(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】自動分析方法および装置並びに検体ラック
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N35/00 E
(21)【出願番号】P 2020556055
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019043160
(87)【国際公開番号】W WO2020100643
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2018213709
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-258430(JP,A)
【文献】特開平06-281655(JP,A)
【文献】特開2003-344241(JP,A)
【文献】徳永 尚樹、他,全自動臨床検査システムSTACIAを用いたAPTTクロスミキシングテスト法の考案,医学検査,日本,2015年,Vol.64 No.5,p.583-590,I対象と方法(pp.584-585)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、前記検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を調製するための中空の穿刺針および検体プローブを備える検体サンプリング部と、反応容器内の調製された前記検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置において、
前記検体ラックを、前記検体ラック収容庫からラック移送手段によって前記検体サンプリング部に移送し、
前記検体サンプリング部において前記検体混合液の調製を行い、
前記測定部において、前記反応液の物理量の測定を行う自動分析方法であって、
前記反応液の物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を検体ラックに付与しておき、
前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または前記検体ラックが前記検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された前記恒温要否情報を読み取り、
前記読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて前記反応容器内に前記検体混合液を調製し、該検体混合液を恒温保持することなく、前記測定部において前記反応液の物理量の測定を行い、
前記読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いる空の検体容器内への前記検体混合液の調製を、前記中空の穿刺針による前記検体容器の蓋の穿孔中に前記検体プローブが前記中空の穿刺針内を通過して前記検体容器内に検体または正常血漿を吐出することにより行い、
該調製された検体混合液を収容した検体容器を搭載した検体ラックが検体ラック収容庫に返送された時点から計時して、前記検体ラック収容庫内において所定時間恒温保持してから、前記測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる前記反応液の物理量の測定を行う、
自動分析方法。
【請求項2】
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、前記検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を調製するための中空の穿刺針および検体プローブを備える検体サンプリング部と、反応容器内の調製された前記検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置において、
前記検体ラックを、前記検体ラック収容庫からラック移送手段によって前記検体サンプリング部に移送し、
前記検体サンプリング部において前記検体混合液の調製を行い、
前記測定部において、前記反応液の物理量の測定を行う自動分析方法であって、
前記検体ラックに、各検体ラックを他の検体ラックと区別する検体ラック識別情報を付与しておき、
前記反応液の物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックに付与される検体ラック識別情報と対応付けて記憶手段に記憶しておき、
前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または前記検体ラックが前記検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された前記検体ラック識別情報を読み取り、
前記読み取られた検体ラック識別情報に対応付けられている前記恒温要否情報を、前記記憶手段から取り出し、
前記取り出した前記恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて前記反応容器内に前記検体混合液を調製し、該検体混合液を恒温保持することなく、前記測定部において前記反応液の物理量の測定を行い、
取り出した前記恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いる空の前記検体容器内への前記検体混合液の調製を、前記中空の穿刺針による前記検体容器の蓋の穿孔中に前記検体プローブが前記中空の穿刺針内を通過して前記検体容器内に検体または正常血漿を吐出することにより行い、
該調製された検体混合液を収容した検体容器を搭載した検体ラックが検体ラック収容庫に返送された時点から計時して、前記検体ラック収容庫内において所定時間恒温保持してから、前記測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる前記反応液の物理量の測定を行う、
自動分析方法。
【請求項3】
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、前記検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を調製するための中空の穿刺針および検体プローブを備える検体サンプリング部と、反応容器内の調製された前記検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置において、
前記検体ラックを、前記検体ラック収容庫からラック移送手段によって前記検体サンプリング部に移送し、
前記検体サンプリング部において前記検体混合液の調製を行い、
前記測定部において、前記反応液の物理量の測定を行う自動分析方法であって、
前記検体ラックまたは該検体ラックが搭載する検体容器に、各検体ラックが搭載する各検体容器が収容する検体を示す検体識別情報を付与しておき、
前記反応液の物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックまたは各検体容器に付与される検体識別情報と対応付けて記憶手段に記憶しておき、
前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または前記検体ラックが前記検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックまたは該検体ラックに搭載された検体容器に付与された前記検体識別情報を読み取り、
前記読み取られた検体識別情報に対応付けられている前記恒温要否情報を、前記記憶手段から取り出し、
前記取り出した前記恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて前記反応容器内に前記検体混合液を調製し、該検体混合液を恒温保持することなく、前記測定部において前記反応液の物理量の測定を行い、
取り出した前記恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いる空の検体容器内への前記検体混合液の調製を、前記中空の穿刺針による前記検体容器の蓋の穿孔中に前記検体プローブが前記中空の穿刺針内を通過して前記検体容器内に検体または正常血漿を吐出することにより行い、
該調製された検体混合液を収容した検体容器を搭載した検体ラックが検体ラック収容庫に返送された時点から計時して、前記検体ラック収容庫内において所定時間恒温保持してから、前記測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる前記反応液の物理量の測定を行う、
自動分析方法。
【請求項4】
前記検体混合液の恒温保持を、前記検体ラック収容庫に設けられた加温手段によって行う請求項1から3いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項5】
前記検体混合液の恒温保持を、前記検体ラックに設けられた加温手段によって行う請求項1から3いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項6】
前記検体混合液として遅延型クロスミキシング検査用の検体混合液を調製する場合、
該調製の前に、前記検体ラックに並べて搭載されている複数の検体容器のうち、1つの検体容器だけに検体を収容しておき、その他の検体容器を空状態にしておく、
請求項1から5いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項7】
前記検体を収容した1つの検体容器と、空状態とされたその他の検体容器とを架設した1つの検体ラックを用いて、即時型クロスミキシング検査と遅延型クロスミキシング検査とを実施する請求項6に記載の自動分析方法。
【請求項8】
検体ラックに付与された前記恒温要否情報の読み取りを、前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で行い、
前記恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、前記恒温要否情報の読み取りがなされた検体ラックをラック返送手段によって前記検体ラック収容庫に返送する、
請求項1、4から7いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項9】
検体ラックに付与された前記検体ラック識別情報の読み取りを、前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で行い、
前記恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、前記検体ラック識別情報の読み取りがなされた検体ラックをラック返送手段によって前記検体ラック収容庫に返送する、
請求項
2に記載の自動分析方法。
【請求項10】
検体ラックに付与された前記検体識別情報の読み取りを、前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で行い、
前記恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、前記検体識別情報の読み取りがなされた検体ラックをラック返送手段によって前記検体ラック収容庫に返送する、
請求項
3に記載の自動分析方法。
【請求項11】
前記ラック返送手段として前記ラック移送手段を兼用し、
該ラック移送手段を、検体ラックを前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けて移送する場合とは逆方向に動作させることによって、前記検体ラックを前記検体ラック収容庫に返送する、
請求項8、9または10に記載の自動分析方法。
【請求項12】
検体ラックに付与された前記恒温要否情報の読み取りを、検体ラックが検体ラック収容庫に収容された状態で行い、
前記恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、前記恒温要否情報の読み取りがなされた検体ラックを検体ラック収容庫内に収容した状態で前記恒温保持を行う、
請求項1、4から7いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項13】
検体ラックに付与された前記検体ラック識別情報の読み取りを、検体ラックが検体ラック収容庫に収容された状態で行い、
前記恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、前記検体ラック識別情報の読み取りがなされた検体ラックを検体ラック収容庫内に収容した状態で前記恒温保持を行う、
請求項
2に記載の自動分析方法。
【請求項14】
検体ラックに付与された前記検体識別情報の読み取りを、検体ラックが検体ラック収容庫に収容された状態で行い、
前記恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、前記検体識別情報の読み取りがなされた検体ラックを検体ラック収容庫内に収容した状態で前記恒温保持を行う、
請求項
3に記載の自動分析方法。
【請求項15】
前記検体混合液の恒温保持を開始してから該検体混合液を試料として測定を開始するまでの時間に基づいて、恒温保持の時間を定める請求項1から14いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項16】
前記検体混合液の恒温保持を開始する前に、前記検体ラック収容庫または前記検体ラックを、該恒温保持における検体混合液の保持温度以上の温度まで予備加温しておく請求項1から15いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項17】
前記調製された検体混合液を前記検体容器から反応容器に移し替え、この反応容器に収容した状態で前記測定部に送る請求項1から16いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項18】
ある検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を所定時間に亘って恒温保持する
場合、
該検体ラック以外の検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる
前記反応液に関する物理量の測定の開始時点を、該測定の終了が前記恒温保持の終了より
も前となるように管理する、
請求項1から17いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項19】
即時型クロスミキシング検査における前記物理量の測定結果に基づいて遅延型クロスミキシング検査を自動実行する、
請求項1から18いずれか1項に記載の自動分析方法。
【請求項20】
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、前記検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための中空の穿刺針および検体プローブを備える検体サンプリング部と、反応容器内の調製された前記検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置であって、
前記検体ラックを、前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に移送するラック移送手段と、
前記反応液の物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示して、該検体ラックに付与された恒温要否情報と、
前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた前記検体ラックの移送の過程で、または前記検体ラックが前記検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された前記恒温要否情報を読み取る読取部と、
前記検体ラックを前記検体サンプリング部から前記検体ラック収容庫に返送するラック返送手段と、
前記検体ラックまたは前記ラック収容庫に設けられて、検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持する恒温保持手段と、
読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて前記反応容器内に前記検体混合液を調製し、該検体混合液を恒温保持することなく、前記測定部において前記反応液の物理量の測定を実行させる一方、
前記読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いる空の検体容器内への前記検体混合液の調製を、前記中空の穿刺針による前記検体容器の蓋の穿孔中に前記検体プローブが前記中空の穿刺針内を通過して前記検体容器内に検体または正常血漿を吐出することにより実行させた後、該調製された検体混合液を収容した検体容器を搭載した検体ラックが検体ラック収容庫に返送された時点から計時して、前記恒温保持手段により所定時間恒温保持させてから、前記測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる前記反応液の物理量の測定を実行させる制御部と、
を有する自動分析装置。
【請求項21】
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、前記検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための中空の穿刺針および検体プローブを備える検体サンプリング部と、反応容器内の調製された前記検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置であって、
前記検体ラックを、前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に移送するラック移送手段と、
各検体ラックを他の検体ラックと区別する情報であって、前記検体ラックに付与された検体ラック識別情報と、
前記反応液の物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックに付与される検体ラック識別情報と対応付けて記憶した記憶手段と、
前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた前記検体ラックの移送の過程で、または前記検体ラックが前記検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された前記検体ラック識別情報を読み取る読取部と、
前記検体ラックを前記検体サンプリング部から前記検体ラック収容庫に返送するラック返送手段と、
前記検体ラックまたは前記ラック収容庫に設けられて、検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持する恒温保持手段と、
読み取られた検体ラック識別情報に対応付けられている前記恒温要否情報を、前記記憶手段から取り出す手段と、
前記取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて前記反応容器内に前記検体混合液を調製し、該検体混合液を恒温保持手段に送ることなく、前記測定部において前記反応液の物理量の測定を実行させる一方、
前記取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いる空の検体容器内への前記検体混合液の調製を、前記中空の穿刺針による前記検体容器の蓋の穿孔中に前記検体プローブが前記中空の穿刺針内を通過して前記検体容器内に検体または正常血漿を吐出することにより実行させた後、該調製された検体混合液を収容した検体容器を搭載した検体ラックが検体ラック収容庫に返送された時点から計時して、前記恒温保持手段に送って所定時間恒温保持させてから、前記測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる前記反応液の物理量の測定を実行させる制御部と、
を有する自動分析装置。
【請求項22】
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、前記検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための中空の穿刺針および検体プローブを備える検体サンプリング部と、反応容器内の調製された前記検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置であって、
前記検体ラックを、前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に移送するラック移送手段と、
各検体ラックが搭載する検体容器が収容する検体を示す情報であって、前記検体ラックまたは前記検体容器に付与された検体識別情報と、
前記反応液の物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックまたは各検体容器に付与される検体識別情報と対応付けて記憶した記憶手段と、
前記検体ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けた前記検体ラックの移送の過程で、または前記検体ラックが前記検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックまたは検体容器に付与された前記検体識別情報を読み取る読取部と、
前記検体ラックを前記検体サンプリング部から前記検体ラック収容庫に返送するラック返送手段と、
前記検体ラックまたは前記ラック収容庫に設けられて、検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持する恒温保持手段と、
読み取られた検体識別情報に対応付けられている前記恒温要否情報を、前記記憶手段から取り出す手段と、
前記取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または前記読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて前記反応容器内に前記検体混合液を調製し、該検体混合液を前記恒温保持手段に送ることなく、前記測定部において前記反応液の物理量の測定を実行させる一方、
前記取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、前記読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または前記読み取りがなされた検体容器中の検体を用いる空の検体容器内への前記検体混合液の調製を、前記中空の穿刺針による前記検体容器の蓋の穿孔中に前記検体プローブが前記中空の穿刺針内を通過して前記検体容器内に検体または正常血漿を吐出することにより実行させた後、該調製された検体混合液を収容した検体容器を搭載した検体ラックが検体ラック収容庫に返送された時点から計時して、前記恒温保持手段に送って所定時間恒温保持させてから、前記測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる前記反応液の物理量の測定を実行させる制御部と、
を有する自動分析装置。
【請求項23】
前記検体ラックに、自動分析装置が行う自動分析における少なくとも一つの分析工程に関する情報が付与されている請求項20から22いずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項24】
前記ラック移送手段が、検体ラックを前記ラック収容庫から前記検体サンプリング部に向けて移送する場合とは逆方向に駆動可能に構成されて、該ラック移送手段が前記ラック返送手段として兼用されている請求項20から22いずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項25】
前記恒温保持手段が前記ラック収容庫に設けられて、複数の検体ラックの中で特定の検体ラックのみを対象にして前記恒温保持を行うように構成されている請求項20から24いずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項26】
前記恒温保持手段が前記ラック収容庫に設けられて、複数の検体ラックの全てを対象にして前記恒温保持を行うように構成されている請求項20から25いずれか1項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分析方法、特に詳しくは、検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックを用いて、検体に関する分析を行う自動分析方法に関するものである。また本発明は、そのような自動分析方法を実施するための自動分析装置並びに検体ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や2に示されるように、血液や尿等の検体を自動分析する装置が提供されている。従来のこの種の自動分析装置では、検体を試料として反応容器(キュベット、セル)内に所定量の試料と所定量の試薬を分注して混和された反応液から得られる吸光度や散乱光強度等の物理量を測定している。そして、予め濃度等が既知である標準試料がある測定項目では、標準試料を測定して得た検量線を用いて、濃度や活性値等の測定値を算出している。
【0003】
なお、従来の自動分析装置では、特許文献2にも示されているように、検体を収容する検体容器を検体ラック(ホルダー)に複数搭載させ、この検体ラック毎に分析を行うこともなされている。
【0004】
ところで、前述したような反応液の物理量を測定する試料分析においては、検体をそのまま試料とはせずに、所定の希釈液を用いて検体を希釈した「希釈済み検体」を試料とする検査方法や、検体に所定の前処理を施した「前処理済み検体」を試料とする検査方法がある。例えば、即時型クロスミキシング検査では正常血漿が検体希釈液として用いられ、検体と正常血漿とを所定比率で混合した検体混合液が試料となる。また、遅延型クロスミキシング検査では、前処理として検体と正常血漿とを所定比率で混合した検体混合液を37℃で2時間の恒温保持(以下、単に「恒温保持」とも表す)したものが試料となる。
【0005】
前記検体混合液を恒温保持させる場合、自動分析装置内で恒温に保たれる測定部の反応容器を用いて前処理を行うと、その間は当該反応容器で他の項目の測定を行うことが不可能になる。そこで従来は、検体と正常血漿とを混合した後、
(a)操作者が外部の恒温槽を用いて検体混合液を恒温保持し、所定時間が経過した後に分析装置で測定する、あるいは
(b)検体混合液収容容器を自動分析装置内の所定の恒温槽に移動して、その状態で所定時間が経過した後に物理量の測定を行う(例えば特許文献3参照)、
といった対処がなされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-281655号公報
【文献】特開2003-344241号公報
【文献】国際公開公報第2016/152305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記(a)の場合は、マニュアル操作であるため測定条件の管理が煩雑になるという問題がある。また上記(b)の場合は、自動分析装置において恒温室あるいは恒温スペースを新たに設けたり、検体混合液収容容器を恒温槽に移送する機構を設けたりする必要があるために、装置の大型化や複雑化を招いていた。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、検体ラックを用いる自動分析装置によってなされる自動分析方法において、分析装置の大型化や複雑化を招くことなく、検体混合液を恒温保持させながら後続の測定を行い得るようにすることを目的とする。さらに本発明は、本発明による自動分析方法を実施するための自動分析装置並びに検体ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の自動分析方法は、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置において、
検体を収容した複数の検体容器を搭載した検体ラックを、検体ラック収容庫からラック移送手段によって検体サンプリング部に移送し、
検体サンプリング部において検体混合液の調製を行い、
測定部において、反応液の物理量の測定を行う自動分析方法であって、
検体ラックに、該検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を付与しておき、
検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または検体ラックが検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された恒温要否情報を読み取り、
読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を行った後、この調製された検体混合液を恒温保持することなく、測定部において該検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を行い、
読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を行った後、この調製された検体混合液を検体ラック収容庫内において恒温保持してから、測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を行う、ことを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明における「恒温保持」とは、例えば即時型クロスミキシング検査におけるR1試薬添加前に必要となる短時間(通常は3分以内)の検体加温処理(検体を37℃にするための処理)は含まないものである。
【0011】
また本発明による第2の自動分析方法は、検体ラックに恒温要否情報を付与する代わりに、各検体ラックに他の検体ラックと区別する検体ラック識別情報を付与しておき、その検体ラック識別情報を読み取ることによって各検体ラックが恒温保持を必要としているか否かを把握できるようにしたものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置において、
検体を収容した複数の検体容器を搭載した検体ラックを、検体ラック収容庫からラック移送手段によって検体サンプリング部に移送し、
検体サンプリング部において検体混合液の調製を行い、
測定部において、反応液の物理量の測定を行う自動分析方法であって、
検体ラックに、各検体ラックを他の検体ラックと区別する検体ラック識別情報を付与しておき、
各検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックに付与される検体ラック識別情報と対応付けて記憶手段に記憶しておき、
検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または検体ラックが検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された検体ラック識別情報を読み取り、
読み取られた検体ラック識別情報に対応付けられている恒温要否情報を、記憶手段から取り出し、
取り出した恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を行った後、この調製された検体混合液を恒温保持することなく、測定部において該検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を行い、
取り出した恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を行った後、この調製された検体混合液を検体ラック収容庫内において恒温保持してから、測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を行う、
ことを特徴とするものである。
【0012】
また本発明による第3の自動分析方法は、検体ラックに恒温要否情報を付与する代わりに、各検体ラックが搭載する検体容器が収容する検体を示す検体識別情報を検体ラックまたは検体容器に付与しておき、その検体識別情報を読み取ることによって各検体ラックまたは検体容器が恒温保持を必要としているか否かを把握できるようにしたものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置において、
検体を収容した複数の検体容器を搭載した検体ラックを、検体ラック収容庫からラック移送手段によって検体サンプリング部に移送し、
検体サンプリング部において検体混合液の調製を行い、
測定部において、反応液の物理量の測定を行う自動分析方法であって、
検体ラックまたは該検体ラックが搭載する検体容器に、各検体ラックが搭載する各検体容器が収容する検体を示す検体識別情報を付与しておき、
各検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックまたは各検体容器に付与される検体識別情報と対応付けて記憶手段に記憶しておき、
検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または検体ラックが検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックまたは該検体ラックに搭載された検体容器に付与された検体識別情報を読み取り、
読み取られた検体識別情報に対応付けられている恒温要否情報を、記憶手段から取り出し、
取り出した恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を行った後、この調製された検体混合液を恒温保持することなく、測定部において該検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を行い、
取り出した恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を行った後、この調製された検体混合液を検体ラック収容庫内において恒温保持してから、測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を行う、
ことを特徴とするものである。
【0013】
なお、上記の「検体混合液」とは、検体100%つまり正常血漿を含まないもの、反対に正常血漿100%つまり検体を含まないものも含むものとする。
【0014】
本発明の自動分析方法においては、検体混合液の恒温保持を、例えば検体ラック収容庫に設けられた加温手段によって行うことが望ましい。
【0015】
あるいは、検体混合液の恒温保持を、検体ラックに設けられた加温手段によって行うようにしてもよい。
【0016】
本発明の自動分析方法において検体混合液の調製は、検体を収容している検体容器を用いて行ってもよいし、あるいは、検体を収容している検体容器とは別の空状態の検体容器を用いて行ってもよい。さらに、例えば遅延型クロスミキシング検査においては、反応容器を用いて検体混合液の調製を行ってもよい。その場合、複数の反応容器を用いて検体混合液を調製し、得られた検体混合液を反応容器から検体容器に移し替えるようにしてもよい。
【0017】
上述のように検体容器とは別の空状態の検体容器を用いる場合は、検体を収容した1つの検体容器と、空状態とされたその他の検体容器とを架設した1つの検体ラックを用いて、即時型クロスミキシング検査と遅延型クロスミキシング検査とを実施するのが望ましい。
【0018】
また本発明の自動分析方法においては、検体ラックに付与された恒温要否情報、検体ラック識別情報あるいは検体識別情報の読み取りを、検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で行い、
読み取られた恒温要否情報、検体ラック識別情報あるいは検体識別情報と対応付けて記憶手段に記憶されている恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、恒温要否情報の読み取りがなされた検体ラックをラック返送手段によって検体ラック収容庫に返送する、
ことが望ましい。
【0019】
そのようにする場合は、
ラック返送手段としてラック移送手段を兼用し、
このラック移送手段を、検体ラックを検体サンプリング部に向けて移送する場合とは逆方向に動作させることによって、検体ラックを検体ラック収容庫に返送する、
ことが望ましい。
【0020】
また本発明の自動分析方法においては、検体ラックに付与された恒温要否情報、検体ラック識別情報あるいは検体識別情報の読み取りを、検体ラックが検体ラック収容庫に収容された状態で行い、
読み取られた恒温要否情報、検体ラック識別情報あるいは検体識別情報と対応付けて記憶手段に記憶されている恒温要否情報が恒温保持を必要とすることを示している場合に、上記読み取りがなされた検体ラックを検体ラック収容庫内に収容した状態で恒温保持を行う、
ようにしてもよい。
【0021】
また、本発明の自動分析方法においては、
検体混合液の恒温保持を開始してから該検体混合液を試料として測定を開始するまでの時間に基づいて、恒温保持の時間を定めることが望ましい。
【0022】
また、本発明の自動分析方法においては、検体混合液の恒温保持を開始する前に、検体ラック収容庫または検体ラックを、恒温保持における検体混合液の保持温度以上の温度まで予備加温しておくようにしてもよい。
【0023】
また、本発明の自動分析方法においては、調製された検体混合液を後述する前処理容器からキュベット等の反応容器に移し替え、この反応容器に収容した状態で測定部に送ることが望ましい。
【0024】
また、本発明の自動分析方法において検体容器や、前処理容器としては、蓋(栓)を有し、蓋を穿孔可能な中空のピアサ(穿刺針)で穿孔しているときに検体プローブで検体の吸引・吐出、正常血漿の吸引・吐出および検体混合液の吸引・吐出ができる検体容器を用いることが望ましい。
【0025】
また、本発明の自動分析方法においては、
ある検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を所定時間に亘って恒温保持する場合、
該検体ラック以外の検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定の開始時点を、該測定の終了が恒温保持の終了よりも前となるように管理する、
ことが望ましい。
【0026】
また、本発明の自動分析方法においては、即時型クロスミキシング検査における物理量の測定結果に基づいて遅延型クロスミキシング検査を自動実行するようにしてもよい。
【0027】
一方、本発明による第1の自動分析装置は、前述した本発明による第1の自動分析方法を実施可能なものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置であって、
検体を収容した複数の検体容器を搭載した検体ラックを、検体ラック収容庫から検体サンプリング部に移送するラック移送手段と、
各検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示して、該検体ラックに付与された恒温要否情報と、
検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または検体ラックが検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された恒温要否情報を読み取る読取部と、
検体ラックを検体サンプリング部から検体ラック収容庫に返送するラック返送手段と、
検体ラックまたはラック収容庫に設けられて、検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持する恒温保持手段と、
読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を実行させた後、この調製された検体混合液を恒温保持することなく、測定部において該検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を実行させる一方、読み取られた恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を実行させた後、この調製された検体混合液を恒温保持手段により恒温保持させてから、測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を実行させる制御部と、を有することを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明による第2の自動分析装置は、前述した本発明による第2の自動分析方法を実施可能なものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置であって、
検体を収容した複数の検体容器を搭載した検体ラックを、検体ラック収容庫から検体サンプリング部に移送するラック移送手段と、
各検体ラックを他の検体ラックと区別する情報であって、検体ラックに付与された検体ラック識別情報と、
各検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックに付与される検体ラック識別情報と対応付けて記憶した記憶手段と、
検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または検体ラックが検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックに付与された検体ラック識別情報を読み取る読取部と、
検体ラックを検体サンプリング部から検体ラック収容庫に返送するラック返送手段と、
検体ラックまたは検体ラック収容庫に設けられて、検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持する恒温保持手段と、
読み取られた検体ラック識別情報に対応付けられている恒温要否情報を、記憶手段から取り出す手段と、
取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を実行させた後、この調製された検体混合液を恒温保持手段に送ることなく、測定部において該検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を実行させる一方、取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を実行させた後、この調製された検体混合液を恒温保持手段に送って恒温保持させてから、測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を実行させる制御部と、
を有することを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明による第3の自動分析装置は、前述した本発明による第3の自動分析方法を実施可能なものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置であって、
検体を収容した複数の検体容器を搭載した検体ラックを、検体ラック収容庫から検体サンプリング部に移送するラック移送手段と、
各検体ラックが搭載する検体容器が収容する検体を示す情報であって、検体ラックまたは検体容器に付与された検体識別情報と、
各検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液と試薬とからなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報を、各検体ラックまたは各検体容器に付与される検体識別情報と対応付けて記憶した記憶手段と、
検体ラック収容庫から検体サンプリング部に向けた検体ラックの移送の過程で、または検体ラックが検体ラック収容庫に設置された際に、該検体ラックまたは検体容器に付与された検体識別情報を読み取る読取部と、
検体ラックを検体サンプリング部から検体ラック収容庫に返送するラック返送手段と、
検体ラックまたは検体ラック収容庫に設けられて、検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持する恒温保持手段と、
読み取られた検体識別情報に対応付けられている恒温要否情報を、記憶手段から取り出す手段と、
取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要としないことを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を実行させた後、この調製された検体混合液を恒温保持手段に送ることなく、測定部において該検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を実行させる一方、取り出された恒温要否情報が、恒温保持を必要とすることを示している場合は、読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて検体混合液の調製を実行させた後、この調製された検体混合液を恒温保持手段に送って恒温保持させてから、測定部において該恒温保持後の検体混合液と試薬とからなる反応液の物理量の測定を実行させる制御部と、
を有することを特徴とするものである。
【0030】
本発明の自動分析装置においては、検体ラックに、自動分析装置が行う自動分析における少なくとも一つの分析工程に関する情報が付与されていることが望ましい。
【0031】
また、本発明の自動分析装置においては、ラック移送手段が、検体ラックをラック収容庫から検体サンプリング部に向けて移送する場合とは逆方向に動作可能に構成されて、該ラック移送手段がラック返送手段として兼用されていることが望ましい。
【0032】
また、本発明の自動分析装置において検体ラックに搭載される検体容器や、前処理容器は、蓋を有し、蓋を穿孔可能な中空のピアサ(穿刺針)で穿孔しているときにサンプルプローブで検体、正常血漿あるいは検体混合液の吸引・吐出ができる容器であることが望ましい。
【0033】
また、本発明の自動分析装置において恒温保持手段は、例えばラック収容庫において、複数の検体ラックの中で特定の検体ラックのみを対象にして検体混合液の恒温保持を行うように構成される。ただし、それに限らず恒温保持手段は、ラック収容庫において、複数の検体ラックの全てを対象にして検体混合液の恒温保持を行うように構成されてもよい。
【0034】
他方、本発明による第1の検体ラックは、前述した本発明による第1の自動分析方法を実施可能なものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を架設する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置を構成する検体ラックであって、
検体混合液を収容する複数の検体容器を保持する保持部と、
この保持部に保持された複数の検体容器を加温する加温手段と、
加温される検体容器の温度を所定の保持温度に保つ温度調節手段と、
検体容器に収容された検体混合液に試薬を混合してなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報と、
を有することを特徴とするものである。
【0035】
また、本発明による第2の検体ラックは、前述した本発明による第2の自動分析方法を実施可能なものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置を構成する検体ラックであって、
検体混合液を収容する複数の検体容器を保持する保持部と、
この保持部に保持された複数の検体容器を加温する加温手段と、
加温される検体容器の温度を所定の保持温度に保つ温度調節手段と、
各検体ラックを他の検体ラックと区別する情報であって、該検体ラックに付与された検体ラック識別情報と、
を有することを特徴とするものである。
【0036】
また、本発明による第3の検体ラックは、前述した本発明による第3の自動分析方法を実施可能なものであり、具体的には、
検体を収容する複数の検体容器を搭載する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置を構成する検体ラックであって、
検体混合液を収容する複数の検体容器を保持する保持部と、
この保持部に保持された複数の検体容器を加温する加温手段と、
加温される検体容器の温度を所定の保持温度に保つ温度調節手段と、
各検体ラックが搭載する検体容器が収容する検体を示す情報であって、該検体ラックまたは検体容器に付与された検体識別情報と、
を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明による第1の自動分析方法は、読み取られた恒温要否情報が、検体混合液の恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて調製された検体混合液を恒温保持することなく、その検体混合液に関する測定を行い、
読み取られた恒温要否情報が、検体混合液の恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックを検体ラック収容庫内に配置し、この検体ラック収容庫において、該検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持してから、恒温保持後の検体混合液に関する測定を行う、
ようにしたので、この第1の自動分析方法によれば、検体ラックにおいて検体混合液を恒温保持している間も、別の検体ラックの検体容器に収容された検体を含む検体混合液に関する測定を行うことが可能となる。
【0038】
また、本発明による第2の自動分析方法は、読み取られた検体ラック識別情報と対応付けられた恒温要否情報が、検体混合液の恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中の検体を用いて調製された検体混合液を恒温保持することなく、その検体混合液に関する測定を行い、
読み取られた検体ラック識別情報と対応付けられた恒温要否情報が、検体混合液の恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックを検体ラック収容庫内に配置し、この検体ラック収容庫において、該検体ラックに搭載された検体容器中の検体混合液を恒温保持してから、恒温保持後の検体混合液に関する測定を行う、
ようにしたので、この第2の自動分析方法によれば上記第1の自動分析方法と同様に、検体ラックにおいて検体混合液を恒温保持している間も、別の検体ラックの検体容器に収容された検体を含む検体混合液に関する測定を行うことが可能となる。
【0039】
また、本発明による第3の自動分析方法は、読み取られた検体識別情報と対応付けられた恒温要否情報が、検体混合液の恒温保持を必要としないことを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて調製された検体混合液を恒温保持することなく、その検体混合液に関する測定を行い、
読み取られた検体識別情報と対応付けられた恒温要否情報が、検体混合液の恒温保持を必要とすることを示している場合は、該読み取りがなされた検体ラックに搭載された検体容器中、または読み取りがなされた検体容器中の検体を用いて調製された検体混合液を恒温保持してから、恒温保持後の検体混合液に関する測定を行う、
ようにしたので、この第3の自動分析方法によれば上記第1の自動分析方法や第2の自動分析方法と同様に、検体ラックにおいて検体混合液を恒温保持している間も、別の検体ラックの検体容器に収容された検体を含む検体混合液に関する測定を行うことが可能となる。
【0040】
そして本発明の自動分析方法は、本質的に検体ラックの移動経路を変えるだけで、従来提供されている一般的な自動分析装置を用いて実施可能であるので、自動分析装置の大型化や複雑化を招くことがない。また本発明の自動分析方法は、各工程をユーザーの手操作を必要とせずに実行できるので、正確な測定を実施可能となる。
【0041】
一方、本発明による第1の自動分析装置は、前述した通りの検体ラックと、検体ラック収容庫と、検体サンプリング部と、測定部と、ラック移送手段と、恒温要否情報と、この恒温要否情報を読み取る読取部と、ラック返送手段と、恒温保持手段と、制御部とを有するものであるので、前述した本発明による第1の自動分析方法を実施することができる。
【0042】
また、本発明による第2の自動分析装置は、前述した通りの検体ラックと、検体ラック収容庫と、検体サンプリング部と、測定部と、ラック移送手段と、検体ラック識別情報と、この検体ラック識別情報と対応付けて恒温要否情報を記憶した記憶手段と、読取部と、ラック返送手段と、恒温保持手段と、恒温要否情報を記憶手段から取り出す手段と、制御部とを有するものであるので、前述した本発明による第2の自動分析方法を実施することができる。
【0043】
また、本発明による第3の自動分析装置は、前述した通りの検体ラックと、検体ラック収容庫と、検体サンプリング部と、測定部と、ラック移送手段と、検体識別情報と、この検体識別情報と対応付けて恒温要否情報を記憶した記憶手段と、読取部と、ラック返送手段と、恒温保持手段と、恒温要否情報を記憶手段から取り出す手段と、制御部とを有するものであるので、前述した本発明による第3の自動分析方法を実施することができる。
【0044】
そして本発明による自動分析装置は、恒温保持手段を検体ラックに設ける場合は、大型化を回避できるものとなる。また、恒温保持手段を検体ラック収容庫に設ける場合でも、本来ある程度大きく形成される検体ラック収容庫に恒温保持手段を設置するのは容易であって、自動分析装置が全体として大型化することを回避できる。
【0045】
また、本発明による第1の検体ラックは前述した通り、
検体を収容する複数の検体容器を架設する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置を構成する検体ラックであって、
検体混合液を収容する複数の検体容器を保持する保持部と、
この保持部に保持された複数の検体容器を加温する加温手段と、
加温される検体容器の温度を所定の保持温度に保つ温度調節手段と、
検体容器に収容された検体混合液に試薬を混合してなる反応液に関する物理量の測定が、該測定の前に検体混合液の恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報と、
を有するので、本発明による第1の自動分析方法を実施するために適用可能である。
【0046】
一方、本発明による第2の検体ラックは前述した通り、
検体を収容する複数の検体容器を架設する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置を構成する検体ラックであって、
検体混合液を収容する複数の検体容器を保持する保持部と、
この保持部に保持された複数の検体容器を加温する加温手段と、
加温される検体容器の温度を所定の保持温度に保つ温度調節手段と、
各検体ラックを他の検体ラックと区別する情報であって、該検体ラックに付与された検体ラック識別情報と、
を有するので、本発明による第2の自動分析方法を実施するために適用可能である。
【0047】
また、本発明による第3の検体ラックは前述した通り、
検体を収容する複数の検体容器を架設する検体ラックと、検体ラックを収容する検体ラック収容庫と、検体と正常血漿とを所定量ずつ混合してなる検体混合液を検体容器内で調製するための検体サンプリング部と、調製された検体混合液に試薬を添加してなる反応液について所定の物理量の測定を行う測定部とを有する自動分析装置を構成する検体ラックであって、
検体混合液を収容する複数の検体容器を保持する保持部と、
この保持部に保持された複数の検体容器を加温する加温手段と、
加温される検体容器の温度を所定の保持温度に保つ温度調節手段と、
各検体ラックが搭載する検体容器が収容する検体を示す情報であって、該検体ラックまたは検体容器に付与された検体識別情報と、
を有するので、本発明による第3の自動分析方法を実施するために適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の第1の実施形態による自動分析装置を示す概略平面図
【
図3】
図1の自動分析装置に用いられる検体ラックを示す斜視図
【
図4】
図1に示す自動分析装置の、
図1とは異なる状態を示す概略平面図
【
図5】本発明の第2の実施形態による自動分析装置を構成する検体ラックを示す斜視図
【
図6】本発明の第3の実施形態による自動分析装置を示す概略平面図
【
図7】本発明に関連するクロスミキシング検査の結果例を示すグラフ
【
図8】検体ラックに貼付されるバーコードラベルの例を示す概略図
【
図9】検体容器に貼付されるバーコードラベルの例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明による自動分析装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による自動分析装置10の概略構成を示す平面図である。また
図2は、この自動分析装置10の一部を構成する筐体11の前面11aおよび上面11bの近傍部分を示す斜視図である。本実施形態の自動分析装置10は、一例として前述したクロスミキシング検査および、その他の血液に関する分析を行えるように構成されたものであり、
図1に示される通り、ラック収容庫1、検体サンプリング部2、試薬保管部3、キュベット保管部4、測定部としての複数の測光部5、情報読取部6、マイクロプロセッサー等からなる制御部7、表示入力部8、および複数の検体ラック9を含んで構成されている。なお
図1では、筐体11の上面11bは省いている。
【0050】
この自動分析装置10はさらに、サンプルプローブ50、試薬プローブ60、およびキュベットチャック70を備えている。
図2に示されるように、サンプルプローブ50および試薬プローブ60の一部は、筐体上面11bから上方に突出している。またこの
図2に明示される通りラック収容庫1は、筐体前面11aと筐体上面11bとに亘って延びる透明のカバー11dによって覆われている。ラック収容庫1は、このカバー11dが上方に持ち上げられると、内部が開かれた状態となる。また筐体上面11bには、開口11eおよび開口11fが設けられている。
【0051】
試薬保管部3は、上記の開口11eを通して露出する状態となる。なお試薬保管部3は、保管している各種試薬の品質劣化を防止するために、保冷庫として構成されることが多い。特にそのようにする場合は、開口11eを閉じる蓋体(試薬庫カバー)を設け、装置使用時には試薬補充の際以外、その蓋体を閉じた状態に保つのが望ましい。また通常、その蓋体には、後述する試薬プローブ60が出し入れできるプローブ出し入れ孔が設けられる。一方、測光部5および、キュベットチャック70のチャック部73は、上記の開口11fの下側に配置されている。
【0052】
さらに筐体上面11bには、自動分析装置10の操作の指令を与えるための操作パネル12が設けられている。筐体11の1つの側面11cには表示入力部載置部材13が固定され、その上に例えば液晶表示タッチパネル等からなる表示入力部8が載置される。この表示入力部8は、試料分析の結果や、自動分析装置10に与えられる指示や、自動分析装置10の状態等を表示するために用いられる。上記操作の指令等は、操作パネル12だけでなく、この表示入力部8から入力することも可能となっている。なお
図1では、表示入力部8を簡略表示している。
【0053】
図1に戻って説明を続ける。ラック収容庫1には、複数の検体容器30を搭載した検体ラック9が載置されるラックトレイ31がセットされる。本実施形態では一例として、1つの検体ラック9は5本の検体容器30を搭載し、ラックトレイ31は10個の検体ラック9を載置可能に構成されている。
図1では省略してあるが、
図2に明示されるようにラックトレイ31には11枚の仕切板31aが突設されている。そして、2枚の仕切板31aの間が1つのラック載置レーン(以下、単にレーンという)とされ、各レーンに1つの検体ラック9が載置される。
【0054】
ここで、
図3を参照して検体ラック9について詳しく説明する。検体ラック9は、それぞれ上下方向に延びる空間である5つの容器保持部9aを有するブロック9bから構成されている。各容器保持部9aには、1本ずつ検体容器30が縦向きにして収容される。なお、同図では検体容器30を1本だけ表示し、他は省略している。これは、後述する
図5においても同様である。検体容器30は例えばPET管等からなり、分析対象となる検体である被検血漿と正常血漿とが混和されてなる検体混合液15を収容する。なおこの「検体混合液」とは、先に述べた通り、検体だけの場合も、また正常血漿だけの場合も含めてこのように称するものである。また、ブロック9bの1つの端面には、検体の分析方法に関連する情報9cが、例えばバーコードや2次元コードの形で表示されている。通常、検体容器の容器容量は5mLであり、その中に血液検体が2mL程度収容されている。試料として必要な検体混合液は50μL、吸引時余分量が5μL、容器のデッドボリュームが100μLとすれば、検体混合液の総量は最小で155μLあればよいため、“前処理容器”の容器容量として2mL以下のものが相応しい。
【0055】
本実施形態では、特に検体容器30に蓋をしたままの状態で検体をサンプリングする、いわゆるCTS(Closed Tube Sampling)が適用される。そこで、検体容器30の中に検体が収容された後、該検体容器30の口部には、後述するピアサが穿孔可能なゴムからなる蓋30aが被着される。検体容器30は、その状態のまま検体ラック9に収容されて取り扱われる。このような蓋30aが付いている検体容器30を用いれば、この検体容器30に収容されている検体混合液の蒸発が防止されて、より正確な分析が可能になる。なお、検体混合液の蒸発を防止するためには、開閉可能な蓋を持つ検体容器が適用されてもよい。
【0056】
上述の検体ラック9を10個並べて搭載するラックトレイ31は、
図1に示されるように、ラック収容庫1において、検体ラック9の並び方向と平行な方向に延びるレール32上にセットされる。レール32には、このレール32の長手方向に直線移動する図示外の1軸アクチュエータが組み合わされており、セットされたラックトレイ31はこの1軸アクチュエータと係合する。それによりラックトレイ31は、上記1軸アクチュエータの駆動により、レール32に沿って移動可能となっている。この1軸アクチュエータの駆動、つまりラックトレイ31の移動および停止は、制御部7からの制御信号S7に基づいて制御される。
【0057】
ここで、ラックトレイ31において10箇所設定されているレーンについて、便宜上、
図1中の左側から順にA、B、C・・・Jの符合を与え、例えば「Aレーンの検体ラック9」のようにして各検体ラック9を特定することにする。上記A、B、C・・・Jの符合は、ラックトレイ31において実際に表示されてもよいし、あるいは表示されなくてもよい。表示される場合は、各符号をトレイ内部側から表示して各レーンに有る検体ラック9の状態を示すLED等をさらに設けてもよい。そのような表示は、各レーンの状態表示とは関わりなく、例えば単に1つのLED等とされてもよい。検体ラック9の状態を示すために具体的にはLED等を、一例として、未だ試料分析に供されていない検体ラック9が載置されているレーンでは点灯させ、既に試料分析に供された検体ラック9が載置されているレーンでは消灯させ、一度検体サンプリング部2に送られてからラックトレイ31に返送されたが、再度検体サンプリング部2に送る必要がある検体ラック9が載置されているレーンでは点滅させる、といった態様が考えられる。一方、各検体ラック9に収容される5本の検体容器30については、
図1中の上側から順に1、2、3、4、5の番号を与え、例えば「1番目の検体容器30」あるいは「検体容器30-1」のようにして各検体容器30を特定することにする。
【0058】
ラックトレイ31のJレーンに相当する部分には、例えば電熱体やペルチェ素子等からなる細長いヒーター33が配置されている。なお
図1では、図中破線で示す右端位置に有るラックトレイ31においてヒーター33を示してあり、実線で示すラックトレイ31においてはヒーター33の図示を省略している。このヒーター33の発熱温度は温度調節部34によって制御され、温度調節部34の調節動作は制御部7からの制御信号S3に基づいて制御される。
【0059】
ラック収容庫1の
図1中上端には、該ラック収容庫1の内部と外部とを画成する仕切壁35が設けられている。この仕切壁35の一部は不連続とされて、この不連続の部分はラック引込口35aとされている。
【0060】
次に検体サンプリング部2について説明する。この検体サンプリング部2は、上記ラック引込口35aにラック収容庫1の外側から向き合うコンベア40と、サンプルプローブ50とから構成されている。コンベア40は、
図1中の上下方向、つまりラックトレイ31上の1つの検体ラック9における5本の検体容器30の並び方向と平行な方向に延びて、該コンベア40の上に載置された検体ラック9をこの方向に移動させ得るように構成されている。こうして検体ラック9は、
図1中に実線で全部を示す下端位置と、破線で一部を示す上端位置との間で移動可能となっている。コンベア40の駆動は、制御部7からの制御信号S2に基づいて制御される。なおコンベア40は、前述したレール32および1軸アクチュエータと共に、本発明におけるラック移送手段を構成している。このラック移送手段は上述のようなコンベア40に限らず、その他例えば、検体ラック9と係合して往復動作するレバーのような公知の手段から構成されてもよい。
【0061】
サンプルプローブ50は、アーム51と、このアーム51の一端近傍に下側から連結する垂直なアーム軸52と、アーム51の他端近傍に下側から連結するピペット53とを有している(
図2も参照)。アーム軸52は図示外の手段により、上下方向(
図1の紙面に対して垂直な方向)に往復移動可能かつ自身の長軸の周りに回転可能とされている。ピペット53は先端が針状とされた中空管からなり、その基端は、空気を吸引・吐出する図示外のシリンジに可撓管を介して連結されている。アーム軸52が上記のように回転すると、ピペット53は円形のピペット移動経路57に沿って移動する。
【0062】
ピペット移動経路57に沿って移動するピペット53は、コンベア40の上に載置された検体ラック9が下端位置にある際に、1番目の検体容器30の直上位置を通り得る。ピペット53が上記の直上位置に有るとき、アーム軸52が所定量下降動すると、ピペット53の先端部はこの1番目の検体容器30に収容されている試料の中に進入する。この状態で上記シリンジが空気を吸引するように所定量駆動されると、検体容器30の中の試料がピペット53内に吸引保持される。次いでアーム軸52が上昇動して、ピペット53の先端部が1番目の検体容器30の中から上方に退出した後、コンベア40が駆動されて検体ラック9が
図1中で上方に例えば検体容器30の配置ピッチと同量移動すると、ピペット53は2番目の検体容器30の直上位置に有る状態となる。この状態からアーム軸52が下降動すると、ピペット53の先端部はこの2番目の検体容器30の中に進入する。この状態で上記シリンジが空気を吐出するように駆動されると、ピペット53内に保持されていた検体が2番目の検体容器30の中に分注される。
【0063】
また検体サンプリング部2には、ボトル収容部95が設けられている。このボトル収容部95は円形のピペット移動経路57に沿って配置され、その中には、それぞれ後述する正常血漿を貯えたボトル96が収められるようになっている。なお
図2では、ボトル収容部95のうち、筐体上面11bに設けられた開口の部分を示している。また正常血漿は、検体ラック9に架設することも可能である。そのようにする場合、例えば遅延型クロスミキシング検査用には、1番目の検体容器30に検体を、2番目の検体容器30に正常血漿をそれぞれ収容し、3から5番目の検体容器30は空容器とする。このときは、検体混合液の調製時にコンベア40を前後に動かして対応する。
【0064】
なお、ピペット53によって吸引される液体が変わる都度、アーム軸52が回転されてピペット53は図示外の洗浄ポートに送られ、そこでピペット53が洗浄処理される。この洗浄処理を行うためには、従来公知の洗浄手段を用いればよいので、その手段についての詳しい説明は省略する。
【0065】
ここで、ピペット53によって吸引される液体が変わる例として、5本の検体容器30中の4本に、検体(被検血漿)と正常血漿との比率が互いに異なる4種の検体混合液15を調製する際に、吸引液体が検体から正常血漿に変わり、また反対に正常血漿から検体に変わる例について説明する。なお本例では、4種の検体混合液15として、検体200μL、検体100μLと正常血漿100μL、検体50μLと正常血漿150μL、正常血漿200μLからなる検体混合液15を、各々1、2、3、4番目の検体容器30に調製するものとする。
そして予め、1番目の検体容器30には検体が360μL収容され、2~5番目の検体容器30は空状態とされ、前述したボトル収容部95の1つのボトル96には予め465μL以上の正常血漿が収容されているものとする。
【0066】
この例におけるピペット53による検体等の吸引・吐出と、ピペット洗浄の手順は、一例として下記の通りとなる。
(1)検体容器30-1から検体を105μL吸引し、検体容器30-2に100μLを吐出。(2)検体容器30-1から検体を55μL吸引し、検体容器30-3に50μLを吐出。
(3)ピペット53を洗浄。
(4)ボトル96から正常血漿を105μL吸引し、検体容器30-2に100μLを吐出。
(5)ボトル96から正常血漿を155μL吸引し、検体容器30-3に150μLを吐出。
(6)ボトル96から正常血漿を205μL吸引し、検体容器30-4に200μLを吐出。
(7)ピペット53を洗浄。
【0067】
以上の手順に代えて、下記の手順が適用されてもよい。
(1)検体容器30-1から検体を105μL吸引し、検体容器30-2に100μLを吐出し、ピペット53を洗浄。
(2)ボトル96から正常血漿を105μL吸引し、検体容器30-2に100μLを吐出し、ピペット53を洗浄。
(3)検体容器30-1から検体を55μL吸引し、検体容器30-3に50μLを吐出し、ピペット53を洗浄。
(4)ボトル96から正常血漿を155μL吸引し、検体容器30-3に150μLを吐出し、ピペット53を洗浄。
(5)ボトル96から正常血漿を205μL吸引し、検体容器30-4に200μLを吐出し、ピペット53を洗浄。
【0068】
また、本実施形態では前述したCTSが適用される。すなわちピペット53による検体等の吸引・吐出は、
図2に示すCTS機構により、検体容器に蓋をしたままピペットが該検体容器内にアクセス可能とするピアサを通して行われる。このCTS機構は、図示外の駆動機構により上下方向および水平面内の2次元方向に移動自在とされたアーム90と、このアーム90に固定されたピアサ(穿孔針)91とを有する。ピアサ91は、ピペット53が通過可能な内径を有し上下両端が開放された、例えば金属からなる中空管であり、その下端部は針状に斜めカットされている。
【0069】
ピペット53によって検体等を吸引・吐出する際には、まずCTS機構のアーム90が水平面内で移動され、検体ラック9に収容されている所定の検体容器30の直上位置にピアサ91が来たところでアーム90が停止する。次いでアーム90が下降され、それにより、ピアサ91が検体容器30の蓋30a(
図3参照)に刺さってその蓋30aを穿孔する。この状態になった後、ピペット53がピアサ91内を通って上下動し、検体容器30内に進入し、また検体容器30から退出する。その際、アーム90により蓋30aが押えられて、この蓋30aが検体容器30から外れてしまうことが防止される。
【0070】
なお、ピアサ91内を通ったピペット53により、ある検体容器30から検体等を吸引・吐出する処理が終了すると、アーム90が移動されてピアサ91が、この検体容器30の蓋30aから抜き取られる。ゴム等からなる蓋30aにおいて、ピアサ91が刺されていた部分は、ピアサ91が抜き取られると蓋30a自身の弾性により閉じる。それにより、蓋30aとしての本来の機能、つまり検体等の蒸発を防止する機能が維持され得る。このCTS機構として具体的には、例えば実登3180120号公報等に開示されている公知の機構を用いればよいので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0071】
また検体容器30としては、上述のようにピアサ91を貫通可能とした蓋30aを備えたものに限らず、例えば十字状等の切れ目を有し、その切れ目の部分からピペット53等の吸引管が突き通され、吸引管が抜かれた後はシール部材が被着されて切れ目が閉じられるような蓋を備えたものが適用されても構わない。
【0072】
次に試薬保管部3について説明する。この試薬保管部3は、例えば回転する円板状試薬トレイ38に、複数の試薬設置部36を取り付けて構成されている。これらの試薬設置部36は、上記回転の中心を共通の中心とする円37上に、互いに等角度間隔で配置されている。上記の円37は、上記円板状試薬トレイ38が回転された場合は、複数の試薬設置部36の移動経路となる。
【0073】
次にキュベット保管部4およびキュベットチャック70について説明する。キュベット保管部4は、例えば上方が開放した略角柱状のキュベット(反応容器)80を複数保管し、図示外の整列供給手段により、該キュベット80を1個ずつ所定の送出位置に供給する。なお
図1では、この送出位置にあるキュベット80を「80a」の符号を付けて示す。キュベットチャック70はアーム71と、このアーム71の先端部に取り付けられて上記送出位置にあるキュベット80aを把持するチャック部73とを備えている。アーム71の基端部は、後述する試薬プローブ60のアーム軸62と同軸に保持されて、アーム軸62の周りに回転可能とされている。
【0074】
上記送出位置においてキュベット80aがキュベットチャック70のチャック部73に把持された後、アーム71がアーム軸62の周りに図中反時計方向に回転すると、チャック部73に把持されたキュベット80は、円形のピペット移動経路67と同じ経路を辿って試料供給位置、試薬供給位置および測光位置へと順次送られる。ここで本例では、試薬添加直後から測光が必要であるので、試薬供給位置と測光位置とが共通である。ただし、それらの位置は互いに異なる位置に設定されてもよい。なお
図1では、上記試料供給位置、試薬供給位置(兼測光位置)にあるキュベット80を各々「80b」、「80c」の符号を付けて示す。図示の通り本例において試薬供給位置(兼測光位置)は、後述する円形のピペット移動経路67に沿って配置された5つの測光部5内に設定されている。他方、先に述べたサンプルプローブ50によるピペット移動経路57は、キュベット80の試料供給位置と重なっている。そこで、ピペット53に吸引保持した試料(検体)を、この試料供給位置にあるキュベット80b内に上方から供給することができる。
【0075】
次に試薬プローブ60について説明する。試薬プローブ60は、アーム61と、このアーム61の一端近傍に下側から連結する垂直なアーム軸62と、アーム61の他端近傍に下側から連結するピペット63とを有している(
図2も参照)。アーム軸62は図示外の手段により、上下方向に往復移動可能かつ自身の長軸の周りに回転可能とされている。ピペット63は中空管からなり、その基端は、空気を吸引・吐出する図示外のシリンジに可撓管を介して連結されている。アーム軸62が上記のように回転すると、ピペット63は円形のピペット移動経路67に沿って移動する。
【0076】
上記ピペット移動経路67は、先に述べた試薬保管部3における試薬設置部36の移動経路37と一部が重なっている。なお、この2つの移動経路67および37が重なっている位置は、試薬吸引位置となっている。
図1では、この試薬吸引位置にある試薬設置部36を「36a」の符号を付けて示す。
【0077】
ピペット移動経路67に沿って移動するピペット63は、上記試薬吸引位置にある試薬設置部36aの直上位置を通り得る。ピペット63がこの位置に有るとき、アーム軸62が所定量下降動すると、ピペット63の先端部は試薬吸引位置にある試薬設置部36aに収容されている試薬の中に進入する。この状態で上記シリンジが空気を吸引するように所定量駆動されると、試薬設置部36aの中の試薬がピペット63内に吸引保持される。次いでアーム軸62が上昇動した後、
図1中で時計方向あるいは反時計方向に所定量回転されると、ピペット63は試薬供給位置(兼測光位置)にあるキュベット80cの直上位置に有る状態となる。この状態で上記シリンジが空気を送出するように駆動されると、ピペット63内に保持されていた試薬がキュベット80cの中に吐出される。
【0078】
なお、ピペット63による試薬の吸引・吐出が行われる都度、アーム軸62が回転されてピペット63は洗浄ポートに送られ、そこでピペット63が洗浄処理される。この洗浄処理を行うためには、従来公知の洗浄処理を用いればよいので、その説明は省略する。
【0079】
測光部5内の試薬供給位置(兼測光位置)に送られるキュベット80cには、以上述べた通りにして、試料および試薬が順次供給されて反応液が得られる。この測光位置に配されたキュベット80cには、一例として所定波長の測定光が照射され、該キュベット80c内の反応液に関する物理量が測定される。この測定される物理量は特に限定されるものではないが、例えば前述したクロスミキシング検査を実施する場合は反応液の反応状態に応じた散乱光強度が、また、例えば血液の活性値や濃度を求める場合は試料における吸光度等が測定される。なお、測光部5における測定光の照射や測光等は、制御部7からの制御信号S4に基づいて制御される。また、上記散乱光強度や吸光度等を測定した結果を示す信号S5は、制御部7に入力される。制御部7は上記信号S5に基づいて試料(被検血漿)の凝固時間や血液の活性値等を算出しその算出結果を示す信号S6を表示入力部8に送り、その結果を表示入力部8に表示させる。
【0080】
次に情報読取部6について説明する。この情報読取部6は、ラック収容庫1と検体サンプリング部2との間に設けられていて、ラック収容庫1から検体サンプリング部2に送られる検体ラック9に付されている検体ラック識別情報9c(
図3参照)を読み取る。この検体ラック識別情報(以下、単に「ラック識別情報」という)9cは、基本的には、個々の検体ラック9を他の検体ラック9と区別するための情報である。ただしこのラック識別情報9cには、後述するように、検体ラック9の恒温保持が必要であるか否かを示す情報が含まれてもよいし、さらには、検体ラック9が遅延型クロスミキシング検査と即時型クロスミキシング検査のどちらに供されるものであるかを示す情報が含まれてもよい。なお本実施形態では特に、ラック識別情報9cは検体ラック9の長辺の側面および短辺の側面の双方に付されており、情報読取部6は前者の側面に付された方のラック識別情報9cを読み取るように配置されている。こうして読み取られたラック識別情報9cを示す信号S1は、制御部7に入力される。なお情報読取部6は、ラック収容庫1内に設けられて、このラック収容庫1に有る検体ラック9に付されているラック識別情報9cを読み取るように構成されてもよい。
【0081】
次に、本実施形態の自動分析装置10による試料分析について説明する。最初に、前述したクロスミキシング検査を行う場合について説明する。ここで本実施形態では、ラックトレイ31に載置される10個の検体ラック9のうち、Jレーンの検体ラック9を用いて遅延型クロスミキシング検査を行い、Iレーンの検体ラック9を用いて即時型クロスミキシング検査を行うものとする。患者等である同一の被験者から採取された検体としての血漿(被検血漿)は、Iレーンの検体ラック9、Jレーンの検体ラック9における各1番目の検体容器30に収容される。また、その他の8つの検体ラック9を用いて、クロスミキシング検査以外の分析を行う場合は、各検体ラック9の5本の検体容器30に各々血漿等の検体が収容される。それらの検体は、互いに別個のものであってもよいし、一部あるいは全部が共通のものあってもよく、行う分析に対応して定めればよい。
【0082】
以上の10個の検体ラック9は、ラック収容庫1においてラックトレイ31の上に載置される。また、クロスミキシング検査用の正常血漿が、ピペット移動経路57の直下に有る試薬ポート(図示せず)に配置される。以下、クロスミキシング検査等の各分析は、表示入力部8から入力される指令に基づいて、自動的になされる。なお、サンプルプローブ50や試薬プローブ60の動作等は、特に記載のない限り、制御部7によって自動的に制御される。
【0083】
ラック収容庫1内のラックトレイ31はレール32に沿って移動され、Jレーンの検体ラック9がラック引込口35aと整合する位置、つまり
図1に示す位置で停止する。次いで図示外のラック横移動手段により、Jレーンの検体ラック9が検体サンプリング部2の方に移動され、コンベア40の上に移載される。なお、このように検体ラック9が移載される際に、情報読取部6により、検体ラック9に付されているラック識別情報9c(
図3参照)が読み取られる。Jレーンの検体ラック9は遅延型クロスミキシング検査に供されるものであることから、このJレーンの検体ラック9のラック識別情報9cには、恒温保持が必要である旨を示す情報が含まれる。
【0084】
次いで、コンベア40の往復移動および、サンプルプローブ50による上記正常血漿並びに1番目の検体容器30内に有る被検血漿の吸引、吐出が繰り返されて、検体ラック9の5本の検体容器30内において各々異なる検体混合液が調製される。例えばこれらの検体混合液は、1番目から5番目の検体容器30に向かって、被検血漿の比率が100%(被検血漿のみ)、75%、50%、25%、0%(正常血漿のみ)であるものとされる。
【0085】
なお、検体混合液における被検血漿の比率は、即時型クロスミキシング検査でも遅延型クロスミキシング検査でも、特定の値に限定されるものではない。例えば、それら両検査における比率を共通とする場合は、各検査共、上記と同様に100%、75%、50%、25%、0%とすることが考えられる。あるいは、それら両検査における上記比率を互いに変える場合は、即時型クロスミキシング検査では上記と同様に100%、75%、50%、25%、0%とし、遅延型クロスミキシング検査では100%、50%、0%とすることが考えられる。
【0086】
上記検体混合液の調製が終了すると制御部7は、先にJレーンの検体ラック9から読み取られた、恒温保持が必要である旨を示す情報(恒温要否情報)を含むラック識別情報9cに基づいて、コンベア40を前述の場合とは逆方向に動作させて、該コンベア40上の検体ラック9をラック収容庫1内のラックトレイ31上のJレーンに返送させる。なお、この際にも、前述した図示外のラック横移動手段が利用される。こうして検体ラック9がJレーンに返送されると、ヒーター33により、検体ラック9における検体混合液に対する恒温保持が開始される。この恒温保持については後に詳しく説明する。
【0087】
次いでラック収容庫1内のラックトレイ31は、レール32に沿って
図1中で右方に移動され、Iレーンの検体ラック9がラック引込口35aと整合する位置で停止する。そして、Jレーンの検体ラック9の場合と同様にして、Iレーンの検体ラック9が検体サンプリング部2のコンベア40の上に移載される。そしてこの際も情報読取部6により、検体ラック9に付されているラック識別情報9c(
図3参照)が読み取られる。Iレーンの検体ラック9は即時型クロスミキシング検査に供されるものであることから、このIレーンの検体ラック9の情報9cには、恒温保持が不要である旨を示す恒温要否情報が含まれる。
【0088】
次いで、Jレーンの検体ラック9の場合と同様にして、検体ラック9の5本の検体容器30内において、各々異なる検体混合液が調製される。つまり1番目から5番目の検体容器30に向かって、被検血漿の比率が100%(被検血漿のみ)、75%、50%、25%、0%(正常血漿のみ)である検体混合液が調製される。なお、即時型クロスミキシング検査の場合は、必ずしも検体容器30に検体混合液を調製する必要はない。つまり例えばキュベット80bに、1番目の検体容器30に有る被検血漿の所定量と、ボトル96の正常血漿の所定量とを吐出すればよい。
【0089】
また、1~5番目の検体容器30には、各レーンの検体ラック9毎に異なるミキシング検査用の検体を架設することができる。例えば、本実施形態とは異なる一つの態様として、検体αと検体βで即時型クロスミキシング検査および遅延型クロスミキシング検査を行う場合、検体ラックを次のように割り当てればよい。即時型クロスミキシング検査用とするHレーンの検体ラック9では1番目の検体容器30に検体αを、2番目の検体容器30に検体βを収容する。Iレーンの検体ラック9では1番目の検体容器30に検体αを収容し、2~5番目の検体容器30として遅延型クロスミキシング検査用に空の検体容器をセットする。Jレーンの検体ラック9では1番目の検体容器30に検体βを収容し、2~5番目の検体容器30として遅延型クロスミキシング検査用に空の検体容器をセットする。なお、この場合は、遅延型クロスミキシング検査用とするIレーンの検体ラック9と、Jレーンの検体ラック9とを個々に恒温保持可能とする構成が必要になる。
【0090】
以上の検体混合液の調製が終了すると、先にIレーンの検体ラック9から読み取られた、恒温保持が不要である旨を示す情報(恒温要否情報)を含むラック識別情報9cに基づいて、制御部7はコンベア40を停止させたまま、つまり検体ラック9をラック収容庫1に返送させずに、即時型クロスミキシング検査のための測定を実行させる。なお即時型クロスミキシング検査では、すべてのサンプリング(つまり上述したようにキュベット80bに1番目の検体容器30に有る被検血漿と、ボトル96の正常血漿とを、互いに所定割合になるように所定量ずつ吐出すること)が完了すれば、検体ラック9がラックトレイ31に戻される。
【0091】
上記の測定では、まず1番目の検体容器30に収容されている検体混合液が試料として所定量、サンプルプローブ50によって吸引され、キュベットチャック70によって試料供給位置に配されているキュベット80(
図1ではこの位置のキュベットを80bと表記)内に吐出される。その後、このキュベット80はキュベットチャック70により試薬供給位置に配され(
図1ではこの位置のキュベットを80cと表記)、試薬プローブ60により該キュベット80c内に所定の試薬が加えられる。それにより、試料(検体混合液)と反応する試薬が、該検体混合液に添加されてなる反応液が得られる。
【0092】
前述した通り、上記試薬供給位置は測光位置でもある。つまりこの試薬供給位置兼測光位置は5つの測光部5内にそれぞれ設定されており、この位置のキュベット80c内の反応液に対して各々測光部5により、散乱光強度データ取得のための測光がなされる。5つの測光部5は、例えば
図1において右から左に向かって(反時計回り方向に)、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目の検体容器30に対応するものとされており、まず、1番目の検体容器30に対応する測光部5において、試薬の添加および測光がなされる。そして上記と同様にして、2番目、3番目、4番目、5番目の検体容器30に収容されていた検体混合液を試料として、それに試薬が添加されてなる反応液が各測光部5においてキュベット80c内に得られ、その反応液に対して、散乱光強度データ取得のための測光がなされる。5つの測光部5は、この測光により得た散乱光強度を示す測光データ群S5を出力し、この測光データ群S5は制御部7に入力される。これらの測光が終了した後、キュベット80cは廃棄される。
【0093】
以上のように即時型クロスミキシング検査が行われるのと並行して、遅延型クロスミキシング検査のための検体混合液の恒温保持が続行される。すなわち、前述したようにヒーター33が作動開始すると、Jレーンの検体ラック9に収容されている5本の検体容器30が、つまりはそれらの中の検体混合液が一様に加温される。温度調節部34は、例えばヒーター33の近傍に配置された図示外の温度検出手段からの温度検出信号に基づいて、上記検体混合液が所定温度で恒温保持されるようにヒーター33の作動を制御する。この所定温度は、一例として37℃とされる。ヒーター33および温度調節部34は、本発明における恒温保持手段を構成する。
【0094】
本例において、恒温保持の時間は例えば2時間とされる。通常、恒温保持を開始してから2時間が経過するまでの間に、上述したIレーンの検体ラック9に収容されていた5本の検体容器30中の検体混合液に関する(つまりこの検体混合液を試料として、そこに試薬が添加されてなる反応液に対する)散乱光強度データ取得のための測光は終了する。なお、すべての検体混合液のサンプリングが終了すると、制御部7はコンベア40を逆転させて、該コンベア40上の検体ラック9をラック収容庫1内のラックトレイ31上に、詳しくはIレーンに返送させる。
【0095】
Iレーンの検体ラック9がラックトレイ31上に返送されると、制御部7は次にラックトレイ31を、Hレーンの検体ラック9がコンベア40と向かい合うようになる位置まで
図1中で右方に移動させる。次いでそのHレーンの検体ラック9はコンベア40の上に移載される。なおそれ以外に、検体ラック9を複数設置したときの測定優先順を定めている場合は、その条件に従ってHレーン以外の検体ラック9が測定のために供されることもある。この際も情報読取部6により、検体ラック9に付されているラック識別情報9c(
図3参照)が読み取られる。こうして検体サンプリング部2内に配置されたHレーンの検体ラック9中の検体容器30に収容されている検体については、クロスミキシング検査ではないその他の項目の分析がなされる。この分析は検体の恒温保持は不要とする検査項目であるので、上記のラック識別情報9cには、その検査項目用の検体である旨を示す情報が含まれる。
【0096】
上述のようにしてHレーンの検体ラック9が検体サンプリング部2内に配置されると、制御部7は、先にHレーンの検体ラック9から読み取られた、上記検査項目用の検体である旨を示すラック識別情報9cに基づいて、検体ラック9中の検体容器30に収容されている検体を試料として測定を実行させる。なお、測光部5に送られる試料は次の2種に分類できる。一つは所定量の検体そのものであり、他の一つは検体と試薬類(検体希釈液、緩衝液、生理食塩水、正常血漿、欠乏血漿等)とが混和(希釈)したものである。
【0097】
この測定部での測定に際しては、まず1番目の検体容器30に収容されている検体が所定量、サンプルプローブ50によって吸引され、キュベットチャック70によって試料供給位置に配されているキュベット80b内に吐出される。その後、このキュベット80bはキュベットチャック70により測光部5内の試薬供給位置兼測光位置に配され、試薬プローブ60によりキュベット80c内に所定の試薬が添加される。この試薬は、検査項目に応じて、1種類の場合(1試薬系)と2種類の場合(2試薬系)がある。2試薬系の場合、第1試薬が添加された後に所定時間の加温処理をしてから第2試薬が添加される。なお通常は、上記試薬を添加する前に、測光部5にあるキュベット80cに対して所定時間の検体加温処理がなされる。
【0098】
以上のように試薬(2試薬系では第2試薬)が添加された後、測光部5により、該キュベット80内の検体に対する測光が開始される。この測光が終了した後、キュベット80は廃棄される。引き続き、上記と同様にして、2番目、3番目、4番目、5番目の検体容器30に収容されている検体を試料として測定がなされる。5つの測光部5は、以上の測光により得た得た測光データ群S5を出力し、この測光データ群S5は制御部7に入力される。
【0099】
以下、同様にして、G、F・・・Aレーンの検体ラック9の検体容器30に収容されている検体に対する、クロスミキシング検査以外の分析のための測定がなされ得る。
図4には、一例としてGレーンの検体ラック9が検体サンプリング部2に送られたときの状態を示してある。
【0100】
制御部7は上述した恒温保持の時間を管理している。そして制御部7は、この恒温保持時間が2時間近くまで到達すると、G、F・・・Aレーンのいずれかの検体ラック9を検体サンプリング部2に送る動作は控えて、遅延型クロスミキシング検査を優先的に実行させる。すなわち制御部7は、恒温保持時間が2時間に到達した時点で、Jレーンの検体ラック9を再度検体サンプリング部2に送る。こうして検体サンプリング部2に送られたJレーンの検体ラック9の検体容器30に収容されている5種の検体混合液を試料として、即時型クロスミキシング検査におけるのと同様にして、測光部5において散乱光強度の測定がなされる。測光部5は散乱光強度を示す測光データ群S5を出力し、この信号S5は制御部7に入力される。
【0101】
以上の処理により、例えば
図7に示すような、即時型クロスミキシング検査および遅延型クロスミキシング検査における被検血漿の凝固時間特性が求められる。制御部7は、こうして求められた凝固時間特性を例えば折れ線グラフの形で表示入力部8に表示させる。検査者は、表示された凝固時間特性に基づいて、凝固因子欠乏や、凝固因子インヒビターの存在等、被検血漿に関する判断を下すことができる。
【0102】
なお、前述した恒温保持を効率良く行うために、
図3に示した検体ラック9のブロック9bは、熱伝導性の高い部材、例えばアルミニウムあるいは銅等で構成されるのが望ましい。特にブロック9bの下面は、容器保持部9aとラックトレイ31のヒーター33との間で良好に熱交換できるように、容器保持部9aと熱的に良好に接続されるように設計されることが望ましい。一方、容器保持部9aとラックトレイ31のヒーター33との間の熱交換にさほど影響を及ぼさないブロック9bの部分は、熱伝導性が低い樹脂等の部材で形成されても構わない。その樹脂等の部材は、試薬等と化学的に反応しないものであることが望ましい。
【0103】
以上説明した通り、本実施形態の自動分析装置10によれば、恒温保持が必要な検体混合液を収容している検体ラック9は恒温保持に掛けながら、恒温保持が必要でない検体混合液や検体を収容している検体ラック9は上記恒温保持処理に影響されることなく、次々と測光部5に送って効率良く測定に供することが可能になる。そして、自動分析装置10としては、ラックトレイ31およびコンベア40の動作に係るプログラムを変更するだけで、既存の自動分析装置が利用可能である。そこで、自動分析装置10の大型化や大幅なコストアップを防止できるので、自動分析のためのコストを低く抑えることもできる。
【0104】
なお、測定に供された後、ラックトレイ31に返送された検体ラック9は、測定の再度実施(再検)が必要になった場合は、以上述べたのと同様にして検体サンプリング部2に再度送って、再検に供することも可能である。また、即時型クロスミキシング検査の初検結果を基に、遅延型クロスミキシング検査の再検を自動で実施させることも可能である。
【0105】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態による自動分析装置を構成する検体ラック109を示すものである。なお、この検体ラック109において、
図5に示した検体ラック9と同じ部分には同符合を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。
【0106】
図5に示す検体ラック109は、5つの容器保持部9aの各周囲を取り囲むように配置されたヒーター110を、ブロック9b内に有する。また検体ラック109は、ブロック9b内に、例えば充電式の電池111と、温度調節部112とを有する。温度調節部112は、第1実施形態の自動分析装置10における温度調節部34と同様の機能を有するものである。また電池111は、ヒーター110を発熱させる電流をヒーター110に供給する。つまりこの電池111はヒーター110と共に、容器保持部9aに保持された検体容器30を加温する(つまりは検体容器30内の検体混合液を加温する)ための熱源を構成する。
【0107】
上記構成の検体ラック109は、基本的に、第1の実施形態におけるJレーンの検体ラック9と同様に取り扱われる。ただし本実施形態では、制御部7がラック識別情報9cの読取結果に基づいて検体容器30内の検体や検体混合液を恒温保持する必要が有ると判断して、検体ラック109がラック収容庫1のラックトレイ31に返送される場合は、温度調節部112が有線あるいは無線によって制御部7と接続される。それにより電池111からの電流が温度調節部112を介してヒーター110に供給され、上記恒温保持がなされる。
【0108】
なお、上記検体ラック109を用いる自動分析装置としては、
図1に示した自動分析装置10がそのまま用いられてもよい。あるいは、
図1に示した自動分析装置10からヒーター33を除いた自動分析装置が用いられてもよい。
【0109】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態による自動分析装置210を示すものである。この自動分析装置210は、
図1に示した第1実施形態の自動分析装置10と対比すると、ヒーター33に代えて、ラックトレイ31に載置された全ての検体ラック9を加温し得るヒーター233が用いられている点で異なる。この構成を有する自動分析装置210によれば、恒温保持が必要な検体ラック9はある特定のレーン(第1の実施形態ではJレーン)に収容させる、といった決まり事を設定しておく必要がなくなる。
【0110】
なおヒーター233は、1つの検体ラック9に対応する部分毎に分割され、分割された各部分が独立してオン/オフ可能に構成されている。それにより、恒温保持が必要な検体ラック9は恒温保持する一方、恒温保持が必要でない検体ラック9(例えば即時型クロスミキシング検査にかけられる検体混合液を収容している検体容器30を搭載した検体ラック9)は恒温保持しない、というように恒温保持を制御可能となる。
【0111】
さらに、この第3の実施形態は、ラック識別情報9cに恒温要否情報が含まれていない点で、既述の実施形態と相違している。すなわち本実施形態では、ある1つの検体ラック9が恒温保持を必要とするか否かを示す恒温要否情報は、その検体ラック9を示すラック識別情報9cと対応付けて、制御部7の内蔵メモリー7Mに記憶されている。
【0112】
そしてラック収容庫1から検体ラック9が検体サンプリング部2に送られる際に、情報読取部6により、その検体ラック9に付されているラック識別情報9cが読み取られる。その読み取られたラック識別情報9cを示す信号S1は、制御部7に入力される。制御部7は、入力された信号S1が示すラック識別情報9cと対応付けて内蔵メモリー7Mに記憶されている恒温要否情報を取り出し、その恒温要否情報を、ラック識別情報9cが読み取られた検体ラック9に関する恒温要否情報として認識する。こうして認識された恒温要否情報に基づいて、その検体ラック9が恒温保持に掛けられるか否かが決定されることは、既述の実施形態におけるのと同様である。さらに、遅延型クロスミキシング検査、即時型クロスミキシング検査の各々における検体混合液の調製や、反応液の物理量の測定も、既述の実施形態におけるのと同様にして行えばよい。
【0113】
なお、各検体ラック9を示すラック識別情報9cと対応付けて記憶される恒温要否情報は、制御部7の内蔵メモリー7Mに記憶させる他に、制御部7とは別に設けられた記憶手段に記憶されても構わない。その場合でも、情報読取部6が検体ラック9から読み取ったラック識別情報9cを示す信号S1を制御部7に入力させ、該制御部7が、そのラック識別情報9cと対応している恒温要否情報を記憶手段から取り出すようにすればよい。さらに、制御部7とは別に、自動分析装置全体の動作を制御する病院内ホストコンピューター等の制御手段が設けられる場合は、ラック識別情報9cと対応している恒温要否情報を記憶手段から取り出す操作を、その制御手段が行うように構成してもよい。
【0114】
さらに、以上説明したラック識別情報9cに代えて、あるいはそれと共に、各検体ラック9が搭載する検体容器30が収容する検体を示す検体識別情報を検体ラック9に付与しておき、その一方で、制御部7の内蔵メモリー7Mあるいはその他の記憶手段に、上記検体識別情報と対応付けて恒温要否情報を記憶させておくようにしてもよい。
図8には、検体識別情報を検体ラック9に付与するためのバーコードラベル98の例を示す。このバーコードラベル98は、例えば1次元バーコードの形で示された検体ラック識別情報98A(以下、単にラック識別情報98Aという)および検体識別情報98Bを有し、検体ラック9に貼付されるものである。なお検体識別情報98Bは、検体の種類を示すものであってもよいし、あるいはその検体に求められる検査の種類を示すものであってもよい。
【0115】
先に説明したラック識別情報9cは、恒温要否情報を含む態様(第1実施形態)としたり、あるいは恒温要否情報を含まない態様(第2、3実施形態)とされるが、
図8のバーコードラベル98のラック識別情報98Aも、どちらの態様とされてもよい。したがって、このバーコードラベル98が貼付された検体ラック9を用いるに際して、ラック識別情報98Aが恒温要否情報を含む場合は第1実施形態と同様にして検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かを制御することもできるし、ラック識別情報98Aが恒温要否情報を含まない場合は第2あるいは第3実施形態と同様にして検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かを制御することもできる。
【0116】
しかし、ラック識別情報98Aが恒温要否情報を含まない場合、検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かを、第2あるいは第3実施形態とは異なる方法で制御することも可能である。以下、その点について説明する。なお、この方法は基本的に
図6のものと基本的に同様の装置を用いて実施可能であるので、以下
図6を参照して説明する。各検体ラック9に貼付されるバーコードラベル98には、その検体ラック9が搭載する検体容器30が収容する検体を示す検体識別情報98Bが含まれている。そして例えば制御部7の内蔵メモリー7Mには、恒温要否情報が上記検体識別情報98Bと対応付けて記憶される。なお内蔵メモリー7Mに代えて、前述した病院内ホストコンピューターのハードディスク等の記憶手段が用いられてもよい。
【0117】
検体の分析時、例えばラック収容庫1から検体ラック9が検体サンプリング部2に送られる際に、情報読取部6により、その検体ラック9に貼付されているバーコードラベル98の検体識別情報98Bが読み取られる。その読み取られた検体識別情報98Bを示す信号が、制御部7に入力される。制御部7は、入力された信号が示す検体識別情報98Bと対応付けて内蔵メモリー7Mに記憶されている恒温要否情報を取り出し、その恒温要否情報を、検体識別情報98Bが読み取られた検体ラック9に関する恒温要否情報として認識する。こうして認識された恒温要否情報に基づいて、制御部7により、その検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かが決定される。
【0118】
上に述べたようにラック識別情報98Aおよび検体識別情報98Bを含むバーコードラベル98が貼付された検体ラック9は、恒温要否情報をラック識別情報と対応付けて記憶手段に記憶させておいてラック識別情報から検体ラック9の恒温保持を行うか否かを決定するようにした自動分析装置に対しても、また、恒温要否情報を検体識別情報と対応付けて記憶手段に記憶させておいて検体識別情報から検体ラック9の恒温保持を行うか否かを決定するようにした自動分析装置に対しても適用可能であるので、実用上便利である。
【0119】
なお、上記のように恒温要否情報を検体識別情報と対応付けて記憶手段に記憶させておき、検体識別情報の読み取り結果から検体ラックの恒温保持を行うか否かを決定する場合は、検体識別情報をバーコード等の形で各検体容器30に付与しておいてもよい。
図9には、そのようにバーコードの形で検体識別情報99Aを示して検体容器30に貼付されるバーコードラベル99の例を示す。なお同図では検体容器30を、断面で示す検体ラック9の上に載置された状態で示している。このバーコードラベル99は、例えば高さ75mm程度に形成された検体容器30の側面に貼付され、検体ラック9の容器保持部と容器保持部との間に形成された隙間を通して読み取られる。
【0120】
そのようにする場合、1つの検体ラック9には恒温保持が必要な検体を収容した検体容器30と、恒温保持が不要な検体を収容した検体容器30とが混在しないようにしておく(つまり、1つの検体ラック9には恒温保持が必要な検体を収容した検体容器30のみを、あるいは恒温保持が不要な検体を収容した検体容器30のみを搭載する)ならば、1つの検体ラック9に搭載された複数の検体容器30中の例えば1つに付与されている検体識別情報99Aを読み取り、その結果に応じて検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かを決定することができる。
【0121】
なおこの場合も、検体識別情報99Aと恒温要否情報とを対応付けて記憶させる記憶手段は、上に述べたように制御部7の内蔵メモリー7M(
図6参照)であってもよいし、病院内ホストコンピューターのハードディスク等であってもよい。前者の場合は情報読取部6(
図6参照)による検体識別情報99Aの読取結果に応じて制御部7が、内蔵メモリー7Mから検体識別情報99Aと対応付けられた恒温要否情報を取り出し、その恒温要否情報に応じて検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かを決定する。また後者の場合は情報読取部6による検体識別情報99Aの読取結果に応じて制御部7が、病院内ホストコンピューターに問い合わせをする。そして病院内ホストコンピューターは、通知された検体識別情報99Aに応じて検査項目の指示等を制御部7に送ると共に、その検体識別情報99Aと対応付けて記憶されている恒温要否情報をハードディスク等から取り出し、その恒温要否情報を制御部7に送る。制御部7は、この送られた恒温要否情報に応じて検体ラック9を恒温保持に掛けるか否かを決定する。
【0122】
以上述べたように、検体識別情報99Aと恒温要否情報とを対応付けて記憶させる記憶手段として、制御部7の内蔵メモリー7Mあるいは病院内ホストコンピューターのハードディスク等が用いられ得ること、そして後者を用いる場合は制御部7から病院内ホストコンピューターに問い合わせしてそのハードディスク等から恒温要否情報が取り出され制御部7に送られ得ることは、以下に述べる、恒温保持が必要な検体を収容した検体容器30と、恒温保持が不要な検体を収容した検体容器30とが1つの検体ラック9に混在する場合においても同様である。
【0123】
また、検体識別情報99Aをバーコード等の形で各検体容器30に付与しておく場合、1つの検体ラック9に、恒温保持が必要な検体を収容した検体容器30と、恒温保持が不要な検体を収容した検体容器30とを混在させることもできる。その場合は、通常の検体ラック搬送経路に接続するバイパス搬送経路を、検体容器30から検体識別情報99Aを読み取る読取部の近くを通るようにして設け、このバイパス搬送経路に配した別の検体ラック9を用いることにより、恒温保持に掛ける検体容器30と掛けない検体容器30とを区分けすることができる。
【0124】
すなわち、上記別の検体ラック9には空の検体容器30が複数搭載され(以下、この検体ラック9を「空容器搭載検体ラック9」という)、読取部において、上記混在がなされている検体ラック9(以下、この検体ラック9を「容器混在検体ラック9」という)の検体容器30から検体識別情報99Aが読み取られる。読み取られた検体識別情報99Aと対応付けて記憶手段に記憶されている恒温要否情報が恒温保持が必要であることを示している場合は、その容器混在検体ラック9が検体サンプリング部2に移動され、該検体サンプリング部2において、上記読み取りがなされた検体容器30から検体がピペット等に吸引、保持される。その後、容器混在検体ラック9が検体サンプリング部2からラック搬送経路に戻され、空容器搭載検体ラック9が検体サンプリング部2に移動され、上記の吸引、保持されている検体が、この空容器搭載検体ラック9に搭載されている1つの空の検体容器30に分注される。
【0125】
以上の処理が繰り返されると最終的に、空容器搭載検体ラック9には恒温保持が必要な検体を収容した検体容器30のみが搭載され、容器混在検体ラック9には恒温保持が不要な検体を収容した検体容器30のみが搭載されることになるので、その後は、個々の検体ラック毎に恒温保持に掛けるか否かを制御すればよい。
【0126】
なお、上述したように容器混在検体ラック9の検体容器30から検体を吸引、保持し、その検体を空容器搭載検体ラック9の検体容器30に分注する代わりに、空の検体ラック9を用意しておき、容器混在検体ラック9で検体を収容していた検体容器30をその状態のまま空の検体ラック9に移載するようにしてもよい。
【0127】
以上、恒温保持が必要とされることもある検体混合液が、遅延型クロスミキシング検査に供せられる場合の実施形態について説明したが、本発明はそのような検体混合液に限らず、恒温保持が必要な検体混合液と、恒温保持が必要でない検体混合液とをそれぞれ別の検体ラックに収容させて、それらの検体混合液を試料として測定を行うようにした全ての分析に同様に適用可能である。
【0128】
また、恒温保持の必要、不要を示す恒温要否情報を含むこともある検体ラック識別情報は、RF(Radio Frequency)タグの形で検体ラック9や109に付与させ、情報読取部6に代えて、RFタグの情報を非接触で読み書きするRFリーダ/ライタを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 ラック収容庫
2 検体サンプリング部
3 試薬保管部
4 キュベット保管部
5 測光部
6 情報読取部
7 制御部
8 表示入力部
9、109 検体ラック
9a 検体ラックの容器保持部
9b 検体ラックのブロック
9c 検体ラック識別情報
10、210 自動分析装置
15 検体混合液
30 検体容器
31 ラックトレイ
32 レール
33 ヒーター
34、112 温度調節部
36 試薬設置部
38 円板状試薬トレイ
40 コンベア
50 サンプルプローブ
60 試薬プローブ
70 キュベットチャック
80 キュベット
90 CTS機構のアーム
91 CTS機構のピアサ
98、99 バーコードラベル
98A 検体ラック識別情報
98B、99A 検体識別情報 111 電池