(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】系統連系システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240703BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240703BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240703BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/35 K
H01H9/54 B
(21)【出願番号】P 2021047018
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和佐 侑真
(72)【発明者】
【氏名】野末 恵亮
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-7828(JP,A)
【文献】特開2014-236568(JP,A)
【文献】特開2013-183612(JP,A)
【文献】特開平10-189020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01H 9/54-9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から供給される電力と蓄電池が出力する電力とを負荷に供給する系統連系運転と、前記商用電力系統を切り離して前記蓄電池が出力する電力を前記負荷に供給する自立運転とが可能な系統連系システムであって、
前記商用電力系統および前記負荷に接続される分電部と、
前記分電部および前記蓄電池の間に接続されるパワーコンディショナ部と、
を備え、
前記分電部は、
前記商用電力系統および前記パワーコンディショナ部に接続される主ラインと、
前記主ライン上に設けられた主スイッチと、
前記負荷に接続される可動接点、前記主スイッチの前記商用電力系統側において前記主ラインに接続された第1固定接点、前記主スイッチの前記パワーコンディショナ部側において前記主ラインに接続された第2固定接点、第1制御コイルおよび第2制御コイルを有する自動切替スイッチと、
前記第1固定接点および前記第1制御コイルの間に接続された、b接点型リレーからなる第1制御スイッチと、
前記第2固定接点および前記第2制御コイルの間に接続された、a接点型リレーからなる第2制御スイッチと、
を含み、
前記自動切替スイッチは、前記第1制御コイルが前記第1制御スイッチを介して励磁されると前記可動接点が前記第1固定接点に接触し、前記第2制御コイルが前記第2制御スイッチを介して励磁されると前記可動接点が前記第2固定接点に接触するよう構成され、
前記第1制御スイッチおよび前記第2制御スイッチの開閉は、同一の制御信号によって制御される
ことを特徴とする系統連系システム。
【請求項2】
前記主スイッチは、a接点型リレーからなり、
前記主スイッチの開閉は、前記制御信号とは論理反転の関係にある信号によって制御される
ことを特徴とする請求項1に記載の系統連系システム。
【請求項3】
前記分電部は、一方の接点が前記主スイッチの前記商用電力系統側の接点に接続され、かつ他方の接点が前記主スイッチの前記パワーコンディショナ部側の接点に接続された副スイッチをさらに含み、
前記副スイッチは、前記主スイッチよりも電流容量が小さいb接点型リレーからなる
ことを特徴とする請求項2に記載の系統連系システム。
【請求項4】
前記主スイッチは、セットコイルおよびリセットコイルを有するラッチングリレーであり、
前記リセットコイルは、前記制御信号または該制御信号とは論理同一の関係にある信号によって励磁される
ことを特徴とする請求項1に記載の系統連系システム。
【請求項5】
前記分電部は、一方の接点が前記主スイッチの前記商用電力系統側の接点に接続され、かつ他方の接点が前記セットコイルに接続された副スイッチをさらに含み、
前記副スイッチは、前記主スイッチよりも電流容量が小さいb接点型リレーからなる
ことを特徴とする請求項4に記載の系統連系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統から供給される電力と蓄電池が出力する電力とを負荷に供給する系統連系運転と、商用電力系統を切り離して蓄電池が出力する電力を負荷に供給する自立運転とが可能な系統連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用電力系統(以下、単に「系統」という)の電圧が低下したときにおいても負荷に安定的に電力を供給するために、蓄電池を備えた系統連系システムが使用されている。
図5に示すように、系統連系システム100は、負荷101と、蓄電池102と、双方向インバータ103と、電圧計104と、制御部105と、3つのスイッチSWa,SWb,SWcとを備えている。
【0003】
電圧計104によって検知された系統Gの電圧(以下、単に「系統電圧」という)が正常なとき、制御部105は、系統Gに連系するように双方向インバータ103を作動させることができる。このとき、制御部105は、スイッチSWaを閉状態、スイッチSWbを開状態とするとともに、スイッチSWcの可動接点を系統G側の固定接点に接触させる。これにより、系統Gから供給される電力と蓄電池102が出力する電力とが負荷101に供給される。
【0004】
一方、系統電圧が正常範囲を下回っているとき(すなわち、停電が発生しているとき)、制御部105は、双方向インバータ103を自立的に作動させる。このとき、制御部105は、スイッチSWaを開状態、スイッチSWbを閉状態とするとともに、スイッチSWcの可動接点を双方向インバータ103側の固定接点に接触させる。これにより、系統Gが負荷101および双方向インバータ103から切り離され、蓄電池102が出力する電力のみが負荷101に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の系統連系システム100では、制御部105がスイッチSWcを切り替える。また、制御部105のような回路は、通常、電源電圧として系統電圧を利用する。このため、従来の系統連系システム100では、何らかの特別な対策を講じない限り、停電発生時のスイッチSWcの切り替えがうまくいかないと考えられる。
【0007】
この問題の対策としては、例えば、系統電圧によって励磁される系統側制御コイルと双方向インバータ103が出力する電圧によって励磁されるインバータ側制御コイルとを備えたタイプのスイッチSWcを使用することが挙げられる。この対策によれば、系統電圧が正常なときは、系統側制御コイルが励磁されてスイッチSWcの可動接点が系統G側の固定接点に接触し、一方、系統電圧が低下したときは、インバータ側制御コイルが励磁されてスイッチSWcの可動接点が双方向インバータ103側の固定接点に接触する。すなわち、この対策によれば、制御部105に依らずに自動的にスイッチSWcを切り替えることができる。
【0008】
しかしながら、上記の対策は、停電が復旧したときに、系統側制御コイルおよびインバータ側制御コイルの両方が励磁され、その結果、スイッチSWcの状態が不定となり、負荷101への電力供給が不安定になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、停電が発生/復旧したときに、負荷に供給する電力を好適に切り替えることが可能な系統連系システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る系統連系システムは、商用電力系統から供給される電力と蓄電池が出力する電力とを負荷に供給する系統連系運転と、商用電力系統を切り離して蓄電池が出力する電力を負荷に供給する自立運転とが可能なシステムであって、商用電力系統および負荷に接続される分電部と、分電部および蓄電池の間に接続されるパワーコンディショナ部とを備え、分電部は、商用電力系統およびパワーコンディショナ部に接続される主ラインと、主ライン上に設けられた主スイッチと、負荷に接続される可動接点、主スイッチの商用電力系統側において主ラインに接続された第1固定接点、主スイッチのパワーコンディショナ部側において主ラインに接続された第2固定接点、第1制御コイルおよび第2制御コイルを有する自動切替スイッチと、第1固定接点および第1制御コイルの間に接続された、b接点型リレーからなる第1制御スイッチと、第2固定接点および第2制御コイルの間に接続された、a接点型リレーからなる第2制御スイッチとを含み、自動切替スイッチは、第1制御コイルが第1制御スイッチを介して励磁されると可動接点が第1固定接点に接触し、第2制御コイルが第2制御スイッチを介して励磁されると可動接点が第2固定接点に接触するよう構成され、第1制御スイッチおよび第2制御スイッチの開閉は、同一の制御信号によって制御される、ことを特徴としている。
【0011】
この構成では、第1制御コイルが第1制御スイッチを介して励磁されると可動接点が第1固定接点に接触し、第2制御コイルが第2制御スイッチを介して励磁されると可動接点が第2固定接点に接触するように自動切替スイッチが構成されている。また、この構成では、第1制御スイッチおよび第2制御スイッチの開閉が、同一の制御信号によって制御されるようになっている。したがって、この構成によれば、2つの制御コイルが同時に励磁されて自動切替スイッチの状態が不定となるのを確実に防ぐことができる。
【0012】
上記系統連系システムは、a接点型リレーで主スイッチが構成されていてもよい。この場合は、主スイッチの開閉を上記制御信号とは論理反転の関係にある信号によって制御すればよい。また、この場合、分電部は、一方の接点が主スイッチの商用電力系統側の接点に接続され、かつ他方の接点が主スイッチのパワーコンディショナ部側の接点に接続された副スイッチをさらに含んでいてもよい。この副スイッチは、主スイッチよりも電流容量が小さいb接点型リレーであることが好ましい。
【0013】
あるいは、上記系統連系システムは、セットコイルおよびリセットコイルを有するラッチングリレーで主スイッチが構成されていてもよい。この場合は、リセットコイルの励磁を上記制御信号または該制御信号とは論理同一の関係にある信号によって制御すればよい。また、この場合、分電部は、一方の接点が主スイッチの商用電力系統側の接点に接続され、かつ他方の接点がセットコイルに接続された副スイッチをさらに含んでいてもよい。この副スイッチは、主スイッチよりも電流容量が小さいb接点型リレーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、停電が発生/復旧したときに、負荷に供給する電力を好適に切り替えることが可能な系統連系システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施例に係る系統連系システムを示す図である。
【
図2】第1実施例に係る系統連系システムの動作を示すタイミング図である。
【
図3】本発明の第2実施例に係る系統連系システムを示す図である。
【
図4】第2実施例に係る系統連系システムの動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る系統連系システムの実施例について説明する。
【0017】
[第1実施例]
(系統連系システムの構成)
まず、
図1を参照しながら、本発明の第1実施例に係る系統連系システム1Aの構成について説明する。同図に示すように、系統連系システム1Aは、系統Gおよび負荷3に接続される分電部10Aと、分電部10Aおよび蓄電池2の間に接続されるパワーコンディショナ部(PCS)20とを備えている。系統連系システム1Aは、系統連系運転により、系統Gから供給される電力と蓄電池2が出力する電力とを同時に負荷3に供給することができる。また、系統連系システム1Aは、自立運転により、停電時に蓄電池2が出力する電力のみを負荷3に供給することもできる。
【0018】
分電部10Aは、主ライン11と、遮断器(ELCB)12と、遮断器(MCCB)13と、主スイッチSW1と、副スイッチSW2と、自動切替スイッチSW3と、系統側制御スイッチSW4と、PCS側制御スイッチSW5と、系統電圧検出部14と、分電部側制御部15Aと、論理反転部16とを備えている。
【0019】
主ライン11は、比較的大きな電流を通流させることが可能なケーブルで構成されている。主ライン11は、一端を介して系統Gに接続されるとともに、他端を介してPCS20に接続されている。
【0020】
ELCB12および主スイッチSW1は、主ライン11上に設けられている。主スイッチSW1は、電流容量が比較的大きいa接点型リレーからなる。系統Gを上流と定義したとき、主スイッチSW1は、ELCB12よりも下流側に位置している。
【0021】
副スイッチSW2は、一方の接点が主スイッチSW1の系統G側の接点に接続され、かつ他方の接点が主スイッチSW1のPCS20側の接点に接続されている。つまり、主スイッチSW1および副スイッチSW2は、並列接続されている。副スイッチSW2は、主スイッチSW1よりも電流容量が小さいb接点型リレーからなる。
【0022】
自動切替スイッチSW3は、MCCB13を介して負荷3に接続される可動接点T3と、主スイッチSW1よりも上流側において主ライン11に接続された系統側固定接点T1と、主スイッチSW1よりも下流側において主ライン11に接続されたPCS側固定接点T2と、系統側制御コイルL1と、PCS側制御コイルL2とを有したリレーからなる。自動切替スイッチSW3の電流容量は、主スイッチSW1と同程度である。自動切替スイッチSW3は、系統側制御コイルL1が励磁されると可動接点T3が系統側固定接点T1に接触し、PCS側制御コイルL2が励磁されると可動接点T3がPCS側固定接点T2に接触するよう構成されている。
【0023】
系統側制御スイッチSW4は、系統側固定接点T1および系統側制御コイルL1の間に接続されたb接点型リレーからなる。また、PCS側制御スイッチSW5は、PCS側固定接点T2およびPCS側制御コイルL2の間に接続されたa接点型リレーからなる。系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5の開閉は、同一の制御信号S3によって制御される。
【0024】
なお、系統側固定接点T1、PCS側固定接点T2、系統側制御コイルL1およびPCS側制御コイルL2は、それぞれ、本発明の「第1固定接点」、「第2固定接点」、「第1制御コイル」および「第2制御コイル」に相当する。また、系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5は、それぞれ、本発明の「第1制御スイッチ」および「第2制御スイッチ」に相当する。
【0025】
系統電圧検出部14は、ELCB12よりも下流側において主ライン11の電圧(すなわち、系統電圧)を検出する。系統電圧検出部14は、検出した系統電圧に対応した信号S5をPCS側制御部24に送る。なお、
図1では、信号S5を分電部側制御部15Aにて一旦受信し、信号S6にその情報を重畳させることで、間接的にPCS側制御部24に信号S5を送る構成としているが、独立した信号線を用いて信号S5を直接PCS側制御部24へ送る構成とすることもできる。
【0026】
PCS側制御部24は、主に系統電圧検出部14から送られてきた信号S5に基づく信号S6を分電部側制御部15Aに送ることで、主スイッチSW1、副スイッチSW2、系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5の開閉を間接的に制御する。より詳しくは、分電部側制御部15Aは、副スイッチSW2に制御信号S1を送るとともに、主スイッチSW1および論理反転部16に制御信号S2を送る。論理反転部16は、制御信号S2とは論理反転の関係にある制御信号S3を生成するとともに、これを系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5に送る。なお、分電部側制御部15Aは、3つの制御信号S1,S2,S3を送るように構成されていてもよい。この場合は、論理反転部16を省略することができる。
【0027】
ここで、分電部側制御部15Aおよび論理反転部16は、PCS20の電源部23から出力された電圧を電源電圧とする。このため、電源部23がOFFしているとき、制御信号S1,S2,S3は常にLレベルである。
【0028】
PCS20は、主ライン21と、主スイッチSW6と、双方向電力変換部22と、電源部23と、PCS側制御部24とを備えている。
【0029】
主ライン21は、主ライン11と同様、比較的大きな電流を通流させることが可能なケーブルで構成されている。主ライン21は、一端を介して分電部10A(主ライン11)に接続されるとともに、他端を介して蓄電池2に接続される。
【0030】
主スイッチSW6および双方向電力変換部22は、主ライン21上に設けられている。主スイッチSW6は、主スイッチSW1と同様、電流容量が比較的大きいa接点型リレーからなる。双方向電力変換部22は、系統Gから供給される交流の系統電圧を所望の直流電圧に変換して蓄電池2に出力する充電動作と、蓄電池2が出力する直流電圧を系統電圧と同等の交流電圧に変換して分電部10Aに出力する放電動作とを行うことができる。双方向電力変換部22は、主スイッチSW6よりも下流側に位置している。
【0031】
電源部23は、主ライン21の電圧が概ね正常値(本実施例では、AC200V)であるときにONし、分電部側制御部15A、論理反転部16およびPCS側制御部24の電源電圧となる直流電圧(例えば、DC12V)を出力する。
【0032】
PCS側制御部24は、主に分電部側制御部15Aから送られてくる信号S6に基づき、主スイッチSW6の開閉を制御する。より詳しくは、PCS側制御部24は、主スイッチSW6に制御信号S4を送る。分電部側制御部15Aから送られてくる信号S6には、前述した通り、系統電圧検出部14によって検出された系統電圧の情報が含まれている。PCS側制御部24は、PCS20側の情報(例えば、蓄電池2のSOC,State of Charge)を含んだ信号を分電部側制御部15Aに送ることもできる。PCS側制御部24は、分電部側制御部15Aから送られてくる信号S6に加え、主スイッチSW6よりも上流側において主ライン21の電圧(すなわち、系統電圧)を検出する不図示の系統電圧検出部の検出結果、およびユーザからの運転指示に基づき、主スイッチSW6の開閉を制御してもよい。
【0033】
PCS側制御部24は、主に分電部側制御部15Aから送られてくる信号S6に基づき、双方向電力変換部22の動作も制御する。
【0034】
(系統連系システムの動作例)
次に、
図2を参照しながら、本実施例に係る系統連系システム1Aの動作例について説明する。なお、以下では、時刻t3-t6の比較的長時間にわたる停電と時刻t10-t11の短時間の停電とが発生する例について説明する。
【0035】
時刻t0においてユーザがELCB12を閉じると、b接点型リレーである副スイッチSW2を介して系統電圧(AC200V)が電源部23に供給され、時刻t1において電源部23がONする。このとき、副スイッチSW2には、電源部23で消費される僅かな電流しか流れない。副スイッチSW2を安価で小型な低電流容量リレーで構成したのはこのためである。
【0036】
電源部23がONすると、動作可能となった分電部側制御部15AがHレベルの制御信号S1,S2を送り始める。これにより、a接点型リレーからなる主スイッチSW1が閉じ、b接点型リレーである副スイッチSW2が開く。電源部23がONすると論理反転部16も動作可能となるが、論理反転部16が送り始める制御信号S3はLレベルなので、系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5の状態は変化しない。
【0037】
また、電源部23がONすると、動作可能となったPCS側制御部24がHレベルの制御信号S4を送り始める。これにより、a接点型リレーからなる主スイッチSW6が閉じる。さらに、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を開始するよう指令する。これを受けて、双方向電力変換部22は、所定の待機時間が経過した時刻t2に放電動作を始める。その結果、PCS20は系統連系運転状態となる。
【0038】
時刻t3において停電が発生し、時刻t4においてPCS側制御部24がその旨を検出すると、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を停止するよう指令する。そして、所定の待機時間が経過した時刻t5に、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を再開するよう指令する。その結果、PCS20は自立運転状態となる。
【0039】
PCS20の自立運転開始に合わせて、分電部側制御部15Aは、制御信号S2をLレベルに変化させる。これにより、主スイッチSW1が開く。また、制御信号S2がLレベルとなると、制御信号S3がHレベルとなり、系統側制御スイッチSW4が開くとともにPCS側制御スイッチSW5が閉じるので、自動切替スイッチSW3の可動接点T3は系統側固定接点T1ではなくPCS側固定接点T2に接触するようになる。その結果、蓄電池2が出力した電力が負荷3に供給される。なお、このとき、系統Gは、負荷3からもPCS20からも切り離されている。
【0040】
時刻t6において停電が復旧し、系統電圧検出部14によって検出された系統電圧の情報(信号S5,S6)によりPCS側制御部24がその旨を検出すると、時刻t7においてPCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を停止するよう指令する。そして、所定の待機時間が経過した時刻t9に、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を再開するよう指令する。その結果、PCS20は系統連系運転状態となる。
【0041】
停電の復旧に伴い、時刻t7において双方向電力変換部22の放電動作を停止してから所定の時間が経過した時刻t8において、分電部側制御部15Aは、制御信号S2をHレベルに変化させる。これにより、主スイッチSW1が閉じる。また、制御信号S2がHレベルとなると、制御信号S3がLレベルとなり、系統側制御スイッチSW4が閉じるとともにPCS側制御スイッチSW5が開くので、自動切替スイッチSW3の可動接点T3はPCS側固定接点T2ではなく系統側固定接点T1に接触するようになる。その結果、系統Gから供給された電力が負荷3に供給される。
【0042】
時刻t10-t11に発生した停電、すなわち、時刻t3-t4に満たない短時間の停電では、分電部側制御部15AおよびPCS側制御部24は、各部の状態を変化させない。
【0043】
このように、本実施例に係る系統連系システム1Aによれば、停電が発生/復旧したときに、自動切替スイッチSW3を好適に切り替えて、負荷3に供給する電力を切り替えることできる。このとき、系統側制御コイルL1を励磁する系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御コイルL2を励磁するPCS側制御スイッチSW5の開閉を同一の制御信号S3によって制御するので、2つの制御コイルL1,L2の両方が励磁されて自動切替スイッチSW3の状態が不定となることはない。
【0044】
[第2実施例]
(系統連系システムの構成)
まず、
図3を参照しながら、本発明の第2実施例に係る系統連系システム1Bの構成について説明する。同図に示すように、系統連系システム1Bは、分電部10Aの代わりに分電部10Bを備えている点において系統連系システム1Aと相違しているが、他の点においては系統連系システム1Aと共通している。また、分電部10Bは、主スイッチSW1の代わりに主スイッチSW7を備えている点、副スイッチSW2の代わりに副スイッチSW8を備えている点、分電部側制御部15Aの代わりに分電部側制御部15Bを備えている点、および論理反転部16が省略されている点において分電部10Aと相違しているが、他の点においては分電部10Aと共通している。
【0045】
主スイッチSW7は、主ライン11上に設けられている。主スイッチSW7は、セットコイルL3およびリセットコイルL4を有するラッチングリレーである。主スイッチSW7の電流容量は、主スイッチSW1と同様、比較的大きい。主スイッチSW7は、ELCB12よりも下流側に位置している。
【0046】
主スイッチSW7は、セットコイルL3が励磁されると閉じ、セットコイルL3が励磁されていないときにリセットコイルL4が励磁されると開く。主スイッチSW7は、セットコイルL3が励磁されなくなっただけでは開かない。
【0047】
副スイッチSW8は、主スイッチSW7よりも電流容量が小さいb接点型リレーからなる。副スイッチSW8は、一方の接点が主スイッチSW7の系統G側の接点に接続され、かつ他方の接点がセットコイルL3に接続されている。このため、副スイッチSW8は、セットコイルL3の励磁を制御する制御スイッチであると言える。なお、リセットコイルL4の励磁は、後述する制御信号S7によって制御される。
【0048】
PCS側制御部24は、主に系統電圧検出部14から送られてきた信号S5に基づく信号S6を分電部側制御部15Bに送ることで、副スイッチSW8、系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5の開閉、並びにリセットコイルL4の励磁を間接的に制御する。より詳しくは、分電部側制御部15Bは、副スイッチSW8、系統側制御スイッチSW4、PCS側制御スイッチSW5およびリセットコイルL4に制御信号S7を送る。なお、分電部側制御部15Bは、副スイッチSW8、系統側制御スイッチSW4およびPCS側制御スイッチSW5の開閉、並びにリセットコイルL4の励磁を、論理同一の関係にある複数の信号で制御してもよい。
【0049】
分電部側制御部15Bは、分電部側制御部15Aと同様、PCS20の電源部23から出力された電圧を電源電圧とする。このため、電源部23がOFFしているとき、制御信号S7は常にLレベルである。
【0050】
(系統連系システムの動作例)
次に、
図4を参照しながら、本実施例に係る系統連系システム1Bの動作例について説明する。なお、以下でも、時刻t3-t6の比較的長時間にわたる停電と時刻t10-t11の短時間の停電とが発生する例について説明する。
【0051】
時刻t0においてユーザがELCB12を閉じると、b接点型リレーである副スイッチSW8を介してセットコイルL3が励磁され、主スイッチSW7が閉じ、系統電圧(AC200V)が電源部23に供給され、時刻t1において電源部23がONする。このとき、副スイッチSW8には、セットコイルL3で消費される僅かな電流しか流れない。副スイッチSW8を安価で小型な低電流容量リレーで構成したのはこのためである。
【0052】
電源部23がONすると、動作可能となったPCS側制御部24がHレベルの制御信号S4を送り始める。これにより、a接点型リレーからなる主スイッチSW6が閉じる。さらに、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を開始するよう指令する。これを受けて、双方向電力変換部22は、所定の待機時間が経過した時刻t2に放電動作を始める。その結果、PCS20は系統連系運転状態となる。
【0053】
また、電源部23がONすると、動作可能となった分電部側制御部15BがLレベルの制御信号S7を送り始める。ただし、これによっては、各部の状態は変化しない。
【0054】
時刻t3において停電が発生し、時刻t4においてPCS側制御部24がその旨を検出すると、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を停止するよう指令する。そして、所定の待機時間が経過した時刻t5に、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を再開するよう指令する。その結果、PCS20は自立運転状態となる。
【0055】
PCS20の自立運転開始に合わせて、分電部側制御部15Bは、制御信号S7をHレベルに変化させる。これにより、副スイッチSW8が開くとともにリセットコイルL4が励磁されて主スイッチSW7が開く。
【0056】
また、制御信号S7がHレベルとなると、系統側制御スイッチSW4が開くとともにPCS側制御スイッチSW5が閉じるので、自動切替スイッチSW3の可動接点T3は系統側固定接点T1ではなくPCS側固定接点T2に接触するようになる。その結果、蓄電池2が出力した電力が負荷3に供給される。なお、このとき、系統Gは、負荷3からもPCS20からも切り離されている。
【0057】
時刻t6において停電が復旧し、系統電圧検出部14によって検出された系統電圧の情報(信号S5,S6)によりPCS側制御部24がその旨を検出すると、時刻t7においてPCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を停止するよう指令する。そして、所定の待機時間が経過した時刻t9に、PCS側制御部24は、双方向電力変換部22に放電動作を再開するよう指令する。その結果、PCS20は系統連系運転状態となる。
【0058】
停電の復旧に伴い、時刻t7において双方向電力変換部22の放電動作を停止してから所定の時間が経過した時刻t8において、分電部側制御部15Bは、制御信号S7をLレベルに変化させる。これにより、副スイッチSW8が閉じ、副スイッチSW8を介してセットコイルL3が励磁されるとともに、リセットコイルL4の励磁が解除され、その結果、主スイッチSW7が閉じる。また、制御信号S7がLレベルとなると、系統側制御スイッチSW4が閉じるとともにPCS側制御スイッチSW5が開くので、自動切替スイッチSW3の可動接点T3はPCS側固定接点T2ではなく系統側固定接点T1に接触するようになる。その結果、系統Gから供給された電力が負荷3に供給される。
【0059】
時刻t10-t11に発生した停電、すなわち、時刻t3-t4に満たない短時間の停電では、分電部側制御部15BおよびPCS側制御部24は、各部の状態を変化させない。
【0060】
このように、本実施例に係る系統連系システム1Bによれば、系統連系システム1Aと同じ作用効果が得られる。
【0061】
また、ラッチングリレーは、セットコイルまたはリセットコイルの励磁による開閉が完了すると、内部に設けられた自己消磁接点により各コイルへの経路が自動的に遮断されるよう構成されている。つまり、ラッチングリレーは、開閉するときにのみ電力を消費し、それ以外のときは電力を消費しない。したがって、本実施例に係る系統連系システム1Bによれば、分電部の主スイッチにおける電力消費を低減することもできる。
【0062】
[変形例]
以上、本発明に係る系統連系システムの第1実施例および第2実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されない。
【0063】
例えば、PCSは、蓄電池に加えて太陽電池が接続されるよう構成されていてもよい。この構成によれば、停電発生時に、蓄電池に蓄えられた電力とともに、または蓄電池に蓄えられた電力の代わりに、太陽電池の発電電力を負荷に供給することができる。
【0064】
また、分電部および/またはPCSは、各リレーの溶着を検出する回路を有していてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B 系統連系システム
2 蓄電池
3 負荷
10A,10B 分電部
11 主ライン
12 遮断器(ELCB)
13 遮断器(MCCB)
14 系統電圧検出部
15A,15B 分電部側制御部
16 論理反転部
20 パワーコンディショナ部(PCS)
21 主ライン
22 双方向電力変換部
23 電源部
24 PCS側制御部
G 商用電力系統
L1 系統側制御コイル
L2 PCS側制御コイル
L3 セットコイル
L4 リセットコイル
SW1 主スイッチ
SW2 副スイッチ
SW3 自動切替スイッチ
SW4 系統側制御スイッチ
SW5 PCS側制御スイッチ
SW6 主スイッチ
SW7 主スイッチ
SW8 副スイッチ