(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】受電装置および受電装置が行う方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240703BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240703BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240703BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
H02J50/80
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2020089936
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立和 航
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-085716(JP,A)
【文献】特開2018-133993(JP,A)
【文献】特開2020-072577(JP,A)
【文献】特開2017-099230(JP,A)
【文献】特開2015-033246(JP,A)
【文献】特開2015-104141(JP,A)
【文献】特開2019-187043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/10
H02J 50/80
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置であって、
送電装置から無線により送電される電力を受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
電圧を変更する変更手段と、
を有し、
前記通信手段は、第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを前記送電装置に送信し、
前記
変更手段
は、前記第1の受電電力パケットが送信された後に、前記送電装置に対する認証に基づいて前記受電装置の電圧を変更し、
前記通信手段は、前記第1の受電電力パケットが送信された後で、かつ、前記受電装置の電圧が変更された後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを前記送電装置
に送信し、
前記
通信手段は、前記第2の受電電力パケットが送信された後、
第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを前記送電装置
に送信す
ることを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記受電手段により受電された電力を消費する負荷が必要とする電力に基づいて、前記負荷に供給する電圧を変更する変更手段をさらに
有することを特徴とする請求項
1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記負荷が必要とする電力に基づいて前記送電装置と交渉して送電電力を変更させる交渉手
段をさらに有することを特徴とする請求項
2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記第1の受電電力パケットの送信により、キャリブレーション処理が開始されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項5】
前記第2の受電電力パケットの送信により、再度、キャリブレーション処理が開始されることを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記キャリブレーション処理により、前記送電装置が行う異物の検出処理に用いられるパラメータが取得されることを特徴とする請求項4または5に記載の受電装置。
【請求項7】
前記認証は、電子証明書に基づく認証であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項8】
受電装置
が行う方法であって、
第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを送電装置に送信する第1の送信工程と、
前記第1の送信工程の後で、前記送電装置に対する認証に基づいて前記受電装置の電圧が変更する変更工程と、
前記変更工程の後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを前記送電装置
に送信する
第2の送信工程と、
前記
第2の送信工程
の後、
第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを前記送電装置
に送信する
第3の送信工程と、を有することを特徴とす
る方法。
【請求項9】
前記第1の受電電力パケットの送信により、キャリブレーション処理が開始されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の受電電力パケットの送信により、再度、キャリブレーション処理が開始されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリブレーション処理により、前記送電装置が行う異物の検出処理に用いられるパラメータが取得されることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項
1乃至
7のいずれか1項に記載の受電装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電電力伝送に係る送電装置、受電装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線充電システム等の無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1には、無線充電の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(以下、「WPC規格」と呼ぶ)に準拠した送電装置と受電装置が記載されている。また、特許文献1には、金属片などの導電性の物体(異物)の検出の精度を高めるための、WPC規格で規定されたキャリブレーション処理について記載されている。
【0003】
キャリブレーション処理では、2つの異なる状態それぞれにおいて、受電装置の受電電力とその時の電力損失が取得される。電力損失は、送電装置における送電電力と受電装置における受電電力との差として求まる。そして、これら2つの状態における受電電力と電力損失の組をパラメータとして用いることにより、無線送電において受電装置から通知される受電電力に対して期待される電力損失が求められる。実際の電力損失と期待される電力損失との差が所定値を超える場合、異物による電力損失がある、すなわち異物が存在すると判定することが可能である。
【0004】
一方、有線でバッテリへの急速充電等を行うための電力を供給する規格としてUniversal Serial Bus Power Delivery(USB PD)が普及している。USB PDでは、負荷へ供給する電力が増大すると、それに応じて負荷へ出力する電圧を大きくする制御が行われる。これにより、供給する電力が増大しても電流は低く抑えられるため、回路での損失や発熱が抑えられ、高い効率を維持したまま負荷へ電力を供給することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線電力伝送の送電装置において、送電電力を変更するために送電コイルを含む送電部への入力電圧を変更する場合、入力電圧を変更する前と後とで受電装置の各状態における電力損失が変化する。このため、送電部への入力電圧を変更する前の状態で取得された受電電力と電力損失の組をパラメータとして用いて、入力電圧を変更した後の状態における異物検出を行おうとすると、異物の検出精度が低下してしまう。
【0007】
本発明は、送電装置において送電部への入力電圧が変更されても、電力損失に基づく異物検出処理の精度の低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による受電装置は以下の構成を有する。すなわち、
送電装置から無線により送電される電力を受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
電圧を変更する変更手段と、
を有し、
前記通信手段は、第1の受電電力の値を示す情報を含む第1の受電電力パケットを前記送電装置に送信し、
前記変更手段は、前記第1の受電電力パケットが送信された後に、前記送電装置に対する認証に基づいて前記受電装置の電圧を変更し、
前記通信手段は、前記第1の受電電力パケットが送信された後で、かつ、前記受電装置の電圧が変更された後に、第2の受電電力の値を示す情報を含む第2の受電電力パケットを前記送電装置に送信し、
前記通信手段は、前記第2の受電電力パケットが送信された後、第3の受電電力の値を示す情報を含む第3の受電電力パケットを前記送電装置に送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送電装置において送電部への入力電圧が変更されても、電力損失に基づく異物検出処理の精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態に係る送電装置の構成例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る受電装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態に係る送電装置の処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態に係る受電装置の処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態に係る無線充電システムで実行される処理の流れの例を示す図。
【
図7】(A)はI&Cフェーズの通信シーケンスを示す図、(B)はNegotiationフェーズの通信シーケンスを示す図、(C)はCalibrationフェーズの通信シーケンスを示す図。
【
図8】異物検出処理用パラメータの内容の一例を表す図。
【
図9】異物検出処理における線形補完を説明する図。
【
図10】(A)は、第1実施形態に係る、GPと送電部への出力電圧との関係を記述した表の一例を示す図、(B)は、第1実施形態に係る、GPと充電部への入力電圧との関係を記述した表の一例示す図。
【
図11】第2実施形態に係る、GPと充電部への入力電圧との関係を記述した表の一例を示す図。
【
図12】第2実施形態に係る、無線充電システムで実行される処理の流れの例を示す図。
【
図13】第3実施形態に係る送電装置の処理の流れの例を示すフローチャート。
【
図14】第3実施形態に係る受電装置の処理の流れの例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は本発明の技術的思想を説明するための一例にすぎず、本発明を実施形態で説明される構成や方法に限定することは意図されていない。
【0012】
<第1実施形態>
(システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線充電システム(無線電力伝送システム)の構成例を示す。本システムは、送電装置101と受電装置102を含んで構成される。以下では、送電装置をTXと呼び、送電装置をRXと呼ぶ場合がある。TX101は、充電台103に載置されたRX102に対して無線で送電する電子機器である。RX102は、TX101から無線により送られる電力を受けて、内蔵バッテリを充電する電子機器である。以下では、RX102が充電台103に載置された場合を例にして説明を行う。ただし、TX101がRX102に送電するうえで、RX102はTX101の送電可能範囲の中に存在していればよく、必ずしもRX102が充電台103の上に載置されなくてもよい。
【0013】
なお、TX101とRX102はそれぞれ無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RX102の一例はラップトップPC(Personal Computer)、タブレットPC、スマートフォン等、充電式のバッテリで動作するモバイル情報機器である。また、TX101の一例はそのモバイル情報機器を充電するためのアクセサリ機器である。なお、TX101及びRX102は、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、TX101及びRX102は、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、TX101がモバイル情報機器であってもよい。この場合、RX102は、別のモバイル情報機器でもよいし、無線イヤホンであってもよい。また、RX102は、自動車であってもよい。また、TX101は、自動車内のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0014】
また、本実施形態の無線充電システムでは、1台ずつのTX101及びRX102が示されているが、本発明はこれに限られるものではない。複数のRX102が、1つのTX101又はそれぞれ別個のTX101から送電される電力を受電する構成などにも本発明を適用できる。
【0015】
本システムは、Wireless Power Consortium規格(以下、WPC規格)に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、TX101とRX102は、TX101の送電コイルとRX102の受電コイルとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、本システムに適用される無線電力伝送方式(非接触電力伝送方法)は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0016】
WPC規格では、RX102がTX101から受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばTX101とRX102の位置関係が変動して受電コイルと送電コイルとの間の送電効率が低下したとしても、RX102の負荷(例えば、充電用の回路等)への出力に関して保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電コイルと送電コイルの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TX101は、RX102内の負荷へ5ワットを出力することができるように送電を制御する。
【0017】
本実施形態に係るTX101とRX102は、WPC規格に基づく送受電制御のための通信を行う。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと電力伝送が実行される前のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定されており、各フェーズにおいて送受電制御のための通信が行われる。電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Identification and Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含む。なお、以下では、Identification and ConfigurationフェーズをI&Cフェーズと呼ぶ。
【0018】
Selectionフェーズでは、TX101が、Analog Pingを間欠的に繰り返して送信し、物体が充電台103に載置されたこと(例えば充電台103にRX102や導体片等が載置されたこと)を検出する。Analog Pingは、物体の存在を検出するための検出信号である。TX101は、送電コイルに電圧又は電流を印加することにより、Analog Pingを送信する。充電台103に物体が載置されていない状態から載置されている状態に変化すると、送電コイルに印加される電圧や電流に変化が生じる。TX101は、Analog Pingを送信した時の送電コイルの電圧値と電流値の少なくともいずれか一方を検出し、電圧値がある閾値を下回る場合又は電流値がある閾値を超える場合に物体が存在すると判断し、Pingフェーズに遷移する。
【0019】
Pingフェーズでは、TX101は、Analog Pingより電力が大きいDigital Pingを送信する。Digital Pingの電力は、充電台103の上に載置されたRX102の制御部が起動するのに十分な電力である。RX102は、受電電圧の大きさをTX101へ通知する。本実施形態では、RX102は、TX101にSignal Strengthパケット(以下、「SSパケット」と呼ぶ)を送信する。TX101は、自身が送信したDigital Pingを受信したRX102からの応答(SSパケット)を受信することにより、Selectionフェーズにおいて検出された物体がRX102であることを認識する。TX101は、受電電圧値の通知を受けると、I&Cフェーズに遷移する。
【0020】
I&Cフェーズでは、TX101は、RX102を識別し、RX102から機器構成情報(能力情報)を取得する。そのため、RX102は、Identification Packet(ID Packet)及びConfiguration PacketをTX101に送信する。ID PacketにはRX102の識別情報が含まれ、Configuration Packetには、RX102の機器構成情報(能力情報)が含まれる。ID Packet及びConfiguration Packetを受信したTX101は、アクノリッジ(ACK)で応答する。そして、I&Cフェーズが終了する。続くNegotiationフェーズでは、RX102が要求するGPの値やTX101の送電能力等に基づいてGPの値が決定される。
【0021】
Calibrationフェーズでは、RX102は、Received Power Packetを用いて、受電電力をTX101へ通知する。このとき、RX102は、少なくとも2つの異なる受電電力を通知する。例えば、RX102は、負荷が接続されていない状態での受電電力と、負荷が接続されGPの値に近い電力を受電している状態での受電電力との、2つの受電電力を通知する。それに伴い、TX101は、それら受電電力のそれぞれの通知を受信したときの自装置の送電電力を取得し、送電電力と受電電力の差から電力損失を求め、受電電力と対応付けて記憶する。TX101は、続くPower Transferフェーズにおいて、上述のように記憶した受電電力と電力損失のペアをパラメータとして用いて、受電装置以外の異物を検出する異物検出処理を行う。
【0022】
ここで、TX101において、2組の受電電力と電力損失をパラメータとして用いて異物検出処理を行う方法を説明する。TX101は、Calibrationフェーズの通信により2組の受電電力と電力損失を記憶する。これら2組のうちの一方の組が「受電電力=RP1,電力損失=PL1」、他方の組が「受電電力=RP2,電力損失=PL2」であるとする。
【0023】
TX101は、Power Transferフェーズにおいて、異物検出処理を行う際に、まずRX102から、現在の受電電力=Preceivedを取得する。続いてTX101は、このときの電力損失の期待値PLcalを、(RP1,PL1)と(RP2,PL2)の2点間の線形補完により求める。なお、RP1<RP2であるとする。具体的には、次に示す式1で求めることができる。
[式1]
PLcal=
(PL2-PL1)/(RP2-RP1)・(Preceived-RP1)+PL1
【0024】
ここで、現在の電力損失PLは、TX101における現在の送電電力PtransmittedとRX102から通知される受電電力=Preceivedとから、以下の式2で求めることが出来る。TX101は、現在の電力損失PLが、期待値PLcalを所定の閾値を上回った場合、異物値より電力が消費された結果電力損失が大きくなった、すなわち、異物が検出されたと判断する。
[式2]
PL=Ptransmitted-Preceived
【0025】
上述の方法では、予め取得した電力損失の値をパラメータとして用いて、線形補完により現在の電力損失の期待値を求めた。これを、電力損失をキャリブレーションする、と表現する。なお、キャリブレーションする対象は、RX102の電力損失に代えて、例えばRX102の受電電力であってもよいし、TX101の送電電力であってもよい。また、電力損失の期待値を求める方法、すなわちキャリブレーションする方法は、線形補完に限られるものではなく、例えば、べき級数などを用いた非線形補完であってもよい。また、3組以上の情報(例えば、受電電力と送電電力の組)をパラメータとして用いてもよい。3組以上の情報をパラメータとして用いる例は(RP1,PL1)と(RP2,PL2)、(RP2,PL2)と(RP3,PL3)を結んだ折れ線状の線形補完である。ここで、(RP3,PL3)は3組目の受電電力と電力損失の組の情報であり、RP2<RP3である。
【0026】
Power Transferフェーズでは、送電の開始、継続、及び異物検出や満充電による送電停止等のための制御が行われる。本実施形態では、Power Transferフェーズにおいて、さらに、GPを変更する処理、送電装置の送電電圧の変更、受電装置の負荷への出力電圧の変更、及び異物検出処理用パラメータの再取得や追加の要求を行うための処理が行われる。これらの処理の詳細については後述する。
【0027】
TX101とRX102は、これらの送受電制御のためのWPC規格に基づいた通信を、無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて送電電力に信号を重畳する通信により行う。なお、TX101とRX102は、無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いて、送受電制御のための通信を行ってもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信の一例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格に準拠する通信方式が挙げられる。また、IEEE802.11規格シリーズの無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee、NFC(Near Field Communication)等の他の通信方式によって行われてもよい。無線電力伝送と異なるアンテナ(コイル)を用いる通信が、無線電力伝送で用いられる周波数とは異なる周波数により行われるようにしてもよい。
【0028】
(装置構成)
続いて、本実施形態に係る送電装置101(TX101)及び受電装置102(RX102)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が以下で説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
【0029】
図2は、本実施形態に係るTX101の構成例を示すブロック図である。TX101は、一例において、制御部201、電源部202、送電部203、載置検出部204、送電コイル205、通信部206、通知部207、操作部208、メモリ209、タイマ210、入力電圧設定部211、及び再取得要求部212を有する。
【0030】
制御部201は、例えばメモリ209に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TX101の全体を制御する。すなわち、制御部201は、
図2で示す各機能部を制御する。また、制御部201は、TX101における送電制御に関する制御を行う。さらに、制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPUやMPU等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ209に記憶させる。また、制御部201は、タイマ210を用いて時間を計測しうる。
【0031】
電源部202は、TX101全体に対して、制御部201によるTX101の制御や、送電と通信に必要な電力を供給する。電源部202は、例えば、商用電源またはバッテリである。バッテリには、商用電源から供給される電力が蓄電される。
【0032】
送電部203は、電源部202から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換し、その交流周波数電力を送電コイル205へ入力することによって、RX102に受電させるための電磁波を発生させる。なお、送電部203によって生成される交流電力の周波数は、例えば数百kHz(例えば、110kHz~205kHz)程度である。送電部203は、制御部201の指示に基づいて、RX102に送電を行うための電磁波を送電コイル205から出力させるように、交流周波数電力を送電コイル205へ入力する。また、送電部203は、送電コイル205に入力する電圧(送電電圧)又は電流(送電電流)、又はその両方を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧又は送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧又は送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部203は、制御部201の指示に基づいて、送電コイル205からの送電が開始又は停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。さらに、送電部203は、現在の送電電力を制御部201に通知する。これにより、制御部201は、任意のタイミングで現在の送電電力を知ることができる。なお、送電電力の測定と制御部201への通知が、送電部203以外で行われるように構成されてもよい。
【0033】
載置検出部204は、WPC規格に基づいて、充電台103に物体が載置されているかを検出する。載置検出部204は、具体的には、充電台103のInterface Surfaceに物体が載置されたか否かを検出する。載置検出部204は、例えば、送電部203が、送電コイル205を介してWPC規格のAnalog Pingを送信した時の送電コイル205の電圧値と電流値の少なくとも一方を検出する。なお、載置検出部204は、インピーダンスの変化を検出してもよい。そして、載置検出部204は、電圧が所定電圧値を下回る場合又は電流値が所定電流値を超える場合に、充電台103に物体が載置されていると判定しうる。なお、この物体が受電装置であるかその他の異物であるかは、続いて通信部206によって送信されるDigital Pingに対する、RX102からの所定の応答の有無により判定される。すなわち、TX101が所定の応答を受信した場合には、その物体が受電装置(RX102)であると判定され、そうでなければ、その物体が受電装置とは異なる物体であると判定される。
【0034】
通信部206は、RX102との間で、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部206は、送電コイル205から出力される電磁波を変調し、RX102へ情報を伝送して、通信を行う。また、通信部206は、送電コイル205から出力されてRX102において変調された電磁波を復調してRX102が送信した情報を取得する。すなわち、通信部206で行う通信は、送電コイル205から送信される電磁波に重畳されて行われる。
【0035】
通知部207は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を通知する。通知部207は、例えば、TX101の充電状態や、
図1のようなTX101とRX102とを含む無線電力伝送システムの電力伝送に関する状態を、ユーザに通知する。通知部207は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。
【0036】
操作部208は、ユーザからのTX101に対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部208は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、通知部207と操作部208とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0037】
メモリ209は、識別情報や能力情報などの各種情報や制御プログラムなどを記憶する。なお、メモリ209は、制御部201と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ210は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。入力電圧設定部211は、制御部201の制御に基づいて、電源部202から送電部203に電力を供給するための入力電圧を設定する。入力電圧設定部211は可変電圧回路を含む。
【0038】
再取得要求部212は、通信部206を用いて、RX102に異物検出処理用パラメータの再取得を要求する。異物検出処理用パラメータとは、上述のCalibrationフェーズの説明で述べた、1組以上の受電電力と電力損失のペアである。再取得要求部212は、その全部または一部を制御部201とは別のプロセッサで動作するように構成されてもよいし、制御部201上で動作するプログラムにより実行されるようにしてもよい。再取得要求部212は、例えばメモリ209に格納されたプログラムを実行することでその機能を果たすことが出来る。
【0039】
ここで、電源部202と入力電圧設定部211は、TX101の外部に別の機器として存在しても良い。そのような外部の機器としては、例えば、USB PDの規格に基づいて電力を供給する電源アダプタがあげられる。その場合、制御部201による入力電圧設定部211の制御はUSB PD規格の通信で行われるようにしてもよい。
【0040】
図3は、本実施形態に係るRX102の構成例を示すブロック図である。RX102は、制御部301、バッテリ302、受電部303、載置検出部304、受電コイル305、通信部306、通知部307、操作部308、メモリ309、タイマ310を有する。また、RX102は、出力電圧設定部311、再取得指示部312、及び充電部313を有する。
【0041】
制御部301は、例えばメモリ309に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RX102の全体を制御する。すなわち、制御部301は、
図3で示す各機能部を制御する。また、制御部301は、RX102における受電制御に関する制御を行う。さらに、制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部301は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサを含んで構成される。なお、制御部301は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理に専用のハードウェアで構成されてもよい。また、制御部301は、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(Field Programmable Gate Array)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ309に記憶させる。また、制御部301は、タイマ310を用いて時間を計測しうる。
【0042】
バッテリ302は、RX102全体に対して、制御部301によるRX102の各部の制御や、受電と通信に必要な電力を供給する。また、バッテリ302は、受電コイル305を介して受信された電力を蓄電する。
【0043】
受電コイル305において、TX101の送電コイル205から放射された電磁波により誘導起電力が発生する。受電部303は、受電コイル305において発生した電力を取得する。受電部303は、受電コイル305において電磁誘導により生じた交流電力を取得し、交流電力を直流又は所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ302を充電するための処理を行う充電部313に出力する。すなわち、受電部303は、RX102における負荷に対して電力を供給するものであり、充電部313とバッテリ302は、そのような負荷の一例である。上述のGPは、受電部303から出力されることが保証される電力である。さらに、受電部303は、現在の受電電力を制御部301に通知する。これにより、制御部301は、任意のタイミングで、そのタイミングの受電電力を知ることができる。なお、受電電力の測定と制御部301への受電電力の通知は、受電部303以外で行うように構成されていてもよい。
【0044】
載置検出部304は、WPC規格に基づいて、RX102が充電台103に載置されていることを検出する。載置検出部304は、例えば、受電部303が受電コイル305を介してWPC規格のDigital Pingを受信した時の受電コイル305の電圧値と電流値のうち少なくともいずれか一方を検出する。載置検出部304は、例えば、電圧値が所定の電圧閾値を下回る場合又は電流値が所定の電流閾値を超える場合に、RX102が充電台103に載置されていると判定する。
【0045】
通信部306は、TX101との間で、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部306は、受電コイル305から入力された電磁波を復調してTX101から送信された情報を取得し、その電磁波を負荷変調することによってTX101へ送信すべき情報を電磁波に重畳することにより、TX101との間で通信を行う。すなわち、通信部306で行われる通信は、TX101の送電コイルから送信される電磁波に重畳されて行われる。
【0046】
通知部307は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザに対して情報を通知する。通知部307は、例えば、RX102の充電状態や、
図1のようなTX101及びRX102を含む無線電力伝送システムの電力伝送に関する状態を、ユーザに通知する。通知部307は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。操作部308は、ユーザからのRX102に対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部308は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、通知部307と操作部308とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。メモリ309は、上述のように、識別情報や機器構成情報などの各種情報や制御プログラムなどを記憶する。なお、メモリ309は、制御部301と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ310は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。
【0047】
充電部313は、受電部303から供給される電力により、バッテリ302に充電する。また充電部313は、制御部301の制御に基づいて、バッテリ302への充電を開始、または停止し、さらにバッテリ302への充電に使用する電力を、バッテリ302の充電状態に基づいて調整する。充電部313で使用する電力が変化すると、それに応じて受電部303から供給される電力、すなわちRX102における受電電力も変化する。上述したように、充電部313は、RX102における負荷である。なお、充電部313とバッテリ302は、RX102の外部に別の機器として存在しても良い。その機器は、例えば、USB PDの規格に基づいて供給される電力で動作する機器であってもよい。その場合、制御部301は、充電部313から、充電部313が必要とする電力の大きさの情報をUSB PD規格の通信で取得するようにしても良い。出力電圧設定部311は、制御部301による制御に基づいて、受電部303から充電部313、すなわち負荷に対して電力を供給するための出力電圧を設定する。出力電圧設定部311には可変電圧回路が含まれる。
【0048】
再取得指示部312は、通信部306を用いて、TX101に異物検出処理用パラメータの再取得の開始を指示する。異物検出処理用パラメータとは、上述のCalibrationフェーズの説明で述べた、受電電力と電力損失のペアである。なお、再取得指示部312は、その全部または一部を制御部301とは別のプロセッサで動作するように構成されてもよいし、制御部301上で動作するプログラムにより実行されるようにしてもよい。再取得指示部312は、例えばメモリ309に格納されたプログラムを実行することでその機能を果たすことが出来る。
【0049】
(処理の流れ)
続いて、TX101及びRX102が実行する処理の流れの例について説明する。
【0050】
[送電装置における処理]
図4は、TX101が実行する処理の流れの例を示すフローチャートである。本処理は、例えばTX101の制御部201がメモリ209から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。本処理には、再取得要求部212における処理も含まれる。なお、以下の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、TX101の電源がオンとされたことに応じて、TX101のユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、又は、TX101が商用電源に接続され電力供給を受けていることに応じて、開始されうる。但し、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0051】
送受電に関する処理において、TX101は、まず、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RX102の載置を待ち受ける(S401)。具体的には、TX101は、WPC規格のAnalog Pingを繰り返し、間欠的に送信し、載置検出部204が送電コイル205における電流または電圧の変化に基づいて充電台103に載置された物体の有無を検出する。TX101は、充電台103に物体が載置されたことを検出した場合、Digital Pingを送信する。そして、TX101は、そのDigital Pingに対する所定の応答(Signal Strength Packet)があった場合に、検出された物体がRX102であり、RX102が充電台103に載置されたと判定する。TX101は、RX102の載置を検出すると、通信部206により、WPC規格のI&Cフェーズとして規定される処理を実行して、そのRX102から識別情報と機器構成情報(能力情報)を取得する(S402)。
【0052】
図7(A)に、I&Cフェーズの通信の流れが示されている。I&Cフェーズでは、RX102は、Identification Packet(ID Packet)をTX101へ送信する(F701)。ID Packetには、RX102の識別情報であるManufacturer CodeとBasic Device IDのほかに、RX102の能力情報として対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素が格納される。RX102は、さらに、Configuration PacketをTX101へ送信する(F702)。Configuration Packetは、RX102の能力情報として、RX102が負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Value、WPC規格のNegotiation機能を有するか否かを示す情報を含む。
【0053】
TX101は、これらのパケットを受信すると、ACKを送信し(F703)、I&Cフェーズが終了する。なお、TX101は、WPC規格のI&Cフェーズの通信以外の方法で、RX102の識別情報と機器構成情報(能力情報)をRX102から取得してもよい。また、RX102の識別情報は、WPC規格のWireless Power IDであってもよいし、RX102の個体を識別可能な任意の他の識別情報であってもよい。能力情報として、上記以外の情報を含んでいてもよい。
【0054】
図4に戻り、TX101はNegotiationフェーズの通信により、RX102と交渉してGPを決定する(S403)。
図7(B)に、Negotiationフェーズの流れの一例が示されている。GPの決定は、RX102からのSpecific Request Packetと、それに対するTX101からの応答により行われる。まず、RX102は、TX101に対してSpecific Request Packetを送信することで、要求するGPの値を通知する(F711)。RX102は、要求するGPの値を、自装置で必要な電力に基づいて決定する。本実施形態において、この段階において要求されるGPの値の例は5ワットである。
【0055】
TX101は、自装置の送電能力に基づいて、RX102からの要求を受け入れるか否かを判定し、受け入れる場合はACK(肯定応答)を、受け入れない場合はNAK(否定応答)を、RX102へ送信する。なお、
図7(B)においては、TX101がACKを送信する例を示している(F712)。TX101がACKを送信した場合、GPの値は、RX102によって要求された値と同じとして決定され、TX101とRX102の双方のメモリに記憶される。一方、TX101がNAKを送信した場合、GPの値はデフォルトの小さな値、例えば5ワット以下の値となる。デフォルトの値は、一例において、事前にTX101とRX102の双方のメモリに記憶される。なお、以上で述べたGPの決定方法は一例であり、GPは他の方法で決定されてもよい。
【0056】
図4に戻り、TX101の入力電圧設定部211は、電源部202から送電部203へ電力を供給するための入力電圧をS403で決定されたGPに基づいて決定し、送電部203に設定する(S404)。なお、この処理には、入力電圧設定部211が入力電圧を送電部203に設定した後、その電圧が安定して送電部203に入力されるのを待つ処理も含まれる。GPに基づいて決定される入力電圧の例を
図10(A)の表1001に示す。表1001を参照することで、入力電圧設定部211は、例えば決定されたGPが5ワットの場合には入力電圧を5ボルト、決定されたGPが15ワットの場合には入力電圧を9ボルト、のように設定することができる。ここで、表1001の各値は、TX101の送電部203の電気的な特性に基づいて、決定された電力を効率よく送電するために予め決定された入力電圧の値であり、例えば、メモリ209に保持されている。なお、電源部202と入力電圧設定部211がUSB PDの規格に基づいて動作する外部機器である場合には、入力電圧設定部211が制御部201から通信により表1001の値を取得するようにしてもよい。或いは、USB PDの規格で定められた表として、表1001がメモリ209に保持されていてもよい。
【0057】
図4に戻り、TX101は、入力電圧を設定後、Calibrationフェーズの処理によって異物検出処理用パラメータを取得する(S405)。
図7(C)に、Calibrationフェーズにおける通信が示されている。RX102は、通信部306を介してReceived Power Packetを送信する(F721)。Received Power Packetには、現在の受電電力を示すReceived Power Valueが含まれる。TX101は、Received Power Packetに含まれる受電電力の情報を異物検出処理用パラメータとして記憶した上でACK(F722)を返す。以下に示されるように、F721とF722は、少なくとも2回繰り返される。
【0058】
例えば、RX102は、負荷が接続されていない状態、すなわち0ワットに近い状態と、負荷が接続されてGPの値に近い電力を受電している状態、の2つの異なる状態における受電電力を通知する。これらの通知のために、Received Power PacketとACKの通信は2回発生し、TX101には2つの受電電力の情報が記憶される。なお、上記に加えて、0ワットに近い状態とGPに近い値を受電している状態の中間の受電電力が通知されてもよい。本実施形態では、GPの値が5ワットを超える場合には、約5ワットの電力値の間隔で受電電力を通知するものとする。例えばGPの値が15ワットである場合には、約0ワット、約5ワット、約10ワット、約15ワットの4種類の受電状態で受電電力が通知される。なお、電力値の間隔は一定でなくてもよく、5ワットでなくてもよい。TX101は、通知された受電電力を全て異物検出処理用パラメータとしてメモリ209に記憶する。
【0059】
また、RX102は、Calibrationフェーズを開始して1回目のReceived Power Packetには、そのことを示す情報を付与する。具体的には、Received Power Packetに含まれるModeの値を1とする。また、そのCalibrationフェーズにおける2回目以降のReceived Power PacketにはModeの値を1以外の値、例えば2とする。これにより、TX101は、Modeの値によりCalibrationフェーズの先頭を識別することができる。なお、以上で説明したCalibrationフェーズの先頭の識別方法は一例であり、Modeを他の値としてもよいし、Mode以外の値で識別するようにしてもよい。また、別のパケットで先頭を識別するようにしてもよい。
【0060】
TX101は、Mode値が1であるReceived Power Packetを受信することによりCalibrationフェーズの先頭を識別すると、既にメモリ209に記憶されている異物検出処理用パラメータを破棄する。そのうえでTX101は、RX102から受信するReceived Power Packetに含まれる受電電力と、そのときの送電部203における送電電力の差である電力損失を対応付けてメモリ209に記憶する。なお、電力損失に代えて送電電力が、受電電力に対応付けられて記憶されてもよいし、電力損失と送電電力の両方が受電電力と対応付けられて記憶されてもよい。その後、TX101は、Mode値が2であるReceived Power Packetを受信すると、TX101は、そのパケットに含まれる受電電力と、そのときの電力損失とを対応付けてメモリ209に追加して記憶する。
【0061】
図8の表800に、メモリ209に記憶される異物検出処理用パラメータの内容の一例を示す。例えば、行801の情報は、RX102における受電電力が0.1ワットのときに、電力損失が0.6ワットであることを表し、RX102からReceived Power Packet(Mode=1)の受信により記憶されたものである。以後、RX102からReceived Power Packet(Mode=2)を受信するたびに、TX101は表800の行を追加する(例えば、行802)。ただし、上述の通りMode=1のReceived Power Packetが受信された場合は、TX101は、それまでの内容をクリアしたうえで、再び行801から記憶していく。
【0062】
図4に戻り、TX101は、異物検出処理と送電を開始する(S406、S407)。TX101における異物検出処理は、以下のとおり行われる。まず、TX101は、RX102から定期的に現在の受電電力の情報を取得する。異物検出処理のための、RX102からの受電電力の通知は、例えば、Mode値が0のReceived Power Packetによりなされる。TX101は、Received Power Packet(Mode=0)を受信した場合は、異物検出処理用パラメータ(表800)を更新しない。そして、TX101は、取得した受電電力における電力損失の期待値を、
図8の表800の異物検出処理用パラメータを用いて各点の線形補間により求める。線形補間には、上記の式1を用いることができる。
【0063】
TX101は、受電電力を取得した後に最初に測定した送電電力(現在の送電電力)と、取得した受電電力との差から電力損失を算出する。そして、TX101は、算出された電力損失と期待値との差を閾値と比較する。算出した電力損失と期待値との差が閾値を上回る場合、TX101は、金属片などの異物による電力の損失があると判定し、送電範囲に異物があると判定する。送電範囲に異物があると判定された場合、TX101は、制御部201により送電を制限する。具体的には、制御部201は、送電を停止するか、送電電力を下げるように、送電部203を制御する。また、制御部201は、RX102に、通信部206を介して、異物が存在することを通知してもよい。さらに、制御部201は、送電電力を制限することをRX102に通知してもよい。
【0064】
ここで、異物検出処理用パラメータの内容が、
図8の表800の行801と行802に示す内容であった場合を例として、異物検出処理について具体的に説明する。行801と行802を受電電力と電力損失を軸に持つ図にプロットすると、それぞれ
図9(A)の点A、点Bとなる。TX101は、点Aと点Bを結ぶ直線による線形補完により、現在の受電電力における電力損失の期待値を求める。例えば、現在の受電電力(RP)の値が2.5ワットである場合、行801(RP1=0.1ワット、PL1=0.6ワット)と行802(RP1=4.9ワット、PL2=1.6ワット)の数値を上記の式1に当てはめる。この場合、電力損失の期待値PLは、以下のとおり1.1となる。
PL=(1.6-0.6)/(4.9-0.1)*(2.5-0.1)+0.6=1.1
【0065】
そして、TX101は、受電電力を取得した後に最初に測定した送電電力を現在の送電電力として用いて、現在の送電電力と現在の受電電力(RP=2.5ワット)との差から電力損失を算出する。こうして算出された電力損失の値と、期待値(PL)である1.1ワットとの差が、所定の閾値を上回る場合は、異物において電力が損失されていると判断し、異物が送電範囲にあると判断する。ここで、閾値は、例えば1ワットのような絶対値でもよいし、例えば期待値に対して50パーセントというような相対値でもよい。この閾値に関する情報は、メモリ209に記憶されている。また、閾値は、受電電力や電力損失の期待値に応じて段階的に変化してもよい。
【0066】
図4において、TX101は、送電中にもRX102からのGPの交渉を受け付ける(S408)。交渉の結果、GPが変化した場合、TX101は、
図10(A)の表1001を参照して送電部203への入力電圧を決定する。現在の入力電圧から変更となる場合(決定された入力電圧が現在の入力電圧と異なる場合)は(S409でYES)、入力電圧設定部211は入力電圧を変更する(S410)。再取得要求部212は、入力電圧が安定するのを待ったうえで(S410)、RX102へ異物検出処理用パラメータの再取得要求を送信する(S411)。他方、現在の入力電圧から変更とならない場合(決定された入力電圧が現在の入力電圧と同じ場合)は(S409でNO)、S410、S411の処理はスキップされる。続いて、TX101は、所定時間、RX102から異物検出処理用パラメータの再取得指示の受信を待つ(S412)。ここで、RX102からの再取得指示を所定時間待つのは、再取得要求を受信したRX102が異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信する処理を行う時間を与えるためである。
【0067】
RX102から異物検出処理用パラメータの再取得指示が受信された場合は(S413でYES)、処理はS405に戻り、TX101は、Calibrationフェーズの処理により異物検出処理用パラメータの再取得を行う。なお、RX102からの再取得指示の受信の有無は、TX101の送電中、常に監視される。そして、RX102から再取得指示が受信された場合はS413からS405へ処理が進み、TX101は異物検出処理用パラメータの再取得を実行する。すなわち、入力電圧の変更が行われたか否かに関わらず、RX102から異物検出処理用パラメータの再取得指示が受信された場合には(S413でYES)、TX101は異物検出処理用パラメータの再取得を開始する。また、S412の処理(再取得指示の受信を待つ処理)は、S408でGPの更新が発生せず、S409で入力電圧を変更しないと判定された場合には、スキップされてもよい。また、S409では、RX102との交渉により決定されたGP値に基づいて入力電圧が変更されるが、これに限られるものでははない。例えば、制御部201がRX102への送電電力を取得し、これに基づいて送電部203への入力電圧が設定、変更されるようにしてもよい。また、この場合も、USB PDの規格に基づいて入力電圧が変更されるように構成され得る。
【0068】
RX102から異物検出処理用パラメータの再取得指示が受信されていない場合は(S413でNO)、所定時間送電を継続する(S414)。ここで、所定時間とは、例えば1秒間である。この送電の間に、送電停止要求が受信されず、且つ、異物が検出されなかった場合(S415でNO)、処理はS408に戻り、上記処理が繰り返される。送電停止要求が受信された場合、または、異物が検出された場合は(S415でYES)、TX101は、送電を停止する(S416)。その後、TX101は、処理を終了するか否か判定する(S417)。処理を終了しないと判定された場合(S417でNO)、処理はS401に戻り、上述の処理が繰り返される。処理を終了すると判定された場合(S417でYES)、本処理は終了する。処理を終了するか否かは、例えばユーザの操作部208への操作内容に基づいて決定される。
【0069】
[受電装置における処理]
続いて、RX102が実行する処理の流れの例について、
図5を用いて説明する。本処理は、例えばRX102の制御部301がメモリ309から読み出したプログラムを実行することによって実現されうる。本処理には、再取得指示部312における処理も含まれる。なお、以下に説明する本処理の手順の少なくとも一部がハードウェアによって実現されてもよい。この場合のハードウェアは、例えば、所定のコンパイラを用いて、各処理ステップを実現するためのプログラムからFPGA等のゲートアレイ回路を用いた専用回路を自動的に生成することによって実現されうる。また、本処理は、RX102の電源がオンとされたこと、バッテリ302若しくはTX101からの給電によりRX102が起動したこと、又は、RX102のユーザが無線充電アプリケーションの開始指示を入力したことに応じて、開始されうる。なお、他の契機によって本処理が開始されてもよい。
【0070】
RX102は、送受電に関する処理の開始後、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定される処理を実行し、自装置がTX101に載置されるのを待つ(S501)。そして、RX102は、例えば、TX101からのDigital Pingを検出することによって、TX101の充電台103に載置されたことを検出する。そして、RX102は、Digital Pingを検出すると、受電電圧値を含むSSパケットをTX101に送信する。
【0071】
RX102は、自装置がTX101の充電台103に載置されたことを検出すると、通信部306により、前述のI&Cフェーズの通信を実行し、TX101へ識別情報と機器構成情報(能力情報)を送信する(S502)。そして、RX102は、Negotiationフェーズの通信によりTX101と交渉してGPを決定する(S503)。Negotiationフェーズの通信は、具体的には、送電装置の処理において説明したように、
図7(B)で示すSpecific Request Packetと、それに対する応答により行われる。
【0072】
出力電圧設定部311は、受電部303から充電部313へ電力を供給するための出力電圧をS503で決定されたGPに基づいて決定し、充電部313に設定する(S504)。この処理には、出力電圧設定部311が出力電圧を設定後、その電圧が充電部313に安定して出力されるのを待つ処理も含まれる。
【0073】
GPに基づいて決定される出力電圧の例を
図10(B)の表1002に示す。表1002を参照することで、出力電圧設定部311は、例えば、GPが5ワットの場合の出力電圧は5ボルト、GPが15ワットの場合の出力電圧は9ボルト、のように決定することができる。ここで、表1002の各値は、RX102の充電部313の電気的な特性に基づいて効率よく充電するため予め決定された値となっており、メモリ309に保持されているものとする。なお、充電部313がUSB PDの規格に基づいて動作する外部機器である場合には、出力電圧の値を充電部313から通信により取得するようにしてもよいし、USB PDの規格で定められた表としてメモリ309に保持していてもよい。なお、本実施形態では、RX102が保持する表1002と、TX101が保持する表1001の内容は同じであるとする。例えばTX101とRX102の双方がUSB PD規格に準拠する場合は同じとなることがある。なお、他の規格に準拠する内容としてもよい。
【0074】
続いて、RX102は、上述のCalibrationフェーズの通信により、TX101に異物検出処理用パラメータを取得させるための受電電力情報を通知する(S505)。続いて、RX102は、受電部303に負荷である充電部313を接続し、Power Transferフェーズにおける受電を開始する(S506)。
【0075】
RX102は、TX101からの無線による電力の受電中に、充電部313で必要な電力を取得する(S507)。この値はメモリ309に予め保持されていてもよいし、充電部313が外部機器である場合には外部機器から通信により取得されてもよい。充電部313で必要な電力が、現在のGPの範囲内に収まっていれば(S508でNO)、GPを変更せずに所定時間の受電を継続する(S515)。所定時間は例えば1秒間である。その後、充電部313がバッテリ302の充電を完了していれば受電を停止し(S516でYES、S517)、本処理が終了する。そうでない場合は(S516でNO)、充電を継続するため処理はS507に戻る。
【0076】
ここで、RX102は、S515において受電を継続する間、繰り返し定期的に現在の受電電力をTX101に通知する。TX101は、この受電電力の情報に基づいて異物検出を行う。現在の受電電力の通知にはWPC規格のReceived Power Packetを用いる。ここで、Received Power Packetは上述のCalibrationフェーズの通信にも用いられる。このため、RX102は、CalibrationフェーズにおいてTX101に異物検出処理用パラメータを保存させるための通知なのか、TX101で異物検出処理を行うための現在の受電電力の通知なのかを識別できるようにする。具体的には、Received Power PacketのMode値を0とすることで行う。なお、CalibrationフェーズのMode値と異なる他の値としてもよいし、Mode値以外で上記の識別が行われるようにしてもよい。例えば、CalibrationフェーズとPower Transferフェーズとで異なるタイプのパケットを用いることにより識別できるようにしてもよい。
【0077】
一方、充電部313で必要な電力を取得した結果、GPを変更する必要が生じた場合は(S508でYES)、RX102はTX101と交渉してGPを変更する(S509)。ここで、RX102は、GPを所定以上の大きさとする場合、TX101を通信により機器認証するようにしてもよい。機器認証を行うことで、WPC規格やその他の規格の条件を満たすことが保証されたTX101からのみ、所定以上の電力で受電することができる。機器認証の一例は、電子証明書を用いたチャレンジ・レスポンス型の通信である。
【0078】
続いてRX102は、更新されたGPに基づいて充電部313への出力電圧を決定する。出力電圧は、
図10(B)の表1002を参照することにより決定される。現在の出力電圧からの変更が必要な場合は(S510でYES)、出力電圧設定部311は充電部313への出力電圧を変更し、電圧が安定するのを待つ(S511)。現在の出力電圧からの変更が不要な場合は(S510でNO)、S511の処理はスキップされる。
【0079】
続いて、RX102は、所定時間の間、TX101からの異物検出処理用パラメータの再取得要求が受信されるのを待機する(S512)。S512における所定時間は、例えば、
図7(B)で説明したGPを更新するための通信が完了した後、TX101が
図4のS409でYESとなった場合に、S410、およびS411の処理を完了するために必要な時間より長い時間とする。なお、この所定時間の値はメモリ309にあらかじめ保持されているものとする。
【0080】
TX101から異物検出処理用パラメータの再取得要求が受信された場合またはS511で出力電圧を変更した場合は(S513でYES)、RX102は、異物検出処理用パラメータの再取得指示をTX101へ送信する(S514)。そして、処理はS505へ進み、TX101との間でCalibrationフェーズの処理が再度行われる。一方、TX101からの異物検出処理用パラメータの再取得要求が受信されず、S511で出力電圧の変更も行われていない場合は(S513でNO)、処理はS515へ進む。S515以降の処理は上述の通りである。
【0081】
ここで、RX102が送信する異物検出処理用パラメータの再取得指示は、WPC規格のパケットであってもよいし、TX101が認識可能な他のパケットであってもよい。あるいは、RX102がTX101から異物検出処理用パラメータの再取得要求を受信した場合には、その肯定応答(ACK)を再取得指示としてもよい。さらに、RX102が送信する異物検出処理用パラメータの再取得指示は、Calibrationフェーズの先頭を示すパケットと同一であってもよい。すなわち、RX102は、
図7(C)のF721を送信することを以て異物検出処理用パラメータの再取得指示としてもよい。これによりTX101は、既に記憶している異物検出処理用パラメータをクリアし、Calibrationフェーズの通信を開始する。すなわち、異物検出処理用パラメータを再取得することになる。
【0082】
また、
図5では、GPが変更された場合に異物検出処理用パラメータの再取得指示の発行が行われる得る処理が示されているが、これに限られるものではない。例えば、S508でGPが変更されないと判定された場合に(S508でNO)、処理がS509をスキップしてS510へ進むようにしてもよい。このようにすれば、RX102は、GPの変更に関わらず、受電中にTX101から再取得要求を受信したことに応じて再取得指示を発行し、異物検出処理用パラメータの再取得が実行されることになる(S513でYES)。これにより、TX101がGPの更新を伴わずに入力電圧を変更して異物検出処理用パラメータの再取得要求を発行したような場合にも、RX102が再取得指示を発行することができる。なお、この場合、RX102は受電中に再取得要求の受信を監視するので、S510でNOと判定された場合にはS511とS512がスキップされるように構成されてもよい。
【0083】
[システムの動作]
図4、
図5を用いて説明したTX101とRX102の動作シーケンスについて、
図6を用いてより具体的に説明する。
図6は、第1実施形態に係る無線充電システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
図6では、上から下の方向に時間が進むものとする。初期状態として、RX102はTX101に載置されておらず、またRX102の負荷(充電部313)は受電部303に接続されていないものとする。また、RX102の充電部313で必要な電力は当初5ワットであり、その後Power Transferフェーズが開始された後で15ワットに増加するものとする。
【0084】
まず、TX101は、Analog Pingを送信し、物体が充電台103に載置されるのを待つ(F601、S501)。RX102が載置されると(F602)、Analog Pingの電圧又は電流に変化が生じる(F603)。TX101の載置検出部204は、その変化により物体の載置を検出する(F604)。物体の載置を検出するとTX101は、Digital Pingを送信する(F605)。このDigital Pingを受信することにより、RX102は自装置がTX101に載置されたことを検出する(F606)。またTX101は、Digital Pingに対する応答により、充電台103に載置された物体がRX102であることを検出する。続いて、I&Cフェーズの通信により、RX102から、識別情報と機器構成情報(能力情報)がTX101に送信される(F607、S402、S502)。
【0085】
続いて、TX101とRX102の間でGPが決定される(F608、S403、S503)。RX102は当初必要な5ワットを要求するため、ここでのGPは5ワットとなる。GPが5ワットなので、TX101は、表1001を参照して入力電圧(入力電圧設定部211が送電部203に入力する電圧)を5ボルトに設定する(F609、S404)。同様にRX102は、表1002を参照して出力電圧(出力電圧設定部311が充電部313に出力する電圧)を5ボルトに設定する(F610、S504)。
【0086】
続いて、Calibrationフェーズの処理により、TX101は、0ワットからGPである5ワットまでの異物検出処理用パラメータを取得し、メモリ209に保持する(F611、S405、S505)。このCalibrationフェーズの処理は、TX101の入力電圧が5ボルト、RX102の出力電圧が5ボルトの状態で実行される。この結果、TX101が取得し保持する異物検出処理用パラメータは、例えば
図9(A)に相当する内容となる。
【0087】
続いて、TX101で異物検出処理と送電が開始され(F612、S406、S407)、RX102で受電が開始され(F612、S506)、GP=5ワットで送受電と異物検出処理が継続する。これは、
図4のS408→S409でNO→S412→S413でNO→S414→S415でNO→408のループに対応する。また、
図5のS507→S508でNO→S515→S516でNO→S507のループに対応する。送受電中に充電部313で15ワットが必要になると(F613、S507、S508でYES)、TX101とRX102の間でGPが15ワットに更新される(F614、S408、S509)。GPが15ワットに更新されると、TX101は、表1001を参照して入力電圧を9ボルトに変更し(F615、S409でYES、S410)、異物検出処理用パラメータの再取得要求を送信する(F617、S411)。一方、RX102も、表1002を参照して出力電圧を9ボルトに変更し(F616、S510でYES、S511)、異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信する(F618、S512、S513でYES、S514)。
【0088】
TX101は、異物検出処理用パラメータの再取得指示を受信したため(F618、S412、S413でYES)、Calibrationフェーズの処理を開始する(S405)。一方、RX102もCalibrationフェーズの処理を開始する(S514、S505)。このためTX101とRX102の間で再びCalibrationフェーズの処理が行われ、0ワットからこの時点でのGPである15ワットまでの異物検出処理用パラメータが取得されTX101に保持される(F619、S405、S505)。このCalibrationフェーズの処理は、TX101の入力電圧設定部211により設定される入力電圧が9ボルト、RX102の出力電圧設定部311により設定される出力電圧が9ボルトの状態で実行される。
【0089】
前述のとおり、Calibrationフェーズの先頭では、TX101はそれまでに保持していた異物検出処理用パラメータをクリアする。また、本実施形態では5ワット刻みで異物検出処理用パラメータを取得するとした。したがって、0ワット、5ワット、10ワット、及び15ワットの各点の情報が異物検出処理のパラメータとして取得される。さらにこのときTX101の入力電圧設定部211と、RX102の出力電圧設定部311には、それぞれGPに基づく電圧である9ボルトが設定された状態となっている。すなわち、F611でそれぞれ5ボルトが設定された状態とは電気的に異なる状態となっている。このため、F619のキャリブレーション処理の結果として、
図9(A)の点A、点Bとは異なる、
図9(B)の点A'、点B'、点C'、及び点D'が得られ、TX101に異物検出処理用パラメータとして保持されることになる。その後、TX101とRX102の間では、
図9(B)の異物検出処理用パラメータを用いて、GP=15ワットでの送受電と異物検出が行われる(F620、S406、S407、S506)。
【0090】
以上に述べた動作において、GPが5ワットから15ワットに変化するとTX101およびRX102において入力電圧と出力電圧が9ボルトに変化し(F614~F616)、その状態で異物検出処理用パラメータの再取得が行われる(F619)。すなわち、TX101とRX102の両方の電気的な状態が変化した場合に、その変化後の状態に合わせて更新されたパラメータが異物検出処理に用いられる。これにより、より正確に異物を検出することができる。
【0091】
なお、上記の実施形態におけるTX101は、入力電圧を変更した後に異物検出処理用パラメータの再取得要求を送信するようにした(S410、S411)が、これに限られるものではない。異物検出処理用パラメータの再取得要求を送信した後に、所定時間以内に入力電圧が変更されるようにしてもよい。このとき、RX102は、異物検出処理用パラメータの再取得要求を受信した後(S513でYES)、TX101側で入力電圧の変更が完了するまでの所定時間待ってから、異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信するようにする(S514)。この所定時間には、新たな入力電圧の設定から、それが安定する迄の時間が含まれる。このように実装した場合でも、入力電圧を変更した状態、すなわちTX101の電気的な状態が変化した状態における異物検出処理用パラメータの再取得を行うことができる。なお、上記において所定時間の待機を行う代わりに、TX101からの入力電圧変更完了通知を待つようにしてもよい。或いは、RX102においてTX101からの受電電圧を監視し、これが大きく変化した場合にTX101の入力電圧変更が完了した、と判断するようにしてもよいこの場合、TX101からの入力電圧変更完了通知は不要である。いずれの場合でも、入力電圧を変更した状態、すなわちTX101の電気的な状態が変化した状態で、その状態における異物検出処理用パラメータの再取得を行うことができる。
【0092】
また、TX101は、
図8の表800の異物検出処理用パラメータを、それを取得した際に設定していた入力電圧の情報と関連付けてメモリ209に記憶するようにしてもよい。このときTX101は、Calibrationフェーズの先頭を識別した場合に表800の異物検出処理用パラメータをクリアせず保持したままとする。TX101は、入力電圧の変更後(S410)、その入力電圧と関連付けられた異物検出処理用パラメータを既に保持している場合は、異物検出処理用パラメータを、変更後の入力電圧に関連付けられて保持された異物検出処理用パラメータに置き換える。これにより、同じ入力電圧の状態で複数回異物検出処理用パラメータの再取得を行うことを抑止することができ、その分送電を継続して充電完了までの時間を短くすることができる。
【0093】
また、TX101は、異物検出処理用パラメータの再取得を行う場合に、通知部207を介してユーザに通知を出すように構成してもよい。ユーザはこの通知により、異物検出処理用パラメータの再取得のため、充電のための送電が一時停止していることを知ることが出来る。例えば、RX102が充電中にLEDが点灯するような受電装置である場合において、充電のための送電が一時停止するとLEDが消灯する場合がある。このとき、ユーザは、LEDの消灯が故障ではないことを知ることができる。
【0094】
<第2実施形態>
第1実施形態では、RX102が保持する表1002と、TX101が保持する表1001の内容が同じである場合を説明した。第2実施形態では、TX101におけるGPと送電部203への入力電圧の関係と、RX102におけるGPと受電部303への出力電圧の関係が異なる場合について説明する。例えば、RX102は、
図10の表1002に代えて、
図11の表1102をメモリ309に保持している。また、以下では、RX102の充電部313で必要な電力は当初5ワットであり、その後Power Transferフェーズが開始された後で10ワットに増加し、その後さらに15ワットに増加する場合を説明する。なお、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0095】
第2実施形態におけるTX101とRX102の動作シーケンスを、
図12を用いて説明する。
図12は、第2実施形態に係る無線充電システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
図12では、上から下の方向に時間が進むものとする。載置検出からGPが5ワットで送受電と異物検出処理を実行するまでの動作は
図6(F601~F612、S401~S407、S501~S506)と同じである。F612において、TX101の入力電圧は5ボルト、RX102の出力電圧は5ボルトとなっている。
【0096】
充電部313で10ワットが必要になると(F1201、S507、S508でYES)、TX101とRX102の間でGPが10ワットに更新される(F1202、S408、S509)。GPが10ワットに更新されると、TX101は、表1001を参照して入力電圧を5ボルトのまま維持し(F1203、S409でNO)、RX102からの異物検出処理用パラメータの再取得指示を待つ(S412)。一方、RX102は、表1102を参照して出力電圧を9ボルトに変更し(F1204、S510でYES、S511)、異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信する(F1205、S512、S513でYES、S514)。
【0097】
TX101は、異物検出処理用パラメータの再取得指示を受信すると、Calibrationフェーズの処理を開始する(S412、S413でYES、S405)。一方、異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信したRX102もCalibrationフェーズの処理を開始する(S514、S505)。このためTX101とRX102の間でCalibrationフェーズの処理が再び行われ、0ワットからこの時点でのGPである10ワットまでの異物検出処理用パラメータが取得されTX101に保持される(F1206、S405、S505)。このCalibrationフェーズの処理は、TX101の入力電圧設定部211により設定された入力電圧が5ボルト、RX102の出力電圧設定部311により設定された出力電圧が9ボルトの状態で実行される。GP=10ワットでの送受電の間のTX101による異物検出処理には、このCalibrationフェーズの処理で得られた異物検出処理用パラメータが用いられる(F1207、S406、S407、S506)。
【0098】
その後、充電部313で15ワットが必要になると(F1208、S507、S508でYES)、TX101とRX102の間でGPが15ワットに更新される(F1209、S408、S509)。GPが15ワットに更新されると、TX101は、表1001を参照して入力電圧を9ボルトに変更し(F1210、S409でYES、S410)、異物検出処理用パラメータの再取得要求を送信する(F1212、S411)。一方、RX102は、表1102を参照して入力電圧を9ボルトのまま維持し(F1211、S510でNO)、TX101からの異物検出処理用パラメータの再取得要求を待つ(S512)。
【0099】
RX102は、異物検出処理用パラメータの再取得要求を受信したため(F1212、S512、S513でYES)、異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信する(F1213、S514)。TX101は、異物検出処理用パラメータの再取得指示を受信したため(F1213、S412、S413でYES)、Calibrationフェーズの処理を開始する(S405)。一方、異物検出処理用パラメータの再取得指示を送信したRX102もCalibrationフェーズの処理を開始する(S514、S505)。このためTX101とRX102の間でCalibrationフェーズの処理が再び行われ、0ワットからこの時点でのGPである15ワットまでの異物検出処理用パラメータが取得されTX101に保持される(F1214、S405、S505)。このCalibrationフェーズの処理は、TX101の入力電圧が9ボルト、RX102の出力電圧が9ボルトの状態で実行される。その結果得られた異物検出処理用パラメータを用いて、TX101とRX102の間でGPが15ワットでの送受電と異物検出が行われる(F1215、S406、S407、S506)。
【0100】
以上のように、第2実施形態によれば、GPが5ワットから10ワットに変化すると(F1202)、TX101の入力電圧は5ボルトを維持したまま、RX102の入力電圧は9ボルトに変化する(F1203、F1204)。異物検出処理用パラメータの再取得は、TX101の入力電圧が5ボルト、RX102の入力電圧が9ボルトの状態で行われる(F1206)。また、GPが10ワットから15ワットに変化すると(F1209)、TX101の入力電圧は9ボルトに変化する一方で、RX102の入力電圧は9ボルトを維持する(F1210、F1211)。そして、異物検出処理用パラメータの再取得は、TX101の入力電圧およびRX102の入力電圧が9ボルトの状態で行われる(F1214)。すなわち、TX101またはRX102のいずれか一方において電気的な状態が変化した場合に、その状態に合わせて更新されたパラメータを用いて異物検出が行われる。これにより、より正確に異物を検出することができる。
【0101】
<第3実施形態>
第3実施形態では、GPが更新された場合に、TX101の入力電圧とRX102の出力電圧がいずれも変化しない場合であっても、異物検出処理用パラメータの追加を行う。第3実施形態におけるTX101とRX102の処理を、それぞれ
図13と
図14に示す。第1実施形態との差は、
図4のTX101の処理にS1301が追加されている点と、
図5のRX102の処理にS1401が追加されている点である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0102】
第3実施形態において、GPを5ワットから10ワットに更新する場合の処理を説明する。まずTX101とRX102の間で
図7(B)の通信が実行されることによりGPが更新される(S408、S508でYES、S509)。この場合、
図10(A)の表1001と
図10(B)の表1002から、TX101の入力電圧とRX102の出力電圧はいずれも変更されない(S409でNO、S510でNO)。従って、TX101から異物検出処理用パラメータの再取得要求は送信されず、RX102から異物検出処理用パラメータの再取得指示は送信されない。このときRX102は、更新されたGPに基づいて異物検出処理用パラメータの追加要求を送信する(S513でNO、S1401)。また、TX101はその追加要求に基づいて異物検出処理用パラメータの追加を行う(S413でNO、S1301)。
【0103】
ここで、異物検出処理用パラメータの追加について説明する。RX102は、受電部303における受電電力を一時的に上げることで、更新後のGPである約10ワットで受電し、その時の受電電力を異物検出処理用パラメータの追加要求とともにTX101に通知する。なお、受電電力の通知と異物検出処理用パラメータの追加要求は一つのパケットにまとめて送信してもよいし、別のパケットに分けて送信してもよい。例えば、第1実施形態で説明した、Mode値が2のReceived Power Packetを用いることができる。TX101は、Mode値が2のReceived Power Packetを受信すると、受電電力と電力損失の組を表800(
図8)に追加する。
【0104】
TX101は、異物検出処理用パラメータの追加要求とともに受信した受電電力の値と、その時の自装置における送電電力の値から電力損失を算出して異物検出処理用パラメータとして追加する。具体例を挙げて説明すると、TX101は、S405の最初のCalibrationフェーズで、
図8の行801と802を取得し、
図9(A)が得られているとする。この後、例えば、S1301において、異物検出処理用パラメータの追加要求とともに受電電力9.9ワットが受信され、その時の送電電力が13.4ワットであったとする。この場合、それらの差の3.5ワットを電力損失として行803が異物検出処理用パラメータに追加される。行803は
図9(C)の点Cに相当する。これにより、TX101は、RX102における受電電力と電力損失が非線形に変化する場合に、より正確に異物検出を行うことができる。
【0105】
ここで、GPが5ワットから10ワットに変化する場合は、TX101の入力電圧とRXの102の出力電圧とも変化しないため、電気的な状態は変わらない。このため、
図9(B)のように異物検出処理用パラメータを0ワットから全て再取得する必要はなく、既に取得済みのパラメータを流用することができる。この場合、第3実施形態で示したように、パラメータを再取得せずに追加の処理で済ませることで、充電のための送電を停止する時間を短くし、より短い時間で充電を完了させることができる。
【0106】
なお、RX102は、更新後のGPが非常に大きくなる場合は、例えば約5ワット刻みで複数の受電電力の値を通知してもよい。TX101は、受信した複数の受電電力それぞれにおける電力損失を求めて、異物検出処理用パラメータを複数追加してもよい。これにより、線形補完の精度が高まるため、より正確に異物検出を行うことができる。
【0107】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0108】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0109】
101:送電装置、102:受電装置、201:制御部、203:送電部、204:載置検出部、205:送電コイル、206:通信部、211:入力電圧設定部、212:再取得要求部