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  • 特許-壁付け用継手 図1
  • 特許-壁付け用継手 図2
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  • 特許-壁付け用継手 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】壁付け用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20240703BHJP
   F16L 15/00 20060101ALI20240703BHJP
   F16L 47/16 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16L5/00 B
F16L5/00 C
F16L15/00
F16L47/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020203618
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2021162149
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020062408
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】西 佳彦
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-248790(JP,A)
【文献】実開平05-096690(JP,U)
【文献】特開平09-250675(JP,A)
【文献】特開2016-141007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 15/00
F16L 47/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ部を有し、該雌ねじ部を含めた流通路全体が合成樹脂で形成された継手本体と、
前記雌ねじ部の周囲を先端から全体に亘って覆うと共に外周に雄ねじが設けられた取付部および該取付部の根元に一体的に形成されたフランジ部を有し、金属からなる補強体と、を備え
前記継手本体は、前記フランジ部の内側に設けられた抜け止め凹部に、前記雌ねじ部に対する挿脱方向に引っ掛かる抜け止め凸部を備えている
ことを特徴とする壁付け用継手。
【請求項2】
雌ねじ部を有し、該雌ねじ部を含めた流通路全体が合成樹脂で形成された継手本体と、
前記雌ねじ部の周囲を先端から全体に亘って覆うと共に外周に雄ねじが設けられた取付部および該取付部の根元に一体的に形成されたフランジ部を有し、金属からなる補強体と、を備え、
前記継手本体の外側に設けられた回り止め凹部と、
前記補強体の内側に設けられ、前記雌ねじ部へのねじ込み回転方向および該雌ねじ部からの取り外し回転方向に前記回り止め凹部と引っ掛かる回り止め凸部と、をさらに備えている
ことを特徴とする壁付け用継手。
【請求項3】
前記回り止め凸部の一部は、外側に露出している請求項2記載の壁付け用継手。
【請求項4】
前記回り止め凹部と前記回り止め凸部との引っ掛かりは、前記取り外し回転方向よりも前記ねじ込み回転方向のほうが小さい請求項2または3記載の壁付け用継手。
【請求項5】
雌ねじ部を有し、該雌ねじ部を含めた流通路全体が合成樹脂で形成された継手本体と、
前記雌ねじ部の周囲のみを先端から全体に亘って覆うと共に外周に雄ねじが設けられた取付部および該取付部の根元に一体的に形成されたフランジ部を有し、金属からなる補強体と、のみからなることを特徴とする壁付け用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雌ねじ部を備える壁付け用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属配管と樹脂配管とを接続する継手として、合成樹脂によって継手本体を形成し、金属配管がねじ込まれる雌ねじ部を金属インサートで形成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-49325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の継手は、継手本体と金属インサートとの境界から漏水するおそれがあるので、金属インサートの外周部にシール材を配置するなどの漏水対策が必要である。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、漏水のおそれがない壁付け用継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る壁付け用継手は、
雌ねじ部を有し、該雌ねじ部を含めた流通路全体が合成樹脂で形成された継手本体と、
前記雌ねじ部の周囲を先端から全体に亘って覆うと共に外周に雄ねじが設けられた取付部および該取付部の根元に一体的に形成されたフランジ部を有し、金属からなる補強体と、を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る壁付け用継手によれば、異種材料の間からの漏水のおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る壁付け用継手を示す側面図である。
図2】(a)は実施例の壁付け用継手を壁に取り付ける前を示し、(b)は実施例の壁付け用継手を壁に取り付けた状態を示す。
図3】実施例の壁付け用継手の断面図である。
図4図1のA-A線断面図である。
図5】変更例の壁付け用継手において、図1のA-A線に対応する位置で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る壁付け用継手につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0010】
図1および図3に示すように、壁付け用継手(以下、単に継手という。)10は、合成樹脂製の継手本体12と、この継手本体12に一体的に設けられた金属製の補強体14とを備えている。実施例の継手10は、一方の接続部分の開口向きと他方の接続部分の開口向きとが90°異なる所謂エルボである。図2に示すように、継手10は、給水(給湯)管路において、浴室などの壁Wに取り付けられて、壁Wから室内IDに臨む一方の接続部分に水栓や金属配管などが接続され、室外ODに臨む他方の接続部分に、壁Wに沿って立ち上げた樹脂配管やアルミ三層管などの外部配管が接続される。なお、実施例の継手10は、補強体14をセットした成形型で継手本体12を射出成形等により成形することで得られるインサート成形品である。
【0011】
図3に示すように、継手本体12は、水等の流通路10aが内部に形成された筒状に形成されている。継手本体12は、一方の接続部分としての雌ねじ部16と、他方の接続部分としての連結部18とを備えている。雌ねじ部16には、水栓等の雄ねじ部分と噛み合う雌ねじ16aが、円筒形状の内側に形成されている。なお、雌ねじ部16の先端部内側には、雌ねじ16aが形成されていないテーパ部16bが形成されている。実施例の連結部18は、外部配管の内側に挿入して外部配管と連結するプラグ形である。連結部18の外周には、外部配管を抜け止めする突条18aが複数設けられている。
【0012】
継手本体12を構成する合成樹脂としては、例えば、PPS(ポリフェニレンスルファイド)樹脂、ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリブデン樹脂、塩化ビニル樹脂などを用いることができる。この中でも、耐熱性や耐薬品性や寸法安定性や剛性などに優れるPPS樹脂を用いることが好ましく、より好ましくはエラストマーを配合したPPS樹脂を用いるとよい。PPS樹脂は、エラストマーを配合するだけでもよいが、エラストマーに加えて、ガラス繊維やフィラーなどの補強材を含んでいてもよい。特に、エラストマーを配合したPPS樹脂は、優れた靱性および強度を有しているので、水栓等の雄ねじ部分のねじ込みによる雌ねじ部16の割れを防止できる。また、雌ねじ部16と雄ねじ部分との馴染みがよく、雌ねじ部16と雄ねじ部分との間の止水性を向上することができる。
【0013】
図1図3に示すように、補強体14は、雌ねじ部16の周囲を覆うように配置された取付部20と、取付部20の根元に一体的に形成されたフランジ部22とを備えている。取付部20は、雌ねじ部16の先端から根元部までの全体に亘って、雌ねじ部16の周囲を覆うように設けられている。取付部20は、雌ねじ16aの外側全体を覆うだけでなく、雌ねじ16aよりも差し込み口側に設けられたテーパ部16bの外側を覆っている。取付部20の外周には、雄ねじ20aが設けられている。取付部20および雄ねじ20aは、壁Wの厚さなどに応じて適宜長さに設定され、実施例の雄ねじ20aは、円筒形状の取付部20の先端から根元に亘って形成されている。フランジ部22は、取付部20から四方へ張り出すように設けられた板状であり、実施例では円形に形成されている。なお、補強体14は、例えば、砲金、青銅、銅、鉄、ステンレスなどの金属材料で形成することができ、雌ねじ部16よりも高強度である。
【0014】
図3に示すように、継手10は、継手本体12に設けられた抜け止め凸部24と、補強体14におけるフランジ部22の内側に設けられ、抜け止め凸部24と引っ掛かる抜け止め凹部26とを備えている。抜け止め凸部24は、雌ねじ部16の根元部に設けられ、雌ねじ部16の全周に亘って突出する凸状に形成されている。抜け止め凹部26は、フランジ部22における円形の内側全周に亘って凹状に形成されている。抜け止め凸部24と抜け止め凹部26とは、雌ねじ部16に対する水栓等の雄ねじ部分の挿脱方向に引っ掛かり、補強体14が継手本体12に対して挿脱方向に移動しないように位置決めしている。
【0015】
図3および図4に示すように、継手10は、継手本体12の外側に設けられた回り止め凹部28と、補強体14の内側に設けられ、回り止め凹部28と引っ掛かる回り止め凸部30とを備えている。回り止め凹部28は、雌ねじ部16の根元部に設けられ、雌ねじ部16の外周面から凹んだ凹状に形成されている。実施例では、複数(4箇所)の回り止め凹部28が、雌ねじ部16の外周において互いに離して設けられている(図4参照)。また、実施例の回り止め凹部28は、抜け止め凸部24よりも雌ねじ部16の差し込み口から離れる側に配置されている。回り止め凸部30は、内側へ向けて突出する凸状に形成されている。実施例では、複数(4箇所)の回り止め凸部30が、補強体14の内周において互いに離して設けられ、回り止め凹部28と回り止め凸部30とが対応している(図4参照)。実施例の回り止め凸部30は、フランジ部22を挟んで雄ねじ20aと反対側に配置されている。回り止め凹部28と回り止め凸部30とは、雌ねじ部16に対する水栓等の雄ねじ部分のねじ込み回転方向および雌ねじ部16からの雄ねじ部分の取り外し回転方向に引っ掛かり、補強体14が継手本体12に対して周方向に回転しないように位置決めしている。
【0016】
図2(a)に示すように、継手10は、取付部20(雌ねじ部16)を壁Wにあけた孔Hに室外ODから通して、室内IDからパッキンPを挟んで雄ねじ20aにナットNを嵌め合わせることで、壁Wに簡単に取り付けることができる。このとき、継手10は、フランジ部22を壁Wの外面に当てて位置決め可能であり、室内IDに向けて雌ねじ部16を適切に臨ませることができる(図2(b)参照)。そして、雌ねじ部16に水栓等の雄ねじ部分をねじ込んで、水栓等が取り付けられる。継手10は、継手本体12の雌ねじ部16が補強体14に囲われて補強されているので、雌ねじ部16への水栓等のねじ込みに起因して、雌ねじ部16が破損することを防止できる。また、継手10は、取付部20とフランジ部22とが一体の金属から構成されているので、水栓等の荷重が継手10に加わっても耐えることができ、耐荷重を向上することができる。
【0017】
継手10は、補強体14が雌ねじ部16の外側に配置されて、継手本体12だけで形成される流通路10aが、合成樹脂によって継ぎ目なく構成されている。従って、継手10は、補強体14と継手本体12との接合部分が流通路10aに接していないので、流通路10aから外部への漏水が生じない。このように、継手10は、漏水のおそれがないので、従来構造のように漏水テストを全数行う必要がなくなり、製造にかかる手間やコストを抑えることができる。また、継手10は、補強体14をセットした型で継手本体12を成形すれば、製造にかかる手間やコストを抑えることができる。
【0018】
継手10は、継手本体12の抜け止め凸部24と補強体14の抜け止め凹部26とが、雌ねじ部16に対する水栓等の挿脱方向に引っ掛かる。これにより、雌ねじ部16への水栓等のねじ込み時や雌ねじ部16からの水栓等の取り外し時に、継手本体12と補強体14とが位置ズレすることを防止でき、水栓等の取り付け・取り外しを行い易くすることができる。ここで、抜け止め凹部26が、補強体14のフランジ部22に対応する位置に設けられているので、補強体14に凹状の抜け止め凹部26を形成しても、補強体14の強度を保つことができる。また、抜け止め凸部24と抜け止め凹部26との噛み合いがフランジ部22で囲われるので、抜け止め凸部24と抜け止め凹部26との噛み合いを保つことができる。
【0019】
継手10は、継手本体12の回り止め凹部28と補強体14の回り止め凸部30とが、雌ねじ部16への水栓等のねじ込み回転方向および雌ねじ部16からの水栓等の取り外し回転方向に引っ掛かる。これにより、水栓等を雌ねじ部16に取り付けまたは取り外す際に、継手本体12が補強体14から分離して水栓等と共回りすることを防止できる。従って、継手10によれば、水栓等の取り付け・取り外しを行い易くすることができる。
【0020】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のようにしてもよい。
【0021】
(1)実施例では、回り止め凹部28と回り止め凸部30との引っ掛かりを、取り外し回転方向およびねじ込み回転方向で同じに設定したが、これに限らず、回り止め凹部28と回り止め凸部30との引っ掛かりを、取り外し回転方向よりもねじ込み回転方向のほうが小さくなるように構成してもよい。図5に示すように、変更例の継手40は、回り止め凹部28および回り止め凸部30におけるねじ込み回転方向の壁が、ねじ込み回転方向に対して斜めになる斜面になっている。また、回り止め凹部28および回り止め凸部30における取り外し回転方向の壁が、ねじ込み回転方向に対して直交する面になっている。これにより、回り止め凹部28と回り止め凸部30との引っ掛かりを、取り外し回転方向よりもねじ込み回転方向のほうを小さくしている。このようにすることで、水栓等を雌ねじ部16に過剰にねじ込んだ場合、回り止め凹部28と回り止め凸部30との引っ掛かりが外れて、異常があることが判る。一方、水栓等を雌ねじ部16から取り外す場合は、回り止め凹部28と回り止め凸部30との引っ掛かりが保たれるので、水栓等を取り外すことが可能である。なお、引っ掛かりの調節は、回り止め凹部28と回り止め凸部30との引っ掛かり代を大きくしたり小さくしたりすることによっても可能である。
【0022】
(2)実施例の連結部は、プラグ形であるが、これに限らず、外部配管を内部に差し込むソケット形など、その他の形状であってもよい。
(3)フランジ部の外形は、円形に限らず、四角形や六角形などの多角形であってもよい。
(4)継手は、補強体をセットした成形型において継手本体を成形するインサート成形によって得たり、例えば鋳物成形等により得た補強体と射出成形等により得た継手本体とを組み合わせて構成したりするなど、様々な方法で得ることができる。
【符号の説明】
【0023】
10a 流通路,12 継手本体,14 補強体,16 雌ねじ部,20 取付部,
20a 雄ねじ,22 フランジ部,24 抜け止め凸部,26 抜け止め凹部,
28 回り止め凹部,30 回り止め凸部
図1
図2
図3
図4
図5