(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20240703BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20240703BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20240703BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240703BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20240703BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240703BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A61M1/16 161
B01D19/00 H
B01D61/02
C02F1/44 H
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 540E
C02F1/68 540Z
C02F1/461 A
A61M1/16 165
C01B3/02 H
(21)【出願番号】P 2021006418
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195805(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181074(WO,A1)
【文献】特開2015-177912(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195481(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/192562(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0284377(US,A1)
【文献】特開2020-082370(JP,A)
【文献】特開2019-084473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38;60/00-60/90
B01D 19/00
B01D 53/22;61/00-71/82,510;C02F1/44
C02F 1/44
C02F 1/68
C02F 1/46-1/48
C01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された原水を処理することにより、処理水を生成する水処理部を備えた水処理装置であって、
前記処理水から気体を除去する脱気装置と、
前記気体から水素ガスを回収し、前記処理水に供給する回収装置とをさらに備え、
前記水処理部は、前記原水に水素ガスを溶解させて第1処理水を生成する水素溶解装置と、前記第1処理水を逆浸透膜を透過させて第2処理水を生成する逆浸透処理装置と、前記第2処理水に透析原液を混合して第3処理水を調製する透析液調製装置とを含み、
前記脱気装置は、膜モジュールとポンプによって構成され、前記ポンプによって前記処理水が加圧されることにより、前記膜モジュールの膜を通過した前記気体を前記処理水から除去し、
前記回収装置は、
前記水素ガスとその他の気体とを分離するための水素透過膜を含み、回収した前記水素ガスを前記第1処理水、前記第2処理水または前記第3処理水に供給する、
水処理装置。
【請求項2】
前記水素溶解装置は、電気分解によって水素を生成する電解槽を含む、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記回収装置は、前記水素ガスの供給量を調整するための弁を含む、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
供給された原水を処理することにより、処理水を生成する水処理ステップを含む水処理方法であって、
前記処理水から気体を除去する脱気ステップと、
前記気体か
ら水素ガスを回収し、前記処理水に供給する回収ステップとをさらに含み、
前記水処理ステップは、前記原水に水素ガスを溶解させて第1処理水を生成する水素溶解ステップと、前記第1処理水を逆浸透膜を透過させて第2処理水を生成する逆浸透処理ステップと、前記第2処理水に透析原液を混合して第3処理水を調製する透析液調製ステップとを含み、
前記脱気ステップは、ポンプによって前記処理水が加圧されることにより、膜モジュールの膜を透過した前記気体を前記処理水から除去し、
前記回収ステップは、
水素透過膜によって前記水素ガスとその他の気体とを分離し、回収した前記水素ガスを前記第1処理水、前記第2処理水または前記第3処理水に供給する、
水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された原水を処理する水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析治療に用いられる水処理装置の一形態として、溶存水素水生成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。溶存水素水を用いた血液透析は、患者の酸化ストレスが軽減されるとして、近年注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液透析は、ダイアライザーを用いて患者の血液を浄化する治療である。血液透析において、ダイアライザーに供給される透析液に気体が混入すると、ダイアライザー内の中空糸膜に形成された微少な孔が気泡によって塞がれて、浄化効率が低下する。このため、上記特許文献1の装置では、透析装置に脱気装置を設け、透析液内の気体を除去している。
【0005】
しかしながら、上記装置では、透析液に溶存している水素ガスまでもが脱気装置によって除去されるため、溶存水素濃度の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、溶存水素濃度の低下を招くことなく、浄化効率を高めることができる水処理装置及び水処理方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1発明は、供給された原水を処理することにより、処理水を生成する水処理部を備えた水処理装置であって、前記処理水から気体を除去する脱気装置と、前記気体から水素ガスを回収し、前記原水または前記処理水に供給する回収装置とをさらに備える。
【0008】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記原水に水素ガスを溶解させて第1処理水を生成する水素溶解装置を含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水または前記第1処理水に供給する、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記第1処理水を逆浸透膜を透過させて第2処理水を生成する逆浸透処理装置をさらに含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第1処理水または前記第2処理水に供給する、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記第2処理水に透析原液を混合して第3処理水を調製する透析液調製装置をさらに含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第1処理水、前記第2処理水または前記第3処理水に供給する、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記原水を逆浸透膜を透過させて第4処理水を生成する逆浸透処理装置を含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水または前記第4処理水に供給する、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記第4処理水に水素ガスを溶解させて第5処理水を生成する水素溶解装置をさらに含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水または前記第5処理水に供給する、ことが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記第5処理水に透析原液を混合して第6処理水を調製する透析液調製装置をさらに含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水、前記第5処理水または前記第6処理水に供給する、ことが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記第4処理水に透析原液を混合して第7処理水を調製する透析液調製装置をさらに含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水または前記第7処理水に供給する、ことが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水処理部は、前記第7処理水に水素ガスを溶解させて第8処理水を生成する水素溶解装置をさらに含み、前記回収装置は、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水、前記第7処理水または前記第8処理水に供給する、ことが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記水処理装置において、前記水素溶解装置は、電気分解によって水素を生成する電解槽を含む、ことが望ましい。
【0017】
本発明に係る前記水処理装置において、前記回収装置は、前記水素ガスの供給量を調整するための弁を含む、ことが望ましい。
【0018】
本発明の第2発明は、供給された原水を処理することにより、処理水を生成する水処理ステップを含む水処理方法であって、前記処理水から気体を除去する脱気ステップと、前記気体から前記水素ガスを回収し、前記原水または前記処理水に供給する回収ステップとをさらに含む。
【0019】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記原水に水素ガスを溶解させて第1処理水を生成する水素溶解ステップを含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水または前記第1処理水に供給する、ことが望ましい。
【0020】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記第1処理水を逆浸透膜を透過させて第2処理水を生成する逆浸透処理ステップをさらに含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第1処理水または前記第2処理水に供給する、ことが望ましい。
【0021】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記第2処理水に透析原液を混合して第3処理水を調製する透析液調製ステップをさらに含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第1処理水、前記第2処理水または前記第3処理水に供給する、ことが望ましい。
【0022】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記原水を逆浸透膜を透過させて第4処理水を生成する逆浸透処理ステップを含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水または前記第4処理水に供給する、ことが望ましい。
【0023】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記第4処理水に水素ガスを溶解させて第5処理水を生成する水素溶解ステップをさらに含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水または前記第5処理水に供給する、ことが望ましい。
【0024】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記第5処理水に透析原液を混合して第6処理水を調製する透析液調製ステップをさらに含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水または前記第6処理水に供給する、ことが望ましい。
【0025】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記第4処理水に透析原液を混合して第7処理水を調製する透析液調製ステップをさらに含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水、または前記第7処理水に供給する、ことが望ましい。
【0026】
本発明に係る前記水処理方法において、前記水処理ステップは、前記第7処理水に水素ガスを溶解させて第8処理水を生成する水素溶解ステップをさらに含み、前記回収ステップは、回収した前記水素ガスを前記原水、前記第4処理水、前記第7処理水または前記第8処理水に供給する、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本第1発明の前記水処理装置は、前記脱気装置によって前記処理水から除去された前記気体から前記水素ガスを回収し、前記原水または前記処理水に供給する前記回収装置を備えているので、前記処理水における溶存水素濃度が高められる。これにより、前記溶存水素濃度を十分に維持しながら、ダイアライザーの浄化効率を高めることが可能となる。
【0028】
本第2発明の前記水処理方法は、前記脱気ステップにおいて前記処理水から除去された前記気体から前記水素ガスを回収し、前記原水または前記処理水に供給する前記回収ステップを含んでいるので、前記処理水における溶存水素濃度が高められる。これにより、前記溶存水素濃度を十分に維持しながら、ダイアライザーの浄化効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本第1発明の水処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本第2発明の水処理方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の水処理装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図2の水処理方法の具体的な手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の水処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図4の水処理方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図5の水処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図6の水処理方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図1の水処理装置の別の具体的な構成を示すブロック図である。
【
図10】
図2の水処理方法の別の具体的な手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図9の水処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図10の水処理方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図13】
図11の水処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図12の水処理方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図9の水処理装置の別の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図16】
図10の水処理方法の別の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図15の水処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【
図18】
図16の水処理方法の変形例の手順を示すフローチャートである。
【
図19】
図3等の水素溶解装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本第1発明の水処理装置1の概略構成を示している。水処理装置1は、水処理部2と、脱気装置3と、回収装置4とを備えている。水処理装置1によって生成された処理水は、例えば、透析装置に供給され、血液透析に供される。
【0031】
水処理部2には、水処理装置1の外部から原水が供給される。原水には、水道水、井戸水または地下水の他、水素ガスが溶解している溶存水素水が用いられる。原水は、フィルター等によって浄化され、活性炭等により次亜塩素酸が除去されているのが望ましい。
【0032】
水処理部2は、供給された原水を処理することにより、処理水を生成し、管等を介して脱気装置3に供給する(水処理ステップS2)。水処理部2のより具体的な機能については、以下の水処理装置1Aないし1Hを参照して説明する。
【0033】
原水として水素ガスが溶解していない水が適用される場合は、水処理部2にて実行される処理には、水素ガスを溶解させる処理が含まれる。一方、原水として水素ガスが溶解している溶存水素水が適用される場合は、水処理部2にて実行される処理には、水素ガスを溶解させる処理が含まれてなくてもよい。
【0034】
水処理部2によって生成される処理水には、原水の段階または水処理の過程で、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス等の気体が含まれている。脱気装置3は、水処理部2から供給される処理水から気体を除去する(脱気ステップS3)。脱気装置3は、例えば、膜モジュールとポンプ等によって構成される。膜モジュールの膜には、気体が透過できる微細な孔が形成されている。ポンプによって処理水が加圧されることにより、膜を透過した気体が処理水から除去される。
【0035】
気体が除去された処理水は、管等を介して水処理装置1の外部に取り出され、例えば、透析装置(図示せず)に供給される。これにより、ダイアライザー内の中空糸膜に形成された微少な孔が気泡によって塞がれることが抑制され、浄化効率が良好に維持される。
【0036】
脱気装置3によって除去された気体は、管等を介して回収装置4に送り込まれる。
【0037】
回収装置4は、パラジウム膜等の水素透過膜を有している。水素透過膜は、水素が透過できる膜であれば特に限定されない。例えば、5足金属のバナジウム、ニオブ、タンタル等を含む膜であってもよい。水素透過膜は、脱気装置3によって除去された気体のうち、水素が透過できる膜が望ましい。
【0038】
回収装置4は、水素透過膜によって水素ガスとその他の気体とを分離する。回収装置4によって、脱気装置3から送り込まれた気体から水素ガスが回収される。そして、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する(回収ステップS4)。これにより、水処理部2に供給される原水に水素が溶け込み、水処理部2及び脱気装置3を経て、最終的に水処理装置1から取り出される処理水の溶存水素濃度が高められる。従って、溶存水素濃度を十分に維持しながら、ダイアライザーの浄化効率を高めることが可能となる。
【0039】
図1において破線の矢印によって示されるように、回収装置4によって回収された水素ガスは、管等を介して水処理部2の下流側の処理水または脱気装置3の下流側の処理水に供給されてもよい。これらの場合であっても、最終的に水処理装置1から取り出される処理水の溶存水素濃度が高められる。
【0040】
なお、処理水に溶け込んでいる水素の分子は、非常に微細であるため、血液透析に用いられる中空糸膜の孔を容易に通過し、ダイアライザーの浄化効率に影響を及ぼすことがない。
【0041】
一方、回収装置4によって回収されなかった気体(すなわち、水素ガス以外の窒素ガス等)は、水処理装置1の外部に排出される。
【0042】
図3は、
図1の水処理装置1の具体例である水処理装置1Aのブロック図である。水処理装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1の構成が採用されうる。
【0043】
図4は、
図2の水処理方法100の具体例である水処理方法100Aのフローチャートである。水処理方法100Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100の構成が採用されうる。
【0044】
水処理装置1Aにおいて、水処理部2は、水素溶解装置21を含んでいる。水素溶解装置21は、原水に水素ガスを溶解させて溶存水素水(第1処理水)を生成する(水素溶解ステップS21)。従って、水処理装置1A及び水処理方法100Aは、水素ガスが溶解していない原水にも対応している。
【0045】
水素溶解装置21が溶存水素水を生成した後は、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Aによって生成された溶存水素水は、例えば、水処理装置1Aの外部の逆浸透処理装置に供給され、逆浸透水の生成に供される。また、水処理装置1Aによって生成された溶存水素水は、水処理装置1Aの外部の透析液調製装置に供給され、透析液の調製に供されてもよい。水処理装置1Aが、水素溶解装置を有していない通常の透析装置の外部に設けられることにより、上記通常の透析装置に水素水透析の機能を付加できる。
【0046】
水処理装置1Aにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Aから取り出される溶存水素水の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図3において破線の矢印によって示されるように、管等を介して水素溶解装置21の下流側の溶存水素水または脱気装置3の下流側の溶存水素水に供給されてもよい。これらの場合であっても、最終的に水処理装置1Aから取り出される溶存水素水の溶存水素濃度が高められる。
【0047】
水処理装置1Aには、原水として透析液を用いることができる。透析液は、逆浸透処理が施された透析用水に透析原液を混合(または透析成分の粉末を溶解)することにより生成される。このような水処理装置1Aが、水素溶解装置を有していない上記通常の透析装置の外部に設けられることにより、上記通常の透析装置に水素水透析の機能を付加できる。
【0048】
図5は、
図3の水処理装置1Aの変形例である水処理装置1Bのブロック図である。水処理装置1Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1Aの構成が採用されうる。
【0049】
図6は、
図4の水処理方法100Aの変形例である水処理方法100Bのフローチャートである。水処理方法100Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100Aの構成が採用されうる。
【0050】
水処理装置1Bにおいて、水処理部2は、水素溶解装置21及び逆浸透処理装置22を含んでいる。逆浸透処理装置22は、逆浸透膜を備えている。水素溶解装置21による水素溶解ステップS21の後、逆浸透処理装置22は、溶存水素水を逆浸透膜を透過させて逆浸透水素水(第2処理水)を生成する(逆浸透処理ステップS22)。逆浸透処理装置22において、逆浸透膜を透過できなかった成分は、濃縮水として水処理装置1Bの外部に排出される。
【0051】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Bによって生成された逆浸透水素水は、例えば、水処理装置1Bの外部の透析液調製装置に供給され、透析液の調製に供される。
【0052】
水処理装置1Bにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Bから取り出される溶存水素水の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図5において破線の矢印によって示されるように、管等を介して水素溶解装置21の下流側の溶存水素水、逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水素水または脱気装置3の下流側の逆浸透水素水に供給されてもよい。これらの場合であっても、最終的に水処理装置1Bから取り出される逆浸透水素水の溶存水素濃度が高められる。
【0053】
図7は、
図5の水処理装置1Bの変形例である水処理装置1Cのブロック図である。水処理装置1Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1Bの構成が採用されうる。
【0054】
図8は、
図6の水処理方法100Bの変形例である水処理方法100Cのフローチャートである。水処理方法100Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100Bの構成が採用されうる。
【0055】
水処理装置1Cにおいて、水処理部2は、水素溶解装置21、逆浸透処理装置22及び透析液調製装置23を含んでいる。水素溶解装置21による水素溶解ステップS21及び逆浸透処理装置22による逆浸透処理ステップS22の後、透析液調製装置23は、逆浸透水素水に透析原液を混合して水素透析液(第3処理水)を調製する(透析液調製ステップS23)。
【0056】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Cによって生成された水素透析液は、例えば、透析装置に供給され、血液透析に供される。
【0057】
水処理装置1Cにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Cから取り出される水素透析液の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図7において破線の矢印によって示されるように、管等を介して水素溶解装置21の下流側の溶存水素水、逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水素水、透析液調製装置23の下流側の水素透析液または脱気装置3の下流側の水素透析液に供給されてもよい。
【0058】
水処理装置1Cにおいて、逆浸透処理装置22が廃されていてもよい。この場合、水処理装置1Cにおいて、逆浸透処理ステップS22も省略される。
【0059】
図9は、
図1の水処理装置1の別の具体例である水処理装置1Dのブロック図である。水処理装置1Dのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1の構成が採用されうる。
【0060】
図10は、
図2の水処理方法100の別の具体例である水処理方法100Dのフローチャートである。水処理方法100Dのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100の構成が採用されうる。
【0061】
水処理装置1D及び水処理方法100Dでは、原水として水素ガスが溶解している溶存水素水が供給される。溶存水素水は、例えば、水処理装置1Dの外部に設けられた水素溶解装置によって、予め生成される。
【0062】
水処理装置1Dにおいて、水処理部2は、逆浸透処理装置22を含んでいる。逆浸透処理装置22は、逆浸透膜を備えている。逆浸透処理装置22は、原水を逆浸透膜を透過させて逆浸透水素水(第4処理水)を生成する(逆浸透処理ステップS22)。逆浸透処理装置22において、逆浸透膜を透過できなかった成分は、濃縮水として水処理装置1Bの外部に排出される。
【0063】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Dによって生成された逆浸透水素水は、例えば、水処理装置1Dの外部の透析液調製装置に供給され、透析液の調製に供される。
【0064】
水処理装置1Dにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Dから取り出される逆浸透水素水の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図9において破線の矢印によって示されるように、管等を介して逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水素水、または脱気装置3の下流側の逆浸透水素水に供給されてもよい。
【0065】
図11は、
図9の水処理装置1Dの変形例である水処理装置1Eのブロック図である。水処理装置1Eのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1Dの構成が採用されうる。
【0066】
図12は、
図10の水処理方法100Dの変形例である水処理方法100Eのフローチャートである。水処理方法100Eのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100Dの構成が採用されうる。
【0067】
水処理装置1Eにおいて、水処理部2は、逆浸透処理装置22及び水素溶解装置21を含んでいる。このため、原水として水素ガスが溶解していない水が適用されうる。水処理装置1Eにおいて、逆浸透処理装置22は、原水を逆浸透膜を透過させて逆浸透水(第4処理水)を生成する(逆浸透処理ステップS22)。そして、水素溶解装置21は、逆浸透水に水素ガスを溶解させて逆浸透水素水(第5処理水)を生成する(水素溶解ステップS21)。
【0068】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Eによって生成された逆浸透水素水は、例えば、水処理装置1Eの外部の透析液調製装置に供給され、透析液の調製に供される。
【0069】
水処理装置1Eにおいて、原水として水素ガスが溶解している溶存水素水が適用される場合は、水素溶解装置21によって一層溶存水素濃度が高められる。
【0070】
水処理装置1Eにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Eから取り出される逆浸透水素水の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図11において破線の矢印によって示されるように、管等を介して逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水、水素溶解装置21の下流側の逆浸透水素水、または脱気装置3の下流側の逆浸透水素水に供給されてもよい。
【0071】
図13は、
図11の水処理装置1Eの変形例である水処理装置1Fのブロック図である。水処理装置1Fのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1Eの構成が採用されうる。
【0072】
図14は、
図12の水処理方法100Eの変形例である水処理方法100Fのフローチャートである。水処理方法100Fのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100Eの構成が採用されうる。
【0073】
水処理装置1Fにおいて、水処理部2は、逆浸透処理装置22、水素溶解装置21及び透析液調製装置23を含んでいる。水処理装置1Fにおいて、逆浸透処理装置22は、原水を逆浸透膜を透過させて逆浸透水(第4処理水)を生成する(逆浸透処理ステップS22)。逆浸透処理装置22において、逆浸透膜を透過できなかった成分は、濃縮水として水処理装置1Bの外部に排出される。
【0074】
そして、水素溶解装置21は、逆浸透水に水素ガスを溶解させて逆浸透水素水(第5処理水)を生成する(水素溶解ステップS21)。さらに、透析液調製装置23は、逆浸透水素水に透析原液を混合して水素透析液(第6処理水)を調製する(透析液調製ステップS23)。
【0075】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Fによって生成された水素透析液は、例えば、透析装置に供給され、血液透析に供される。
【0076】
水処理装置1Fにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Fから取り出される水素透析液の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図13において破線の矢印によって示されるように、管等を介して逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水、水素溶解装置21の下流側の逆浸透水素水、透析液調製装置23の下流側の水素透析液または脱気装置3の下流側の水素透析液に供給されてもよい。
【0077】
図15は、
図9の水処理装置1Dの変形例である水処理装置1Gのブロック図である。水処理装置1Gのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1Dの構成が採用されうる。
【0078】
図16は、
図10の水処理方法100Dの変形例である水処理方法100Gのフローチャートである。水処理方法100Gのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100Dの構成が採用されうる。
【0079】
水処理装置1G及び水処理方法100Gでは、原水として水素ガスが溶解している溶存水素水が供給される。溶存水素水は、例えば、水処理装置1Gの外部に設けられた水素溶解装置によって予め生成される。
【0080】
水処理装置1Gにおいて、水処理部2は、逆浸透処理装置22及び透析液調製装置23を含んでいる。水処理装置1Fにおいて、逆浸透処理装置22は、原水を逆浸透膜を透過させて逆浸透水(第4処理水)を生成する(逆浸透処理ステップS22)。そして、透析液調製装置23は、逆浸透水素水に透析原液を混合して水素透析液(第7処理水)を調製する(透析液調製ステップS23)。
【0081】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Gによって生成された水素透析液は、例えば、透析装置に供給され、血液透析に供される。
【0082】
水処理装置1Gにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Gから取り出される水素透析液の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図15において破線の矢印によって示されるように、管等を介して逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水素水、透析液調製装置23の下流側の水素透析液または脱気装置3の下流側の水素透析液に供給されてもよい。
【0083】
水処理装置1Gにおいて、逆浸透処理装置22が廃されていてもよい。この場合、水処理装置1Gにおいて、逆浸透処理ステップS22も省略される。
【0084】
図17は、
図15の水処理装置1Gの変形例である水処理装置1Hのブロック図である。水処理装置1Hのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理装置1Gの構成が採用されうる。
【0085】
図18は、
図16の水処理方法100Gの変形例である水処理方法100Hのフローチャートである。水処理方法100Hのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水処理方法100Gの構成が採用されうる。
【0086】
水処理装置1Hにおいて、水処理部2は、逆浸透処理装置22、透析液調製装置23及び水素溶解装置21を含んでいる。水処理装置1Hにおいて、逆浸透処理装置22は、原水を逆浸透膜を透過させて逆浸透水(第4処理水)を生成する(逆浸透処理ステップS22)。そして、透析液調製装置23は、逆浸透水素水に透析原液を混合して透析液(第7処理水)を調製する(透析液調製ステップS23)。さらに、水素溶解装置21は、透析液に水素ガスを溶解させて水素透析液(第8処理水)を生成する(水素溶解ステップS21)。
【0087】
その後、脱気装置3によって脱気ステップS3が実行され、回収装置4によって回収ステップS4が実行される。水処理装置1Hによって生成された水素透析液は、例えば、透析装置に供給され、血液透析に供される。
【0088】
水処理装置1Hにあっても、回収装置4は、回収した水素ガスを管等を介して原水に供給する。これにより、最終的に水処理装置1Hから取り出される水素透析液の溶存水素濃度が高められる。なお、回収装置4によって回収された水素ガスは、
図17において破線の矢印によって示されるように、管等を介して逆浸透処理装置22の下流側の逆浸透水、透析液調製装置23の下流側の透析液、水素溶解装置21の下流側の水素透析液、または脱気装置3の下流側の水素透析液に供給されてもよい。
【0089】
水処理装置1Hにおいて、逆浸透処理装置22が廃されていてもよい。この場合、水処理装置1Hにおいて、逆浸透処理ステップS22も省略される。
【0090】
図19は、水素溶解装置21の一例を示している。水素溶解装置21は、電解槽5を含んでいる。電解槽5は、水を電気分解することにより、水素ガスを発生させる。発生した水素ガスが水に溶け込むことにより、溶存水素水が生成される。
【0091】
電解槽5は、電解室50を備え、電解室50内に第1給電体51と、第2給電体52と、を有する。第1給電体51及び第2給電体52は、電解室50に設けられている。
【0092】
第1給電体51と第2給電体52との間には、隔膜53が設けられている。電解室50は、隔膜53によって第1給電体51が配された第1極室50aと、第2給電体52が配された第2極室50bとに区分される。
【0093】
第1給電体51及び第2給電体52の極性及び第1給電体51及び第2給電体52に印加される電圧は、制御部(図示せず)によって制御される。
【0094】
給電体51、52と制御部との間の電流供給ラインには、電流検出部が設けられている。電流検出部は、第1給電体51、第2給電体52に供給する電解電流を検出し、その値に相当する電気信号を制御部に出力する。
【0095】
制御部は、例えば、電流検出部から出力された電気信号に基づいて、第1給電体51及び第2給電体52に印加する直流電圧を制御する。より具体的には、制御部は、電流検出部によって検出される電解電流が予め設定された所望の値となるように、第1給電体51及び第2給電体52に印加する直流電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部は、上記電圧を増加させる。これにより、第1給電体51及び第2給電体52に供給する電解電流が適切に制御される。
【0096】
電解室50内で水が電気分解されることにより、水素ガス及び酸素ガスが発生する。例えば、陰極側の第2極室50bでは、水素ガスが発生し溶存水素水が生成される。なお、このような電気分解を伴って生成された溶存水素水は、「電解水素水」とも称され、電解水素水を用いた透析治療は、「電解水透析」とも称される。一方、陽極側の第1極室50aでは、酸素ガスが発生する。
【0097】
隔膜53には、例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂からなる固体高分子膜が適宜用いられている。固体高分子膜は、電気分解により、陽極側の第1極室50aで発生したオキソニウムイオンを陰極側の第2極室50bへと移動させて、水素ガスの生成原料とする。従って、電気分解の際に水酸化物イオンが発生することなく、溶存水素水のpHが変化しない。
【0098】
水素溶解装置21は、水を電気分解する電解槽5に限られない。例えば、水とマグネシウムとを化学反応等させて発生した水素ガスを水に溶解させる装置、又は、ボンベに充填された水素ガスを水に溶解させる装置であってもよい。
【0099】
回収装置4は、水素ガスの供給量を調整するための弁を含んでいてもよい。上記弁は、回収装置4の本体部(水素ガスを回収する部分)からのびる管等に配される。弁は、例えば、上記制御部によって制御される。回収装置4が弁を含む構成である場合、水処理装置1等から取り出される処理水に含まれる水素濃度を検出する濃度センサーが設けられるのが望ましい。このような構成にあっては、制御部は、濃度センサーから入力された信号に基づいて弁の開度をフィードバック制御する。これにより、処理水に含まれる水素濃度が安定する。
【0100】
以上、本発明の水処理装置及び水処理方法が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本発明は、少なくとも、供給された原水を処理することにより、処理水を生成する水処理部2を備えた水処理装置1であって、処理水から気体を除去する脱気装置3と、気体から水素ガスを回収し、原水または処理水に供給する回収装置4とをさらに備えていればよい。
【0101】
また、本発明は、少なくとも、供給された原水を処理することにより、処理水を生成する水処理ステップS2を含む水処理方法100であって、処理水から気体を除去する脱気ステップS3と、気体から水素ガスを回収し、原水または処理水に供給する回収ステップS4とをさらに含んでいればよい。
【符号の説明】
【0102】
1 水処理装置
2 水処理部
3 脱気装置
4 回収装置
5 電解槽
21 水素溶解装置
22 逆浸透処理装置
23 透析液調製装置
100 水処理方法
S2 水処理ステップ
S21 水素溶解ステップ
S22 逆浸透処理ステップ
S23 透析液調製ステップ
S3 脱気ステップ
S4 回収ステップ