(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20240703BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2020194386
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】伊東 勝道
(72)【発明者】
【氏名】笠井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】辺見 森象
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007867(JP,A)
【文献】特開2018-159194(JP,A)
【文献】特開平05-331882(JP,A)
【文献】特開2020-153156(JP,A)
【文献】特開2016-194481(JP,A)
【文献】特開2020-012323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0098654(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 1/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に回動可能に設けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体と前記下部走行体の相対角度である旋回角度を検出する旋回角度検出装置と、
前記下部走行体に備えられ、前記上部旋回体から見た位置が前記旋回角度に応じて変化する、かつ、少なくともその一部が旋回中心から見て前記上部旋回体より外側に位置する下部構造体と、
作業機械の周囲の監視対象物を検出する物体検出装置と、
前記物体検出装置の検出結果を用いて、作業機械の動作を制限する動作制限制御を行う制御装置と、を備える作業機械であって、
前記制御装置は、
前記上部旋回体の形状
および前記旋回角度を基に
上部旋回体制御領域を
演算する上部旋回体制御領域
演算部と、
前記下部走行体および前記下部構造体の形状を基に予め算出された下部走行体制御領域を記録した下部走行体制御領域記録部と、
前記旋回角度が変更される毎に、前記旋回角度と前記上部旋回体制御領域と前記下部走行体制御領域に応じて、前記動作制限制御の制御対象となる制御領域を変更する制御領域変更部と、を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記上部旋回体制御領域は、前記上部旋回体の周囲に設定された領域であり、
前記下部走行体制御領域は、前記下部構造体および前記下部走行体の周囲に設定された領域であり、
前記制御領域変更部は、前記旋回角度が変更される毎に、前記上部旋回体制御領域を前記旋回中心回りで前記旋回角度だけ回転させ、回転後の前記上部旋回体制御領域と前記下部走行体制御領域とを足し合わせ、前記下部構造体の可動領域を除外して前記制御領域とすることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記上部旋回体制御領域は、前記上部旋回体の幾何形状と前記下部走行体の走行停止特性を基に算出され、
前記下部走行体制御領域は、前記下部走行体の幾何形状と前記下部構造体の幾何形状と前記下部走行体の走行停止特性を基に算出されることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械は、前記下部構造体の姿勢変化を計測する姿勢計測装置を備え、
前記制御領域変更部は、前記旋回角度が変更される毎に、前記上部旋回体制御領域を前記旋回中心回りで前記旋回角度だけ回転させ、回転後の前記上部旋回体制御領域と前記下部走行体制御領域とを足し合わせ、前記姿勢計測装置によって計測された前記下部構造体の姿勢および幾何構造から演算される前記下部構造体の幾何形状の領域を除外して前記制御領域とすることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業機械は、現在の前記制御領域を表示する表示装置を備えることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記上部旋回体は、ブーム、アーム、バケットからなる作業装置を含むことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械において、安全性向上のために、作業機械の周囲の物体を検出する物体検出装置を設け、物体検出装置の検出結果を用いて、作業機械を減速または停止するシステムが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1では、作業機械周囲の任意の領域(以下、制御領域と記載)への物体の侵入有無と制御領域毎に予め定められたレバー入力で、作業機械を動作させるアクチュエータの減速・停止動作を制御する衝突防止装置などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業機械においては、上部旋回体から見た下部走行体に備えられた構造体(以下、下部構造体とも記載)の位置が旋回角度に応じて変化し、かつ、少なくともその一部が旋回中心から見て上部旋回体より外側に位置する構造体(具体的には、ブレード、ロングクローラ、小旋回機、クランプアーム、ホイールショベルなど)が設けられている場合がある。下部走行体の走行動作における衝突に関して、下部構造体を持つ作業機械においては、上部旋回体の旋回姿勢によって、衝突箇所が上部旋回体か下部走行体か下部構造体かが異なる。そのため、例えば上記特許文献1に記載の従来技術では、走行における安全装置としての効果が軽減(過剰な速度での衝突)または過剰(大きく手前で停止する)になる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレード等の下部構造体を持つショベル等の作業機械において、より安全に衝突を防止することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の作業機械は、下部走行体と、前記下部走行体に回動可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体と前記下部走行体の相対角度である旋回角度を検出する旋回角度検出装置と、前記下部走行体に備えられ、前記上部旋回体から見た位置が前記旋回角度に応じて変化する、かつ、少なくともその一部が旋回中心から見て前記上部旋回体より外側に位置する下部構造体と、作業機械の周囲の監視対象物を検出する物体検出装置と、前記物体検出装置の検出結果を用いて、作業機械の動作を制限する動作制限制御を行う制御装置と、を備える作業機械であって、前記制御装置は、前記上部旋回体の形状および前記旋回角度を基に上部旋回体制御領域を演算する上部旋回体制御領域演算部と、前記下部走行体および前記下部構造体の形状を基に予め算出された下部走行体制御領域を記録した下部走行体制御領域記録部と、前記旋回角度が変更される毎に、前記旋回角度と前記上部旋回体制御領域と前記下部走行体制御領域に応じて、前記動作制限制御の制御対象となる制御領域を変更する制御領域変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より安全に衝突を防止することができる作業機械を提供できる。
【0009】
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る作業機械の一例である油圧ショベルの斜視図。
【
図2】本発明の実施例1に係る制御装置の機能ブロック図。
【
図3】本発明の実施例1に係る上部旋回体制御領域、下部走行体制御領域、制御領域の一例を示す図。
【
図4】本発明の実施例1に係る下部走行体制御領域の導出方法の一例を説明する図。
【
図5】本発明の実施例1に係る上部旋回体制御領域の導出方法の一例を説明する図。
【
図6】本発明の実施例1に係る制御領域変更部に関するフローチャート。
【
図7】本発明の実施例2に係る作業機械の一例である油圧ショベルの斜視図。
【
図8】本発明の実施例2に係る制御装置の機能ブロック図。
【
図9】本発明の実施例2に係る制御領域、下部走行体除外領域の一例を示す図。
【
図10】本発明の実施例2に係る制御領域変更部に関するフローチャート。
【
図11】本発明の実施例3に係る制御装置の機能ブロック図。
【
図12】本発明の実施例3に係る制御領域変更部に関するフローチャート。
【
図13】本発明の実施例4に係る作業機械の一例である油圧ショベルの斜視図。
【
図14】本発明の実施例4に係る表示装置の表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。各図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付して繰り返し説明を省略する場合がある。
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械として、一般的な油圧ショベルを挙げて説明する。ただし、本発明は、ブレード、ロングクローラ、小旋回機、クランプアームなどの下部構造体を下部走行体に搭載可能であれば、油圧ショベル以外の作業機械にも適用可能である。
【0013】
[実施例1]
<1.全体構成>
図1は、本発明の実施例1に係る作業機械1の一例である油圧ショベルの斜視図である。
【0014】
(油圧ショベル1の構成)
油圧ショベル1は、下部走行体1Cと、旋回装置4を介して下部走行体1Cに回動(旋回)可能なように備え付けられた上部旋回体1Bと、上部旋回体1Bに取り付けられた作業装置1Aとを備えている。
【0015】
作業装置1Aは、上部旋回体1Bと回動可能に取り付けられたブーム8と、ブーム8と回動可能に取り付けられたアーム9と、アーム9と回動可能に取り付けられたバケット10と、バケット10およびアーム9と回動可能に取り付けられたバケットリンク13と、ブーム8と上部旋回体1Bに接続され、ブーム8と上部旋回体1Bとの回動角度を任意に変更するブームシリンダ5と、ブーム8とアーム9に接続され、ブーム8とアーム9の回動角度を任意に変更するアームシリンダ6と、アーム9とバケットリンク13に接続され、バケット10の回動角度を任意に変更するバケットシリンダ7で構成される。
【0016】
下部走行体1Cは、走行モータ3により左右の履帯(クローラとも呼ぶ)を駆動して走行し、車体を任意位置へ移動可能にする。旋回装置4は、下部走行体1Cと上部旋回体1Bの回動角度(すなわち、旋回角度)を任意に変更する旋回モータ11で構成される。また、下部走行体1C(本例では、その走行方向の前部もしくは後部)に、ブレード2が回動可能(例えばピッチ方向に回動可能)なように備えられ、ブレード2と下部走行体1Cに接続され、ブレード2の回動角度を任意に変更するブレードシリンダ12を備える。ブレード2は、下部走行体1Cに対して回動可能であるとともに、上部旋回体1Bから見た位置が上部旋回体1Bの下部走行体1Cに対する旋回角度に応じて変化する、かつ、その一部が旋回中心から見て上部旋回体1Bより外側に位置する機構を持つ構造体である。
【0017】
なお、本実施例では、下部走行体1Cに備えられた下部構造体としてブレード2について述べるが、下部走行体1Cに可動可能に備えられ、上部旋回体1Bから見た位置が旋回角度に応じて変わる、かつ、少なくともその一部が旋回中心から見て上部旋回体1Bより外側に位置する機構を持つ構造体であれば、同様の技術が適用可能である。具体的には、前記ブレードの他、ロングクローラ、小旋回機、クランプアーム、ホイールショベルなどが考えられる。
【0018】
上部旋回体1Bには、油圧ショベル1の各アクチュエータ(3、5、6、7、11、12)を操作する操作レバーなどが配備され、オペレータが搭乗する操縦室15、エンジン(原動機)16、油圧ショベル1を制御する制御装置100などが設置される。制御装置100は、図示は省略するが、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータとして構成されている。制御装置100の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0019】
油圧ショベル1は、センサとして、上部旋回体1Bに設置され、周囲の物体(監視対象物)を検出できる物体検出装置52(52a、52b、52c、52d)と、上部旋回体1Bと下部走行体1Cの相対角度である旋回角度を検出する旋回角度検出装置53とを備える。物体検出装置52は、カメラ、超音波センサ、赤外線センサ、マイクロ波センサなどで構成される。物体検出装置52は、図示のように油圧ショベル1に設置されたセンサで構成しても良いし、油圧ショベル1が作業を行う施工現場などに設置されたセンサで構成しても良い。また、旋回角度検出装置53は、旋回中心に設けられた旋回角度センサなどで構成される。なお、旋回角度検出装置53は、上部旋回体1B上に備えられたGNSS、カメラなどで構成しても良いし、油圧ショベル1が作業を行う施工現場などに設置されたセンサ(カメラなど)で、上部旋回体1Bと下部走行体1Cの旋回角度を検出する構成でも良い。
【0020】
また、図示は省略するが、油圧ショベル1は、センサとして、作業装置1A(のブーム8、アーム9、バケット10)の姿勢変化を計測する姿勢計測装置(IMUなど)を備える。
【0021】
本実施例の制御装置100は、前記した物体検出装置52および旋回角度検出装置53の検出結果を用いて、油圧ショベル1(の下部走行体1Cおよび作業装置1Aを含む上部旋回体1B)を減速または停止する動作制限制御を実行する。
【0022】
(制御装置100の構成)
図2は、本発明の実施例1に係る制御装置100の機能ブロック図である。
【0023】
本実施例1の制御装置100は、前記動作制限制御を実現するため、
図2に示すように、上部旋回体制御領域記録部101、下部走行体制御領域記録部102、制御領域変更部103、動作制限制御部104から構成される。
【0024】
制御装置100は、上部旋回体制御領域記録部101に予め上部旋回体1Bの形状より算出した上部旋回体制御領域501を記録している。また、下部走行体制御領域記録部102に予めブレード2および下部走行体1Cの形状より算出した下部走行体制御領域502を記録している。
【0025】
制御領域変更部103は、上部旋回体制御領域501と下部走行体制御領域502と旋回角度検出装置53の旋回角度より、動作制限制御部104による動作の制限(減速・停止)を講ずる(換言すれば、動作制限制御の制御対象となる)領域(以下、制御領域と記載)503を変更する。動作制限制御部104は、制御領域変更部103により変更された制御領域503と物体検出装置52の検出結果より、走行または旋回の減速・停止動作を行う制御指令を生成して、アクチュエータである走行モータ3や旋回モータ11などを制御する。
【0026】
(上部旋回体制御領域501、下部走行体制御領域502、制御領域503の導出例)
図3に、本実施例による上部旋回体制御領域記録部101に記録された上部旋回体制御領域501と、下部走行体制御領域記録部102に記録された下部走行体制御領域502と、ある姿勢のときの制御領域変更部103により変更された制御領域503の一例を示す。
【0027】
上部旋回体制御領域501は、作業装置1Aを含む上部旋回体1Bの幾何形状と下部走行体1Cの走行停止特性を基に導出したものである。
【0028】
また、下部走行体制御領域502は、下部走行体1Cの幾何形状とブレード2の幾何形状と下部走行体1Cの走行停止特性を基に導出したものである。
【0029】
また、制御領域503は、上部旋回体制御領域501と下部走行体制御領域502と上部旋回体1Bと下部走行体1Cの相対角度である旋回角度(旋回角度検出装置53の検出角度)とブレード2の可動領域512を基に導出したものである。
【0030】
より詳しくは、下部走行体制御領域502については、次の手順で導出できる。
(A1)下部走行体1C(ブレード2を含む)をモデル化し、左右の履帯(クローラとも呼ぶ)に対して、地面接地範囲内での速度中心を仮定し、走行動作の回転中心を導出する(
図4の(a))。速度中心は、地面の摩擦および運動方程式による地面垂直抗力などから導出してもよい。
(A2)下部走行体1C(ブレード2を含む)を、走行動作の回転中心回りに停止に必要な距離分回転させる(
図4の(b))。
(A3)前述の(A1)→(A2)を履帯(クローラ)の動き分(前後最小速度~最大速度、接地位置の変動分)繰り返して、すべての動きを重ねた領域を計算する(
図4の(c))。
【0031】
これにより、下部走行体1Cおよびブレード2の周囲に(換言すれば、下部走行体1Cおよびブレード2を包囲するような)所定幅の下部走行体制御領域502を算出する(
図3参照)。
【0032】
上部旋回体制御領域501については、次の手順で導出できる。
(B1)作業装置1Aを含む上部旋回体1Bについて、前記した下部走行体制御領域502の手順(A1)→(A2)→(A3)と同様に計算を行う(
図5の(a))。
(B2)下部走行体1Cとの相対角度をずらしながら、前記した(B1)をすべての相対角度に対して行い、すべての動きを重ねた領域を計算する(
図5の(b))。
【0033】
これにより、作業装置1Aを含む上部旋回体1Bの周囲に(換言すれば、作業装置1Aを含む上部旋回体1Bを包囲するような)所定幅の上部旋回体制御領域501を算出する(
図3参照)。
【0034】
なお、上部旋回体制御領域501および下部走行体制御領域502の算出に当たって、不整地および土材質がわからないため、摩擦などの動作の計算に必要な要素が分からない場合、それらの要素は実験的に決めてもよい。
【0035】
制御領域503は、旋回角度検出装置53で検出した旋回角度が変更される毎に、前記手順で算出した上部旋回体制御領域501を旋回中心回りで旋回角度だけ回転させ、下部走行体1Cから見た上部旋回体制御領域501を計算し、回転させた上部旋回体制御領域501と前記手順で算出した下部走行体制御領域502の双方の領域を足し合わせる(和をとる)。また、足し合わせた領域からブレード2の可動領域512(
図3の二点鎖線枠内参照)を除外して制御領域503とする。つまり、本実施例の制御領域503は、ブレード2を回動(例えば、ピッチ方向に上げ下げ)しても引っ掛からない領域、すなわち、ブレード2の可動領域512以外の領域である。なお、ブレード2の可動領域512は、ブレード2の幾何形状および幾何構造から予め設定されても良いし、後述の実施例2のブレード姿勢センサ(姿勢計測装置)17を使用し、ブレード姿勢センサ(姿勢計測装置)17で計測したブレード2の姿勢変化などから導出しても良い。
【0036】
<2.動作>
図6は、本実施例の制御領域変更部103の制御領域導出に関するフローチャートである。
【0037】
まず、車体の旋回角度が変更されるまで、待つ(S001)。次に、上部旋回体制御領域記録部101より予め定められた上部旋回体制御領域501を読み込む(S002)。上部旋回体制御領域501を旋回角度に応じて回転させ、下部走行体1Cから見た上部旋回体制御領域501を計算する(S003)。下部走行体制御領域記録部102より予め定められた下部走行体制御領域502を読み込む(S004)。回転後の上部旋回体制御領域501と下部走行体制御領域502の双方の領域を足し合わせて(和をとり)制御領域503とする(S005)。また、このとき、足し合わせた領域からブレード2の可動領域512を除外する。
【0038】
動作制限制御部104は、制御領域変更部103により変更された制御領域503と物体検出装置52の検出結果を読み込み、制御領域503の内側に物体が侵入していると判断した場合、走行または旋回の減速・停止動作を行う制御指令を生成して、走行モータ3や旋回モータ11などを制御する。これにより、油圧ショベル1を構成する下部走行体1Cおよび上部旋回体1B(作業装置1Aを含む)を減速または停止する動作制限制御を実行することで、油圧ショベル1と周囲物体との衝突を回避できる。
【0039】
<3.実施例特有の効果>
以上で説明したように、本実施例1の油圧ショベル1の制御装置100は、前記上部旋回体1Bの形状を基に予め算出された上部旋回体制御領域501を記録した上部旋回体制御領域記録部101と、前記下部走行体1Cおよび前記下部構造体(ブレード2)の形状を基に予め算出された下部走行体制御領域502を記録した下部走行体制御領域記録部102と、前記旋回角度が変更される毎に、前記旋回角度と前記上部旋回体制御領域501と前記下部走行体制御領域502に応じて、前記動作制限制御の制御対象となる制御領域503を変更する制御領域変更部103と、を備える。
【0040】
本実施例1によれば、旋回角度に応じた適切な制御領域503が設定でき、安全性が向上する。
【0041】
[実施例2]
<1.全体構成>
図7は、本発明の実施例2に係る作業機械1の一例である油圧ショベルの斜視図である。
【0042】
(油圧ショベル1の構成)
本実施例2の作業機械1は、実施例1に加え、ブレード2上に備え付けられ、ブレード2の姿勢変化を計測する姿勢計測装置としてのブレード姿勢センサ17を備える。
【0043】
なお、本実施例では、下部走行体1Cに備えられた下部構造体としてブレード2について記載するが、実施例1の構造に加え、アクチュエータによる機構変化がある構造体と構造体の姿勢が演算可能なセンサであれば、構造体の幾何形状やセンサ個数は問わず如何なるものでもよい。具体的には、前記ブレードの他、PATブレード、クランプアームなどが考えられる。
【0044】
(制御装置100の構成)
図8は、本発明の実施例2に係る制御装置100の機能ブロック図である。
【0045】
本実施例2の制御装置100は、実施例1に加え、ブレード姿勢センサ17により計測されたブレード姿勢により変更されるブレード2の幾何構造(幾何形状)の可動後の領域(以下、下部走行体除外領域と記載)613を演算する下部走行体除外領域演算部202を備える。また、下部走行体除外領域演算部202の下部走行体除外領域613を上部旋回体制御領域+下部走行体制御領域から除外して制御領域603とする機能を有した制御領域変更部203を備える。
【0046】
(制御領域603、下部走行体除外領域613の導出例)
図9に、上部旋回体制御領域と下部走行体制御領域が足し合わされた制御領域603と下部走行体除外領域613の一例を示す。
【0047】
上記実施例1では、制御領域503は、上部旋回体制御領域501と下部走行体制御領域502と上部旋回体1Bと下部走行体1Cの相対角度である旋回角度(旋回角度検出装置53の検出角度)とブレード2の可動領域512を基に導出し、ブレード2を回動(例えば、ピッチ方向に上げ下げ)しても引っ掛からない領域、すなわち、ブレード2の可動領域512以外の領域を、制御領域503とした。
【0048】
一方、本実施例2では、制御領域603は、上部旋回体制御領域と下部走行体制御領域と上部旋回体1Bと下部走行体1Cの相対角度である旋回角度(旋回角度検出装置53の検出角度)とブレード姿勢センサ17により計測されたブレード姿勢を基に導出する。つまり、ブレード2の動作に応じて動的に制御領域603を変更、すなわち、現在のブレード2の姿勢をフィードバックして、制御領域603を変更する。制御領域603は、ブレード姿勢センサ17により計測されたブレード姿勢に対応したブレード2(の幾何形状)の可動後の領域(下部走行体除外領域)613のみを除いた領域を、制御領域603とする。
【0049】
これにより、除外領域を実際のブレード2に沿った形にできるため、より適切に障害物を検知できる。例えば、
図9に示す物体614、615(上記実施例1では除外されて検出されない)が除外されずに検出できるため、より安全性が向上する。
【0050】
<2.動作>
図10は、本実施例の制御領域変更部203の制御領域導出に関するフローチャートである。
【0051】
図10に示す本実施例2のフローチャートは、実施例1のフローチャートから和の部分を除き、S201~S202を追加する。S001~S004の実施後、ブレード姿勢から演算した下部走行体除外領域613を読み込む(S201)。回転後の上部旋回体制御領域と下部走行体制御領域を足し合わせて(和をとり)、足し合わせた領域から下部走行体除外領域613を減算する領域を制御領域603とする(S202)。
【0052】
<3.実施例特有の効果>
以上で説明したように、本実施例2の油圧ショベル1は、前記下部構造体(ブレード2)の姿勢変化を計測する姿勢計測装置(ブレード姿勢センサ17)を備え、前記制御領域変更部203は、前記旋回角度が変更される毎に、前記上部旋回体制御領域を前記旋回中心回りで前記旋回角度だけ回転させ、回転後の前記上部旋回体制御領域と前記下部走行体制御領域とを足し合わせ、前記姿勢計測装置(ブレード姿勢センサ17)によって計測された前記下部構造体(ブレード2)の姿勢および幾何構造から演算される前記下部構造体(ブレード2)の幾何形状の領域(つまり、現在の下部構造体の領域)を除外して前記制御領域603とする。
【0053】
本実施例2によれば、ブレード構造体の動作による油圧ショベル1の誤動作を避けることができ、より誤作動の少ない油圧ショベル1を提供できる。
【0054】
[実施例3]
<1.全体構成>
(制御装置100の構成)
図11は、本発明の実施例3に係る制御装置100の機能ブロック図である。
【0055】
本実施例3の制御装置100は、実施例1の上部旋回体制御領域記録部101に代わり、上部旋回体1Bの形状と旋回角度を基に制御領域(回転後の上部旋回体制御領域)を演算する上部旋回体制御領域演算部301を備える。
【0056】
詳しくは、上記実施例1では、旋回角度を定めずに(換言すれば、動作中にフィードバックせずに)上部旋回体制御領域を計算した。
【0057】
一方、本実施例3では、動作中に、旋回角度検出装置53の旋回角度を基に(換言すれば、動作中にフィードバックして)、上部旋回体制御領域を再計算する(導出方法については、
図5を併せて参照)。例えば走行動作後の上部旋回体制御領域を、走行動作前の旋回角度検出装置53の旋回角度を基に再計算する。そのため、動作中の必要最低限の領域を、上部旋回体制御領域として算出できる。
【0058】
制御領域変更部303は、上部旋回体制御領域演算部301で算出した上部旋回体制御領域と下部走行体制御領域記録部102に記録している下部走行体制御領域と旋回角度検出装置53の旋回角度より、動作制限制御の制御対象となる制御領域を変更する。
【0059】
<2.動作>
図12は、本実施例の制御領域変更部303の制御領域導出に関するフローチャートである。
【0060】
図12に示す本実施例3のフローチャートは、実施例1のS002、S003に代わり、S001の後、上部旋回体制御領域演算部301で上部旋回体1Bの形状と旋回角度に応じて演算した(回転後の)上部旋回体制御領域を読み込む(S302)。下部走行体制御領域記録部102より予め定められた下部走行体制御領域を読み込む(S004)。(回転後の)上部旋回体制御領域と下部走行体制御領域の双方の領域を足し合わせて(和をとり)制御領域とする(S005)。
【0061】
<3.実施例特有の効果>
以上で説明したように、本実施例3の油圧ショベル1の制御装置100は、前記上部旋回体制御領域記録部101に代わり、前記上部旋回体の形状および前記旋回角度を基に上部旋回体制御領域を演算する上部旋回体制御領域演算部301を備える。
【0062】
本実施例3によれば、実施例1の効果に加え、より安全な誤動作の少ない油圧ショベル1を提供できる。
【0063】
[実施例4]
<1.全体構成>
本発明の実施例4に係る作業機械の一例である油圧ショベルを
図13に示す。
【0064】
(油圧ショベル1の構成)
本実施例4の作業機械1は、実施例1に加え、例えば操縦室15に現在の制御領域703を表示する表示装置18を備える。
【0065】
<2.動作>
表示装置18の表示画面の一例を
図14に示す。
【0066】
表示装置18には同一画面上に、制御領域703、油圧ショベル1が俯瞰図または三次元図で表記されている。
【0067】
<3.実施例特有の効果>
以上で説明したように、本実施例4の油圧ショベル1は、現在の前記制御領域703を表示する表示装置18を備える。
【0068】
本実施例4によれば、オペレータが制御領域703を容易に確認することができ、施工効率を改善することができる。
【0069】
なお、本発明は上記した実施形態に限られるものではなく、様々な変形形態が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0070】
また、上記した実施形態のコントローラの各機能は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現してもよい。また、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、コントローラ内の記憶装置の他に、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 油圧ショベル(作業機械)
1A 作業装置
1B 上部旋回体
1C 下部走行体
2 ブレード(下部構造体)
3 走行モータ
4 旋回装置
11 旋回モータ
12 ブレードシリンダ
15 操縦室
16 エンジン(原動機)
17 ブレード姿勢センサ(姿勢計測装置)(実施例2)
18 表示装置(実施例4)
52 物体検出装置
53 旋回角度検出装置
100 制御装置
101 上部旋回体制御領域記録部
102 下部走行体制御領域記録部
103 制御領域変更部
104 動作制限制御部
202 下部走行体除外領域演算部(実施例2)
203 制御領域変更部(実施例2)
301 上部旋回体制御領域演算部(実施例3)
303 制御領域変更部(実施例3)
501 上部旋回体制御領域
502 下部走行体制御領域
503 制御領域
603 制御領域
613 下部走行体除外領域
703 制御領域