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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20240703BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240703BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/08
G08G1/16 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021161289
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050922
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友澤 元克
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真也
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-067974(JP,A)
【文献】特開2008-118439(JP,A)
【文献】特開2007-254962(JP,A)
【文献】特開2017-030627(JP,A)
【文献】特開2019-181983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0063786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を指定された駐車領域まで自動走行して駐車させる走行支援制御部と、
前記車両の走行制御を可能にする端末装置を携帯した搭乗者が前記車両の運転席で乗降行為を行ったか否かを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記車両の走行制御権限を前記走行支援制御部に帰属させるか前記搭乗者に帰属させるかを決定する権限決定部と、
を備え、
前記検出部は、前記端末装置が前記車両の車室内に存在するか否かをさらに検出し、
前記権限決定部は、前記検出部により、前記端末装置が前記車室内に存在することが検出され、かつ前記乗降行為として前記運転席の運転操作部の操作が検出された場合、前記搭乗者が乗車したと判定し、前記走行制御権限を前記走行支援制御部から前記搭乗者に移行することを決定する、駐車支援装置。
【請求項2】
前記権限決定部は、前記乗降行為として前記運転席のドアの開動作に続き閉動作が検出された場合、前記搭乗者が降車したと判定し、前記走行制御権限を前記搭乗者から前記走行支援制御部に移行することを決定する、請求項1に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両からの通信を契機に狭域の無線通信によって電子キーのID照合を行い、各種制御を行うキー操作フリーシステムが搭載された車両制御システムが利用されている。例えば、車両電源がオンの状態で、電子キーが車外に持ち出された場合に警報を出力したり、電子キーが車内に存在すする場合には、スイッチ操作等によるエンジンの始動を可能にしたりすることを実現している。このような車両制御システムの中には、車両に搭乗している乗員(搭乗者)の数に応じて、電子キーの持ち出し警報処理の実行の有無を決定するようなシステムも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-100676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両の自動走行支援技術の実用化が進められている。自動走行支援には、運転者(搭乗者)が車両内に存在する状態で実行される場合と、運転者が車外に存在する状態で実行される場合がある。特に、運転者が車外に存在する状態で実行される、例えば駐車スペースに自動で車両を移動させる自動駐車支援の場合、運転者の乗降状態を正確に検出するとともに、車両と運転者との間で制御権限の受け渡しがスムーズに行われる必要がある。しかしながら、このとき、電子キーが複数存在する場合、例えば、同乗者も電子キーを携帯している場合、運転者の乗降判定が正確にし難く、制御権限の受け渡しがスムーズに実行され難いという問題があった。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、乗員(搭乗者)の乗降状態をより正確に検出し、自動走行制御の制御権限の受け渡しをよりスムーズに行うことのできる、駐車支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態にかかる駐車支援装置は、例えば、車両を指定された駐車領域まで自動走行して駐車させる走行支援制御部と、車両の走行制御を可能にする端末装置を携帯した搭乗者が車両の運転席で乗降行為を行ったか否かを検出する検出部と、検出部の検出結果に基づき、車両の走行制御権限を走行支援制御部に帰属させるか搭乗者に帰属させるかを決定する権限決定部と、を備え、検出部は、端末装置が車両の車室内に存在するか否かをさらに検出し、権限決定部は、検出部により、端末装置が車室内に存在することが検出され、かつ乗降行為として運転席の運転操作部の操作が検出された場合、搭乗者が乗車したと判定し、走行制御権限を走行支援制御部から搭乗者に移行することを決定する。この構成によれば、例えば、運転を行う搭乗者が車外に存在するか、車内に存在するかを容易かつ正確に検出し、走行制御権限を走行支援制御部に帰属させるか車両を主として管理する運転席に搭乗する搭乗者に帰属させるかをスムーズかつ適切なタイミングで決定することができる。また、運転を行う搭乗者が車内に存在するようになったタイミングをより正確に検出可能となり、走行制御権限を運転席に搭乗する搭乗者にスムーズかつ適切なタイミングで渡すことができる。
【0007】
また、本実施形態にかかる駐車支援装置の権限決定部は、例えば、乗降行為として運転席のドアの開動作に続き閉動作が検出された場合、搭乗者が降車したと判定し、走行制御権限を搭乗者から走行支援制御部に移行することを決定するようにしてもよい。この構成によれば、例えば、運転を行う搭乗者が車外に存在するようになったタイミングをより正確に検出可能となり、走行制御権限を走行支援制御部にスムーズかつ適切なタイミングで渡すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかる駐車支援装置を搭載する車両の車室の一部が透視された状態を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図2図2は、実施形態にかかる駐車支援装置を搭載する車両の例示的かつ模式的な平面図である。
図3図3は、実施形態にかかる駐車支援装置を含む車両の制御システムの機能構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかる駐車支援装置の構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。
図5図5は、実施形態にかかる駐車支援装置が搭乗者の降車を確認して、制御の受け渡しを行い、駐車支援制御を実行する場合の処理の流れを示す例示的なフローチャートである。
図6図6は、実施形態にかかる駐車支援装置において、駐車支援制御を実行する際の制動制御の制動力の推移を示す例示的な図である。
図7図7は、実施形態にかかる駐車支援装置において、搭乗者(運転者)の降車を検出する場合に利用するドアセンサの出力値の推移を示す例示的な図である。
図8図8は、実施形態にかかる駐車支援装置が搭乗者の乗車を確認して、制御の受け渡しを行い、出庫支援制御を実行する場合の処理の流れを示す例示的なフローチャートである。
図9図9は、実施形態にかかる駐車支援装置において、搭乗者(運転者)の乗車を検出する場合に利用する電子キーの受信強度と運転操作部の出力値の推移を示す例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によって実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも1つを得ることが可能である。
【0011】
図1は、実施形態にかかる駐車支援装置を搭載する車両1の車室2aの一部が透視された状態の例示的かつ模式的な斜視図である。本実施形態の駐車支援装置の場合、運転者が運転操作することなく、車両1を設定した駐車領域(駐車スペース)に自動的に駐車する駐車支援制御と、駐車された状態から自動的に所定の場所(運転者が待機する場所やその近傍)に出庫する出庫支援制御とを実行する。また、本実施形態の駐車支援装置は、搭乗者(同乗者)が搭乗した状態で駐車支援制御や出庫支援制御を実行してもよいが、基本的には、車両1に搭乗者(運転者や同乗者)が搭乗していない状態で駐車支援制御や出庫支援制御を実行する。したがって、本実施形態の駐車支援装置は、運転者の乗降の確認および運転者の乗降に伴う車両1の走行制御権限の受け渡しを車両1の制御部と運転者との間で行う。
【0012】
まず、本実施形態の駐車支援装置を搭載する車両1の構成について説明する。
【0013】
本実施形態にかかる駐車支援装置を搭載する車両は、内燃機関(エンジン)を駆動源とする自動車(内燃機関自動車)であってもよいし、電動機(モータ)を駆動源とする自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)であってもよいし、それらの双方を駆動源とする自動車(ハイブリッド自動車)であってもよい。また、車両は、種々の変速装置、内燃機関や電動機の駆動に必要な種々の装置(システム、部品等)を搭載可能である。また、車両における車輪の駆動に関わる装置の方式、個数、レイアウト等は、種々に設定可能である。
【0014】
図1に例示されるように、車両1の車体2は、不図示の乗員(搭乗者)が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールである。加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルである。制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルである。変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。
【0015】
また、車室2a内には、表示装置8(表示部)や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(liquid crystal display)や、OELD(organic electroluminescent display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員(運転者、同乗者)は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で手指等により操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。例えば、本実施形態の駐車支援装置による駐車支援制御を実行する場合、運転者の降車に先立ち、表示装置8にリモート駐車(運転者が降車後に、車両1を駐車領域に自動走行により移動させるモード)を実行するためのアイコン等を表示して、操作入力部10を用いて運転者にリモート駐車の実行のための意思確認を入力させることができる。これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。また、リモート駐車を実行させるスイッチをモニタ装置11とは別に設けてもよい。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。
【0016】
図2は、本実施形態にかかる駐車支援装置を搭載する車両1の例示的かつ模式的な平面図である。図1および図2に示すように、車両1は、四輪自動車等であり、左右2つの前輪3Fと、左右2つの後輪3Rと、を有する。4つの車輪3の全てまたは一部が、転舵可能である。
【0017】
車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a~15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°~220°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0018】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、トランクのドア2hの下方の壁部に設けられて、車両1の後方領域の状況を撮像する。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられて、車両1の右前方、右側方、右後方を含む領域の状況を撮像する。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパ等に設けられて、車両1の前方領域の状況を撮像する。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられて、車両1の左前方、左側方、左後方を含む領域の状況を撮像する。駐車支援装置を構成するECU14(図3参照)は、複数の撮像部15で得られた撮像画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方(真上や斜め上方)から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりすることができる。
【0019】
また、車両1は、車両1の外部に存在する物体との距離を計測可能な測距部として、複数のレーダー16を有する。レーダー16は、例えば、ミリ波レーダー等であり、車両1の進行方位(車両1の向く方向)に存在する物体との距離を計測可能である。本実施形態では、車両1は、複数のレーダー16a~16dを有する。レーダー16aは、例えば、車両1のリヤバンパの左側の端部に設けられ、車両1の左後方に存在する物体との距離を計測可能である。また、レーダー16bは、車両1のリヤバンパの右側の端部に設けられ、車両1の右後方に存在する物体との距離を計測可能である。レーダー16cは、車両1のフロントバンパの右側の端部に設けられ、車両1の右前方に存在する物体との距離を計測可能である。また、レーダー16dは、車両1のフロントバンパの左側の端部に設けられ、車両1の左前方に存在する物体との距離を計測可能である。
【0020】
また、車両1は、車両1から比較的近距離に存在する外部の物体との距離を超音波を用いて計測可能なソナー17を有する。本実施形態では、車両1は、複数のソナー17a~17hを有する。ソナー17a~17dは、車両1のリヤバンパに設けられ、車両の後方に存在する物体との距離を計測可能である。ソナー17e~17hは、車両1のフロントバンパに設けられ、車両1の前方に存在する物体との距離を計測可能である。
【0021】
図3は、本実施形態にかかる駐車支援装置を含む車両1の制御システム100の機能構成を示す例示的かつ模式的なブロック図である。図3に例示されるように、制御システム100は、ECU14や、モニタ装置11、レーダー16、ソナー17等の他、操舵システム13、ブレーキシステム18、加速システム19、変速システム20、EPB(Electromechanical Parking Brake)システム21、舵角センサ22、車輪速センサ23、ドアセンサ26、電子キー通信部27、GPS(Global Positioning System)受信機28、通信インターフェース(I/F)29等が、電気通信回線としての車内ネットワーク30を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク30は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。ECU14は、車内ネットワーク30を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18、加速システム19、変速システム20、EPBシステム21等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク30を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、アクセルセンサ19b、シフトセンサ20b、EPBセンサ21b、舵角センサ22、車輪速センサ23、レーダー16、ソナー17、ドアセンサ26等の検出結果を取得できる。また、ECU14は、車内ネットワーク30を介して、電子キー通信部27、GPS受信機28、通信インターフェース29等の通信結果や、操作入力部10等のスイッチ類の操作信号等を、受け取ることができる。
【0022】
操舵システム13は、電動パワーステアリングシステムやSBW(Steer By Wire)システム等である。操舵システム13は、アクチュエータ13aおよびトルクセンサ13bを有する。そして、操舵システム13は、ECU14等によって電気的に制御され、アクチュエータ13aを動作させて、操舵部4に対して、トルクを付加して操舵力を補うことによって、車輪3を転舵する。トルクセンサ13bは、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出し、その検出結果をECU14に送信する。
【0023】
ブレーキシステム18は、常用ブレーキとしての制動力の制御に加え、車両1のブレーキのロックを制御するABS(Anti-lock Brake System)、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)、ブレーキ力を増強させてブレーキをアシストする電動ブレーキシステム、およびBBW(Brake By Wire)を含む。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aおよびブレーキセンサ18bを有する。ブレーキシステム18は、ECU14等によって電気的に制御され、アクチュエータ18aを介して、車輪3に制動力を付与する。アクチュエータ18aは、例えば流体圧アクチュエータで、加圧時にディスクブレーキのキャリアやドラムブレーキのブレーキシューを駆動させて制動力を発生させることで、走行時の減速および制動、停車時の静止維持を行う常用ブレーキを動作させる。つまり、ブレーキシステム18は、停車状態(制動状態)の維持のためにアクチュエータ18aを利用する第一の制動装置として機能する。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差等から、ブレーキのロック、車輪3の空回り、および横滑りの兆候等を検出して、ブレーキのロック、車輪3の空回り、および横滑りを抑制する制御を実行する。ブレーキセンサ18bは、制動操作部6の可動部としてのブレーキペダルの位置を検出する変位センサであり、ブレーキペダルの位置の検出結果をECU14に送信する。
【0024】
加速システム19は、駆動源としての内燃機関(エンジン)システムやモータシステムである。アクセルセンサ19bは、加速操作部5の可動部としてのアクセルペダルの位置を検出する変位センサであり、その検出結果をECU14に送信する。加速システム19は、アクセルセンサ19bにより検出された運転者の要求操作量(例えばアクセルペダルの踏み込み量)にしたがいアクチュエータ19aを制御し、エンジンの燃料噴射量や吸気量の制御やモータの出力値の制御を実行し、車両1の速度の増減を行う。
【0025】
変速システム20は、シフトセンサ20bで検出した検出結果に応じてアクチュエータ20aを駆動し、ギヤの噛合状態を変化させて、車両1の変速比の制御および前進走行、後進走行、パーキング機能の切り替えを行う。シフトセンサ20bは、変速操作部7の可動部(バー、アーム、ボタン等)の位置を検出するセンサであり、その検出結果をECU14に送信する。また、変速システム20は、ECU14の制御下で、適切な燃費が得られるように、変速操作部7の操作位置に拘わらず変速比等の制御を行い得る。なお、変速システム20は、シフト位置がパーキングPに移行した場合、変速機(トランスミッション)内のギヤにロック部材(パーキングロックポール)が引っかかり、ギヤが固定され、車両1を動かないようにする。つまり、停車時の停止状態を維持する制動装置の一つとして機能する。この場合、アクチュエータ20aはロック部材をギヤに引っかけるときのみに動作し、ギヤとロック部材とが係合した後はアクチュエータ20aを利用しない第二の制動装置として機能する。
【0026】
なお、ECU14は、運転者の操作に拘わらず、操舵システム13、ブレーキシステム18、加速システム19、変速システム20等を協働制御し、操舵制御、制動制御、エンジンやモータの出力制御、変速制御等を実行し、例えば、走行支援時や駐車支援等の走行支援を実行することができる。
【0027】
EPBシステム21は、従来、レバーやペダルの手動操作でワイヤを引くことでディスクブレーキやドラムブレーキで制動力を発生させていたシステムに代えて、ワイヤをアクチュエータ21a(例えばモータ)を用いて巻き上げて制動力を発生させるシステムである。ECU14は、例えば運転席の周囲に配置されたEPBスイッチの操作を受けてアクチュエータ21aを制御し、ワイヤを巻き上げて制動力を発生させる。また、ECU14は、リリーススイッチの操作や加速操作部5の操作を受けて、ワイヤの巻上を解放し制動力を解除する。アクチュエータ21aはワイヤの巻上のときのみに動作し、制動力が発生した巻上後はアクチュエータ21aを利用しない第二の制動装置として機能する。
【0028】
舵角センサ22は、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量(舵角)を検出するセンサである。舵角センサ22は、ホール素子等で構成され、操舵部4の回転部分の回転角度を操舵量として検出し、その検出結果をECU14に送信する。ECU14(CPU14a)は、取得した舵角に基づき、タイヤ角を算出してもよい。この場合、例えば、予め車種ごとに準備された舵角とタイヤ角の変換マップを用いて算出してもよいし、所定の演算式に基づいて算出てもよい。なお、別の実施形態では、ステアリング機構にタイヤ角センサを設け、直接的にタイヤ角を取得するようにしてもよい。舵角やタイヤ角は、車両1の駐車支援や出庫支援を行う際に車両1の移動経路の探索や、車両1を実際に自動で走行させる場合等に利用することができる。
【0029】
車輪速センサ23は、各車輪3に設けられ各車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサであり、検出した回転数を示す車輪速パルス数を検出値として出力する。車輪速センサ23は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ23から取得した検出値に基づき、車両1の車速や移動量などを演算し、各種制御を実行する。ECU14は、各車輪3の車輪速センサ23の検出値に基づいて車両1の車速を算出する場合、例えば四輪のうち最も小さな検出値の車輪3の速度に基づき車両1の車速を決定し、各種制御を実行する。また、ECU14は、四輪の中で他の車輪3に比べて検出値が大きな車輪3が存在する場合、例えば、他の車輪3に比べて単位期間(単位時間や単位距離)の回転数が所定数以上多い車輪3が存在する場合、その車輪3はスリップ状態(空転状態)であると見なし、各種制御を実行する。車輪速センサ23は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ23の検出結果をブレーキシステム18を介して取得する。
【0030】
ドアセンサ26は、図2に示す車両1の乗降用の各ドア32(32a~32d)およびドア2h(トランクのドア)、バックドアが存在する車両の場合は、そのバックドアにそれぞれ設けられて、ドア32等ごとに開閉の有無を検出するセンサであり、その検出結果をECU14に送信する。ドアセンサ26は、接触型の機械式スイッチでもよいし、非接触型の光電センサ、静電容量センサ等であってもよい。ECU14では、ドアセンサ26がドア32の開動作に続き閉動作を検出した場合、乗員(搭乗者)の乗降が行われたと判定するようにしてもよい。なお、図1に示す車両1のように乗員の乗降が行われないトランクのドア2hの場合は、ドア2hに配置されたドアセンサ26は、トランクの開閉判定に用いられ、乗降判定には利用されない。一方、車種によっては、バックドアからの乗降が可能な車両もある。この場合、バックドアの開閉動作に基づき、乗員(搭乗者)の乗降が行われたと判定するようにしてもよい。
【0031】
電子キー通信部27は、常に車両1の周囲(例えば数mの所定範囲)に微弱な電波を発信して、検出対象である電子キー27aの検出(探索)を行う。電子キー27aが所定範囲内で検出された場合、電子キー27aから送信される認証情報(認証用ID)を受信し、ECU14に送信する。ECU14は、電子キーから送信される認証情報と予め車両1側に設定された基準認証情報との照合を行い、認証が肯定された場合、車両1のドア32の施錠や解錠の制御、イグニッションスイッチ操作の受付等を許可する。ECU14は、電子キー通信部27が送信している微弱電波の範囲における電子キー27aの検出位置に基づいて、電子キー27aが車両1の車室2a内に存在するか、車室2aの外(車外)に存在するかの判定を行うことが可能で、電子キー27aの位置に基づく、車両1の制御を実行することができる。
【0032】
GPS受信機28は、人工衛星から受信した電波に基づいて、車両1の現在位置を取得する。例えば、走行支援制御や、駐車支援制御、出庫支援制御を実行する際に、車両1の現在位置に基づき、移動経路の取得や移動経路と車両1の現在位置とに基づき誘導制御を実行することができる。なお、車両1がナビゲーションシステムを搭載する場合、ナビゲーションシステムからGPS情報(車両1の現在位置の情報)を取得してもよい。この場合、GPS受信機28は省略してもよい。
【0033】
通信インターフェース29は、車両1の制御システム100(駐車支援装置)と外部装置との間の通信を実現するインターフェースである。例えば、通信インターフェース29は、ECU14と乗員(搭乗者)が携帯する端末装置29aとの間で無線通信による信号の送受信を実現する。なお、端末装置29aは、例えば、本実施形態の駐車支援や出庫支援を実行させるための専用の端末装置であってもよいし、車両1を駆動させる電子キー27aと一体化されたものであってもよい。また、専用のアプリケーションをインストールしたタブレットやスマートフォン等の携帯端末であってもよい。
【0034】
なお、上述した各種システムやセンサ、アクチュエータ等の構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0035】
ECU14は、コンピュータ等で構成され、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより、車両1の制御全般を司る。具体的には、ECU14は、CPU(Central Processing Unit)14a、ROM(Read Only Memory)14b、RAM(Random Access Memory)14c、表示制御部14d、音声制御部14e、およびSSD(Solid State Drive)14fを備える。CPU14a、ROM14b、およびRAM14cは、同一の回路基板内に設けられていてもよい。
【0036】
CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。CPU14aは、例えば、駐車支援制御や出庫支援制御等に関連した演算および制御を実行することができる。また、CPU14aは、撮像部15で得られた広角画像の撮像画像データ(湾曲した画像のデータ)に演算処理や画像処理を施して歪みを補正する歪み補正処理を実行したり、撮像部15が撮像した撮像画像データに基づき、車両1を示す車両画像(自車アイコン)を例えば中心位置に表示する俯瞰画像(周辺画像)を生成して、表示装置8に表示させたりすることができる。また、CPU14aは、俯瞰画像を生成する際に、仮想視点の位置を変更し、真上から車両画像を臨むような俯瞰画像や斜め方向から車両画像を臨むような俯瞰画像を生成することができる。
【0037】
CPU14aは、例えば、駐車支援や出庫支援等の走行支援を行う場合に、搭乗者(運転者)が車外から駐車支援の状況や駐車支援時の車両1の周囲状況を認識し易い画像を生成して、通信インターフェース29を介して運転者が携帯する端末装置29aに送信して確認できるようにしてもよい。なお、駐車支援や出庫支援等の走行支援は、搭乗者が車内に存在する場合も実行されてもよい。この場合、駐車支援等の状況を示す画像は、表示装置8に表示されてもよい。
【0038】
ROM14bは、各種プログラムおよび当該プログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種データを一時的に記憶する。表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15から取得してCPU14aへ出力する画像データに対する画像処理、CPU14aから取得した画像データを表示装置8に表示させる表示用の画像データへの変換等を実行する。音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、CPU14aから取得して音声出力装置9に出力させる音声の処理を実行する。SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもCPU14aから取得したデータを記憶し続ける。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(digital signal processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(hard disk drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0039】
図4は、実施形態にかかる駐車支援装置をCPU14aで実現する場合の構成を例示的かつ模式的に示すブロック図である。CPU14aは、ROM14bから読み出した駐車支援処理プログラムを実行することにより、図4に示すように、リモート走行受付部34、乗降検出部36、電子キー認証部38、権限決定部40、制動切替部42、走行支援制御部44等のモジュールを実現する。
【0040】
本実施形態の駐車支援装置の場合、上述したように、運転者が運転操作することなく、車両1を設定した駐車領域に自動的に駐車する駐車支援制御(リモート走行制御)が実行可能である。この場合、運転者は、車両1を降車する前に、自動制御による駐車支援制御を実行可能な状態に移行させる操作信号を、例えば操作入力部10の操作により出力させる。リモート走行受付部34は、操作入力部10から提供される操作信号を受け付けた場合、駐車支援装置(CPU14a)を駐車支援制御可能な状態に移行させる。また、リモート走行受付部34は、通信インターフェース29を介して端末装置29aから入力されるリモート走行(駐車支援制御による走行や出庫支援制御による走行)の要求を受け付ける。
【0041】
本実施形態の駐車支援装置の場合、上述したように、車両1に搭乗者(運転者)が搭乗した状態で駐車支援や出庫支援を実行してもよいが、基本的には、車両1に搭乗者(運転者)が搭乗していない状態で駐車支援や出庫支援を実行する。したがって、車両1における搭乗者(運転者)の有無、および搭乗者(運転者)の位置を検出する必要がある。そこで、乗降検出部36は、ドア開閉検出部36a、電子キー位置検出部36b、操作検出部36c等の詳細モジュールを含む。
【0042】
ドア開閉検出部36aは、ドアセンサ26が出力する開閉信号を取得する。ドアセンサ26は、例えば、ドア32が全閉している場合にON信号を出力し、ドア32が所定角度以上開いた場合にOFFとなる。したがって、ドアセンサ26の出力値(信号値)の推移を参照することにより、ドア32の開閉動作を検出することができる。例えば、ドア32が閉状態から開状態に移行した場合に車体2の開口部が一度解放され、その後、閉状態に移行した場合、開いていたドア32が閉塞されたと推定できる。つまり、搭乗者が乗降したか否かを推定する一手法として利用することができる。なお、前述したように、バックドアからの乗降が可能なタイプの車両の場合、ドア開閉検出部36aは、バックドアに設けられたドアセンサ26からの開閉信号を取得してもよい。この場合、バックドアの開閉動作に基づき、乗員が乗降したか否かを推定するようにしてもよい。
【0043】
電子キー位置検出部36bは、車両1の走行制御を可能にする電子キー27aの位置を検出する。前述したように、電子キー27aは、車両1のエンジンや電子機器等の始動を可能にするイグニッションキーとして機能する。電子キー位置検出部36bは、電子キー通信部27が送信している微弱電波の送信範囲における電子キー27aの位置に基づいて、電子キー27aが車両1の車室2a内に存在するか、車室2aの外に存在するかの判定を行う。つまり、電子キー27aからの信号の強度が所定の閾値以上の場合、電子キー27aが車室2a内に存在すると推定可能であり、車両1の搭乗者(運転者)が車両1に乗車していると見なすことができる。一方、電子キー27aからの信号の強度が所定の閾値未満の場合、電子キー27aが車室2a外に存在すると推定可能となり、車両1の搭乗者(運転者)が車両1から降車していると見なすことができる。つまり、搭乗者が乗降したか否かを推定する別の手法として利用することができる。なお、電子キー27aは複数存在する場合があるため、電子キー27aが存在する位置情報と他の情報を組み合わせて搭乗者の乗降判定を行うことが望ましい。
【0044】
操作検出部36cは、座席2b(運転席)に搭乗者が着座した場合に、操作することができる運転操作部を操作したか否かを検出する。運転操作部は、例えば、操舵部4(ステアリングホイール)、加速操作部5(アクセルペダル)、制動操作部6(ブレーキペダル)、変速操作部7(シフトレバー)等であり、実際に操作された場合に操作検出信号を出力してもよいし、運転操作部に触れたこと(操作可能な状態になったこと)によって操作検出信号を出力してもよい。なお、運転操作部は、上述した例に限らず、モニタ装置11や空気調和装置に触れた場合や操作した場合にも操作検出信号を出力するようにしてもよい。また、重量センサや圧力センサ等によって座席2bに着座されたことが検出された場合に、操作検出信号を出力するようにしてもよい。
【0045】
なお、乗降検出部36は、ドア開閉検出部36aによって、ドア32が閉状態から、まず開状態になり、再び閉状態になったことのみで、搭乗者が降車したと判定する場合、電子キー27aと端末装置29aが複数存在する場合に、判定が曖昧になることを回避し易くなるというメリットがある。また、別の実施形態では、電子キー27aと端末装置29aがそれぞれ1個ずつ存在する場合ではあるが、電子キー位置検出部36bによる電子キー27aの現在位置を参照して、電子キー27aが車外に存在することを条件に加え、搭乗者(運転者)が降車したと判定することにより判定精度を向上することができる。
【0046】
一方、乗降検出部36は、電子キー位置検出部36bによって、搭乗者が車室2a内に存在するようになったこと、かつ操作検出部36cによって運転操作部が操作されたことによって、搭乗者が乗車したと判定してもよい。乗車時に電子キー位置検出部36bによる検出結果を考慮することにより、乗車と降車を明確に判別することができる。なお、運転者が乗車したと判定する場合に、運転席のドア32が閉状態から開状態になり,さらに閉状態になったことを条件に加えてもよい。この場合、より確実な乗車安定を行うことができる。
【0047】
電子キー認証部38は、電子キー通信部27が取得した電子キー27aの認証情報と予め設定された車両1の基準認証情報との比較を行い、相互の認証情報が一致して認証が成立した場合、車両1の各制御部に認証肯定情報を提供して、各制御部の制御を可能にする。例えば、ドア32の施錠や解錠を制御するドアシステムやイグニッションシステム等をはじめ、車両1の電気系統の制御を行う各制御システムの制御を可能にする。したがって、電子キー認証部38による認証が不成立の場合、車両1の各制御システムは、現状を維持することになる。
【0048】
権限決定部40は、乗降検出部36の検出結果に基づき、車両1の走行制御権限を走行支援制御部44に帰属させるか搭乗者(運転者)に帰属させるかを決定する。
【0049】
例えば、権限決定部40は、走行制御権限が運転者に帰属している状態で、乗降検出部36において、乗降行為としてドア開閉検出部36aによって運転席のドア32の開動作に続き閉動作が検出された場合、搭乗者(運転者)が降車したと判定する。そして、権限決定部40は、走行制御権限を搭乗者(運転者)から走行支援制御部44に移行することを決定する。つまり、車両1を運転者の介在なしで自動運転可能な状態に移行させる。なお、本実施形態において、搭乗者(運転者)の降車後の自動運転は、車両1を所定の駐車領域に移動させて駐車を完了させる駐車支援運転である。駐車支援運転が行われる場合、基本的には、車室2aの搭乗者は全て降車しているものとする。例えば、運転者が降車後に、端末装置29a等を操作して駐車支援制御を実行する場合に、車室2aに搭乗者が存在しないことを確認するメッセージを表示や音声で端末装置29aに出力し、注意喚起するようにしてもよい。また、権限決定部40は、走行制御権限が走行支援制御部44に移行したことを示すメッセージを表示や音声で端末装置29aに出力してもよい。
【0050】
また、権限決定部40は、出庫支援制御を起動可能な端末装置29aが車室2a内に存在することが検出され、かつ車両1に対する乗降行為として運転席の運転操作部の操作が検出された場合、搭乗者(運転者)が出庫後に乗車したと判定する。そして、権限決定部40は、走行制御権限を走行支援制御部44から搭乗者(運転者)に移行することを決定する。つまり、車両1を走行支援制御部44の介在なしで、運転者による手動運転を可能な状態に移行させる。この場合、端末装置29aが車室2a内に存在するか否かは、電子キー27aの存在する位置によって推定することができる。例えば、電子キー位置検出部36bによって電子キー27aが車室2a内に存在することが検出された場合、運転者が携帯する端末装置29aも車室2a内に存在すると見なすことができる。なお、端末装置29aが電子キー27aと一体化されている場合、電子キー位置検出部36bの検出結果を、搭乗者(運転者)が出庫後に乗車したと判定する情報として利用してもよい。
【0051】
制動切替部42は、ブレーキシステム18や変速システム20、EPBシステム21等を制御して、車両1に対する制動力の付与状態を切り替える。本実施形態において、駐車支援制御を実行する場合、車両1の走行駆動源であるエンジンやモータが駆動状態のまま停車して、運転者が降車することになる。したがって、運転者が車両1を降車するときおよび降車後に少なくとも移動経路にしたがって移動を開始するまで制御力を発生させておくことが望ましい。その一方で、車両1の停車時にアクチュエータ等を駆動したままでは、エネルギー効率が低下する。
【0052】
そこで、本実施形態の駐車支援装置の場合、運転者が駐車支援制御を実行するために、制動操作部6の踏み込みにより制動力(常用ブレーキによる制動力)を発生させて車両1を停止させている状態からリモート走行受付部34がリモート走行の要求信号を受け付けた場合、まず、ブレーキシステム18のアクチュエータ18aを制御して常用ブレーキによる制動力を自動的に発生させる。また、変速システム20のアクチュエータ20aを制御して、ギヤとロック部材の係合による制動力を発生させる。さらに、EPBシステム21のアクチュエータ21aを制御して、EPBによる制動力を発生させる。前述したように、変速システム20による制動力は、ギヤとロック部材とを係合させる動作を行う場合のみ、アクチュエータ20aを駆動させ、係合後(制動力発生後)は電流の供給を中止しても制動力の維持が可能である。同様に、EPBもワイヤの巻上時のみアクチュエータ21aを駆動させ、巻上後(制動力発生後)は電流の供給を中止しても制動力の維持が可能である。一方、ディスクブレーキやドラムブレーキ等の常用ブレーキは、制動力の発生を維持するためにアクチュエータ18aに電流を供給し続けなければならない。
【0053】
したがって、制動切替部42は、制動力が十分に確保されたことが確認できた場合、制動力の発生に電力が必要なブレーキシステム18(常用ブレーキシステム:第一の制動装置)は使用を中止するように、制動制御の切り替えを行う。この場合、アクチュエータ18aを瞬間的に非駆動とすると、制動力の解放によるショック(振動や異音等)が発生する場合がある。そこで、制動切替部42は、ブレーキシステム18に対して、制動力の解除を徐々に行うように徐変制御に行うようにしてもよい。第一の制動装置としてのブレーキシステム18を非使用とすることで、運転者が制動操作部6の踏み込みを解除して車両1を降車し離れて、駐車支援制御による走行が開始されるまでの期間の車両1の停止(停車)を確実に保証することができる。また、その際に、アクチュエータ18a(ブレーキシステム18)への負荷の軽減(解消)、省エネルギー化に寄与することができる。
【0054】
続いて、走行支援制御部44の構成を説明する。
【0055】
走行支援制御部44は、駐車支援制御および出庫支援制御を実行するためのモジュールとして、取得部46、経路探索部48、シフト位置制御部50、舵角制御部52、車速制御部54、制動制御部56、端末制御部58等を含む。なお、取得部46は、画像取得部46a、位置取得部46b、シフト位置取得部46c、障害物取得部46d、舵角取得部46e、車速取得部46f等の詳細モジュールを含む。また、経路探索部48は、目標設定部48a、経路設定部48bを含む。
【0056】
取得部46は、駐車支援制御および出庫支援制御に必要となる各種情報の取得を行う。
【0057】
画像取得部46aは、車両1の走行中および停車中に撮像部15で撮像された車両1の周辺画像を取得する。取得された画像情報は、車両1の駐車が可能な駐車領域候補の探索、車両1の周囲および駐車領域候補から選択された目標駐車領域への移動中に車両1と接触する可能性のある物体の検出、目標駐車領域に移動するための移動経路の探索等に利用可能である。
【0058】
位置取得部46bは、GPS受信機28から取得されるGPS信号に基づき車両1の現在位置(絶対座標)の取得を行い、移動経路の探索や移動状態の確認等に利用される。なお、位置取得部46bは、GPS信号に基づく位置取得の他、例えば、画像取得部46aが取得した画像情報と、その画像情報で特定した基準位置からの移動距離、移動方向等に基づき、基準位置に対する車両1の現在位置(相対位置)を推定するようにしてもよい。つまり、基準位置が定まり、目標駐車領域が定まれば、その2点間での車両1の位置は、GPS信号が受信できない場合でも推定可能となる。
【0059】
シフト位置取得部46cは、変速システム20のシフトセンサ20bからの信号に基づき現在の車両1のシフト位置を取得する。シフト位置に基づき走行支援制御部44は、現在の車両1が前進走行可能か後進走行可能状態か、またはパーキング状態(制動状態)かの判定を行うことができる。
【0060】
障害物取得部46dは、撮像部15が取得した画像情報およびレーダー16、ソナー17が取得した反射波情報に基づき周知の技術を用いて、車両1の周囲に存在する物体、特に車両1が走行する際に接触する可能性のある障害物の位置を取得する。なお、障害物取得部46dは、パターン認識等により検出した物体の種別として、例えば他車両、自転車、歩行者、壁や柱等の静止物等の識別を行うようにしてもよい。
【0061】
舵角取得部46eは、舵角センサ22から取得した回転角に基づき、車両1の現在の操舵角を取得する。取得した舵角は、駐車支援制御や出庫支援制御の際の車両1の走行方向を決定する際に利用可能である。
【0062】
車速取得部46fは、車輪速センサ23が取得した検出値に基づき、車両1の車速を推定する。車両1の車速は、駐車支援制御や出庫支援制御の際に、操舵システム13、ブレーキシステム18、加速システム19、変速システム20等の制御に反映させて、最適な移動を実現するために利用可能である。
【0063】
経路探索部48は、取得部46が取得した各種情報に基づき、駐車支線制御または出庫支援制御を実行する際の移動経路の探索を行う。移動経路の探索は周知の技術を利用することが可能である。
【0064】
目標設定部48aは、撮像部15が撮像した画像情報に基づき、車両1が駐車可能な領域を検出し設定する。目標設定部48aは、車両1の車幅や車長、旋回半径等の諸元に基づき、車両1が進入可能な駐車領域候補を検索して設定する。目標設定部48aは、車両1が駐車を行おうとして走行している際に撮像部15で撮像した画像情報から駐車領域候補を検出してもよいし、通信インターフェース29を介して取得した駐車場の利用状況を示したマップ等を利用して駐車領域候補を検出してもよい。目標設定部48aは、駐車領域候補として単一の推奨駐車領域を出力して設定してもよういし、複数の駐車領域候補を運転者に提供し、所望の駐車領域を選択させることで設定してもよい。なお、出庫支援制御の場合、目標設定部48aは、運転者等が指定した出庫位置、または予め設定された出庫位置を出庫目標位置として設定する。
【0065】
経路設定部48bは、車両1の現在の位置から目標設定部48aによって設定された駐車領域に移動する駐車支援制御を実行するときの移動経路を設定する。出庫支援制御の場合も同様に、車両1の現在の位置(駐車中の駐車領域)から目標設定部48aによって設定された出庫目標位置に移動する移動経路を設定する。なお、経路設定部48bは、単一の経路候補を設定経路として提示してもよいし、複数の経路候補を提示して運転者に選択させて設定するようにしてもよい。
【0066】
シフト位置制御部50は、シフト位置取得部46cが取得した現在の車両1のシフト位置に基づき、目標設定部48aが設定した駐車目標位置または出庫目標位置および経路設定部48bが設定した移動経路等に基づき、変速システム20のアクチュエータ20aを制御し、移動支援に最適なシフト位置(前進走行時のシフト位置または後退走行時のシフト位置)になるように制御する。
【0067】
同様に、舵角制御部52は、経路設定部48bが設定した移動経路に従い車両1が移動できるように、操舵システム13のアクチュエータ13aを制御する。また、車速制御部54も経路設定部48bが設定した移動経路に従い車両1が安全に移動できる車速になるように加速システム19のアクチュエータ19aを制御する。
【0068】
また、制動制御部56も経路設定部48bが設定した移動経路に従い車両1が安全に移動できる車速になるようにブレーキシステム18のアクチュエータ18aを制御する。なお、制動制御部56は、EPBシステム21の制御および、変速システム20がパーキング位置において制動装置として機能する場合の制動制御を車両1の状態に応じて行う。
【0069】
端末制御部58は、通信インターフェース29を介して端末装置29aに対して、車両1の現在の制御状態に応じて、搭乗者(運転者)に提供する情報、例えば、車両1の周囲の安全確認や乗車指示等の案内表示や音声指示を行う。
【0070】
以上にように構成される駐車支援装置における駐車支援制御の流れを図5図7を用いて説明する。
【0071】
図5は、駐車支援装置が搭乗者(運転者)の降車を確認して制御の受け渡しを行い、駐車支援制御を実行する場合の処理の流れを示す例示的なフローチャートである。なお、運転者の降車後に駐車支援制御を実行する場合、エンジンは始動したままの状態となっているものとする。
【0072】
駐車支援装置(CPU14a)は、まず、車速取得部46fからの車輪速の情報に基づき、車両1が停車中か否か確認する(S100)。車両1が停車中でない場合(S100のNo)、つまり、走行中の場合は、このフローを一旦終了する。車両1が停車中の場合(S100のYes)、すなわち、運転者が制動操作部6(ブレーキペダル)を踏み込み、ブレーキシステム18(常用ブレーキ)による制動力が発生している状態である。この場合、リモート走行受付部34が車室2a内に設置されている操作入力部10等のスイッチの操作によりリモート駐車が選択されていることを示す信号を受け付けいているか否か確認する(S102)。運転者によってリモート駐車が選択されていない場合(S102のNo)、このフローを一旦終了する。
【0073】
一方、運転者によってリモート駐車が選択された場合(S102のYes:タイミングT)、制動制御部56は、リモート駐車(駐車支援制御)を実行するのに先立ち、常用ブレーキによる制動力に加え、補助の制動装置(補助ブレーキ)による制動力を発生させる(S104)。つまり、図6に示されるように、常用ブレーキに加え、変速システム20を制御して制動力を発生させる。前述したように、変速システム20においてシフト位置をパーキング(P)の位置以外(A:Any)からパーキング(シフトP)に移行させることにより、変速機内のギヤがロックされ制動力が発生する。また、制動制御部56は、EPBシステム21を制御し、EPBによる制動力を発生させる(信号0→信号1)。なお、制動制御部56は、リモート駐車が選択された場合(タイミングT)、運転者の制動操作部6の操作の有無に拘わらず、ブレーキシステム18のアクチュエータ18aを制御して常用ブレーキによる制動力の発生を維持する(信号1を維持)。
【0074】
続いて、制動切替部42は、変速システム20のギヤとロック部材との係合による制動力(シフトP)およびEPBシステム21によるEPBブレーキによる制動力の発生が完了したか否かを確認する(S106)。例えば、シフトセンサ20bおよびEPBセンサ21bからの信号に基づく判定で、補助ブレーキ(シフトP、EPB)による制動力の発生が完了したことが確認できない場合(S106のNo)、S104に移行し、補助ブレーキによる制動力の発生制御処理を継続する。一方、補助ブレーキ(シフトP、EPB)による制動力の発生が完了したことが確認できた場合(S106のYes)、制動切替部42は、ブレーキシステム18による制動力の発生を徐変解除する(S108)。前述したように、ブレーキシステム18は、停車状態(制動状態)の維持のためにアクチュエータ18aを利用する第一の制動装置である。つまり、制動力を発生させている間、アクチュエータ18aは駆動状態にある。一方、変速システム20は、ギヤをとロック部材を係合させるときのみアクチュエータ20aを駆動状態とし、ギヤとロック部材の係合による制動力が発生した係合後はアクチュエータ20aを利用しない第二の制動装置である。同様に、EPBシステム21は、ワイヤの巻上のときのみアクチュエータ21aを駆動状態とし、制動力が発生した巻上後はアクチュエータ21aを利用しない第二の制動装置である。したがって、補助ブレーキ(シフトP、EPB)による制動力が確保された後は、常用ブレーキを解除することにより、搭乗員(運転者)の降車時およびその前後において十分な制動力を確保した上で、アクチュエータ18aを非使用とし、省エネルギー化に寄与することができる。
【0075】
続いて、目標設定部48aによる駐車目標位置の設定処理を行う(S110)。なお、目標設定部48aにより駐車目標位置の設定を行う場合、目標設定部48aは、表示装置8等に駐車目標位置(候補)を表示し、運転者による承認を受け、決定することが望ましい(S112)。駐車目標位置が決定していない場合(S112のNo)、S110の駐車目標位置設定処理を継続する。例えば、他の駐車目標位置の候補の提示を行う。一方、駐車目標位置が決定している場合(S112のYes)、表示制御部14dは、表示装置8を用いて運転者に対して降車指示表示を行う(S114)。なお、表示装置8を用いた降車指示表示に加えて、または表示に代えて、音声出力装置9を用いた音声案内を行うようにしてもよい。この場合、補助ブレーキ(シフトP、EPB)による制動力が確保された状態なので、車両1は動き出すことなく、搭乗者(運転者等)は安全に降車することができる。
【0076】
降車指示表示が行われた後、図7に示されるように、ドア開閉検出部36aによって閉状態の運転席のドア32が開状態に移行し、さらに閉状態に移行した場合(S116のYes:信号0→信号1)、運転者が降車したと推定し、乗降検出部36は降車フラグをONする(S118)。降車フラグがONした場合、権限決定部40は、駐車支援制御を実行可能な要件が成立したと判定し、制御権限を搭乗者(運転者)から走行支援制御部44に制御権限を移行させる(S120)。なお、S116において、運転席のドア32の開動作に続く閉動作の確認ができていない場合(S116のNo)、S114に戻り、降車指示表示を継続する。
【0077】
S120において、制御権限が走行支援制御部44に移行した場合、権限決定部40は、搭乗者(運転者)の携帯する端末装置29a等に駐車支援の専用アプリケーション(駐車支援アプリ)の起動指示を表示する(S122)。リモート走行受付部34は、端末装置29aから駐車支援の専用アプリケーションの操作、例えば、駐車支援開始の操作を取得した場合(S124のYes)、走行支援制御部44は、前述したように、駐車目標位置および移動経路の設定を行い、シフト位置制御部50、舵角制御部52、車速制御部54、制動制御部56等の協働により駐車支援処理を実行する(S126)。なお、S124において、専用アプリケーションの操作が確認できない場合(S124のNo)、S122に戻り、駐車支援の専用アプリケーションの起動指示や、指示入力要求等の表示を継続して行う。
【0078】
駐車支援処理の実行後、走行支援制御部44は、位置取得部46bにより車両1の現在位置が設定された駐車目標位置に到達したかを確認する(S128)。車両1の現在位置が駐車目標位置に到達した場合(S128のYes)、走行支援制御部44は、駐車支援終了処理を実行する(S130)。例えば、制動制御部56はシフト位置制御部50を介して変速システム20を制御し、シフト位置をパーキング位置(シフトP)に移行し、ギヤ固定による制動力を発生させる。また、制動制御部56は、EPBシステム21を制御し、EPBブレーキによる制動力を発生させる。そして、権限決定部40は、端末装置29a等に駐車支援が終了したことを示す終了表示や終了アナウンスを行うとともに、車両1のイグニッションスイッチをOFFして車両1を休止状態として、このフローを終了する(S132)。なお、S128において、車両1がまだ駐車目標位置に到達していない場合(S128のNo)、S126に戻り、駐車支援処理を継続して行う。つまり、移動経路に基づき車両1の移動を継続する。また、車両1の移動中に移動経路上に新たな障害物等が発見された場合、移動経路の再探索を行い、駐車支援制御を継続するようにしてもよい。また、別の実施形態においては、障害物が回避不能な位置に存在する場合、走行支援制御部44は、駐車支援制御の継続が不適切であると判定し、駐車支援制御の中止を端末装置29aを介して運転者に通知し、運転者による対応を要請するようにしてもよい。
【0079】
このように、本実施形態の駐車支援装置によれば、例えば、運転を行う搭乗者(運転者)が車外に存在するようになったタイミングをより正確に検出可能となり、走行制御権限を走行支援制御部44にスムーズかつ適切なタイミングで渡すことができる。
【0080】
続いて、駐車支援装置における出庫支援制御の流れを図8図9を用いて説明する。
【0081】
図8は、駐車支援装置が搭乗者の乗車を確認して制御の受け渡しを行い、出庫支援制御を実行する場合の処理の流れを示す例示的なフローチャートである。なお、出庫支援制御を実行する場合、エンジンは停止した状態で、出庫目標位置は予め所定の位置、例えば、駐車場の乗員待機位置や、駐車領域に近い路肩等に設定されているものとする。
【0082】
駐車支援装置(CPU14a)は、まず、搭乗者(運転者)の携帯する端末装置29a等において出庫支援の専用アプリケーションが起動しているか否か確認する(S200)。専用アプリケーションが起動していない場合(S200のNo)、一旦このフローを終了する。一方、出庫支援の専用アプリケーションが起動済みの場合(S200のYes)、電子キー認証部38は、車両1を始動する電子キー27aの認証を行う(S202)。電子キー認証部38において、電子キー27aの認証が否定された場合(S202のNo)、このフローを一旦終了する。電子キー27aの認証が肯定された場合(S202のYes)、電子キー認証部38は、イグニッションスイッチをONする(S204)。イグニッションスイッチがONされた後は、CPU14aは、端末装置29a等に支援内容の表示を行う(S206)。支援内容としては、例えば、出庫支援の他、エンジンの始動(例えな暖機運転の指示)や、空気調和装置の始動による車室2a内の温度調整や換気等がある。いずれも、駐車中の車両1を快適に使用するための支援とすることができる。そして、出庫支援が選択された場合(S208のYes)、出庫目標位置の設定が済んでいるか確認する(S210)。出庫目標位置が設定済みの場合で(S210のYes)、運転者が端末装置29aを操作して支援開始指示が入力され、リモート走行受付部34が支援開始指示を受け付けた場合(S212のYes)、走行支援制御部44は、車速制御部54を介して加速システム19を始動する。すなわち、エンジンを始動する(S214)。なお、S212において、リモート走行受付部34が支援開始指示を受け付けていない場合(S212のNo)、S210に移行し、出庫目標位置が設定済か否か確認し、以降の処理を繰り返す。また、S210において、出庫目標位置が設定されていない場合(S210のNo)、設定の完了まで待つ。出庫目標位置が未設定の場合、走行支援制御部44は、例えば、端末装置29aに出庫目標位置の指定を促すメッセージを表示させるようにしてもよい。また、S208において、出庫支援が選択されていない場合(S208のNo)、支援内容の表示継続し、支援内容の選択を待つ。
【0083】
エンジンの始動後、リモート走行受付部34は、出庫支援制御の継続指示を受け付けたか否かの確認を行う(S216)。このとき、CPU14aは、例えば、端末装置29aに周囲の安全確認を行うことを促す案内を行う。運転者による周囲の安全確認が完了し、出庫支援制御の継続を希望する継続指示(要求信号)を受け付けた場合(S216のYes)、走行支援制御部44は出庫支援制御を開始する(S218)。つまり、前述したように、出庫目標位置および移動経路の設定を行い、シフト位置制御部50、舵角制御部52、車速制御部54、制動制御部56の協働により出庫支援処理を実行する。
【0084】
出庫支援処理の実行後、位置取得部46bにより車両1の現在位置が設定された出庫目標位置に到達したか確認し(S220)、車両1の現在位置が出庫目標位置に到達したことが確認できた場合(S220のYes)、走行支援制御部44は、車両停止処理を実行する(S222)。例えば、制動制御部56はシフト位置制御部50を介して変速システム20を制御し、シフト位置をパーキング位置(シフトP)に移行し、ギヤ固定による制動力を発生させる。また、制動制御部56は、EPBシステム21を制御し、EPBブレーキによる制動力を発生させる。また、制動制御部56はブレーキシステム18を制御して常用ブレーキによる制動力を併せて発生させてもよい。
【0085】
シフトセンサ20bやEPBセンサ21b等の出力に基づき、車両1に十分な制動力が与えられたことが確認できた場合、端末制御部58は、通信インターフェース29を介して端末装置29aに乗車指示を行う(S224)。乗車指示後、図9の上段に示したように、電子キー位置検出部36bは、電子キー27aの受信強度が所定閾値以上の「H」か、閾値未満の「L」かに基づき、電子キー27aの存在位置が車室2a内か否か確認する(S226)。電子キー27aの受信強度が「H」、すなわち27aの存在位置が車室2aの場合(S226のYes)、操作検出部36cは、図9の下段に示すように、運転操作部の操作があったか否かの確認を行う(S228)。電子キー27aが車室2a内に存在し、かつ運転操作部の操作(信号0→信号1)が確認できた場合(S228のYes)、権限決定部40は、運転者による手動運転を実行可能な要件が成立したと判定し、走行支援制御部44から搭乗者(運転者)に制御権限を移行させる(S230)。そして、リモート走行受付部34は、表示制御部14dを介し、出庫支援制御が終了したことを示す終了表示(メッセージ)を、表示装置8を介して車両1に乗車し車室2a内に存在する運転者に通知する(S232)。なお、表示装置8を用いた出庫支援制御の終了した旨の表示に加えて、または表示に代えて、音声出力装置9を用いた音声案内を行うようにしてもよい。
【0086】
S228において、運転操作部の操作が確認できない場合(S228のNo)、またはS226において、電子キー27aの存在位置が車室2aではない場合(S226のNo)、S224に移行し、乗車指示表示を継続する。また、S220において、出庫目標位置に到達していない場合(S220のNo)、S218に戻り、出庫支援処理を継続して行う。つまり、移動経路に基づき車両1の移動を継続する。出庫の際も車両1の移動中に移動経路上に新たな障害物等が発見された場合、移動経路の再探索を行い、出庫支援制御を継続するようにしてもよい。また、別の実施形態においては、障害物が回避不能な位置に存在する場合、走行支援制御部44は、出庫支援制御の継続が不適切であると判定し、出庫支援制御の中止を端末装置29aを介して運転者に通知し、運転者による対応を要請するようにしてもよい。
【0087】
このように本実施形態の駐車支援装置によれば、例えば、運転を行う搭乗者(運転者)が車内に存在するようになったタイミングをより正確に検出可能となり、走行制御権限を運転席に搭乗する運転者にスムーズかつ適切なタイミングで渡すことができる。
【0088】
なお、本実施形態の駐車支援装置を実現するCPU14aで実行される駐車支援(出庫支援)処理のためのプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0089】
さらに、本実施形態の処理を実行するプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0090】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1…車両、4…操舵部、5…加速操作部、6…制動操作部、7…変速操作部、8…表示装置、10…操作入力部、11…モニタ装置、13…操舵システム、14…ECU、14a…CPU、15…撮像部、16…レーダー、17…ソナー、18…ブレーキシステム、19…加速システム、20…変速システム、21…EPBシステム、26…ドアセンサ、27…電子キー通信部、27a…電子キー、29…通信インターフェース、29a…端末装置、34…リモート走行受付部、36…乗降検出部(検出部)、36a…ドア開閉検出部、36b…電子キー位置検出部、36c…操作検出部、38…電子キー認証部、40…権限決定部、42…制動切替部、44…走行支援制御部、46…取得部、46a…画像取得部、46b…位置取得部、46c…シフト位置取得部、46d…障害物取得部、46e…舵角取得部、46f…車速取得部、48…経路探索部、48a…目標設定部、48b…経路設定部、50…シフト位置制御部、52…舵角制御部、54…車速制御部、56…制動制御部、58…端末制御部、100…制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9