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特許7514095非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法
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  • 特許-非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/16 20060101AFI20240703BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20240703BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240703BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
H01M6/16 B
H01M6/02 Z
H01M50/474
H01M50/477
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020057927
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157976
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑村 俊行
(72)【発明者】
【氏名】淵本 雄平
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049833(WO,A1)
【文献】特開2001-196043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/16
H01M 6/02
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に開口部が形成された容器状の外装缶と、
前記外装缶の内周面に沿って配置され、正極活物質を含む筒状の正極と、
前記正極の内側に配置される絶縁性かつ筒状のセパレータと、
前記セパレータの内側に配置され、負極活物質を含む負極と、
前記外装缶の開口部を封止する封口板と、
前記正極と前記封口板との間に介挿され、一端面が前記正極の端面に当接するとともに他端面が前記封口板に当接する介挿部材とを有し、
前記介挿部材は、
前記一端面を有する第1のリングと、
前記他端面を有する第2のリングと、
前記第1のリング及び前記第2のリングを連結する連結部とを有し、
前記介挿部材は、
前記外装缶に接合される前記封口板の外周よりも中央に近い位置において前記他端面が前記封口板に当接する
ことを特徴とする非水電解液電池。
【請求項2】
前記連結部は、
前記第1のリングの側方に突出し、前記一端面に対して傾斜を有する傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解液電池。
【請求項3】
前記第1のリングは、
前記セパレータの外径に応じた内径を有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解液電池。
【請求項4】
一面に開口部が形成された容器状の外装缶の内周面に沿って、正極活物質を含む筒状の正極を配置し、
前記正極の内側に、負極活物質を含む負極を内部に備える絶縁性かつ筒状のセパレータを配置し、
前記正極の端面に当接する一端面を有する介挿部材を配置し、
前記外装缶内に非水電解液を注液し、
前記外装缶に形成された開口部を、前記介挿部材の他端面に当接する封口板によって封止する
工程を有し、
前記介挿部材は、
前記一端面を有する第1のリングと、
前記他端面を有する第2のリングと、
前記第1のリング及び前記第2のリングを連結する連結部とを有する
ことを特徴とする非水電解液電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えばボビン形リチウム電池などの非水電解液電池は、外装缶に正極及び負極などを収納した後、電解液を注入し、外装缶の開口部を封口板によって密閉することにより製造されることがある。封口板は、外装缶の開口部に応じた形状をしており、例えばレーザ溶接によって、封口板の外周が外装缶の開口部の内壁に接合される。
【0003】
このような非水電解液電池においては、放電時に負極から正極へリチウムイオンが移動すると、リチウムイオンが正極に入り込むことによって正極が膨張する。正極が膨張すると、膨張した正極が余分に電解液を吸収し、放電末期には電解液不足が生じて放電容量が低下することがある。
【0004】
正極の膨張を抑制する手法としては、例えば正極の上面に合剤押えリングを設け、正極が膨張して合剤押えリングが上昇すると、外装缶の内周面に形成された内方突起によって合剤押えリングを抑えることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-273911号公報
【文献】特開2005-216740号公報
【文献】特開2008-91260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、合剤押えリングを抑えて正極の膨張を抑制するためには、上述したように外装缶の内周面に内方突起を形成する必要があり、非水電解液電池の製造工程が煩雑になるという問題がある。すなわち、例えば封口板がカシメ加工によって外装缶に接合される場合には、カシメ加工に伴って外装缶に内方突起が形成されることがあるが、封口板がレーザ溶接によって外装缶に接合される場合には、独立して内方突起を形成する工程が必要となる。このとき、正極、負極及び合剤押えリングなどが外装缶に収納された後、合剤押えリングを抑えるための内方突起が外装缶の内周面に形成されることとなり、作業効率が低下する。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、外装缶に突起を形成することなく正極の膨張を抑制することができる非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する非水電解液電池は、1つの態様において、一面に開口部が形成された容器状の外装缶と、前記外装缶の内周面に沿って配置され、正極活物質を含む筒状の正極と、前記正極の内側に配置される絶縁性かつ筒状のセパレータと、前記セパレータの内側に配置され、負極活物質を含む負極と、前記外装缶の開口部を封止する封口板と、前記正極と前記封口板との間に介挿され、一端面が前記正極の端面に当接するとともに他端面が前記封口板に当接する介挿部材とを有し、前記介挿部材は、前記一端面を有する第1のリングと、前記他端面を有する第2のリングと、前記第1のリング及び前記第2のリングを連結する連結部とを有し、前記介挿部材は、前記外装缶に接合される前記封口板の外周よりも中央に近い位置において前記他端面が前記封口板に当接する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示する非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法の1つの態様によれば、外装缶に突起を形成することなく正極の膨張を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態に係る非水電解液電池の断面構造を示す模式図である。
図2図2は、一実施の形態に係る非水電解液電池の要部を拡大して示す図である。
図3図3は、正極リングの形状を示す斜視図である。
図4図4は、電圧と放電時間の関係の具体例を示す図である。
図5図5は、非水電解液電池の製造方法を示すフロー図である。
図6図6は、非水電解液電池の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願が開示する非水電解液電池及び非水電解液電池の製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施の形態に係る非水電解液電池100の断面構造を示す模式図である。図1に示す非水電解液電池100は、外装缶101、封口板102、端子103、ガスケット104、ワッシャ105、正極106、セパレータ107、負極108、集電体109及び正極リング110を有する。
【0013】
外装缶101は、円筒形の金属容器であり、2つの底面のうち一方の底面(図1においては上面)に開口部が形成されている。外装缶101は、正極106、セパレータ107、負極108及び集電体109などを収納する。
【0014】
封口板102は、外装缶101の開口部に応じた形状の蓋体であり、外装缶101の開口部に接合されて外装缶101を密閉する。図1に示すように、封口板102の外周は、外装缶101の内周面に沿って立ち上がっており、封口板102は、全体として凹型形状となっている。封口板102の外周において立ち上がる部分の高さは、例えば1.2mm程度である。封口板102の凹型形状の中央には端子103を挿通させる貫通孔が形成されており、貫通孔は、ガスケット104によって封止される。
【0015】
端子103は、封口板102の中央に形成された貫通孔を挿通し、一端が外装缶101の外部へ突出する一方、他端が外装缶101の内部で集電体109に接触する。そして、端子103は、集電体109を介して負極108と電気的に接続する。すなわち、端子103は、負極端子として機能する。
【0016】
ガスケット104は、封口板102の端子103が挿通する貫通孔を封止する。すなわち、ガスケット104は、封口板102の貫通孔の周囲において封口板102を両面から挟むように取り付けられ、封口板102と端子103の間の隙間を充填する。
【0017】
ワッシャ105は、端子103の外装缶101内部の端部を保持し、端子103を固定する。図1に示すように、端子103とワッシャ105が封口板102及びガスケット104を挟持することにより、端子103、ガスケット104及びワッシャ105が封口板102に一体化される。
【0018】
正極106は、例えば二酸化マンガンなどの正極活物質を含み、外装缶101の内周面に沿った円筒形状に成形されている。正極106が外装缶101の内周面に接して配置されるため、外装缶101は、正極の集電体として機能する。外装缶101内部には図示しない揮発性の非水電解液が充填されており、この非水電解液は、正極106に浸潤する。
【0019】
セパレータ107は、例えばポリプロピレンなどの透液性かつ絶縁性の材料を円筒形状に成形したものであり、正極106の円筒形状の内側に配置される。セパレータ107が絶縁性であるため、セパレータ107の円筒形状の内側は、正極106とは絶縁されている。
【0020】
負極108は、例えばリチウム又は亜鉛などの負極活物質を含み、セパレータ107の内周面に沿った円筒形状に成形されている。上述したように、セパレータ107の円筒形状の内側が正極106と絶縁されているため、負極108は、正極106と絶縁される。ただし、セパレータ107が非水電解液を透過させる透液性であるため、例えばリチウムイオンなどのイオンがセパレータ107を介して負極108から正極106へ移動する。
【0021】
集電体109は、負極108と端子103を電気的に接続する。すなわち、集電体109の一端側は負極108の円筒形状の内側に接触し、他端側は封口板102の下方において端子103に接触する。
【0022】
正極リング110は、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなどの樹脂を材料とし、中央にセパレータ107を挿通させる貫通孔が形成されたリング状の介挿部材であり、正極106の上面と封口板102の下面との間に介挿される。すなわち、正極リング110の下端面は正極106の上面に当接し、正極リング110の上端面は封口板102の下面に当接する。正極リング110の上端面の封口板102に当接する部分は、外装缶101の内周面に接合される封口板102の外周よりも、封口板102の中央付近に位置している。換言すれば、正極リング110は、封口板102の外周よりも端子103に近い位置において、封口板102の下面に当接する。
【0023】
図2は、正極リング110の周辺を拡大して示す図である。図2に示すように、正極リング110の下面110aは、正極106の上面に当接する。そして、外装缶101の内周面付近では、正極106の上面と正極リング110と外装缶101の内周面とによって、空隙111が形成される。また、正極リング110の上面110bは、封口板102の下面に当接する。
【0024】
正極106の上面と封口板102の下面との間に正極リング110が介挿され、正極リング110の下面110a及び上面110bがそれぞれ正極106及び封口板102に当接することにより、正極106が封口板102の方向へ膨張することが抑制される。すなわち、放電によってリチウムイオンが正極106に入り込むと、正極106が封口板102の方向へ膨張しようとする。しかし、正極106の上面が正極リング110の下面110aに当接し、正極リング110の上面110bが封口板102に当接するため、正極リング110は、封口板102の方向へ移動することなく正極106の上面を押圧し、正極106の膨張を抑制する。この結果、図示しない非水電解液が膨張した正極106によって余分に吸収されることを防止することができる。
【0025】
また、正極リング110の下面110aの外周には、空隙111が形成されており、この空隙111に非水電解液を保持することが可能となっている。このため、正極106の上面に正極リング110が載置されても、非水電解液と正極106との接触領域が確保され、リチウムイオンの移動が阻害されない。結果として、放電の不良を抑制することができる。
【0026】
さらに、正極リング110の上面110bと封口板102の当接部分は、封口板102が外装缶101の内周面にレーザ溶接によって接合される接合部分102aよりも、端子103に近い。すなわち、封口板102の外装缶101との接合部分102aの直下ではなく、接合部分102aから離れた位置において、正極リング110の上面110bが封口板102に当接する。また、封口板102の外周が外装缶101の内周面に沿って立ち上がり、封口板102が凹型形状となっているため、接合部分102aと正極リング110の上面110bとの間の距離は、封口板102の外周の立ち上がりの高さに応じて大きくなる。このため、封口板102の接合部分102aがレーザ溶接によって外装缶101に接合される際にも、レーザ溶接の熱が正極リング110までは到達せず、正極リング110が変形したり溶融したりすることを防止することができる。
【0027】
図3は、正極リング110の形状を示す斜視図である。図3(a)は、正極リング110の上面110b側を示す図であり、図3(b)は、正極リング110の下面110a側を示す図である。
【0028】
図3に示すように、正極リング110は、下面110a側の下方リングと上面110b側の上方リングとの2つのリングが、複数の連結部110cによって連結された形状となっている。下方リングよりも上方リングの方が大径であるため、連結部110cは、下方リングから側方へ突出した上で、上方リングの方向へ延びている。複数の連結部110cの間にはスリット110dが形成されている。
【0029】
下方リングの内径は、セパレータ107の外径とほぼ一致しており、下方リングにセパレータ107を挿通させることにより、正極リング110の封口板102に平行な方向の位置決めがされる。一方、上方リングの外径は、封口板102の外周の径よりも小さく、例えば外装缶101の外径の97%以下の大きさである。したがって、例えば外装缶101の外径が14.00mmである場合、正極リング110の上方リングの外径は13.58mm以下となる。上方リングの外径を小さくすることにより、封口板102と外装缶101の接合部分102aから離れた位置において、正極リング110の上面110bを封口板102に当接させることができる。結果として、レーザ溶接の熱によって正極リング110が変形したり溶融したりすることを防止することができる。
【0030】
複数の連結部110cの間にスリット110dが形成されることにより、正極リング110によって非水電解液が遮断されることがなく、正極106と負極108の間のリチウムイオンの移動が阻害されることがない。また、連結部110cの下方リングの側方へ突出する部分には、下面110aに対して傾斜を有する傾斜面110eが形成される。そして、傾斜面110eと正極106の上面と外装缶101の内周面とによって空隙111が形成される。正極リング110の外方の非水電解液は、空隙111に保持され、保持された非水電解液が常に正極106に接する。このため、非水電解液と正極106との接触領域が確保され、リチウムイオンの移動が阻害されず、放電の不良を抑制することができる。
【0031】
このような正極リング110の下方リングを正極106に当接させ、上方リングを封口板102に当接させることにより、放電時の正極106の膨張を抑制し、非水電解液が膨張した正極106に吸収されることを防止することができる。この結果、放電末期に非水電解液が不足することがなく、放電容量を向上することができる。
【0032】
具体的に、正極リング110を有さない非水電解液電池と、正極リング110を有する非水電解液電池100との放電時間の例を図4に示す。図4においては、正極リング110を有さない非水電解液電池の電圧変化のグラフを破線で示し、非水電解液電池100の電圧変化のグラフを実線で示す。この図から明らかなように、正極リング110を有さない非水電解液電池では、電圧が1.5∨に低下するまでの時間が例えば1600~1700時間程度であるのに対し、非水電解液電池100では、電圧が1.5∨に低下するまでの時間が例えば1900~2000時間程度である。特に、非水電解液電池100では、放電時間が1300時間程度経過してからの電圧降下が緩やかであり、放電容量が向上していることがわかる。
【0033】
次いで、上記の構造を有する非水電解液電池100の製造方法について、図5に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0034】
まず、円筒形の外装缶101に、円筒形状に成形された正極106が配置される(ステップS101)。正極106の外周面は、外装缶101の内周面に接触する。正極106が円筒形状であるため、正極106の中央にも円筒形状の空間が形成される。
【0035】
一方、セパレータ107に負極108が配置される(ステップS102)。セパレータ107及び負極108もそれぞれ円筒形状であるため、負極108の外周面がセパレータ107の内周面に接触するように、セパレータ107の内部に負極108が配置される。そして、負極108の内周面には、集電体109が添着される。負極108及び集電体109が内部に配置されたセパレータ107は、正極106の中央の空間に挿入される(ステップS103)。これにより、外装缶101の内部においては、円筒形状の正極106の中央から円筒形状のセパレータ107が突出する状態となる。
【0036】
そして、正極106の中央から突出するセパレータ107を正極リング110に挿通させ、正極リング110の下面110aが正極106の上面に接触するように、正極リング110が配置される(ステップS104)。この状態では、正極リング110の上面110bは、外装缶101の開口部付近の高さに位置する。そして、外装缶101の内部に非水電解液が注入される(ステップS105)。セパレータ107の内部に注入された非水電解液は、負極108に浸潤するとともに、セパレータ107を透過して正極106に浸潤する。また、セパレータ107の外部に注入された非水電解液は、主に正極リング110のスリット110dを通過して正極106に浸潤し、セパレータ107を透過して負極108に浸潤する。このように、正極リング110にスリット110dが形成されているため、非水電解液の移動が正極リング110によって妨げられることがなく、非水電解液を正極106及び負極108に十分に含浸させることができる。非水電解液は、液面が例えば正極リング110の下面110aと上面110bの間の高さとなるまで注入される。
【0037】
ところで、封口板102には、貫通孔及びその周囲を覆うようにガスケット104が取り付けられ、ガスケット104を挟持するように端子103とワッシャ105が取り付けられる。すなわち、封口板102の上面から端子103が貫通孔に挿入され、挿入された端子103の先端にワッシャ105が固定される。
【0038】
このようにして端子103が取り付けられた封口板102は、外装缶101の開口部にレーザ溶接される(ステップS106)。具体的には、封口板102の外周と外装缶101の内周面とがレーザ溶接され、外装缶101の開口部が封止される。レーザ溶接時には、封口板102と外装缶101の接合部分102aが加熱される。しかし、本実施の形態においては、封口板102の外周が立ち上がるとともに、封口板102と正極リング110の当接部分が端子103に近い中央寄りであるため、正極リング110が接合部分102aから離れており、熱により正極リング110が変形及び溶融することはない。
【0039】
外装缶101の開口部が封口板102によって封止されることにより、非水電解液電池100が完成する。この非水電解液電池100は、負極108から正極106へリチウムイオンが移動することにより放電する。放電時間が長くなるにつれてリチウムイオンが正極106に吸蔵されるが、本実施の形態においては、正極106の上面と封口板102の下面との間に正極リング110が介挿され、正極リング110によって正極106の上面が抑えられる。このため、リチウムイオンが正極106に吸蔵されても、正極106の膨張が抑制され、正極106による非水電解液の吸収を低減することができる。この結果、非水電解液が不足することはなく、放電容量を向上することができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、正極の上面と封口板の下面とに当接する正極リングが正極と封口板の間に介挿される。このため、放電により正極にリチウムイオンが吸蔵されても正極の膨張を抑制することができる。換言すれば、外装缶に突起を形成することなく正極の膨張を抑制することができ、非水電解液の不足による放電容量低下を防止することができる。
【0041】
なお、上記一実施の形態においては、正極リング110の下方リングよりも上方リングの方が大径であるものとしたが、正極リングの形状はこれに限定されない。例えば、図6に示す正極リング120のように、上方リングの径を下方リングの径と同じか下方リングの径より小さくしても良い。図6において、正極リング120は、下方リングよりも上方リングが小径の円錐台形状を有する。上方リングを小径とすることにより、正極リング120と封口板102の当接部分を、外装缶101と封口板102の接合部分102aからさらに離すことができ、封口板102をレーザ溶接する際の熱の影響を低減することができる。
【0042】
また、上記一実施の形態においては、外装缶101の2つの底面のうち開口部が形成される底面側を非水電解液電池100の上方として「上面」及び「下面」などの上下方向を規定したが、非水電解液電池100は、任意の姿勢で使用及び製造されて良いことはいうまでもない。すなわち、例えば非水電解液電池100の長手方向が水平になる姿勢で使用されたり、外装缶101の開口部が下方になる姿勢で使用されたりしても良い。
【符号の説明】
【0043】
101 外装缶
102 封口板
103 端子
104 ガスケット
105 ワッシャ
106 正極
107 セパレータ
108 負極
109 集電体
110、120 正極リング
110a 下面
110b 上面
110c 連結部
110d スリット
110e 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6