(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/54 20060101AFI20240703BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240703BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60N2/54
B60N2/90
A47C7/14 Z
(21)【出願番号】P 2020189803
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-058495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0100110(US,A1)
【文献】特開2015-067145(JP,A)
【文献】特開2019-135135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部を支持するシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームに取付けられたシートクッションパッドと、
前記シートクッションパッドのシート下方側においてシート左右方向に沿って設けられ、シート上方側へ変位することにより前記シートクッションパッドのシート後方側の部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上部を有する骨盤サポート部と、
を備え
、
前記押上部のシート左右方向の両側部分が、当該押上部のシート左右方向の中央部分に対してシート上方側へ凸状に形成されており、
前記押上部のシート左右方向の中央部分が、シート左右方向に直線状に延びている車両用シート。
【請求項2】
前記骨盤サポート部は、シート左右方向を軸方向として回転可能に支持される被支持部を備えており、
前記骨盤サポート部は、前記被支持部を回転中心としてシート上下方向へ傾動されることで、前記押上部がシート上下方向へ移動する請求項
1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記押上部が、前記被支持部よりもシート後方側に配置されている請求項
2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートクッションパッドのシート下方側には、前記シートクッションフレームに掛け渡されていると共に前記シートクッションパッドからシート下方側への荷重が入力された際に撓み変形するバネ部が設けられ、
前記骨盤サポート部が、前記バネ部に支持されている請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項5】
着座乗員の臀部を支持するシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームに取付けられたシートクッションパッドと、
前記シートクッションパッドのシート下方側においてシート左右方向に沿って設けられ、シート上方側へ変位することにより前記シートクッションパッドのシート後方側の部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上部を有する骨盤サポート部と、
を備え、
前記骨盤サポート部は、シート左右方向を軸方向として回転可能に支持される被支持部を備えており、
前記骨盤サポート部は、前記被支持部を回転中心としてシート上下方向へ傾動されることで、前記押上部がシート上下方向へ移動し、
前記シートクッションパッドのシート下方側には、前記シートクッションフレームに掛け渡されていると共に前記シートクッションパッドからシート下方側への荷重が入力された際に撓み変形するバネ部が設けられ、
前記骨盤サポート部が、前記バネ部に支持されており、
前記バネ部には、前記被支持部が支持される支持部材が固定され、
前記シートクッションパッドには、前記支持部材が内部に配置される窪みが形成されている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、着座者の臀部から腰部にかけての補整を行うことができる骨盤クッションが開示されている。この文献に記載された骨盤クッションは、フレームと、フレームに取付けられたクッション部材と、クッション部材を覆うカバー部材と、を備えている。また、骨盤クッションは、クッション部材の3箇所にそれぞれ設けられた3つの空気袋を備えている。3つの空気袋のうち2つの空気袋は、クッション部材の左右の端部にそれぞれ設けられており、残り1つの空気袋は、クッション部材の後端部における左右の中央部に設けられている。そして、3つの空気袋内に空気が供給されて、3つの空気袋が膨張することで、クッション部材において3つの空気袋が設けられた部分が押し上げられる。これにより、着座者の臀部から腰部にかけての補整を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の乗員が着座する車両用シートでは、着座乗員の骨盤を支持しつつ体圧を分散させることが肝要ではあるが、上記特許文献1に記載された骨盤クッションでは、空気袋と対応する部分において体圧が高くなり易く、体圧を分散させることが難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、着座乗員の骨盤を支持しつつ体圧を分散させることができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用シートは、着座乗員の臀部を支持するシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームに取付けられたシートクッションパッドと、前記シートクッションパッドのシート下方側においてシート左右方向に沿って設けられ、シート上方側へ変位することにより前記シートクッションパッドのシート後方側の部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上部を有する骨盤サポート部と、を備え、前記押上部のシート左右方向の両側部分が、当該押上部のシート左右方向の中央部分に対してシート上方側へ凸状に形成されており、前記押上部のシート左右方向の中央部分が、シート左右方向に直線状に延びている。
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、シートクッションパッドがシートクッションフレームに取付けられていると共に、骨盤サポート部がシートクッションパッドの下方側に設けられている。そして、骨盤サポート部の押上部が、シート上方側へ変位すると、シートクッションパッドのシート後方側の部分がシート上方側へ向けて押し上げられる。これにより、着座乗員の骨盤を支持することができる。また、骨盤サポート部の押上部が、シートクッションパッドのシート下方側においてシート左右方向に沿って設けられていることにより、着座乗員の臀部の体圧を分散させることができる。
【0009】
請求項1記載の車両用シートによれば、骨盤サポート部の押上部のシート左右方向の両側部分が、押上部におけるシート左右方向の中央部分に対してシート上方側へ凸状に形成されている。これにより、骨盤サポート部の押上部が上昇した際に、シートクッションパッドのシート後方側の部分を着座乗員の臀部に沿う形状に押上げることができる。
【0010】
請求項2記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記骨盤サポート部は、シート左右方向を軸方向として回転可能に支持される被支持部を備えており、前記骨盤サポート部は、前記被支持部を回転中心としてシート上下方向へ傾動されることで、前記押上部がシート上下方向へ移動する。
【0011】
請求項2記載の車両用シートによれば、骨盤サポート部の被支持部を回転中心としてシート上下方向へ傾動させるという単純な構成により、押上部をシート上下方向へ移動させることができる。
【0012】
請求項3記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記押上部が、前記被支持部よりもシート後方側に配置されている。
【0013】
請求項3記載の車両用シートによれば、骨盤サポート部の押上部が、被支持部よりもシート後方側に配置されている。これにより、シートクッションパッドにおいて押上部によって押上げられる部分よりも前方側の部分の不要な押上げを抑制することができる。
【0014】
請求項4記載の車両用シートは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記シートクッションパッドのシート下方側には、前記シートクッションフレームに掛け渡されていると共に前記シートクッションパッドからシート下方側への荷重が入力された際に撓み変形するバネ部が設けられ、前記骨盤サポート部が、前記バネ部に支持されている。
【0015】
請求項4記載の車両用シートによれば、骨盤サポート部がバネ部に支持されていることにより、骨盤サポート部を設けることによる座り心地の悪化を抑制することができる。
【0016】
請求項5記載の車両用シートは、着座乗員の臀部を支持するシートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームに取付けられたシートクッションパッドと、前記シートクッションパッドのシート下方側においてシート左右方向に沿って設けられ、シート上方側へ変位することにより前記シートクッションパッドのシート後方側の部分をシート上方側へ向けて押し上げる押上部を有する骨盤サポート部と、を備え、前記骨盤サポート部は、シート左右方向を軸方向として回転可能に支持される被支持部を備えており、前記骨盤サポート部は、前記被支持部を回転中心としてシート上下方向へ傾動されることで、前記押上部がシート上下方向へ移動し、前記シートクッションパッドのシート下方側には、前記シートクッションフレームに掛け渡されていると共に前記シートクッションパッドからシート下方側への荷重が入力された際に撓み変形するバネ部が設けられ、前記骨盤サポート部が、前記バネ部に支持されており、前記バネ部には、前記被支持部が支持される支持部材が固定され、前記シートクッションパッドには、前記支持部材が内部に配置される窪みが形成されている。
【0017】
請求項5記載の車両用シートによれば、支持部材が内部に配置される窪みがシートクッションパッドに形成されていることにより、着座乗員の臀部の体圧が支持部材と対応する部分において高まることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用シートは、着座乗員の骨盤を支持しつつ体圧を分散させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】骨盤サポート装置を備えた車両用シートを模式的に示す側面図である。
【
図2】複数のSバネに支持されたフラップワイヤをシート斜め前方側から見た斜視図である。
【
図3】複数のSバネに支持されたフラップワイヤをシート斜め後方側から見た斜視図である。
【
図4】複数のSバネに支持されたフラップワイヤをシート前方側から見た正面図である。
【
図5】フラップワイヤをシート上方側から見た平面図である。
【
図6】フラップワイヤをシート前方側から見た正面図である。
【
図7】フラップワイヤをシート左側から見た左側面図であり、係止部材及びシートクッションパッドを二点鎖線で示している。
【
図8】着座乗員の臀部とフラップワイヤとの対応関係を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~
図8を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員の臀部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、を備えている。また、車両用シート10は、着座乗員の骨盤を支持するする骨盤サポート装置16を備えている。
【0022】
シートクッション12は、当該シートクッション12の骨格を構成するシートクッションフレーム18と、シートクッションフレーム18に取付けられたSバネ20と、Sバネ20の上方側に配置されていると共にシートクッションフレーム18に取付けられたシートクッションパッド22と、を備えている。
【0023】
シートクッションフレーム18は、左右方向に間隔をあけて配置され前後方向に延びる図示しない左右一対のサイドフレーム部と、左右一対のサイドフレーム部の前端側を左右方向につなぐ前フレーム部24と、左右一対のサイドフレーム部の後端側を左右方向につなぐ後フレーム部26と、を備えている。前フレーム部24及び後フレーム部26は、一例として左右方向を軸方向とする筒状に形成されている。
【0024】
図2~
図4に示されるように、バネ部としてのSバネ20は、棒状の鋼材が折り曲げられること等により形成されている。ここで、本実施形態では、4本のSバネ20が左右方向に並んで設けられている。4本のSバネ20の後方側の端部は、下方側が開放されたU字状に湾曲された後係止部20Aとされている。この後係止部20Aは、シートクッションフレーム18の後フレーム部26(
図1参照)に係止されるようになっている。また、4本のSバネ20の後係止部20Aの前方側の部分は、板状に形成された接続プレート28を介して左右方向に接続されている。
【0025】
また、4本のSバネ20は、後係止部20Aの前方側の下端から前方側へ向かうにつれて下方側へ傾斜して延びる傾斜部20Bを備えている。この傾斜部20Bの前後方向の中間部は、左右方向に屈曲されている。左側の2本の傾斜部20Bは、板状に形成された支持プレート30を介して左右方向につながれている。また、右側の2本の傾斜部20Bは、板状に形成された支持プレート30を介して左右方向につながれている。左側の支持プレート30における左側の端部及び右側の支持プレート30における右側の端部には、後述するフラップワイヤ36の一部が係止される支持部材32がそれぞれ固定されている。この支持部材32は、支持プレート30及び傾斜部20Bに対して上方側へ突出している。
【0026】
また、4本のSバネ20は、傾斜部20Bの前端から前方側へ向けて延びる水平部20Cを備えている。この水平部20Cの前後方向の中間部は、左右方向に屈曲されている。さらに、4本のSバネ20の水平部20Cの前端部は、前係止部34を介して左右方向につながれている。この前係止部34は、シートクッションフレーム18の前フレーム部24(
図1参照)に係止されるようになっている。
【0027】
そして、
図1~
図4に示されるように、4本のSバネ20がシートクッションフレーム18の後フレーム部26と前フレーム部24との間に掛け渡された状態で、下方側への荷重がシートクッションパッド22を介して4本のSバネ20入力されると、当該4本のSバネ20が撓み変形するようになっている。
【0028】
図1及び
図7に示されるように、シートクッションパッド22は、ウレタンフォーム等を用いて形成されている。このシートクッションパッド22は、4本のSバネ20(
図2参照)及び後述するフラップワイヤ36に沿って配置された状態でシートクッションフレーム18に取付けられている。なお、シートクッションパッド22における着座乗員側の面は、図示しない表皮材に覆われている。また、
図7に示されるように、シートクッションパッド22の下部には、後述する左右一対の支持部材32が内部に配置される窪み22Aが形成されている。この窪み22Aは、下方側が開放された構成となっている。
【0029】
図1~
図4に示されるように、骨盤サポート装置16は、4本のSバネ20の上方側かつシートクッションパッド22の下方側に配置されていると共に当該4本のSバネ20に一対の支持プレート30等を介して支持された骨盤サポート部としてのフラップワイヤ36を備えている。また、骨盤サポート装置16は、アクチュエータ38と、フラップワイヤ36とアクチュエータ38とをつなぐケーブル40と、を備えている。
【0030】
図5~
図7に示されるように、フラップワイヤ36は、棒状に形成された複数の鋼材が溶接等により接合されることにより形成されている。このフラップワイヤ36は、左右方向に延びる第1延在部36Aと、第1延在部36Aの左右の両端から上方側へ向けてそれぞれ傾斜して延びる左右一対の第2延在部36Bと、を備えている。また、フラップワイヤ36は、左右一対の第2延在部36Bにおける第1延在部36Aとは反対側において上方側へ凸状となるように湾曲された左右一対の湾曲部36Cと、左右一対の湾曲部36Cにおける第2延在部36Bとは反対側の端から下方側へ向けてそれぞれ延びる左右一対の第3延在部36Dと、を備えている。さらに、フラップワイヤ36は、左右一対の第3延在部36Dの下端から前方側へ向けてそれぞれ延びる左右一対の第4延在部36Eと、左右一対の第4延在部36Eの前端からシートクッション12(
図1参照)の左右方向の中央部側へそれぞれ延びる左右一対の被支持部36Fと、を備えている。
【0031】
ここで、第1延在部36A、左右一対の第2延在部36B及び左右一対の湾曲部36Cは、シートクッションパッド22の後方側の部分22B(
図1参照)を上方側へ向けて押上げる押上部42となっている。この押上部42の左右方向の両側部分42Aは、当該押上部42におけるシート左右方向の中央部分42Bに対してシート上方側へ凸状となっている。換言すると、
図8に示されるように、押上部42の形状は、着座乗員Pの臀部P1の形状に対応する形状となっている。なお、押上部42の左右方向の両側部分42Aは左右一対の第2延在部36B及び左右一対の湾曲部36Cに対応している。また、押上部42におけるシート左右方向の中央部分42Bは第1延在部36Aに対応している。押上部42におけるシート左右方向の中央部分42Bの長さ寸法W、及び、押上部42の左右方向の両側部分42Aの中央部分42Bに対する高さHは、着座乗員Pの平均的な体格を考慮して設定されている。
【0032】
また、フラップワイヤ36は、左右一対の第4延在部36Eの前後方向の中間部を左右方向につなぐ接続部36Gを備えている。さらに、フラップワイヤ36は、第1延在部36Aの左右方向の中間部と接続部36Gの左右方向の中間部とをつなぐ左右一対の補剛部36Hを備えている。左右一対の補剛部36Hは、シート右側面視で略L字状に屈曲されており、互いに左右方向に間隔をあけて配置されている。
【0033】
以上説明したフラップワイヤ36は、当該フラップワイヤ36の左右一対の被支持部36Fが左右一対の支持部材32に係止されることで4本のSバネ20に支持されている。また、フラップワイヤ36の左右一対の被支持部36Fが左右一対の支持部材32に係止されている状態では、左右一対の被支持部36Fが左右方向を軸方向として回転可能となっている。これにより、フラップワイヤ36が、被支持部36Fを回転中心としてシート上下方向へ傾動されるようになっている。
【0034】
図1に示されるように、アクチュエータ38は、一例としてモータアクチュエータである。そして、車両用シート10に着座した乗員がスイッチ等を操作することによりアクチュエータ38が作動すると、ケーブル40が引かれる。これにより、フラップワイヤ36が傾動して、押上部42が上昇するようになっている。
【0035】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10では、着座乗員がスイッチ等を操作することにより、アクチュエータ38が作動すると、フラップワイヤ36が傾動して、当該フラップワイヤ36の押上部42が上昇する。これにより、シートクッションパッド22の後方側の部分22Bがフラップワイヤ36の押上部42によって上方側へ押し上げられる。これにより、シートクッション12に着座した乗員の骨盤が支持される。なお、
図1においては、シートクッションパッド22の後方側の部分22Bがフラップワイヤ36の押上部42によって上方側へ押し上げられた状態が二点鎖線で示されている。
【0037】
ここで、
図1~
図4に示されるように、本実施形態では、フラップワイヤ36の押上部42が、シートクッションパッド22の下方側において左右方向に沿って途切れなく設けられていることにより、着座乗員の臀部の体圧を左右方向に沿って分散させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、フラップワイヤ36の押上部42の左右方向の両側部分42Aが中央部分42Bに対して上方側へ凸状に形成されている。これにより、
図1及び
図8に示されるように、フラップワイヤ36の押上部42が上昇した際に、シートクッションパッド22の後方側の部分22Bを着座乗員Pの臀部P1に沿う形状に押上げることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、フラップワイヤ36を被支持部36Fを回転中心として上下方向へ傾動させるという単純な構成により、押上部42を上下方向へ移動させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、フラップワイヤ36の押上部42が、被支持部36Fよりも後方側に配置されている。これにより、シートクッションパッド22において押上部42によって押上げられる部分よりも前方側の部分の不要な押上げを抑制することができる。すなわち、シートクッション12において着座乗員の骨盤を支持するために必要な部分のみを押上げることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、フラップワイヤ36が4本のSバネ20に支持されている。これにより、フラップワイヤ36にバネの機能を持たせなかったとしても、当該フラップワイヤ36を設けることによる座り心地の悪化を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、
図7に示されるように、左右一対の支持部材32が内部に配置される窪み22Aが、シートクッションパッド22の下部に形成されている。これにより、着座乗員の臀部の体圧が支持部材32と対応する部分において高まることを抑制することができる。すなわち、乗員がシートクッション12に着座した際における異物感を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、左右一対の支持部材32が内部に配置される窪み22Aをシートクッションパッド22に形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持部材32の配置や構成によっては、この窪み22Aを形成しない構成としてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、フラップワイヤ36を4本のSバネ20に支持させた構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フラップワイヤ36にバネ性を持たせて、当該フラップワイヤ36をシートクッションフレーム18に支持させた構成としてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態では、フラップワイヤ36を被支持部36Fを回転中心として上下方向へ傾動させることにより、押上部42を上下方向へ移動させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フラップワイヤ36に対応する部材の全体が上下方向へ移動することにより、当該部材において押上部42と対応する部分が上下方向へ移動するように構成してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、フラップワイヤ36の押上部42の左右方向の両側部分42Aを中央部分42Bに対して上方側へ凸状に形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。フラップワイヤ36の押上部42の形状は、シートクッションパッド22の構成等を考慮して適宜設定すればよい。
【0047】
さらに、本実施形態では、フラップワイヤ36を棒状の鋼材を用いた構成とした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フラップワイヤ36と対応する部材の一部分に板状の部材を用いた構成としてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、フラップワイヤ36をアクチュエータ38を用いて傾動させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、着座乗員がレバーを操作して、このレバーの操作力がフラップワイヤ36に伝達されることで、当該フラップワイヤ36が傾動するように構成してもよい。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 車両用シート
12 シートクッション
18 シートクッションフレーム
20 Sバネ(バネ部)
22 シートクッションパッド
22A 窪み
22B シートクッションパッドのシート後方側の部分
32 支持部材
36 フラップワイヤ(骨盤サポート部)
36F 被支持部
42 押上部
42A 押上部のシート左右方向の両側部分
42B 押上部のシート左右方向の中央部分
P 着座乗員
P1 臀部