(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車外環境認識装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240703BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240703BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G06T7/00 650Z
G08G1/16 C
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2020135392
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2020039047
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 稔
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106511(JP,A)
【文献】特開2019-185640(JP,A)
【文献】特開2007-073058(JP,A)
【文献】特開2018-106749(JP,A)
【文献】特開2017-21780(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130639(WO,A1)
【文献】3D-LiDARとカメラを用いたリアルタイム物体位置検出,ロボティクスメカトロニクス講演会2018講演会論文集,2018年06月01日
【文献】An Object Detection and Classification Method using Radar and Camera Data Fusion,IEEE International Conference on Signal, Information and Data Processing (ICSIDP),2019年12月11日,https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/9173452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G08G 1/16
B60W 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象の輝度を特定可能な輝度画像に基づいて第1立体物の第1幅を導出する第1幅導出部と、
撮像対象の距離を特定可能な距離画像に基づいて第2立体物の第2幅を導出する第2幅導出部と、
前記第1幅と前記第2幅とが水平方向において重複する重複幅を求め、前記重複幅/前記第1幅、および、前記重複幅/前記第2幅のうち大きい方を重複度とする重複度導出部と、
前記重複度が所定の閾値以上であれば、前記第1立体物と第2立体物とを同一の特定物と判定する特定物判定部と、
を備える車外環境認識装置。
【請求項2】
前記特定物判定部は、同一の特定物と判定した前記重複度に対する前記閾値を下げる請求項1に記載の車外環境認識装置。
【請求項3】
前記特定物判定部は、前記重複度に対する前記閾値を下げた後、同一の特定物ではないと判定した前記重複度に対する前記閾値を上げる請求項2に記載の車外環境認識装置。
【請求項4】
前記特定物判定部は、同一の特定物と判定した回数に応じて前記重複度に対する前記閾値を段階的に変化させる請求項2または3に記載の車外環境認識装置。
【請求項5】
前記特定物判定部は、ワイパーの作動有無に応じて前記閾値を変化させる請求項1から4のいずれか1項に記載の車外環境認識装置。
【請求項6】
前記特定物判定部は、自車両の速度に応じて前記閾値を変化させる請求項1から5のいずれか1項に記載の車外環境認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の進行方向に存在する特定物を特定する車外環境認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、自車両の前方に位置する先行車両を検出し、先行車両との衝突による被害を軽減したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つように追従制御する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両と先行車両との衝突被害を軽減したり、自車両を先行車両に追従させる追従制御を実現するためには、まず、自車両周辺に位置する立体物が車両等の特定物であるか否か判断しなくてはならない。例えば、撮像部で撮像した輝度画像内における立体物の形状を認識して先行車両と判定したり、距離画像内における立体物の相対距離や速度を認識して先行車両と判定していた。
【0005】
しかし、立体物が自車両から遠方に位置している場合、画像中における立体物自体が占有する面積が小さくなるので、輝度画像における形状や距離画像における相対距離が揺らぎ、特定物の判定精度の低下を招いていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、特定物の判定精度を向上することが可能な、車外環境認識装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車外環境認識装置は、撮像対象の輝度を特定可能な輝度画像に基づいて第1立体物の第1幅を導出する第1幅導出部と、撮像対象の距離を特定可能な距離画像に基づいて第2立体物の第2幅を導出する第2幅導出部と、第1幅と第2幅とが水平方向において重複する重複幅を求め、重複幅/第1幅、および、重複幅/第2幅のうち大きい方を重複度とする重複度導出部と、重複度が所定の閾値以上であれば、第1立体物と第2立体物とを同一の特定物と判定する特定物判定部と、を備える。
【0008】
特定物判定部は、同一の特定物と判定した重複度に対する閾値を下げるとしてもよい。
【0009】
特定物判定部は、重複度に対する閾値を下げた後、同一の特定物ではないと判定した重複度に対する閾値を上げるとしてもよい。
【0010】
特定物判定部は、同一の特定物と判定した回数に応じて重複度に対する閾値を段階的に変化させるとしてもよい。
【0011】
特定物判定部は、ワイパーの作動有無に応じて閾値を変化させるとしてもよい。
【0012】
特定物判定部は、自車両の速度に応じて閾値を変化させるとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定物の判定精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、車外環境認識システムの接続関係を示したブロック図である。
【
図2】
図2は、車外環境認識装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、車外環境認識方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、輝度画像および距離画像を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、重複度を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、特定物判定部で参照される閾値の求め方を説明するためのグラフである。
【
図7】
図7は、閾値の変化態様を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、閾値の変化態様を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(車外環境認識システム100)
図1は、車外環境認識システム100の接続関係を示したブロック図である。車外環境認識システム100は、撮像装置110と、車外環境認識装置120と、車両制御装置130とを含む。
【0017】
撮像装置110は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んで構成され、自車両1の前方の車外環境を撮像し、少なくとも輝度の情報が含まれる輝度画像(カラー画像やモノクロ画像)を生成することができる。また、撮像装置110は、自車両1の進行方向側において2つの撮像装置110それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。撮像装置110は、自車両1の前方の検出領域に存在する立体物を撮像した輝度画像を、例えば1/60秒のフレーム毎(60fps)に連続して生成する。
【0018】
また、車外環境認識装置120は、撮像装置110から取得した輝度画像や、2の輝度画像に基づく距離画像を通じて車外の境を認識する。そして、車外環境認識装置120は、認識した車外環境と、自車両1の走行状況とに基づいて、自車両1の走行における速度制御や舵角制御を行う。車外環境認識装置120については後程詳述する。
【0019】
車両制御装置130は、ECU(Electronic Control Unit)で構成され、ステアリングホイール132、アクセルペダル134、ブレーキペダル136を通じて運転手の操作入力を受け付け、車軸に設けられた速度センサ138を参照し、操舵機構142、駆動機構144、制動機構146に伝達することで自車両1を制御する。また、車両制御装置130は、車外環境認識装置120の指示に従い、操舵機構142、駆動機構144、制動機構146を制御する。また、雨天時の走行において、車両制御装置130は、運転手の操作に応じ、自車両1のフロントガラスおよびリアガラスの汚れや不純物を拭き取るワイパー148を動作させる。
【0020】
(車外環境認識装置120)
図2は、車外環境認識装置120の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
図2に示すように、車外環境認識装置120は、I/F部150と、データ保持部152と、中央制御部154とを含んで構成される。
【0021】
I/F部150は、撮像装置110、および、車両制御装置130との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持する。
【0022】
中央制御部154は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス156を通じて、I/F部150、データ保持部152等を制御する。また、本実施形態において、中央制御部154は、画像取得部160、距離画像生成部162、立体物特定部163、第1幅導出部164、第2幅導出部166、重複度導出部168、特定物判定部170としても機能する。以下、本実施形態に特徴的な、自車両1前方の立体物を抽出し、先行車両等の特定物を判定する車外環境認識方法について、当該中央制御部154の各機能部の動作も踏まえて詳述する。
【0023】
(車外環境認識方法)
図3は、車外環境認識方法の流れを示すフローチャートである。車外環境認識装置120は、所定の割込時間毎に当該車外環境認識方法を実行する。車外環境認識方法では、まず、画像取得部160が、複数の輝度画像を取得する(S200)。距離画像生成部162が、距離画像を生成する(S202)。立体物特定部163が、立体物を特定する(S203)。第1幅導出部164が、撮像対象の輝度を特定可能な輝度画像に基づいて第1立体物の第1幅を導出する(S204)。第2幅導出部166が、撮像対象の距離を特定可能な距離画像に基づいて第2立体物の第2幅を導出する(S206)。重複度導出部168が、第1幅と第2幅とが画像水平方向において重複する領域の幅である重複幅を求める。そして、重複度導出部168は、重複幅/第1幅、および、重複幅/第2幅のうち大きい方を重複度とする(S208)。特定物判定部170が、重複度が所定の閾値以上であれば、第1立体物と第2立体物とを同一の特定物と判定する(S210)。以下、車外環境認識方法の各処理について詳細に説明し、本実施形態の特徴と無関係な処理については説明を省略する。なお、本実施形態において「/」は除算を意味し、例えば、重複幅/第1幅は、重複幅を第1幅で除算することを示す。
【0024】
(画像取得処理S200)
図4(
図4A~
図4C)は、輝度画像および距離画像を説明するための説明図である。画像取得部160は、撮像装置110で光軸を異として撮像された複数(ここでは2)の輝度画像をそれぞれ取得する。ここで、画像取得部160は、輝度画像180として、
図4Aに示す、自車両1の比較的右側に位置する撮像装置110で撮像された第1輝度画像180aと、
図4Bに示す、自車両1の比較的左側に位置する撮像装置110で撮像された第2輝度画像180bとを取得したとする。
【0025】
図4を参照すると、撮像装置110の撮像位置の違いから、第1輝度画像180aと第2輝度画像180bとで、画像に含まれる立体物の画像位置が水平方向に異なるのが理解できる。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示す。
【0026】
(距離画像生成処理S202)
距離画像生成部162は、画像取得部160が取得した、
図4Aに示す第1輝度画像180aと、
図4Bに示す第2輝度画像180bとに基づいて、
図4Cのような、撮像対象の距離を特定可能な距離画像182を生成する。
【0027】
具体的に、距離画像生成部162は、所謂パターンマッチングを用いて視差、および、任意のブロックの画像内の位置を示す画像位置を含む視差情報を導出する。具体的に、一方の輝度画像(ここでは第1輝度画像180a)から任意に抽出したブロックに対応するブロックを他方の輝度画像(ここでは第2輝度画像180b)から検索する。ここで、ブロックは、例えば、水平4画素×垂直4画素の配列で表される。また、パターンマッチングは、一方の輝度画像から任意に抽出したブロックに対応するブロックを他方の輝度画像から検索する手法である。
【0028】
例えば、パターンマッチングにおけるブロック間の一致度を評価する関数として、輝度の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等の手法がある。
【0029】
距離画像生成部162は、このようなブロック単位の視差導出処理を、例えば、600画素×200画素の検出領域に映し出されている全てのブロックについて行う。ここでは、ブロックを4画素×4画素としているが、ブロック内の画素数は任意に設定することができる。
【0030】
ただし、距離画像生成部162は、検出分解能単位であるブロック毎に視差を導出することはできるが、そのブロックがどのような立体物の一部であるかを認識できない。したがって、視差情報は、立体物単位ではなく、検出領域における検出分解能単位、例えばブロック単位で独立して導出されることとなる。ここでは、説明の便宜上、視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0031】
距離画像生成部162は、距離画像182におけるブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて三次元の位置情報に変換し、相対距離を導出する。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、ブロックの視差からそのブロックの撮像装置110に対する相対距離を導出する方法である。
【0032】
車外環境認識装置120では、このように導出された輝度画像180および距離画像182を通じて車外環境を認識し、例えば、自車両1より前方の立体物を、先行車両等の特定物と判定する。しかし、
図4Aにおける立体物184、および、
図4Cにおける立体物186が自車両1から遠方に位置している場合、画像中における立体物自体が占有する面積が小さく、輝度画像180における形状や距離画像182における相対距離が揺らぐので、特定物の判定精度の低下を招いていた。そこで、輝度画像180および距離画像182それぞれで特定された立体物同士が重複する重複度を導出し、その重複度に応じて両立体物が同一の特定物であるか否か判定する。
【0033】
(立体物特定処理S203)
立体物特定部163は、まず、自車両1前方の路面を特定する。そして、立体物特定部163は、特定した路面の鉛直上方に高さを有する立体物を特定する。具体的に、立体物特定部163は、路面からの高さが所定距離(例えば0.3m)以上に位置するブロックを、路面から高さ方向に突出している立体物の候補とする。立体物特定部163は、路面の鉛直上方に高さを有する立体物の候補とされた複数のブロックのうち、自車両1との相対距離が等しいブロックをグループ化し、立体物として特定する。
【0034】
(第1幅導出処理S204)
第1幅導出部164は、2つの輝度画像180のうちいずれか一方、例えば、第1輝度画像180a中の所定の立体物184(第1立体物)の水平方向の幅である第1幅を導出する。第1幅は、例えば、ピクセル数や距離の換算値で表される。
【0035】
なお、輝度画像180から立体物を抽出する際には機械学習技術が用いられる。例えば、輝度画像180のエッジパターンおよび時間的変化を入力とし、一体形成されているとみなすことができる立体物を出力する。かかる機械学習技術は、既存の様々な技術を適用できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0036】
(第2幅導出処理S206)
第2幅導出部166は、距離画像182中の所定の立体物186(第2立体物)の水平方向の幅である第2幅を導出する。第2幅は、例えば、ピクセル数や距離の換算値で表される。
【0037】
ここでは、第1幅導出部164および第2幅導出部166のいずれもが、立体物184、186の水平方向の幅を導出している。これは以下の理由による。自車両1は、道路の凹凸により、ピッチ方向およびロール方向に揺動するおそれがある。一方、ヨー方向は、ピッチ方向およびロール方向ほど揺動しない。したがって、安定したヨー方向に相当する水平方向の幅を対象とすることで、特定物の判定精度を向上することができる。なお、平坦な道路では、ヨー方向に相当する水平方向の幅に代えて、または、加えて、ピッチ方向に相当する垂直方向の幅を対象とすることができるのは言うまでもない。
【0038】
(重複度導出処理S208)
図5(
図5A~
図5F)は、重複度を説明するための説明図である。重複度導出部168は、まず、第1幅導出部164が導出した第1幅190と、第2幅導出部166が導出した第2幅192とを取得し、第1幅と第2幅とが画像水平方向において重複する領域の幅である重複幅194を導出する。
【0039】
図5A~
図5Cでは、立体物184の第1幅190の方が、立体物186の第2幅192より長い。
図5Aでは、水平方向において立体物186が立体物184に含まれている。したがって、重複幅194は、第2幅192と等しくなる。
図5Bでは、水平方向において立体物184と立体物186とのそれぞれ一部が重複している。したがって、重複幅194は、第1幅190および第2幅192より短くなる。
図5Cでは、水平方向において立体物184と立体物186とが重複していない。したがって、重複幅194は0となる。
【0040】
図5D~
図5Fでは、立体物184の第1幅190の方が、立体物186の第2幅192より短い。
図5Dでは、水平方向において立体物184が立体物186に含まれている。したがって、重複幅194は、第1幅190と等しくなる。
図5Eでは、水平方向において立体物184と立体物186とのそれぞれ一部が重複している。したがって、重複幅194は、第1幅190および第2幅192より短くなる。
図5Fでは、水平方向において立体物184と立体物186とが重複していない。したがって、重複幅194は0となる。
【0041】
続いて、重複度導出部168は、重複幅が0以外の値を示す場合、すなわち、少なくとも重複していると判定した場合、重複幅194/第1幅190、および、重複幅194/第2幅192を導出し、重複幅194/第1幅190、および、重複幅194/第2幅192のうち大きい方を重複度とする。
【0042】
図5Aの例では、重複幅194/第1幅190<重複幅194/第2幅192なので、重複度は重複幅194/第2幅192(=1)となる。
図5Bの例では、重複幅194/第1幅190<重複幅194/第2幅192なので、重複度は重複幅194/第2幅192となる。
図5Cの例では、重複幅194が0なので、すなわち、重複していないので、重複度も0となる。
【0043】
図5Dの例では、重複幅194/第1幅190>重複幅194/第2幅192なので、重複度は重複幅194/第1幅190(=1)となる。
図5Eの例では、重複幅194/第1幅190>重複幅194/第2幅192なので、重複度は重複幅194/第1幅190となる。
図5Fの例では、重複幅194が0なので、すなわち、重複していないので、重複度も0となる。
【0044】
(特定物判定処理S210)
特定物判定部170は、閾値を参照して、立体物184と立体物186とが同一の特定物であるか否か判定する。
【0045】
図6は、特定物判定部170で参照される閾値の求め方を説明するためのグラフである。
図6のグラフにおける横軸は相対距離を示し、縦軸は重複度を示す。ここで、重複度は0~1の範囲で表される。かかる重複度グラフは予め準備される。
【0046】
例えば、自車両1が、事前に、所定の地域において走行し、その間に抽出した複数の立体物のうち車両に相当する特定物のみを特定して、その相対距離と重複度の実測値をプロットする。そうすると、
図6の点群を得ることができる。ここでは、相対距離が長くなる程、重複度として小さい値が生じることが理解できる。
図6において、全ての相対距離における点群の下限値以下となる直線が生成される。かかる直線が閾値196となる。したがって、閾値196は、相対距離の一次関数として表すことができる。なお、全ての相対距離における点群の下限値以下であれば、閾値196は、直線に限らず曲線、すなわち複数次の関数で表されてもよい。なお、ここでは、自車両1自体が、相対距離と重複度の実測値をプロットする例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、他の車両でプロットした相対距離と重複度の実測値を自車両1に反映するとしてもよい。
【0047】
特定物判定部170は、このようにして準備された閾値196を参照し、重複度導出部168が導出した立体物184と立体物186とが位置する相対距離における立体物184と立体物186との重複度が閾値196以上であれば、立体物184と立体物186とが同一の特定物であると判定する。
【0048】
ここでは、立体物184と立体物186とが同一の特定物であることを厳格に判定するために、閾値196として高い値を採用している。しかし、立体物184と立体物186とが同一の特定物であると判定した後にまで、閾値196を高くする必要はない。そこで、ヒステリシス機能を設け、一旦、同一の特定物と判定されれば、重複度が多少低下しても、同一の特定物として判定し続けられるようにする。
【0049】
図7、
図8は、閾値196の変化態様を説明するための説明図である。具体的に、特定物判定部170は、立体物184と立体物186とを同一の特定物と判定すると、その立体物184と立体物186との重複度を比較する閾値196を、例えば、
図7において破線で示した閾値196aから、一点鎖線で示した閾値196bに下げる。
【0050】
こうして、同一の特定物と判定された立体物184と立体物186との重複度が閾値196a近傍で揺動したとしても、少なくとも閾値196b以上となるので、その後も継続して同一の特定物と判定され易くなる。したがって、安定して特定物を判定することが可能となる。
【0051】
なお、特定物判定部170は、連続して同一の特定物と判定した回数を計数する。そして、特定物判定部170は、同一の特定物と判定した回数に応じて重複度に対する閾値196を、
図7において破線で示した閾値196a→一点鎖線で示した閾値196b→実線で示した閾値196cといったように予め準備された複数段階の閾値を段階的に下げてもよい。
【0052】
具体的に、閾値196aにより、所定回数(例えば、10回)、同一の特定物と判定されると、特定物判定部170は、同一の特定物と判定された立体物184と立体物186との重複度に対する閾値196を、例えば、
図7の閾値196aから閾値196bに下げる。さらに、閾値196bにより、所定回数(例えば、10回)、同一の特定物と判定されると、特定物判定部170は、同一の特定物と判定された立体物184と立体物186との重複度に対する閾値196を、例えば、
図7の閾値196bから閾値196cに下げる。
【0053】
こうして、立体物184と立体物186とが、同一の特定物と判定されると、閾値196が段階的に低くなり、その後も継続して同一の特定物と判定され易くなる。したがって、より安定して特定物を判定することが可能となる。
【0054】
また、閾値196が下げられているにも拘わらず、重複度が閾値196未満となり、立体物184と立体物186とが同一の特定物ではないと判定されれば、最早、その閾値196を維持すべきではない。そこで、同一の特定物と判定されなくなった場合にもヒステリシス機能を設け、一旦、同一の特定物ではないと判定され、重複度が高まらなければ、同一の特定物として判定しないこととする。
【0055】
具体的に、特定物判定部170は、閾値196が
図8において実線で示した閾値196cであった場合に、立体物184と立体物186とを同一の特定物ではないと判定すると、その立体物184と立体物186との重複度を比較する閾値196を、例えば、閾値196cから、
図8において一点鎖線で示した閾値196bに上げる。
【0056】
こうして、同一の特定物ではないと判定された立体物184と立体物186との重複度が閾値196c以上となったとしても、少なくとも閾値196b以上となるまで、同一の特定物と判定され難くなる。したがって、特定物ではない立体物を安定して排除できる。
【0057】
なお、特定物判定部170は、同一の特定物ではないと判定した回数に応じて重複度に対する閾値196を、
図8において実線で示した閾値196c→一点鎖線で示した閾値196b→破線で示した閾値196aといったように段階的に上げてもよい。
【0058】
同一の特定物と判定された立体物184と立体物186が、閾値196cにより、所定回数(例えば、10回)、同一の特定物ではないと判定されると、特定物判定部170は、同一の特定物と判定された立体物184と立体物186との重複度に対する閾値196を、例えば、
図8の閾値196cから閾値196bに上げる。さらに、閾値196bにより、所定回数(例えば、10回)、同一の特定物ではないと判定されると、特定物判定部170は、同一の特定物と判定された立体物184と立体物186との重複度に対する閾値196を、例えば、
図8の閾値196bから閾値196aに上げる。
【0059】
こうして、同一の特定物と判定された立体物184と立体物186とが、同一の特定物ではないと判定されると、閾値196が段階的に高くなり、その後も同一の特定物と判定され難くなる。したがって、特定物ではない立体物をより安定して排除できる。
【0060】
なお、降雨時における走行では、撮像装置110前方の例えばフロントガラスやレンズに雨滴が付着し輝度画像180や距離画像182がぼやける場合がある。その場合、立体物184と立体物186との重複度が本来の値より小さくなる場合がある。そうすると、特定物判定部170は、本来、同一の特定物と判定すべき立体物184と立体物186とを、同一の特定物ではないと判定するおそれがある。そこで、特定物判定部170は、雨滴の付着が想定される場合、例えば、ワイパー148が作動している場合、ワイパー148が作動していない場合より閾値196を下げるとしてもよい。かかる構成により、降雨時の走行においても、特定物を適切に判定することが可能となる。
【0061】
また、自車両1の速度が高いと、遠くに位置する特定物としての先行車両をより適切に判定しなければならないが、自車両1の速度が低いと、自車両1の速度が高い場合ほど確実に判定しなくてもよい。そこで、特定物判定部170は、自車両1の速度に応じて閾値196を変化させる。例えば、速度センサ138で検出された自車両1の速度が高いと、速度が低いときに比べ閾値196を上げ、自車両1の速度が低いと、速度が高いときに比べ閾値196を下げる。ここで、自車両1の速度に比例して線形的に、または、段階的に閾値196を変化させてもよい。こうして、自車両1の速度に拘わらず、特定物を適切に判定することが可能となる。
【0062】
そして、特定物判定部170は、重複度が所定の閾値以上となった同一の特定物が、いずれの特定物であるか特定する。例えば、特定物判定部170は、まず、距離画像182において、路面からの高さが所定距離以上に位置する複数のブロックのうち自車両1との相対距離が等しく、かつ、互いに垂直方向および水平方向の距離が近いブロックをグループ化し、例えば、先行車両の候補とする。次に、特定物判定部170は、このように特定した立体物全てを含む第1輝度画像180aにおける矩形の領域を立体物領域として特定する。ここで、矩形は、垂直方向に延伸し、立体物の左右エッジにそれぞれ接する2本の直線、および、水平方向に延伸し、立体物の上下エッジにそれぞれ接する2本の直線で構成される。
【0063】
特定物判定部170は、このように形成された立体物領域に含まれる特定物を、車両らしさを示す様々な条件に基づいて、先行車両と特定する。このように、立体物領域が先行車両と特定されると、車外環境認識装置120は、先行車両との衝突による被害を軽減したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つように制御する。
【0064】
また、特定物判定部170は、同一の特定物と判定した立体物184と立体物186の位置および速度をデータ保持部152に記憶し、位置や速度に基づいて立体物184および立体物186を追跡する。こうして、特定物判定部170は、前回のフレームで同一の特定物と判定された立体物184や立体物186を特定することが可能となる。
【0065】
本実施形態では、輝度画像および距離画像を用い、それぞれにおける立体物の重複度に応じて同一の特定物であるか否かを判定する構成により、特定物の判定精度を向上することが可能となる。
【0066】
また、コンピュータを車外環境認識装置120として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、自車両1の前方の特に遠くに位置する特定物としての先行車両を判定する例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、近傍に位置する特定物にも適用できることは言うまでもない。
【0069】
また、上述した実施形態では、2つの撮像装置110で撮像された2つの輝度画像180を用い、その一方である第1輝度画像180aと、両方に基づく距離画像182とを利用する例を挙げて説明した。しかし、輝度画像180と距離画像182とは、それぞれ独立して取得されてもよく、例えば、3つの撮像装置110の1の撮像装置110から輝度画像180を、2の撮像装置110から距離画像182を導出するとしてもよい。
【0070】
なお、本明細書の車外環境認識方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、自車両の進行方向に存在する特定物を特定する車外環境認識装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
110 撮像装置
120 車外環境認識装置
130 車両制御装置
164 第1幅導出部
166 第2幅導出部
168 重複度導出部
170 特定物判定部
180 輝度画像
182 距離画像
190 第1幅
192 第2幅
194 重複幅
196 閾値