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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ミリ波フィルタアレイ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/208 20060101AFI20240703BHJP
   H01P 7/06 20060101ALI20240703BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240703BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01P1/208 Z
H01P7/06
H01Q21/06
H05K3/46 Z
H05K3/46 T
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021523580
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019041652
(87)【国際公開番号】W WO2020014640
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】62/697,558
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521013301
【氏名又は名称】ノールズ カゼノビア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ デイヴィッド
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-034184(JP,A)
【文献】特開2010-141164(JP,A)
【文献】特開2005-176366(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083457(WO,A1)
【文献】Tianjiao Li,Vertical Integration of High-Q Filter With Circularly Polarized Patch Antenna With Enhanced Impedance-Axial Ratio Bandwidth,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Volume 66, Issue 6,2018年05月17日,p. 3119-3128
【文献】Mohamed H. Awida,A 2×4 substrate-integrated waveguide probe-fed cavity-backed patch array,2010 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium,2010年07月17日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/208
H01P 7/06
H01Q 21/06
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波デバイスであって、
誘電体の第1の誘電体層を有し、前記第1の誘電体層は、第1の表面および前記第1の表面と反対側の第2の表面を有し、前記第1の誘電体層は、第1の複数の空胴を有し、前記第1の複数の空胴の各々は、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延び、
少なくとも一部が前記第1の誘電体層内に形成された第1のフィルタユニットセルのアレイを有し、前記第1のフィルタユニットセルは、
前記第1の複数の空胴のうちの幾つかの第1の複数の側壁を有し、
前記第1の複数の側壁の少なくとも幾つかの部分上に形成された第1の導電性側壁層を有し、前記第1の導電性側壁層は、前記誘電体のうちの何割かを含む第1の共振空間を定め、隣接する第1の共振空間の各対は、単一の第1の空胴によって分離され、
前記第1の共振空間の前記誘電体の少なくとも一部分を覆うとともに前記第1の導電性側壁層に電気的に接続された第1の導電性層の部分を有し、前記第1の導電性層は、前記第1の誘電体層の前記第1の表面上に形成されると共に、前記第1のフィルタユニットセルのアレイ共通であり、
前記第1の表面上に形成された第1の高周波入力-出力(RF I/O)接点パッドを有し、前記第1のRF I/O接点パッドは、前記第1のRF I/O接点パッドの周囲の少なくとも一部分の周りに形成された第1の絶縁領域によって前記第1の導電性層から電気的に絶縁されている、高周波デバイス。
【請求項2】
前記第1のフィルタユニットセルの前記第1の導電性側壁層の各々は、前記第1のフィルタユニットセルに隣接した空胴の対応する金属化側壁を有し、前記空胴の他の金属化側壁から隔てられた前記第1の導電性側壁層は、他の第1のフィルタユニットセルの他の導電性側壁層を形成する、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項3】
同一の前記空胴内において、前記第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つと第2の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、同一の前記空胴の少なくとも一部分を埋めるよう互いに接触している、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項4】
第1の表面および前記第1の表面と反対側の第2の表面を備えた前記誘電体の第2の誘電体層を有し、前記第2の誘電体層は、前記第1の誘電体層上に形成されていて、第2の複数の空胴を有し、前記第2の複数の空胴の各々は、前記第2の誘電体層の前記第1の表面と前記第2の表面との間に延び、
前記第1のフィルタユニットセルのアレイは、前記第2の誘電体層の中に少なくとも複数形成され、前記第1のフィルタユニットセルの各々は、
前記第2の複数の空胴のうちの幾つかの第2の複数の側壁と、
前記第2の複数の側壁の少なくとも一部に形成された第2の導電性側壁層と、を有し、前記第2の導電性側壁層は、前記誘電体のうちの何割かを含む第2の共振空間を定め、隣接する第2の共振空間の各対は、単一の第1の空胴によって分離され、
前記第2の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに前記第2の導電性側壁層に電気的に接続された第2の導電性層の部分を有し、前記第2の導電性層は、前記第1の誘電体層の前記第2の表面上に形成されると共に、前記複数の第1のフィルタユニットセル共通である、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項5】
前記第2の誘電体層の前記第1の表面の少なくとも一部分は、前記第1の誘電体層の前記第2の表面に結合されている、請求項4記載の高周波デバイス。
【請求項6】
前記第1の誘電体層の第1の結合面をさらに有し、前記第1の結合面は、前記第1の誘電体層の前記第2の表面の少なくとも一部分および前記第2の導電性層の一部分を含む、請求項4記載の高周波デバイス。
【請求項7】
前記第2の誘電体層の第2の結合面をさらに有し、前記第2の結合面は、前記第2の誘電体層の前記第1の表面の少なくとも一部分および前記第2の誘電体層の前記第1の表面上に形成されたパターン付け金属層の少なくとも一部分を含む、請求項6記載の高周波デバイス。
【請求項8】
前記第1の誘電体層の前記第1の結合面は、前記第2の誘電体層の前記第2の結合面に結合されている、請求項7記載の高周波デバイス。
【請求項9】
前記第1の共振空間の中心と前記第2の共振空間の中心は、動作周波数の4分の1波長よりも短い距離だけ隔てられている、請求項4記載の高周波デバイス。
【請求項10】
前記誘電体は、光学的に透明な誘電体でありかつ少なくとも2の比誘電率を有する、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項11】
前記誘電体は、溶融石英、水晶、単結晶炭化ケイ素、または単結晶サファイアのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項12】
前記第1の複数の側壁は、4つの側壁を含む、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項13】
前記第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、不連続である、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項14】
前記第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、メッシュパターンまたは構造を有する、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項15】
前記第1のフィルタユニットセルは、
前記第1の誘電体層の前記第2の表面上に形成されていて、前記第1の誘電体層の第1の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに前記第1の導電性側壁層に電気的に接続されているアンテナグラウンドプレーンと、
前記第1の誘電体層の前記第2の表面上に形成されたアンテナ素子とを有し、前記アンテナ素子は、前記アンテナ素子の周囲の少なくとも一部分の周りに形成されたアンテナ素子絶縁領域によって前記アンテナグラウンドプレーンから電気的に絶縁されている、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項16】
前記アンテナ素子は、前記第1のRF I/O接点パッドと整列している、請求項15記載の高周波デバイス。
【請求項17】
第1の表面および前記第1の表面と反対側の第2の表面を備えた前記誘電体のアンテナ誘電体層を有し、前記アンテナ誘電体層は、前記第1の誘電体層上に形成され、前記アンテナ誘電体層は、アンテナ層空胴を有し、前記アンテナ層空胴の各々は、前記アンテナ誘電体層の前記第1の表面と前記第2の表面との間に延び、
第1のフィルタユニットセルの各々は、さらに、
前記第1の誘電体層の前記第1の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに前記第1の導電性側壁層に電気的に接続されている第2の導電性層の部分を有し、前記第2の導電性層は、前記第1の誘電体層の前記第2の表面上に形成されるとともに第1の孔を有し、
前記アンテナ層空胴のうちの一部の複数のアンテナ層側壁を有し、
前記複数のアンテナ層側壁の少なくとも幾つかの部分上に形成されたアンテナ層導電性側壁層を有し、前記アンテナ層導電性側壁層は、前記誘電体のうちの何割かを含むアンテナ層共振空間を定め、前記アンテナ層導電性側壁層は、前記第1の誘電体層の前記第2の表面上に形成された前記第2の導電性層に電気的に接続され、前記第1の孔は、前記第1の共振空間と前記アンテナ層共振空間との間に位置決めされ、
前記アンテナ層共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに前記アンテナ層導電性側壁層に電気的に接続されているアンテナグラウンドプレーンの部分を有し、前記アンテナグラウンドプレーンは、前記アンテナ誘電体層の前記第2の表面上に形成され、
前記アンテナ誘電体層の前記第2の表面上に形成されたアンテナ素子を有し、前記アンテナ素子は、前記アンテナ素子の周囲の少なくとも一部分の周りに形成されたアンテナ素子絶縁領域によって前記アンテナグラウンドプレーンから電気的に絶縁され、前記アンテナ素子は、前記第1のRF I/O接点パッドと整列している、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項18】
前記第1の導電性層から電気的に絶縁されている前記第1のRF I/O接点パッドは、前記第1のRF I/O接点パッドと前記第1の導電性層との間に少なくとも1014オームの抵抗を有する、請求項1記載の高周波デバイス。
【請求項19】
前記第1の導電性側壁層は、銅、金、銀、またはアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の高周波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容(本発明)は、一般に、高周波デバイス、特に、ミリ波またはマイクロ波フィルタアレイを有するデバイスを実現するためのシステムおよび方法(これらには限定されない)を含むミリ波またはマイクロ波フィルタに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2019年7月13日に出願された米国特許仮出願第62/697,558号(発明の名称:Millimeter Wave Filter Array)の優先権 主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
ミリ波またはマイクロ波フェーズドアレイ送信器および/または受信器を高周波移動体通信で使用することができる。例えば、フェーズドアレイ送信器および/または受信器を移動体通信ネットワークの基地局で使用することができ、それにより1つまたは2つ以上の携帯電話または別の基地局と通信することができる。例えばアクティブなフェーズドアレイアンテナ用途では、アンテナ素子の単位素子面積またはフットプリント内に収まるほど小さい電子部品を各アンテナ素子と関連した送信(または受信)機能において具体化することは、難題である。さらに、マイクロ波またはミリ波フィルタは、典型的には、別々の部品として設計されて製作されており、これら別々の部品は、これら別々の部品相互間の物理的または電気的精度の一様性を欠いており、しかも1dBをはるかに超える比較的高い挿入損失を呈する。
【発明の概要】
【0004】
一観点では、本発明は、高周波デバイス(radio frequency device)に関する。高周波デバイスは、誘電体の第1の誘電体層を有し、第1の誘電体層は、第1の表面および第1の表面と反対側の第2の表面を有し、第1の誘電体層は、第1の複数の空胴を有し、第1の複数の空胴の各々は、第1の表面と第2の表面との間に延びる。高周波デバイスは、少なくとも一部が第1の誘電体層内に形成された第1のフィルタユニットセルをさらに有し、第1のフィルタユニットセルは、第1の複数の空胴の第1の複数の側壁を有する。ユニットセルは、第1の複数の側壁の少なくとも幾つかの部分上に形成された第1の導電性側壁層をさらに有し、第1の導電性側壁層は、誘電体のうちの何割かを含む第1の共振空間を定める。ユニットセルは、第1の表面上に形成されていて、第1の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに第1の導電性側壁層に電気的に接続されている第1の導電性層をさらに有する。ユニットセルは、第1の表面上に形成された第1の高周波入力-出力(RF I/O)接点をさらに有し、第1のRF I/O接点は、第1のRF I/O接点の周囲の少なくとも一部分の周りに形成された第1の絶縁領域によって第1の導電性層から電気的に絶縁されている。
【0005】
別の観点では、本発明は、高周波デバイスを形成する方法に関する。本方法は、第1の表面および第1の表面とは反対側の第2の表面を備えた第1の光学的に透明な誘電体層を設けるステップを含む。本方法は、レーザを用いて第1の光学的に透明な誘電体層中の第1の三次元構造体を照射するステップを含み、第1の三次元構造体は、第1の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる第1の複数の側壁領域を含む。本方法は、第1の三次元構造体をエッチングして第1の三次元空胴構造を形成するステップをさらに含む。本方法は、金属を第1の三次元空胴構造内に被着させて第1の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる少なくとも1つの第1の導電性側壁層を形成するステップをさらに含む。本方法は、第1の金属層を第1の光学的に透明な誘電体層の第1の表面上に被着させるとともに第2の金属層を第1の光学的に透明な誘電体層の第2の表面上に被着させるステップをさらに含む。本方法は、第1の光学的に透明な誘電体層の第1の表面上の金属層をパターン付けして高周波入力-出力(RF I/O)を形成するとともにRF I/O領域の周囲周りにRF I/O領域から電気的に絶縁された第1のグラウンドプレーンを形成するステップをさらに含む。
【0006】
本発明の上記特徴および他の特徴は、添付の図面と関連して行われる以下の説明および添付の特許請求の範囲の記載から十分に明らかになろう。これらの図面が本発明の幾つかの実施形態しか示しておらず、したがって、本発明の範囲を制限するものとみなされてはならないことを理解した上で、添付の図面の使用により追加の特異的特徴および細部を含めて本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】種々の具体化例に係る例示のフェーズドアレイ受信器を示す図である。
図2】種々の実施形態に係る例示のフィルタアレイ層の断面図である。
図3図2に示されたフィルタアレイの一部の平面図である。
図4】種々の具体化例に係る例示の一体形フィルタ-アンテナアレイを示す図である。
図5図4に示された一体形フィルタ-アンテナアレイの一部分の平面図である。
図6A】種々の実施形態に係るフィルタアレイの機械的安定性を向上させることができる互いに異なる金属化側壁パターンを備えた2つの誘電体層の幾つかの部分の平面図である。
図6B】種々の実施形態に係るフィルタアレイの機械的安定性を向上させることができる互いに異なる金属化側壁パターンを備えた2つの誘電体層の幾つかの部分の平面図である。
図7A】種々の具体化例に係るフィルタアレイの製造方法の流れ図である。
図7B】種々の具体化例に係る多数の誘電体層を備えたフィルタアレイの製造方法の流れ図である。
図8】種々の具体化例に係る一体形フィルタ-アンテナアレイの製造方法の流れ図である。
図9A】一製造段階におけるフィルタアレイの幾つかの部分の断面図である。
図9B】別の製造段階におけるフィルタアレイの幾つかの部分の断面図である。
図9C】別の製造段階におけるフィルタアレイの幾つかの部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明にあたり、本発明の一部をなす添付の図面を参照する。図面において、類似の記号は、文脈上別段の指定がなければ、類似のコンポーネントを示すのが通例である。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載された例示の実施形態は、本発明を限定するものではない。他の実施形態を利用することができ、本願において提供される発明内容の精神または範囲から逸脱することなく、他の変更を実施することができる。容易に理解されるように、本明細書において一般的に説明されるとともに図示された本発明の諸観点を多種多様な構成において配列し、交換し、組み合わせ、そして設計することができ、これらの全ては、明示的に意図されていて本発明の一部をなす。
【0009】
アクティブなフェーズドアレイアンテナ用途では、アンテナ素子および各アンテナ素子と関連した送信(または受信)機能において必要とされる電子部品は、好ましくは、単位アンテナ素子面積内に収まるほど小さい。単位アンテナ素子面積は、動作周波数およびアンテナビームの最大走査角に基づいている。例えば、約39GHzの“5G”セルラー周波数および約45゜のビーム走査角の場合、単位アンテナ素子面積は、約(0.6ラムダ)2または0.026平方インチ(1平方インチ=6.45cm2)である。一例を挙げると、かかる単位アンテナ素子面積は、0.01平方インチから0.08平方インチまでの範囲にあるのが良い。この場合、ラムダは、自由空間波長である。このアンテナ素子間隔は、45゜走査角にわたってフェーズドアレイアンテナ放射パターン中にグレーティングローブの発生を阻止するために使用できる最大値である。グレーティングローブは、望ましくない方向におけるアンテナ放射である。その結果、グレーティングローブの発生を阻止するとともに±45゜アンテナビーム走査を可能にするため、動作周波数として39GHzを利用した例示のアンテナは、1平方インチ(6.45cm2)あたり約38個以上の放射素子を有する。また、この単位アンテナ素子領域内に収まるのに適したサイズのフィルタおよび関連エレクトロニクス(例えば、増幅器および移相器)を設けるという難題もまた存在する。他の動作周波数は、例示として、6GHz(またはそれ以下)、28GHz、55~75GHz、120GHzを含む場合がある。
【0010】
マイクロ波およびミリ波フィルタは、典型的には、はんだ表面マウント、同軸コネクタ、または導波路接続方式を介して大型システム(例えば、送信および/または受信システム)の状態に結合する個々のまたは別々のコンポーネントとして設計されるとともに製作される。一般に、フィルタは、かかる別々のコンポーネントにおいて適当な物理的/電気的精度がないために、検査されてチューニングされるべき個々のフィルタをそれぞれ必要とする。しかしながら、個々の検査およびチューニングならびに1平方インチあたり38個のフィルタおよびアンテナ素子を有するフェーズドアレイアンテナ上への組立を実施することは、個々に検査されてチューニングされるべき非常に多くのフィルタが存在するために極めて困難な場合がある。さらに、幾つかのフェーズドアレイ用途では、アンテナ素子とアクティブな送信/受信回路との間のフィルタは、これらフィルタがフェーズドアレイアンテナの信号対雑音比(SN比)および範囲の劣化を引き起こす受け入れがたいほどの挿入損失を示す場合には採用されない。他方、フィルタをこのフロントエンドの場所に設けることは、アンテナシステムを干渉信号から保護する上で有用な場合がある。これは、干渉を排除する際のフィルタ性能と所望の信号に対する挿入損失との関係に基づくシステムトレードオフとなる。十分に小さなサイズ(例えば、アンテナ素子間隔制約)ならびにアレイコンポーネントとの一体化および電気的相互接続もまた重要な検討事項である。
【0011】
商用“5G”ワイヤレス通信向きのかつ通信衛星におけるミリ波またはマイクロ波フェーズドアレイの激増が予想されることにより、結果として密に間隔を置いた周波数で同時に動作する送信および/または受信アレイの高密度ネットワークが生じることが期待される。固有の干渉の問題を軽減するため、極めて低い挿入損失のフロントエンドフィルタ(アンテナ素子とアクティブな回路との間のフィルタ)が用いられるべきである。
【0012】
以下の説明は、高周波デバイス、特にミリ波またはマイクロ波フェーズドアレイアンテナで利用できるミリ波またはマイクロ波フィルタアレイに関する。フィルタアレイは、上述の他のフィルタ方式と関連した欠点を軽減しまたは回避する。特に、フィルタアレイは、サイズおよび集積化要求にあったこの周波数範囲内における従来型フィルタの約100~300の品質係数(Q)と比較して、約1000~約2000オーダーの高いQを有する。高Qにより、フィルタアレイは、極めて低い挿入損失を有することができる。例えば、フィルタアレイは、1dB未満(例えば、0.8dB、0.5dBなど)の挿入損失を有することができる。同様な排除性能を備えた状態で先行技術において具体化されたフィルタは、3dBを超える挿入損失を呈する場合があり、それによりこのフィルタは、このフロントエンドの場所で使用するには受け入れがたくなる。
【0013】
フィルタアレイは、フィルタ素子の個々のチューニングの必要性をなくす高精度製造技術を用いて製造可能である。その結果、高密度を有するフィルタアレイ、例えば高周波セルラー用途に使用されるべきフィルタアレイは、高い信頼性をもって製造可能である。高性能ミリ波またはマイクロ波フィルタのアレイを提供するため、材料特性、誘電体および金属の幾何学的形状の物理学的精度、およびアライメントならびに結合方法は、非常に再現性が高くなければならない。本明細書において説明する材料および方法は、これらの所望の属性を備えている。
【0014】
また、一体形フェーズドアレイフィルタ-アンテナが以下に説明され、このフィルタ-アンテナは、同一の一体形ユニットセル内にフィルタおよびアンテナ素子を有する。一体形フェーズドアレイフィルタ-アンテナは、高い利得、高いQ、および低い挿入損失を呈し、それにより一体形フェーズドアレイフィルタ-アンテナは、高周波“5G”セルラー用途に対して好適になることができる。
【0015】
また、フィルタアレイおよび一体形フェーズドアレイフィルタ-アンテナを製造する方法が以下に説明される。この製造方法は、高密度でのフィルタおよびアンテナ素子の高精度の位置決めおよびそれゆえに製作を可能にする高精度3Dレーザ照射方法を利用する。
【0016】
幾つかの実施形態では、高周波デバイスは、誘電体の第1の誘電体層中に形成されたフィルタユニットセルのアレイをさらに有し、フィルタユニットセルのアレイ中の第2のフィルタユニットセルが第1のフィルタユニットセルに隣接して位置決めされ、第2のフィルタユニットセルは、誘電体によって定められた空胴の第2の複数の側壁を有し、第2の複数の側壁のうちの少なくとも1つの側壁および第1の複数の側壁のうちの少なくとも1つの側壁は、複数の空胴のうちの一空胴を画定している。第2のフィルタユニットセルは、第2の複数の側壁の少なくとも幾つかの部分上に被着された第2の導電性側壁層をさらに有し、第2の導電性側壁層は、誘電体のうちの何割かを含む第2の共振空胴を定めている。第2のフィルタユニットセルはさらに、第1の表面上に形成されていて、第2の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに第2の導電性側壁層に電気的に接続されている第1の導電性層を有する。第2のフィルタユニットセルは、第1の表面上に形成された第2のRF I/O接点をさらに有し、第2のRF I/O接点は、第2のRF I/O接点の周囲の少なくとも一部分の周りに形成された第2の絶縁領域によって第1の導電性層から電気的に絶縁されている。
【0017】
幾つかの実施形態では、同一空胴内において、第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、第2の導電性側壁層のうちの少なくとも1つから間隔を置いて配置されている。幾つかの実施形態では、同一空胴内において、第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つと第2の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、同一空胴の少なくとも一部分を埋めるよう互いに接触している。
【0018】
幾つかの実施形態では、高周波デバイスは、第1の表面および第1の表面と反対側の第2の表面を備えた誘電体の第2の誘電体層をさらに有し、第2の誘電体層は、第1の誘電体層上に形成されていて、第2の複数の空胴を有し、第2の複数の空胴の各々は、第2の誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に延びる。第1のフィルタユニットセルは、第1の誘電体層の第2の表面上に形成されていて、第1の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに第1の導電性側壁層に電気的に接続されている第2の導電性層をさらに有し、第2の導電性層は、第1の孔を有し、第1のフィルタユニットセルは、第2の複数の空胴の第3の複数の側壁および第3の複数の側壁の少なくとも幾つかの部分上に形成された第3の導電性側壁層をさらに有し、第3の導電性側壁層は、誘電体のうちの何割かを含む第3の共振空間を定め、第3の導電性側壁層は、第1の誘電体層の第2の表面上に形成された第2の導電性層に電気的に接続され、第1の孔は、第1の共振空間と第3の共振空間との間に位置決めされている。
【0019】
幾つかの実施形態では、第2の誘電体層の第1の表面の少なくとも一部分は、第1の誘電体層の第2の表面に結合されている。幾つかの実施形態では、高周波デバイスは、第1の誘電体層の第1の結合面をさらに有し、第1の結合面は、第1の誘電体層の第2の表面の少なくとも一部分および第2の導電性層の一部分を含む。幾つかの実施形態では、高周波デバイスは、第2の誘電体層の第2の結合面をさらに有し、第2の結合面は、第2の誘電体層の第1の表面の少なくとも一部分および第2の誘電体層の第1の表面上に形成されたパターン付け金属層の少なくとも一部分を含む。幾つかの実施形態では、第1の誘電体層の第1の結合面は、第2の誘電体層の第2の結合面に結合されている。幾つかの実施形態では、第1の共振空間の中心と第3の共振空間の中心は、動作周波数の4分の1波長よりも短い距離だけ隔てられている。
【0020】
幾つかの実施形態では、誘電体は、光学的に透明な誘電体である。幾つかの実施形態では、誘電体は、少なくとも2の比誘電率を有する。幾つかの実施形態では、誘電体は、溶融石英、水晶、単結晶炭化ケイ素、または単結晶サファイアのうちの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、第1の複数の側壁は、4つの側壁を含む。幾つかの実施形態では、第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、不連続である。幾つかの実施形態では、第1の導電性側壁層のうちの少なくとも1つは、メッシュパターンまたは構造を有する。幾つかの実施形態では、第1のフィルタユニットセルは、第1の誘電体層の第2の表面上に形成されていて、第1の誘電体層の第1の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに第1の導電性側壁層に電気的に接続されているアンテナグラウンドプレーンと、第1の誘電体層の第2の表面上に形成されたアンテナ素子とを有し、アンテナ素子は、アンテナ素子の周囲の少なくとも一部分の周りに形成されたアンテナ素子絶縁領域によってアンテナグラウンドプレーンから電気的に絶縁されている。幾つかの実施形態では、アンテナ素子は、第1のRF I/O接点と整列している。
【0021】
幾つかの実施形態では、高周波デバイスは、第1の表面および第1の表面と反対側の第2の表面を備えた誘電体のアンテナ誘電体層をさらに有し、アンテナ誘電体層は、第1の誘電体層上に形成され、アンテナ誘電体層は、アンテナ層空胴を有し、アンテナ層空胴の各々は、アンテナ誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に延びる。第1のフィルタユニットセルは、第1の誘電体層の第2の表面上に形成されていて、第1の誘電体層の第1の共振空間の少なくとも一部分を覆うとともに第1の導電性側壁層に電気的に接続されている第2の導電性層をさらに有し、第2の導電性層は、第1の孔を有する。第1のフィルタユニットセルは、アンテナ層空胴の複数のアンテナ層側壁をさらに有する。第1のフィルタユニットセルは、複数のアンテナ層側壁の少なくとも幾つかの部分上に形成されたアンテナ層導電性側壁層をさらに有し、アンテナ層導電性側壁層は、誘電体のうちの何割かを含むアンテナ層共振空間を定め、アンテナ層導電性側壁層は、第1の誘電体層の第2の表面上に形成された第2の導電性層に電気的に接続され、第1の孔は、第1の共振空間とアンテナ層共振空間との間に位置決めされている。第1のフィルタユニットセルは、アンテナ誘電体層の第2の表面上に形成されていて、アンテナ層共振空間の少なくとも一部分を覆うとともにアンテナ層導電性側壁層に電気的に接続されているアンテナグラウンドプレーンおよびアンテナ誘電体層の第2の表面上に形成されたアンテナ素子をさらに有し、アンテナ素子は、アンテナ素子の周囲の少なくとも一部分の周りに形成されたアンテナ素子絶縁領域によってアンテナグラウンドプレーンから電気的に絶縁され、アンテナ素子は、第1のRF I/O接点と整列している。幾つかの実施形態では、第1の導電性層から電気的に絶縁されている第1のRF I/O接点は、第1のRF I/O接点と第1の導電性層との間に少なくとも1014オームの抵抗を有する。幾つかの実施形態では、第1の導電性側壁層は、銅、金、銀、またはアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、高周波デバイスを形成する方法は、第2の光学的に透明な誘電体層を設けるステップをさらに含み、第2の光学的に透明な誘電体層は、第1の表面および第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面とは反対側の第2の表面を備え、本方法は、第1の光学的に透明な誘電体層の第2の表面を第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面に結合するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、レーザを用いて第2の光学的に透明な誘電体層中の第2の三次元構造体を照射するステップをさらに含み、第2の三次元構造体は、第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる第2の複数の側壁領域を含む。幾つかの実施形態では、本方法は、第2の三次元構造体をエッチングして第2の三次元空胴構造を形成するステップおよび金属を第2の三次元空胴構造内に被着させて第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる少なくとも1つの第2の導電性側壁層を形成するステップをさらに含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、本方法は、金属を第2の光学的に透明な誘電体層の表面上に被着させるとともにパターン付けして第2のRF I/O領域を形成するとともに第2のRF I/O領域の周囲の周りにかつ第2のRF I/O領域から電気的に絶縁された状態で第2のグラウンドプレーンを形成するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、金属を第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面上に被着させるとともにパターン付けして第3のグラウンドプレーンを形成するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、金属を第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面上に被着させるとともにパターン付けして第2の金属層孔を提供するステップをさらに含み、この第2の金属層孔は、第1の光学的に透明な誘電体層中の共振空間を第2の光学的に透明な誘電体層中の共振空間に結合する。幾つかの実施形態では、本方法は、第1の光学的に透明な誘電体層中の共振空間を第2の光学的に透明な誘電体層中の共振空間に結合する結合構造体を取り付けるステップをさらに含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、本方法は、金属を第2の光学的に透明な誘電体層の第1の表面上に被着させるとともにパターン付けして第2の結合面を形成するステップおよび第1の光学的に透明な誘電体層の第2の表面上の第2の金属層をパターン付けして第1の結合面を形成するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、第1の結合面を第2の結合面に結合することによって第1の光学的に透明な誘電体層を第2の光学的に透明な誘電体層に結合するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、第1の結合面に設けられた孔と第2の結合面に設けられた孔とを整列させるさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、第1の光学的に透明な誘電体層または第2の光学的に透明な誘電体層の複数の部分が対応の第1の光学的に透明な誘電体層または第2の光学的に透明な誘電体層の誘電率の平均値から0.5パーセント以内に対応した測定値を有することを確認するステップをさらに含む。
【0025】
幾つかの実施形態では、本方法は、照射によって、第1の光学的に透明な誘電体層または第2の光学的に透明な誘電体層に寸法が1ミクロンから10ミクロンまでの範囲の欠陥を導入するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、レーザを用いて、第1の光学的に透明な誘電体層中の第1の三次元構造体を照射して第1または第2の光学的に透明な誘電体層の被照射部分に対して少なくとも200:1のエッチング選択性を生じさせるステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、スパッタリングまたはメッキ技術を用いて第1の三次元空胴構造中に金属を被着させるステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、金属を第1の三次元空胴構造中に被着させるステップをさらに含み、この金属は、接着層を覆って被着された銅、金、銀、またはアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、本方法は、金属を第1の三次元空胴構造中に被着させて0.5~3ミクロンの厚さを有するようにするステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、本方法は、無電解表面酸化バリヤ層を被着させるステップをさらに含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、本方法は、第3の光学的に透明な誘電体層を設けるステップをさらに含み、第3の光学的に透明な誘電体層は、第1の表面と第3の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と反対側の第2の表面を有する。本方法は、レーザを用いて、第3の光学的に透明な誘電体層中の第3の三次元構造体を照射するステップをさらに含み、第3の三次元構造体は、第3の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と第2の表面の間に少なくとも部分的に延びる複数の側壁領域を有する。本方法は、第3の三次元構造体をエッチングして第3の三次元空胴構造を形成するステップをさらに含む。本方法は、金属を第3の三次元空胴構造に被着させて第3の光学的に透明な誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる少なくとも1つの第3の導電性側壁層を形成するステップをさらに含む。本方法は、第2の光学的に透明な誘電体層の第2の表面を第3の光学的に透明な誘電体層の第1の表面に結合するステップをさらに含む。
【0027】
フィルタアレイ
【0028】
図1は、例示のフェーズドアレイ送信器100を示している。フェーズドアレイ送信器100は、3つの部分または層、すなわち、アンテナアレイ層102、フィルタアレイ層104、および回路層106を有する。アンテナ層は、二次元の格子様式に配列されたアンテナ素子108のアレイを有するのが良い。アンテナ素子108は、パッチアンテナ素子を含むのが良く、これらパッチアンテナ素子は、アンテナアレイの放射表面を形成する導体パッチまたはパッドを有するのが良い。幾つかの実施形態では、アンテナ素子108は、アンテナアレイ層102の表面に直角または垂直に延びる放射素子を含むのが良い。隣り合うアンテナ素子108相互間の間隔は、所望の動作周波数に基づくのが良い。例えば、動作周波数の波長λの場合、アンテナ素子108は、同一のロウ(列)または(行)における任意の2つの隣り合うアンテナ素子108の中心が約λ/2(自由空間内において)に等しい距離だけ隔てられるように配置されるのが良い。例えば5G用途の場合、導波周波数のうちの1つは、39GHzであり、その結果、約0.4インチ(10.2mm)のλが得られる。
【0029】
回路層106は、信号をフィルタアレイ層104に提供したりこれから信号を受け取ったりする集積回路を有するのが良い。回路層106は、送信および/または受信回路、増幅回路、移相器回路などを含む集積回路を有するのが良い。幾つかの実施例では、回路層106は、集積回路のアレイを有するのが良く、アレイ中の各集積回路は、フィルタアレイ層104中の対応のフィルタ素子およびアンテナアレイ層102中のアンテナ素子に関する信号を処理する。幾つかの実施例では、回路層106中の各集積回路は、複数の対応のフィルタ素子および対応のアンテナ素子と関連した信号を処理するのが良い。例えば、回路層106中の各集積回路は、4つのアンテナ素子108および4つの対応のフィルタ素子と関連した信号を処理するのが良い。各集積回路と関連したアンテナ素子またはフィルタ素子の数は、フェーズドアレイ送信器100の動作周波数によって課される表面積および寸法の制約に基づくのが良い。一実施例として、4つのアンテナ素子108および4つの対応のフィルタ素子と関連した信号の処理専用の集積回路は、約λ/2×λ/2の寸法を有するのが良い。39GHzでは、寸法は、約0.15インチ×0.15インチ(3.81mm×3.81mm)であるのが良い。幾つかの実施例では、30GHzでは、集積回路(IC)は、回路層106上のこれらのパッケージを含めて、回路層の全面積の約36%を占めるが、39GHzでは、約64%まで増大し、その結果、約60ミルの間隙が生じる。短い高周波(RF)経路長を維持するとともにRF ICとフィルタおよびアンテナ素子相互間の経路長を等しくするためには、ICは、単位素子面積よりも幾分小さくあるべきである。幾つかの実施例では、アノキアウェーブ(Anokiawave)社によって製造された集積受信器ICをある特定の用途に利用することができる。
【0030】
フィルタアレイ層104は、アンテナ層102上のアンテナ素子108の配列とほぼ同じやり方で配列されるのが良いフィルタユニットセルのアレイを有するのが良い。フィルタアレイ層104は、アンテナ層102中のアンテナ素子108と同数のフィルタユニットセルを有するのが良い。各フィルタユニットセルは、空間的に効率的な形態が得られるようアンテナ素子のフットプリントまたは単位面積内に収まるのが良い。フィルタユニットセルは、アンテナ層上の対応のアンテナ素子108と整列するよう位置決めされるのが良い。フィルタアレイ層104は、アンテナ層102とやり取りされる信号を濾波するのが良い。
【0031】
図2は、例示のフィルタアレイ層104の断面図である。フィルタアレイ層104は、フィルタユニットセルのアレイを有するのが良い。例えば、図2は、第1のフィルタユニットセル202a、第2のフィルタユニットセル202b、および第3のフィルタユニットセル202c(まとめて「フィルタユニットセル202」という)を示している。各フィルタユニットセルは、誘電体で形成された少なくとも1つの誘電体層を有する。例えば、図2のフィルタユニットセル202は、2つの誘電体層、すなわち、第1の誘電体層220および第2の誘電体層218を有する。誘電体層は、光学的に透明な誘電体、例えば溶融石英、水晶、単結晶炭化ケイ素、単結晶サファイアなどで作られるのが良い。幾つかの実施形態では、誘電体層は、結晶性(例えば、単結晶で作られる)誘電体および/または等方性である物質の誘電体で作られるのが良い。幾つかの実施形態では、誘電体層は、熱伝導率が1Kあたり少なくとも1ワット・メートルの誘電体(例えば、溶融石英、炭化ケイ素、サファイア)で作られるのが良い。誘電体層は、既定のしきい値を超える温度安定性(例えば、100ppm/℃未満または20ppm/℃未満の周波数の温度係数に対応している)を有する誘電体で作られるのが良い。誘電体層は、低い損失正接、例えば0.002未満(例えば、0.0001)の損失正接を有する誘電体で作られるのが良い。誘電体層は、現在回路板で用いられている誘電体よりも固形かつ硬質である誘電体(例えば、柔軟性があり、軟質のまたはドリル加工可能な誘電体)で作られるのが良い。熱的プロセスまたは他のプロセス中に機械的に変形することのない硬質な誘電体は、結合孔特徴の寸法上の特徴の変化または結果としての層間位置合わせもしくは整列誤差、または結果としてフィルタ周波数応答欠陥をもたらす場合のある共振空間の寸法の狂いを最小限に抑えることができる。例えば、誘電率が3.8の物質で構成された誘電体層を有する状態で製作された39GHzフィルタは、約0.080インチ(2.032mm)の共振空間x-y寸法を有するのが良く、0.5%未満の寸法精度は、結果として、1インチ(25.4mm)の4/10,000の寸法公差が得られるはずである。幾つかの実施例では、誘電体層の比誘電率(場合によっては、一般に、誘電率と呼ばれる)は、少なくとも約2(例えば、2から100までの範囲にある値)であるのが良い。単一の誘電体層内に収められかつ有限厚さの壁を有するとともにアンテナ単位素子よりも小さい(~λ/2)共振器(フィルタの構成部品)の実現を可能にするためには、誘電率は、1よりも幾分大きく(例えば、2.1、3.5または別の値を超え)なければならない。フィルタアレイの幾何学的形状は、任意適当な誘電体(例えば、温度安定性誘電率を有する低損失誘電体)によるフィルタの製作を支援するのが良い。誘電率の高い物質を用いると、フィルタ共振器の物理的サイズを減少させ、かくしてフィルタサイズを減少させることができる。誘電体は、1000以上のQを有するフィルタ共振器を形成するよう選択されるのが良い。
【0032】
各ユニットセル202は、このユニットセルの底面と頂面との間に延びる多くの導電性側壁層を有するのが良い。例えば、第1のユニットセル202aは、第1の誘電体層220中に形成された第1の導電性側壁層222,224を有する。第2のユニットセル202bは、これまた第1の誘電体層220中に形成された第2の導電性側壁層230,232を有する。以下にさらに詳細に説明するように、導電性側壁層は、第1および第2の誘電体層220,218内に設けられた空胴の側壁上に形成されるのが良い。導電性側壁層は、任意の導電性材料、例えば銅、アルミニウム、銀、金、または導電性合金で構成できる。可能な限り最も高い導電性を有する金属を用いて最大フィルタ共振器Qを提供するのが良い。第1の導電性側壁層222,224は、第1の誘電体層220中の第1のユニットセル202aの共振空間208a(「第1の共振空間」とも呼ばれる)を画定するのが良く、第2の導電性側壁層230,232は、第1の誘電体層220中の第2のユニットセル202bの共振空間238aを画定する。
【0033】
ユニットセル202の底面234(または第1の誘電体層220の第1の表面)は、第1のグラウンドプレーン206(「第1の導電性層」とも呼ばれる)を有し、この第1のグラウンドプレーンは、導電性材料で作られた金属化層である。第1のグラウンドプレーン206ならびにグラウンドプレーン一般は、接地電位に電気的に接続可能な導電性表面であるのが良い。第1のユニットセル202aの底面234は、第1の高周波入力/出力(RF IOまたはI/O)接触パッド204を有するのが良く、このRF IO接触パッド204は、第1の絶縁領域242によって第1のグラウンドプレーン206から電気的に絶縁されている。同様に、第2のユニットセル202bの底面は、これまた第2の絶縁領域246によって第1のグラウンドプレーン206から電気的に絶縁された第2のRF IO接触パッド244を有するのが良い。幾つかの実施形態では、電気的絶縁は、少なくとも1014オームまたは他の何らかの規定された値を意味する場合がある。同様に、ユニットセル202の頂面236は、第2のグラウンドプレーン214および/または第2のグラウンドプレーン214から電気的に絶縁された第2のRF IO接触パッド216を有するのが良い。幾つかの実施形態では、金属化トレースを第1のグラウンドプレーン206と第1のRF IO接触パッド204との間に接続して動作周波数(例えば、39GHz)でインダクタンス結合を提供するのが良い。しかしながら、かかる実施形態では、金属化トレースが設けられているにもかかわらず、第1のRF IO接触パッド206は、金属化トレースを設けることによりユニットセル202の電圧定在波比(VSWR)が3:1超に変えられない限り、第1のグラウンドプレーン206から電気的に絶縁されているとみなすことができる。金属化トレースが全く設けられていないユニットセル202aのVSWRは、1:1から2:1までの範囲にあるのが良い。幾つかの実施形態では、金属化トレースは、0.5ミリメートル未満の幅を有するのが良い。1つまたは2つ以上の金属化トレースの各々を第1のグラウンドプレーン206もしくは第1のRF IO接触パッド204のために用いられた材料またはこれとは異なる材料で作ることができる。幾つかの実施形態では、金属化トレースは、長さと幅の比が少なくとも3:1である幅の狭いトレースとして形成できる。第1のRF IO接触パッド216は、上述の第1のRF IO接触パッド204および第1のグラウンドプレーン206の電気的絶縁と類似した仕方で第2のグラウンドプレーン214から電気的に絶縁されているとみなすことができる。第1および第2のRF I/O接触パッド204,216は、回路層106上の集積回路およびアンテナ層102上のアンテナ素子108への電気的接点を提供することができる。
【0034】
ユニットセル202は、第1の孔210を含む中間金属化層212(「第2の導電性層」または「第3のグラウンドプレーン」とも呼ばれる)を有するのが良い。中間金属化層212は、底面234と反対側の第1の誘電体層220の第2の表面上に形成されるのが良い。中間金属化層212は、第1の誘電体層220と第2の誘電体層218との間に位置決めされかつ第1の導電性側壁層222,224に電気的に接続されている。中間金属化層212は、第1の誘電体層220中の第1のユニットセル202aの共振空間208aの少なくとも一部分を覆っている。第1のユニットセル202aは、第2の誘電体層218の2つの互いに反対側に位置する表面相互間に延びる第3の導電性側壁層226,228を有する。第3の導電性側壁層226,228は、第2の誘電体層218中の第1のユニットセル202の共振空間208b(「第3の共振空間」とも呼ばれる)を画定している。第1の孔210は、第1のユニットセル202aの共振空間208a,208b相互間に位置決めされている各共振空間は、ユニットセルフィルタ伝達関数の極をもたらすことができる。2つの共振空間が図2に示されているが、幾つかの実施例では、ユニットセル202は、共振空間を1つだけ有しても良くまたは3つ以上の共振空間を有しても良い。共振空間は、2つの誘電体層218,220の誘電体内に形成されている。追加の誘電体層をユニットセル202に追加すると、追加の共振空間を提供することができる。追加の共振空間を設けることにより、ユニットセル202の周波数応答の勾配を増大させることができる。その結果、ユニットセルの選択性を高めることができる。幾つかの実施例では、ユニットセルの挿入損失は、共振空間のQの逆関数であるのが良い。したがって、共振空間のQを増大させることにより、ユニットセル202の挿入損失を減少させることができる。共振空間は各々、所望のフィルタ応答を実現するために必要に応じて制御された共振周波数を有することができる。
【0035】
フィルタアレイ104の各フィルタは、1つまたは2つ以上の共振器を有するのが良く、制御された結合素子が1つまたは2つ以上の共振器を相互接続し、各フィルタは、制御されたカップリングを含む高周波入力または出力(RF I/O)を有するのが良い。フィルタからの所望の周波数応答を達成するため、各共振器は、特定の所定の共振周波数を有するべきであり、各共振器相互間のカップリングならびに入力接点と第1の共振器とのカップリングおよび出力接点と最後の共振器とのカップリングは、特定のかつ所定の値のものであるべきである。各共振器は、上述の共振器空間208または共振空胴に対応するのが良い。共振空間または共振空胴は、三次元空胴または導波路フィルタのビルディングブロックであるのが良い。共振空間は、例えば金属壁(例えば、222および224)と表面グラウンドプレーン(例えば、206,212および214)の組み合わせによって形成された実質的に金属で被覆されまたは密閉された誘電体充填容積を有するのが良い。共振空間は、一般に、x-y平面内のほぼλ/2×λ/2の物理的寸法を有するのが良く、この共振空間は、形状が例えば長方形または円形であるのが良い。誘電体充填共振空間に関し、λ/2に対応した物理的寸法を、これに係数(1/√(誘電率))を乗算して減少させる。それゆえ、かかる誘電体充填共振空間の使用により、自由空間λ/2アンテナ素子間隔、すなわち、フィルタアレイ中のフィルタの公称間隔と比較して、対応のフィルタ構造体のサイズを減少させることができる。幾つかの実施形態では、共振空間は、共振空間の幅の1/2未満の高さまたは厚さを有するのが良い。例えば、第1の共振空間208aは、第1のグラウンドプレーン206と中間金属化層212との間の距離が第1の導電性側壁層222,224相互間の間隔の1/2未満である寸法形状を有するのが良い。幾つかの実施形態では、第1の共振空間208aの中心と第3の共振空間208bの中心との間の距離は、動作周波数の1/4波長未満であるのが良い。
【0036】
結合構造体は、本明細書において開示されているように、共振空間相互間の金属接地層中に孔(例えば、孔210)または「アイリス(Iris)」を有するのが良い。孔を様々な別の結合構造体で置き換えても良く、かかる結合構造体としては、2つの誘電体層220,218中の共振空間相互間に延びる金属ピンが挙げられる。例えば、金属ピンは、第1の共振空間208aの中心から孔210を通り、そして第3の共振空間208bの中心まで延びるのが良い。幾つかの実施形態では、金属ピンは、任意の2つの点、すなわち、第1の共振空間208a内の点と第3の共振空間208b内の別の一点との間に延びるのが良い。金属ピンは、誘電体内に埋め込まれるのが良い。金属ピンは、孔210に代えてまたはこれに加えて利用でき、かかる金属ピンは、磁界もしくは電解カップリングまたはこれらの組み合わせを形成するよう追加の自由度を与えることができる。結合素子または結合構造体のもう1つの代替手段としては、エッチングされた穴(2つの誘電体層220,218相互間、例えば、2つの共振空間208a,208b相互間に位置決めされる)を有するのが良く、このエッチングされた穴は、金属化される(例えば、エッチングされた穴の側壁は、金属でメッキされる)。しかしながら、孔(例えば、第1の孔210)は、代替手段のうちでも構成するのが最も簡単であるとみなされ得る。孔および代替手段を以下において一般に結合構造体という。本開示における種々の説明は、例示により孔を用いまたは言及する場合があるが、任意の結合構造体が利用できることは理解されるべきである。
【0037】
ユニットセル202の厚さまたは高さは、ユニットセル202のQに影響を及ぼす場合がある。例えば、Qは、ユニットセル202の厚さの増大につれて増大することができる。しかしながら、厚さに対するQの増大率は、厚さがx-y方向におけるユニットセルの寸法の大きさの半分である値に近づくにつれて非漸近的に減少する場合がある(厚さは、x-y平面に直角なz寸法方向に測定される)。一実施例として、39GHzではかつx-y寸法が1インチの約1/10である場合、共振空間の誘電体厚さは、約15ミルまたは約50ミル以下であるように選択されるのが良い。
【0038】
第1の導電性側壁層222,224は、約0.1ミル以上の厚さを有するのが良い。2つの隣り合うユニットセル(例えば、第1のユニットセル202aおよび第2のユニットセル202b)相互間の金属壁を単一の幅の広い壁で形成されても良く(例えば、空胴の一方の側壁/部分を金属化することによって、または空胴を金属で部分的にまたは完全に満たすことによって)、もしくは、2つの別々の壁によって形成されても良く(例えば、空胴の2つの対向した側壁/2つの対向した部分を金属化することによって、または1対の隣り合う空胴の各々の一方の側壁/部分を金属化することによって、または1対の隣り合う空胴の各々を金属で部分的にまたは完全に満たすことによって)、あるいは、多数の別々の金属化空胴(例えば、ひとまとまりとなって金属壁を形成するよう列をなしてまたはフォーメーションをなして配列された任意の空胴)によって形成されても良く、このことは、アンテナ素子間隔と関連した所望の物理的間隔を維持しながら、あらかじめ所定の共振周波数を有するそれぞれの共振空間を定めることと等価である。空胴および導電性側壁のうちの1つまたは2つ以上は、誘電体層の厚さ全体を貫通しまたはこの厚さに沿って部分的に形成されるのが良い。誘電体層中の空胴および導電性側壁の各々を任意の形状または寸法のものとして形成することができる。金属化は、空胴の側壁の一部分に対して実施されても良く、あるいは側壁全体に対して実施されても良い。グラウンドプレーン206,214およびRF IO接触パッドは、約0.1ミル以上の厚さを有するのが良い。孔210のサイズは、フィルタの所望の帯域幅に基づくのが良い。幾つかの実施例では、孔210の幅は、孔210の平面内の共振空間の寸法の約20%~25%であるのが良い。孔210は、任意の形状、例えば円形、楕円形、および多角形(定形または不定形)のものであって良い。幾つかの実施例では、フィルタアレイ層104は、32個、64個、128個、または256個のユニットセル202を有することができる。例えば、256個のユニットセルを有するフィルタアレイは、39GHzでは約2.4インチ×2.4インチ(6.1cm×6.1cm)のサイズを有するのが良い。
【0039】
幾つかの実施形態では、導電性側壁層(例えば、第1の導電性側壁層222,224、第2の導電性側壁層230,232、および第3の導電性側壁層226,228)は、不連続であるのが良い。特に、導電性側壁層は、導電性側壁層が被着された空胴の対応の側壁の少なくとも幾つかの部分が導電性材料によって覆われることがないよう孔、穴または隙間を有するのが良い。幾つかの実施形態では、導電性側壁層は、メッシュパターンまたは構造を有するのが良い。すなわち、導電性側壁層は、一定間隔を置いた孔を備えたパターンまたは構造を有するのが良い。幾つかの実施形態では、導電性側壁層は、互いに間隔を置いて配置された1組の導電性金属のストリップを有するのが良い。
【0040】
図3は、図2に示されたフィルタアレイ104の平面図である。個々のユニットセルの境界が破線で示されている。図3は、第2のグラウンドプレーン214およびRF IO接触パッド216を有する第1のユニットセル202aを示している。RF IO接触パッド216は、第2のグラウンドプレーン214の周囲内に位置決めされるとともに絶縁領域302によって第2のグラウンドプレーン214から電気的に絶縁されている。第1のユニットセル202aは、図2に示された2つの第3の導電性側壁層226,228に加えて、2つの追加の第3の導電性側壁層304,308を有している。
【0041】
幾つかの実施形態では、第2の誘電体層218の頂面236の平面に垂直である第3の導電性側壁層226,228,304,308の少なくとも幾つかの縁は、完全に密閉された共振空間または共振空胴を形成するよう隣接の第3の導電性側壁層の縁と当接しないのが良い。2つの導電性側壁層の隣り合う縁を当接させまたはかかる隣り合う縁を互いに接触状態にするため、これら隣り合う縁を隔てる誘電体をエッチングして除去する必要がある。しかしながら、誘電体層を4つの全ての側部を完全に貫通して完全にエッチングしようとした場合(完全に密閉された共振空間または共振空胴を形成するため)、共振空胴を形成している誘電体は、誘電体層から分離し、そして誘電体層から落ちる場合がある。完全密閉共振空胴の代わりに、誘電体層中の空胴をエッチングして金属被膜を被着させて導電性側壁を形成する一方で、幾分かの誘電体を空胴相互間にまたは空胴の周りに維持して(例えば、ウェブまたは他の支持構造体を形成するよう隙間内に)誘電体層中の共振空胴を構造的に支持する。導電性側壁層を形成するための金属被膜は、薄手であるのが良い(例えば、フィルタのために最小限の挿入損失を達成するよう動作周波数でスキン深さの~3倍、この場合、スキン深さは、電流密度が動作周波数で導電性側壁層の表面のところの電流密度の既定の割合(例えば、37%)である導電性側壁層の深さを意味している)。空胴は、機械的強度を高くするとともに熱伝導率を高めるために全体が金属、例えば銅でメッキされるのが良い。少なくとも幾つかの隣り合う導電性側壁層(または空胴)相互間に誘電体の幾分かの領域を残して隣り合う金属化壁(または空胴)を隔てることによって、共振空胴を構造体中に機械的に保持することができ、しかも単一の誘電体層内に形成された共振空胴のアレイ中に一構造体として処理することができる。それゆえ、第3の導電性側壁226,228,304,308のうちの少なくとも2つは、第2の導電性層218の誘電体(例えば、第2の誘電体層218の頂面236と底面との間の領域に位置する)を含む隙間だけ隔てることができる。非限定的な一実施例として、第3の導電性側壁は、1対の隣り合う縁を除き全てを互いに当接させるのが良く、それにより部分的に密閉された共振空間が中間に位置した状態でU字形またはC字形に類似した形状を形成する。限定された量の離隔距離または限定された数の隙間は、依然として、実質的に連続した金属壁を形成することができ、かかる金属壁は、高いQ共振器の実現を可能にし、その結果、低いフィルタ挿入損失の実現を達成する。
【0042】
上述の具体化例は、メッキ金属付きの機械的に開けられた穴(すなわち、円形のバイア)を備えた印刷回路板(PCB)層の使用とは対照的である。機械的に開けられた穴は、フィルタの所望のサイズおよび構造的特徴を達成するのに十分な精度を提供することはなく、その結果、周波数精度およびフィルタ周波数応答が低下するとともに電圧定在波比(VSWR)が低下し、その結果、過剰の信号損失が生じる。さらに、機械的ドリルによって達成可能な穴の表面の仕上がりは、本明細書において開示するエッチング技術よりも劣り、かかる仕上がりは、表面上の金属被膜の被着に悪影響を及ぼすとともに金属および/または誘電体の幾何学的形状の精度および寸法に悪影響を及ぼす場合がある。加うるに、PCB材料の誘電損失は、誘電体層について本明細において提案される材料と比較して大きい。
【0043】
一体形フィルタ-アンテナアレイ
【0044】
図1図3は、回路層とアンテナ層との間に位置決め可能なフィルタユニットセルのアレイを含むフィルタ層の例示の実施形態を上述した。以下の説明は、アンテナ素子がフィルタアレイに組み込まれて一体形フィルタ-アンテナアレイを形成する例示の実施形態に関する。
【0045】
図4は、例示の一体形フィルタ-アンテナアレイ400の断面図である。図4は、フィルタ-アンテナアレイ400の3つのユニットセル、すなわち、第1のユニットセル402a、第2のユニットセル402b、および第3のユニットセル402c(ひとまとめに「フィルタ-アンテナユニットセル402」という)を示している。幾つかの観点では、フィルタ-アンテナアレイ400は、第1のフィルタ-アンテナアレイ400のフィルタ-アンテナユニットセル402(例えば、第1のユニットセル402a)が2つの誘電体層220,218、導電性側壁層222,224,226,228、入力RF IO接触パッド204、および第1のグラウンドプレーン206、第1の中間グラウンドプレーン212、および第1の孔210、ならびに誘電体内の2つの共振空間208a,208bを有するのが良いという点で、図1に示されたフィルタアレイ200に類似している。しかしながら、第2の誘電体層218の頂面236上に別のRF IO接触パッドを含むフィルタアレイ200とは異なり、フィルタ-アンテナアレイ400は、これに代えて、図1を参照して上述したアンテナ素子108に類似しているのが良いアンテナ素子416を有する。アンテナ素子416は、高周波信号の送受信のためのパッチ放射体を形成することができる。加うるに、図4に示されたフィルタ-アンテナアレイ400は、追加の第2の中間グラウンドプレーン412および孔410、追加の第3の誘電体層420(「アンテナ誘電体層」ともいう)、ならびに中間グラウンドプレーン412および第2のグラウンドプレーン214に電気的に接続された追加の第4の導電性側壁422,424(「アンテナ層導電性側壁層」ともいう)を有する。第4の導電性側壁422,424は、第3の誘電体層420中の誘電体によって定められた空胴の複数のアンテナ層側壁(図9A図9Cを参照して以下に説明する側壁912に類似しているが、第3の誘電体層420中に形成される)上に被着可能である。その結果、第1のフィルタ-アンテナユニットセル402aは、3極フィルタを形成する3つの共振空間208a,208b,208cを有する。この実施形態により、空胴裏打ちパッチアンテナ素子の実現ならびにアンテナ素子性能を高めるとともに望ましくないアンテナ素子相互作用(相互カップリングとして知られている)を減少させる遮蔽を可能にする。
【0046】
幾つかの実施形態では、第1のフィルタ-アンテナユニットセル402aは、図2のフィルタアレイ200に示された共振空間と同様の2つの共振空間だけを有するよう構造化されているのが良い。かかる場合、フィルタ-アンテナアレイ400は、第2の誘電体層218を有さないのが良く、第3の誘電体層(「アンテナ誘電体層」とも呼ばれる)420は、第1の誘電体層220上に直接設けられるのが良い。かかる実施形態では、第4の導電性側壁層422,424は、第3の共振空間208c(「アンテナ層共振空間」とも呼ばれる)を画定するのが良くかつ第1の誘電体層220上に形成されたグラウンドプレーン212および第3の誘電体層420の第2の表面または頂面上に形成された第2のグラウンドプレーン214に電気的に接続されるのが良い。この場合、第1の孔210は、第1の共振空間208aと第3の共振空間208cとの間に位置決めされるとともにこれらを互いに結合するのが良い。幾つかの実施形態では、フィルタアンテナアレイ400は、共振空間208aを1つしか含まないのが良い。かかる場合、フィルタ-アンテナアレイ400は、第2および第3の誘電体層218,420を含まないのが良い。第2のグラウンドプレーン214は、アンテナグラウンドプレーンとして機能するのが良く、かつこれとは異なり、第1の誘電体層220の頂面上にアンテナ素子416と一緒に形成されるのが良い。第2のグラウンドプレーン214は、第1の導電性側壁層222,224に電気的に接続されるのが良い。
【0047】
幾つかの実施例では、第1のユニットセル402aは、4つ以上の共振空間を有するのが良い。アンテナ素子を、フィルタを含む同一のパッケージ(誘電体層の)内にまたはこの上に組み込むことによって、フィルタ-アンテナアレイ400は、別個のアンテナ層、例えば図1に示されているアンテナ層102を必要としない。この実施形態は、アンテナ素子ユニットセル領域内に任意の数の共振器を備えたフィルタの製作を可能にし、それにより、高い選択性および低損失フィルタを実現するための自由度を提供する一方で、さらに、低コストフェーズドアレイ、例えば“5G”商用通信用途に使用される低コストフェーズドアレイに好ましい「シングルボード」または「タイル」アレイ製作方法を採用する。これは、例えば一体形フィルタ-アンテナアレイの製造コストおよび製造時間を減少させることができる。一体形フィルタ-アンテナアレイ400の種々の要素の寸法形状は、図2に示されたフィルタアレイ200に関して上述した対応の素子の寸法形状とほぼ同じである。
【0048】
アンテナ素子416の寸法形状は、フィルタ-アンテナアレイの動作周波数に基づくのが良い。非限定的な一実施例を挙げると、39GHz動作向きのパッチアンテナ素子は、誘電率が3.8の誘電体として溶融石英を用いる具体化例について約0.090平方インチ(58.05mm2)のx-y寸法を有するのが良い。図5は、図4に示された一体形フィルタ-アンテナアレイ400の平面図である。個々のフィルタ-アンテナユニットセルの境界が破線で示されている。この平面図は、図4に示された第4の導電性側壁422,424に加えて2つまたは3つ以上の第4の導電性側壁508,504を示している。アンテナ素子416は、第2のグラウンドプレーン214(「アンテナグラウンドプレーン」とも呼ばれる)の周囲内に位置決めされている。しかしながら、アンテナ素子416は、図4に示された誘電体層420の誘電体で形成されている絶縁領域502(「アンテナ素子絶縁領域」とも呼ばれる)によって第2のグラウンドプレーン214から電気的に絶縁されている。第1のRF IO接触パッド204および第1のグラウンドプレーン206の電気的絶縁に関して上述したように、金属トレースがアンテナ素子416と第2のグラウンド214との間に導入されるのが良く、他方、このアンテナ素子と第2のグラウンドプレーンとの電気的絶縁を依然として維持するのが良い。すなわち、アンテナ素子416を、アンテナ素子416と第2のグラウンドプレーン214との間に金属化トレースが設けられているにもかかわらず、第2のグラウンドプレーン214から電気的に絶縁されているとみなすことができ、ただし、金属化トレースが設けられていることにより、ユニットセル402aのVSWRが変化して3:1を超えないことを条件とする。金属化トレースが設けられていないユニットセル402aのVSWRは、例えば、1:1~2:1であるのが良い。
【0049】
アンテナ素子416は、第1のRF IO接触パッド204と整列するよう位置決めされるのが良い。例えば、アンテナ素子416の幾何学的中心は、第1のRF IO接触パッド204の幾何学的中心と整列するのが良い。幾つかの実施形態では、アンテナ素子416、第1のRF IO接触パッド204、および共振空間を結合する中間孔のうちの1つは、整列している。例えば、アンテナ素子416、第1の孔210および第2の孔410のうちの少なくとも一方、および第1のRF IO接触パッド204は、互いに整列しているのが良い。
【0050】
図6Aおよび図6Bは、互いに異なる導電性側壁パターンを備えた2つの誘電体層の例示の実施形態の平面図である。かかる導電性側壁パターンを用いることにより、フィルタアレイの機械的安定性を向上させることができるとともに/あるいは例えば本明細書において説明した他の幾つかの実施形態と比較して製造コストを減少させることができる。例えば、図6Aおよび図6Bは、図2に示されたフィルタアレイ104の第1の誘電体層220および第2の誘電体層218の平面図である。第1の誘電体層220中の第1の導電性側壁222,224,604,608の構造は、図6Bに示されている第2の誘電体層218中の第3の導電性側壁226,228,304,308の構造とは異なりかつこれと相補している。例えば、図6Aを参照すると、第1の導電性側壁608,222の各々の一端は、互いに接合されている。これとは対照的に、図6Bを参照すると、第3の導電性側壁228,304の各々一端は、その端部のところで互いに接合されている。フィルタアレイが第2の誘電体層218が第1の誘電体層220上に積み重ねられことによって製造されると、これら層中の側壁の相補構造は、フィルタアレイの機械的強度を向上させることができる。幾つかの実施例では、他の相補パターンもまた利用できる。
【0051】
フィルタアレイおよび一体形フィルタ-アンテナアレイの製造方法
【0052】
図7Aは、図1図3を参照して上述したフィルタアレイの製造方法700の流れ図である。本方法は、第1の表面および第1の表面と反対側の第2の表面を備えた光学的に透明な誘電体層を設けるステップ(702)を含む。光透過性は、レーザによって、誘電体層の内部の中に位置する誘電体層の幾つかの部分の照射を可能にする。誘電体層は、端から端まで約4~12インチ(10.1~30.5cm)である寸法(例えば、処理機器、例えばエッチング浴容量によって制限される)および約0.01~約0.05インチ(0.25~1.27mm)の厚さを有するのが良い。誘電体層を光学的に透明な誘電体、例えば、溶融石英、水晶、単結晶炭化ケイ素、または単結晶サファイアなどで作ることができる。本方法は、目で見てわかる欠陥があるかどうかの誘電体層の検査をさらに含むのが良い。誘電体層を厚さ、キャンバ、および表面仕上げの一貫性があるかどうかについてさらに検査するのが良い。また、誘電体層を試験して誘電率が所望の誘電率の許容範囲内にあるかどうかを確認するのが良い。例えば、第1の誘電体層220、第2の誘電体層218または第3の誘電体層420の種々の部分のところの誘電率を測定するのが良く、そして誘電体層についての測定誘電率の平均値を求めるのが良い。さらに、誘電体層の種々の部分のところで測定された誘電率がその層に関する誘電率の平均値の0.5パーセント以内にあるかどうかを確認するのが良い。さらに、誘電体層は、異物があればかかる異物を除去するためのクリーニングを受けるのが良い。
【0053】
本方法は、レーザを用いて光学的に透明な誘電体層中の三次元構造体を照射するステップ(704)をさらに含み、この三次元構造体は、誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる複数の側壁領域を含む。レーザは、赤外線波長から紫外線波長までの任意の波長で動作することができ、かかるレーザは、ピコ秒~フェムト秒パルス長を有するレーザパルスを生じさせることができる。このレーザを誘電体層内の任意の場所にピント合わせしてその場所を照射するのが良い。照射された領域は、誘電体層の厚さ全体(例えば、頂面から底面まで)を貫通してはならない。これらフィルタアレイで採用される壁の大抵の領域は、頂面と底面との間で連続しているのが良い。特に、壁交差部のところの幾つか領域は、部分的に貫通していても良く、それにより機械的強度ならびに高周波エネルギーの電気的遮蔽を提供することができる(かくして、ハイQ(Hi-Q)共振器の実現を可能にする。レーザを操作して誘電体層内の三次元構造体を照射するのが良い。照射中、レーザは、材料特性を変更しまたは誘電体中に数ミクロンの範囲のサイズを有する欠陥を導入することができる。これら欠陥を照射により導入するのが良く(例えば、特定の構造的形状の体積部内で一様に)、これら欠陥は、選択的エッチングを容易にすることができる。図9Aは、誘電体層中の照射された三次元構造体の断面図である。特に、図9Aは、第1の誘電体層220中に形成された照射済み三次元構造体902(「第1の三次元構造体」ともいう)を示している。照射済み三次元構造体902は、第1の誘電体層220の第1の表面234と第2の表面904との間に少なくとも部分的に延びるのが良い複数の側壁領域906を有するのが良い。三次元照射済み構造体902は、凹んだ照射済み領域908を有するのが良く、この凹んだ照射済み領域は、エッチングされると、凹んだ第2の表面904を形成する凹んだ領域を形成することができる。
【0054】
本方法は、三次元構造体をエッチングして三次元空胴構造を形成するステップ(706)をさらに含むのが良い。照射済み誘電体層を例えばエッチング浴内に配置するのが良く、このエッチング浴は、レーザに暴露されまたはレーザによって照射された誘電体層の部分をエッチングすることができる。例えば、エッチングは、照射された表面から始まって材料(例えば、レーザによって導入された欠陥に沿ってかつ/あるいは欠陥内に正確にまたは実質的に拘束された)中を下方に働くことができる。幾つかの実施例では、エッチング剤は、水酸化カリウムを含むのが良い。照射済み三次元構造体は、例えば精密エッチングのために誘電体層の被照射部分に対する1000:1のエッチング選択制を有するのが良い。幾つかの実施形態では、エッチング選択制は、500:1、200:1、100:1、または他の何らかの比であって良い。レーザにより照射された幾何学的形状(三次元構造体の)は、結果として高い精度の幾何学的形状を生じさせるようエッチング選択制の効果を考慮にいれるよう補償されるのが良い。エッチング浴中でのエッチング後、三次元構造体を三次元空胴構造に変換するのが良い。三次元構造体の任意の数および/または任意の組み合わせを同様な仕方で、例えば同時にかつ/あるいは順次実現することができる。図9Bは、誘電体層中のエッチング済み三次元構造体の断面図である。特に、図9Bは、図9Aに示された三次元照射済み構造体902のエッチング後に形成された三次元空胴構造910を示している。三次元空胴構造910は、複数の側壁912を有するのが良く、これら側壁912は、空胴構造910の境界を少なくとも部分的に定めている。複数の側壁912は、第1の誘電体層220の誘電体の表面であり、これら側壁は、三次元空胴構造910の少なくとも幾つかの部分を構成している。複数の側壁912は、第1の誘電体層220の第1の表面234と第2の表面904との間に少なくとも部分的に延びるのが良い。三次元空胴構造910は、第1の誘電体層220の第2の表面904の平面から凹んだ凹み領域914を含むのが良い。以下にさらに説明するように、導電性層がグラウンドプレーンを形成するよう凹み領域914内に形成されるのが良い。幾つかの実施形態では、三次元空胴構造910は、凹み領域914を備えないのが良く、この代わりに、平坦である第2の表面904を有する。かかる実施形態では、第2の表面904に被着された導電性層は、第2の表面904の平面からオフセットした(例えば、導電性層の厚さに等しい高さのところで)表面を有するのが良い。
【0055】
本方法は、金属を三次元空胴構造内に被着させて誘電体層の第1の表面と第2の表面との間に少なくとも部分的に延びる1つまたは2つ以上の第1の導電性側壁層を形成するステップ(708)をさらに含むのが良い。本方法は、金属を誘電体層の第1の表面上に被着させるとともに金属を誘電体層の第2の表面上に被着させるステップ(710)をさらに含む。金属は、例えばスパッタリング技術を用いて被着されるのが良い。適当な付着層、例えばチタン-タングステン(TiW)を覆う金属、例えば、銅、金、または銀を用いるのが良い。被着は、第1の導電性側壁層の厚さならびに第1および第2の表面上の導電性層の厚さが約1~2ミクロン(または、他の何らかの範囲、例えば0.5~3ミクロン)であることができるようにする時間の長さにわたって実施されるのが良い。例えば、第1の導電性側壁層は、図2に示された側壁222,224と類似しているのが良い。厚い金属被膜または金属充填導電性側壁層が望まれる場合、例えば熱伝導率または機械的強度の向上が望ましい場合、金属メッキプロセスを採用するのが良い。
【0056】
本方法は、誘電体層の第1の表面上の金属層をパターン付けして高周波入力-出力(RF I/O)領域およびRF I/O領域の周囲に沿ってぐるりと入力グラウンドプレーンを形成するステップ(712)をさらに含むのが良く、RF I/O領域は、RF I/O領域の周囲に沿ってぐるりと形成された絶縁領域によってグラウンドプレーンから電気的に絶縁され、または幅が0.5ミリメートル未満の1つまたは2つ以上の金属化トレースによって絶縁領域を横切ってグラウンドプレーンに接続される。フォトレジストを誘電体層の全ての表面に塗布するのが良い。フォトレジストとしては、例えば、電気泳動物質のような物質が挙げられる。フォトレジストをRF I/O接触パッド、金属化トレース、および/またはグラウンドプレーン、例えば図2に示されたRF I/O接触パッド204およびグラウンドプレーン206を形成するための所望のパターンに合致したパターンに暴露されるのが良い。オートアライン直接書刻レーザリソグラフィ法(auto-align direct write laser lithography process)を暴露のために用いるのが良い。次に、エッチング剤を用いて暴露表面をエッチングして金属層をRF I/O領域とRF I/O領域の周囲のグラウンドプレーンとの間から除去し、それによりRF I/O領域をグラウンドプレーンから電気的に絶縁するのが良い。幾つかの実施形態では、金属トレース(例えば、幅が0.5ミリメートル未満、長さと幅の被が少なくとも3:1)を保持しまたは形成してグラウンドプレーンとRF I/O領域との誘導結合を提供する一方でグラウンドプレーンとRF I/O領域との電気的絶縁状態を維持する。パターン付けは、誘電体層の他方の側の中間グラウンドプレーンおよび孔、例えば図2に示された中間グラウンドプレーン212および孔210をパターン付けするステップをさらに含むのが良い。
【0057】
図9Cは、パターン付け金属層を含む誘電体層の断面図である。特に、図9Cは、図9Bに示された第1の誘電体層220の断面図であり、この第1の誘電体層220に金属を被着させるとともにこれを上述のステップ作業710,712において説明したようにパターン付けしてある。第1の誘電体層220は、第1および第2のユニットセル202a,202bの形成結果を示している。第1のユニットセル202aは、第1の誘電体層220中に形成された空胴910の第1の複数の側壁(例えば、複数の側壁912)上に形成された第1の導電側壁層222,224を有する。第1の導電性側壁層222,224は、第1の共振空間208aの少なくとも一部分を画定している。同様に、第2のユニットセル202bは、第2の複数の側壁空胴910上に形成された第2の導電性側壁層230,232を有する。特に、第1のユニットセル202aの第1の導電性側壁層224および第2のユニットセル202b(これは、第1のユニットセル202aに隣接して位置している)の第2の導電性側壁層230は、第1のユニットセル202aと第2のユニットセル202bとの間の同一の空胴構造910の側壁上に形成されている。図9Cは、導電性側壁層(例えば、空胴構造910内の224,230)を形成するよう三次元空胴構造910の容積の一部が導電性材料で満たされる一例を示している。同一の三次元空胴構造910中の導電性側壁層は、互いに離隔され、またはこれらの間に隙間を有する。幾つかの実施形態では、三次元空胴構造910の容積の少なくとも一部分を導電性材料で満たして空胴構造内の導電性側壁層224,230の少なくとも幾つかの部分相互間に離隔距離または隙間が生じないようにするのが良い。すなわち、導電性側壁層224,230は、空胴構造910の容積の少なくとも一部分を埋めるよう互いに接触するのが良い。かかる一実施例が図2に示されており、この実施例では、第1のユニットセル202aと第2のユニットセル202bとの間の空胴構造が導電性材料で完全に満たされ、その結果、隣り合うユニットセル202a,202bの導電性側壁層224,230相互間に離隔距離または隙間が生じないようになっている。三次元空胴構造910には、導電性側壁層224,230を形成するために用いられたのと同一の導電性材料を充填するのが良い。例えば、導電性材料を第1の複数の側壁912上に被着させて導電性側壁層224,230を形成する間、被着は、導電性側壁層224,230相互間の空間が導電性材料で満たされるよう続行されるのが良い。
【0058】
上述の本方法は、追加の誘電体層を形成するよう繰り返し実施することができる。例えば、本方法を用いると、図2に示された第2の誘電体層218を形成することができ、この第2の誘電体層218の一方の側に第2のグラウンドプレーン214およびRF I/O領域216を有するとともに、中間金属化層212と組み合わせて第2の誘電体層218の他方の側に第1の孔210を形成する中間金属層を有し、さらに第3の導電性側壁226,228を有する。図9Cはまた、第1の誘電体層220と関連して上述した仕方と同様な仕方で処理された第2の誘電体層218の断面図を示している。第2の誘電体層218は、第1の三次元空胴構造910を形成する際に上述した仕方と同様な仕方で、レーザおよびエッチングによる照射によって形成できる第2の三次元空胴構造950を有する。第2の誘電体層218は、第1の表面952および第2の表面954を有するのが良く、この場合、第2の空胴構造950の側壁960(「第3の複数の側壁」ともいう)が第2の誘電体層218の第1の表面952と第2の表面954との間に少なくとも部分的に延びる。第2の誘電体層218には金属を被着させ、そしてこの第2の誘電体層は、第2の誘電体層218の第1の表面952と第2の表面954との間に延びる第3の導電性側壁層226,228を形成するようパターン付けされている。第3の導電性側壁層もまた、第1のユニットセル202aの共振空間208bを画定する。
【0059】
金属層956を第2の誘電体層218の第1の表面954に被着させるのが良くかつこれをパターン付けして第2の孔958を形成するのが良い。中間層212を含む第1の誘電体層220の第2の表面904は、第1の結合面を形成することができる。同様に、第1の表面952および第2の誘電体層218の第1の表面952上に被着された金属層956は、第2の結合面を形成することができる。第1の結合面を第2の結合面に結合することによって第2の誘電体層218を第1の誘電体層220に結合するのが良い。結合の結果として、金属層956が中間層212に接触してこれと組み合わさって第1の孔210を備えた第3のグラウンドプレーン212を形成することができる(図2に示されている)。幾つかの実施形態では、第1の誘電体層220の第2の表面904および第2の誘電体層2218の第1の表面952が凹み領域(例えば、図9Aおよび図9Bに示された凹み領域914)を有さない場合、金属層956と中間金属化層212はそれぞれ、第1の表面952および第2の表面904と同一平面上には位置しない場合がある。かくして、結合面は、第1の表面952および第2の表面904を含まない場合がある。この結果、第1の表面952と第2の表面904との間の空隙が孔210のところに生じる場合がある。
【0060】
幾つかの実施形態では、第1の孔210と第2の孔958を整列させて第1の孔210の周囲が第2の孔958の周囲と整列するようにするのが良い。第1の誘電体層220を第2の誘電体層218に結合した後、第1の孔210および第2の孔958は、単一の孔を形成することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、図9Cに示された第2の誘電体層218は、この代わりに、アンテナ誘電体層(図4、420)を表しても良く、このアンテナ誘電体層の第2の表面954に被着された金属をパターン付けすると、アンテナグラウンドプレーン(グラウンドプレーン214とほぼ同じである)から絶縁されたアンテナ素子(図4に示されたアンテナ素子416とほぼ同じである)を形成することができる。アンテナ誘電体層を第1の誘電体層220に直接結合すると、2つの共振空間を有するユニットセル202を形成することができる。かかる具体化例では、複数の側壁960は、アンテナ誘電体層中の誘電体層によって画定された空胴950の複数のアンテナ層側壁を表しているといえる。同様に、導電性側壁層226,228は、アンテナ層共振空間208bを画定するアンテナ層の導電性側壁層を表すといえ、かかる導電性側壁層を第1の誘電体層の第2の表面904上に形成された第2の誘電体層212に電気的に接続するのが良い。
【0062】
フィルタアレイが追加の共振空間を含むよう設計されている場合、追加の誘電体層もまたパターン付けされるのが良い。例えば、上述の方法を用いて第3の誘電体層を形成するのが良く、この場合、第3の誘電体層は、中間グラウンドプレーンおよび両側上にパターン付けされた状態で設けられた孔ならびに第3の誘電体層の2つの表面相互間に形成された側壁を有する。これは、図7Bに示されており、図7Bは、多数の誘電体層を含むフィルタアレイの製造方法750の一実施形態の流れ図である。この方法750は、各誘電体層をフィルタアレイに追加するための作業702n~710nを含むのが良く、これら作業は、上述したようにそれぞれ作業702~710とほぼ同じであるのが良い。作業714は、対応の誘電体層が最初であり、最後であり、または中間層である場合についての方法750の一部分を記載している。作業716は、プロセス750が作業702nに進んでもう1つの誘電体層を追加することができ、または作業718に進んで多数の誘電体層を互いに結合してフィルタアレイを形成することができる決定箇所を記載している。
【0063】
幾つかの実施形態では、方法700または750は、各誘電体層の検査およびその寸法の測定ステップをさらに含むのが良い。方法700または750は、誘電体層の表面および/または金属表面の全てをクリーニングするクリーニングプロセス(例えば、プラズマクリーニング法)を用いるステップをさらに含むのが良い。方法700または750は、2つの隣り合う誘電体層を整列させてこれらを結合するステップを含むのが良い。例えば、誘電体層の一方の表面上に露出した孔および/または金属化壁を第2の誘電体層の表面上に露出した対応の孔および/または金属化壁と整列させるのが良い。隣り合う誘電体層中の金属化壁の整列により、一方の誘電体層中の金属化壁とこの隣の誘電体層中の金属壁との電気的接触が生じるようにすることができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、互いに隣接して積み重ねられるべき2つの誘電体層の表面は、同一の金属化パターンを有するのが良い。例えば、図2を参照すると、第1の誘電体層220および第2の誘電体層218は各々、パターン付けされた孔210と一緒に中間接地層212を有するのが良い。これら2つの誘電体層を互いに接合すると、孔210の縁および/または第1の誘電体層220の第1の導電性側壁層222,224の縁を第2の誘電体層218中の対応の構造体の縁と整列させる。金属化パターンを両方の誘電体層上に設けることによって、誘電体相互間の結合を2つの誘電体層の金属間表面相互間の高い結合強度に起因して向上させることができる。幾つかの実施例では、各誘電体層上の中間グラウンドプレーン212の厚さは、所望の厚さの1/2であるのが良い。
【0065】
方法700または750はまた、無電解(または浸漬)表面酸化バリヤ層、例えば厚さが約0.1~0.2ミクロンのパラジウムを被着させるステップをさらに含む。酸化バリヤ層は、金属表面の腐食の恐れを減少させることができる。方法700または750は、例えば超音波顕微鏡法のような技術を用いて層の結合具合を確認するステップをさらに含むのが良い。本方法は、ベクトルネットワーク分析装置によってフィルタに対してRFプローブ検査を実施するステップをさらに含むのが良い。方法700または750はまた、積み重ね状態の誘電体層組立体(例えば、これは、横幅が12インチ(30.5cm)という長い長さであるのが良い)を1組のフィルタユニットセルに単体化しまたは切断するステップをさらに含むのが良い。フィルタユニットセルの大きなアレイ(例えば、誘電体層の有効サイズに対応するとともに/あるいは機器の能力に対応する)を製作するプロセスは、小さなアレイまたは小さな積み重ね誘電体層組立体を直接作るプロセスよりも効率的であるといえる。レーザまたは鋸刃を用いて小さなセクションをフィルタユニットセルの大きなアレイから切断しまたは単体化するのが良い。例えば、各単体化誘電体層組立体は、約2×2インチ(5.08×5.08cm)のサイズを有するのが良くかつ約128個のフィルタユニットセルを含むのが良い。各単体化誘電体層組立体のフィルタユニットセルのサイズおよび/または個数は、特定の用途(例えば、アンテナの所望のアレイサイズおよび形態に対応する)によって決定されるのが良い。
【0066】
フィルタアレイをいったん製造すると、フィルタアレイを回路系、例えば図1に示された回路層106に接続するのが良い。例えば、図2を参照すると、フィルタアレイ104の底面は、回路層上の集積回路がそれぞれのRF I/O接触パッド204に電気的に接触するよう回路層に結合されるのが良い。フィルタアレイもまた、アンテナアレイ、例えば図1に示されたアンテナ層102に結合するのが良い。例えば、図2を参照すると、フィルタアレイ104の頂面上のRF I/O接触パッド216は、アンテナ層102のアンテナ素子のアレイのそれぞれのアンテナ素子108に電気的に接続されるのが良い。
【0067】
一体形フィルタ-アンテナアレイを製造する方法は、フィルタアレイに関して上述した方法とほぼ同じであるのが良い。図8は、一体形フィルタ-アンテナアレイの製造方法800の流れ図である。方法800の幾つかのプロセス段階は、図7に示された方法700に関して上述したプロセス段階とほぼ同じである。例えば、方法800は、第1の誘電体層中の1つまたは2つ以上の第1の導電性側壁層を形成する段階802~808を含み、これら段階は、図7を参照して上述したプロセス段階702~708とほぼ同じである。方法800は、金属層を第1の誘電体層の表面に被着させて1つまたは2つ以上の第1の導電性側壁層に電気的に接続させる段階(810)をさらに含むのが良い。金属層は、例えば、中間グラウンドプレーン、例えば図4に示された第1および第2の中間グラウンドプレーン212,412を含むのが良い。方法800は、第2の誘電体層を設ける段階をさらに含むのが良い。第2の誘電体層中の1つまたは2つ以上の第2の導電性側壁層を形成するプロセス段階812~818は、図7を参照して上述したプロセス段階702~708とほぼ同じである。方法800は、一方の誘電体層の一方の表面上のアンテナ素子、例えば図4および図5に示されたアンテナ素子416をパターン付けする段階をさらに含むのが良い。幾つかの実施形態では、レーザ照射、導波路アンテナの形状を作るために誘電体を除去するエッチング、およびエッチングにより形成された表面上への金属の被着を使用して、アンテナ素子(例えば、導波路アンテナ、または導波路ホーンアンテナ)を誘電体層中に形成するのが良い。方法800は、第1の誘電体層の第2の表面を第2の誘電体層の第1の表面に結合して第1および第2の中間グラウンドプレーン212,412上にパターン付けされた孔が互いに整列しまたは第1の誘電体層220中の導電性側壁層222,224が第2の誘電体層218の導電性側壁層226,228と整列するようにする段階(822)をさらに含むのが良い。第1の誘電体層の第2の表面上にかつ第2の誘電体層の第1の表面上に形成された金属化パターンを互いに整列させるのが良くまたは互いに結合するのが良い。一実施例として、図4は、第1の誘電体層220の頂面上にパターン付けされた孔が第2の誘電体層218の底面上にパターン付けされた孔と整列するよう第2の誘電体層218に結合された第1の誘電体層220を示している。第1の誘電体層220中の導電性側壁層222,224は、第2の誘電体層218中の導電性側壁層226,228と整列するのが良い。
【0068】
いったん一体形フィルタ-アンテナアレイを製造すると、フィルタ-アンテナアレイを回路系、例えば図1に示された回路層106に接続するのが良い。例えば、図4を参照すると、フィルタアレイ104の底面は、回路層上の集積回路がそれぞれのRF I/O接触パッド204に電気的に接触するよう回路層に結合されるのが良い。アンテナ素子416がフィルタ-アンテナアレイ中に組み込まれているので、フィルタ-アンテナアレイをアンテナ層に接合する必要性はない。これにより、一体形フィルタ-アンテナアレイの挿入損失を減少させることができる。
【0069】
本明細書において説明した発明内容は、場合によっては、互いに異なる他のコンポーネント内に含まれまたはこれと連結された互いに異なるコンポーネントを示している。理解されるべきこととして、説明したかかるアーキテクチャは例示にすぎず、事実、同一の機能を達成する他の多くのアーキテクチャを具体化することができる。概念的な意味において、同一の機能を達成するためのコンポーネントの配置は、所望の機能が達成されるよう互いに効果的に「関連付け」される。それゆえ、本明細書に記載されていて特定の機能を達成するよう組み合わされる任意の2つのコンポーネントは、互いに「関連している」と理解でき、その結果、アーキテクチャまたは中間コンポーネントの存在にもかかわらず、所望の機能が達成されるようになる。同様に、このように関連付けられた任意の2つのコンポーネントはまた、所望の機能を達成するよう互いに「作動的に連結され」または「作動的に結合され」ているものとみなすことができ、このように結合可能な任意の2つのコンポーネントはまた、所望の機能を達成するよう互いに「作動的に結合可能である」とみなすことができる。作動的に結合可能といった場合の特定の例としては、物理的に嵌合可能および/または物理的に相互作用するコンポーネントおよび/またはワイヤレスで相互作用可能でありかつ/あるいはワイヤレスで相互作用するコンポーネントおよび/または論理的に相互作用するとともに/あるいは論理的に相互作用可能なコンポーネントが挙げられるが、これらには限定されない。
【0070】
本明細書で用いられる実質的に任意の複数形および/または単数形の使用に関し、当業者であれば、文脈および/または用途にふさわしいように複数形から単数形にかつ/あるいは単数形から複数形に変えることができる。種々の単数形/複数形の置換が分かりやすくするために本明細書において明示的に記載されている場合がある。
【0071】
当業者であれば理解されるように、一般に、原文明細書で用いられている用語、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の請求項の本体部)に用いられている用語は、一般に、「非限定的」用語(例えば、“including”(訳文では「~を含む」としている場合が多い)は、“including but not limited to”(訳文では「~を含むが~には限定されない」としている場合が多い)と解釈されるべきであり、一般に、“having”(訳文では「~を有する」としている場合が多い)は、“having at least”(訳文では「少なくとも~を有する」としている場合が多い)と解釈されるべきであり、“includes”(訳文では「~を含む」としている場合が多い)は、“includes but not limited to”(訳文では「~を含むが~には限定されない」としている場合が多い)と解釈されるべきであり、その他同様)として意図されている。
【0072】
当業者によってさらに理解されるように、特定の数の導入された請求項記載が意図されている場合、かかる意図は、請求項に明示的に記載され、かかる記載のない場合には、かかる意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、次の添付の原文請求項は、請求項記載を導入するために導入のための語句“at least one”(訳文では「少なくとも1つの」)および“one or more”(訳文では「1つまたは2つ以上の」)の使用を含む場合がある。しかしながら、同一の請求項が導入のための語句“one or more”または“at least one”および不定冠詞、例えば“a”または“an”(例えば、“a”および/または“an”が一般に、“at least one”または“one or more”を意味するものと解されるべきである)を含む場合、かかる語句の使用は、不定冠詞“a”または“an”による請求項記載の導入が、かかる導入された請求項記載を含む任意特定の請求項をかかる記載の1つしか含まない本発明に限定することを意図していると解されてはならず、同じことは、請求項記載を導入するために用いられる定冠詞の使用にも当てはまる。加うるに、特定の数の導入された請求項記載が明示的に記載されている場合であっても、当業者であれば認識されるように、かかる記載は一般に、少なくとも記載された数を意味するものと解されるべきである(例えば、他の修飾語なしで2つの記載がそのまま記載されていることは一般に、少なくとも2つの記載または2つまたは3つ以上の記載を意味している)。
【0073】
さらに、原文において“at least one of A, B, and C”(訳文では「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」)などに類似した従来記載が用いられるような場合において、一般に、かかる構成は、当業者が従来の記載を理解する意味に理解される(例えば、“a system having at least one of A, B, and C”(訳文では「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを含むシステム」)は、Aだけを含むシステム、Bだけを含むシステム、Cだけを含むシステム、AとBを両方とも含むシステム、AとCを両方とも含むシステム、BとCを両方とも含むシステム、および/またはAとBとCを全て含むシステムを含むが、これらには限定されない)。原文において“at least one of A, B, or C”などに類似した従来記載が用いられるような場合、一般にかかる構成は、当業者が従来の記載を理解する意味に理解される(例えば、“a system having at least one of A, B, or C”(訳文では「A、B、またはCのうちの少なくとも1つを含むシステム」)は、Aだけを含むシステム、Bだけを含むシステム、Cだけを含むシステム、AとBを両方とも含むシステム、AとCを両方とも含むシステム、BとCを両方とも含むシステム、および/またはAとBとCを全て含むシステムを含むが、これらには限定されない)。当業者であればさらに理解されるように、明細書中であれ特許請求の範囲の記載中であれまたは図面の記載中であれいずれにせよ、2つまたは3つ以上の代替的な用語を提供する事実上任意の選言的用語および/または語句は、これら用語のうちの一方、これら用語のうちのいずれか一方、または両方の用語を含む可能性を想定していると理解されるべきである。例えば、語句“A or B”(訳文では「AまたはB」)は、「A」もしくは「B」または「AおよびB」の可能性を含むものと理解される。さらに、別段の注記がなければ、語句“approximate”(訳文では「ほぼ」としている場合が多い)、“about”(訳文では「約」としている場合が多い)、“around” (訳文では「およそ」としている場合が多い)、“substantially”(訳文では「実質的に」としている場合が多い)などの使用は、±10パーセントを意味している。
【0074】
例示の実施形態についての上述の説明は、例示および説明の目的のために提供されたものである。開示した形態そのものに関して排他的でありまた限定的であることは意図されておらず、改造および変形が上述の教示に照らして可能でありまたは開示した実施形態の実施から想定できる。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲の記載およびこれらの均等例によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C