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特許7514204RIP装置、プリンタ、およびプログラム
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  • 特許-RIP装置、プリンタ、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】RIP装置、プリンタ、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240703BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20240703BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G06F3/12 347
G06F3/12 303
H04N1/387
B41J5/30 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021052909
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150343
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】北川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慶成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 世新
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】八木 猛
(72)【発明者】
【氏名】中島 友基
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-272808(JP,A)
【文献】特開2011-165010(JP,A)
【文献】特開2009-260575(JP,A)
【文献】特開2007-020182(JP,A)
【文献】特開2012-070115(JP,A)
【文献】特開2014-002591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
H04N 1/387
B41J 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト集合記述形式の印刷データに埋め込まれているオブジェクトのグループ化情報に基づいて、印刷データのオブジェクトをグループ化したグループ化データを作成する第1処理部と、
前記第1処理部によってグループ化されたグループのうちの1つまたは複数を指定することが可能に構成された第2処理部と、
前記第2処理部で指定されたグループのオブジェクトに対して加工処理を指定可能な第3処理部と、
印刷データ内のオブジェクトのうち前記第2処理部で指定されたグループのオブジェクトに対して前記第3処理部で指定された加工処理を行う第4処理部と、
前記第4処理部で加工処理された印刷データに基づいてラスター形式のデータを作成する第5処理部と、
を備えた、RIP(Raster Image Processor)装置。
【請求項2】
前記第1処理部は、前記グループ化データの作成において、前記印刷データに埋め込まれているグループ化情報においてオブジェクトに行われているのと同じグループ化を行うように構成されている、
請求項1に記載のRIP装置。
【請求項3】
前記第3処理部によって指定可能な加工処理は、指定されたグループに属するオブジェクトの色の変更を含む、
請求項1または2に記載のRIP装置。
【請求項4】
前記第2処理部は、ユーザーがグループを指定することが可能な操作画面を表示装置に表示させるように構成されている、
請求項1~3のいずれか一つに記載のRIP装置。
【請求項5】
前記第2処理部は、印刷データをラスター形式に変換したデータの画像を含む画像を前記操作画面に表示させ、前記操作画面に表示される画像からユーザーが選択したオブジェクトが属するグループを加工処理するグループとして指定する、
請求項4に記載のRIP装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載のRIP装置が搭載されたプリンタ。
【請求項7】
コンピュータにインストールすることにより、請求項1~5のいずれか一つに記載のRIP装置を構成するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RIP(Raster Image Processor)装置、RIP装置を搭載したプリンタ、およびRIP装置を構成するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタによって印刷する際に印刷が容易になるように、プリンタに送る前のPDF形式の印刷データを加工することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、PDF形式(Portable Document Format)の画像データを自動またはユーザーの操作によって複数のオブジェクトにグループ化し、オブジェクトの重複除去や集約化を行うホスト装置と、ホスト装置から画像データを受信して、トナー像を形成するための画像データを生成するプリンタ制御装置(DFE)とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-177473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたプリンタ制御装置(DFE)のように、PDF等のベクター形式のデータをラスター形式に変換する処理をRIP(Raster Image Processor)処理とも呼ぶが、従来、RIP処理を行う装置(以下、RIP装置)は、印刷画像の加工については、ごく限られたことしかできないように構成されていた。例えば、RIP装置は、印刷画像の加工について、1つの色を一括で他の色に変更すること等しか実施することができなかった。そのため、RIP処理後の画像データに所望の通りでない点があると(例えば、RIP処理後において所望の色が発現できていない箇所がある等)、ユーザーは、PDF形式のデータを修正して再びRIP処理しなければならず、場合によっては上記を繰り返さなければならなかった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷画像の加工をより自由に行うことができるRIP装置を提供することである。また、そのようなRIP装置を備えたプリンタを提供することである。さらに、そのようなRIP装置を構成するプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するRIP装置は、オブジェクト集合記述形式の印刷データに埋め込まれているオブジェクトのグループ化情報に基づいて、印刷データのオブジェクトをグループ化したグループ化データを作成する第1処理部と、前記第1処理部によってグループ化されたグループのうちの1つまたは複数を指定することが可能に構成された第2処理部と、前記第2処理部で指定されたグループのオブジェクトに対して加工処理を指定可能な第3処理部と、印刷データ内のオブジェクトのうち前記第2処理部で指定されたグループのオブジェクトに対して前記第3処理部で指定された加工処理を行う第4処理部と、前記第4処理部で加工処理された印刷データに基づいてラスター形式のデータを作成する第5処理部と、を備えている。
【0007】
上記RIP装置によれば、オブジェクト集合記述形式の印刷データ内のオブジェクトをグループ化した場合に印刷データ内に埋め込まれるグループ化情報に基づいてオブジェクトがグループ化されたグループ化データを作成して、グループを指定することができる。さらに、上記RIP装置は、印刷データ内のオブジェクトのうちの指定されたグループのオブジェクトに対して、例えば色の変更のような加工をグループ単位で行うことができるように構成されている。言い換えると、他のグループに属するオブジェクトに対しては他の加工を行うこと、または、何らの加工を行わないことが可能である。そのため、例えば、1つの色を一括で他の色に変更することしかできない従来のRIP装置に比べて、印刷画像の加工をより自由に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプリントシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】描画装置によって作成される印刷データの一例を示す模式図である。
図3】オブジェクトの色変更のプロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】操作画面の模式的な正面図である。
図5】従来のRIP装置によるオブジェクトの色変更の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るプリントシステムについて説明する。プリントシステムは、RIP装置を備えている。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るプリントシステム10の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、プリントシステム10は、プリンタ20と、描画装置40およびRIP装置50を含むコンピュータ30と、コンピュータ30に接続された表示装置35と、を備えている。表示装置35は、コンピュータ30またはプリンタ20に内蔵されていてもよい。プリンタ20は、例えば、インクジェットプリンタである。ただし、プリンタ20の種類は、ラスター形式のデータを用いて印刷を行うものであることを除き、特に限定されない。
【0011】
プリンタ20は、コンピュータ30または他のコンピュータで作成された後にコンピュータ30によってRIP処理された印刷データを受け、印刷を実行する。図示は省略するが、プリンタ20は、例えば、インクを吐出するインクヘッドや、記録媒体を送る送り装置などを備えている。プリンタ20は、インクヘッド等の動作を制御する制御装置21を備えている。プリンタ20の制御装置21は、RIP処理された印刷データを受信する処理部、受信した印刷データを一時保存する処理部、インクヘッド等を制御して印刷を実行する処理部等を備えていてもよい。
【0012】
制御装置21の構成は特に限定されない。制御装置21は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。制御装置21は、プリンタ20の本体部の内部に設けられている。ただし、制御装置21は、プリンタ20の本体部の内部に設けられていなくてもよい。また、その機能の一部は、例えば、コンピュータ30などによって実現されてもよい。
【0013】
図1に示すように、コンピュータ30は、例えばPDF形式などのオブジェクト集合記述形式の印刷データを作成可能な描画装置40と、印刷データをRIP処理してラスター形式のデータを得るRIP装置50と、を備えている。オブジェクトはベクター形式による図形、文字、埋め込み画像等を含み、オブジェクト集合記述形式の印刷データは、オブジェクトが集合して構成されている。本実施形態では、描画装置40およびRIP装置50の機能は、コンピュータ30にインストールされたプログラムを実行することによって実現される。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれてもよい。このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。描画装置40とRIP装置50とは、ここでは1つのコンピュータ30によって実現されているが、別々のコンピュータによって実現されていてもよい。描画装置40およびRIP装置50は、クラウド上のコンピュータによって実現されてもよい。描画装置40およびRIP装置50の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現されてもよい。
【0014】
描画装置40は、ベクター形式の画像データを作成および加工できる公知のソフトウェア、入手容易性を考慮すると、例えば、PDF形式の画像を作成および加工できる市販のソフトウェアによって実現されていてもよい。かかる描画装置は公知であるため詳しい説明は省略するが、描画装置40は、図1に示すように、描画部41と、レイヤー作成部42と、を備えている。描画部41は、ベクター形式の画像を作成および加工できる操作画面を表示装置35に表示する。ユーザーは、描画部41によって作成された操作画面を操作することにより、ベクター形式の印刷画像データを作成する。または、ユーザーは、外部から持ち込んだ画像を加工して印刷画像を作成する。印刷画像は、外部から持ち込まれた画像そのままであってもよい。ここでは、PDF形式の画像データを例に説明する。
【0015】
レイヤー作成部42は、印刷画像のデータ内のオブジェクトを複数のレイヤーに分割(グループ化)できるように構成されている。レイヤー作成部42は、ここでは、画像のオブジェクトと文字のオブジェクトとを自動的に判別し、別々のレイヤーにグループ分けする。また、レイヤー作成部42は、オブジェクトを指定してグループ分けできる操作画面を表示装置35に表示する。ユーザーは、レイヤー作成部42によって作成された操作画面を操作することにより、印刷データ内のオブジェクトをグループ化し、複数のレイヤーを作成することができる。図2は、描画装置40によって作成される印刷データの一例を示す模式図である。図2に示す例では、印刷データ内のオブジェクトは、画像のオブジェクトO1からなる第1グループG1と、画像のオブジェクトO2からなる第2グループG2と、文字のオブジェクトO3からなる第3グループG3と、を含んでいる。図2に示す例では、オブジェクトO1およびオブジェクトO2の色は、第1の色C1に指定されている。オブジェクトO3の色は、第2の色C2に指定されている。
【0016】
以下では、このように形成されたオブジェクトのグループG1~G3をOCG(Optional Content Group)とも呼ぶ。OCGに係る情報は、印刷データ内に埋め込まれる。以下、この印刷データ内に埋め込まれたOCGに関する情報をOCG情報とも呼ぶ。OCG情報は、オブジェクト集合記述形式の印刷データ内部のグループ構成を示すグループ化情報(レイヤー情報)の一例である。
【0017】
図1に示すように、RIP装置50は、グループ化データ作成部51と、グループ指定部52と、加工処理指定部53と、加工処理部54と、変換処理部55と、を備えている。グループ化データ作成部51は、オブジェクト集合記述形式の印刷データに埋め込まれているオブジェクトのグループ化情報に基づいて、印刷データのオブジェクトをグループ化したグループ化データを作成する。ここでは、グループ化データ作成部51は、グループ化データの作成において、印刷データに埋め込まれているグループ化情報においてオブジェクトに行われているのと同じグループ化を行うように構成されている。図2に示す例では、グループ化データ作成部51は、印刷データに埋め込まれているOCG情報に基づき、オブジェクトを第1グループG1と第2グループG2と第3グループG3とにグループ化する。
【0018】
グループ指定部52は、グループ化データ作成部51によってグループ化されたグループのうちの1つまたは複数を指定することが可能に構成されている。加工処理指定部53は、グループ指定部52で指定されたグループのオブジェクトに対して加工処理を指定可能に構成されている。本実施形態では、加工処理指定部53によって指定可能な加工処理は、指定されたグループに属するオブジェクトの色の変更である。ただし、加工処理指定部53によって指定可能な加工処理は、オブジェクトの色の変更以外の加工を含んでいてもよい。加工処理部54は、印刷データ内のオブジェクトのうちグループ指定部52で指定されたグループのオブジェクトに対して、加工処理指定部53で指定された加工処理を行う。変換処理部55は、加工処理部54で加工処理された印刷データに基づきラスター形式のデータを作成する。
【0019】
グループ指定部52は、ユーザーがグループを指定することが可能な操作画面UI(図4参照)を表示装置35に表示させるように構成されている。グループ指定部52は、操作画面UIを介して指定されたグループを、加工可能なグループとして指定する。操作画面UIでは、実行する印刷画像の加工の種類も指定可能である。ここでは、ユーザーは、操作画面UIを介して、指定されたグループに属するオブジェクトの色を指定可能である。
【0020】
本実施形態では、グループ指定部52は、操作画面UIを介して、ユーザーにOCG情報を出力できるように構成されている。また、グループ指定部52は、操作画面UIを介して、ユーザーが特定のOCGを指定できるように構成されている。操作画面UIに表示される画像は、ここでは、印刷画像をラスター形式に変換したデータの画像を含んでいる。グループ指定部52は、印刷データをラスター形式に変換したデータの画像(プレビュー)を含む画像を操作画面UIに表示させる。グループ指定部52は、操作画面UIに表示される画像からユーザーが選択したオブジェクトが属するグループを、加工処理するグループとして指定する。操作画面UIは、加工処理の結果の確認がその場でできるように構成されていてもよい。ただし、操作画面UIと加工処理の結果の確認画面とは別の画面であってもよい。操作画面UIの構成は特に限定されない。
【0021】
図3は、オブジェクトの色変更のプロセスの一例を示すフローチャートである。図3では、図2に示すPDF形式による印刷画像を描画装置40によって作成し、その印刷画像をRIP処理および加工するプロセスを例として示す。図3に示すように、ステップS01では、ユーザーは、描画装置40を使用して、PDF形式の印刷画像データを作成する。ステップS02では、ユーザーは、描画装置40によって、印刷画像データ内のオブジェクトを第1グループG1、第2グループG2、および第3グループG3にグループ化する。このとき、OCG情報が印刷データに埋め込まれる。
【0022】
ステップS01では、図2に示すように、図形のオブジェクトO1およびO2の色を第1の色C1に、文字のオブジェクトO3の色を第2の色C2に指定するものとする。ステップS02では、後のステップでできるだけ詳細な色の調整が可能なように、複数の図形オブジェクトをそれぞれ別のグループとして、すなわち、1つのグループには1つの図形オブジェクトだけが属するようにグループ化してもよい。ここでは、図2に示すように、第1グループG1には図形のオブジェクトO1のみが割り当てられ、第2グループG2には図形のオブジェクトO2のみが割り当てられるものとする。ただし、1つのグループに属するオブジェクトの数は2つ以上であってもよい。
【0023】
ステップS03では、ユーザーは、RIP装置50を操作して、PDF形式の印刷データの読み込みを指示する。この際、印刷データに埋め込まれているOCG情報に基づいてグループ化データが作成され、また印刷データがプレビュー用としてラスター形式に変換される。ステップS04では、ラスター形式に変換されたプレビュー用の印刷データが操作画面UIに表示される。ユーザーは、ステップS05において第1グループG1に属するオブジェクトO1の色を調整するかどうかを判断する。ユーザーは、例えば、PDF形式のデータでは問題なかったオブジェクトO1の色の発色がプレビューにおいて問題があると考えた場合、オブジェクトO1の色を変更することができる。ユーザーは、この際、オブジェクトO1の色を僅かに変更して調整することもでき、全く異なる色に変更することもできる。ステップS05において色の変更を選択する場合(ステップS05の結果がYESの場合)、ユーザーはステップS05AにおいてオブジェクトO1の色を変更する。ステップS05において色を変更しないことを選択する場合(ステップS05の結果がNOの場合)、ユーザーはステップS06において、第2グループG2に属するオブジェクトO2の色を変更するかどうかを同じく判断する。
【0024】
以下同様に、ステップS06において、第2グループG2に属するオブジェクトO2の色の変更を選択する場合(ステップS06の結果がYESの場合)、ユーザーはステップS06AにおいてオブジェクトO2の色を変更する。ステップS06において色を変更しないことを選択する場合(ステップS06の結果がNOの場合)、ユーザーはステップS07において、第3グループG3に属するオブジェクトO3の色を変更するかどうかを同じく判断する。ステップS07において、色の変更を選択する場合(ステップS07の結果がYESの場合)、ユーザーはステップS07Aにおいて第3グループG3に属するオブジェクトO3の色を変更する。プロセスは、第1グループG1、第2グループG2、および第3グループG3のオブジェクトO1、O2およびO3の色をユーザーが全て決定すると終了する。なお、あるグループのオブジェクトの色を選択した後に、先に色を決めたグループに戻って色を指定し直すこともできる。
【0025】
図4は、操作画面UIの模式的な正面図である。図4に示すように、操作画面UIには、ラスター形式に変換された印刷データがプレビューとして表示される。ユーザーは、ここでは、色を変更したいオブジェクト上でクリックを行うことによってオブジェクトを選択する。これにより、選択されたオブジェクトが属するグループの全オブジェクトが選択される。図4では、第1グループG1の全オブジェクトが選択されている。ここでは、第1グループG1に属するオブジェクトはオブジェクトO1の1つだけである。
【0026】
図4に示す例において、第1グループG1に属するオブジェクトO1の色を変更したい場合、ユーザーは、第1グループG1が選択された状態で、例えば、色変更のコマンドを押下する。これにより、図4に示すように、色選択画面UI1が表示される。ユーザーが色選択画面UI1で色を選択すると(ここでは、第3の色C3を選択するとする)、変更後のオブジェクトO1の色が第3の色C3に指定されるとともに、確認画面としての操作画面UIにおいて、オブジェクトO1の色が第3の色C3に表示される。色の確定のためには、確定ボタンの押下などの操作が必要であってもよく、必要でなくてもよい。後者の場合には、例えば、印刷実行直前の印刷データに基づいて印刷が行われるとよい。操作画面UIでは、2つ以上のグループを指定して同時に色変更を行うこともできる。
【0027】
ここでは、一例として、第1グループG1に属するオブジェクトO1の色だけが第1の色C1から第3の色C3に変更されるものとする。その場合には、図4に示すように、第1グループG1に属するオブジェクトO1の色は第3の色C3に変更され、第2グループG2に属するオブジェクトO2の色は第1の色C1のまま維持され、第3グループG3に属する文字のオブジェクトO3の色は第2の色C2のまま維持される。
【0028】
各グループG1~G3の色変更を終えると、ユーザーは、ステップS08において、プリンタ用データへの変換のためにRIP処理開始の指示をする。RIP装置50は、RIP処理開始の指示を受けると、各グループに指定された色に基づき、印刷データをプリンタ20が印刷可能なラスター形式のデータへと変換する。RIP装置50は、続いてプリンタ20へプリンタ用データを送信し、プリンタ20の印刷処理を開始させてもよい。
【0029】
従来のRIP装置によるオブジェクトの色変更の一例を示す模式図を図5に示す。図5は、図2に示す印刷データを従来のRIP装置で加工したものである。一例に係る従来のRIP装置では、印刷データのオブジェクトは、オブジェクトの種類(例えば、図形のオブジェクトか文字のオブジェクトか)と色とによってしか区別されなかった。そこで、色が同じ図形オブジェクトは、全て同じグループに属していた。図2の例では、第1グループG1のオブジェクトO1と第2グループG2のオブジェクトO2とは、ともに図形のオブジェクトであって第1の色C1が指定されているため、描画装置40によってグループ化したにもかかわらず、RIP装置50では同じグループに属する。そのため、従来のRIP装置においては、第1グループG1のオブジェクトO1および第2グループG2のオブジェクトO2には、同じ色、例えば、第3の色C3しか指定できない。そうすると、図5に示すように、第1グループG1のオブジェクトO1および第2グループG2のオブジェクトO2には、ともに第3の色C3が指定される。例えばオブジェクトO1の色だけを変更したい場合には、ユーザーは、描画装置40によって印刷データにおけるオブジェクトO1の色を変更し、さらに当該色変更後の印刷データをRIP処理しなければならなかった。僅かな色の調整などの場合には特に、上記したような描画装置40による画像変更処理とRIP装置によるRIP処理とを繰り返さなければならないこともあった。
【0030】
このような従来のRIP装置に対して、本実施形態に係るRIP装置50では、印刷データに埋め込まれているオブジェクトのグループ化情報に基づいて、印刷データのオブジェクトをグループ化したグループ化データを作成することができ、グループ化されたグループのうちの1つまたは複数を指定することが可能である。さらに、本実施形態に係るRIP装置50では、指定されたグループのオブジェクトに対して加工処理を指定することが可能である。そのため、例えば図4に示したように、オブジェクトの加工をOCG情報におけるグループ単位で行うことができる。その結果、RIP処理後に描画装置40による画像加工をやり直す頻度を減少させることができる。
【0031】
本実施形態では、グループ化データ作成部51は、グループ化データの作成において、印刷データに埋め込まれているグループ化情報においてオブジェクトに行われているのと同じグループ化を行うように構成されている。かかる構成によれば、RIP装置50による画像加工の単位と印刷データにおけるレイヤー構造とが一致するため、印刷データにおいてどのようにレイヤーを構成すべきかがユーザーに分かりやすい。ただし、グループ化データ作成部51は、グループ化データの作成において、埋め込まれたグループ化情報におけるものと全く同じグループ化を行うように構成されていなくてもよい。例えば、印刷データにおいて複数のグループのグループ名に特定の文字列が含まれる場合、グループ化データ作成部51は、上記複数のグループが同じグループになるようにグループ化を行ってもよい。
【0032】
本実施形態では、指定可能な加工は、指定されたグループに属するオブジェクトの色の変更を含んでいる。オブジェクトの色の変更は従来のRIP装置によっても比較的頻繁に行われていた加工であり、かかる構成によれば、このように実行頻度の高いオブジェクトの色の変更を、より緻密に行うことができる。それ以外にも、例えば、テクスチャの貼り付け、光沢仕上げまたはマット調仕上げ指定、特色インクによる下地処理またはオーバーコート処理指定、厚盛指定、オブジェクトの不印刷指定、インクドット比率の変更などの特殊な処理をグループ毎に行うような設定も可能である。
【0033】
本実施形態では、グループ指定部52は、ユーザーがグループを指定することが可能な操作画面UIを表示装置35に表示させるように構成されている。RIP装置50は、例えば、グループを指定する特段の操作なしにオブジェクトの加工ができるように構成されていてもよいが、グループを指定する操作をユーザーに行わせることにより、より確実な画像の加工が可能となる。
【0034】
詳しくは、グループ指定部52は、印刷データをラスター形式に変換したデータの画像を含む画像を操作画面UIに表示させ、操作画面UIに表示される画像からユーザーが選択したオブジェクトが属するグループを加工処理するグループとして指定する。かかる構成によれば、ユーザーは、印刷される画像から特定の部分を選択することにより、加工するグループを指定することができる。そのため、ユーザーにとって、グループを指定する操作が感覚的であり、分かりやすい。また、ユーザーは、印刷データ内のグループ分けの詳細を知っておく必要もない。
【0035】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態においてコンピュータ30の機能とされているものは、実施可能な限りにおいて、プリンタ20によって担われてもよい。同様に、上記した実施形態においてプリンタ20の機能とされているものは、実施可能な限りにおいてコンピュータ30によって担われてもよい。例えば、RIP装置50は、プリンタ20に搭載されていてもよい。コンピュータにインストールすることにより上記したいずれかの仕様のRIP装置50を構成するプログラムも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
20 プリンタ
30 コンピュータ
35 表示装置
40 描画装置
41 描画部
42 レイヤー作成部
50 RIP装置
51 グループ化データ作成部(第1処理部)
52 グループ指定部(第2処理部)
53 加工処理指定部(第3処理部)
54 加工処理部(第4処理部)
55 変換処理部(第5処理部)
G1~G3 グループ
O1~O3 オブジェクト
UI 操作画面
図1
図2
図3
図4
図5