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  • 特許-マルトトリオース生成アミラーゼ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】マルトトリオース生成アミラーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/28 20060101AFI20240703BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20240703BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240703BHJP
   C12P 19/14 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C12N9/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/56 ZNA
C12N15/63 Z
C12P19/14 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020553889
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042168
(87)【国際公開番号】W WO2020090734
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018204917
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000216162
【氏名又は名称】天野エンザイム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大野 篤
(72)【発明者】
【氏名】松原 寛敬
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 徹
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-058110(JP,A)
【文献】TAKASAKI, Y.,An Amylase Producing Maltotriose from Bacillus subtilis,Agric. Biol. Chem.,1985年,Vol.49, No.4,p.1091-1097,特に1092頁右段, 表4
【文献】Database UniProt[online], Accession No.A0A1W6DPD9, 2017-07-05 uploaded, [retrieved on 2019-11-25], <https://www.uniprot.org/uniprot/A0A1W6DPD9.txt?version=6>, Definition: RecName: Full=Alpha-amylase
【文献】Database UniProt[online], Accession No. A0A1N6VB89, 2017-03-15 uploaded, [retrieved on 2019-11-25], <https://www.uniprot.org/uniprot/A0A1N6VB89.txt?version=8>, Definition: RecName: Full=Alpha-amylase
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/28
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/56
C12N 15/63
C12P 19/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記(2-1)~(2-3)、及び(3-1)~(3-3)のいずれかに示すポリペプチドからなる、マルトトリオース生成アミラーゼ
2-1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2-2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(2-3)配列番号2で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(3-1)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(3-2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(3-3)配列番号3で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が90%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼをコードしているDNA。
【請求項3】
請求項2に記載のDNAを含む組換えベクター。
【請求項4】
請求項2に記載のDNA又は請求項3に記載の組換えベクターを用いて宿主を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項5】
請求項4に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼを含む酵素製剤。
【請求項7】
請求項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼを用いて、澱粉質からマルトトリオースを生成する工程を含む、マルトトリオースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルトトリオース生成アミラーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
マルトトリオースは、澱粉質を酵素又は酸で部分分解することで得られる、グルコース3分子がα-1,4-グルコシド結合を介して結合した糖である。マルトトリオースの甘味の強さは砂糖の17%程度であるが、まろやかな甘味があるため、食品の低甘味剤として使用される。また、マルトトリオースは吸湿性及び保水性に優れているため、食品の乾燥防止剤、砂糖の結晶析出防止剤、デンプンの老化防止剤として有用である。さらに、マルトトリオースはグルコース及びマルトースより熱安定性に優れているため、食品加工で用いられる糖質素材としても有用である。
【0003】
マルトトリオースはマルトース製造時の副産物から取得することができる。しかしながら、工業的に安定供給する観点では、澱粉質を酵素化学的に分解して製造することが望ましい。澱粉質からマルトトリオースを生成する酵素としては、Streptomyces griseus由来のN-A468酵素(非特許文献1)、及びBacillus subtilis由来のアミラーゼG3(非特許文献2)が知られている。N-A468酵素は、βアミラーゼと同様に分類され、マルトトリオース単位で澱粉質を分解し、アミラーゼG3は、αアミラーゼと同様に分類されマルトトリオースを主成分として含む澱粉分解物を生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】澱粉科学,第26巻,第3号,175乃至181頁(1979年)
【文献】Agricultural and Biological Chemistry 1985 Volume 4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの酵素は微生物からの生産効率が低く、工業的に安定供給する観点において依然として課題がある。このため、マルトトリオースを産生する新たな酵素の取得が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、マルトトリオースを産生する新たな酵素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、Cellulosimicrobium属細菌由来のマルトトリオース産生性アミラーゼ(以下、「マルトトリオース生成アミラーゼ」と記載する)を見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
【0008】
項1. 下記(1-1)~(1-3)、(2-1)~(2-3)、及び(3-1)~(3-3)のいずれかに示すポリペプチドからなる、マルトトリオース生成アミラーゼ:
(1-1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(1-2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(1-3)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が70%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(2-1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2-2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(2-3)配列番号2で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が70%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(3-1)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(3-2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド、
(3-3)配列番号3で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が70%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
項2. 項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼをコードしているDNA。
項3. 項2に記載のDNAを含む組換えベクター。
項4. 項2に記載のDNA又は項3に記載の組換えベクターを用いて宿主を形質転換して得られる形質転換体。
項5. 項4に記載の形質転換体を培養する工程を含む、項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼの製造方法。
項6. 項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼを含む酵素製剤。
項7. 項1に記載のマルトトリオース生成アミラーゼを用いて、澱粉質からマルトトリオースを生成する工程を含む、マルトトリオースの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マルトトリオースを産生する新たな酵素が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1において得られた、Cellulosimicrobium属細菌から取得されたマルトトリオース生成活性を有するαアミラーゼのSDS-PAGEによる精製結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、配列表以外では、アミノ酸配列における20種類のアミノ酸残基は、一文字略記で表現することがある。即ち、グリシン(Gly)はG、アラニン(Ala)はA、バリン(Val)はV、ロイシン(Leu)はL、イソロイシン(Ile)はI、フェニルアラニン(Phe)はF、チロシン(Tyr)はY、トリプトファン(Trp)はW、セリン(Ser)はS、スレオニン(Thr)はT、システイン(Cys)はC、メチオニン(Met)はM、アスパラギン酸(Asp)はD、グルタミン酸(Glu)はE、アスパラギン(Asn)はN、グルタミン(Gln)はQ、リジン(Lys)はK、アルギニン(Arg)はR、ヒスチジン(His)はH、プロリン(Pro)はPである。
【0012】
また、本明細書において、表示するアミノ酸配列は、左端がN末端、右端がC末端である。
【0013】
本明細書において、「非極性アミノ酸」には、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、及びトリプトファンが含まれる。「非電荷アミノ酸」には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれる。「酸性アミノ酸」には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。「塩基性アミノ酸」には、リジン、アルギニン、及びヒスチジンが含まれる。
【0014】
1.マルトトリオース生成アミラーゼ
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼはCellulosimicrobium属細菌由来である。
【0015】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの第1実施形態は、下記(1-1)~(1-3)のいずれかに示すポリペプチドである。
【0016】
(1-1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(1-2)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
(1-3)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が70%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
【0017】
前記(1-1)~(1-3)に示すポリペプチドは、澱粉質のα-1,4-結合を切断するαアミラーゼ活性であって、且つ、マルトトリオースを生成する活性を有する。
【0018】
前記(1-2)のポリペプチドに導入されるアミノ酸の改変は、置換、付加、挿入、および欠失の中から1種類の改変(例えば置換)のみを含むものであってもよく、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいてもよい。前記(1-2)のポリペプチドにおいて、置換、付加、挿入又は欠失されるアミノ酸は、1個又は複数個若しくは数個であればよく、例えば1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~5個、又は1~4個、更に好ましくは1~3個、特に好ましくは1又は2個或いは1個が挙げられる。
【0019】
また、前記(1-3)のポリペプチドにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性は、70%以上であればよいが、好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、更に好ましくは95%以上、97%以上、98%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0020】
ここで、前記(1-3)のポリペプチドにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性とは、配列番号1に示すアミノ酸配列と比較して算出される配列同一性である。また、「配列同一性」とは、BLAST PACKAGE[sgi32 bit edition,Version 2.0.12;available from National Center for Biotechnology Information(NCBI)]のbl2seq program(Tatiana A.Tatsusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,Vol.174,p247-250,1999)により得られるアミノ酸配列の同一性の値を示す。パラメーターは、Gap insertion Cost value:11、Gap extension Cost value:1に設定すればよい。
【0021】
前記(1-2)及び(1-3)のポリペプチドにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列における第196位、第223位、第284位、第107位、第166位、第118位、第119位、第122位、第123位、第158位、第161位、第214位、第215位、第216位、第217位、第247位、第250位、第252位、第253位、第278位、第283位、第336位、第342位のアミノ酸は、活性に寄与していると考えられることから、これらの部位には置換又は欠失を導入しないことが望ましい。第107位、第166位のアミノ酸はCa結合部位と推定され、第196位、第223位、第284位のアミノ酸は活性中心と推定されるため、これらの部位には置換又は欠失を導入しないことが特に望ましい。
【0022】
前記(1-2)及び(1-3)のポリペプチドにアミノ酸置換が導入される場合、アミノ酸置換の態様として、保存的置換が挙げられる。即ち、(1-2)及び(1-3)のポリペプチドにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列に対して導入されるアミノ酸置換としては、例えば、置換前のアミノ酸が非極性アミノ酸であれば他の非極性アミノ酸への置換、置換前のアミノ酸が非荷電性アミノ酸であれば他の非荷電性アミノ酸への置換、置換前のアミノ酸が酸性アミノ酸であれば他の酸性アミノ酸への置換、及び置換前のアミノ酸が塩基性アミノ酸であれば他の塩基性アミノ酸への置換が挙げられる。
【0023】
前記(1-2)及び(1-3)のポリペプチドにおいて、「マルトトリオース生成能を有する」とは、マルトトリオース生成アミラーゼとしての機能を発揮できる程度の活性を有していることを意味する。具体的には、後述「<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>」でマルトトリオースのピーク検出を確認できることを意味する。好ましくは澱粉質に対して認められるマルトトリオース生成能が前記(1-1)のポリペプチドによるマルトトリオース生成能と同等又はそれよりも高い(例えば、当該「<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>」によって検出されるマルトトリオースのピーク強度比として、前記(1-1)のポリペプチドにおける場合の70%以上である)ことを意味する。
【0024】
第1実施形態の(1-1)のポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼの分子量は、約55kDaである。
【0025】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの第2実施形態は、下記(2-1)~(2-3)のいずれかに示すポリペプチドである。
【0026】
(2-1)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2-2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
(2-3)配列番号2で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が70%以上であり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
【0027】
前記(2-1)のポリペプチドは、前記第1実施形態の(1-1)のポリペプチドを含み、更に、そのC末端側に炭水化物結合モジュール(CBM領域)を有している。配列番号2に示すアミノ酸配列の第1位~第533位が前記(1-1)のポリペプチドに相当する。また、配列番号2に示すアミノ酸配列の第582位~第674位がCBM領域に相当すると考えられる。CBM領域は、マルトトリオース生成アミラーゼを基質(澱粉質)の表面に局在させて加水分解を効率化すると考えられる。CBM領域は、前記第1実施形態の(1-1)~(1-3)のいずれかに示すポリペプチドのC末端側に、直接的又は間接的に結合していてよい。なお、間接的に結合するとは、例えば1~250個、好ましくは10~220個のアミノ酸からなるリンカー配列等の他のアミノ酸配列を介して結合することをいう。
【0028】
前記(2-2)のポリペプチドに導入されるアミノ酸の改変は、置換、付加、挿入、および欠失の中から1種類の改変(例えば置換)のみを含むものであってもよく、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいてもよい。前記(2-2)のCBM領域に相当する領域において、置換、付加、挿入又は欠失されるアミノ酸は、1個又は複数個若しくは数個であればよく、例えば1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~5個、又は1~4個、更に好ましくは1~3個、特に好ましくは1又は2個或いは1個が挙げられる。
【0029】
また、前記(2-3)のポリペプチドにおいて、配列番号2に示すアミノ酸配列に対する配列同一性は、70%以上であればよいが、好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、更に好ましくは95%以上、97%以上、98%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0030】
ここで、前記(2-3)のポリペプチドにおいて、配列番号2に示すアミノ酸配列に対する配列同一性とは、配列番号2に示すアミノ酸配列と比較して算出される配列同一性であり、「配列同一性」とは、前記第1実施形態における(1-3)における配列同一性と同様である。
【0031】
前記(2-2)及び(2-3)のポリペプチドにおいて、置換又は欠失を導入しないことが望ましい配列番号2におけるアミノ酸の位置は、前記第1実施形態の(1-2)及び(1-3)のポリペプチドでの置換又は欠失を導入しないことが望ましい配列番号1におけるアミノ酸の位置として前述したとおりであるが、具体的には、配列番号2に示すアミノ酸配列における第196位、第223位、第284位、第107位、第166位、第118位、第119位、第122位、第123位、第158位、第161位、第214位、第215位、第216位、第217位、第247位、第250位、第252位、第253位、第278位、第283位、第336位、第342位のアミノ酸は、活性に寄与していると考えられることから、これらの部位には置換又は欠失を導入しないことが望ましい。第107位、第166位のアミノ酸はCa結合部位と推定され、第196位、第223位、第284位のアミノ酸は活性中心と推定されるため、これらの部位には置換又は欠失を導入しないことが特に望ましい。また、CBM領域に関しては、第608位、第639位、第651位、第652位、第656位のアミノ酸は澱粉との結合に寄与していると考えられることから、マルトトリオース生成アミラーゼを基質(澱粉質)の表面に局在させたい場合はこれらの部位には置換又は欠失を導入しないことが望ましい。
【0032】
前記(2-2)及び(2-3)のポリペプチドにアミノ酸置換が導入される場合、アミノ酸置換の態様として、保存的置換が挙げられる。保存的置換については、前記第1実施形態における(1-2)及び(1-3)のポリペプチドにアミノ酸置換が導入される場合のアミノ酸置換の態様としての保存的置換と同様である。
【0033】
前記(2-2)及び(2-3)のポリペプチドにおいて、「マルトトリオース生成能を有する」とは、マルトトリオース生成アミラーゼとしての機能を発揮できる程度の活性を有していることを意味する。具体的には、後述「<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>」でマルトトリオースのピーク検出を確認できることを意味する。好ましくは澱粉質に対して認められるマルトトリオース生成能が前記(2-1)のポリペプチドによるマルトトリオース生成能と同等又はそれよりも高い(例えば、当該「<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>」によって検出されるマルトトリオースのピーク強度比として、前記(2-1)のポリペプチドにおける場合の70%以上である)ことを意味する。
【0034】
第2実施形態の(2-1)のポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼの分子量は、約70kDaである。
【0035】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの第3実施形態は、下記(3-1)~(3-3)のいずれかに示すポリペプチドである。
【0036】
(3-1)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(3-2)配列番号3で示されるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
(3-3)配列番号3で示されるアミノ酸配列に対する配列同一性が70%以上であり、且つ、且つ、マルトトリオース生成能を有するポリペプチド。
【0037】
前記(3-1)のポリペプチドも、前記第1実施形態の(1-1)のポリペプチドを含む。より具体的には、前記(3-1)のポリペプチドは、前記第2実施形態の(2-1)のポリペプチドを含み、更に、そのN末端にプロ配列を有している。配列番号3の第54位~第586位が前記第1実施形態の(1-1)のポリペプチドに相当し、第54位~第728位が前記第2実施形態の(2-1)のポリペプチドに相当する。
【0038】
前記(3-2)のポリペプチドに導入されるアミノ酸の改変は、置換、付加、挿入、および欠失の中から1種類の改変(例えば置換)のみを含むものであってもよく、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいてもよい。前記(3-2)のポリペプチドにおいて、置換、付加、挿入又は欠失されるアミノ酸は、1個又は複数個若しくは数個であればよく、例えば1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~5個、又は1~4個、更に好ましくは1~3個、特に好ましくは1又は2個或いは1個が挙げられる。
【0039】
また、前記(3-3)のポリペプチドにおいて、配列番号3に示すアミノ酸配列に対する配列同一性は、70%以上であればよいが、好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、更に好ましくは95%以上、97%以上、98%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0040】
ここで、前記(3-3)のポリペプチドにおいて、配列番号3に示すアミノ酸配列に対する配列同一性とは、配列番号3に示すアミノ酸配列と比較して算出される配列同一性であり、「配列同一性」とは、前記第1実施形態の(1-3)における配列同一性と同様である。
【0041】
前記(3-2)及び(3-3)のポリペプチドにアミノ酸置換が導入される場合、アミノ酸置換の態様として、保存的置換が挙げられる。保存的置換については、前記第1実施形態における(1-2)及び(1-3)のポリペプチドにアミノ酸置換が導入される場合のアミノ酸置換の態様としての保存的置換と同様である。
【0042】
前記(3-2)及び(3-3)のポリペプチドにおいて、置換又は欠失を導入しないことが望ましい配列番号3におけるアミノ酸の位置は、前記第1実施形態の(1-2)及び(1-3)のポリペプチドでの置換又は欠失を導入しないことが望ましい配列番号1におけるアミノ酸の位置として前述したとおりである。
【0043】
前記(3-2)及び(3-3)のポリペプチドにおいて、「マルトトリオース生成能を有する」とは、マルトトリオース生成アミラーゼとしての機能を発揮できる程度の活性を有していることを意味する。具体的には、後述「<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>」でマルトトリオースのピーク検出を確認できることを意味する。好ましくは澱粉質に対して認められるマルトトリオース生成能が前記(3-1)のポリペプチドによるマルトトリオース生成能と同等又はそれよりも高い(例えば、当該「<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>」によって検出されるマルトトリオースのピーク強度比として、前記(3-1)のポリペプチドにおける場合の70%以上である)ことを意味する。
【0044】
第3実施形態の(3-1)のポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼの分子量は、約77kDaである。
【0045】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの酵素活性は、以下に示す方法により測定することができる。
<マルトトリオース生成アミラーゼの活性測定法>
基質液(1%(w/v)可溶性澱粉溶液)200μLと酵素液50μLとを混合した反応用液を、50℃、48時間、1000rpmで振盪して反応後、100℃、5分間煮沸して反応を停止する。反応停止した反応用液を精製水で30倍に希釈して0.45μmフィルターで濾過して分析用サンプルを得る。分析用サンプルをHLPC分析してマルトトリオースのピークを検出することでマルトトリオース生成アミラーゼ活性を測定する。
【0046】
2.DNA
本発明のDNAは、上記のマルトトリオース生成アミラーゼをコードしているDNAである。本発明のDNAは、例えば、Cellulosimicrobium属細菌由来の前記(3-1)~(3-3)のいずれかのポリペプチドをコードしているDNAを鋳型として、少なくとも前記(1-1)~(1-3)のいずれかのポリペプチドをコードしている領域をPCR等によって取得することにより得ることができる。また、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼをコードしているDNAは、遺伝子の合成法によって人工合成することもできる。
【0047】
また、塩基配列の特定の部位に特定の変異を導入する場合、変異導入方法は公知であり、例えばDNAの部位特異的変異導入法等が利用できる。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば、市販のキットを用いて行うこともできる。
【0048】
塩基配列に変異を導入したDNAは、DNAシーケンサーを用いて塩基配列を確認することができる。一旦、塩基配列が確定されると、その後は化学合成、クローニングされたプローブを鋳型としたPCR、又は当該塩基配列を有するDNA断片をプローブとするハイブリダイゼーションによって、前記マルトトリオース生成アミラーゼをコードするDNAを得ることができる。
【0049】
また、部位特異的突然変異誘発法等によって前記マルトトリオース生成アミラーゼをコードするDNAの変異型であって変異前と同等の機能を有するものを合成することができる。なお、前記マルトトリオース生成アミラーゼをコードするDNAに変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法、メガプライマーPCR法等の公知の手法によって行うことができる。
【0050】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼをコードしているDNAの塩基配列については、当業者であれば、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼのアミノ酸配列に従って適宜設計可能である。
【0051】
本発明のDNAの第1実施形態は、前記(1-1)~(1-3)のポリペプチドをコードするDNAである。例えば、前記(1-1)のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号4に示す塩基配列からなるDNAが挙げられる。
【0052】
また、本発明のDNAの第1実施形態には、前記(1-1)~(1-3)のポリペプチドをコードし、且つ、配列番号4に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列を含むDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが包含される。
【0053】
更に、本発明のDNAの第1実施形態には、前記(1-1)~(1-3)のポリペプチドをコードし、且つ、配列番号4に示す塩基配列からなるDNAに対して70%以上の相同性を有するDNAも包含される。上記相同性として、好ましくは80%以上、90%以上、更に好ましくは95%以上、97%以上、98%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0054】
本発明のDNAの第2実施形態は、前記(2-1)~(2-3)のいずれかのポリペプチドをコードするDNAである。例えば、前記(2-1)のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号5に示す塩基配列からなるDNAが挙げられる。
【0055】
また、本発明のDNAの第2実施形態には、前記(2-1)~(2-3)のポリペプチドをコードし、且つ、配列番号5に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列を含むDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが包含される。
【0056】
更に、本発明のDNAの第2実施形態には、前記(2-1)~(2-3)のポリペプチドをコードし、且つ、配列番号5に示す塩基配列からなるDNAに対して70%以上の相同性を有するDNAも包含される。上記相同性として、好ましくは80%以上、90%以上、更に好ましくは95%以上、97%以上、98%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0057】
本発明のDNAの第3実施形態は、前記(3-1)~(3-3)のいずれかのポリペプチドをコードするDNAである。例えば、前記(3-1)のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号6に示す塩基配列からなるDNAが挙げられる。
【0058】
また、本発明のDNAの第3実施形態には、前記(3-1)~(3-3)のポリペプチドをコードし、且つ、配列番号6に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列を含むDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが包含される。
【0059】
更に、本発明のDNAの第3実施形態には、前記(3-1)~(3-3)のポリペプチドをコードし、且つ、配列番号6に示す塩基配列からなるDNAに対して70%以上の相同性を有するDNAも包含される。上記相同性として、好ましくは80%以上、90%以上、更に好ましくは95%以上、97%以上、98%以上、特に好ましくは99以上が挙げられる。
【0060】
ここで、「ストリンジェントな条件下」とは、0.5%SDS、5×デンハルツ〔Denhartz’s、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400〕および100μg/mlサケ精子DNAを含む6×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)中で、50℃~65℃で4時間~一晩保温する条件をいう。
【0061】
ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、具体的には、以下の手法によって行われる。即ち、DNAライブラリー又はcDNAライブラリーを固定化したナイロン膜を作成し、6×SSC、0.5% SDS、5×デンハルツ、100μg/mlサケ精子DNAを含むプレハイブリダイゼーション溶液中、65℃でナイロン膜をブロッキングする。その後、32Pでラベルした各プローブを加えて、65℃で一晩保温する。このナイロン膜を6×SSC中、室温で10分間、0.1%SDSを含む2×SSC中、室温で10分間、0.1%SDSを含む0.2×SSC中、45℃で30分間洗浄した後、オートラジオグラフィーをとり、プローブと特異的にハイブリダイズしているDNAを検出することができる。
【0062】
また、DNAの「相同性」とは、BLAST PACKAGE[sgi32 bitedition,Version 2.0.12;available from the National Center for Biotechnology Information(NCBI)]のbl2seq program(Tatiana A. Tatsusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,Vol.174,247-250,1999)により得られる同一性の値を示す。パラメーターは、Gap insertion Cost value:11、Gap extension Cost value:1に設定すればよい。
【0063】
本発明のDNAは、コドン利用頻度を宿主に最適化したものが好ましい。例えば、宿主として大腸菌を使用する場合であれば、コドン利用頻度を大腸菌に最適化させたDNAが好適である。
【0064】
3.組換えベクター
本発明の組換えベクターは、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼをコードするDNAを含む。本発明の組換えベクターは、発現ベクターに本発明のDNAを挿入することにより得ることができる。
【0065】
本発明の組換えベクターには、本発明のDNAに作動可能に連結されたプロモーター等の制御因子が含まれる。制御因子としては、代表的にはプロモーターが挙げられるが、更に必要に応じてエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位等の転写要素が含まれていてもよい。また、作動可能に連結とは、本発明のDNAを調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の制御因子と本発明のDNAが、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。
【0066】
発現ベクターとしては、宿主内で自律的に増殖し得るファージ、プラスミド、又はウイルスから遺伝子組換え用として構築されたものが好適である。このような発現ベクターは公知であり、例えば、商業的に入手可能な発現ベクターとしては、pQE系ベクター(株式会社キアゲン)、pDR540、pRIT2T(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)、pET系ベクター(メルク株式会社)等が挙げられる。発現ベクターは、宿主細胞との適切な組み合わせを選んで使用すればよく、例えば、大腸菌を宿主細胞とする場合には、pET系ベクターとBL21(DE3)大腸菌株の組み合わせ、又はpDR540ベクターとJM109大腸菌株の組み合わせなどが好ましく挙げられる。
【0067】
4.形質転換体
本発明の形質転換体は、上記の本発明のDNA又は上記の本発明の組換えベクターを用いて宿主を形質転換することによって得られる。
【0068】
形質転換体の製造に使用される宿主としては、遺伝子の導入が可能であり、且つ自律増殖可能で本発明の遺伝子の形質を発現できるのであれば特に制限されないが、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属等に属する細菌;放線菌等;酵母等;糸状菌等が好適な例として挙げられるが、その他、動物細胞、昆虫細胞、植物等であってもよい。これらの中でも大腸菌が特に好ましい。また、宿主としては、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの由来菌であるCellulosimicrobium属であってもよい。
【0069】
本発明の形質転換体は、宿主に上記の本発明のDNA又は上記の本発明の組換えベクターを導入することによって得ることができる。本発明のDNA又は本発明の組換えベクターを導入する方法は、目的の遺伝子が宿主に導入できる限り特に限定されない。また、DNAを導入する場所も、目的の遺伝子が発現できる限り特に限定されず、プラスミド上であってもよいし、ゲノム上であってもよい。本発明のDNA又は本発明の組換えベクターを導入する具体的な方法としては、例えば、組換えベクター法、ゲノム編集法が挙げられる。
【0070】
宿主に本発明のDNA又は本発明の組換えベクターを導入する条件は、導入方法及び宿主の種類等に応じて適宜設定すればよい。宿主が細菌の場合であれば、例えば、カルシウムイオン処理によるコンピテントセルを用いる方法及びエレクトロポレーション法等が挙げられる。宿主が酵母の場合であれば、例えば、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、スフェロプラスト法及び酢酸リチウム法等が挙げられる。宿主が動物細胞の場合であれば、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法及びリポフェクション法等が挙げられる。宿主が昆虫細胞の場合であれば、例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法及びエレクトロポレーション法等が挙げられる。宿主が植物の場合であれば、例えば、エレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法及びPEG法等が挙げられる。
【0071】
5.マルトトリオース生成アミラーゼの製造方法
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼは、前記本発明の形質転換体を培養することによって製造することができる。また、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼは、生産菌であるCellulosimicrobacterium sp.(形質転換されていないもの)を培養することによって製造することもできる。生産菌であるCellulosimicrobacterium sp.(形質転換されていないもの)を培養した場合、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼはプロセシングを受けることで(1-1)~(1~3)のいずれかのポリペプチド(第1実施形態のポリペプチド)と、(2-1)~(2~3)のいずれかのポリペプチド(第2実施形態のポリペプチド)と、(3-1)~(3~3)のいずれかのポリペプチド(第3実施形態のポリペプチド)とが混在した状態で製造される。一方、前記本発明の形質転換体を用いた場合、導入するDNAによって、第1実施形態のポリペプチド、第2実施形態のポリペプチド、第3実施形態のポリペプチドのいずれかのポリペプチドをコードする遺伝子のみを宿主に発現させることが可能となるため、第1実施形態のポリペプチド、第2実施形態のポリペプチド、第3実施形態のポリペプチドのいずれか1つのポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼを単独で製造すること、及び第1実施形態のポリペプチドと第2実施形態のポリペプチドと第3実施形態のポリペプチドとが混在した状態で製造することのいずれもが可能となる。
【0072】
本発明の形質転換体の培養条件は、宿主の栄養生理的性質を考慮して適宜設定すればよいが、好ましくは液体培養が挙げられる。また、工業的製造を行う場合であれば、通気攪拌培養が好ましい。
【0073】
本発明の形質転換体を培養し、培養液を遠心分離等の方法により培養上清又は菌体を回収する。本発明のマルトトリオース生成アミラーゼが菌体内に蓄積されている場合であれば、菌体を超音波、フレンチプレス等の機械的方法又はリゾチーム等の溶菌酵素により処理を施し、必要に応じてプロテアーゼ等の酵素やドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤を使用することにより可溶化し、本発明のマルトトリオース生成アミラーゼを含む水溶性画分を得ることができる。
【0074】
また、適当な発現ベクターと宿主を選択することにより、発現した本発明のマルトトリオース生成アミラーゼを培養液中に分泌させることもできる。
【0075】
上記のようにして得られた本発明のマルトトリオース生成アミラーゼを含む培養液又は水溶性画分は、そのまま精製処理に供してもよいが、当該培養液又は水溶性画分中の本発明のポリペプチドを濃縮した後に精製処理に供してもよい。
【0076】
濃縮は、例えば、減圧濃縮、膜濃縮、塩析処理、親水性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールおよびアセトン)による分別沈殿法等により行うことができる。
【0077】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの精製処理は、例えば、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の方法を適宜組み合わせることによって行うことができる。
【0078】
このようにして精製された本発明のマルトトリオース生成アミラーゼは、必要に応じて、凍結乾燥、真空乾燥、スプレードライ等により粉末化してもよい。
【0079】
6.酵素製剤
本発明の酵素製剤は、上記の本発明のマルトトリオース生成アミラーゼを有効成分として含む。酵素製剤に含まれるマルトトリオース生成アミラーゼとしては、(1-1)~(1~3)のいずれかのポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼのみが含まれていてもよく、(2-1)~(2-3)のいずれかのポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼのみが含まれていてもよく、(3-1)~(3-3)のポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼのいずれかのポリペプチドからなるマルトトリオース生成アミラーゼのみが含まれていてもよい。上記のマルトトリオース生成アミラーゼが複数含まれていてもよい。含まれるマルトトリオース生成アミラーゼの種類と含有比率は、基質によって適宜選択することが可能である。
【0080】
本発明の酵素製剤は、上記の本発明のマルトトリオース生成アミラーゼの他、賦形剤、緩衝剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水からなる群より選択される添加剤を含有することができる。賦形剤としてはデンプン、デキストリン、マルトース、トレハロース、乳糖、D-グルコース、ソルビトール、D-マンニトール、白糖、グリセロール等が挙げられる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等が挙げられる。保存剤としては塩化ナトリウム、フェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等が挙げられる。防腐剤としては塩化ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等が挙げられる。
【0081】
本発明の酵素製剤におけるマルトトリオース生成アミラーゼの含有量としては、マルトトリオース生成アミラーゼの効果が発揮される範囲で適宜設定される。
【0082】
本発明の酵素剤は、他の酵素を含んでいてもよい。他の酵素としては、例えば、アミラーゼ(α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ)、グルコシダーゼ(α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ)、ガラクトシダーゼ(α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ)、プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ)、ペプチダーゼ(ロイシンペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ)、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、ホスファターゼ(酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ)、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、デキストラナーゼ、トランスグルタミナーゼ、蛋白質脱アミド酵素、プルラナーゼ等が挙げられる。
【0083】
本発明の酵素製剤の形態としては、特に限定されないが、例えば、液体、粉末、顆粒等が挙げられる。本発明の酵素製剤は、一般的に公知の方法で調製することができる。
【0084】
7.マルトトリオースの製造方法
本発明のマルトトリオースの製造方法においては、上記の本発明のマルトトリオース生成アミラーゼを用いて、澱粉質からマルトトリオースを生成する工程を含む。
【0085】
澱粉質としては、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン及び澱粉;並びに、それらをアミラーゼ又は酸などによって部分的に加水分解して得られるアミロデキストリン、マルトデキストリン、マルトオリゴ糖などの澱粉部分分解物が挙げられる。アミラーゼで分解した澱粉部分分解物としては、例えば、α-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、マルトペンタオース生成アミラーゼ、マルトヘキサオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.98)などのアミラーゼを用いて、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉などを分解して得られる部分分解物が挙げられる。更には、部分分解物を調製する際、プルラナーゼ(EC 3.2.1.41)、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)などの澱粉枝切酵素を作用させてもよい。
【0086】
澱粉としては、例えば、トウモロコシ、小麦、米、バレイショ、サツマイモ、タピオカ等の由来の澱粉が挙げられる。これら澱粉は、糊化、液化して得られる液化澱粉溶液の態様で用いることができる。
【0087】
本発明のマルトトリオース生成アミラーゼを澱粉質に作用させるに際し、澱粉質溶液の濃度は特に限定されないが、工業的観点から、濃度10%(w/v)以上が挙げられる。反応温度は反応が進行する温度であれば特に制限されないが、具体的には約65℃まで、好ましくは45~60℃が挙げられる。反応pHは、通常5~9、好ましくは5.5~7.5が挙げられる。酵素の使用量は、目的とする酵素反応の進行速度により適宜選択すればよい。
【0088】
また、このマルトトリオース生成反応の際、他の酵素を更に同時併用して、糖化液中のマルトトリオース含量を増加させてもよい。例えば、プルラナーゼ、イソアミラーゼなどの澱粉枝切酵素を併用することにより、糖化液のマルトトリオースの含量を増加させることができる。
【0089】
上記の反応によって得られた反応液は、そのままマルトトリオース含有糖液として用いてもよいが、好ましくは、マルトトリオース含有糖液をさらに精製する。精製方法としては、糖の精製に用いられる通常の方法を適宜採用すればよく、例えば、活性炭による脱色、H+型、OH-型イオン交換樹脂による脱塩、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによる分画、アルコール及びアセトンなど有機溶媒による分別、適度な分離性能を有する膜による分離などの1種又は2種以上の精製方法が挙げられる。
【0090】
高純度のマルトトリオース含有糖質を得るための方法としては、イオン交換カラムクロマトグラフィーが挙げられ、具体的には、強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより夾雑糖類を除去し、目的物の含量を向上させたマルトトリオース又はこれを含む糖質を製造することができる。
【0091】
このようにして得られたマルトトリオース含有糖質、又はその含量を向上させた糖質は、濃縮することによりシラップ状製品とすることができる。このシラップ状製品は、更に乾燥、粉砕することにより粉末状製品にすることもできる。
【0092】
本発明の製造方法で得られるマルトトリオース又はこれを含む糖質は、シラップ又は粉末の形態で甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤などとして、飲食物、嗜好物、飼料、餌料、化粧品、医薬部外品、医薬品などの各種組成物の添加剤として用いることができる。
【実施例
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0094】
以下のように、生産菌候補からαアミラーゼを取得し、取得したαアミラーゼについてマルトトリオース生成活性を確認した。また、マルトトリオース生成活性を確認したαアミラーゼを生産した生産菌候補の同定を行った。さらに、マルトトリオース生成活性を確認したαアミラーゼについてアミノ酸配列解析及び塩基配列決定を行った。
【0095】
[試験例1:生産菌候補からのαアミラーゼ取得]
[1]生産菌候補の培養
以下の組成を有する液体培地を三角フラスコに入れ、オートクレーブを用い121℃、20分で殺菌した。液体培地に生産菌候補を接種し、30℃で3日間培養した。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
[2]酵素の精製
菌体分離、限外ろ過、硫安分画、透析、1回目DEAE-Sepharose処理、2回目DEAE-Sepharose処理、1回目SephadexG-150処理、及び2回目SephadexG-150処理によって、生産菌候補が生産した酵素を精製した。
【0099】
菌体分離は、培養上清を遠心分離(7,000rpm,5min)することにより行った。限外ろ過は、遠心上清に対し、限外ろ過膜(AIV膜,旭化成)を用いることにより行った。硫安分画により、0-40画分を取得した。透析は、トリス塩酸緩衝液(pH7.0)を用いて行った。1回目DEAE-Sepharose処理においては、DEAE-sepharoseカラムを用い、10-3M L-システインを含む2.5×10-3M トリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化及び洗浄し、KCl(0~1.0M グラジェント)により溶出を行い、アミラーゼ画分を集め、メンブレンフィルターにて濃縮後、 DEAE-Sepharoseで再分画した。2回目DEAE-Sepharose処理においては、1回目DEAE-Sepharose処理と同様の操作を行った。1回目SephadexG-150処理においては、SephadexG-150カラムを用い、10-3M L-システインを含む2.5×10-3M トリス塩酸緩衝液(pH7.0)で平衡化及び洗浄し、KCl(0~1.0M グラジエント)により溶出を行い、アミラーゼ画分を集め、メンブレンフィルターにて濃縮後、SephadexG-150カラムで再分画した。2回目SephadexG-150においては、1回目SephadexG-150と同様の操作を行った。
【0100】
なお、アミラーゼ画分とは、αアミラーゼ測定キット(キッコーマンバイオケミファ社製)を用い、当該キットのプロトコルに従ってαアミラーゼ活性を確認した画分である。
【0101】
SDS-PAGEによって、得られた画分を展開した。SDS-PAGEでは、得られた画分10μLを、SDSサンプルバッファー[Tris-HCLバッファー(pH6.8)0.125M、SDS4%(w/v)、スクロース10%(w/v)、BPB(ブロモフェノールブルー)0.01%(w/v)、DTT(ジチオスレイトール)0.2M]5μLで希釈して泳動サンプルを調製し、99.9℃で10分煮沸した後、泳動サンプルのうち10μLを泳動ゲル[SDSゲル;SuperSepTMAce15%(富士フイルム和光純薬株式会社製)]に供し、電気泳動した。泳動ゲルをPVDF膜[トランスブロットTurboTMミニPVDF転写パック(BIO-RAD社製)]に転写し、染色液[50%(v/v)メタノール水溶液中、CBB R-250を0.1%(w/v)含む]転写膜を染色し、50%(v/v)メタノール水溶液で脱色した。
【0102】
SDSゲルの染色結果を図1に示す。図1において、最も右のレーンは分子マーカーである。図1に示すように、得られた酵素はプロセシングにより3種類の形態をとることが示唆された。各形態の酵素の分子量は、それぞれ、矢印1で示されるものが55kDa、矢印2で示されるものが70kDa、矢印3で示されるものが77kDaであった。また、矢印1で示される分子量55kDaの酵素に関し、単一に精製したことを確認した。図1における55kDaの精製画分について、上述のαアミラーゼ測定キットによりαアミラーゼ活性を確認した。
【0103】
[試験例2:マルトトリオース生成活性の確認]
図1における55kDaの精製画分について、さらに以下のようにしてマルトトリオース生成活性を確認した。
【0104】
[1]基質液の調製
可溶性澱粉1gを約60mLの精製水に懸濁し、100℃で5分間加熱し、溶解した。冷却後、精製水を用いて100mLにメスアップし、1%(w/v)可溶性澱粉を含む基質液を得た。
【0105】
[2]反応用液の調製
基質液200μLと分析対象の酵素液50μLとを混合し、250μLの反応用液を調製した。
【0106】
[3]分析用サンプルの調製
反応用液を、50℃、48時間、1000rpmで振盪して反応後、100℃、5分間煮沸して反応を停止した。反応停止した反応用液を精製水で30倍に希釈して0.45μmフィルターで濾過し、濾液を分析用サンプルとして得た。
【0107】
分析用サンプルバイアルに移し、以下の条件でHPLC分析した。
【0108】
【表3】
【0109】
HPLC分析の結果、生成物としてマルトトリオースのピークを検出した。つまり、55kDa精製画分のマルトトリオース生成活性が確認できた。
【0110】
同様にして、図1における70kDa精製画分及び77kDa精製画分についてマルトトリオース生成活性が確認できた。
【0111】
[試験例3:マルトトリオース生成活性を有するαアミラーゼの生産菌同定]
マルトトリオース生成活性が確認されたαアミラーゼの生産菌候補を、16SrRNA解析に供した。その結果、当該生産菌候補がCellulosimicrobacterium sp.と同定された。
【0112】
[試験例4:マルトトリオース生成活性を有するαアミラーゼのアミノ酸配列解析及び塩基配列決定]
[1]N末端アミノ酸配列及び内部アミノ酸配列の解析
試験例1の項目[2]で得られた3種類のバンド(55kDa、70kDa、77kDa)を切り出し、プロテインシーケンサーで解析した。その結果、それぞれのバンドのN末端アミノ酸配列が特定できた。さらに各バンドをトリプシン処理後、LC-MSMSにて解析することで内部アミノ酸配列を特定した。
【0113】
[2]塩基配列の決定
[2-1]PCR
特定したN末端アミノ酸配列及び内部アミノ酸配列を元にプライマーを設計した。PCR反応液20μL/tubeを用いてPCR増幅を行った。PCR反応液の組成及びPCRの条件は以下の通りである。1%アガロースゲルにて泳動し、単一増幅を確認した。
【0114】
【表4】
【0115】
[2-2]TA-クローニング
PCR産物2μLとT-Vecor pMD20 1μL、Ligation Mix 3μLを混合したライゲーション反応液を用いて、16℃、30分でライゲーション反応を行い、その後、E.coli BL21(DE3)25μLに形質転換した。得られた形質転換溶液約30μLを、LB(Thermo Fisher Scientific社)及びAmp(最終濃度100μg/mL)を含む液体培地(以下において、「LB+Amp液体培地」と記載する。)プレートに塗布して、37℃、O/Nで培養した。
【0116】
[2-3]プラスミド抽出
形質転換体をLB+Amp液体培地(2mL)で37℃、O/Nで培養した。培養完了後、集菌し、Miniprep法にてプラスミドを抽出した。
【0117】
[2-4]シークエンス解析
サンガー法にてシークエンス解析を行い、部分塩基配列を決定した。
【0118】
[2-5]全長塩基配列解析
得られた部分塩基配列を基に作成したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションを実施し、得られた陽性クローンの遺伝子配列を解析して、目的の塩基配列を決定した。その結果、55kDaのバンドからは配列番号4の塩基配列が得られた。70kDaのバンドからは配列番号5の塩基配列が得られた。77kDaのバンドからは配列番号6の塩基配列が得られた。
【0119】
[3]アミノ酸配列の決定
上記塩基配列から、アミノ酸配列を決定した。配列番号4の塩基配列がコードするアミノ酸配列が配列番号1、配列番号5の塩基配列がコードするアミノ酸配列が配列番号2、配列番号6の塩基配列がコードするアミノ酸配列が配列番号3であった。つまり、試験例1によって、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のマルトトリオース生成アミラーゼが得られたことが分かった。
【0120】
[試験例5:マルトトリオース生成アミラーゼの組換生産]
[1]発現ベクターの構築
[1-1]PCR
アミラーゼ遺伝子を増幅するため、フォワードプライマーとして配列番号7に示すプライマー、リバースプライマーとして配列番号8に示すプライマーを設計した。PCR反応液50μL/tubeを用いてPCR増幅を行った。PCR反応液の組成及びPCRの条件は以下の通りである。1%アガロースゲルにて泳動し、単一増幅を確認した。
【0121】
【表5】
【0122】
[1-2.ライゲーション及び形質転換]
PCR産物とpUBCM21(pUC19及びpUB110のシャトルベクター)とを混合したライゲーション液(5μL)を用いて、16℃、30分でライゲーション反応を行い、その後、E.coli DH5α 50μLに形質転換した。得られた形質転換溶液約55μLを、LB+Amp(100μg/mL)プレートに塗布して、37℃、O/Nで培養した。ライゲーション反応液の組成は以下の通りである。
【表6】
【0123】
[1-3.プラスミド抽出]
試験例4の2-3と同様の方法によってプラスミド抽出を行い、プラスミドpUBCM21-amyを取得した。
【0124】
[2]Bacillus subtilisの形質転換
得られたベクターpUBCM21-amyを用いて、Bacillus subtilis 168株由来amyE欠損株の形質転換を行った。形質転換の方法については、B. subtilis Secretory Protein Expression System(TaKaRa社製)のプロトコルに従った。
【0125】
[3]マルトトリオース生成アミラーゼの製造
[3-1]形質転換株の培養
LB(Thermo Fisher Scientific社)及びカナマイシン(20μg/mL)を含む液体培地に形質転換株を接種し、37℃、4日間振とう培養した。培養開始後1日毎に0.5mLずつサンプリングを行い、4℃、15,000rpmで5分遠心することで上清を回収し、マルトトリオース生成アミラーゼを得た。
【0126】
[3-2]αアミラーゼの生産性確認
回収した上清(マルトトリオース生成アミラーゼ画分)について、活性測定及びSDS-PAGEによってαアミラーゼ生産性の確認を行った。活性測定は、αアミラーゼ測定キット(キッコーマンバイオケミファ社)を用い、当該キットのプロトコルに従って測定した。また、SDS-PAGEは、試験例1におけるSDS-PAGEと同様に行った。
【0127】
活性測定の結果、ネガティブコントロールであるpUBCM21(空ベクター導入株)と比較して、マルトトリオース生成アミラーゼ画分で有意な活性を確認した。また、SDS-PAGEの結果、コドンをBacillus subtilisに最適化することで、αアミラーゼ由来の3種のバンドを確認した。この3種のバンドは、それぞれの分子量から、配列番号1、2及び3のアミラーゼのものであると推定された。つまり、本試験例によって、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3のマルトトリオース生成アミラーゼが得られたと考えられる。
【配列表フリーテキスト】
【0128】
配列番号7及び8は、プライマーである。
図1
【配列表】
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