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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水上ボイラ設備
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/24 20060101AFI20240703BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240703BHJP
   F01K 13/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F22B37/24 Z
B63B35/00 T
F01K13/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020067248
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021162277
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 肇
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 善幸
(72)【発明者】
【氏名】前野 暢久
(72)【発明者】
【氏名】山本 修示
(72)【発明者】
【氏名】深澤 敏史
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007394(JP,A)
【文献】中国実用新案第204201866(CN,U)
【文献】特開平07-083402(JP,A)
【文献】中国実用新案第203417748(CN,U)
【文献】特開2002-115802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/24
B63B 35/00
F01K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設置された複数のボイラであって、
各ボイラは平面視で細長い形状を有し、蒸気を発生させるボイラ本体と、前記ボイラ本体を支持するボイラ支持構造体とを備えており、前記ボイラ支持構造体は、前記ボイラの高さ方向に延びる複数の柱部材と、隣り合う前記柱部材間を連結する梁部材とを備えており、
第1のボイラと、前記第1のボイラの長手方向および高さ方向に直交する幅方向に面する側方に配置された第2のボイラとを含む、複数のボイラと、
を備え、
前記第1のボイラの前記ボイラ支持構造体と、前記第2のボイラの前記ボイラ支持構造体とが互いに連結されており
前記複数のボイラの少なくとも1つのボイラの前記ボイラ本体が、水を蒸発させる蒸発管を備えており、前記蒸発管が、前記ボイラの長手方向に沿って延設されており、かつ前記ボイラの長手方向の一方から他方に向かって傾斜するように設けられている、
水上ボイラ設備。
【請求項2】
請求項1に記載の水上ボイラ設備において、
前記第1のボイラと前記第2のボイラとが、幅方向に、各々の長手方向が平行になるように並べて配置されており、
前記第1のボイラと前記第2のボイラとを前記幅方向に連結する連結部材であって、両ボイラの前記梁部材と一体に形成された連結部材を備える、
水上ボイラ設備。
【請求項3】
請求項2に記載の水上ボイラ設備において、
各ボイラ支持構造体の前記複数の柱部材が、前記ボイラ本体の前記長手方向の一端部における両側部に配置された2つの前方柱部材と、他端部における両側部に配置された2つの後方柱部材とを含み、
各ボイラ支持構造体の前記梁部材が、前記2つの前方柱部材を連結する前方梁部材と、前記2つの後方柱部材を連結する後方梁部材とを含み、
前記連結部材は、前記複数のボイラの前記前方梁部材と一体に形成された前方連結部材と、前記後方梁部材と一体に形成された後方連結部材とを含む、
水上ボイラ設備。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水上ボイラ設備において、前記連結部材と、当該連結部材に一体的に形成されている各梁部材とが、単一の直線状に延びる棒状部材として形成されている、水上ボイラ設備。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の水上ボイラ設備において、
前記複数のボイラの少なくとも1つのボイラの前記ボイラ本体が、水を蒸発させる蒸発管と、前記蒸発管よりも上方に配置され、前記蒸発管で発生した蒸気を水から分離するドラムとを備え、
前記ドラムが、前記第1のボイラおよび前記第2のボイラに連結されたドラム支持台上に設置されており、
前記ドラム支持台における前記ドラムの直下に、前記ドラム支持台を前記船体に対して支持するドラム支持柱が設けられている、
水上ボイラ設備。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の水上ボイラ設備において、前記第1のボイラは、その前記長手方向が、前記船体の長手方向に平行になるように配置されている、水上ボイラ設備。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の水上ボイラ設備において、前記船体が上甲板を備えており、前記複数のボイラが前記上甲板の上方に配置されている水上ボイラ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体に設置されて水上で使用される水上ボイラ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、効率の高い発電システムとして、排熱を再利用するためのボイラ設備を含むコンバインドサイクル発電システムが利用されている。コンバインドサイクル発電システムは、例えば、ガスタービンエンジンを駆動源とする発電装置と蒸気タービンを駆動源とする発電装置とを組み合わせて構成されており、ガスタービンエンジンから排出された排ガスの熱をボイラで回収し、蒸気タービンの駆動に利用するので、高効率で発電することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、商用発電送電網が未整備の地域や、地理的条件から発電設備の用地確保が困難な島しょ地域等において、河川や海洋といった水上を移動可能な発電プラント船(水上発電プラント)による電力供給に対する需要が存在する。このような需要に対応するため、ボイラ設備を船体に設置して運用することが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-020319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、地上と異なり、水上では常に揺れが伴うことから、内部を気液混合流体が流れるボイラ設備を安定的に運転するためには、強固な支持構造、連結構造が必要となる。しかも、コンバインドサイクル発電システムのような大規模なシステムを船体に搭載するためには、ボイラ設備を、ガスタービンエンジンや蒸気タービン等の他の大型装置と共に、船体特有の構造に配慮しながら限られたスペースに配置することも必要になる。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、水上ボイラ設備において、簡易かつコンパクトな構造で効果的にボイラ設備を支持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水上ボイラ設備は、
船体と、
前記船体に設置された複数のボイラであって、
各ボイラは平面視で細長い形状を有し、蒸気を発生させるボイラ本体と、前記ボイラ本体を支持するボイラ支持構造体とを備えており、前記ボイラ支持構造体は、前記ボイラの高さ方向に延びる複数の柱部材と、隣り合う前記柱部材間を連結する梁部材とを備えており、
第1のボイラと、前記第1のボイラの長手方向および高さ方向に直交する幅方向に面する側方に配置された第2のボイラとを含む、複数のボイラと、
を備え、
前記第1のボイラの前記ボイラ支持構造体と、前記第2のボイラの前記ボイラ支持構造体とが互いに連結されている。
【0008】
この構成によれば、常時揺れがある船体上に設置された複数のボイラの少なくとも1つを、他のボイラを利用して構造的に弱い幅方向に支持する構造とすることにより、狭い船体上でコンパクトかつ簡易な構造で効率的に支持することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、水上ボイラ設備において、簡易かつコンパクトな構造で効果的にボイラ設備を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る水上ボイラ設備の概略構成を示す正面図である。
図2図1の水上ボイラ設備の概略構成を示す側面図である。
図3図1の水上ボイラ設備の概略構成を示す平面図である。
図4図2の水上ボイラ設備の一部を拡大して示す側面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る水上ボイラ設備の概略構成を示す平面図である。
図7図6の水上ボイラ設備の一変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に本発明の一実施形態に係る水上ボイラ設備1を示す。この水上ボイラ設備1は、水上に浮かべられる船体3と、船体3に設置されたボイラ設備Bとを備えている。ボイラ設備Bは、複数(この例では2台)のボイラ5と、複数のボイラ5同士を連結する連結部材7を含む。
【0012】
本実施形態では、船体3にコンバインドサイクル発電システムが搭載されている。各ボイラ5はコンバインドサイクル発電システムの一構成要素をなしている。本実施形態に係るコンバインドサイクル発電システムは、ガスタービン発電装置9、排熱ボイラとしての前記ボイラ5、および船体3内の図示しない蒸気タービン発電装置を備えている。同図の例では、船体3は、全体がほぼ直方体形状のバージ型であり、かつ推進装置を有しない非自航型の船体として構成されている。なお、本明細書における「船体」には、水上に浮くように構成された構造物全般、例えば各種の船舶、バージ、浮体が含まれる。
【0013】
図2に示すように、ガスタービン発電装置9は、ガスタービンエンジン(以下、単に「ガスタービン」という。)11と、ガスタービン11にタービンロータを介して連結された発電機13と、ガスタービン11および発電機13を覆うガスタービンケーシング15とを備えている。ガスタービン11は、圧縮空気と燃料との混合ガスを燃焼させることによりタービン17を回転駆動し、これによって得られた回転動力によって発電機13を駆動する。ガスタービン11は、タービン17を駆動した後の排ガスG1を排出する排気ダクト19を備えている。本実施形態では、排気ダクト19は排ガスG1を上方へ排出するように構成されている。
【0014】
ガスタービン11の排気ダクト19から排出された排ガスG1がボイラ5へ供給される。ボイラ5は排ガスG1を熱源として蒸気を発生させる。ボイラ5で発生した蒸気は蒸気タービン発電装置の蒸気タービンへ送られて蒸気タービンを駆動する。
【0015】
図1に示すように、コンバインドサイクル発電システムは、ガスタービン発電装置9を複数(この例では2台)備えている。本実施形態では、1台のガスタービン発電装置9に対して1台のボイラ5が設けられている。したがって、上述したように水上ボイラ設備1は複数(この例では2台)のボイラ5を備えている。
【0016】
図3に示すように、各ボイラ5は、平面視で細長い形状を有している。これら2つのボイラ5が、各ボイラ5の長手方向(以下、「ボイラ長手方向」という。)L1および高さ方向Hに直交する幅方向(以下、「ボイラ幅方向」という。)W1に、各々のボイラ長手方向L1が平行になるように並べて設置されている。換言すると、各ボイラ5は、他方のボイラ5の側方(ボイラ幅方向W1に面する方向)に配置されている。また、この例では、各ボイラ5は、それぞれのボイラ長手方向L1が、船体3の長手方向(以下、「船体長手方向」という。)L2に平行になるように配置されている。
【0017】
より具体的には、図示の例では、2台のガスタービン発電装置9は、それぞれ軸心Cが船体長手方向L2に平行になるように配置されており、かつ船体3の幅方向W2に並べて配置されている。各ボイラ5は、後に詳述するように、各ガスタービン発電装置9の上方に、ボイラ5の長手方向L1とガスタービン発電装置9の軸心C方向が平行になるように配置されている。なお、各ボイラ5の船体3およびガスタービン発電装置9に対する配置方向はこの例に限定されない。
【0018】
図4に示すように、本実施形態に係るボイラ5は、具体的には、排ガスG1を熱源として蒸気を発生させる熱交換器として構成されたボイラ本体21と、ボイラ本体21を支持するボイラ支持構造体23とを備えている。ボイラ本体21は、水を蒸発させる蒸発管25と、蒸発管25よりも上方に配置され、蒸発管25で発生した蒸気を水から分離する図1に示すドラム27とを備えている。なお、この例では、各ボイラ5は、高圧ドラム27Aと低圧ドラム27Bの2つのドラム27を備えている。なお、図示は省略するが、ボイラ本体21は、ここで説明した蒸発管25,ドラム27以外にも、過熱器や節炭器といった公知の各種熱交換器を適宜備えていてよい。また、ボイラ5の具体的な構成はこの例に限定されず、例えばドラムを備えない貫流ボイラであってもよい。
【0019】
図4に戻って、蒸発管25は、ボイラ5内を通過する排ガスG1の通路(煙道)を形成するボイラ壁体29によって覆われている。ボイラ壁体29の上部には、上方に開口する排気筒31が設けられている。この例では、排気筒31は、ボイラ壁体29のボイラ長手方向L1におけるほぼ中央に設けられている。ボイラ本体21内(ボイラ壁体29内)を通過した排ガスG2は、排気筒31から外部へ排出される。ボイラ支持構造体23については後述する。
【0020】
ボイラ壁体29は、下方から順に導入部29aと、胴部29bと、導出部29cとを有している。導入部29aは、ガスタービン11の排気ダクト19から排ガスG1を導入する。胴部29bは、内部に蒸発管25が配置されており、蒸発管25と排ガスG1を接触させる。導出部29cは、その上部に接続されている排気筒31へ排ガスG1を導出する。導入部29aは、側面視で下方から上方へ向かって次第に広がるほぼ台形に形成されている。胴部29bは、側面視で導入部29aの上端から上方へ延びるほぼ矩形に形成されている。導出部29cは、側面視で胴部29bの上端から上方へ向かって次第に狭まるほぼ台形に形成されている。また、図1に示すように、この例では、ボイラ壁体29は、ボイラ幅方向W1の寸法よりも高さ方向Hの寸法が大きい形状を有している。もっとも、ボイラ壁体29(ボイラ本体21)の形状はこの例に限定されない。
【0021】
以下、複数のボイラ5の支持構造および連結構造について詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、船体3は、上甲板33を有している。上甲板33の下方、すなわち上甲板33と船底との間に閉鎖空間が形成されており、上甲板33の上方は開放空間とされている。本実施形態では、ボイラ5およびガスタービン発電装置9が上甲板33の上方に設置されている。具体的には、ガスタービン発電装置9が上甲板33上に設置され、ボイラ5がガスタービン発電装置9の上方に設置されている。
【0023】
なお、ボイラ5の船体3およびガスタービン発電装置9に対する設置位置はこの例に限定されない。例えば、ボイラ5はガスタービン発電装置9と同様に上甲板33上に設置されていてもよいし、上甲板33の下方に設置されていてもよい。
【0024】
図示の例では、上甲板33上にボイラ5用の架台35が設置され、この架台35上にボイラ5が設置されている。架台35は、その高さ寸法および幅寸法が、各ガスタービン発電装置9の高さ寸法および幅寸法よりも大きく設定されており、各ガスタービン発電装置9を幅方向に跨ぐように配置されている。この例では、架台35は鉄骨で形成されている。
【0025】
具体的には、本実施形態では、複数のボイラ5の各ボイラ5を支持する各架台35(この例では2台の架台35)が一体化された共用架台37として形成されている。より具体的には、この例では、共用架台37は、図5に示すように、隣り合う2台のガスタービン発電装置9の両側方に配置された各2本、計4本の架台側部柱部材39Aと、これら2台のガスタービン11の間に配置された2本の架台中間柱部材39Bと、これら6本の架台柱部材39の上部に連結された架台枠部材41とを有している。架台枠部材41は、両側方および中間位置の各2本の柱部材39を連結する3本の梁と、ボイラ幅方向W1に隣り合う柱部材間を連結する4本の梁の計7本の梁から形成されている。架台枠部材41のボイラ幅方向W1に延びる2本の梁上に各ボイラ5が設置されている。なお、図5では、ボイラ5のボイラ本体21の内部空間をハッチングで示している。この例では、共用架台37に、架台枠部材41を形成する7本の梁以外に梁は設けられていない。
【0026】
このように、複数のボイラ5に対応する複数の架台35を一体化して共用架台37として形成することにより、各ボイラ5に対応する架台35を別体に設ける場合よりも、全架台35を形成するトータルの部材およびスペースを削減することができる。もっとも、複数の架台35は別体に形成されていてもよい。
【0027】
ボイラ支持構造体23は、ボイラ5の高さ方向Hに延びる複数の柱部材45と、隣り合う柱部材45間を連結する梁部材47とを備えている。より具体的には、各ボイラ支持構造体23の柱部材45として、ボイラ長手方向L1の一端部(図5の左側端部)におけるボイラ本体21の両側部に配置された2つの前方柱部材45Aと、他端部(図5の右側端部)におけるボイラ本体21の両側部に配置された2つの後方柱部材45Bが設けられている。これら前方柱部材45Aおよび後方柱部材45Bは、ボイラ5の設置面(この例では架台35上の設置面である架台枠部材41の上面)からボイラ壁体29の胴部29bと導出部29cのほぼ境界に相当する位置まで延設されている。
【0028】
図示の例では、さらに、柱部材45として、側面視で排気筒31を挟むボイラ長手方向L1位置に配置された第1中間柱部材45C1および第2中間柱部材45C2が設けられている。
【0029】
また、図5に示すように、各ボイラ支持構造体23の梁部材47として、2つの前方柱部材45Aをボイラ幅方向W1に連結する前方梁部材47Aと、2つの後方柱部材45Bをボイラ幅方向W1に連結する後方梁部材47Bとが設けられている。具体的には、図示の例では、これら前方梁部材47Aおよび後方梁部材47Bは、図4に示すように、それぞれ、ボイラ壁体29の胴部29bの高さ方向Hのほぼ中央の位置に設けられている。なお、図示の例では、前方梁部材47Aおよび後方梁部材47Bは、ボイラ壁体29の胴部29bの高さ方向Hのほぼ中央以外の複数の高さ方向位置にも設けられている。
【0030】
図示の例では、さらに、梁部材47として、ボイラ本体21の両側部において、前方柱部材45Aと後方柱部材45Bとの間を連結する側方梁部材47Cが、高さ方向Hに複数設けられている。この例では、各側方梁部材47Cは、対応する前方梁部材47Aおよび後方梁部材47Bと同じ高さ方向位置に設けられている。
【0031】
なお、ボイラ支持構造体23を構成する柱部材45および梁部材47の位置および数は、この例に限定されず、任意に選択してよい。
【0032】
連結部材7は、ボイラ支持構造体23の梁部材47と一体に形成されており、隣り合う複数(この例では2台)のボイラ5同士をボイラ幅方向W1に連結している。図示の例では、連結部材7として、2台のボイラ5の各前方梁部材47Aに連結されることにより一体的に形成された前方連結部材7Aと、各後方梁部材47Bと一体に形成された後方連結部材7Bとが設けられている。
【0033】
より具体的には、同図に示すように、前方および後方の各連結部材7と、この連結部材7に連結されることにより一体的に形成されている各梁部材47とが、単一の直線状に延びる棒状部材49として形成されている。
【0034】
もっとも、連結部材7と梁部材47とを一体的に形成する態様は、この例に限定されない。例えば、同図に一点鎖線で示すように、ボイラ5の長手方向L1の両端部間の中間位置に連結部材7が設けられ、2つの隣り合うボイラ5の対向する側部に設けられた各側方梁部材47Cと連結部材7とが一体的に形成されていてもよい。図示の例では、複数(この例では2つ)の連結部材7がボイラ長手方向L1に等間隔に配置されているが、両側部梁部材47のボイラ長手方向L1における中央位置に一つの連結部材7のみを設けてもよい。この側部梁部材47と連結部材7との一体形成部材は、上記の両端部における一体形成部材に代えて設けてもよく、追加して設けてもよい。
【0035】
図1に示すように、各ボイラ5のドラム27は、連結部材7によって互いに連結された2つのボイラ5に連結されたドラム支持台51上に設置されている。具体的には、ドラム支持台51は、図1に示すように、2つのボイラ5のボイラ本体21間に設けられている。また、ドラム支持台51は、図4に示すように、前方柱部材45Aおよび後方柱部材45B上に設けられた平板状の部材である。この例では、ドラム支持台51は、ボイラ壁体29の胴部29bと導出部29cのほぼ境界に相当する位置に設けられている。さらに、ドラム支持台51は、複数の柱部材45間を連結する梁部材47およびこれらと一体に形成された前記連結部材7を兼ねている。
【0036】
図1に戻って、本実施形態では、ドラム支持台51における各ドラム27の直下に、ドラム支持台51を支持するドラム支持柱53が設けられている。この例では、各ボイラ5は、高圧ドラム27Aと低圧ドラム27Bの2つのドラム27を備えている。したがって、ドラム支持台51上には計4つのドラム27が設置されており、各ドラム27の直下にドラム支持柱53が設けられている。各ドラム支持柱53は、ボイラ5の設置面(この例では架台35上の設置面である架台枠部材41の上面)からドラム支持台51の下面まで延設されている。
【0037】
このように構成されたドラム支持台51に各ボイラ5のドラム27を設置することにより、隣り合うボイラ本体21間の上部において、ボイラ5相互に支持し合うように連結しつつ、ボイラ設備B全体の高さ方向Hの寸法を抑えることができる。したがって、簡易かつコンパクトな構造で、ボイラ5およびボイラ5が備えるドラム27を支持することができる。
【0038】
なお、ボイラ支持台51を設ける位置は、蒸発管25の上方に位置するドラム27を設置することが可能であれば、上記の例に限定されない。例えば、ドラム支持台51をボイラ本体21の上方に設けてもよい。また、ドラム支持柱53は降水管を兼ねていてもよい。ドラム支持柱53が降水管を兼ねる場合、例えば、ドラム支持柱53の上端がドラム支持台51を貫通して直接ドラム27に接続され、ドラム支持柱53の下端がボイラ設置面上に設置された給水ポンプに接続されてもよい。もっとも、ドラム27を支持する構造はこれらの例に限定されない。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、各ボイラ5において、蒸発管25が、ボイラ長手方向L1に沿って、かつ船体長手方向L2に沿って延設されており、かつボイラ長手方向L1の一方から他方に向かって傾斜するように設けられている。蒸発管25をボイラ長手方向L1に沿って延設しているのは、蒸発管25の接合箇所をできるだけ少なくしてコスト低減を図るためである。また、蒸発管25を傾斜させているのは、気液混合相(飽和水)を効率的に分離するため、またはドラム27および蒸発管25によって形成される大きな循環ループ内で気液混合相を自然に循環させるためである。
【0040】
図6に、本発明の他の実施形態に係る水上ボイラ設備1を示す。本実施形態に係る水上ボイラ設備1は、隣接する2つのボイラ5の相対的な配置構成が図1図5に示した実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、一方のボイラ5(以下、「第1ボイラ5A」という。)の側方に配置された他方のボイラ5(以下、「第2ボイラ5B」という)は、その長手方向L1Bが、第1ボイラ5Aのボイラ長手方向L1Aにほぼ直交する向きに配置されている。以下、本実施形態について主としてこの点について説明し、図1図5に示した実施形態と共通する構成については説明を省く。
【0041】
より具体的には、第2ボイラ5Bは、第1ボイラ5Aの側方において、第1ボイラ5Aのボイラ長手方向L1Aのほぼ中央位置に配置されている。換言すれば、これらのボイラ5A、5Bは平面視でT字状に配置されている。この場合、例えば第1ボイラ5Aと第2ボイラ5Bとで形成される2つの角部にそれぞれドラム支持台51を配置することができる。
【0042】
なお、第2ボイラ5Bの、第1ボイラ5Aのボイラ長手方向L1A位置に対する位置は、中央位置に限定されない。例えば、図7に本実施形態の変形例として示すように、第2ボイラ5Bは、第1ボイラ5Aの側方において、第1ボイラ5Aのボイラ長手方向L1Aの端部位置に配置されていてもよい。換言すれば、これらのボイラ5A、5Bが平面視でL字状に配置されていてもよい。この場合、例えば第1ボイラ5Aと第2ボイラ5Bとで形成される1つの角部にドラム支持台15を配置することができる。
【0043】
本実施形態において、第1ボイラ5Aは、そのボイラ長手方向L1Aが船体長手方向L2に平行になるように配置されている。
【0044】
以上説明した本実施形態に係る水上ボイラ設備Bによれば、常時揺れがある船体3上に設置された複数のボイラ5のうち少なくとも1つのボイラ5を、他のボイラ5を利用して構造的に弱い幅方向に支持する構造とすることにより、狭い船体3上でコンパクトかつ簡易な構造で効率的に支持することが可能になる。
【0045】
特に、図1図5に示した実施形態のように、2つのボイラ5が、幅方向に、各々の長手方向が平行になるように並べて配置されており、これら2つのボイラ5が、両ボイラの前記梁部材と一体に形成された連結部材によって幅方向に連結されている場合には、ボイラ5同士が構造的に弱い幅方向に相互に支持し合うので、狭い船体3上でコンパクトかつ簡易な構造でより強固な支持構造とすることができる。
【0046】
なお、図6,7の実施形態で示したように、2つのボイラ5A,5Bを、それぞれの長手方向L1A,L1Bが直交するように配置してもよく、この構成によれば、船体3に設置される他の装置や設備の配置に合わせてボイラ設備Bの配置を調整することが容易になる。
【0047】
図1図5の実施形態では、上述したように、各ボイラ支持構造体23の前記複数の柱部材45が、ボイラ長手方向の一端部における両側部に配置された2つの前方柱部材45Aと、他端部における両側部に配置された2つの後方柱部材45Bとを含み、各ボイラ支持構造体23の前記梁部材47が、前記2つの前方柱部材45Aを連結する前方梁部材47Aと、前記2つの後方柱部材45B45を連結する後方梁部材47Bとを含み、前記連結部材7は、前記複数のボイラ5の前記前方梁部材47Aと一体に形成された前方連結部材7と、前記後方梁部材47Bと一体に形成された後方連結部材7とを含んでいる。この構成により、ボイラ支持構造体23によって効果的に各ボイラ5を支持しながら、ボイラ長手方向L1の両端部においてボイラ5同士を連結することにより、連結部材7の数を抑えながら効果的にボイラ5を支持することができる。さらに、ボイラ設備Bの設置作業において、梁部材47の取り付けと連結部材7の取り付けを同じ高さの箇所で行うことができるので、設置作業が効率化され、設置コストの低減につながる。
【0048】
図1図5の実施形態では、前記連結部材7と、当該連結部材7に一体的に形成されている各梁部材47とが、単一の直線状に延びる棒状部材49として形成されているので、よりコンパクトかつ簡易な構造でボイラ5を支持することができる。さらに、部材の共通化によってボイラ設備Bの設置作業がさらに効率化される。
【0049】
上記各実施形態では、ボイラ本体21のドラム27が、互いに連結された2つのボイラ5に連結されたドラム支持台51上に設置されており、ドラム支持台51におけるドラム27の直下に、ドラム支持台51を支持するドラム支持柱53が設けられている。この構成により、隣り合うボイラ5の上部における限られたスペースを有効に利用しながら、ボイラ5の連結とドラム27の支持を両立することができる。
【0050】
本実施形態では、各ボイラ5が、各ボイラ5の長手方向L1が、船体長手方向L2、つまり船体3の幅方向W2に比べて揺れの角度が小さくなる方向に平行になるように配置されている。したがって、ボイラ5に対する船体3の揺れの影響を抑えつつ、コンパクトかつ簡易な構造でボイラ5を支持することができる。もっとも、各ボイラ5の船体3に対する設置方向はこれに限定されない。
【0051】
本実施形態では、複数のボイラ5の少なくとも1つのボイラ5の前記ボイラ本体21が、水を蒸発させる蒸発管25を備えており、前記蒸発管25が、前記ボイラ5の長手方向L1に沿って延設されており、かつ前記ボイラ5の長手方向L1の一方から他方に向かって傾斜するように設けられている。この構成によれば、船体3の揺動の影響が少ない船体3長手方向に沿って蒸発管25を延設し、この方向において傾斜させているので、蒸発管25の気液分離作用に対する船体3の揺動の影響を抑えることができる。
【0052】
本実施形態では、複数のボイラ5が船体3の上甲板33の上方に配置されている。この構成によれば、船体3の揺れが大きく、かつ周囲に船壁がない上甲板33上においてコンパクトかつ簡易な構造で効率的に支持することが可能になる。
【0053】
なお、本実施形態では、上述のように、ボイラ5を架台35を介してガスタービン発電装置9の上方に配置していることから、水上での船体3の揺動によるボイラ設備Bの揺れが大きいので、各ボイラ5を幅方向W1に強固に支持する必要性が特に高い。したがって、この場合に連結部材7によって隣り合うボイラ5同士を連結し、ボイラ5が互いに支持し合うことにより、コンパクトかつ簡易な構造でボイラ5の支持を可能にできるメリットが大きい。なお、ボイラ5は、ガスタービン発電装置9ではなく、船体3に設置された他の装置、例えば蒸気タービン発電装置の上方に設けられていてもよい。また、ボイラ設備Bの各ボイラ5が船体3に設置されているかぎり(例えば上甲板33上に直接設置されている場合や船底に設置されている場合であっても)、常に船体3の揺動の影響を受けることになるので、ボイラ設備Bがガスタービン発電装置9の上方に配置されていなくとも、連結部材7によって複数のボイラ5を連結することによってボイラ5同士を支持することのメリットが得られる。
【0054】
また、本実施形態では、ボイラ設備Bがコンバインドサイクル発電システムの一構成要素である例を示したが、コンバインドサイクル発電システムの構成は上記の例に限定されない。また、船体3に設置されるボイラ設備Bを含むシステムはコンバインドサイクル発電システムに限定されない。
【0055】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 水上ボイラ設備
3 船体
5 ボイラ
7 連結部材
21 ボイラ本体
23 ボイラ支持構造体
27 ドラム
45 柱部材
47 梁部材
49 棒状部材
51 ドラム支持台
53 ドラム支持柱
L1 ボイラの長手方向
H ボイラの高さ方向
W1 ボイラの幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7