(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】検査方法、半導体装置の製造方法、検査装置、検査システム、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240703BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/66 X
G01R31/26 F
(21)【出願番号】P 2021147888
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和晃
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和拓
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150161(JP,A)
【文献】特開2020-034303(JP,A)
【文献】特開昭61-044438(JP,A)
【文献】特開2019-052854(JP,A)
【文献】特開昭59-107650(JP,A)
【文献】特開平09-045744(JP,A)
【文献】特開平09-036489(JP,A)
【文献】特開2021-072347(JP,A)
【文献】特開平07-050331(JP,A)
【文献】特開昭54-091049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光検知素子に電圧を印加しながら前記半導体光検知素子にパルス光を照射し、
前記パルス光の照射後における前記半導体光検知素子の出力を測定し、
最大ピークの出現後であって前記パルス光の照射から第1時間経過後における前記半導体光検知素子の第1出力値を、前記出力から抽出する、
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項2】
前記半導体光検知素子は、
半導体層と、
前記半導体層の上に設けられた複数の受光素子と、
を含み、
前記複数の受光素子のそれぞれは、
第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域に接する第2導電形の第2半導体領域と、
を含む、請求項1記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項3】
前記複数の受光素子の少なくとも1つには、降伏電圧を超える前記電圧が印加される、請求項2記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項4】
前記パルス光の照射及び前記出力の測定を繰り返す、請求項1~3のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項5】
前記パルス光の強度を変更しながら、前記パルス光の照射を繰り返す、請求項4記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項6】
前記電圧を変更しながら、前記パルス光の照射、前記出力の測定、及び前記第1出力値の抽出を繰り返す、請求項4記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項7】
前記最大ピークの出現後であって前記パルス光の照射から第2時間経過後における前記半導体光検知素子の第2出力をさらに抽出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項8】
前記第1時間は、前記パルス光の照射のためのトリガ信号を基準に計測される、請求項1~7のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項9】
前記パルス光の光量E(nW/φ1mm)、前記パルス光の波長λ(nm)、及び前記パルス光の周波数ν(Hz)を用いて、第1式によって算出される値Xは、0.8以上6以下であり、
前記第1式は、X=E×λ/ν、である、請求項1~8いずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項10】
前記第1時間は、1マイクロ秒以上100マイクロ秒以下である、請求項1~9のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項11】
前記第1出力値に基づいて、前記半導体光検知素子を評価する、請求項1~10のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法。
【請求項12】
半導体ウェーハに複数の前記半導体光検知素子を形成し、
前記複数の半導体光検知素子のそれぞれに対して、請求項1~11のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査方法を実行する、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記複数の半導体光検知素子のそれぞれを、前記第1出力値に基づいて評価し、
前記複数の半導体光検知素子のそれぞれの前記評価を示すウェーハマップを生成する、請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記半導体ウェーハをダイシングし、前記複数の半導体光検知素子をそれぞれ個片化する、請求項12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
電圧印加中の半導体光検知素子にパルス光を照射したときの出力を受信し、
最大ピークの出現後であって前記パルス光の照射から第1時間経過後における前記半導体光検知素子の第1出力値を、前記出力から抽出する、
半導体光検知素子の検査装置。
【請求項16】
請求項15記載の
半導体光検知素子の検査装置と、
前記半導体光検知素子を保持するステージと、
前記パルス光を前記半導体光検知素子に照射する光源と、
前記電圧を印加し、前記出力を測定するプローブと、
を備えた、
半導体光検知素子の検査システム。
【請求項17】
前記光源と、前記検査装置には、同じトリガ信号が入力される、請求項16記載の
半導体光検知素子の検査システム。
【請求項18】
前記ステージ及び前記プローブの一方を他方に対して相対的に移動させる第1駆動部をさらに備えた、請求項16又は17に記載の
半導体光検知素子の検査システム。
【請求項19】
前記光源を移動させる第2駆動部をさらに備えた、請求項16~18のいずれか1つに記載の
半導体光検知素子の検査システム。
【請求項20】
コンピュータに、
電圧印加中の半導体光検知素子にパルス光を照射したときの出力を受信させ、
最大ピークの出現後であって前記パルス光の照射から第1時間経過後における前記半導体光検知素子の第1出力値を、前記出力から抽出させる、
半導体光検知素子の検査プログラム。
【請求項21】
請求項20に記載の
半導体光検知素子の検査プログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査方法、半導体装置の製造方法、検査装置、検査システム、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光を検知する半導体光検知素子がある。この半導体光検知素子について、より短い時間で検査できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態によれば、より短い時間で半導体光検知素子を検査可能な、検査方法、半導体装置の製造方法、検査装置、検査システム、プログラム、及び記憶媒体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る検査方法では、半導体光検知素子に電圧を印加しながら、前記半導体光検知素子にパルス光を照射する。さらに、前記検査方法では、前記パルス光の照射後における前記半導体光検知素子の出力を測定する。さらに、前記検査方法では、最大ピークの出現後であって前記パルス光の照射から第1時間経過後における前記半導体光検知素子の第1出力値を、前記出力から抽出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、半導体光検知素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図2】
図2は、半導体光検知素子の別の一例を示す模式的断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、半導体光検知素子の出力を例示するグラフである。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、検査対象を例示する模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第1変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第2変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1実施形態の第3変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
【
図10】
図10は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
【
図11】
図11は、第1実施形態の第4変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
【
図13】
図13は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
【
図14】
図14は、第1実施形態の第5変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
【
図16】
図16は、第1実施形態の第6変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第1実施形態の第7変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、半導体ウェーハにおける複数の半導体光検知素子のばらつきを例示する模式図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、第2実施形態の第1変形例に係る製造方法を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、第3実施形態に係る検査システムを示す模式図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態に係る検査システムを示す模式図である。
【
図24】
図24(a)及び
図24(b)は、第3実施形態の変形例に係る検査システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
[第1実施形態]
図1は、半導体光検知素子の一例を示す模式的断面図である。
第1実施形態に係る検査方法は、半導体光検知素子の検査に用いられる。検査では、半導体光検知素子100の品質が評価される。まず、
図1を参照して、半導体光検知素子の構造について説明する。
図1に示すように、半導体光検知素子100は、p
+形半導体基板101、p
-形半導体層102、受光素子110、絶縁部120、絶縁層130、クエンチ部140、電極151、及びパッド152を含む。
【0009】
ここでは、n+及びp+、p、p-の表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。p形は第1導電形の一例であり、n形は第2導電形の一例である。各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0010】
説明のために、p+形半導体基板101からp-形半導体層102に向かうをZ方向とする。Z方向に垂直であり且つ互いに交差する2方向を、X方向及びY方向とする。また、p+形半導体基板101からp-形半導体層102に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、p+形半導体基板101とp-形半導体層102との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
p+形半導体基板101は、電極151の上に設けられる。p-形半導体層102は、p+形半導体基板101の上に設けられる。複数の受光素子110が、p-形半導体層102の上に設けられる。複数の受光素子110は、X方向及びY方向に沿って配列される。
【0012】
各受光素子110は、p形半導体領域111及びn+形半導体領域112を含む。p形半導体領域111は、第1半導体領域の一例である。n+形半導体領域112は、第2半導体領域の一例である。p形半導体領域111は、p+形半導体基板101及びp-形半導体層102を介して電極151と電気的に接続される。n+形半導体領域112は、p形半導体領域111の上に設けられる。p形半導体領域111とn+形半導体領域112との間で、pn接合が形成される。
【0013】
絶縁部120は、p-形半導体層102中に設けられ、X-Y面に沿って各受光素子110の周りに設けられる。絶縁層130は、複数の受光素子110及び絶縁部120の上に設けられる。パッド152は、クエンチ部140を介して、n+形半導体領域112と電気的に接続される。例えば、クエンチ部140は、絶縁層130中に設けられる。
【0014】
パッド152には、電極151に対して正の電圧が印加される。すなわち、受光素子110には、逆方向の電圧が印加される。受光素子110は、PINダイオード又はアバランシェフォトダイオードである。好ましくは、受光素子110には、降伏電圧よりも大きな電圧が印加される。すなわち、受光素子110は、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードである。半導体光検知素子100の動作時に、受光素子110へ印加される電圧が降伏電圧未満の場合、クエンチ部140は省略可能である。
【0015】
上方から絶縁層130を通して受光素子110に光が入射すると、p-形半導体層102又は受光素子110で電荷が発生する。この電荷に基づく信号を検出することで、半導体光検知素子100への光の入射を検知できる。
【0016】
図2は、半導体光検知素子の別の一例を示す模式的断面図である。
図2に示す半導体光検知素子200は、絶縁層201、p
-形半導体層202、受光素子210、絶縁部220、ビア221、反射層230、絶縁層231、クエンチ部240、パッド251、及びパッド252を含む。
【0017】
p-形半導体層202は、絶縁層201の上に設けられる。複数の受光素子210は、p-形半導体層202の上に設けられる。複数の受光素子210は、X方向及びY方向に沿って配列される。各受光素子210は、p形半導体領域211及びn+形半導体領域212を含む。p形半導体領域211は、第1半導体領域の一例である。n+形半導体領域212は、第2半導体領域の一例である。n+形半導体領域212は、p形半導体領域211の上に設けられる。p形半導体領域211とn+形半導体領域212との間で、pn接合が形成される。
【0018】
反射層230は、p-形半導体層202及び複数の受光素子210の上に設けられる。絶縁部220は、X-Y面に沿って各受光素子210の周りにそれぞれ設けられ、Z方向に反射層230を貫通する。ビア221は、絶縁部220の内側に設けられ、p形半導体領域211と電気的に接続される。パッド251は、ビア221と電気的に接続される。
【0019】
絶縁層231は、反射層230の上に設けられる。パッド252は、クエンチ部240を介して、n+形半導体領域212と電気的に接続される。例えば、クエンチ部240は、絶縁層231中に設けられる。
【0020】
パッド252には、パッド251に対して正の電圧が印加される。すなわち、受光素子210には、逆方向の電圧が印加される。受光素子210は、PINダイオード又はアバランシェフォトダイオードである。好ましくは、受光素子210には、降伏電圧よりも大きな電圧が印加される。半導体光検知素子200の動作時に、受光素子210へ印加される電圧が降伏電圧未満の場合、クエンチ部240は省略可能である。
【0021】
下方から絶縁層201を通して受光素子210に光が入射すると、p-形半導体層202又は受光素子210で電荷が発生する。この電荷に基づく信号を検出することで、半導体光検知素子200への光の入射を検知できる。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る検査方法を示すフローチャートである。
まず、半導体光検知素子に電圧を印加する(ステップS1)。ステップS1では、pn接合に逆方向の電圧が印加される。受光素子がガイガーモードで動作される場合、受光素子の降伏電圧よりも大きな電圧が印加される。半導体光検知素子への電圧の印加により、半導体光検知素子が光を検知可能な状態となる。以降では、半導体光検知素子の動作のために印加する電圧を「動作電圧」と呼ぶ。
【0023】
動作電圧の印加中、半導体光検知素子に、パルス光を照射する(ステップS2)。例えば、パルス光の周波数は、1kHzよりも高く、1000kHzよりも低い。パルス光の光量は、例えばパルス光の周波数が100kHz、波長が905nmである場合、100nW/φ1mm以上であることが好ましい。
【0024】
続いて、パルス光の照射後における、半導体光検知素子の出力を測定する(ステップS3)。上述した通り、半導体光検知素子は、パルス光を検知する。パルス光の検知は、の受光素子110又は210に加わる電圧の変化として、パッド152又は252から出力される。
【0025】
図4は、半導体光検知素子の出力を例示するグラフである。
図4において、横軸は時間Tを示し、縦軸は出力(電圧)Vを示す。時間T=0は、パルス光の照射タイミングを示す。パルス光が半導体光検知素子に照射されると、光が半導体光検知素子に瞬間的に入射する。これに応じて、半導体光検知素子100又は200に含まれるほぼ全ての受光素子で電圧の変化が生じることで、出力V0の大きなピークが測定される。その後は、受光素子の一部において、半導体光検知素子内に残存した電荷
に起因する連続的な電圧の変化により、微弱な出力が測定される。換言すると、パルス光に応じた最大ピークの出現後にも半導体光検知素子内に電荷が残存するように、ステップS2では、光量の大きなパルス光が照射される。
【0026】
最大ピークの出現後であってパルス光の照射から第1時間経過後における、半導体光検知素子の第1出力値を、測定された出力から抽出する(ステップS4)。
図4に示す時間t1における出力V1が、第1時間及び第1出力値に対応する。第1出力値V1を、出力から抽出する。好ましい一例として、第1時間は、1マイクロ秒以上100マイクロ秒以下である。より好ましくは、第1時間は、2マイクロ秒以上100マイクロ秒以下である。
【0027】
全ての半導体光検知素子に対する測定が完了したか判定する(ステップS5)。測定が完了していない半導体光検知素子が存在する場合、次の半導体光検知素子へ、パルス光の照射位置、測定端子等を移動させる(ステップS6)。次の半導体光検知素子に対して、ステップS1~S4が実行される。なお、検査対象である全ての半導体光検知素子に対してステップS1~S3が実行された後に、各半導体光検知素子の測定結果についてステップS4が実行されても良い。すなわち、ステップS4は、ステップS5の後に実行されても良い。また、検査対象の半導体光検知素子が1つのみである場合は、ステップS5が省略される。
【0028】
抽出された第1出力値に基づいて、半導体光検知素子を評価する(ステップS7)。例えば、予め、評価の基準となる第1出力値が用意される。ここでは、評価の基準となる第1出力値を、第1基準値と呼ぶ。抽出された第1出力値と第1基準値とを比較することで、半導体光検知素子を評価する。具体的には、第1出力値と第1基準値との差を、予め設定された閾値と比較する。差が小さいほど、品質は良いと判定される。分類される品質の数に応じて、閾値の数が設定される。
【0029】
複数の半導体光検知素子を評価する場合、抽出された複数の第1出力値に基づいて、各半導体光検知素子が評価されても良い。具体的には、複数の第1出力値の平均値及び標準偏差σが算出される。平均値と標準偏差σを用いて、閾値が設定される。平均値との差が小さいほど、その半導体光検知素子の品質は良いと評価される。例えば、平均値±3σ、平均値±2σ、及び平均値±σの複数の閾値が設定される。この方法によれば、ユーザが予め閾値を用意する必要が無い。ユーザの知識、経験などに依らず、より適切な閾値を設定できる。
【0030】
図5(a)及び
図5(b)は、検査対象を例示する模式図である。
検査方法IMによって検査される半導体光検知素子100又は200は、
図5(a)に示すように、個片化されていても良い。
図5(b)に示すように、半導体ウェーハWに形成された複数の半導体光検知素子100又は200に対して、検査が実行されても良い。
【0031】
第1実施形態の利点を説明する。
参考例に係る光検知素子の評価方法では、半導体光検知素子に光が照射されない状態での測定と、単位受光素子辺り1光子程度の極めて微弱な光を照射したときの出力の測定と、を多数回繰り返す。そして、測定されたデータを解析することで、半導体光検知素子の光検出能力やノイズ特性、検知時の出力の大きさ(出力特性)、といった特性を互いに分離し、半導体光検知素子を評価している。
しかし、この方法では、検査に要する時間が長すぎる。半導体光検知素子の量産では、抜き取り検査のような、一部の半導体光検知素子の評価にしか参考例に係る評価方法を適用できない。このため、量産時において、より多くの(例えば全ての)半導体光検知素子を評価可能な、より短時間で完了できる検査方法が求められている。
【0032】
第1実施形態に係る検査方法では、半導体光検知素子に動作電圧を印加しながら、半導体光検知素子にパルス光を照射する。そして、パルス光の照射後における、半導体光検知素子の出力を測定する。次に、最大ピーク出現後であって、パルス光の照射から第1時間経過後における、半導体光検知素子の第1出力値を、出力から抽出する。発明者が検証したところ、最大ピーク後の出力も、ノイズ特性、感度特性、及び検知時の出力の大きさと関係していることが分かった。すなわち、第1出力値は、ノイズ特性、感度特性、及び出力特性の情報を含んだ複合的な値であることが分かった。この第1出力値は、短時間で得ることが可能である。このため、第1実施形態に係る検査方法によれば、ノイズ特性及び感度特性のそれぞれの詳細な評価は困難であるが、半導体光検知素子の全体の特性を簡易的且つ短時間で評価できる。例えば、良品の半導体光検知素子に対して、レファレンスの第1出力値を測定しておく。検査対象の半導体光検知素子の第1出力値がレファレンスからずれている場合、検査対象の半導体光検知素子のノイズ特性、感度特性、出力特性の何れかに異常があると評価することができる。
【0033】
より高精度な検査のために、第1時間も精度良く計測されることが好ましい。好ましくは、第1時間は、パルス光の照射のためのトリガ信号を基準に計測される。例えば、光源は、パルス光を発するパルスレーザダイオードを含む。パルスレーザダイオードがパルス光を照射するタイミングは、トリガ信号の送信又は受信のタイミングと実質的に同じである。トリガ信号を基準に用いることで、半導体光検知素子へのパルス光の入射タイミングに対する第1時間のばらつきを抑制できる。
【0034】
半導体光検知素子へ照射されるパルス光に関して、値Xは、0.8以上6以下であることが好ましい。値Xは、パルス光の光量E(nW/φ1mm)、パルス光の波長λ(nm)、及びパルス光の周波数ν(Hz)を用いて、以下の第1式により算出される。
X=E×λ/ν
【0035】
値Xが大きいほど、半導体光検知素子に照射される光が、より強い(より明るい)ことを示す。値Xが0.8以上である場合、ノイズ特性、感度特性、及び出力特性の情報を十分に含んだ第1出力値が得られる。一方で、値Xが大きすぎると、検査対象である半導体光検知素子の性能を劣化させる可能性がある。具体的には、半導体光検知素子の半導体領域内に、結晶欠陥領域が発生又は拡大し、耐圧の低下、ノイズの増加などを引き起こす可能性がある。このため、値Xは、6以下であることが好ましい。
【0036】
(第1変形例)
図6は、第1実施形態の第1変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図6に示した第1変形例に係る検査方法IM1では、ステップS2及びS3のセットが繰り返し実行される。具体的には、ステップS3の後に、それまでのステップS2及びS3のセットの繰り返し回数xが、予め設定された回数mに達したか判定する(ステップS11)。mは、2以上の整数である。回数xが回数mに達していない場合、ステップS2が再度実行される。ステップS2及びS3の繰り返し中、半導体光検知素子には一定の動作電圧が印加される。ステップS4では、複数の出力の平均から、第1出力値が抽出される。又は、それぞれの出力から第1出力値を抽出し、それらの第1出力値を平均化しても良い。
【0037】
測定系のノイズや熱ノイズなどにより、1回の測定結果から抽出された第1出力値が、実際の値から大きく変動する可能性がある。ステップS2及びS3を複数回実行し、それらの出力結果に基づいて第1出力値を決定することで、検査の精度を向上できる。
【0038】
(第2変形例)
図7は、第1実施形態の第2変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図7に示した第2変形例に係る検査方法IM2は、検査方法IMと比べて、ステップS12をさらに含む。ステップS12では、最大ピークの出現後であってパルス光の照射から第2時間経過後における、半導体光検知素子の第2出力値を、測定された出力から抽出する。第2時間は、第1時間とは異なる。第2時間も、好ましくは、1マイクロ秒以上100マイクロ秒以下である。
【0039】
ステップS7では、第1出力値及び第2出力値を用いて、半導体光検知素子が評価される。例えば、第1出力値及び第2出力値に対して、それぞれ、評価の基準となる第1基準値及び第2基準値が設定される。第1出力値と第1基準値との差が小さく、第2出力値と第2基準値との差が小さいほど、その半導体光検知素子の品質は良いと判定される。互いに異なる複数の時間での複数の出力値を用いることで、ノイズ等の影響を低減し、検査の精度を向上できる。
【0040】
図7に示す例に限らず、第1出力値及び第2出力値の他に、さらに他の時間の出力値を用いても良い。又は、多数の出力値を連続的に抽出し、最大ピーク後の特定期間における出力波形を取得しても良い。例えば、出力波形と予め用意された波形との距離を比較することで、品質を評価できる。
【0041】
(第3変形例)
図8は、第1実施形態の第3変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図8に示した第3変形例に係る検査方法IM3は、検査方法IMと比べて、ステップS13a及びS13bをさらに含む。ステップS13aは、ステップS3の後に実行される。ステップS4は、ステップS13aの前に実行されても良いし、ステップS13aの後に実行されても良い。ステップS13aでは、終了条件が満たされたか判定する。
【0042】
終了条件が満たされていないと判定された場合、ステップS13bで、パルス光の照射条件を変更する。照射条件は、光量を調整することで変更されても良いし、パルス光の周波数を調整することで変更されても良い。光量は、光源の光度を調整することで変更できる。変更後の照射条件は、それまでの照射条件とは異なる。パルス光の照射条件の変更後、ステップS2が再度実行される。
【0043】
例えば、終了条件は、ステップS2~S4のセットが、予め設定された回数実行されることである。ステップS13bにおける照射条件の変更量が一定である場合、変更後の照射条件が予め設定された値に達することが、終了条件として設定されても良い。
【0044】
図9及び
図10は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
図9において、横軸は時間Tを示し、縦軸は出力Vを示す。
図9は、各光量における出力の測定結果を示す。
図10において、横軸は光量Lを示し、縦軸は第1出力値V1を示す。
図10は、光量を変更したときの第1出力値の変化を示す。
【0045】
図9及び
図10に示すように、最大ピーク出現後の出力は、パルス光の光量に依存して変化する。検査方法IM3によれば、互いに異なる複数の光量のパルス光に基づく複数の第1出力値が得られる。ステップS7では、複数の第1出力値に基づいて品質が評価される。例えば、それぞれの光量のパルス光に基づく第1出力値に対して、第1基準値がそれぞれ設定される。複数の第1出力値と複数の第1基準値のそれぞれの比較結果に基づいて、品質が評価される。
【0046】
(第4変形例)
図11は、第1実施形態の第4変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図11に示した第4変形例に係る検査方法IM4は、検査方法IMと比べて、ステップS14a及びS14bをさらに含む。ステップS14aは、ステップS3の後に実行される。ステップS4は、ステップS14aの前に実行されても良いし、ステップS14aの後に実行されても良い。ステップS14aでは、終了条件が満たされたか判定する。終了条件が満たされていないと判定された場合、ステップS14bで、印加される動作電圧を変更する。変更後の動作電圧は、それまでに印加された動作電圧とは異なる。電圧の変更後、ステップS2が再度実行される。
【0047】
例えば、終了条件は、ステップS2~S4のセットが、予め設定された回数実行されることである。ステップS14bにおける電圧の変更量が一定である場合、動作電圧が予め設定された値に達することが、終了条件として設定されても良い。
【0048】
図12及び
図13は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
図12において、横軸は時間Tを示し、縦軸は出力Vを示す。
図12は、各動作電圧における出力の測定結果を示す。
図13において、横軸は動作電圧Vopを示し、縦軸は第1出力値V1を示す。
図13は、動作電圧を変更したときの第1出力値の変化を示す。
【0049】
図12及び
図13に示すように、最大ピーク出現後の出力は、動作電圧に依存して変化する。検査方法IM4によれば、互いに異なる複数の動作電圧に基づく複数の第1出力値が得られる。ステップS7では、複数の第1出力値に基づいて品質が評価される。例えば、それぞれの電圧に基づく第1出力値に対して、第1基準値がそれぞれ設定される。複数の第1出力値と複数の第1基準値のそれぞれの比較結果に基づいて、品質が評価される。
【0050】
(第5変形例)
図14は、第1実施形態の第5変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図14に示した第5変形例に係る検査方法IM5は、検査方法IMと比べて、ステップS15a及びS15bをさらに含む。ステップS15aは、ステップS3の後に実行される。ステップS4は、ステップS15aの前に実行されても良いし、ステップS15aの後に実行されても良い。ステップS15aでは、終了条件が満たされたか判定する。終了条件が満たされていないと判定された場合、ステップS15bで、測定の条件を変更する。変更される条件は、パルス光の照射条件又は動作電圧である。変更後の条件は、それまでに設定された条件とは異なる。条件の変更後、ステップS2が再度実行される。
【0051】
例えば、終了条件は、ステップS2~S4のセットが、予め設定された回数実行されることである。ステップS15bにおける動作電圧又はパルス光の照射条件の変更量が一定である場合、予め設定された値に動作電圧又は照射条件が達することが、終了条件として設定されても良い。
【0052】
図15は、半導体光検知素子の特性を例示するグラフである。
図15において、横方向はパルス光の光量Lを示す。奥行き方向は動作電圧Vopを示す。縦方向は第1出力値V1を示す。
図15は、パルス光の光量L及び動作電圧Vopを変更したときの第1出力値V1の変化を示す。
【0053】
図15に示すように、検査方法IM5によれば、互いに異なる複数の動作電圧及び複数のパルス光の照射条件に基づく複数の第1出力値が得られる。ステップS7では、複数の第1出力値に基づいて品質が評価される。例えば、それぞれの電圧及び光量の組み合わせに基づく第1出力値に対して、第1基準値がそれぞれ設定される。複数の第1出力値と複数の第1基準値のそれぞれの比較結果に基づいて、品質が評価される。
【0054】
第3~第5変形例によれば、複数の第1出力値を用いて半導体光検知素子の品質を評価することで、ノイズ等の影響を低減し、検査の精度を向上できる。
【0055】
(第6変形例)
図16は、第1実施形態の第6変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図16に示した第6変形例に係る検査方法IM6は、検査方法IMと比べて、ステップS16a及びS16bをさらに含む。ステップS16aは、ステップS5の後に実行される。ステップS16aでは、終了条件が満たされたか判定する。終了条件が満たされていないと判定された場合、ステップS16bで、測定の条件を変更する。すなわち、検査方法IM6では、一定の条件で全ての半導体光検知素子からの出力が測定された後、異なる条件で全ての半導体光検知素子からの出力が再度測定される。
【0056】
ステップS16bで変更される条件は、パルス光の照射条件及び動作電圧から選ばれる1つまたは2つである。検査方法IM6において、パルス光の照射条件のみが変更されて測定が繰り返されても良い。動作電圧のみが変更されて測定が繰り返されても良い。光量及び動作電圧の両方が変更されて測定が繰り返されても良い。変更後の条件は、それまでに設定された条件とは異なる。条件の変更後、ステップS1が再度実行される。例えば、終了条件は、全ての半導体光検知素子に対して、ステップS1~S4のセットが予め設定された回数実行されることである。
【0057】
条件を変更した後、パルス光の照射条件又は動作電圧が安定するまでに時間を要する場合がある。1つの半導体光検知素子に対して条件の変更及び測定を繰り返すと、条件の変更ごとに、条件の安定化のための時間が必要になる。この課題について、検査方法IM6では、条件が設定された後、検査対象である全ての半導体光検知素子の測定が完了するまで、その条件が変更されない。検査方法IM6によれば、条件の変更回数を削減し、条件の安定化のための時間を短縮できる。
【0058】
(第7変形例)
図17は、第1実施形態の第7変形例に係る検査方法を示すフローチャートである。
図17に示した第7変形例に係る検査方法IM7は、半導体ウェーハに対して実行される。検査方法IM7は、検査方法IMと比べて、ステップS17をさらに含む。ステップS17は、ステップS5の後に実行される。
【0059】
図18は、半導体ウェーハにおける複数の半導体光検知素子のばらつきを例示する模式図である。
図18において、半導体ウェーハWに形成された各半導体光検知素子の第1出力値の相対的な大きさが、グレースケールで示されている。
図18に示すように、各半導体光検知素子には、半導体ウェーハWの位置に応じた特性のばらつきが生じる。ステップS17では、ばらつきに応じて、第1出力値を補正する。
【0060】
半導体ウェーハW内の各位置に対して、補正量が予め設定される。補正量は、
図18に示したような、位置ごとの特性のばらつきに応じて決定される。補正量は、ばらつきが小さくなるように設定される。ステップS5が完了し、それぞれの半導体光検知素子から第1出力値が抽出された後、ステップS17では、各半導体光検知素子の第1出力値をその位置に応じて補正する。ステップS7では、補正後の第1出力値を用いて半導体光検知素子を評価する。
【0061】
検査方法IM7によれば、半導体ウェーハ内の位置に応じた特性のばらつきを補正できる。特性のばらつきにより、半導体光検知素子に誤った評価がなされることを抑制できる。また、ユーザは、半導体ウェーハ内の位置ごとに第1基準値を用意する必要が無い。
【0062】
以上で説明した各変形例に係る検査方法は、適宜組み合わせることができる。例えば、検査方法IM2~IM6のいずれかにおいて、検査方法IM1のように、1つの条件について複数回測定が繰り返されても良い。検査方法IM3~IM6のいずれかにおいて、検査方法IM2のように、1つの出力から、互いに異なる複数の時間での出力値が抽出されても良い。検査方法IM及びIM1~IM6のいずれかにおいて、検査方法IM7のように、半導体ウェーハのばらつきに応じて出力値が補正されても良い。
【0063】
[第2実施形態]
図19は、第2実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
図19に示した製造方法MMは、半導体装置の製造方法のうち、半導体ウェーハへの半導体光検知素子の形成までの製造方法に関する。半導体装置の製造方法MMは、ステップS21~S23を含む。ステップS21では、半導体ウェーハに、複数の半導体光検知素子が形成される。ステップS22では、各半導体光検知素子に対する検査が実行される。ステップS22では、検査方法IM及びIM1~IM7のいずれかが実行される。ステップS23では、各半導体光検知素子に対する検査結果に基づいてウェーハマップが作成される。
【0064】
図20は、ウェーハマップを例示する模式図である。
ウェーハマップ300は、半導体ウェーハにおける各半導体光検知素子の位置と、各半導体光検知素子の検査結果と、を示す。例えば
図20に示すように、半導体ウェーハに形成された複数の半導体光検知素子が示される。各半導体光検知素子の表示態様は、検査結果に応じて決定される。
図20の例では、検査により各半導体光検知素子に対して3段階のランク付けがなされている。ハッチングが付されていない半導体光検知素子の品質は、最も優れていることを示す。ハッチングの密度が高いほど、品質が良くないことを示す。
【0065】
作成されたウェーハマップ300は、検査された半導体ウェーハWと紐付けられる。製造方法MMによれば、各半導体光検知素子の検査結果が紐付けられた半導体ウェーハが得られる。
【0066】
(第1変形例)
図21は、第2実施形態の第1変形例に係る製造方法を示すフローチャートである。
図21に示した製造方法MM1は、半導体光検知素子の製造方法に関する。製造方法MM1は、製造方法MMと比べると、ステップS23に代えてステップS24を含む。ステップS24では、半導体ウェーハがダイシングされる。これにより、半導体ウェーハに含まれるそれぞれの半導体光検知素子が、個片化される。製造方法MM1によれば、短時間で品質を評価しつつ、半導体光検知素子を製造できる。
【0067】
[第3実施形態]
図22は、第3実施形態に係る検査システムを示す模式図である。
以上で説明した検査方法は、人によって実行されても良いし、検査方法に含まれる複数のステップの少なくとも一部が、装置によって自動的に実行されても良い。第3実施形態に係る検査システムは、第1実施形態に係る検査方法に好適である。例えば
図22に示すように、検査システム1は、検査装置10、測定装置15、プローバ20、及び光源30を含む。
【0068】
光源30は、検査対象である半導体光検知素子にパルス光PLを照射する。プローバ20は、半導体光検知素子を保持し、半導体光検知素子にパルス光が照射されたときの半導体光検知素子からの出力信号Sを取り出す。測定装置15は、半導体光検知素子からの出力信号から、出力V(電圧)を測定する。検査装置10は、出力Vから第1出力値を抽出し、第1出力値に基づいて半導体光検知素子を検査する。
【0069】
図22に示すように、光源30は、パルス発生器31、電源ボード32、電源33、パルスレーザダイオード34、及び分配器35を含む。パルス発生器31は、パルス光を照射させるためのトリガ信号TSを出力する。電源ボード32は、トリガ信号TSを受信する。また、電源ボード32には、電源33から電力が供給される。電源ボード32は、トリガ信号TSを受信すると、パルスレーザダイオード34へ駆動信号DSを送信する。パルスレーザダイオード34は、駆動信号DSを受信すると、パルス光PLを発する。
【0070】
分配器35は、トリガ信号TSを、分岐させる。これにより、トリガ信号TSは、電源ボード32に加え、検査装置10へ送信される。検査装置10は、トリガ信号TSの受信タイミングを、第1時間の計測の起点として用いる。
【0071】
図23は、第3実施形態に係る検査システムを示す模式図である。
図23に示すように、プローバ20は、ステージ21、駆動部22、プローブ23、駆動部24、及び制御部25を含む。ステージ21は、半導体ウェーハWを保持する。駆動部22は、ステージ21を駆動させる。
図24の例では、プローブ23として、2本の電極が用いられている。プローブ23の形態は、図示した例に限定されない。プローブ23に含まれる電極の数は、半導体光検知素子の形態に応じて、適宜変更可能である。
【0072】
プローブ23は、ステージ21の上方に2つ以上設けられる。各プローブ23の先端を半導体光検知素子のパッド151及び152に接触させる。この状態で、半導体光検知素子に動作電圧が印加される。また、プローブ23は、半導体光検知素子の出力信号を取り出す。駆動部24は、プローブ23及び光源30を駆動させ、これらを検査対象の半導体光検知素子に向けて移動させる。プローブ23及び光源30は、それぞれ独立して駆動されても良いし、一体に駆動されても良い。制御部25は、駆動部22及び24を制御する。制御部25は、さらに光源30を制御しても良い。
【0073】
駆動部22及び24は、それぞれアクチュエータを含む。アクチュエータは、例えばモータである。測定装置15として、デジタルオシロスコープ(波形測定器)、又は、半導体パラメータアナライザなどの電圧測定装置を用いることができる。
【0074】
検査システム1は、
図3に示す検査方法IMを実行可能である。制御部25は、いずれかの半導体光検知素子へ、プローブ23及び光源30を移動させる。プローブ23は、その半導体光検知素子に動作電圧を印加する(ステップS1)。動作電圧の印加中、光源30は、半導体光検知素子にパルス光を照射する(ステップS2)。測定装置15は、パルス光の照射後における半導体光検知素子からのの出力を測定する(ステップS3)。検査装置10は、最大ピークの出現後であってパルス光の照射から第1時間経過後における、半導体光検知素子の第1出力値を、測定された出力から抽出する(ステップS4)。制御部25は、全ての半導体光検知素子に対する測定が完了したか判定する(ステップS5)。測定が完了していない半導体光検知素子が存在する場合、制御部25は、その半導体光検知素子へ、プローブ23及び光源30を移動させる(ステップS6)。検査装置10は、抽出された第1出力値に基づいて、半導体光検知素子を評価する(ステップS7)。
【0075】
検査装置10は、半導体光検知素子について、ノイズ特性、感度特性、及び出力特性を含む全体の特性を、簡易的且つ短時間で評価できる。検査システム1は、半導体光検知素子へのパルス光の照射及び半導体光検知素子からの出力の測定が可能であり、第1実施形態に係る検査方法に好適である。
【0076】
プローバ20は、
図23に示す例に限らず、個片化された半導体光検知素子に対して測定を実行可能であっても良い。この場合、駆動部22及び24は、省略可能である。
【0077】
好ましくは、検査の効率化のために、プローバ20により、半導体ウェーハWに対して測定が実行される。この場合、いずれかの半導体光検知素子を選択的に測定するために、駆動部22及び24の少なくとも一方が設けられることが好ましい。駆動部22及び24から選択される少なくとも1つの第1駆動部が設けられることで、ステージ21及びプローブ23の一方を他方に対して相対的に移動させることができる。また、
図23に示す例では、光源30は、駆動部24(第2駆動部)によって移動される。駆動部24は、第1駆動部及び第2駆動部の両方として機能しうる。
【0078】
図24(a)及び
図24(b)は、第3実施形態の変形例に係る検査システムを示す模式図である。
図24(a)に示すように、光源30は、半導体ウェーハWの全ての半導体光検知素子に対して、パルス光PLを照射可能であっても良い。この場合、光源30を移動させる必要は無い。
【0079】
図23に示すプローバ20では、光源30が、ステージ21の上方に設けられている。プローバ20は、半導体光検知素子100への検査に適用可能である。
図24(b)に示すように、光源30は、ステージ21の下方に設けられても良い。
図24(b)に示すプローバ20aは、半導体光検知素子200への検査に適用可能である。各プローブ23の先端は、半導体光検知素子200のパッド251及び252に接触され、半導体光検知素子200に動作電圧が印加される。光源30は、駆動部26によって駆動される。
【0080】
図25は、ハードウェア構成を示す模式図である。
検査装置10及び制御部25は、例えば
図25に示すコンピュータ90の構成をそれぞれ含む。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0081】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0082】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0083】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0084】
入力インタフェース(I/F)95は、コンピュータ90と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0085】
出力インタフェース(I/F)96は、コンピュータ90と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信し、出力装置96aに画像を表示させることができる。
【0086】
通信インタフェース(I/F)97は、コンピュータ90外部のサーバ97aと、コンピュータ90と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0087】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ及びプロジェクタから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0088】
検査装置10及び制御部25の機能は、1つのコンピュータによって実現されても良いし、複数のコンピュータの協働により実現されても良い。上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0089】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0090】
以上で説明した実施形態によれば、より短い時間で半導体光検知素子を検査可能な、検査方法、半導体装置の製造方法、検査装置、検査システム、プログラム、及び記憶媒体が提供される。
【0091】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0092】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体光検知素子に含まれる半導体層、半導体領域、絶縁部、絶縁層、クエンチ部、電極、パッドなど、検査システムに含まれる検査装置、測定装置、プローバ、光源などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0093】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0094】
その他、本発明の実施の形態として上述した、検査方法、半導体装置の製造方法、検査装置、検査システム、プログラム、及び記憶媒体を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての検査方法、半導体装置の製造方法、検査装置、検査システム、プログラム、及び記憶媒体も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0095】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1:検査システム、 10:検査装置、 15:測定装置、 20,20a:プローバ、 21:ステージ、 22:駆動部、 23:プローブ、 24:駆動部、 25:制御部、 30:光源、 31:パルス発生器、 32:電源ボード、 33:電源、 34:パルスレーザダイオード、 35:分配器、 90:コンピュータ、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 100:半導体光検知素子、 101:p+形半導体基板、 102:p-形半導体層、 110:受光素子、 111:p形半導体領域、 112:n+形半導体領域、 120:絶縁部、 130:絶縁層、 140:クエンチ部、 151:電極、 152:パッド、 200:半導体光検知素子、 201:絶縁層、 202:p-形半導体層、 210:受光素子、 211:p形半導体領域、 212:n+形半導体領域、 220:絶縁部、 221:ビア、 230:反射層、 231:絶縁層、 240:クエンチ部、 251:パッド、 252:パッド、 300:ウェーハマップ、 DS:駆動信号、 IM,IM1~IM7:検査方法、 L:光量、 MM,MM1:製造方法、 PL:パルス光、 TS:トリガ信号、 V,V0:出力、 V1:第1出力値、 Vop:動作電圧、 W:半導体ウェーハ