(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】コンクリート圧送管の配置構造
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
E04G21/04
(21)【出願番号】P 2020193838
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】羽生 知伸
(72)【発明者】
【氏名】山本 達也
(72)【発明者】
【氏名】大橋 永一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大介
(72)【発明者】
【氏名】松崎 宏亘
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-032204(JP,U)
【文献】特開平11-117210(JP,A)
【文献】特開平05-214760(JP,A)
【文献】実開平06-044319(JP,U)
【文献】実開平06-065561(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート供給部から通行路を横切ってコンクリート被供給部までコンクリートを圧送するコンクリート圧送管の配置構造であって、
前記通行路に形成された溝内に前記コンクリート圧送管の一部が配置され、前記
溝の上部の開口は脱着自在な蓋体によって覆われて
おり、
前記溝は、その底面が歩道を横切る方向の一方に向けて低くなるように傾斜していることを特徴とするコンクリート圧送管の配置構造。
【請求項2】
前記蓋体に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート圧送管の配置構造。
【請求項3】
前記溝の底面は前記コンクリート供給部側が低くなって前記通行路を横切る方向に傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート圧送管の配置構造。
【請求項4】
前記溝の底面の最も低い箇所を含む部分に雨水浸透升が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート圧送管の配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート圧送管の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物を建造する際に、敷地が狭いなどのために、敷地内にコンクリートポンプ車などの配置することが不可能である場合、敷地外の車道などにコンクリートポンプ車などを配置する必要がある。この場合、コンクリート車から延びるコンクリート圧送管は歩道などの通行路を横切るように配置せざるを得ないことがある。
【0003】
コンクリート圧送管が歩道を横切る場合、歩行者などが歩道を安全に通行することができるように、歩道に鉄板などを敷き、この鉄板の上にコンクリート圧送管を固定し、さらに、これらを覆うスロープなどを設置することが多い。これにより、歩行者などはスロープ上を通行することにより、コンクリート圧送管の存在に関わらず歩道を安全に通行することが可能となる。
【0004】
なお、例えば、特許文献1には、コンクリート圧送管を支持するための支持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように歩道にスロープを設置する場合、スロープの上り下がりを通行者に強いることになり、特に乳母車や車椅子などを使用する通行者に不便をかけるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、コンクリート圧送管が横切る通行路を通行者が良好に通行することが可能なコンクリート圧送管の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンクリート供給部から通行路を横切ってコンクリート被供給部までコンクリートを圧送するコンクリート圧送管の配置構造であって、前記通行路に形成された溝内に前記コンクリート圧送管の一部が配置され、前記溝の上部の開口は脱着自在な蓋体によって覆われており、前記溝は、その底面が歩道を横切る方向の一方に向けて低くなるように傾斜していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、通行路に形成された溝内にコンクリート圧送管の一部が配置されており、溝の上部の開口は蓋体で覆われているので、通行路を通行する通行者は、蓋体の上を通行することができ、通常の通行と同様に良好に通行することが可能となる。また、通行路を通行する通行者や通行路を横切る車両の往来を妨げることなく、コンクリートの圧送を安全に行うことが可能となる。
【0010】
本発明において、前記蓋体に貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0011】
この場合、貫通孔を介して、作業者などが、蓋体を取り外すことなく、コンクリート圧送管に生じた破損などの不具合を目視にて見出すことが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記溝の底面は前記コンクリート供給部側が低くなって前記通行路を横切る方向に傾斜していることが好ましい。
【0013】
この場合、溝全体に雨水が亘って溜まり難くなり、特に、コンクリート被供給部が存在するコンクリート建造物を構築するための敷地に雨水があふれることを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記溝の底面の最も低い箇所を含む部分に雨水浸透升が形成されていることが好ましい。
【0015】
この場合、雨水は雨水浸透升から地下に流れるので、溝に雨水が溜まり難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート圧送管の配置構造の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るコンクリート圧送管の配置構造100について
図1から
図3を参照して説明する。なお、
図1から
図3は本実施形態を模式的に説明するための図であり、寸法はデフォルメされている。
【0018】
コンクリート圧送管の配置構造100は、ここでは、図示しないコンクリート建造物を構築するために、車道Aに駐車しているコンクリートポンプ車11から、車道Aとコンクリート建造物を建造するための敷地Bまで、車道Aと敷地Bとの間に位置する歩道Cを横切ってコンクリートを圧送するために、コンクリート圧送管20を配置するための構造である。
【0019】
車道Aには、コンクリートを搬送するコンクリートミキサー車12も駐車されており、コンクリートミキサー車12のコンクリート供給口はコンクリートポンプ車11のコンクリート受け入れ部に接続されている。詳細は図示しないが、コンクリートポンプ車11は、コンクリートミキサー車12からコンクリートが供給されるホッパを備え、ホッパの底部に配置された吐出口からポンプによってコンクリートが吐出され、このコンクリートが吐出口に接続されたコンクリート圧送管20によって敷地Bに向けて圧送される。
【0020】
車道Aに駐車されたコンクリートポンプ車11が本発明のコンクリート供給部に相当する。敷地B内のコンクリート建造物を構築するためにコンクリートが打設する箇所が本発明のコンクリート被供給部に相当する。そして、歩道Cが本発明の通行路に相当する。
【0021】
コンクリート圧送管20は、詳細は図示しないが、内部にコンクリートの圧送路が形成された略円筒状の管である。コンクリート圧送管20は、ジョイントなどを用いて長手方向に連続して接続された複数の管から構成されている。
【0022】
歩道Cには、溝30が形成されている。この溝30は、コンクリート圧送管20をその内部に配置するために形成されたものであり、コンクリート建造物が完成した後は埋め戻され、歩道Cは溝30が形成されていない元の状態に復元される。
【0023】
ここでは、溝30は歩道Cと歩道Cと連続する敷地Bにも形成されている。しかし、これに限定されず、溝30は、歩道Cと連続する車道Aにも形成されていてもよい。また、溝30は、ここでは、歩道Cの幅方向(歩道Cを横切る方向)の一部にだけ形成されているが、これに限定されず、歩道Cの幅方向の全体に亘って形成されていてもよい。
【0024】
溝30は、ここでは、コンクリート造である溝本体31から構成されている。溝本体31は、例えば、市販のプレキャストコンクリート造のU字型側溝などである。溝30は、必要に応じて連結体などによって複数個の溝本体31が長手方向に連結されることによって構成されている。
【0025】
溝本体31は、底部32と、この底部32の両側から上方に向けてそれぞれ延びる側壁部33とを備えており、上部が開放されている。そして、それぞれの側壁部33の内部上側には、蓋体40を支持する段差状の支持部34が形成されている。蓋体40の両側部の下部を支持部34に載置することにより、上部の開口が蓋体40によって塞がれる。このように、蓋体40は溝本体31に対して着脱自在である。
【0026】
蓋体40の上面と歩道Cの通行面とに段差がなるべく生じないように、蓋体40及び溝30の高さが設定されている。蓋体40は、歩道Cを通行する通行者の通行によっても破損などが生じない強度を有している。例えば、歩道Cをトラックなどの重車両が走行する場合、これらの走行を想定した強度を有する蓋体40を選択する必要がある。蓋体40は、例えば、亜鉛メッキした鉄鋼、ステンレス、アルミニウム、FRPなどから形成されている。
【0027】
蓋体40には、上下方向に貫通孔41が形成されていることが好ましい。これにより、貫通孔41を介して、作業者などが、蓋体40を取り外すことなく、コンクリート圧送管20に生じた破損などの不具合を目視にて見出すことが可能となる。貫通孔41は、このような目視と強度の観点から大きさ、形状、配置などを定めればよい。例えば、蓋体40として、グレーチング(グレーティングともいう)などのメッシュ状の貫通孔41が形成された市販の溝蓋を用いてもよい。
【0028】
コンクリート圧送管20は、溝30の底面(底部32の上面)に直置きしてもよいが、溝30の底面から離れた状態で溝30内に配置されていることが好ましい。ここでは、溝30の底面に載置された支持材21の上にコンクリート圧送管20が載置されている。支持材21は、例えば、木材、樹脂、金属などからなる角材であり、溝30の底面に固定されていてもよいし、単に溝30の底面の上に載置されているだけであってもよい。また、コンクリート圧送管20は、上記特許文献1に従来技術として記載された支持具などによって溝30の底面から離れた状態で支持されていてもよい。これらにより、コンクリート圧送管30が雨水に浸かって腐食などが生じることを抑制することができる。
【0029】
また、図示しないが、コンクリート圧送管20に保護シートなどを巻き付けて保護してもよい。なお、コンクリート圧送管20は、車道A及び敷地B内でも同様に支持、保護することが好ましい。
【0030】
溝30は、その底面が歩道Cを横切る方向(長手方向)の一方に向けて低く(深く)なるように傾斜していることが好ましい。これにより、雨水が溝30全体に亘って溜まり難い。特に、溝30の底面は、コンクリート供給部側である車道A側が低くなるように傾斜することが好ましい。これにより、コンクリート建造物を構築するための敷地Bに雨水があふれることを防止することができる。さらに、溝30の底面は、車道Aに近い部分が低くするように連続して傾斜することが好ましい。
【0031】
さらに、溝30は、その最も低くなる底面、ここでは、最も車道A側に位置する箇所を含む底面に、雨水が自然に地下に浸透するように雨水浸透桝50が設置されていることが好ましい。具体的には、底部32の車道A側に近接した箇所に開口32aが形成されており、この開口32aの下方に雨水浸透桝50が設置されている。
【0032】
雨水浸透桝50は、時間の経過とともに雨水を地中に浸透させることができるものであれば特に限定されず、雨水を一時的に貯留することが可能なものであってもよい。雨水浸透桝50は、例えば、上層が比較的大きな砕石が敷かれてなり、下層が小さな石が敷かれてなるものである。雨水浸透桝50を設置することよって、雨水は自然に地下に流れ、溝30に雨水が溜まり難い。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るコンクリート圧送管の配置構造100によれば、歩道Cに新たに形成された溝30内にコンクリート圧送管20の一部が配置されており、溝30の上部の開口は蓋体40で覆われている。これにより、歩道Cを通行する通行者は、蓋体40の上を通行することができ、通常の通行と同様に良好に通行することが可能となる。また、歩道Cを通行する通行者や歩道Cを横切る車両の往来を妨げることなく、コンクリートの圧送を安全に行うことが可能となる。
【0034】
なお、本発明は、上述したコンクリート圧送管の配置構造100に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0035】
例えば、本発明のコンクリート供給部が車道Aに駐車されたコンクリートポンプ車11であり、このコンクリートポンプ車11からコンクリート圧送管20が延びるものについて説明したが、これに限定されない。例えば、コンクリートポンプ車11、さらにはこれに接続されたコンクリートミキサー車12が、車道A以外の場所、例えば、敷地Bとは車道や歩道などを介して位置する他の敷地、又は、歩道Cの一部に駐車していてもよい。さらに、本発明のコンクリート供給部は、コンクリートポンプ車11に限定されず、コンクリートを供給可能なものであれば任意である。
【0036】
また、本発明の通行路が歩道Cである場合について説明したがこれに限定されない。本発明の通行路は、通行者や任意の種類の車両が通行可能な道路であればよく、例えば、自転車歩行者道(自歩道)や車道、さらに、側道として歩道を含む車道などであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
11…コンクリートポンプ車(コンクリート供給部)、 12…コンクリートミキサー車、 20…コンクリート圧送管、 21…支持材、 30…溝、 31…溝本体、 32…底部、 32a…開口、 33…側壁部、 34…支持部、 40…蓋体、 41…貫通孔、 50…雨水浸透桝、 100…コンクリート圧送管の配置、 A…車道、 B…敷地(コンクリート被供給部)、 C…歩道(通行路)。