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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240703BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60H1/00 102F
F24F13/08 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020118877
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022022882
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小池 純平
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119475(WO,A1)
【文献】特開2019-034612(JP,A)
【文献】特開平09-300942(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069437(WO,A1)
【文献】特開平01-313698(JP,A)
【文献】特開平06-137580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F24F 1/00-13/32
F04D 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を流通させる空調ケースと、
前記空調ケースに収納され、複数の羽根が周方向に配置され、回転によって、回転軸に沿った上流側から前記空気を吸い込み、径方向外側の下流側に前記空気を送り出すファンと、
前記空調ケースにおける前記ファンよりも前記回転軸に沿った上流側に形成され、前記空気を前記ファンに流す吸い込み流路と、
前記空調ケースにおける前記ファンの径方向外側に形成され、前記ファンから径方向外側に前記空気を送り出す第1吹き出し流路及び第2吹き出し流路と、
前記回転軸に沿って形成され、前記吸い込み流路を、異なる性質の空気が流れる第1吸い込み流路と第2吸い込み流路とに仕切る仕切り部と、
を備え、
前記ファンにより、前記第1吸い込み流路から前記空気を吸い込んで前記第1吹き出し流路に送り出すと共に、前記第2吸い込み流路から前記空気を吸い込んで前記第2吹き出し流路に送り出す空調装置において、
前記仕切り部の前記第1吸い込み流路側の面及び前記第2吸い込み流路側の面の少なくとも一方には、前記空気の流れに影響を与えることで、前記第2吸い込み流路を通過した前記空気が前記第1吹き出し流路に流れることを抑制する突起部が前記回転軸の交差方向に延びるように設けられている、空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調装置において、
前記突起部は、前記仕切り部の前記第1吸い込み流路側の面に設けられており、
前記突起部により、前記第1吸い込み流路を通過した前記空気の一部が前記第2吹き出し流路に向かう流れを発生させる、空調装置。
【請求項3】
請求項1記載の空調装置において、
前記突起部は、前記仕切り部の前記第2吸い込み流路側の面、且つ、前記仕切り部の前記ファン側の端部に設けられ、
前記突起部の前記交差方向の両端部の厚みは、前記突起部の他の箇所よりも厚い、空調装置。
【請求項4】
請求項1記載の空調装置において、
前記突起部は、前記仕切り部の前記第1吸い込み流路側の面で且つ前記仕切り部の前記ファン側の端部に設けられて前記交差方向に延びる第1突起部を有し、
前記第1突起部の前記交差方向の一端部であって前記ファンの回転方向側に設けられた第1端部の厚みは、前記第1突起部の他の箇所よりも厚い、空調装置。
【請求項5】
請求項1記載の空調装置において、
前記突起部は、前記仕切り部の前記第2吸い込み流路側の面で且つ前記仕切り部の前記ファン側の端部に設けられ、
前記突起部の前記交差方向の一端部であって前記ファンの回転方向側に設けられた一端部の厚みは、前記突起部の他の箇所よりも厚い、空調装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の空調装置において、
前記仕切り部の前記ファン側は、前記回転軸上、又は、前記回転軸よりも前記第1吹き出し流路側に設けられる、空調装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の空調装置において、
前記仕切り部は、前記ファンよりも前記回転軸に沿った上流側に形成される、空調装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の空調装置において、
前記突起部は、前記仕切り部の前記第1吸い込み流路側の面及び前記第2吸い込み流路側の面の少なくとも一方において、前記交差方向と、前記ファンの径方向に交差する方向とに延びている、空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ケースの吸い込み流路を流れる空気をファンで吸い込み、吹き出し流路に送り出す空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空調ケースと、空調ケースに収納されるファンと、空調ケースにおけるファンの回転軸に沿った該ファンの上流側に形成された吸い込み流路と、空調ケースにおけるファンの径方向外側に形成された第1吹き出し流路及び第2吹き出し流路と、回転軸に沿って形成され、吸い込み流路を第1吸い込み流路と第2吸い込み流路とに仕切る仕切り部とを備える空調装置が開示されている。
【0003】
ここで、第1吸い込み流路及び第2吸い込み流路に異なる性質の空気が流れる場合、ファンが回転すると、該ファンは、第1吸い込み流路を流れる空気を吸い込んで第1吹き出し流路に送り出すと共に、第2吸い込み流路を流れる空気を吸い込んで第2吹き出し流路に送り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-1911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファンと仕切り部のファン側の端部との間に隙間が存在すると、例えば、第1吸い込み流路からファンに低湿度の空気を供給し、第2吸い込み流路からファンに高湿度の空気を供給する場合に、双方の空気が混ざり合い、第1吹き出し流路に高湿度の空気が流れるおそれがある。
【0006】
そこで、特許文献1の空調装置では、仕切り部のファン側の端部を回転軸よりも第2吸い込み流路側に設置することで、第1吹き出し流路に高湿度の空気が流れることを抑制している。
【0007】
しかしながら、回転軸に対して仕切り部の設置位置を第2吸い込み流路側にずらすと、ファンに対する第2吸い込み流路の流路面積が小さくなり、第2吸い込み流路からファンに流れる空気の流量を確保することができない。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ファンに供給する空気の流量を確保しつつ、異なる性質の空気が混ざり合って吹き出し流路に送り出されることを抑制可能な空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、空調装置であって、空気を流通させる空調ケースと、前記空調ケースに収納され、複数の羽根が周方向に配置され、回転によって、回転軸に沿った上流側から前記空気を吸い込み、径方向外側の下流側に前記空気を送り出すファンと、前記空調ケースにおける前記ファンよりも前記回転軸に沿った上流側に形成され、前記空気を前記ファンに流す吸い込み流路と、前記空調ケースにおける前記ファンの径方向外側に形成され、前記ファンから径方向外側に前記空気を送り出す第1吹き出し流路及び第2吹き出し流路と、前記回転軸に沿って形成され、前記吸い込み流路を、異なる性質の空気が流れる第1吸い込み流路と第2吸い込み流路とに仕切る仕切り部とを備える。
【0010】
この場合、前記空調装置は、前記ファンにより、前記第1吸い込み流路から前記空気を吸い込んで前記第1吹き出し流路に送り出すと共に、前記第2吸い込み流路から前記空気を吸い込んで前記第2吹き出し流路に送り出す。
【0011】
そして、前記空調装置では、前記仕切り部の前記第1吸い込み流路側及び前記第2吸い込み流路側の少なくとも一方に、前記空気の流れに影響を与えることで、前記第2吸い込み流路を通過した前記空気が前記第1吹き出し流路に流れることを抑制する突起部が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、仕切り部の第1吸い込み流路側及び第2吸い込み流路側の少なくとも一方に突起部が設けられるので、突起部が設けられる吸い込み流路の空気の流れは、該突起部の影響を受ける。すなわち、突起部を設けることで、該突起部の下流側に空気の渦が発生するか、又は、該突起部に沿って空気が流れるコアンダ効果が発生する。これにより、第2吸い込み流路からファンに吸い込まれた空気は、渦によって第1吹き出し流路側に流れることを阻止され、又は、コアンダ効果によって流れる空気に引きずられて第2吹き出し流路に送り出される。従って、本発明では、仕切り部の設置位置を変更することなく、ファンに供給する空気の流量を確保することができる。また、異なる性質の空気が混ざり合って第1吹き出し流路に送り出されることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る空調装置の全体断面図であり、 図1Bは、図1AのIB-IB線に沿った断面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る空調装置の全体断面図である。
図3図3Aは、本発明の第3の実施の形態に係る空調装置の全体断面図であり、図3Bは、図3AのIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
図4】本発明の第4の実施の形態に係る空調装置の全体断面図である。
図5図5Aは、図4のVA-VA線に沿った断面図であり、図5Bは、図4のVB-VB線に沿った断面図である。
図6図6Aは、図3AのVIA-VIA線に沿った本発明の第5の実施の形態に係る空調装置の断面図であり、図6Bは、図3AのVIB-VIB線に沿った該空調装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る空調装置について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0015】
[1.第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る空調装置10Aについて、図1A及び図1Bを参照しながら説明する。
【0016】
空調装置10Aは、例えば、車両用空調装置として不図示の車両に搭載され、車室内のインストルメントパネルの内側に配置される。この場合、空調装置10Aは、車外からの空気と車室内からの空気とを取り入れ、温度及び湿度を調整して車室内へ空気を吹き出すことで、車室内を空調する。
【0017】
具体的に、空調装置10Aは、空気を流通させる流路が形成された空調ケース12と、空調ケース12に収納され、不図示の複数の羽根が周方向に配置され、回転軸16を中心に回転することで空気を吸い込み、径方向外側の下流側に空気を送り出すファン18とを備える。なお、図1Aにおいて、ファン18の回転軸16に沿った方向(図1Aでは左右方向)をA方向とし、A方向に直交し且つ空気が送り出される方向(図1A及び図1Bでは上下方向)をB方向とし、A方向及びB方向に直交する方向(図1Bでは左右方向)をC方向とする。
【0018】
図1Aに示すように、空調ケース12は、断面略T字状の樹脂製のケースである。空調ケース12には、A方向に沿って延びる略円筒状の吸い込み流路20が形成されている。後述するように、吸い込み流路20は、A1方向側の一端部で車外からの空気と車室内からの空気とを取り入れ、取り入れた空気をA2方向側(ファン18側)の他端部に流す。すなわち、吸い込み流路20の一端部が空気の流れの上流側であり、他端部が下流側である。
【0019】
吸い込み流路20の他端部には、B1方向に延びる略円筒状の第1吹き出し流路22と、B2方向に延びる略円筒状の第2吹き出し流路24とが連結されている。すなわち、第1吹き出し流路22と第2吹き出し流路24とは、吸い込み流路20の他端部から互いに反対方向に延びている。
【0020】
吸い込み流路20と第1吹き出し流路22及び第2吹き出し流路24との連結部分には、ファン18が配置されている。ファン18は、回転軸16と吸い込み流路20の中心軸26とが略同軸となるように、該連結部分に配置されている。ファン18は、円環状の遠心ファンであって、複数の羽根が周方向に配置され、不図示のモータによって回転軸16を中心に回転駆動される。すなわち、ファン18は、回転軸16を中心に回転することで、吸い込み流路20から空気を吸い込む。そして、ファン18は、吸い込んだ空気を、外周面のB1方向側の第1吹き出し口28から第1吹き出し流路22に向けて送り出すと共に、外周面のB2方向側の第2吹き出し口30から第2吹き出し流路24に向けて送り出す。
【0021】
なお、図1Bに示すように、第1吹き出し流路22及び第2吹き出し流路24を形成する空調ケース12のB方向に延びる円筒部分の内壁には、ファン18の回転軸16に指向するように、ファン18の外周面のC1方向側の箇所とC2方向側の箇所とに向かって延びる仕切り板32が形成されている。仕切り板32及びファン18によって、該円筒部分は、第1吹き出し流路22と第2吹き出し流路24とに区画される。
【0022】
図1A及び図1Bに示すように、吸い込み流路20は、A方向及びC方向に沿って形成された板状の仕切り部34によって、B1方向側の半円筒状の第1吸い込み流路20aと、B2方向側の半円筒状の第2吸い込み流路20bとに仕切られる。この場合、少なくとも、仕切り部34のA2方向側(ファン18側)の端部34cは、ファン18の回転軸16及び吸い込み流路20の中心軸26上に配置されるか、又は、回転軸16及び中心軸26よりもB1方向側に設けられる。なお、図1A及び図1Bでは、回転軸16及び中心軸26上に仕切り部34が形成されている場合を図示している。また、仕切り部34の端部34cとファン18との間には、僅かな隙間が形成されてもよい。
【0023】
第1吸い込み流路20aと第2吸い込み流路20bとには、異なる性質の空気が流れる。すなわち、第1吸い込み流路20aには、車外からの低湿度の空気がA2方向に流れる。第2吸い込み流路20bには、車室内からの高湿度の空気がA2方向に流れる。これにより、ファン18は、第1吸い込み流路20aから吸い込んだ低湿度の空気を第1吹き出し流路22に送り出すと共に、第2吸い込み流路20bから吸い込んだ高湿度の空気を吸い込んで第2吹き出し流路24に送り出す。
【0024】
ここで、低湿度の空気とは、湿度が相対的に低い空気をいう。また、高湿度の空気とは、湿度が相対的に高い空気をいう。なお、第1吸い込み流路20aと第2吸い込み流路20bとには、同じ性質の空気を流すことも可能である。以下の説明では、上記のように、第1吸い込み流路20aに低湿度の空気が流れ、第2吸い込み流路20bに高湿度の空気が流れる場合について説明する。
【0025】
ところで、ファン18と仕切り部34の端部34cとの間に隙間が存在すると、第1吸い込み流路20aからファン18に低湿度の空気を供給し、第2吸い込み流路20bからファン18に高湿度の空気を供給する場合に、双方の空気が混ざり合い、第1吹き出し流路22に高湿度の空気が流れる可能性がある。
【0026】
そこで、第1の実施の形態に係る空調装置10Aでは、仕切り部34の第1吸い込み流路20a側(B1方向側)の上面34aに、空気の流れに影響を与えることで、第2吸い込み流路20bを通過した高湿度の空気が第1吹き出し流路22に流れることを抑制する第1突起部36a(突起部)が設けられている。第1突起部36aは、仕切り部34の上面34aにおけるA方向に沿った中央部、すなわち、仕切り部34の端部34cからA1方向に離れた箇所で、且つ、C方向に延在する断面略半円状の凸部である。
【0027】
第1突起部36aが設けられることにより、第1吸い込み流路20aに低湿度の空気がA2方向に流れた場合、第1突起部36aの下流側には、低湿度の空気の渦38が発生する。低湿度の空気の渦38は、白抜きの太い矢印で示すように、ファン18に吸い込まれ、該ファン18内でB2方向側に流れる。これにより、第2吸い込み流路20bにおける仕切り部34の底面34b側を流れ、且つ、ファン18に吸い込まれる高湿度の空気は、B2方向側に流れる低湿度の空気の渦38によって、B1方向側に流れることを妨げられる。この結果、高湿度の空気がB1方向側に流れることを抑制することができる。すなわち、異なる性質の空気(低湿度の空気、高湿度の空気)が混ざり合って、第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができる。
【0028】
このように、混ざり合った空気が第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができるので、特許文献1のように、仕切り部34の設置位置を変更することが不要となる。この結果、ファン18に供給する空気の流量を確保することができる。
【0029】
また、仕切り部34の端部34cを、回転軸16上、又は、回転軸16よりもB1方向側に設けることで、第2吸い込み流路20bからファン18に吸い込まれる高湿度の空気の流量の低下を抑えつつ、高湿度の空気が第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができる。
【0030】
[2.第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係る空調装置10Bについて、図2を参照しながら説明する。なお、第1の実施の形態に係る空調装置10A(図1A及び図1B参照)と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、その詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0031】
第2の実施の形態に係る空調装置10Bは、仕切り部34の上面34aで、且つ、仕切り部34の端部34cに第1突起部36aが設けられる点で、第1の実施の形態に係る空調装置10Aとは異なる。
【0032】
ここで、第1吸い込み流路20aに低湿度の空気がA2方向に流れた場合、第1吸い込み流路20aにおける第1突起部36aの周辺には、第1突起部36aに沿って空気が流れるコアンダ効果が発生する。これにより、白抜きの太い矢印で示すように、第1突起部36aに沿って流れた低湿度の空気は、ファン18に吸い込まれ、該ファン18内でB2方向側に流れる。この結果、第2吸い込み流路20bにおける仕切り部34の底面34b側を流れ、且つ、ファン18に吸い込まれる高湿度の空気は、ファン18内でB2方向側に流れる低湿度の空気に引きずられ、B2方向側の第2吹き出し流路24に送り出される。そのため、高湿度の空気がB1方向側に流れることを抑制することができる。この場合も、異なる性質の空気(低湿度の空気、高湿度の空気)が混ざり合って、第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができる。すなわち、第2の実施の形態に係る空調装置10Bにおいても、第1の実施の形態に係る空調装置10Aと同様の効果が得られる。
【0033】
[3.第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る空調装置10Cについて、図3A及び図3Bを参照しながら説明する。第3の実施の形態に係る空調装置10Cは、仕切り部34の第2吸い込み流路20b側(B2方向側)の底面34bに、空気の流れに影響を与えることで、第2吸い込み流路20bを通過した空気が第1吹き出し流路22に流れることを抑制する第2突起部36b(突起部)が設けられている点で、第1及び第2の実施の形態に係る空調装置10A、10B(図1A図2参照)とは異なる。
【0034】
第2突起部36bは、仕切り部34の底面34b、且つ、仕切り部34の端部34cに設けられ、C方向(回転軸16の交差方向)に延在する断面略台形状の凸部である。具体的に、図3Aのように、C方向から見たときに、第2突起部36bは、仕切り部34の底面34b、且つ、仕切り部34の端部34cで、一定の厚みを持ってA方向に延び、A1方向側の部分が円弧状に湾曲している。
【0035】
また、図3Bに示すように、第2突起部36bの底面34bは、C方向に沿って凹状に湾曲している。そのため、第2突起部36bのC方向の両端部(C1方向の一端部40b、C2方向の他端部42b)の各厚みは、第2突起部36bの他の箇所の厚みよりも厚い。また、第2突起部36bのC方向に沿った中央部の厚みは、最も薄い。
【0036】
ここで、第2吸い込み流路20bに高湿度の空気がA2方向に流れた場合、第2吸い込み流路20bにおける第2突起部36bの周辺には、第2突起部36bに沿って空気が流れるコアンダ効果が発生する。これにより、白抜きの太い矢印で示すように、第2突起部36bに沿って流れた高湿度の空気は、ファン18に吸い込まれ、該ファン18内でB2方向側に流れる。この結果、ファン18に吸い込まれた高湿度の空気がB1方向側に流れることが抑制される。従って、異なる性質の空気(低湿度の空気、高湿度の空気)が混ざり合って、第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができる。
【0037】
また、図3Bに示すように、第2吸い込み流路20bのC1方向側及びC2方向側は、第1吹き出し流路22に近接している。そのため、第2吸い込み流路20bを流れる高湿度の空気は、ファン18を介さず、第1吹き出し流路22に直接流れ込む可能性がある。
【0038】
そこで、第3の実施の形態に係る空調装置10Cでは、第2突起部36bのC1方向の一端部40bの厚みと、第2突起部36bのC2方向の他端部42bの厚みとを、第2突起部36bの他の箇所の厚みよりも厚くしている。これにより、第2吸い込み流路20bを流れる高湿度の空気は、ファン18の中心部(回転軸16)側に集められて、該ファン18に吸い込まれる。この結果、高湿度の空気を第1吹き出し流路22に流れにくくすることができる。
【0039】
[4.第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態に係る空調装置10Dについて、図4図5Bを参照しながら説明する。第4の実施の形態に係る空調装置10Dは、仕切り部34の上面34a及び底面34bの双方に第1突起部36a及び第2突起部36bがそれぞれ設けられている点で、第1~第3の実施の形態に係る空調装置10A~10C(図1A図3B参照)とは異なる。
【0040】
第1突起部36aは、仕切り部34の上面34aで、仕切り部34の端部34cに設けられ、C方向に延在する断面略台形状の凸部である。すなわち、図4のように、C方向から見たときに、第1突起部36aは、仕切り部34の上面34aにおいて、仕切り部34の端部34cで、一定の厚みを持ってA方向に延び、A1方向側が円弧状に湾曲している。
【0041】
第2突起部36bは、仕切り部34の底面34bで、仕切り部34の端部34cに設けられ、C方向に延在する断面略台形状の凸部である。すなわち、図4のように、C方向から見たときに、第2突起部36bは、仕切り部34の底面34bにおいて、仕切り部34の端部34cで、一定の厚みを持ってA方向に延び、A1方向側が円弧状に湾曲している。
【0042】
また、図5A及び図5Bに示すように、A方向から見たときに、第1突起部36a及び第2突起部36bの厚みは、C方向に沿って変化している。具体的に、ファン18の回転方向をD方向と呼称した場合、第1突起部36aにおけるD方向側の一端部(第1端部44a)の厚みは、第1突起部36aの他の箇所よりも厚い。すなわち、A方向から見たときに、第1突起部36aは、仕切り部34の上面34aにおいて、断面略三角形状に形成されている。また、第2突起部36bにおけるD方向側の一端部(第2端部44b)の厚みは、第2突起部36bの他の箇所よりも厚い。すなわち、A方向から見たときに、第2突起部36bは、仕切り部34の底面34bにおいて、断面略三角形状に形成されている。
【0043】
さらに詳しく説明すると、図5Aのように、D方向が時計回りである場合、第1突起部36aの第1端部44aは、仕切り部34のC2方向側に設けられ、第2突起部36bの第2端部44bは、仕切り部34のC1方向側に設けられる。つまり、図5Aにおいて、第1突起部36aは、仕切り部34の上面34aで断面三角形状に形成され、第1突起部36aの厚みは、C2方向に向かう程厚くなる。また、図5Aにおいて、第2突起部36bは、仕切り部34の底面34bで断面三角形状に形成され、第2突起部36bの厚みは、C1方向に向かう程厚くなる。
【0044】
一方、図5Bのように、D方向が反時計回りである場合、第1突起部36aの第1端部44aは、仕切り部34のC1方向側に設けられ、第2突起部36bの第2端部44bは、仕切り部34のC2方向側に設けられる。つまり、図5Bにおいて、第1突起部36aは、仕切り部34の上面34aで断面三角形状に形成され、第1突起部36aの厚みは、C1方向に向かう程厚くなる。また、図5Bにおいて、第2突起部36bは、仕切り部34の底面34bで断面三角形状に形成され、第2突起部36bの厚みは、C2方向に向かう程厚くなる。
【0045】
ここで、第1吸い込み流路20aに低湿度の空気がA2方向に流れると共に、第2吸い込み流路20bに高湿度の空気がA2方向に流れた場合、第1吸い込み流路20aにおける第1突起部36aの周辺には、第1突起部36aに沿って低湿度の空気が流れるコアンダ効果が発生し、第2吸い込み流路20bにおける第2突起部36bの周辺には、第2突起部36bに沿って高湿度の空気が流れるコアンダ効果が発生する。これにより、白抜きの太い矢印で示すように、第1突起部36aに沿って流れた低湿度の空気は、ファン18に吸い込まれ、該ファン18内でB2方向側に流れる。また、白抜きの太い矢印で示すように、第2突起部36bに沿って流れた高湿度の空気は、ファン18に吸い込まれ、該ファン18内でB2方向側に流れる。
【0046】
この結果、高湿度の空気は、B2方向側に流れる低湿度の空気に引きずられ、B2方向側に流れる。これにより、ファン18に吸い込まれた高湿度の空気がB1方向側に流れることが抑制される。従って、異なる性質の空気(低湿度の空気、高湿度の空気)が混ざり合って、第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができる。
【0047】
また、図5A及び図5Bに示すように、第1突起部36a及び第2突起部36bにおけるD方向側の一端部(第1端部44a、第2端部44b)の厚みを厚くすることで、高湿度の空気を第1吹き出し流路22に一層流れにくくすることができる。
【0048】
[5.第5の実施の形態]
本発明の第5の実施の形態に係る空調装置10Eについて、図3A図6A及び図6Bを参照しながら説明する。第5の実施の形態に係る空調装置10Eは、仕切り部34の底面34bにのみ第2突起部36bを設ける点で、第4の実施の形態に係る空調装置10D(図4図5B参照)とは異なる。
【0049】
この場合でも、第2突起部36bが設けられることで、第4の実施の形態の空調装置10Dと同様に、第2吸い込み流路20bに高湿度の空気がA2方向に流れた場合、第2吸い込み流路20bにおける第2突起部36bの周辺には、第2突起部36bに沿って高湿度の空気が流れるコアンダ効果が発生する。これにより、白抜きの太い矢印で示すように、第2突起部36bに沿って流れた高湿度の空気は、ファン18に吸い込まれ、該ファン18内でB2方向側に流れる。この結果、第2吸い込み流路20bからファン18に吸い込まれた高湿度の空気がB1方向側に流れることが抑制される。従って、異なる性質の空気(低湿度の空気、高湿度の空気)が混ざり合って、第1吹き出し流路22に送り出されることを抑制することができる。
【0050】
また、図6A及び図6Bに示すように、第2突起部36bにおけるD方向側の一端部(第2端部44b)の厚みを厚くすることで、第2吸い込み流路20bを流れる高湿度の空気を第1吹き出し流路22に一層流れにくくすることができる。
【0051】
[6.実施の形態の効果]
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る空調装置10A~10Eは、空気を流通させる空調ケース12と、空調ケース12に収納され、複数の羽根が周方向に配置され、回転によって、回転軸16に沿った上流側から空気を吸い込み、径方向外側の下流側に空気を送り出すファン18と、空調ケース12におけるファン18よりも回転軸16に沿った上流側に形成され、空気をファン18に流す吸い込み流路20と、空調ケース12におけるファン18の径方向外側に形成され、ファン18から径方向外側に空気を送り出す第1吹き出し流路22及び第2吹き出し流路24と、回転軸16に沿って形成され、吸い込み流路20を、異なる性質の空気が流れる第1吸い込み流路20aと第2吸い込み流路20bとに仕切る仕切り部34とを備える。
【0052】
この場合、空調装置10A~10Eは、ファン18により、第1吸い込み流路20aから空気を吸い込んで第1吹き出し流路22に送り出すと共に、第2吸い込み流路20bから空気を吸い込んで第2吹き出し流路24に送り出す。
【0053】
そして、空調装置10A~10Eでは、仕切り部34の第1吸い込み流路20a側及び第2吸い込み流路20b側の少なくとも一方に、空気の流れに影響を与えることで、第2吸い込み流路20bを通過した空気が第1吹き出し流路22に流れることを抑制する突起部(第1突起部36a、第2突起部36b)が設けられている。
【0054】
この実施の形態によれば、仕切り部34の第1吸い込み流路20a側及び第2吸い込み流路20b側の少なくとも一方に突起部が設けられている。これにより、突起部が設けられる吸い込み流路20の空気の流れは、該突起部の影響を受ける。すなわち、突起部を設けることで、該突起部の下流側に空気の渦38が発生するか、又は、該突起部に沿って空気が流れるコアンダ効果が発生する。この結果、第2吸い込み流路20bからファン18に吸い込まれた空気は、渦38によって第1吹き出し流路22側に流れることを阻止され、又は、コアンダ効果によって流れる空気に引きずられて第2吹き出し流路24に送り出される。従って、仕切り部34の設置位置を変更することなく、ファン18に供給する空気の流量を確保することができる。また、異なる性質の空気が混ざり合って第1吹き出し流路22及び第2吹き出し流路24に送り出されることを抑制することが可能となる。
【0055】
ここで、第1及び第2の実施の形態の空調装置10A、10Bのように、第1突起部36a(突起部)は、仕切り部34の第1吸い込み流路20a側に設けられており、第1突起部36aにより、第1吸い込み流路20aを通過した空気の一部が第2吹き出し流路24に向かう流れを発生させる。
【0056】
第1の実施の形態のように、仕切り部34のA2方向側の端部34cから離れた位置(仕切り部34の中央又は上流側)に第1突起部36aを設けることで、第1突起部36aの下流側に渦38が発生する。ファン18に吸い込まれた渦38はB2方向側に流れ、第2吸い込み流路20bを流れてファン18に吸い込まれた高湿度の空気がB1方向側に流れることを阻止する。これにより、高湿度の空気が第1吹き出し流路22に流れることを効果的に抑制することができる。
【0057】
また、第2の実施の形態のように、仕切り部34のA2方向側の端部34cに第1突起部36aを設けることで、コアンダ効果により、第1突起部36aに沿った低湿度の空気の流れが発生する。ファン18に吸い込まれた低湿度の空気はB2方向側に流れるので、第2吸い込み流路20bを流れてファン18に吸い込まれた高湿度の空気は、低湿度の空気に引きずられてB2方向側に流れる。この場合でも、高湿度の空気が第1吹き出し流路22に流れることを効果的に抑制することができる。
【0058】
さらに、第3の実施の形態に係る空調装置10Cのように、第2突起部36b(突起部)は、仕切り部34の第2吸い込み流路20b側、且つ、仕切り部34のA2方向側(ファン18側)の端部34cの箇所に設けられると共に、C方向(回転軸16の交差方向)に延び、第2突起部36bのC方向の両端部(一端部40b、他端部42b)の厚みは、第2突起部36bの他の箇所よりも厚い。
【0059】
ファン18の周方向及び外周側(ファン18の仕切り板32近傍の箇所)は、第1吹き出し流路22と近いため、第2吸い込み流路20bを流れる高湿度の空気が第1吹き出し流路22に流れやすい。そこで、第2突起部36bのC方向の両端部の厚みを厚くして、ファン18の中心部に高湿度の空気を集めることで、高湿度の空気を第1吹き出し流路22に流れにくくすることができる。
【0060】
第4の実施の形態に係る空調装置10Dのように、突起部は、仕切り部34の第1吸い込み流路20a側で且つ仕切り部34のA2方向側の端部34cの箇所に設けられてC方向に延びる第1突起部36aを有する。第1突起部36aのC方向の一端部であってD方向側(ファン18の回転方向側)に設けられた第1端部44aの厚みは、第1突起部36aの他の箇所よりも厚い。
【0061】
これにより、第1~第3の実施の形態に係る空調装置10A~10Cと同様に、第2吸い込み流路20bを流れる高湿度の空気を第1吹き出し流路22に流れにくくすることができる。
【0062】
第5の実施の形態に係る空調装置10Eのように、第2突起部36b(突起部)は、仕切り部34の第2吸い込み流路20b側で且つ仕切り部34のA2方向側の端部34cの箇所に設けられてC方向に延びており、第2突起部36bのC方向の一端部であってD方向側に設けられた一端部(第2端部44b)の厚みは、第2突起部36bの他の箇所よりも厚い。この場合でも、第4の実施の形態に係る空調装置10Dと同様に、第2吸い込み流路20bを流れる高湿度の空気を第1吹き出し流路22に流れにくくすることができる。
【0063】
仕切り部34のA2方向側(ファン18側)は、回転軸16上、又は、回転軸16よりも第1吹き出し流路22側に設けられる。これにより、第2吸い込み流路20bを大きく確保することができる。そのため、第2吸い込み流路20bに流れる高湿度の空気の流量を低下させることなく、第1吹き出し流路22に高湿度の空気が流れることを抑制することができる。
【0064】
なお、本発明に係る空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10A~10E…空調装置 12…空調ケース
16…回転軸 18…ファン
20…吸い込み流路 20a…第1吸い込み流路
20b…第2吸い込み流路 22…第1吹き出し流路
24…第2吹き出し流路 34…仕切り部
36a…第1突起部(突起部) 36b…第2突起部(突起部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6