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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】キャリブレーション試験片
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/93 20060101AFI20240703BHJP
   G01N 21/84 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
G01N21/93
G01N21/84 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021070612
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2022165297
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】長沼 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】小室 秀孝
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0302009(US,A1)
【文献】特開2010-085186(JP,A)
【文献】特開2014-137281(JP,A)
【文献】特開2008-304224(JP,A)
【文献】特開昭63-309843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0354797(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84
G01N 21/93
G01B 11/00
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板と、
前記薄板の表面に設けられたテストターゲットと、
前記テストターゲットを覆う艶消被膜と
前記薄板の表面を覆う艶有フィルムとを備え、
前記艶有フィルムには、前記薄板上の前記テストターゲットを前記艶有フィルムの外部に露出させる開口が設けられていることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記艶消被膜が塗料により形成されていることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項3】
請求項1に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記薄板の裏面に台紙を備えることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項4】
請求項に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記開口が前記薄板より小さく、前記開口の縁が前記薄板の上に配置され、
前記艶消被膜が前記開口の内側と外側を覆うことを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項5】
請求項に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記薄板の裏面に台紙を備え、
前記開口が前記薄板より大きく、前記開口内に前記薄板が配置され、
前記艶消被膜が、前記テストターゲットのうち前記開口の内側に位置する部分と、前記開口の内側に位置する前記薄板の全体と、前記開口の内側に位置する前記台紙の表面と、前記艶有フィルムにおける前記開口の周囲とを覆うことを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項6】
請求項1に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記艶消被膜がラバースプレーであることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項7】
請求項1に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記テストターゲットが、ワイヤ、黒色線、又は文字チャートの少なくとも1つにより形成されていることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項8】
請求項に記載のキャリブレーション試験片であって、
前記テストターゲットがワイヤにより形成されており、
前記ワイヤは、その端部が前記台紙の裏面に固定され、前記台紙の表面に張り渡されていることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【請求項9】
請求項1に記載のキャリブレーション試験片であって、
原子炉の炉心内構造物の遠隔目視試験に用いられることを特徴とするキャリブレーション試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等の施設では高い安全性が求められており、定期的に十分な検査を実施しなければならない。検査対象物としては、例えば、原子炉圧力容器や、容器内にあるシュラウド、炉心支持板、燃料集合体などや、原子炉の外に保管された燃料集合体などである。
【0003】
検査方法の1つとして、非破壊検査の手法の1つで主に検査対象物の表面の摩耗、亀裂、腐食、浸食等を目視により検査する目視検査(visual testing)がある。また、目視検査には、リモートフォーカスカメラ等の光学カメラにより検査対象物を撮影し、検査対象物から離れた場所で、モニタに映し出された検査対象物の撮像を検査員が目視で検査する遠隔目視試験がある。原子炉内等は放射能に汚染されているため、遠隔目視試験により行われる。この遠隔目視試験の信頼性を高めるための目視検査装置が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
この目視検査装置等を用いて遠隔目視試験を行う場合、モニタに映し出された撮像の異常を確認するキャリブレーションを検査の前後に行うことが、規格(JSME S NA-1:発電用原子力設備規格 維持規格 一般社団法人日本機械学会)等に規定されている。また、JSME S NA-1には、キャリブレーションに用いるキャリブレーション試験片のテストターゲットについて、規定が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-137281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この遠隔目視試験により、例えば原子炉内を検査する場合、原子炉内は照明が無いため、光学カメラに備わる照明及び照明装置により、検査対象物に光を照射してキャリブレーションと検査を行う。この場合のキャリブレーションにおいて、この照明から照射された光がキャリブレーション試験片の表面で反射してテストターゲットの識別が困難になることがある。原子炉内は特に立体的で複雑な構造であることが多いため、光学カメラ及び照明装置などを設置できる空間領域が限られ、それらの位置を変更することでできない場合がある。この場合には、照明から照射された光がキャリブレーション試験片の表面で反射してテストターゲットの識別ができないことを解決することが難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、光の反射が低減されたキャリブレーション試験片を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、薄板と、前記薄板の表面に設けられたテストターゲットと、前記テストターゲットを覆う艶消被膜と、前記薄板の表面を覆う艶有フィルムとを備え、前記艶有フィルムには、前記薄板上の前記テストターゲットを前記艶有フィルムの外部に露出させる開口が設けられている
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリブレーション試験片での光の反射が低減されるためテストターゲットの識別性を向上できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。
図2】本発明の比較例に係るキャリブレーション試験片に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るキャリブレーション試験片に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。
図7】本発明の比較例に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。
図8】本発明の比較例に係るキャリブレーション試験片に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。
図9】本発明の第4実施形態に係るキャリブレーション試験片に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。
図10】本発明の第5実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係るキャリブレーション試験片のテストターゲットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第5の実施形態によるキャリブレーション試験片の構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。また、平面図と断面図の各々は、互いに直交するXYZ軸により方向を特定し、+Xを「右」、-Xを「左」、+Yを「上」、-Yを「下」、+Zを「前」、-Zを「後」と規定する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と(B)C-Cにおける断面図である。キャリブレーション試験片1は、薄板2と、薄板2の表面に設けられたテストターゲット3と、テストターゲット3を覆う艶消被膜4とを備える。
【0013】
薄板2は薄い板状の部材であり、薄板2の材質としては例えば紙、樹脂、金属などが選択できる。本実施形態の薄板2は、規格(ASME Section XI)において、テストターゲット3の背景として規定された18%中性灰色カードを、所定の大きさ(例えば、100mm×100mm)に形成した紙片である。
【0014】
テストターゲット3は、遠隔目視試験のキャリブレーションにおいて、目視により識別の成否を確認する対象物である。本実施形態では、規格(JBWR-VIP-01等)で識別対象に規定された0.025mm幅のワイヤ3aにより形成されている。具体的には、テストターゲット3は、2本のワイヤ3aの各々を、薄板2の表面(XZ面)の左右(X軸)方向と前後(Z軸)方向の各々に沿って張り渡し、薄板2の表面の略中央で略垂直に交差するように薄板2の表面に設けられたものである。
【0015】
艶消被膜4は光沢のない薄い膜で、耐水性を備えることが好ましい。艶消被膜4によりテストターゲット3は覆われている。また、艶消被膜4は、テストターゲット3の周囲の薄板2の表面についても覆うことが好ましく、薄板2の全表面について覆ってもよい。また、本実施形態の艶消被膜4は、スチレン・ブタジエンゴム等により形成された塗料(例えば、ラバースプレー)を薄板2の表面に塗り(吹き)付けることで形成される。したがって、キャリブレーション試験片1に備わるテストターゲット3と薄板2の全表面は艶消被膜4により覆われている。
【0016】
[効果]
図2は、本発明の比較例に係るキャリブレーション試験片10に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。また、図3は、本発明の第1実施形態に係るキャリブレーション試験片1に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。
【0017】
比較例に係るキャリブレーション試験片10では、テストターゲット3と薄板2の表面が艶消被膜4により覆われていない。そのため、キャリブレーション試験片10に照射された照射光10aは散乱することなく反射し、光量の高い反射光10bとなる。この反射光10bが光学カメラのレンズに入射すると、モニタには光量の高い反射光10bが映し出され、テストターゲット3が見えずその識別ができない場合がある。
【0018】
これに対し、本実施形態に係るキャリブレーション試験片1は、テストターゲット3と薄板2の表面が艶消被膜4により覆われている。そのため、キャリブレーション試験片1に照射された照射光1aは散乱して光量の低い散乱光1bとなる。そのため、光学カメラのレンズにたとえ散乱光1bが入射しても、テストターゲット3を視認でき、テストターゲット3の識別ができなくなったり、テストターゲット3の識別性が低下したりすることを抑制できる。
【0019】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と(B)平面図のC-Cにおける断面図である。本実施形態に係るキャリブレーション試験片20が第1実施形態に係るキャリブレーション試験片1と異なる点は、艶消被膜4が塗料ではなくラミネートフィルム42で形成されている点である。
【0020】
ラミネートフィルム42は、一辺42aが結合する重なり合った2枚の透明な矩形のフィルム42b、42cにより形成されている。ラミネートフィルム42は薄板2よりも大きく、ラミネートフィルム42の各辺の長さは薄板2よりも各10mm程度長くなっている。
【0021】
2枚のフィルム42b、42cの内側面42d,42eにはホットメルト接着剤層が形成されている。なお、ホットメルト接着剤層は、加熱すると軟化溶融して接する物体に接着し、冷却すると接する物体に接着した状態で固化するが柔軟性を有する接着剤の層である。
【0022】
また、テストターゲット3に接するフィルム42bの表面42fは、艶(光沢)がない。なお、フィルム42bと重なり合うフィルム42cの表面42gは、艶があってもなくてもよい。また、ラミネートフィルム42は、フィルム42cを備えず、フィルム42bのみにより構成してよい。
【0023】
[効果]
本実施形態に係るキャリブレーション試験片20は、ラミネートフィルム42により覆われているため、第1本実施形態に係るキャリブレーション試験片1よりも防水性と耐久性に優れている。
【0024】
(第3実施形態)
図5は本発明の第3実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と(B)平面図のC-Cにおける断面図である。本実施形態に係るキャリブレーション試験片30が第1実施形態に係るキャリブレーション試験片1と異なる点は、薄板2の裏面に台紙5が貼りつけられていることである。
【0025】
台紙5は、薄板2より剛性が強く大きい板状の紙や樹脂や金属などの部材である。本実施形態の台紙5は、厚さ0.2mm程度の白色厚手マット紙を所定の大きさ(例えば、130mm×130mm)に切断した紙片である。
【0026】
テストターゲット3を配置しラバースプレーを吹き付けられた薄板2は、裏面
にスプレーのりが吹き付けられ、台紙5の表面の中央に圧着されている。なお、薄板2を台紙5に貼りつける作業の順番は、薄板2の表面にテストターゲット3を配置する作業やテストターゲット3を表面に備える薄板2にラバースプレーを吹き付けて艶消被膜4を形成させる作業の前でも後でも良い。
【0027】
[効果]
本実施形態に係るキャリブレーション試験片30は、薄板2の裏面に台紙5が貼りつけられているため、第1本実施形態に係るキャリブレーション試験片1よりも剛性を向上させることができる。
【0028】
(第4実施形態)
図6は本発明の第4実施形態に係るキャリブレーション試験片の(A)平面図と(B)平面図のC-Cにおける断面図である。本実施形態に係るキャリブレーション試験片40は、第3実施形態に係るキャリブレーション試験片30をラミネートフィルム6により覆ったものである。
【0029】
ラミネートフィルム6は、一辺6aが結合され重なり合う2枚の透明な矩形のフィルム6b、6cにより形成されている。2枚のフィルム6b、6cは、内側面6d,6eにホットメルト接着剤層が形成され、表面に艶(光沢)を備えている。ラミネートフィルム6としては、厚さが100μm程度で、所定の大きさ(例えば、150mm×150mm)を有するものを利用できる。また、テストターゲット3側のフィルム6bの中央には、所定の大きさ(例えば、90mm×90mm)の開口6fが設けられている。開口6fは薄板2上のテストターゲット3をフィルム6bの外部に露出するためのものであり、本実施形態の開口6fは薄板2より小さく形成されている。
【0030】
ラミネートフィルム6の2枚のフィルム6b、6cの間には、キャリブレーション試験片30が挿し込まれる。このとき、テストターゲット3の2本のワイヤ3aの交点が開口6fの中央に位置するように、キャリブレーション試験片30は配置される。
【0031】
キャリブレーション試験片30を挟むラミネートフィルム6は、圧縮された状態で加熱されホットメルト接着剤層が溶融した後に冷却される。これにより、キャリブレーション試験片30は、テストターゲット3の2本のワイヤ3aの交点がラミネートフィルム6の開口6fの中央に位置する状態で、ラミネートフィルム6内に固定される。開口6fは薄板2より小さいため、開口6fの縁は艶消被膜4aに覆われた薄板2の上に配置される。
【0032】
そして、開口6fの内側に位置する薄板2上の艶消被膜4aと、フィルム6bの表面における開口6fの周囲とにラバースプレーがさらに吹き付けられ、艶消被膜4bが形成される。つまり、艶消被膜4bは、テストターゲットのうち開口6fの内側に位置する部分と、開口6fの内側に位置する薄板2と、フィルム6bにおける開口6fの周囲とを覆っている。
【0033】
[効果]
図7は、本発明の比較例に係るキャリブレーション試験片400の(A)平面図と、(B)C-Cにおける断面図である。キャリブレーション試験片400は、本実施形態に係るキャリブレーション試験片40と異なり、艶消被膜4を備えず、フィルム6bに開口6fが設けられてない。
【0034】
図8は、本発明の比較例に係るキャリブレーション試験片400に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。また、図9は、本発明の第4実施形態に係るキャリブレーション試験片40に照射された光の反射光の挙動を示す模式図である。
【0035】
比較例に係るキャリブレーション試験片400では、薄板2の表面とテストターゲット3とがラミネートフィルム6のフィルム6bにより覆われている。そのため、キャリブレーション試験片400に照射された照射光400aはラミネートフィルム6のフィルム6bにより反射し、光量の高い反射光400bとなる。この反射光400bが光学カメラのレンズに入射すると、モニタには光量の高い反射光400bが映し出され、テストターゲット3が見えずその識別ができない場合がある。
【0036】
これに対し、本実施形態に係るキャリブレーション試験片40は、薄板2の表面とテストターゲット3とが艶消被膜4a、4bにより覆われている。そのため、キャリブレーション試験片40に照射された照射光40aは艶消被膜4bの表面で散乱して光量の低い散乱光40bとなる。そのため、光学カメラのレンズには散乱光40bが入射しても、モニタには光量の低い散乱光40bが映し出され、テストターゲット3の識別性が低下することを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態に係るキャリブレーション試験片40は、第3実施形態に係るキャリブレーション試験片30に対して防水性と耐久性を向上させることができる。また、第2実施形態に係るキャリブレーション試験片20よりもテストターゲット3を覆う艶消被膜4を薄くでき、可視性を向上させることができる。
【0038】
また、薄板2と台紙5の境界がフィルム6bにより覆われているため、台紙5からの薄板2の離脱を抑制できる。また、開口6fの内側の艶消被膜4aとその周囲のフィルム6bの境界に艶消被膜4bが形成されている。そのため、開口6fの内側の艶消被膜4aとその周囲のフィルム6bの境界から、薄板2とフィルム6bの間に水や汚れ等が侵入することを抑制できる。
【0039】
(第5実施形態)
図10は本発明の第5実施形態に係るキャリブレーション試験片50の(A)平面図と(B)平面図のC-Cにおける断面図である。本実施形態に係るキャリブレーション試験片50が、第4実施形態に係るキャリブレーション試験片40と異なる点は、テストターゲット3のワイヤ3aの形状と、艶消被膜4の膜厚の減少と、ラミネートフィルム6の開口6fの大きさである。
【0040】
すなわち、キャリブレーション試験片50では、薄板2を台紙5に貼り付けた後に、2本のワイヤ3aを薄板2の表面に配置する。その後、台紙5の裏面に2本のワイヤ3aの一方の端部をそれぞれ固定して台紙5の表面に張り渡す。このとき2本のワイヤ3aの他方の端部も台紙5の裏面に固定しても良い。そして、薄板2より大きい開口6fを有するフィルム6bを、開口6fの内部に薄板2の全体が収容されるよう台紙5の表面に貼り付け、台紙5の裏面に貼り付けたフィルム6cとともに台紙5をラミネートする。これにより薄板2上のテストターゲット3はフィルム6bの外部に露出される。その後、開口6fの内側とその周囲のフィルム6bの表面にラバースプレーを吹き付け、開口6fの内側全部と開口6fの周囲に艶消被膜4を形成させる。これにより艶消被膜4は、テストターゲット3のうち開口6fの内側に位置する部分と、開口6fの内側に位置する薄板2の全体と、開口6fの内側に位置する台紙5の表面と、フィルム6bにおける開口6fの周囲とを覆う。
【0041】
[効果]
本実施形態に係るキャリブレーション試験片50は、2本のワイヤ3aの端部が台紙5の裏面に固定されている。そのため、テストターゲット3を確実に固定でき、薄板2の表面でのズレの発生を抑制できる。
【0042】
また、フィルム6bの開口6f内に薄板2を収納したため薄板2上のテストターゲット3がラミネートフィルム6(フィルム6b)で覆われておらず、さらに薄板2上のテストターゲット3に付された艶消被膜4が一層であるため、薄板2上のテストターゲット3の視認性を第4実施形態よりも向上させることができる。
【0043】
なお、上記の各キャリブレーション試験片1,20,30,40,50は、原子炉の炉心内構造物の遠隔目視試験に用いることが好ましい。原子炉の炉心内構造物の遠隔目視試験にキャリブレーション試験片1,20,30,40,50を用いることによって、原子炉内の光学カメラ及び照明装置などを設置できる限られた空間領域で、テストターゲットの識別ができないことを抑制することができる。
【0044】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0045】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。即ち、上述の実施形態において、テストターゲット3は、2本の0.025mm幅のワイヤ3aが薄板2の表面で十字交差するものであった。しかし、他の形態のテストターゲット3を用いても良い。例えば、1989年版ASME Section XIに規定される0.8mmの黒色線や、1990年版ASME Section XIに規定される選択した文字チャート3b(1.1mm高さの文字、例えば「a,c,e,o」図11参照)を用いても良く、これらを併用してもよい。これにより、キャリブレーションをより正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1,10,20,30,40,50…キャリブレーション試験片、2…薄板、3…テストターゲット、3a…ワイヤ、3b…文字チャート、4,4a,4b…艶消被膜、5…台紙、6,42…ラミネートフィルム、6b,6c,42b,42c…フィルム、6f…開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11