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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】成形方法および成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20240703BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020130123
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026581
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年1月29日から31日開催「JFlex2020」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和馬
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-284888(JP,A)
【文献】特開平06-238709(JP,A)
【文献】特開2009-152507(JP,A)
【文献】特表2020-516487(JP,A)
【文献】特開2014-013930(JP,A)
【文献】特開平07-106733(JP,A)
【文献】特開2009-529471(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041470(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 39/00 - 39/44
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を熱可塑性樹脂と一体成形して立体曲面形状を形成するための成形方法であって、
(a)前記立体曲面形状に対応した展開形状および回路配置を有する前記フレキシブル基板を用意する工程と、
(b)金型が開いている状態で、前記金型に沿って前記フレキシブル基板を前記立体曲面形状に弾性変形させて保持する工程と、
(c)前記金型を閉じて熱可塑性樹脂を前記金型の樹脂充填空間に充填する工程と、
を備え
前記工程(a)は、前記展開形状として前記平板にスリットを設けることを含む、
成形方法。
【請求項2】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を熱可塑性樹脂と一体成形して立体曲面形状を形成するための成形方法であって、
(a)前記立体曲面形状に対応した展開形状および回路配置を有する前記フレキシブル基板を用意する工程と、
(b)金型が開いている状態で、前記金型に沿って前記フレキシブル基板を前記立体曲面形状に弾性変形させて保持する工程と、
(c)前記金型を閉じて熱可塑性樹脂を前記金型の樹脂充填空間に充填する工程と、
を備え
前記工程(a)は、前記展開形状として前記平板に三角形状またはV字状のノッチ部が並んだ形状を設けることを含む
成形方法。
【請求項3】
前記工程(a)は、前記回路配置において、前記工程(b)および前記工程(c)において弾性変形する前記フレキシブル基板の領域のうち、予め設定された曲率半径以上となる領域を第1領域と設定し、前記予め設定された曲率半径未満となる領域を第2領域と設定し、前記第1領域に前記電子部品を配置することを含む
請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記工程(a)は、前記回路配置において、前記工程(b)および前記工程(c)における前記フレキシブル基板が予め設定された閾値未満の応力を受ける領域を第1領域と設定し、前記閾値以上の応力を受ける領域を第2領域とを設定し、前記第1領域に前記電子部品を配置することを含む
請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項5】
前記工程(a)は、前記第1領域に対して剛性を向上させるための補強部材を付加することを含む
請求項3または4に記載の成形方法。
【請求項6】
前記工程(c)は、前記充填の際に前記フレキシブル基板の保持を解除することを含む、
請求項1または2に記載の成形方法。
【請求項7】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を熱可塑性樹脂と一体成形して立体曲面形状を形成するための成形システムであって、
金型が開いている状態で、展開形状として前記平板にスリットが設けられている前記フレキシブル基板を前記金型の樹脂充填空間に沿って前記立体曲面形状に弾性変形させて保持する基板保持装置と、
前記金型を閉じて熱可塑性樹脂を前記樹脂充填空間に充填する射出成形装置と、
を備える
成形システム。
【請求項8】
可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板を熱可塑性樹脂と一体成形して立体曲面形状を形成するための成形システムであって、
金型が開いている状態で、展開形状として前記平板に三角形状またはV字状のノッチ部が並んだ形状が設けられている前記フレキシブル基板を前記金型の樹脂充填空間に沿って前記立体曲面形状に弾性変形させて保持する基板保持装置と、
前記金型を閉じて熱可塑性樹脂を前記樹脂充填空間に充填する射出成形装置と、
を備える
成形システム。
【請求項9】
前記基板保持装置は、前記金型における前記樹脂充填空間に露呈する面に設けられた孔を介して空気を吸引する吸引装置を含み、前記孔を塞ぐように設置された前記フレキシブル基板を吸引することにより保持する
請求項7または8の成形システム。
【請求項10】
前記基板保持装置は、前記金型において前記フレキシブル基板を挟持する挟持装置を含み、前記挟持装置は、前記樹脂充填空間に樹脂の充填が開始された後であって、前記充填が完了する前に、前記挟持を解除する
請求項7または8に記載の成形システム。
【請求項11】
前記基板保持装置が有する前記挟持装置は、樹脂の前記充填が完了した後に、成形品を前記金型から分離させるイジェクタピンを含む
請求項10に記載の成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形方法および成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された回路基板と樹脂とを一体成形するインサート成形が知られている。例えば特許文献1に記載の技術は、金型を閉じた状態でキャビティ内において突出したピンが電子基板を保持し、射出成形装置がキャビティ内に樹脂を一次射出する。そして一次射出された樹脂がある程度固化することにより電子基板を保持する状態になると、上記ピンは後退し、続いて射出成形装置が樹脂を二次射出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-058442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品を含むフレキシブル基板を立体形状にインサート成形する技術は存在しなかった。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態にかかる成形方法は、可撓性を有する平板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板と熱可塑性樹脂とを立体形状に一体成形する。
上記成形方法は、
(a)立体形状に対応したフレキシブル基板の展開形状および回路配置を決定する工程と、
(b)金型が開いている状態で、金型の樹脂充填空間に沿ってフレキシブル基板を弾性変形させて保持する工程と、
(c)金型を閉じて熱可塑性樹脂を樹脂充填空間に充填する工程と、
を含む。
【0006】
一実施の形態にかかる成形システムは、可撓性を有する平板状の板に回路および電子部品を実装したフレキシブル基板と熱可塑性樹脂とを立体形状に一体成形するための成形システムであって、基板保持装置および射出成形装置を有する。基板保持装置は、金型が開いている状態で、金型の樹脂充填空間に沿ってフレキシブル基板を保持する。射出成形装置は、金型を閉じて熱可塑性樹脂を樹脂充填空間に充填する。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、電子部品を含むフレキシブル基板と樹脂とを立体形状に一体成形するインサート成形方法および成形システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる成形システムの概観図である。
図2】実施の形態にかかる成形方法のフローチャートである。
図3】実施の形態にかかる成形品の斜視図である。
図4】実施の形態にかかるフレキシブル基板の展開図である。
図5】実施の形態にかかる成形工程を示す第1の図である。
図6】実施の形態にかかる成形工程を示す第2の図である。
図7】実施の形態にかかる成形工程を示す第3の図である。
図8】実施の形態にかかる成形工程を示す第4の図である。
図9】成形システムの第2の例を示す図である。
図10】成形システムの第3の例を示す図である。
図11】実施の形態の変形例にかかるフレキシブル基板の断面図である。
図12】フレキシブル基板の形態の例を示す第1の図である。
図13】フレキシブル基板の形態の例を示す第2の図である。
図14】自動車に搭載される入力装置の例を示す図である。
図15】入力装置に使用されるフレキシブル基板の第1例を示す図である。
図16】入力装置に使用されるフレキシブル基板の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
<実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態にかかる成形システムの概観図である。図1に示す成形システム1は、電子部品を含むフレキシブル基板と熱可塑性樹脂とを立体形状に一体成形するための成形システムである。
【0011】
なお本実施の形態において、一体成形とは、インサート成形によってフレキシブル基板と樹脂とを一体に成形することをいう。また本実施の形態におけるインサート成形とは、金型にフレキシブル基板を設置したうえで金型に樹脂を注入し、フレキシブル基板と樹脂とを一体化した複合製品を製造することをいう。また本実施の形態において、「フレキシブル基板」は、可撓性を有する平板状のフィルムに、回路と電子部品とを実装したものをいう。また以降の説明において「熱可塑性樹脂」を単に「樹脂」と称する場合がある。
【0012】
以下に、成形システム1の構成の概要について説明する。成形システム1は、主な構成として、射出成形装置10、金型11および吸引装置12を有している。
【0013】
射出成形装置10は、金型11のうち、固定型11Fを固定し、可動型11Mを進退可能に保持する。射出成形装置10は、金型11が閉じた状態で、射出成形装置10が有するスクリュー10Aを利用して可塑化した樹脂を金型11に注入する。注入した樹脂が固化すると、射出成形装置10は、金型11を開き、固化した樹脂成形品を取り出すことが出来る状態にする。なお図1において、射出成形装置10の一部は断面で示されており、断面部には射出成形装置10が有するスクリュー10Aが示されている。
【0014】
金型11は、固定型11Fと可動型11Mとにより構成される。固定型11Fと可動型11Mとが閉じた状態において、金型11は内部に樹脂充填空間を形成する。樹脂充填空間には、後述するフレキシブル基板が設置されるとともに、射出成形装置10から注入される熱可塑性樹脂が充填される。
【0015】
吸引装置12は、フレキシブル基板を金型11に保持する基板保持装置の実施態様の一つである。吸引装置12は、真空ポンプを有しており、可動型11Mに設けられた孔に連結した管12Aを介して、可動型11Mの孔から空気を吸引する。これにより吸引装置12は、金型11における樹脂充填空間に露呈する面に設けられた孔を介して空気を吸引する。そして、吸引装置12は、孔を塞ぐように設置されたフレキシブル基板を吸引することによりフレキシブル基板120を保持する。
【0016】
上述の成形システム1は、電子部品を含むフレキシブル基板を可動型11Mに設置して保持し、フレキシブル基板を保持した状態で金型11を閉じ、閉じた金型11に樹脂を注入する。これにより、成形システム1は、フレキシブル基板と樹脂とを立体形状に一体成形できる。
【0017】
次に、図2を参照して成形システム1を用いて行う成形方法について説明する。図2は、実施の形態にかかる成形方法のフローチャートである。図2に示すフローチャートは、例えばユーザが成形システム1を利用して所望の成形品を製造するための方法である。なお、図2に示すフローチャートを開始するに際し、成形品の立体形状は決定しているものとする。
【0018】
まず、ユーザは、立体形状に対応した展開形状および回路配置を有するフレキシブル基板を用意する(ステップS11)。より具体的には、ユーザは、成形品の立体形状からフレキシブル基板の展開形状を決定するとともに、決定した展開形状において回路パターンや電子部品の配置を決定する。
【0019】
このとき、ユーザは、展開形状としてフレキシブル基板にV字状やU字状、その他の形状のノッチ部を設けてもよい。またユーザは、立体形状がV字状やU字状、その他の形状のノッチ部を有するようにフレキシブル基板にスリットを設けてもよい。ノッチ部またはスリットを設けることにより、本実施の形態にかかる成形方法は、立体形状を形成した状態におけるフレキシブル基板にかかる応力を緩和できる。
【0020】
またフレキシブル基板を用意するに際し、回路パターンや電子部品の配置を決定する場合に、ユーザは、フレキシブル基板を、機械的な負荷を比較的に大きく受ける領域と、機械的な負荷を比較的に大きく受けない領域とに分ける。そしてユーザは、機械的な負荷を比較的に大きく受けない領域に電子部品を配置する。
【0021】
より具体的には、例えば、ユーザは、フレキシブル基板が予め設定された曲率半径以上となる領域を第1領域と設定し、予め設定された曲率半径未満となる領域を第2領域と設定してもよい。この場合ユーザは、第1領域に前記電子部品を配置することを決定する。
【0022】
また、例えば、ユーザは、フレキシブル基板が予め設定された閾値未満の応力を受ける領域を第1領域と設定し、予め設定された閾値以上の応力を受ける領域を第2領域とを設定し、第1領域に電子部品を配置することを決定してもよい。
【0023】
次に、ユーザは、金型11が開いている状態で、用意したフレキシブル基板を、金型11に沿って弾性変形させて保持する(ステップS12)。すなわちユーザは、フレキシブル基板を金型11の可動型11Mに設置するとともに、吸引装置12を動作させることにより、フレキシブル基板を可動型11Mに保持させる。
【0024】
次に、ユーザは、射出成形装置10を操作し、金型11を閉じて、熱可塑性樹脂を樹脂充填空間に充填する(ステップS13)。射出成形装置10が樹脂を金型に充填し、充填した樹脂を冷却することにより、射出成形装置10は、フレキシブル基板と樹脂とを一体成形する。これにより、ユーザは、所望の成形品を製造できる。
【0025】
次に、上述の成形方法についてより具体的に説明する。図3は、実施の形態にかかる成形品の斜視図である。図3には、フレキシブル基板と樹脂とが一体成形された成形品の一例である製品100が示されている。図3に示す製品100は、樹脂部110、フレキシブル基板120、配線部130および電子部品140を有している。すなわち製品100は、フレキシブル基板120と樹脂とが一体成形されたものである。なお、製品100は、例えば樹脂成形時に樹脂材料とフレキシブル基板の材料とが溶着することにより、樹脂部110とフレキシブル基板120とが分離せず一体化される。あるいは、製品100は、樹脂部110とフレキシブル基板120との接触面に設けられた接着層を介して一体化される。
【0026】
図3に示している製品100は、ボウル型の立体形状であって、ボウルの縁にコネクタ部を有し、曲面により形成されている側面部にクランク状の配線がなされることが予め決められている。また製品100は、配線の途中に電子部品140を実装することが予め決められている。一方、製品100は、フレキシブル基板120の形状、コネクタ部からクランク状の配線までの配線パターンおよび電子部品140の配置が決められていない。そのため、ユーザは、製品100を製造するに際し、フレキシブル基板120の形状、コネクタ部からクランク状の配線までの配線パターンおよび電子部品140の配置を決定し、フレキシブル基板を用意する。
【0027】
次に、図4を参照して、フレキシブル基板120について説明する。図4は、実施の形態にかかるフレキシブル基板120の展開図である。図4は、フレキシブル基板120の主面と直交する軸に平行な方向からフレキシブル基板120を観察した状態である。フレキシブル基板120は、可撓性を有する平板状のベースフィルム121を基材とし、ベースフィルム121の一方の主面に、配線部130および電子部品140が実装されている。ベースフィルム121は、例えばポリカーボネートやポリイミドまたはポリエステルなどの樹脂の板材により構成される。
【0028】
フレキシブル基板120のベースフィルム121は、中央の円形部から図面の下方に向かって延伸する一本の短冊状のコネクタ部122を有し、上記円形部の上半分において放射状に延伸する6本の短冊状の放射形状部123を有している。また6本の放射形状部123のそれぞれの間には、V字状の切れ込み形状であるノッチ部124が存在する。
【0029】
上述の形状において、フレキシブル基板120は、円形部が製品100における底面部に配置され、コネクタ部122および放射形状部123はボウル型の側面部に配置される。放射形状部123は、成形品として一体成形された場合、フレキシブル基板120の主面に直交する軸に沿う方向に向かって変形する。このとき、放射形状部123は、ノッチ部124の角度が狭まるように変形する。これにより、フレキシブル基板120は、変形により乗じる機械的な負荷を緩和しつつ、好適に所望の立体形状に変形することができる。
【0030】
次に、フレキシブル基板120の回路配置について説明する。フレキシブル基板120は、コネクタ部122から6本の配線が円形部に向かって延び、それぞれの配線が放射形状部123に延伸すると共にクランク状のパターンを形成している。また6本の配線はそれぞれ、中央の円形部において電子部品140を有している。
【0031】
なお、本実施の形態において配線部130に使用される材料は、導電性を有すると共に、ベースフィルムの変形に追従できる性質を有している。配線部130は、例えば、導電性を有する銀ペーストに柔軟性を持たせるためのバインダを含有した材料により構成される。また電子部品140は、抵抗器、LED、コンデンサ、集積回路、コネクタなど任意の電子部品である。電子部品140は例えば導電性接着剤、ハンダ、コネクタ等により回路上に実装される。
【0032】
図に示すフレキシブル基板120は、第1領域A11と、第2領域A12とを有している。第1領域A11は、フレキシブル基板120の領域の内、電子部品140を実装して製品100を製造することが可能な領域である。第2領域A12は、フレキシブル基板120の領域の内、電子部品140を実装して製品100を製造すると、品質に問題が生じる可能性がある領域である。
【0033】
第1領域A11と、第2領域A12とは、それぞれ排他的に画定される領域である。第1領域A11および第2領域A12は、製品100を製造する場合にフレキシブル基板120が受ける力学的または熱的な負荷に応じて設定される。かかる設定は、ユーザが解析を行うことにより実現する。なおこの際、ユーザはコンピュータによるシミュレーションや有限要素法による解析など、種々の手法を用いることが出来る。
【0034】
第2領域A12は、例えばフレキシブル基板120を金型11に設置する際に、大きな変形を伴う領域を含む。大きな変形とは、例えば曲率半径が予め設定された閾値より小さい変形をいう。この場合ユーザは、回路配置を行う際に、弾性変形する領域のうち、予め設定された曲率半径未満となる領域を第1領域A11と設定し、予め設定された曲率半径以上となる領域を第2領域A12と設定し、第1領域A11に電子部品140を配置する。
【0035】
また第2領域A12は、例えばフレキシブル基板120を金型11に設置し、一体成形する際に、大きな応力を受ける領域を含む。大きな応力とは、例えば曲げ応力、引っ張り応力、圧縮応力、剪断応力および熱応力のうち少なくともいずれか一つを伴う応力であって、予め設定された閾値以上の応力である。この場合ユーザは、回路配置を行う際に、フレキシブル基板が予め設定された閾値未満の応力を受ける領域を第1領域A11と設定し、閾値以上の応力を受ける領域を第2領域A12とを設定し、第1領域A11に電子部品140を配置する。
【0036】
またユーザは、電子部品の配置に加えて、配線部130のパターンの形状、線幅または線厚みなども、上述の各領域に対応させる。すなわちユーザは、第2領域A12に実装する配線パターンを、第1領域A11に実装する配線パターンに比べて、大きな応力に耐えうるものとする。上述のように、第1領域A11と第2領域A12とを設定することにより、本実施の形態にかかる成形方法は、フレキシブル基板120と樹脂とを一体成形する製品100の信頼性の低下を抑制できる。
【0037】
ユーザは、上述のように立体形状に対応した展開形状および回路配置を決定し、決定した仕様にしたがいフレキシブル基板120を用意する。ユーザは、フレキシブル基板120を用意すると、これを用いて次の工程である成形工程に進む。
【0038】
次に、成形工程について具体的に説明する。図5は、実施の形態にかかる成形工程を示す第1の図である。図5には、図1に示した成形システム1およびフレキシブル基板120が示されている。図5に示す成形システム1において、射出成形装置10は、樹脂ペレットを収容するホッパおよび樹脂ペレットを可塑化して金型に樹脂を注入するスクリュー部のみが模式的に示され、その他の部分は省略されている。また金型11は断面が模式的に示されている。また金型に接続する吸引装置12も理解容易にするために模式的に示されている。
【0039】
ここで金型11について説明する。図5に示す金型11は、開いた状態すなわち固定型11Fと可動型11Mとが離間した状態である。金型11のうち、固定型11Fは、射出成形装置10の樹脂を注入する注入口に接続し、注入口から樹脂を受け入れる。また固定型11Fは凹部を有している。固定型11Fが有する凹部は、製品100の形状を形成するキャビティであり、金型11が閉じた状態になった場合に、可動型11Mが有する凸部との間に樹脂充填空間を形成する。金型11は樹脂充填空間に樹脂が充填されると、図3に示したボウル型の製品100が形成される。
【0040】
可動型11Mは、凸部を有し、金型11が閉じた状態になった場合に、固定型11Fが有する凹部との間に樹脂充填空間を形成する。また可動型11Mが有する凸部はフレキシブル基板120が接触する。可動型11Mの凸部においてフレキシブル基板120が接触する領域には、複数の孔11Hが設けられている。複数の孔11Hは、可動型11M内において合流した後に、吸引装置12に接続している。そのため複数の孔11Hは、吸引装置12が動作すると、孔11Hの外から空気を吸い込む。なお、孔11Hは、図に示したような管状のものでもよいし、ポーラス状に加工されたものでもよい。
【0041】
以上の構成において、ユーザは、フレキシブル基板120を固定型11Fと可動型11Mとの間に挿入し、フレキシブル基板120を金型11に設置する。このとき、フレキシブル基板120の姿勢は、ベースフィルム121が可動型11Mに対向し、配線部130および電子部品140が固定型11Fに対向する状態である。
【0042】
図6を参照して次の工程を説明する。図6は、実施の形態にかかる成形工程を示す第2の図である。図5に示した工程の後、ユーザは、フレキシブル基板120を可動型11Mの凸部に沿って設置する。すなわちユーザは、金型11が開いている状態で、金型11に沿ってフレキシブル基板120を立体形状に弾性変形させる。フレキシブル基板120が凸部に沿って設置されると、孔11Hがフレキシブル基板120によって塞がれる。この状態で、吸引装置12を動作させる。すると、可動型11Mは、フレキシブル基板120を吸引することにより保持する。なお、ユーザは、図5および図6の工程を所定のロボットや搬送装置などを利用して実行してもよい。
【0043】
図7を参照して次の工程を説明する。図7は、実施の形態にかかる成形工程を示す第3の図である。図7は、フレキシブル基板120を保持した状態で射出成形装置10が金型を閉じたうえで、閉じた金型11に形成されている樹脂充填空間11Cに樹脂を注入している状態を示している。
【0044】
上述の状態において、吸引装置12は、動作を継続し、フレキシブル基板120を保持している。なお、樹脂充填空間11Cに樹脂が充填され、充填された樹脂の固化が進むと、フレキシブル基板120は吸引装置12による保持がなくても平板に復元する復元力が樹脂により抑え込まれる。あるいは、フレキシブル基板120は高温の樹脂が接触することにより加熱され、これにより塑性変形する。そのためフレキシブル基板120を吸引装置12により保持する必要がなくなる。このような場合に、吸引装置12は動作を停止する。
【0045】
図8を参照して次の工程を説明する。図8は、実施の形態にかかる成形工程を示す第4の図である。樹脂が樹脂充填空間11Cに充填された後に、充填された樹脂が冷却されることにより固化すると、射出成形装置10は、金型11を開く。ユーザは開いた金型11から、樹脂とフレキシブル基板120とが一体成形された製品100を取り出す。なおユーザは、製品100を取り出す工程を、所定のロボットや取出装置などを利用して実行してもよい。
【0046】
以上、実施の形態にかかる成形方法および成形システムについて説明した。上述の構成により、実施の形態にかかる成形方法は、電子部品を含むフレキシブル基板と樹脂とを立体形状に一体成形できる。
【0047】
次に、図9を参照して、基板保持装置の別の態様について説明する。図9は、成形システムの第2の例を示す図である。図に示す金型11は、固定型11Fが挟持装置13を有している。
【0048】
挟持装置13は、固定型11Fに埋設された複数のピン13Aが樹脂充填空間11C内に突出可能に構成されている。挟持装置13はアクチュエータ(不図示)を有し、複数のピン13Aを固定型11Fから突出させ、あるいは突出させたピンを収納する。すなわち挟持装置13は、ピン13Aを突出させ、複数のピン13Aと可動型11Mとによりフレキシブル基板120を挟持する。これにより、成形システム1はフレキシブル基板120を保持する。
【0049】
図9は、金型11が閉じた状態であって、挟持装置13がフレキシブル基板120を挟持している状態を示している。また図9は挟持装置13がフレキシブル基板120を挟持した状態で、射出成形装置10が樹脂を注入している。ここで、挟持装置13は、樹脂充填空間11Cに樹脂の充填が開始された後であって、充填が完了する前に、挟持を解除する。このような動作により、挟持装置13はフレキシブル基板120を保持するとともに、樹脂が完全に充填される前にピン13Aを収納することにより、樹脂を所望の形状に成形できる。
【0050】
なお、挟持装置13を採用する場合、金型11が開いた状態においてフレキシブル基板120を保持しておく必要が生じるが、この場合例えば吸引装置12を併せて採用してもよい。また吸引装置12に代えて、フレキシブル基板120と可動型11Mとが接触する面に仮留めするための粘着剤を利用してもよい。
【0051】
次に、図10を参照して、基板保持装置のさらに別の態様について説明する。図10は、成形システムの第3の例を示す図である。図に示す金型11は、可動型11Mが挟持装置13を有している点が、図9における成形システムと異なる。また挟持装置13が有するピンは、イジェクタピンを兼ねている点が、図9における成形システムと異なる。
【0052】
挟持装置13は、可動型11Mに埋設された複数のピン13Bが樹脂充填空間11C内に突出可能に構成されている。挟持装置13はアクチュエータ(不図示)を有し、複数のピン13Bを可動型11Mから突出させ、あるいは突出させたピンを収納する。挟持装置13は、ピン13Bを突出させ、複数のピン13Bと固定型11Fとによりフレキシブル基板120を挟持する。これにより、成形システム1はフレキシブル基板120を保持する。
【0053】
図10は、金型11が閉じた状態であって、挟持装置13がフレキシブル基板120を挟持している状態を示している。また図10は挟持装置13がフレキシブル基板120を挟持した状態で、射出成形装置10が樹脂を注入している。ここで、挟持装置13は、樹脂充填空間11Cに樹脂の充填が開始された後であって、充填が完了する前に、挟持を解除する。なお、図10においてゲート部分のフレキシブル基板は、樹脂の流入を妨げないように孔の空いた構造となっている。このような構造を採用することにより、成形システム1は、例えばピンゲートにより樹脂を注入できる。ただし成形品においてこのような孔の空いた構造を採用しない場合は、サイドゲートにより樹脂を注入してもよい。また成形システム1においては、フレキシブル基板120が樹脂の注入を妨げないように、フィルムゲートやサブマリンゲートなどその他の方式を採用してもよい。
【0054】
挟持を解除した後、ピン13Bは、樹脂充填空間11Cから待避する。その後、樹脂の充填が完了し、充填した樹脂は固化する。その後、成形システム1は、可動型11Mを固定型11Fから分離させる。その際に、ピン13Bは、固化した樹脂(成形品)を可動型11Mから分離させるイジェクタピンとして機能する。このような動作により、挟持装置13はフレキシブル基板120を保持するとともに、樹脂が完全に充填される前にピン13Bを収納する。またピン13Bは離型の際にイジェクタピンとして機能する。
【0055】
以上、基板保持装置の態様について説明した。上述のように、成形システム1においては、フレキシブル基板120は、樹脂充填空間11Cにおいて、固定型11Fに沿って固定することもできるし、可動型11Mに沿って固定することもできる。また挟持装置13は、固定型11Fから突出する複数のピン13Aに対応する位置の、可動型11Mにも設けられていてもよい。このような構成により、成形システム1は、フレキシブル基板120を金型11に密着させることなく、樹脂充填空間11Cの中空に挟持できる。なお、図9および図10に示した例では金型11を開く際に、別途フレキシブル基板を保持する機構を有していてもよい。
【0056】
次に図11を参照してフレキシブル基板120の変形例について説明する。図11は、実施の形態の変形例にかかるフレキシブル基板の断面図である。図11に示すフレキシブル基板120は、図3に示したフレキシブル基板120に、補強板150および補強剤160を追加したものの断面図である。図に示すフレキシブル基板120は、第1領域A11と、第2領域A12とに分けられる。第1領域A11は、配線部130の上に電子部品140が実装されている。
【0057】
図11に示すフレキシブル基板120は、ベースフィルム121の配線部130が実装されている面とは反対側の面に補強板150が設けられている。補強板150は、例えば粘着剤または接着剤によりベースフィルム121に貼付される。図11に示す補強板150は、電子部品140が実装された面の反対側に貼付されている。このように、第1領域A11に補強板150を設けることにより、フレキシブル基板120は、変形時や射出成形時に電子部品140の実装面が受ける力学的な負荷を緩和させることができる。
【0058】
また図11に示すフレキシブル基板120は、電子部品140を覆うように、補強剤160が添加されている。補強剤160は例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とした材料により構成される。このように、第1領域A11に補強剤160を設けることにより、フレキシブル基板120は、変形時や射出成形時に電子部品140の実装面が受ける力学的な負荷を緩和させることができる。また補強剤160は、電子部品140が受ける熱的な負荷を低減する。
【0059】
次に、図12を参照して、フレキシブル基板の他の変形例について説明する。図12は、フレキシブル基板の他の形態の例を示す第1の図である。図12の上部には、展開形状のフレキシブル基板200が示されている。図12の下部には、立体形状に変形した状態のフレキシブル基板200が示されている。
【0060】
展開形状に示すように、フレキシブル基板200は、水平方向に延びる長尺状の矩形部分の上辺に、8個の同形状の二等辺三角形が並んだ形状を有している。そして隣接する二等辺三角形の間は、V字状のノッチ部211を有している。
【0061】
またフレキシブル基板200は、矩形部分が第1領域A21に設定され、三角形の部分が第2領域A22に設定されている。またフレキシブル基板200は、第1領域A21と第2領域A22とに跨がって配線部220を有するとともに、第1領域A21における配線部220の上に、電子部品230を有している。
【0062】
このような展開形状を有するフレキシブル基板200は、図12の下部に示すように、半球体形状に変形できる。このとき、ノッチ部211はより鋭角に変形する。このような構成により、フレキシブル基板200は、立体形状を形成できる。またこのような立体形状に対応した金型を用いて、上述の成形方法により一体成形することにより、ユーザは、フレキシブル基板と熱可塑性樹脂とを一体成形して立体形状を形成することができる。
【0063】
次に、図13を参照して、フレキシブル基板の他の変形例についてさらに説明する。図13は、フレキシブル基板の他の形態の例を示す第2の図である。図13の上部には、展開形状のフレキシブル基板300が示されている。図13の下部には、立体形状に変形した状態のフレキシブル基板300が示されている。
【0064】
展開形状に示すように、フレキシブル基板300は、円盤状のベースフィルム310において、複数の円弧状のスリット部311が設けられている。ただし、ベースフィルム310の中心部はスリット部311が設けられていない領域が存在する。
【0065】
またフレキシブル基板300は、中心部が第1領域A31に設定され、それ以外の部分が第2領域A32に設定されている。またフレキシブル基板300は、第1領域A31と第2領域A32とに跨がって配線部320を有する。配線部320は、ベースフィルム310の最外周部から中心までを、スリット部311に干渉しないようにクランク状に敷設されている。またフレキシブル基板300は、中心部の第1領域A31において配線部320の上に、電子部品330を有している。
【0066】
このような展開形状を有するフレキシブル基板300は、図13の下部に示すように、円錐台形状に変形できる。このとき、スリット部311は拡げられるため、ノッチ部312に変形する。このような構成により、フレキシブル基板300は、立体形状を形成できる。またこのような立体形状に対応した金型を用いて、上述の成形方法により一体成形することにより、ユーザは、フレキシブル基板と熱可塑性樹脂とを一体成形して立体形状を形成することができる。
【0067】
次に、図14図15および図16を参照して、本実施の形態にかかる成形方法により製造される成形品の応用例について説明する。図14は、自動車に搭載される入力装置の例を示す図である。
【0068】
図14には、自動車900のセンターコンソールが示されている。センターコンソールは、ディスプレイ910および入力装置400を有している。ディスプレイ910は、地図データやオーディオ情報などの種々の情報を表示する。
【0069】
入力装置400は、ディスプレイ910に表示される項目を操作するための入力装置であって、例えば静電容量式のタッチセンサである。入力装置400は、運転者が手のひらを乗せて操作できるように、なだらかな凸形状を有している。入力装置400の表面は樹脂で覆われており、表面の樹脂の下には、一体成形されたフレキシブル基板が存在する。なお、ここでは本実施の形態の具体例を説明するために入力装置400を示すものであり、入力装置400の機能自体の説明は省略する。
【0070】
図15は、入力装置400に適用されるフレキシブル基板の形状の第1の例を示す図である。図15の上部には、展開形状のフレキシブル基板410が示されている。図15の下部には、立体形状に変形した状態のフレキシブル基板410が一体成形された入力装置400が示されている。
【0071】
展開形状に示すように、フレキシブル基板410は、矩形状のベースフィルム411において、4辺の中央部から、矩形の中心部に向かって4つのノッチ部412が設けられている。
【0072】
またフレキシブル基板410は、中央部が第1領域A41に設定され、それ以外の部分が第2領域A42に設定されている。フレキシブル基板410は、第1領域A41と第2領域A42とに跨がって配線部を有することができる。またフレキシブル基板410は、中央部の第1領域A41において電子部品330を実装できる。
【0073】
このような展開形状を有するフレキシブル基板410は、図15の下部に示すように、なだらかな凸形状を有する立体形状に変形できる。このとき、ノッチ部412は、より鋭角に変形する。
【0074】
このように、フレキシブル基板410は立体形状を形成できる。またこのような立体形状に対応した金型を用いて、ユーザは、上述の成形方法により入力装置400を一体成形により製造できる。
【0075】
図16は、入力装置400に適用されるフレキシブル基板の形状の第1の例を示す図である。図16の上部には、展開形状のフレキシブル基板420が示されている。図16の下部には、立体形状に変形した状態のフレキシブル基板420が一体成形された入力装置400が示されている。
【0076】
展開形状に示すように、フレキシブル基板420は、矩形状のベースフィルム421において、中央部から矩形の各辺に向かって延びるように形成されたスリット部422が設けられている。
【0077】
またフレキシブル基板420は、4つの角部付近が第1領域A41に設定され、それ以外の部分が第2領域A42に設定されている。フレキシブル基板420は、第1領域A41と第2領域A42とに跨がって配線部を有することができる。またフレキシブル基板420は、4つの角部に設定された第1領域A41において電子部品330を実装できる。
【0078】
このような展開形状を有するフレキシブル基板420は、図16の下部に示すように、なだらかな凸形状を有する立体形状に変形できる。このとき、スリット部422は、拡げられるため、ノッチ部423に変形する。
【0079】
このように、フレキシブル基板420は立体形状を形成できる。またこのような立体形状に対応した金型を用いて、ユーザは、上述の成形方法により入力装置400を一体成形により製造できる。なお、図14図16において説明したフレキシブル基板は、あくまで一例を示すものであって、フレキシブル基板の形状を具体的に限定するものではない。フレキシブル基板の形状は、当業者が想到しうる範囲において様々なものが採用され得る。
【0080】
以上、実施の形態について説明したが、実施の形態にかかる成形方法および成形システムは、上述の内容に限られない。フレキシブル基板は、回路をベースフィルムの両面に有していてもよい。またフレキシブル基板は、両面に回路を有する場合に、両面の回路を接続するスルーホールをさらに有していてもよい。またフレキシブル基板は、多層基板であってもよい。
【0081】
射出成形装置は、例えばダイスライドインジェクション方式のものであってもよい。ダイスライドインジェクション方式の射出成形装置を採用する場合、射出成形装置は、1次側でフレキシブル基板を保持する工程を実行し、2次側でフレキシブル基板と一体成形する工程を実行してもよい。このような工程を採用することにより、実施の形態にかかる成形方法は作業効率を向上させることができる。
【0082】
以上、実施の形態にかかる成形方法は、フレキシブル基板における電子部品や配線部に生じる応力を選択的に抑制するとともに、シンプルな工程によりフレキシブル基板と樹脂との一体成形を実行できる。よって、実施の形態によれば、電子部品を含むフレキシブル基板と樹脂とを立体形状に一体成形するインサート成形方法および成形システムを提供できる。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 成形システム
10 射出成形装置
11 金型
11C 樹脂充填空間
11F 固定型
11H 孔
11M 可動型
12 吸引装置
13 挟持装置
100 製品
110 樹脂部
120 フレキシブル基板
121 ベースフィルム
122 コネクタ部
123 放射形状部
124 ノッチ部
130 配線部
140 電子部品
150 補強板
160 補強剤
200 フレキシブル基板
210 ベースフィルム
211 ノッチ部
220 配線部
230 電子部品
300 フレキシブル基板
310 ベースフィルム
311 スリット部
312 ノッチ部
320 配線部
330 電子部品
400 入力装置
410 フレキシブル基板
411 ベースフィルム
412 ノッチ部
420 フレキシブル基板
421 ベースフィルム
422 スリット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16