(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】火災監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240703BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B25/00 510F
(21)【出願番号】P 2020059235
(22)【出願日】2020-03-29
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】青山 晃久
(72)【発明者】
【氏名】井手 康弘
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-026259(JP,A)
【文献】特開2006-288459(JP,A)
【文献】特開平08-016950(JP,A)
【文献】特開2014-016677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域の検出対象を検出する火災感知器を備えた火災監視システムであって、
前記火災感知器が
火災を判断するために検出した
所定の物理量の検出
値の、カバー部材の装着状態から取り外し状態への変化量に基づいて
、前記火災感知器に対する
前記カバー部材の取り外し状態を判定する判定部を
備えたことを特徴とする火災監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の火災監視システム
であって、
前記判定部は、前記検出
値の変化量が所定の条件を満た
して前記カバー部材の取り外し状態を判定した場合、
当該所定の条件を満たした以降について、
前記カバー部材が取り外されていると判定することを特徴とする火災監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の火災監視システム
であって、
前記火災監視システムは、複数の前記火災感知器が接続された受信機を備え、
前記受信機は、
前記判定部
を備え
たことを特徴とする火災監視システム。
【請求項4】
請求項3記載の火災監視システム
であって、
前記受信機は
、複数の
前記火災感知器の前記カバー部材の取り外し状態に関する表示を同一の画面で行うことを特徴とする火災監視システム。
【請求項5】
請求項3又は4記載の火災監視システム
であって、
前記受信機は
、
複数の前記火災感知器から所定
の前記火災感知器を選択可能であって、
当該選択された前記火災感知器の前記カバー部材の取り外し状態に関する表示を行い、選択されていない前記火災感知器の前記カバー部材の取り外し状態に関する表示は行わない
ことを特徴とする火災監視システム。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか記載の火災監視システム
であって、
前記受信機は、前記火災感知器
の試験で火災を検出した場合、当該火災感知器については前記カバー部材が取り外されていると判定することを特徴とする火災監視システム。
【請求項7】
請求項3乃至6の何れか記載の火災監視システム
であって、
前記受信機は、前記火災感知器に火災を検出したときの動作を
電気的に行わせる遠隔試験機能を
備え、前記遠隔試験機能に基づいて前記火災感知器で火災を検出した場合には、前記カバー部材が取り外されていると判定しないことを特徴とする火災監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器により火災を監視する火災監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型(Record-type)の火災監視システムにあっては、受信機に、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火災感知器、例えば煙感知器を接続し、煙感知器で検出した煙濃度等に基づく検出結果を受信機で受信して所定の火災判断条件を充足したときに火災と判断し、音と表示により火災発生場所を示す火災警報を出力している。
【0003】
このような火災監視システムの施工工事では、受信機を施工保守モード(音による火災警報や連動制御を停止するモード)に切り替えた状態で、固有のアドレスが設定された煙感知器や防排煙機器等の端末を受信機に接続する工事を行い、接続の済んだ端末については動作を確認する試験等を行い、最終的に行われる消防検査に向けて工事を進めている。
【0004】
煙感知器の工事は、感知器ベースを監視領域となる例えば部屋の天井面に設置して受信機と接続し、感知器ベースに煙感知器を嵌合して機械的且つ電気的に接続している。煙感知器は、煙流入口から内部の検煙部に流入した煙に検出光を照射し、その散乱光を受光して煙濃度を検出している。また、煙感知器には、工場出荷の際にカバー部材として防塵カバーが装着されており、工事の際には、粉塵の流入を防止するために防塵カバーを取り付けたままとし、最終的な消防検査を行うまでに、取り外すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、煙感知器からの防塵カバーの取り外しの確認は、工事関係者が現場に出向いて行う目視作業となり、煙感知器は監視領域となる各階の部屋、廊下、階段等の様々な場所に設置されており、防塵カバーの取り外しの確認に手間と時間がかかり、万一、防塵カバーを取り外していない煙感知器があると、その場所での火災監視機能が失われるという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するため、例えば住宅用火災警報器にあっては、特許文献1に示すように、防塵カバーの取り外し状態を検知するカバー体検知スイッチを設け、防塵カバーの取り外し忘れを警報するようにしている。
【0008】
しかし、火災監視システムに設けた多数の煙感知器に、実際の運用には不要なカバー体検知スイッチ等を設けることは、構造が複雑化してコストアップに繋がるといった問題がある。また、住宅用火災警報器においても、同様な問題がある。
【0009】
本発明は、火災感知器の構造や機能を追加変更することなく、火災感知器に取り付けているカバー部材の取り外し忘れを確実に防止可能する火災監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(火災感知器単独の火災監視システム)
本発明は、監視領域の検出対象を検出する火災感知器を備えた火災監視システムであって、火災感知器が火災を判断するために検出した所定の物理量の検出値の、カバー部材の装着状態から取り外し状態への変化量に基づいて、火災感知器に対するカバー部材の取り外し状態を判定する判定部を備えたことを特徴とする。
【0011】
(検出結果が所定の条件を満たした以降は取り外しと判定)
判定部は、検出値の変化量が所定の条件を満たしてカバー部材の取り外し状態を判定した場合、当該所定の条件を満たした以降について、カバー部材が取り外されていると判定する。
【0012】
(火災感知器と受信機を備えた火災監視システム)
また、火災監視システムは、複数の火災感知器が接続された受信機を備え、
受信機は、判定部を備える。
【0013】
(カバー部材の取り外し状態の表示)
受信機は、複数の火災感知器のカバー部材の取り外し状態に関する表示を同一の画面で行う。
【0014】
(カバー部材の取り外し状態の選択表示)
受信機は、
複数の火災感知器から所定の火災感知器を選択可能であって、
当該選択された火災感知器のカバー部材の取り外し状態に関する表示を行い、選択されていない火災感知器のカバー部材の取り外し状態に関する表示は行わない。
【0015】
(火災検出とカバー部材の取り外し状態の判定)
受信機は、火災感知器の試験で火災を検出した場合、当該火災感知器についてはカバー部材が取り外されていると判定する。
【0016】
(受信機からの遠隔試験とカバー部材の取り外し状態の判定)
受信機は、火災感知器に火災を検出したときの動作を電気的に行わせる遠隔試験機能を備え、遠隔試験機能に基づいて火災感知器で火災を検出した場合には、カバー部材が取り外されていると判定しない。
【発明の効果】
【0017】
(火災感知器単独の火災監視システムの効果)
本発明によれば、火災感知器に装着しているカバー部材が取り外されることにより、検出対象の外乱に基づいて検出結果が変動するという知見に基づき、火災感知器に装着しているカバー部材の取り外し状態を、火災を検出するために検出している所定の物理量の検出値に基づいて判定することから、火災感知器の物理的な構造や機能を追加変更することなく、火災感知器におけるカバー部材の取り外しの状態を簡単且つ容易に確認することができ、カバー部材の取り外し忘れを確実に防止可能とする。
【0018】
(検出結果が所定の条件を満たした以降は取り外しと判定する効果)
また、前記検出結果が所定の条件を満たした場合、所定の条件を満たした以降について、カバー部材が取り外されていると判定することにより、検出対象の外乱が変動して検出結果が所定の条件を満たさなくなったときにおいてもカバー部材が取り外されていると判定できるため、安定的にカバー部材の取り外しを防止可能とする。
【0019】
(火災感知器と受信機を備えた火災監視システムの効果)
また、火災監視システムが複数の火災感知器を接続した受信機を備えた場合には、受信機の感知器管理部により、火災感知器の各々から受信した検出結果に基づいて、火災感知器のカバー部材の取り外し状態を判定することから、火災監視システムの施工工事の際に、現場に出向くことなく、受信機側でカバー部材の取り外し状態を簡単且つ容易に確認することができ、カバー部材の取り外し忘れを確実に防止可能とする。
【0020】
(カバー部材の取り外し状態の表示による効果)
また、受信機は複数のカバー部材の取り外し状態に関する表示を同一の画面で行うことで、火災監視システムの施工工事の際に、受信機側で工事の済んだ複数の火災感知器におけるカバー部材の取り外し状態を例えば一覧表示して簡単且つ容易に確認することができる。
【0021】
(カバー部材の取り外し状態の選択表示による効果)
また、受信機は、所定の条件に基づいて火災感知器を選択可能であって、当該選択された火災感知器のカバー部材の取り外し状態に関する表示を行い、選択されていない火災感知器のカバー部材の取り外し状態に関する表示は行わない、表示を行うことから、例えば受信機からの信号線単位となる系統別、系統毎のアドレス又はアドレス範囲を必要に応じて火災感知器を選択することで、例えば階別、地区別、部屋等の設置場所に分けてカバー部材の取り外し状態を簡単且つ確実に知ることができる。
【0022】
(火災検出とカバー部材の取り外し状態の判定による効果)
また、受信機は、火災感知器で火災を検出した場合、当該火災感知器についてはカバー部材を取り外した状態として判定するものであり、これは煙を検出する火災感知器の施工工事では、試験治具により火災感知器に実際に煙又は擬似煙を流入して試験発報させる炙り試験(実試験)を行っており、炙り試験の際には、カバー部材の取り外しは必須であることから、炙り試験により火災を検出した場合はカバー部材を取り外した状態と判定することで、火災感知器の炙り試験を通じてカバー部材の取り外し状態を簡単且つ確実に判定することができる。
【0023】
(受信機からの遠隔試験とカバー部材の取り外し状態の判定の効果)
また、受信機は、火災感知器に火災を検出したときの動作を行わせる遠隔試験機能を有し、遠隔試験機能に基づいて火災感知器で火災を検出した場合には、カバー部材を取り外した状態として判定しないものとしており、これは火災感知器の遠隔試験が、受信機からの指示で火災感知器を電気的に試験動作させて火災を検出するものであり、カバー部材の取り外しを必要としないことから、遠隔試験の火災検出によってカバー部材を取り外した状態と誤って判定することを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】防塵カバーの取り外し状態を受信機で判別して報知する火災監視システムの実施形態を示した説明図である。
【
図2】受信機に記憶された施工管理情報の一例を示した説明図である。
【
図4】煙感知器に対する防塵カバーの取り付けを示した説明図であり、
図4(A)に防塵カバーの取り付けを示し、
図4(B)に防塵カバーの取り外しを示す。
【
図5】防塵カバーの取り外し状態をアドレスマップで表示する施工管理画面を示した説明図である。
【
図6】施工工事が進んだ
図5に続く施工管理画面を示した説明図である。
【
図7】防塵カバーの取り外し状態をリスト形式で表示する施工管理画面を示した説明図である。
【
図8】防塵カバーを取り外して行う煙感知器の炙り試験を概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る火災監視システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、この発明が限定されるものではない。
【0026】
[実施の形態の基本的な概念]
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、火災監視システムに関するものである。
【0027】
本実施の形態の火災監視システムは、複数の火災感知器を接続した受信機を備えたものであり、受信機は、火災感知器の各々で検出した検結果に基づいて火災を判断して警報するものである。
【0028】
ここで、「火災感知器」とは、火災の(火災に伴い発生する:以下同じ)煙を検出する煙検出部を備える「煙感知器」、火災の熱を検出する熱検出部を備える「熱感知器」、火災の赤外線を検出する光学式炎検出部を備える「炎感知器」、火災のガスを検出するガス検出部を備える「ガス検出器」、および前記検出対象を組み合わせて検出する「複合型検知器」等を含む。
【0029】
また、「受信機」とは、複数の火災感知器、例えば複数の煙感知器の各々で検出した検出結果に基づいて火災を判断して警報するものであり、このため、煙感知器には固有のアドレスが設定され、受信機は、アドレスの指定により煙感知器の各々から受信した検出結果に基づいて火災を判断して警報するものである。受信機は、例えば、検出結果が所定の火災判断条件を充足したとき、例えば検出値が所定の火災閾値以上の状態が所定の蓄積時間継続したときに火災と判断し、音と表示により火災警報を出力するものであり、煙感知器の設置場所を特定して火災警報を出力するR型の受信機を含む概念である。
【0030】
本実施の形態の火災監視システムは、受信機に判定部として機能する感知器管理部を備えるものである。ここで、「感知器管理部」とは、火災感知器の各々から受信した検出値、一例として、煙感知器の各々から受信した検出値に基づいて、煙感知器のカバー部材の取り外しに関するカバー部材の取り外し状態を判定するものである。
【0031】
また、「カバー部材」とは、火災感知器に対する検出対象の外乱入力を遮断又は抑制するものであり、検出対象も遮断又は抑止するものであって良い。また、外部からの衝撃等に対し火災感知器本体を保護する機能をあわせて備えるものであって良い。また、「カバー部材」は外乱入力のすべてを遮断又は抑制するものであってもよいし、外乱入力の一部を遮断又は抑制するものであってもよい。
【0032】
ここで、「入力」とは、例えば煙検出部に対する煙等の流入、熱検出部に対する熱の放射、光学式炎検出部に対する光の入射、ガス検出部に対するガスの流入等を含む。また、「検出対象の外乱」とは、例えば煙検出部の場合は火災でないときの煙や粉塵や水蒸気、熱検出部の場合は火災以外の熱、光学式炎検出部の場合は火災以外の光(放射線)、ガス検出部の場合は火災以外のガス等を含む。
【0033】
また、「カバー部材」は、例えば施工工事等の際に、火災検知器の検出部を一時的に保護するための着脱自在な部材であり、施工工事が完了した段階で取り外されるものである。例えば工場出荷時等に火災感知器に予め装着されており、施工工事の際には装着したまま設置し、施工工事が完了するまでに取り外すものである。
【0034】
また、「感知器管理部」は、受信機に施工保守モードを設定した状態で、煙感知器の各々から受信した検出結果に基づいて、煙感知器のカバー部材の取り外し状態を判定するものである。ここで、「カバー部材の取り外し状態を判定する」とは、「カバー部材が取り外されていない」と判定するか、「カバー部材が取り外されている」と判定するかを意味する。
【0035】
なお、「施工保守モード」とは、火災監視システムの施工工事の際に、所定の操作により受信機に設定される動作モードであり、煙感知器を含む火災感知器からの検出値に基づき火災と判断しても、音による火災警報、連動制御、移報制御等を抑止(禁止)するモードであり、点検モードを含む概念である。これに対し施工工事の完了後は、所定の操作により「火災監視モード」が設定され、施工保守モードで抑止していた音による火災警報、連動制御、移報制御等を解除して有効とするモードである。
【0036】
また、感知器に取り付けているカバー部材を取り外すと、検出対象の外乱に基づいて検出結果となる検出値が取り外し前に対し取り外し後は僅かに増加する関係にあることから、感知器管理部は、カバー部材の取り外しに伴う検出値の僅かな増加を判定する閾値を設定し、検出値が閾値以下又は閾値未満であれば、「カバー部材が取り外されていない」と判定し、閾値以上又は閾値を上回れば、「カバー部材が取り外されている」と判定するものである。このカバー部材の取り外し状態を判定するための閾値は、カバー部材を取り付けた場合の略ゼロに近い第1の検出値と、カバー部材を取り外した場合の第1の検出値より僅かに高い第2の検出値の間の所定の値として設定されるものである。
【0037】
更に、感知器管理部は、火災感知器で火災を検出した場合に、その火災感知器については、カバー部材を取り外した状態と判定するものであり、例えば、煙感知器の試験により火災を検出した場合に、その煙感知器については、カバー部材を取り外した状態と判定するものであり、一例として、煙感知器の炙り試験に伴い受信した試験情報に基づき、煙感知器に装着しているカバー部材を取り外した状態と判定するものである。ここで「煙感知器の炙り試験」とは、試験治具を用いて煙感知器に擬似的な煙を流入して動作させる試験であり、受信機で受信された試験による検出結果が所定の火災判断条件を充足して火災と判断したときに、試験正常と判定するものである。煙感知器の炙り試験を行う際には、カバー部材は必ず取り外されていることから、感知器管理部は炙り試験の伴う所定の試験情報が受信できれば、これはカバー部材の取り外しを意味しており、カバー部材が取り外された状態と判定するものである。
【0038】
一方、受信機には、火災感知器に火災を検出したときの動作を行わせる遠隔試験機能が設けられ、この遠隔試験機能による火災感知器での火災を検出した場合には、火災感知器の遠隔試験がカバー部材の取り外しを必要としないことから、カバー部材を取り外した状態として判定しないようにするものである。例えば、煙感知器の遠隔試験は、カバー部材の取り外しを必要としないことから、遠隔試験機能に基づいて煙感知器で火災を検出しても、カバー部材を取り外した状態として判定しないようにするものである。
【0039】
以下に示す具体的な実施の形態では、「受信機」が「R型の受信機」であり、「火災感知器」が「アナログ煙感知器」であり、「カバー部材」が「防塵カバー」であり、「カバー部材の取り外し状態」が「防塵カバーの取り外し状態」であり、「煙感知器の試験」が「煙感知器の炙り試験」である場合について説明する。
【0040】
[実施の形態の具体的内容]
火災監視システムの実施の形態の具体的内容について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a. 火災監視システムの概要
b. 受信機
b1. 受信機の構成
b2. 施工端末情報
b3. 受信機の火災監視制御
c. アナログ煙感知器
d. 火災監視システムの施工工事
e. 防塵カバー取り外し状態の判定
f. 防塵カバー取り外し状態の表示
f1. アドレスマップによる防塵カバー取り外し状態の表示
f2. リスト形式による防塵カバー取り外し状態の表示
g. 煙感知器の炙り試験に基づく防塵カバー取り外し状態の判定
h. 炙り試験後の防塵カバーの再装着
i. 住宅用火災警報器
j. 本発明の変形例
【0041】
[a.火災監視システムの概要]
本実施の形態による火災監視システムは、R型の受信機10と複数のアナログ煙感知器14を備える。
図1に示すように、施工工事が完了して運用状態にある火災監視システムは、建物の管理人室などに受信機10が設置され、受信機10から監視領域に対し系統毎に分けて、電源供給線を兼ねた信号線12(12-1)~12(12-3)が引き出されている。ここで、「監視領域」とは、監視の対象となる領域であり、一定の広がりをもった屋外或いは屋内の空間であり、例えば、建物の部屋、廊下、階段等の領域を含む概念であり、以下、「監視領域」を「建物の部屋」である場合とする。
【0042】
信号線12(12-1)には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数のアナログ煙感知器14が接続されている。アナログ煙感知器14には、工場出荷時等に装着したカバー部材としての防塵カバー15がそのまま残されており、煙流入口を塞いで内部の検煙部に対する塵埃の流入を防止している。防塵カバー15は施工工事が完了するまでに取り外される。
【0043】
信号線12(12-2)には複数のアナログ煙感知器14に加え、固有のアドレスが設定された伝送機能を有するアドレッサブル発信機18等が接続されている。更に、信号線12(12-3)には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する中継器16を介して防火戸や排煙装置等の防排煙機器24が接続されている。
【0044】
ここで、信号線12(12-1)~12(12-3)に接続されるアナログ煙感知器14、中継器16等の端末機器に設定される最大アドレス数を例えば255としており、最大255台のアナログ煙感知器14を含む端末機器が接続できる。
【0045】
[b.受信機]
(b1.受信機の構成)
R型の受信機10は、少なくともアナログ煙感知器14から受信した検出結果に基づいて火災を判断して音と表示により、火災発生場所を特定した火災警報を出力するものであり、その機能及び構成は任意であるが、一例として、受信機10には、メインCPU26と複数のサブCPU基板28(28-1)~28(28-3)が設けられ、サブCPU基板28(28-1)~28(28-3)にはそれぞれサブCPU30と伝送部32が設けられている。メインCPU26とサブCPU30は、シリアル転送バス34で接続されており、相互にデータを送受信する。
【0046】
メインCPU26には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ36、火災、ガス漏れ、障害の代表灯、LED表示灯等が設けられた表示部38、施工保守モードと火災監視モードを切り替えるスイッチや火災監視に必要な各種のスイッチが設けられた操作部40、スピーカが設けられた音響警報部42、及び、移報部44が接続されている。
【0047】
メインCPU26にはプログラムの実行により実現される機能として火災監視制御部46及び感知器管理部48が設けられ、また、アナログ煙感知器14に装着された防塵カバー15の取り外し状態を含む施工端末情報50が記憶されている。
【0048】
(b2.施工端末情報)
図2は受信機10に記憶された施工端末情報50の一例である。施工端末情報50は、系統、アドレス、種別、回線(信号線)、階、表示メッセージ、状態毎に分けられており、任意番号となる表示メッセージとして例えば「劇場1F東」、「劇場1F東-1」といった地区名が格納され、続いて、防塵カバー15の取り外し状態を示す「カバーフラグ」が設けられ、「防塵カバーが取り外されていない」との判定でフラグ「0」とし、「防塵カバーが取り外されている」と判定でフラグ「1」としている。
【0049】
なお、施工端末情報50で種別以降が空欄となっているアドレスは未使用アドレスである。また、メインCPU26に記憶された施工端末情報50は、火災監視システムの施工工事が完了して受信機10を火災監視モードに切り替えて火災監視制御部46が機能する運用中は、火災地区表示や連動制御のための端末情報としてそのまま利用される。
【0050】
(b3.受信機の火災監視制御)
火災監視システムの施工工事が完了して受信機10を火災監視モードに切り替えた運用中における火災監視制御は次のようになる。
【0051】
サブCPU基板28(28-1)のサブCPU30及び伝送部32を例にとると、アナログ煙感知器14との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、火災監視制御を行っている。例えば、伝送部32からアナログ火災感知器14に対する下り信号は電圧モードで伝送し、アナログ火災感知器14から伝送部32に対する上り信号は電流モードで伝送される。
【0052】
一例として、サブCPU30は、一定周期(例えば1分周期)ごとに、伝送部32に指示して、ブロードキャストの一括AD変換コマンド信号を送信し、これによりアナログ煙感知器14は煙濃度及び外乱入力に基づいて検出している検出結果である検出値を、例えば、8ビットデータとしてAD変換して保持する。続いて、サブCPU30は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信する。
【0053】
アナログ煙感知器14は自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、そのとき保持している検出値を含む応答信号を送信する。また、アナログ煙感知器14は検出値が所定の火災閾値、例えば、煙濃度が10%/mであるときの検出値より低い所定の予備火災閾値(プリアラーム閾値)、例えば、煙濃度が3%/mであるときの検出値に達すると火災割込み信号を送信する。
【0054】
火災割込み信号を受信したサブCPU30は、グループ検索コマンド信号を送信して火災割込みを行ったアナログ煙感知器14を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索コマンド信号を送信して火災割込みを行ったアナログ煙感知器14のアドレスを特定し、一括AD変換コマンド信号と特定したアドレスの呼出信号の繰り返し送信により、火災割込みを行ったアナログ煙感知器14の検出結果を集中的に収集し、シリアル転送バス34を介してメインCPU26に送信する。
【0055】
メインCPU26の火災監視制御部46は、サブCPU30から受信した検出結果が所定の火災判断条件を充足したときに火災と判断する。例えば、検出値が所定の火災閾値、例えば煙濃度が10%/mであるときの検出値以上又は上回る状態が所定の蓄積時間つづいたときに火災と判断する。火災と判断すると表示部38の火災代表灯を点灯し、音響警報部42のスピーカから火災発生を示す所定の主音響警報を出力し、ディスプレイ36に火災発生場所を示す火災警報情報を表示し、更に、移報部44により火災移報信号を外部に出力して所定の移報制御等を行わせる。
【0056】
[c.アナログ煙感知器]
アナログ煙感知器14の構成及び機能は任意であるが、例えば
図3に示すように、検煙部52、感知器制御部54、伝送部56、電源部58、発光駆動部60、受光増幅部62を備える。検煙部52は、煙流入口から煙を流入するが光の入射を遮光する検煙空間に発光素子64と受光素子66を配置した公知の散乱光式検煙構造を備える。発光素子64は、発光駆動部60により間欠的に発光駆動されて検煙空間に流入した煙に光を照射し、煙により散乱した光を受光素子66で受光して煙濃度に対応した煙濃度検出信号を出力し、受光増幅部62で増幅して感知器制御部54に出力している。
【0057】
感知器制御部54は、CPU、メモリ及び各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、プログラムの実行により実現される。感知器制御部54は、伝送部56を介して受信機10から受信した一括AD変換コマンド信号に基づき、受光増幅部62からの煙濃度検出信号を例えば8ビットデータの検出値にAD変換して読み込み、続いて受信される自己アドレスを指定した呼出信号に対し検出した検出値を含む応答信号を送信する。また、検出した検出値が所定の予備火災閾値、例えば煙濃度が3%/mであるときの検出値以上または上回る場合には伝送部56に指示して火災割込み信号を送信する。また、受信機10からのグループ検索コマンド信号およびグループ内検索コマンド信号に対し火災割込みを行ったことを示す応答信号を送信することになる。
【0058】
[d.火災監視システムの施工工事]
図1に示した火災監視システムの施工工事は、まず管理人室等にR型の受信機10を設置し、
図4(A)に示すように、監視領域となる例えば部屋の天井面22に感知器ベース20を設置し、受信機からの信号線を接続する配線工事を行う。続いて、感知器ベース20に、防塵カバー15が予め装着されているアナログ煙感知器14を、公知の嵌合端子構造を使用して嵌め込むことで電気的且つ機械的に接続する。
【0059】
防塵カバー15は、アナログ煙感知器14に装着した状態で、煙流入口14aを塞いで内部の検煙部に対する塵埃の侵入を防ぐためのカバー部材であり、その形状及び構造は任意であるが、例えば、感知器ベース20側に開口した略円筒状の部材であり、天井面22側を上部、床面側を下部とすると、上部外周(天井側外周)の環状凹部15aにより感知器外側に嵌合し、また、下部外周の環状基部15bにより、防塵カバー15を装着した状態で複数のアナログ煙感知器14を工場出荷時に重ねて梱包可能としている。また、防塵カバー15は例えばポリエチレン等の薄い透明な合成樹脂等で造られている。
【0060】
続いて、アナログ煙感知器14を含む全ての端末の試験を行って正常に動作することを確認し、全ての施工工事が終了したら消防検査が行われ、これに合格した場合に、受信機10を火災監視モードに切り替えて運用を開始し、火災監視制御に入ることになる。防護カバー15は、
図4(B)に示すように、火災監視システムの施工工事が完了するまでに、アナログ煙感知器14から取り外す必要があり、例えば、防塵カバー15を下向きに引くことで、簡単に取り外すことができる。
【0061】
[e.防塵カバー取り外し状態の判定]
受信機10の感知器管理部48は、施工保守モードの設定状態で、アナログ煙感知器14から受信した検出結果に基づいて、アナログ煙感知器14に装着している防塵カバー15の取り外し状態を判定するものであり、その構成及び機能は任意であるが、例えば、判定結果の初期値を防塵カバー15が「取り外されていない」とし、アナログ煙感知器14から受信した検出値Sが、閾値Sth以上又は上回る場合、それ以降は防塵カバー15が「取り外されている」と判定するものである。
【0062】
ここで、防塵カバー15の取り外し状態を判定する閾値Sthは、アナログ煙感知器14に防塵カバー15を取り付けて煙流入口を塞いだ状態で検出される第1の検出値S1と、防塵カバー15を取り外して煙流入口を開放した状態で検出される第1の検出値S1より僅かに増加する第2の検出値S2との間の所定の値として設定される。
【0063】
例えば、防塵カバー15を取り付けたときの第1の検出値S1は、「0」程度となり、防塵カバー15を取り外したときの第2の検出値S2は、「10」程度となることが想定されるため、従って、閾値Sthの値は「5」と設定する。
【0064】
なお、検出値S1である「0」は外乱入力がないときの煙濃度が「0%/m」であるときに検出される値に相当し、検出値S2である「10」は外乱入力がないときの煙濃度が「1%/m」であるときに検出される値に相当し、閾値Sthである「5」は外乱入力がないときの煙濃度が「0.5%/m」であるときに検出される値に相当する。
【0065】
[f.防塵カバー取り外し状態の表示]
(f1.アドレスマップによる防塵カバー取り外し状態の表示)
また、受信機10の感知器管理部48は、複数のアナログ煙感知器14に装着している防塵カバー15の取り外し状態を判定した結果を表示するものであり、表示する形態は任意であるが、例えば、
図5に示すように、ディスプレイ36に施工管理画面70(70-1)として表示する。施工管理画面70(70-1)にはアドレスマップを用いた防塵カバー取り外し状態72(72-1)を表示している。また防塵カバー取り外し状態72(72-1)を表示するアナログ煙感知器14を選択する条件を設定するため、系統選択釦74とアドレス選択釦76を配置している。
【0066】
防塵カバー取り外し状態72(72-1)は、系統選択釦74により、例えばダイヤログ形式の選択リストを開いて「01系統一覧表示」を選択した場合を示している。ここで、「系統」とは、受信機10から引き出された信号線に対応し、例えば、
図1の信号線12(12-1)、12(12-2)、12(12-3)は「01系統」、「02系統」、「03系統」に対応する。
【0067】
また、防塵カバー取り外し状態72(72-1)は、左端縦欄に10位のアドレス000,010,・・・・を表示し、上端横欄に1位のアドレス0,1,2・・・9を表示しており、縦横アドレスの交差位置が端末アドレスを示し、残りアドレスはスクロール操作で表示可能としている。
【0068】
また、防塵カバー取り外し状態72(72-1)は、防塵カバーが「取り外されていない」を「×」印、「取り外されている」を「〇」印、更に、「未使用アドレス」を「-」印で示している。このため
図5の防塵カバー取り外し状態72(72-1)は、例えば、
図4(A)に示したように、防塵カバー15を装着したアナログ煙感知器14を感知器ベース20に接続した施工段階の表示であり、「-」印の未使用アドレスを除き、表示しているアナログ煙感知器14の防塵カバー15の取り外し状態は全て「×」印で「取り外されていない」を示している。
【0069】
図6は、
図5の施工管理画面70(70-1)を表示してから施工工事が進んだ後の施工管理画面70(70-2)であり、その中の防塵カバー取り外し状態72(72-2)によると、アドレス001~004、062,089の6台のアナログ煙感知器14は「×」印により防塵カバー15が「取り外されていない」ことを示しているが、残りの表示しているアドレスについては、「〇」印となることで、防塵カバー15が「取り外されている」ことを示している。
【0070】
なお、アドレス選択釦76を操作することで、系統選択釦74で選択している系統、例えば「01系統」の信号線12(12-1)に接続しているアナログ煙感知器14のアドレス又はアドレス範囲を任意に選択して、防塵カバー取り外し状態を表示することができる。
【0071】
(f2.リスト形式による防塵カバー取り外し状態の表示)
図7は感知器管理部48による防塵カバー取り外し状態の他の表示形態であり、施工管理画面80にはリスト形式により防塵カバー取り外し状態82を表示し、併せて系統選択釦74とアドレス選択釦76を配置している。
【0072】
リスト形式の防塵カバー取り外し状態82は、アナログ煙感知器14の1台毎にリスト欄を配置し、例えば「リスト番号」、「系統-アドレス」、「感知器種別」、「設置場所」、「防塵カバー取り外し状態」を表示している。例えば、最上段のリスト欄には、「リスト番号」を「001」、「系統-アドレス」を「01-001」、「感知器種別」を「火報(煙アナログ)」、「設置場所」を「劇場1F東」、「防塵カバー取り外し状態」を「防塵カバー ×」とする表示を行っている。このリスト形式の防塵カバー取り外し状態82もスクロール操作により全アドレスの状態を見ることができる。
【0073】
また、防塵カバー15が「取り外されている」アナログ煙感知器14については表示せず、防塵カバー15が「取り外されていない」アナログ煙感知器14のみをリスト形式で表示するようにしてもよい。また、全アドレスの状態表示と、「取り外されていない」アナログ煙感知器14のみの表示を切り替え可能にしてもよい。
【0074】
また、期間の指定を行い、当該期間中に所定の状態が発生したアナログ煙感知器14についてのみ表示するようにしてもよい。例えば、アナログ煙感知器14と受信機10が接続された時期、防塵カバー15が取り外されていると判定した時期等の時期が、当該指定した期間に合致するものについてのみ表示する。
【0075】
[g.煙感知器の炙り試験に基づく防塵カバー取り外し状態の判定]
図1の受信機10の感知器管理部48は、工事中に行うアナログ煙感知器14の炙り試験を通じて防塵カバー15の取り外し状態を判定する。
【0076】
アナログ煙感知器14の炙り試験は、受信機10に感知器試験モードを設定した状態で、
図8に概略を示すように、例えば、受信機10からの信号線12(12-1)に接続しているアナログ煙感知器14に対し、試験員が試験治具90を使用して行う。試験治具90は線香やスプレー等の擬似的な試験煙を発生する煙発生源を備え、防塵カバー15を取り外した状態で試験治具90をアナログ煙感知器14の下から包むように当てて試験煙を流入する。試験煙の流入を受けたアナログ煙感知器14は試験煙の煙濃度を検出し、受信機10との間で前述した火災検出時と同じ動作を行い、受信機10で試験による検出結果から火災を判断し、試験による火災警報表示を行うことで、受信機10側についている試験員が試験正常と判断する。
【0077】
このようなアナログ煙感知器14の炙り試験に対し、感知器管理部48は、感知器試験モードが設定された状態で、アナログ煙感知器14から受信した検出結果により火災を判断して火災警報表示した場合には、アナログ煙感知器14の炙り試験に伴う試験情報の受信と判断し、試験情報を受信したアドレスのアナログ煙感知器14の防塵カバー15が「取り外されている」と判定し、一方、感知器試験情報の受信がなければ、防塵カバー15が「取り外されていない」との判定結果を維持する。
【0078】
ここで、感知器管理部48は、アナログ煙感知器14から受信した検出結果に基づく防塵カバー取り外し状態の判定と、炙り試験に基づく防塵カバー取り外し状態の判定を重複して行うことになるが、最新の判定結果に更新して表示する。
【0079】
なお、防塵カバー15が取り外されていることを判定するための「試験情報」とは、受信機10に感知器試験モードを設定した状態で炙り試験に伴い受信されるアナログ煙感知器14からの火災割込み信号及び又は検出結果を含む応答信号を意味する。
【0080】
また、アナログ火災感知器14の試験には、前述した炙り試験以外に、受信機10の遠隔試験機能による試験がある。遠隔試験機能とは、受信機10から試験指示信号をアナログ煙感知器14へ送信し、アナログ煙感知器14が火災を検出したときの動作を電気的に行わせる試験であり、防塵カバー15の取り外し状態とは無関係に行うことができる。このため受信機10の感知器管理部48は、遠隔試験機能に基づいてアナログ煙感知器14による火災を検出した場合には、防塵カバー15が「取り外されている」と判定しないようする。
【0081】
[h.炙り試験後の防塵カバーの再装着]
アナログ煙感知器14の炙り試験を行うときには、必ず防塵カバー15を取り外すことになるが、炙り試験を終了した場合、感知器設置場所がその後の工事により塵埃の発生が多くなることが予想される場合等には、取り外した防塵カバー15を炙り試験の済んだアナログ煙感知器14に再び取り付ける場合がある。
【0082】
この場合には、防塵カバー15の再装着によりアナログ煙感知器14で検出している検出値Sが低下することから、炙り試験に対応して防塵カバー15が「取り外されている」と判定した後に、検出値Sが閾値Sth未満又は以下に低下する場合がある。
そのため、防塵カバー15が「取り外されている」と判定した後に、検出値Sが閾値Sth未満又は以下である状態となったとき、又は所定時間継続したときに防護カバーが「取り外されていない」と判定するようにしてもよい。また、当該「取り外されていない」と判定する処理を有効とするかどうか及び判定するための所定時間を任意に設定できるものとしてもよい。
【0083】
[i.住宅用火災警報器]
本実施の形態による火災監視システムは、火災感知器(火災警報器)のみで構成される火災監視システムも対象とする。例えば、一般住宅の火災を監視するため、火災を検出して警報する住宅用の火災警報器が実用化され、普及している。このような火災警報器は、警報器内に例えば煙濃度を検出する検出部と、音と表示により警報する警報部を一体に備え、火災を検出すると火災警報を出すようにしており、警報器単体で火災監視と警報ができる。また、火災警報器を無線式連動型として複数の火災警報器により連動グループを形成し、任意の警報器で火災が検出されて連動元を示す警報音が出力されると火災連動信号が送信され、他の警報器からも連動して連動先を示す警報音が出力されるようにした無線連動型の警報システムも実用化され、普及している。
【0084】
本実施の形態の具体的内容にあっては、このような火災警報器の検出値である煙濃度に基づいて、前述した複数のアナログ煙感知器14と受信機10を備えた火災監視システムと同様に、煙検出部のカバー部材となる防塵カバーの取り外しに関する防塵カバー取り外し状態を判定する機能を設ける。また火災警報器は、防塵カバーが「取り外されていない」と判定した場合には、警報部に設けているスピーカや表示灯により、音と表示による注意警報を出力するものとする。
【0085】
[j.本発明の変形例]
(防塵カバーの取り外し状態の判定)
防塵カバーの取り外しの判定は、施工保守モードの際にとどまらず、通常の火災監視を行う通常監視モードの際など、適宜の状態に行ってよい。あらゆる状態の際に防塵カバーの取り外しの判定を行ってもよいし、火災感知器の検出結果に基づいて予兆を検出したり火災感知器の検出結果や発信機の操作に基づいて火災を検出したりした場合など、優先する処理が生じた場合には防塵カバーの取り外しの判定を行わないようにしてもよい。
【0086】
また、判定結果の初期値を防塵カバー15が「取り外されていない」とし、アナログ煙感知器14から受信した検出値Sが、閾値Sth以上又は上回る場合、それ以降は防塵カバー15が「取り外されている」と判定することがより好適であるが、判定方法はこれに限らない。例えば、アナログ煙感知器14から受信した直近の検出値S又はその移動平均値等の検出値Sに基づく値が、所定の閾値Sth未満又は以下の場合は、防塵カバー15が「取り外されていない」と判定し、閾値Sthに以上又は上回る場合は、防塵カバー15が「取り外されている」と判定するものとしてもよい。
【0087】
また、上記の実施形態は、感知器管理部48による防護カバー取り外し状態の判定として、アナログ煙感知器14からの煙濃度に基づく判定と、炙り試験に基づく判定の両方を行っているが、何れか一方による判定としてもよい。
【0088】
(アナログ煙感知器)
上記の実施形態は、散乱光式のアナログ煙感知器を例にとっているが、これに限定されない。例えば、減光式のアナログ煙感知器としてもよい。減光式のアナログ煙感知器は、発光部からの光を検煙空間に円環状に配置した複数のミラーで反射して受光部までの光路長を煙による減光が十分に得られる程度に長くした公知の減光式検煙構造を備える。また、散乱光式の検煙構造と減光式の検煙構造を一体に備える公知の複合検煙構造としたアナログ煙感知器としてもよい。
【0089】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施の形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0090】
10:受信機
12(12-1)~12(12-3):信号線
14:アナログ煙感知器
15:防塵カバー
16:中継器
18:アドレッサブル発信機
20:感知器ベース
24:防排煙機器
26:メインCPU
28(28-1)~28(28-3):サブCPU基板
30:サブCPU
32:伝送部
34:シリアル転送バス
36:ディスプレイ
38:表示部
40:操作部
42:音響警報部
44:移報部
46:火災監視制御部
48:感知器管理部
50:施工端末情報
52:検煙部
54:感知器制御部
56:伝送部
58:電源部
60:発光駆動部
62:受光増幅部
64:発光素子
66:受光素子
70(70-1)~70(70-3),80:施工管理画面
72(72-1),72(72-2),82:防塵カバー取り外し状態
74:系統選択釦
76:アドレス選択釦
90:試験治具