視において、それぞれが有する一対の横辺と下基板分離切込み35とが一直線状をなしている。
【0041】
下フレーム連結部46においても、下基板11との接合部(境界)に、下基板11の横辺に沿って第1フレーム分離切込みとしての下フレーム分離切込み47が設けられている。下フレーム分離切込み47は表裏両面に設けられ、断面V字状等の凹状をなしている(後述する
図11を参照)。下フレーム分離切込み47の溝底部は、平面視において下基板11の横辺の延長線上に設けられている。下フレーム分離切込み47は横方向の両外方に延長され、下フレーム41にも設けられている。そのため、下フレーム分離切込み47は、下プレート30の横方向全体を横断している。下フレーム分離切込み47の外側が下フレーム41の横辺部44となっている。
【0042】
上記構成を有する下プレート30の製造は、四角形状をなすアルミニウム薄板を切り出した後、切削工具等を用いた切削加工を施すことによって行われる。下基板11同士の非連結部分となるスリット及び下基板11と下フレーム41との非連結部分となるスリットを形成することで下プレート30を得る。その上で、各下基板11に設けられた下電極13は、下基板11の表面に設けられた導電材料層のうち下電極13を形成する部分以外をエッチング除去し、下電極13を形成する方法(サブトラクティブ法)、下基板11の表面に下電極13を形成する方法(アディティブ法)など公知又は周知の方法によって形成する。なお、下電極13の形成は、スリット形成の前後いずれとするかは任意である。
【0043】
図3に示すように、上記工程によって得られた下プレート30について、素子形成工程としての熱電素子形成工程を実施する。熱電素子形成工程では、
図5に示すように、まず、下プレート30を下側治具51に設置する。その際、下電極13の電極形成面を上側とした状態で、下プレート30の位置決め孔42に下側治具51に設けられた位置決め軸部52を挿入することで、下側治具51上の所定の設置位置に下プレート30を位置決めする。続いて、下プレート30の各下基板11において、下電極13の表面のうちP型素子20p及びN型素子20nが接合される箇所に、はんだクリーム等の接合材53を塗布する。なお、接合材53の塗布は、例えば、スクリーン印刷等の印刷方法を用いて行われる。
【0044】
その後、下プレート30の各下基板11に設けられた各下電極13の上に、予め定められた配列パターンに基づいてP型素子20p及びN型素子20nを配置する。P型素子20p及びN型素子20nは、公知又は周知の方法によって予め所定形状(本実施の形態では角柱状)に形成されたものである。この工程により、
図6に示すように、各下基板11の下電極13の上にP型素子20p及びN型素子20nが設置された下プレート30が得られる。なお、
図6では、熱電素子20について、前述した
図2(a)と同様、下電極13に対するP型素子20pの接合面21p及びN型素子20nの接合面21nを示している。P型素子20p及びN型素子20nのいずれか一方が第1熱電素子であり、他方が第2熱電素子に相当する。
【0045】
次に、
図3に示すように、下プレート作成工程とは別で行われる上プレート作成工程について説明する。第2プレート作成工程としての上プレート作成工程では、上基板12が複数設けられた上プレート60を作成する。上プレート60は、上基板12を構成する素材によって形成されている。
図7に示すように、上プレート60は、第2基板群としての上基板群61と、第2フレームとしての上フレーム71とを有している。
【0046】
上基板群61は、平面視において四角形をなす複数の上基板12を有している。各上基板12は同一形状かつ同一寸法を有し、それぞれに上電極14が同じ配列で形成されている。複数の上基板12の配列は、下基板11と同じである。ただ、上基板群61が有する各上基板12は、下基板11よりも縦辺の寸法が長くなっている。上基板12では、リード線16が接続されるランド部15を確保する必要があり、その分だけ寸法が大きくなっている(
図2(b)参照)。それにより、縦基板列62における各上基板12同士の間隔は、下基板11の縦基板列32における下基板11同士の間隔よりも狭くなっている。
【0047】
上基板群61において、横基板列63の各上基板12は、連結部としての上基板連結部64によって互いに連結されている。上基板連結部64と上基板12との接続部は、各上基板12が有する一対の縦辺の中央部において、縦辺全域の一部(例えば5分の1程度)の幅を有している。一方、縦基板列62の各上基板12は非連結となっている。
【0048】
上フレーム71は、平面視において四角形状をなすとともに下フレーム41と同じ寸法を有する枠体であり、上基板群61を囲うように設けられている。上フレーム71の四隅にも、それぞれ位置決め孔72が形成されている。上フレーム71は、上基板群61における縦基板列62と平行をなす一対の縦辺部73と、横基板列63と平行をなす一対の横辺部74とを有している。一対の縦辺部73は上プレート60の縦方向全域にわたって設けられ、両縦辺部73の両端部の間が横辺部74によってつながれている。
【0049】
上フレーム71の各縦辺部73は、上基板群61における各縦基板列62のうち横方向の両端に存在する縦基板列62と隣接している。各縦辺部73は、隣接する縦基板列62から離間して設けられた内縁75と、連結部としての上フレーム連結部76とを有している。
【0050】
内縁75は縦方向に沿って延び、隣接する縦基板列62において各上基板12が有する縦辺(上基板群61の外縁における縦辺)と平行をなしている。上フレーム連結部76は、上基板群61における各横基板列63において、上基板12同士の連結方向である横方向の両端部と一対の縦辺部73との間を連結している。上フレーム連結部76と上基板12との接続部は、上基板連結部64と上基板12との接続部と同じく、上基板12が有する一対の縦辺の中央部において、縦辺全域の一部(例えば5分の1程度)の幅を有している。
【0051】
一方、上フレーム71の各横辺部74は、上基板群61における横基板列63のうち縦方向の両端に存在する横基板列63と隣接している。各横辺部74は、隣接する横基板列63との間が非連結となっている。
【0052】
上記のように、上プレート60においては、上基板連結部64によって上基板12が連結された複数の横基板列63が、それぞれ横方向の両外側で上フレーム連結部76によって上フレーム71の各縦辺部73に連結され、それにより全体が一体化されている。横基板列63を構成する各上基板12は、その連結方向の両側で、上基板連結部64及び上フレーム連結部76によって連結されている。上基板連結部64及び上フレーム連結部76は、上基板12の縦辺中央部で当該上基板12と接続されている。そのため、各上基板12は、それぞれの中心を通る縦横の直線に対して線対称となる状態で、横に隣接する上基板12及び上フレーム71の縦辺部73と連結されている。
【0053】
併せて、上基板連結部64には、上基板12との接続部(境界)に、上基板12の縦辺に沿って第2基板分離切込みとしての上基板分離切込み65が設けられている。上基板分離切込み65は表裏両面に設けられ、下基板分離切込み35と同様、断面V字状等の凹状をなしている。上基板分離切込み65の溝底部は、平面視において上基板12の縦辺の延長線上に設けられている。そのため、縦基板列62を構成する各上基板12では、平面視において、それぞれが有する一対の縦辺と上基板分離切込み65とが一直線状をなしている。
【0054】
上フレーム連結部76においても、上基板12との接続部(境界)に、上基板12の縦辺に沿って第2フレーム分離切込みとしての上フレーム分離切込み77が設けられている。上フレーム分離切込み77は表裏両面に設けられ、断面V字状の凹状をなしている(後述する
図12を参照)。上フレーム分離切込み77の溝底部は、平面視において上基板12の縦辺の延長上に設けられている。上フレーム分離切込み77は縦方向の両外方に延長され、上フレーム71にも設けられている。そのため、上フレーム分離切込み77は、上プレート60の縦方向全体を縦断している。上フレーム分離切込み77の外側が上フレーム71の縦辺部73となっている。
【0055】
上記構成を有する上プレート60も、下プレート30と同じ方法によって形成する。
【0056】
次に、
図3に示すように、上記工程によって得られた上プレート60について、接合材塗布形成工程を実施する。接合材塗布工程では、
図8に示すように、まず、上プレート60を上側治具54に設置する。その際、上電極14の電極形成面を上側とした状態で、上プレート60の位置決め孔72に上側治具54に設けられた位置決め軸部55を挿入することで、上側治具54上の所定の設置位置に上プレート60を位置決めする。続いて、上プレート60の各上基板12において、上電極14の表面のP型素子20p及びN型素子20nが接合される箇所に、はんだクリーム等の接合材53を塗布する。この工程により、各上基板12の上電極14の表面のうちP型素子20p及びN型素子20nが設置される箇所に、接合材53が塗布された上プレート60が得られる。
【0057】
次に、一体化工程としてのプレート一体化工程では、下プレート作成工程及び熱電素子形成工程を経て得られた下プレート30と、上プレート作成工程及び接合材塗布工程を経て得られた上プレート60とを一体化させる。この場合、
図9に示すように、上電極14の表面に接合材53が塗布された上プレート60の上下を反転させ、各上基板12を下側治具51に設置された下プレート30の各下基板11と対向させる。その後、下側治具51と上側治具54との位置合わせを行った上で、上側治具54と下側治具51とを相対移動させ、上プレート60の各上基板12の上電極14(接合材53)を、下プレート30の各下基板11に形成されたP型素子20p及びN型素子20nの接合面22p,22nに当接させる。これにより、両プレート30,60が一体化される。なお、この作業は、手作業により行ってもよいし、昇降装置等を用いて機械的に行ってもよい。
【0058】
次に、
図3に示すように、両プレート30,60が一体化されたものをリフロー炉等の加熱炉に導入し、加熱処理を行う(加熱処理工程)。これにより、下基板11と上基板12との間に挟まれたP型素子20p及びN型素子20nが、下基板11の下電極13及び上基板12の上電極14にそれぞれ接合する。これにより、
図10に示すように、中間体81を得る。中間体81は、複数(本実施形態では9個)の熱電モジュール10が相互に連結された熱電モジュール群82を有している。熱電モジュール群82の周囲は、下基板11の側では下フレーム41で囲われるとともに当該下フレーム41と連結され、上基板12の側では上フレーム71によって囲われるとともに当該上フレーム71と連結されている。
【0059】
中間体81における熱電モジュール群82では、複数の熱電モジュール10が下基板群31における下基板11及び上基板群61における上基板12と同様に並んで設けられている。つまり、縦横の熱電モジュール列を有している。熱電モジュール縦列83においては、下基板11の側で、下基板連結部34によって熱電モジュール10同士が縦方向に連結され、下フレーム連結部46によって縦方向における両外側が下フレーム41と縦方向に連結されている。また、熱電モジュール横列84においては、上基板12の側で、上基板連結部64によって熱電モジュール10同士が横方向に連結され、上フレーム連結部76によって横方向における両外側が上フレーム71と横方向に連結されている。
【0060】
次に、
図3に示すように、分離工程の一つとしてのフレーム分離工程を実施する。フレーム分離工程では、上記各工程を経て得られた中間体81において、熱電モジュール群82に連結された下フレーム41及び上フレーム71を分離する。
【0061】
下フレーム41を分離する場合、
図10及び
図11に示すように、一対の横辺部44をそれぞれ下フレーム分離切込み47に沿って折り、熱電モジュール群82から分離させる。下フレーム41では、一対の横辺部44が熱電モジュール群82と下フレーム連結部46によって連結され、一対の縦辺部43は非連結状態となっている。そのため、一対の横辺部44を熱電モジュール群82から分離させることで、一対の縦辺部43も熱電モジュール群82から自然に分離される。なお、横辺部44を折る作業は、素手又は工具を用いて手作業により行ってもよいし、例えば横辺部44を把持しながら折る動作が可能な装置等を用いて機械的に行ってもよい。この点は、以降の折る作業を実施する場合も同様である。
【0062】
上フレーム71を分離する場合、
図10及び
図12に示すように、一対の縦辺部73をそれぞれ上フレーム分離切込み77に沿って折り、熱電モジュール群82から分離させる。上フレーム71では、一対の縦辺部73が熱電モジュール群82と上フレーム連結部76によって連結され、一対の横辺部74は非連結状態となっている。そのため、一対の縦辺部73を熱電モジュール群82から分離させることで、一対の横辺部74も熱電モジュール群82から自然に分離される。
【0063】
以上の工程を経ることにより、中間体81が有する下フレーム41及び上フレーム71が熱電モジュール群82から分離され、
図13に示すように、各フレーム41,71が除去された熱電モジュール群82が得られる。
【0064】
次に、
図3に示すように、分離工程の一つとしての熱電モジュール分離工程を実施する。熱電モジュール分離工程では、フレーム分離工程を経て得られた熱電モジュール群82を、個々の熱電モジュール10に分離する。
【0065】
ここでは、
図13及び
図14に示すように、各熱電モジュール10が縦に複数並んだ熱電モジュール縦列83のうち横方向の端に存在する熱電モジュール縦列83を、上基板分離切込み65に沿って折り、当該熱電モジュール縦列83を分離させる。熱電モジュール群82における熱電モジュール縦列83同士は、横方向に隣接する上基板12の側で上基板連結部64によって連結されている。一方で、横方向に隣接する下基板11の側では非連結状態となっている。そのため、上基板分離切込み65に沿って折ることで、熱電モジュール縦列83の列全体が分離される。同様に、上基板分離切込み65に沿って順次折ることで、熱電モジュール群82を複数の熱電モジュール縦列83に分離する。なお、熱電モジュール縦列83に上基板連結部64が残存した場合も、上基板分離切込み65に沿って折ることで分離できる。
【0066】
熱電モジュール縦列83における熱電モジュール10同士は、下基板11の側で下基板連結部34によって連結されている。一方で、上基板12の側では非連結状態となっている。そのため、下基板11の側で下基板分離切込み35に沿って折ることで、一つの熱電モジュール10を分離させることができる。同様に、下基板分離切込み35に沿って順次折ることで、熱電モジュール縦列83を複数の熱電モジュール10に分離させることができる。これにより、熱電モジュール群82を構成していた複数の熱電モジュール10を得る。
【0067】
以上、詳述した本実施の形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0068】
(1)下基板群31を有する下プレート30と上基板群61を有する上プレート60とを、両者の間にP型素子20p及びN型素子20nを挟みながら一体化することで、複数の熱電モジュール10を有する熱電モジュール群82が形成される。熱電モジュール群82を個々の熱電モジュール10に分割すれば、一連の工程により、一挙に複数の熱電モジュール10を製造することができる。これにより、基板一つ一つを治具に設置しながら熱電モジュール10を単品ごとに製造していた従来の製造方法に比べ、治具への設置作業が簡略され、複数の熱電モジュール10を効率的に製造できる。また、基板11,12上の電極13,14に接合材53を塗布する場合は、フレーム41,71を位置決めすることで基板群31,61を構成する各基板11,12が位置決めされるため、各基板11,12の位置決め不良を低減できる。これにより、位置決め不良に伴う電極13,14と熱電素子20との接合不良を低減し、熱電モジュール10を製造する際の歩留まりを向上させることができる。
【0069】
(2)下プレート30では、一対の横辺部44はそれと隣接する下基板群31の横基板列33と連結され、その連結部位には下プレート30の全体を直線状に横断する下フレーム分離切込み47が設けられている。また、上プレート60でも、一対の縦辺部73はそれと隣接する上基板群61の縦基板列62と連結され、その連結部位には上プレート60の全体を直線状に縦断する上フレーム分離切込み77が設けられている。そのため、フレーム分離切込み47,77に沿って当該切込み47,77よりも外側部分の横辺部44又は縦辺部73を折れば、その横辺部44又は縦辺部73が分離される。これにより、切断具等を用いて横辺部44又は縦辺部73を分離する場合に比べ、分離作業を容易に行うことができる。
【0070】
(3)下プレート30では、一対の横辺部44がそれと隣接する下基板群31の横基板列33と連結される一方、一対の縦辺部43はそれと隣接する下基板群31の縦基板列32と非連結となっている。また、上プレート60では、一対の縦辺部73がそれと隣接する上基板群61の縦基板列62と連結される一方、一対の横辺部74はそれと隣接する上基板群61の横基板列63と非連結となっている。そのため、フレーム分離切込み47,77に沿って当該切込み47,77よりも外側部分の横辺部44又は縦辺部73を折れば、下フレーム41の縦辺部43又は上フレーム71の横辺部74は自然に分離される。これにより、フレーム41,71を折って分離する回数を少なくし、フレーム41,71の分離作業をより一層容易に行うことができる。
【0071】
(4)プレート一体化工程を経て得られた熱電モジュール群82では、熱電モジュール縦列83同士を連結しているのは、上基板12の側だけであり、下基板11の側では非連結となっている。そのため、熱電モジュール分離工程において、熱電モジュール縦列83同士を分離する場合、上基板12の側において、上基板分離切込み65に沿って折れば分離できる。これにより、熱電モジュール縦列83同士を分離しやすい。
【0072】
(5)下基板群31において、個々の下基板11を縦方向に連結する下基板連結部34及び下フレーム連結部46は、下基板11の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対象となっている。上基板群61においても、個々の上基板12を横方向に連結する上基板連結部64及び上フレーム連結部76は、上基板12の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対象となっている。そのため、各基板11,12は、連結方向の両側で連結状態のバランスが保たれている。これにより、プレート一体化工程において、電極13,14と熱電素子20との接合を促すために下プレート30と上プレート60とが近づく方向へ荷重をかけた場合に、当該荷重を個々の下基板11及び上基板12に均等に作用させることができる。
【0073】
(6)下プレート30及び上プレート60において、基板11,12、基板群31,61及びフレーム41,71が四角形状をなし、各フレーム41,71の一辺は基板群31,61の一辺と平行をなしている。そのため、基板群31,61での基板11,12の配置における無駄を少なくし、製造コストの増加を抑制できる。また、下基板11及び上基板12が四角形状をなし、直線状をなすフレーム分離切込み47,77や基板分離切込み35,65が基板11,12の一辺の延長上に形成されている。これにより、折り跡の加工としてはバリ取り程度の簡易な処理で済ませることができ、工程を簡略化できる。
【0074】
(7)下基板11及び上基板12は、表面が絶縁処理されたアルミニウム基板によって形成され、熱電素子20は、鉄-バナジウム系の熱電材料によって形成されている。鉄-バナジウム-アルミニウム系(Fe-V-Al系)の熱電モジュールでは、従前、基板材料としてアルミナを用いた薄板によって構成されていた。ただ、薄いアルミナは高価であり、かつ脆くて割れやすいために取り扱いが難しいという点で、素材として改善点があった。その点、上記のとおり、基板材料としてアルミニウムが採用されているため、アルミナと比較して安価であり、熱電モジュール10の製造コストを低減できる。また、アルミナと比較して強度も優れているため、取り扱いも容易となるし、製造過程で基板11,12が割れたり欠けたりすることによる不良品の発生を少なくし、歩留まりを向上させることができる。
【0075】
なお、熱電モジュール10の製造方法は、上記実施の形態の製造方法に限らず、例えば次のような方法を採用してもよい。
【0076】
(a)上記実施の形態では、下プレート30では各下基板11を縦方向に連結し、上プレート60では各上基板12を横方向に連結した。これに代えて、
図15に示す下プレート91及び上プレート92のように、連結方向を上下の基板で逆としてもよい。
図15(a)に示すように、下プレート91では、下基板11同士が下基板連結部93及び下フレーム連結部94によって横方向に連結されている。
図15(b)に示すように、上プレート92では、上基板12同士が上基板連結部95及び上フレーム連結部96によって縦方向に連結されている。
【0077】
(b)上記実施の形態では、下基板群31と下フレーム41とは、下基板群31における下基板11同士が連結される方向と同じ方向で連結され、上基板群61と上フレーム71との連結も同様となっている。これに代えて、基板群31,61とフレーム41,71との連結方向を、基板群31,61における基板11,12同士の連結方向と違う方向で連結してもよい。また、基板群31,61とフレーム41,71との連結方向を、縦横両方向としてもよい。
【0078】
(c)上記実施の形態では、下基板連結部34及び下フレーム連結部46並びに上基板連結部64及び上フレーム連結部76が有する幅は、下基板11又は上基板12の一辺の一部となっている。これに代えて、
図15に示すように、下基板連結部93及び下フレーム連結部94並びに上基板連結部95及び上フレーム連結部96が有する幅が、下基板11又は上基板12の一辺全域にわたる幅を有する構成としてもよい。この場合、図示のように、下基板連結部93では下基板11同士が直接連結され、上基板連結部95では上基板12同士が直接連結されていてもよい。同様に、下フレーム連結部94において下基板11の横列と下フレーム41の縦辺部43とが直接連結され、上フレーム連結部96において上基板12の縦列と上フレーム71の横辺部74とが直接連結されていてもよい。
【0079】
また、下基板11又は上基板12の一辺の一部で、下基板連結部34及び下フレーム連結部46並びに上基板連結部64及び上フレーム連結部76が連結される場合でも、一辺の中央部一か所だけでなく、複数設けられていてもよい。もっとも、その場合、下基板11又は上基板12は、連結方向の両側で、基板11,12の中心を通る縦横の直線のそれぞれに対して線対称となる状態で連結されることが好ましい。
【0080】
(d)上記実施の形態では、下基板連結部34及び下フレーム連結部46には、下基板11との境界にそれぞれ下基板分離切込み35及び下フレーム分離切込み47が設けられている。また、上基板連結部64及び上フレーム連結部76には、上基板12との境界にそれぞれ上基板分離切込み65及び上フレーム分離切込み77が設けられている。これらの各切込み35,47,65,77が設けられない構成を採用してもよい。その場合、折って分離するのではなく切断具等を用いて分離することとなる。
【0081】
(e)上記実施の形態では、熱電モジュール分離工程において、熱電モジュール群82のうち熱電モジュール縦列83同士を分離している。これに代えて、熱電モジュール横列84同士を分離し、その後、熱電モジュール横列84を個々の熱電モジュール10に分離するようにしてもよい。
【0082】
その場合、熱電モジュール横列84のうち縦方向の端に存在する熱電モジュール横列84を、下基板分離切込み35に沿って折り、当該熱電モジュール横列84を分離させる。
図13に示すように、熱電モジュール横列84同士は、縦方向に隣接する下基板11の側で下基板連結部34によって連結されている。一方で、縦方向に隣接する上基板12の側では非連結状態となっている。そのため、下基板分離切込み35に沿って折ることで、熱電モジュール横列84の列全体が分離される。同様に、下基板分離切込み35に沿って順次折ることで、熱電モジュール群82を複数の熱電モジュール横列84に分離する。
【0083】
熱電モジュール横列84における熱電モジュール10同士は、上基板12の側で上基板連結部64によって連結されている。一方で、下基板11の側では非連結状態となっている。そのため、上基板12の側で上基板分離切込み65に沿って折ることで、一つの熱電モジュール10を分離させることができる。同様に、上基板分離切込み65に沿って順次折ることで、熱電モジュール横列84を複数の熱電モジュール10に分離させることができる。
【0084】
その他、一つの熱電モジュール縦列83を分離した後、残った熱電モジュール群82における熱電モジュール横列84を分離するなど、縦列と横列を交互に分離するようにしてもよい。
【0085】
(f)上記実施の形態では、リード線16を接続するランド部15を確保するため、ランド部15の分だけ上基板12を下基板11よりも大きく形成した。これに代えて、上基板12を下基板11と同じ大きさに形成してもよい。
【0086】
(g)上記実施の形態では、下プレート30及び上プレート60の四隅に位置決め孔42,72が設けられ、下側治具51及び上側治具54の位置決め軸部52,55にこれら位置決め孔42,72を挿入することで下プレート30及び上プレート60を位置決めした。下プレート30及び上プレート60の位置決めを行う構成は任意である。例えば、各プレート30,60の四隅や外縁部に位置決め凹部を形成し、下側治具51及び上側治具54の側に設けられた位置決め凸部に嵌めることで位置決めするようにしてもよい。また、下プレート30と上プレート60とで位置決めを行う構成を変えてもよい。
【0087】
(h)上記実施の形態では、熱電素子形成工程を下プレート30に対してのみ実施し、下プレート30に形成された下電極13にP型素子20p及びN型素子20nの両者を設置するようにした。これに代えて、P型素子20p及びN型素子20nのいずれか一方を下プレート30の各下基板11における下電極13に形成し、他方を上プレート60における各上基板12の上電極14に形成し、その後、両プレート30,60を一体化するようにしてもよい。この場合、上プレート60を上側治具54に位置決めしながら各上基板12の上電極14に接合材53を塗布し、その接合材53の上に熱電素子20を形成する。当該工程が素子作成工程に相当する。
【0088】
熱電素子20の形成にあたっては、上記実施の形態のように、予め所定形状に形成されたP型素子20p及びN型素子20nを電極上に配置する方法の他、三次元造型機を用いて、積層しながらP型素子20p及びN型素子20nを形成するようにしてもよい。
【0089】
(i)上記実施の形態では、下基板11及び上基板12の素材として、表面に絶縁処理が施されたアルミニウム基板が用いられている。これに代えて、アルミナ基板や窒化アルミニウム基板等のセラミック基板等、公知又は周知の素材を用いることができる。また、上記実施の形態では、熱電素子20が鉄-バナジウム系の熱電材料によって構成されているが、ビスマス-テルル系、シリコン-ゲルマニウム系、マグネシウム-シリサイド系、マンガン-シリサイド系等の他の熱電材料によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0090】
11…下基板(第1基板)、12…上基板(第2基板)、13…下電極(第1電極)、14…上電極(第2電極)、20p…P型素子(第1熱電素子又は第2熱電素子)、20n…N型素子(第1熱電素子又は第2熱電素子)、30…下プレート(第1プレート)、31…下基板群(第1基板群)、32…縦基板列、33…横基板列、34…下基板連結部(連結部)、35…下基板切込み(第1基板切込み)、41…下フレーム(第1フレーム)、46…下フレーム連結部(連結部)、47…下フレーム分離切込み(第1フレーム分離切込み)、60…上プレート(第2プレート)、61…上基板群(第2基板群)、62…縦基板列、63…横基板列、64…上基板連結部(連結部)、65…上基板切込み(第2基板切込み)、71…上フレーム(第2フレーム)、76…上フレーム連結部(連結部)、77…上フレーム分離切込み(第2フレーム分離切込み)、81…中間体。