(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20240703BHJP
H01L 31/05 20140101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 570
(21)【出願番号】P 2021527464
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019287
(87)【国際公開番号】W WO2020255597
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019115737
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】南 雄太
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-142720(JP,A)
【文献】特開2009-004613(JP,A)
【文献】特開2012-079948(JP,A)
【文献】特開2011-086964(JP,A)
【文献】特開2007-201291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000683(US,A1)
【文献】特開2008-085225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項11】
2枚の基材の間に太陽電池セル及び配線部材が配され、前記2枚の基材の間が封止材によって充填された太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池セルは、光電変換部を有し、前記光電変換部上にバスバー電極部が設けられており、
前記配線部材は、前記バスバー電極部に対してはんだ層を介して接着されており、
前記太陽電池セルは、界面剥離層を有し、
前記界面剥離層は、前記太陽電池セルを断面視したときに、少なくとも前記バスバー電極部の側面の一部を覆い、さらに前記光電変換部まで跨っており、
前記バスバー電極部と前記界面剥離層の界面の接着強度は、前記封止材と前記界面剥離層の界面の接着強度よりも大きく、
前記封止材と前記界面剥離層の界面の接着強度は、前記光電変換部と前記界面剥離層の界面の接着強度よりも大きい、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、結晶型の太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルが配線部材を介して電気的に接続されている。例えば、特許文献1の太陽電池モジュールでは、各太陽電池セルの両面に、集電極としてバスバー電極部及びフィンガー電極部が設けられ、バスバー電極部に配線部材の端部をはんだ付けして各太陽電池セル間を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の太陽電池モジュールは、太陽電池セルをEVAシートで挟み、さらにEVAシートの外側をガラス基板やバックシートなどの基材で挟んで封止する。
太陽電池モジュールの製造において初期不良等が生じた場合には、基材及びEVAシートを剥がして分解し、不良原因を特定する。
しかしながら、従来の太陽電池モジュールは、基材及びEVAシートを剥がしたときに、集電極の一部であるバスバー電極部と、バスバー電極部の下地となる下地層との間の接着強度がバスバー電極部とEVAシートの接着強度に比べて小さい。そのため、基材及びEVAシートを剥がすと、バスバー電極部がEVAシートに引っ張られて下地層から剥がれてしまうことがある。下地層からバスバー電極部が剥がれると、通電等を検査することができず、初期不良等の不良原因を特定できない問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、基材や封止材を剥がしたときに、従来に比べてバスバー電極部が剥がれにくい太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、2枚の基材の間に太陽電池セル及び配線部材が配され、前記2枚の基材の間が封止材によって充填された太陽電池モジュールであって、前記太陽電池セルは、表側電極層と、裏側電極層と、前記表側電極層と前記裏側電極層に挟まれた光電変換部を有し、かつ前記表側電極層及び前記裏側電極層の少なくとも一方の電極層上にバスバー電極部が設けられており、前記配線部材は、前記バスバー電極部に対してはんだ層を介して接着されており、前記太陽電池セルは、界面剥離層を有し、前記界面剥離層は、前記太陽電池セルを断面視したときに、少なくとも前記バスバー電極部の側面の一部を覆い、さらに前記一方の電極層まで跨っており、前記バスバー電極部と前記界面剥離層の界面の接着強度は、前記封止材と前記界面剥離層の界面の接着強度よりも大きく、前記封止材と前記界面剥離層の界面の接着強度は、前記一方の電極層と前記界面剥離層の界面の接着強度よりも大きい、太陽電池モジュールである。
【0007】
本様相によれば、バスバー電極部と界面剥離層の界面の接着強度は、封止材と界面剥離層の界面の接着強度よりも大きいので、基材及び封止材を剥がしたときに、界面剥離層が封止材につられて自己破壊して部分的に剥がれるか、バスバー電極部と界面剥離層の界面に比べて封止材と界面剥離層の界面が優先的に剥がれる。
また、本様相によれば、封止材と界面剥離層の界面の接着強度は、一方の電極層と界面剥離層の界面の接着強度よりも大きいので、基材及び封止材を剥がしたときに、封止材と界面剥離層の界面に比べて一方の電極層と界面剥離層の界面が優先的に剥がれる。
すなわち、本様相によれば、基材及び封止材を剥がしたときに、界面剥離層のバスバー電極部の側面から一方の電極層まで延びる部分においては、界面剥離層と一方の電極層の界面で剥がれ、バスバー電極部上においては、バスバー電極部と界面剥離層の界面で剥がれる。そのため、バスバー電極部が一方の電極部から剥がれずに基材や封止材を剥がすことができる。その結果、バスバー電極部が封止材に引っ張られることによるバスバー電極部の断線等が生じにくく、基材及び封止材を剥がした状態で初期不良等の評価を行うことができる。
【0008】
好ましい様相は、前記界面剥離層は、前記一方の電極層上で前記バスバー電極部の側面から前記バスバー電極部の幅の0.5倍以上の範囲まで広がっていることである。
【0009】
より好ましい様相は、前記界面剥離層は、前記一方の電極層上で前記バスバー電極部の側面から前記バスバー電極部の幅の1.5倍以上の範囲まで広がっていることである。
【0010】
好ましい様相は、前記一方の電極層は、透明導電性酸化物で形成されていることである。
【0011】
好ましい様相は、前記界面剥離層は、ロジン化合物を含むフラックス層であって、フラックス成分のハライド含有量が0.5wt%以下であることである。
【0012】
本様相によれば、JIS Z 3283:2006に準ずる等級がA又はAAであり、活性度が中又は低のフラックスで界面剥離層が構成されるため、下地となる一方の電極層の腐食を抑制又は防止できる。
【0013】
好ましい様相は、前記バスバー電極部は、前記はんだ層よりも幅が広いものであり、前記界面剥離層は、前記太陽電池セルを断面視したときに、前記バスバー電極部の前記はんだ層からの露出部分を覆っていることである。
【0014】
本様相によれば、バスバー電極部の幅がはんだ層の幅よりも広いため、はんだ層を形成するにあたってはんだがバスバー電極部で留まり、一方の電極層上に接触しない。そのため、一方の電極層がはんだ層の形成により高温になりにくい。
本様相によれば、界面剥離層がバスバー電極部の露出部分を覆っているため、バスバー電極部が一方の電極層に対して剥がれにくく、基材や封止材を剥がすときに、バスバー電極部を残して剥がしやすい。
【0015】
好ましい様相は、前記光電変換部を基準として、前記表側電極層側から受光して発電する電池モジュールであって、前記表側電極層及び前記裏側電極層は、バスバー電極部が設けられており、前記裏側電極層のバスバー電極部は、前記表側電極層のバスバー電極部よりも幅が広いことである。
【0016】
本様相によれば、裏側電極層の幅が受光側の表側電極層の幅よりも広いため、十分な裏側電極層の面積を確保でき、裏側電極層での抵抗損失を抑制できる。
【0017】
好ましい様相は、前記封止材は、封止シートを含み、前記バスバー電極部は、薄膜で形成されていることである。
【0018】
ここで、従来の太陽電池モジュールは、太陽電池セルをEVAシート等の封止シートで挟んで封止した場合、一見、きっちりと密着しているように見えていても、正確に封止できていない場合がある。このような場合、長期に亘って使用すると、空気や水等が封止シートとその接着面との間に入って空隙が発生し、封止シートに浮きが発生する。
本様相のように、バスバー電極部が薄膜で形成されている場合、バスバー電極部自身の剛性がバルク材料でバスバー電極部を形成した場合に比べて小さい。そのため、封止シートの浮きが広がると、バスバー電極部が封止シートに引っ張られ、バスバー電極部内で凝集破壊が起こるか下地の電極層から剥がれてしまう問題がある。
このような場合でも、本様相によれば、バスバー電極部と界面剥離層の界面の接着強度が封止材と界面剥離層の界面の接着強度よりも大きいので、封止材に浮きが発生しても、バスバー電極部と界面剥離層の界面よりも、先に界面剥離層が内部で凝集破壊されるか、封止材との界面で剥がれる。そのため、封止材の浮きにより発生する力が逃がされ、バスバー電極部が下地の電極層から剥離することを防止できる。
【0019】
好ましい様相は、前記バスバー電極部は、前記封止材を剥がしたときに、前記一方の電極層上にとどまることである。
【0020】
本様相によれば、バスバー電極部が一方の電極層から剥がれず、信頼性が高い。
【0021】
好ましい様相は、前記配線部材と前記封止材の間に第2界面剥離層が介在しており、前記配線部材と前記バスバー電極部との接着強度は、前記第2界面剥離層と前記封止材との接着強度よりも大きいことである。
【0022】
本様相によれば、配線部材がバスバー電極部から封止材側に剥がれることを防止できる。
【0023】
本発明の一つの様相は、2枚の基材の間に太陽電池セル及び配線部材が配され、前記2枚の基材の間が封止材によって充填された太陽電池モジュールであって、前記太陽電池セルは、光電変換部を有し、前記光電変換部上にバスバー電極部が設けられており、前記配線部材は、前記バスバー電極部に対してはんだ層を介して接着されており、前記太陽電池セルは、ロジン化合物を含む界面剥離層を有し、前記界面剥離層は、前記太陽電池セルを断面視したときに、少なくとも前記バスバー電極部の側面の一部を覆い、さらに前記光電変換部まで跨っており、前記バスバー電極部と前記界面剥離層の界面の接着強度は、前記封止材と前記界面剥離層の界面の接着強度よりも大きく、前記封止材と前記界面剥離層の界面の接着強度は、前記光電変換部と前記界面剥離層の界面の接着強度よりも大きい、太陽電池モジュールである。
【0024】
本様相によれば、バスバー電極部と界面剥離層の界面の接着強度は、封止材と界面剥離層の界面の接着強度よりも大きいので、基材及び封止材を剥がしたときに、バスバー電極部と界面剥離層の界面に比べて封止材と界面剥離層の界面が優先的に剥がれる。
本様相によれば、封止材と界面剥離層の界面の接着強度は、光電変換部と界面剥離層の界面の接着強度よりも大きいので、基材及び封止材を剥がしたときに、封止材と界面剥離層の界面に比べて光電変換部と界面剥離層の界面が優先的に剥がれる。
すなわち、本様相によれば、基材を剥がしたときに、界面剥離層のバスバー電極部の側面から光電変換部まで延びる部分においては、界面剥離層と光電変換部の界面で剥がれ、バスバー電極部上においては、バスバー電極部と界面剥離層の界面で剥がれるので、バスバー電極部が光電変換部から剥がれずに基材を剥がすことができる。その結果、バスバー電極部が封止材に引っ張られることによるバスバー電極部の断線等が生じにくく、基材及び封止材を剥がした状態で初期不良等の評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の太陽電池モジュールによれば、基材や封止材を剥がしたときに、従来に比べてバスバー電極部が剥がれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態の太陽電池モジュールを模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の太陽電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図1の太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置での断面図である。
【
図4】
図1の太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過する位置での断面図である。
【
図5】
図2の太陽電池ストリングを表側からみた断面斜視図である。
【
図6】
図2の太陽電池ストリングを裏側からみた断面斜視図である。
【
図7】
図2の太陽電池ストリングの分解斜視図である。
【
図8】
図7の太陽電池セルの説明図であり、(a)は正面図であり、(b)は背面図である。
【
図9】
図1の太陽電池モジュールの製造工程において塗布工程直後の太陽電池モジュールを示す断面斜視図である。
【
図10】
図1の太陽電池モジュールから基材及び封止材を剥がす際の表側の要部の状況を示す断面図であり、(a)は太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置の状況を表し、(b)は太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過する位置の状況を表す。
【
図11】
図1の太陽電池モジュールから基材及び封止材を剥がす際の裏側の要部の状況を示す断面図であり、(a)は太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置の状況を表し、(b)は太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過する位置の状況を表す。
【
図12】本発明の第2実施形態の太陽電池モジュールの説明図であり、第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置での断面図である。
【
図13】
図12の太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過する位置での断面図である。
【
図14】
図12の太陽電池ストリングを表側からみた断面斜視図である。
【
図15】
図12の太陽電池モジュールの製造工程において塗布工程直後の太陽電池モジュールを示す断面斜視図である。
【
図16】本発明の第3実施形態の太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置での断面図である。
【
図17】
図16の太陽電池モジュールから基材及び封止材を剥がす際の太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面図であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置の状況を表し、(a)は表側を表し、(b)は裏側を表す。
【
図18】本発明の第4実施形態の太陽電池モジュールの第1バスバー電極部の延び方向に対して直交する断面であって、第1フィンガー電極部を通過しない位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
本発明の第1実施形態の太陽電池モジュール1は、ヘテロ接合型の太陽電池モジュールである。
太陽電池モジュール1は、
図1,
図2のように、第1基材2と、第2基材3と、太陽電池ストリング5と、封止材6a,6bを備えている。
太陽電池モジュール1は、太陽電池ストリング5の光電変換部21(
図3参照)を基準として、第1基材2の外側主面が受光面をなし、第1基材2側から受光して太陽電池ストリング5で発電する片面受光型の太陽電池モジュールである。
【0029】
第1基材2は、面状に広がりをもつ板状又はフィルム状の部材であり、本実施形態では、透光性及び絶縁性を有した透明絶縁基板である。
第1基材2は、透光性及び絶縁性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板や透明樹脂基板等が使用できる。
【0030】
第2基材3は、面状に広がりをもつ板状又はフィルム状の部材であり、本実施形態では、絶縁性を有した絶縁シートである。
第2基材3は、絶縁性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板や樹脂シート等が使用できる。
【0031】
太陽電池ストリング5は、
図2~
図4のように、複数の太陽電池セル10と、太陽電池セル10間を接続する配線部材11と、太陽電池セル10と配線部材11を接続するはんだ層12,13を備えている。
【0032】
太陽電池セル10は、結晶型の太陽電池セルであり、
図3,
図4のように、表側電極層20と、光電変換部21と、裏側電極層22を備えている。また、太陽電池セル10は、表側電極層20上に第1集電極25及び第1界面剥離層26が設けられており、裏側電極層22上に第2集電極35と第2界面剥離層36が設けられている。
【0033】
表側電極層20は、透光性及び導電性を有した透明導電層である。
本実施形態の表側電極層20は、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化亜鉛等の透明導電性酸化物で構成されている。
【0034】
光電変換部21は、PN接合を有し、半導体基板上に半導体層が形成されたものである。具体的には、太陽電池セル10は、結晶シリコン太陽電池セルであり、一導電型シリコン基板を支持基板とし、一導電型シリコン基板上に逆導電型シリコン層等が形成されたものである。「一導電型」とは、n型又はp型の一方の導電型であることをいい、「逆導電型」とは、「一導電型」とは逆の導電型であることをいう。すなわち、「一導電型」がn型の場合、「逆導電型」はp型となり、「一導電型」がp型の場合、「逆導電型」はn型となる。
【0035】
裏側電極層22は、表側電極層20と同様、透光性及び導電性を有した透明導電層である。
本実施形態の裏側電極層22は、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化亜鉛等の透明導電性酸化物で構成されている。
【0036】
第1集電極25は、表側電極層20から電気を取り出す櫛歯状の電極であり、薄膜状の薄膜電極である。
第1集電極25は、表側電極層20よりも高い導電性を有すれば特に限定されるものではなく、例えば、金、銀、銅、パラジウム等の金属や金属合金などが使用できる。
第1集電極25の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、印刷法、めっき法、気相製膜法で形成できる。これらの中でも、第1集電極25は、コストの低減の観点から、印刷法又は気相製膜法で形成されることが好ましく、より効果的に発揮する観点から、印刷法で形成されることがより好ましい。気相製膜法としては、CVD法やスパッタ法などが挙げられる。
【0037】
第1集電極25は、
図8(a)のように、第1バスバー電極部40と、第1フィンガー電極部41で構成されている。
第1バスバー電極部40は、表側電極層20上を所定の方向(以下、縦方向Yともいう)に延びた導電部である。
図8(a)に示される第1バスバー電極部40の幅W1は、第1フィンガー電極部41の幅W2よりも太く、第1フィンガー電極部41の幅W2の2倍以上となっている。
第1バスバー電極部40の幅W1は、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0038】
第1フィンガー電極部41は、
図5のように、表側電極層20上を第1バスバー電極部40から第1バスバー電極部40に対して直交して延びる導電部である。すなわち、第1フィンガー電極部41は、横方向Xに延びている。
【0039】
第1界面剥離層26は、透光性を有し、主成分としてロジン化合物を含む有機化合物層であり、フラックス70が硬化したフラックス層である。ここでいう「主成分」とは、全ての成分中に占める割合が50%以上であることをいう。
第1界面剥離層26は、JIS Z 3283:2006に準じた等級がAA又はAのフラックスで構成されており、フラックス成分のハライド含有量が0.5wt%以下であることが好ましい。
フラックス70は、ロジン化合物と、活性剤を含むことが好ましい。
【0040】
第2集電極35は、裏側電極層22から電気を取り出す櫛歯状の電極であり、薄膜状の薄膜電極である。
第2集電極35は、裏側電極層22よりも高い導電性を有すれば特に限定されるものではなく、例えば、金、銀、銅、パラジウム等の金属や金属合金などが使用できる。
第2集電極35の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、印刷法、めっき法、気相法で形成できる。これらの中でも、第2集電極35は、コストの低減の観点から、印刷法又は気相法で形成されることが好ましく、より効果的に発揮する観点から、印刷法で形成されることがより好ましい。気相製膜法としては、CVD法やスパッタ法などが挙げられる。
【0041】
第2集電極35は、
図8(b)のように、第2バスバー電極部50と、第2フィンガー電極部51で構成されている。
第2バスバー電極部50は、裏側電極層22上を縦方向Yに延びた導電部である。
図8(b)に示される第2バスバー電極部50の幅W3は、第2フィンガー電極部51の幅W4よりも太く、第2フィンガー電極部51の幅W4の4倍以上となっている。
第2バスバー電極部50の幅W3は、1mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0042】
第2フィンガー電極部51は、
図6のように、裏側電極層22上を第2バスバー電極部50から第2バスバー電極部50に対して直交して延びる導電部である。すなわち、第2フィンガー電極部51は、横方向Xに延びている。
【0043】
第2界面剥離層36は、透光性を有し、主成分としてロジン化合物を含む有機化合物層であり、フラックス70が硬化したフラックス層である。
本実施形態の第2界面剥離層36は、第1界面剥離層26と同様、JIS Z 3283:2006に準じた等級がAA又はAのフラックスで構成されており、フラックス成分のハライド含有量が0.5wt%以下であることが好ましい。
【0044】
配線部材11は、いわゆるインターコネクタであり、
図7のように、ある程度厚みがあって、所定の方向に延びた長尺状の部材である。
配線部材11は、
図7の拡大図のように、表面にはんだ71が形成された導電体であり、導電芯材72の外面にはんだ71が形成されたものである。
配線部材11の厚みは、薄膜である集電極25,35の厚みに比べて厚く、曲がりにくい。
配線部材11は、
図7のように、コネクター部60,61と、接続部62を備えている。
コネクター部60,61は、太陽電池セル10のバスバー電極部40,50と接続可能な部位である。
接続部62は、第1コネクター部60と第2コネクター部61を接続する部位である。
【0045】
はんだ層12,13は、
図3~
図5のように、バスバー電極部40,50と配線部材11のコネクター部60,61を物理的及び電気的に接続する接着層である。
はんだ層12,13は、はんだ71(
図7参照)が硬化した層であり、導電性を有する導電層である。はんだ層12,13は、界面剥離層26,36と同様、ロジン化合物成分を含んでいる。
【0046】
封止材6a,6bは、
図3のように、2枚の基材2,3の間に配された太陽電池ストリング5を封止し、2枚の基材2,3を接着する接着部材である。
封止材6a,6bは、シート状の封止シートであり、例えば、EVA、ポリオレフィン、アイオノマー等の封止シートを用いることができる。
【0047】
続いて、第1実施形態の太陽電池モジュール1の各部材の位置関係について説明する。
【0048】
太陽電池モジュール1は、
図2のように、太陽電池ストリング5がシート状の封止材6a,6bによって挟まれており、さらに封止材6a,6bの外側で2枚の基材2,3によって挟まれている。すなわち、太陽電池モジュール1は、基材2,3の間に太陽電池ストリング5が配されており、基材2,3の間に封止材6a,6bが充填されている。
配線部材11は、
図5,
図7のように、第1コネクター部60が、接続対象である隣接する2つの太陽電池セル10a,10bのうち、一方の太陽電池セル10aの第1バスバー電極部40と第1はんだ層12を介して接続されており、
図6,
図7のように、第2コネクター部61が他方の太陽電池セル10bの第2バスバー電極部50と第2はんだ層13を介して接続されている。
第1バスバー電極部40の幅W1は、
図3,
図8のように、第1バスバー電極部40の延び方向に対して直交する断面で断面視したときに、第2バスバー電極部50の幅W3よりも狭くなっている。
【0049】
第1界面剥離層26は、
図4のように、第1バスバー電極部40の延び方向に対して直交する断面で断面視したときに、第1はんだ層12の両側の端面(幅方向端面)と接触している。また、第1界面剥離層26は、
図3のように、第1フィンガー電極部41を通過しない断面において第1はんだ層12の両側から広がり、第1バスバー電極部40の幅方向(横方向X)の端面を経て、表側電極層20上まで延びている。
すなわち、第1界面剥離層26は、
図5のように、表側電極層20上に広がって、横方向Xにおいて第1バスバー電極部40を挟むように形成されており、第1バスバー電極部40の第1はんだ層12からの露出部分を覆っている。
【0050】
第1バスバー電極部40は、
図4のように、第1フィンガー電極部41を通過する断面において、横方向Xの両端部が第1界面剥離層26で覆われており、第1フィンガー電極部41には、第1界面剥離層26で覆われた部分と、覆われていない部分が存在する。
さらに、第1界面剥離層26は、
図5のように、第1バスバー電極部40と平行に延び、縦方向Yにおいて複数の第1フィンガー電極部41に跨って延びている。
【0051】
図3に示される第1界面剥離層26の第1はんだ層12からの延伸長さD1は、0.25mm以上10mm以下であることが好ましい。
延伸長さD1は、
図8(a)に示される第1バスバー電極部40の幅W1の0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが特に好ましい。延伸長さD1は、第1バスバー電極部40の幅W1の10倍以下であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。
【0052】
第2バスバー電極部50は、
図3,
図6のように、第2はんだ層13の幅よりも広く、幅方向(横方向X)において第2はんだ層13の両側から張り出した張出部52,53を備えている。
第2界面剥離層36は、
図3,
図4のように、第2バスバー電極部50の延び方向に対して直交する断面で断面視したときに、幅方向(横方向X)において第2はんだ層13の両側の端面と接触している。
第2界面剥離層36は、
図3のように第2フィンガー電極部51を通過しない断面において、第2はんだ層13の両側から広がり、第2バスバー電極部50の張出部52,53上を経て、第2バスバー電極部50の端面を覆い、さらに裏側電極層22上まで延びている。すなわち、第2界面剥離層36は、
図6のように第2バスバー電極部50を挟むように形成されており、第2バスバー電極部50の第2はんだ層13からの露出部分を覆っている。
【0053】
第2界面剥離層36は、
図4のように第2フィンガー電極部51を通過する断面において、第2バスバー電極部50上から第2フィンガー電極部51の一部に跨って広がっている。すなわち、第2バスバー電極部50は、第2フィンガー電極部51を通過する断面において、横方向Xの両端部が第2界面剥離層36で覆われており、第2フィンガー電極部51には、第2界面剥離層36で覆われた部分と、覆われていない部分が存在する。
第2界面剥離層36は、
図6のように、第2バスバー電極部50と平行に延び、縦方向Yにおいて複数の第2フィンガー電極部51に跨って延びている。
【0054】
図3に示される第2界面剥離層36の第2はんだ層13からの延伸長さD2は、第1界面剥離層26の第1はんだ層12からの延伸長さD1と同程度であり、0.25mm以上10mm以下であることが好ましい。
延伸長さD2は、
図8(b)に示される第2バスバー電極部50の幅W3の0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが特に好ましい。延伸長さD2は、第2バスバー電極部50の幅W3の10倍以下であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。
第2界面剥離層36の張出部52,53からの延伸長さD3は、特に限定されるものではないが、第2はんだ層13からの延伸長さD2以下であることが好ましく、第2はんだ層13からの延伸長さD2未満であることが好ましい。
【0055】
ここで、バスバー電極部40,50と界面剥離層26,36と封止材6a,6bの接着強度の関係について説明する。
【0056】
図3に示される第1バスバー電極部40と第1界面剥離層26の界面の接着強度は、封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きく、封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度は、表側電極層20と第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きい。すなわち、第1バスバー電極部40と第1界面剥離層26の界面は、封止材6aと第1界面剥離層26の界面よりも剥がれにくく、封止材6aと第1界面剥離層26の界面は、表側電極層20と第1界面剥離層26の界面よりも剥がれにくい。
【0057】
同様に、第2バスバー電極部50と第2界面剥離層36の界面の接着強度は、封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きく、封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度は、裏側電極層22と第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きい。すなわち、第2バスバー電極部50と第2界面剥離層36の界面は、封止材6bと第2界面剥離層36の界面よりも剥がれにくく、封止材6bと第2界面剥離層36の界面は、裏側電極層22と第2界面剥離層36の界面よりも剥がれにくい。
【0058】
続いて、第1実施形態の太陽電池モジュール1の製造方法について説明する。
【0059】
まず、従来の太陽電池セルと同様、光電変換部21を形成し、光電変換部21のそれぞれの主面に電極層20,22を形成し、さらに電極層20,22上に集電極25,35を形成して太陽電池セル10を形成する(集電極形成工程)。
【0060】
続いて、
図9のように、太陽電池セル10のバスバー電極部40,50に流動性を持つ界面剥離層26,36の原料たるフラックス70を塗布する(塗布工程)。
具体的には、太陽電池セル10の表側では、第1バスバー電極部40上から表側電極層20上及び第1フィンガー電極部41に跨るように、第1バスバー電極部40上から意図的にはみ出して塗布する。同様に、太陽電池セル10の裏側でも、第2バスバー電極部50上から裏側電極層22上及び第2フィンガー電極部51上に跨るように、バスバー電極部50上から意図的にはみ出して塗布する。
このとき、バスバー電極部40,50の側面から電極層20,22上をバスバー電極部40,50の幅W1,W3(
図8参照)の0.5倍以上の範囲までフラックス70を塗布する。
バスバー電極部40,50の側面から電極層20,22上をバスバー電極部40,50の幅W1,W3の1倍以上の範囲までフラックス70を塗布することが好ましく、バスバー電極部40,50の幅W1,W3の1.5倍以上の範囲までフラックス70を塗布することがより好ましい。
【0061】
フラックス70で覆われたバスバー電極部40,50上に、表面にはんだ71が形成された配線部材11のコネクター部60,61を載せて加熱してはんだ71を溶かし、はんだ71によってバスバー電極部40,50に対して配線部材11のコネクター部60,61を接着する(接着工程)。
このとき、フラックス70の成分が気化し、樹脂層たる界面剥離層26,36が形成される。
【0062】
そして、表面に封止材6a,6bが形成された基材2,3を封止材6a,6b同士が対向し太陽電池セル10を挟むように接着して封止し、必要に応じて端子ボックス等を設けることで太陽電池モジュール1が完成する。
【0063】
本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、第1バスバー電極部40と第1界面剥離層26の界面の接着強度が封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きく、封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度が表側電極層20と第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きい。そのため、第1基材2を引っ張って封止材6aを太陽電池ストリング5から剥がしたときに、第1界面剥離層26は、
図10(a)のように、第1フィンガー電極部41を通過しない断面において、第1バスバー電極部40と接する部分が残り、表側電極層20と接する部分が優先的に剥がれる。また、第1界面剥離層26は、
図10(b)のように、第1フィンガー電極部41を通過する断面において、第1フィンガー電極部41の一部及び第1バスバー電極部40と接する部分が残る。その結果、第1バスバー電極部40が表側電極層20から実質的に剥がれない。
また、本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、第2バスバー電極部50と第2界面剥離層36の界面の接着強度は、封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きく、封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度は、裏側電極層22と第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きい。そのため、第2基材3を引っ張って封止材6bを太陽電池ストリング5から剥がしたときに、第2界面剥離層36は、
図11(a)のように、第2フィンガー電極部51を通過しない断面において、第2バスバー電極部50と接する部分が残り、裏側電極層22と接する部分が優先的に剥がれる。また、第2界面剥離層36は、
図11(b)のように、第2フィンガー電極部51を通過する断面において、第2フィンガー電極部51の一部及び第2バスバー電極部50と接する部分が残る。その結果、第2界面剥離層36に覆われた第2バスバー電極部50が裏側電極層22から実質的に剥がれない。
このように、本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、基材2,3や封止材6a,6bを太陽電池ストリング5から剥がした場合でも、主に通電に寄与する部分が基材2,3や封止材6a,6bに追随して剥がれないので、初期不良等の評価を正確に行うことができる。
【0064】
第1実施形態の太陽電池モジュール1によれば、界面剥離層26,36がバスバー電極部40,50上から電極層20,22上に跨って設けられ、バスバー電極部40,50の側面からバスバー電極部40,50の幅W1,W3の0.5倍以上の範囲まで広がっているため、バスバー電極部40,50が電極層20,22上から剥がれにくい。
【0065】
本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、シート状の封止材6aと、薄膜状の第1集電極25の間に優先的に凝集破壊される第1界面剥離層26が介在している。すなわち、第1集電極25上にあえて凝集破壊しやすい部分を作り、第1集電極25の凝集破壊を抑制しているので、第1集電極25の第1界面剥離層26が覆っている部分は、封止材6aに浮きが発生しても、表側電極層20から第1集電極25の第1バスバー電極部40が剥がれにくい。そのため、長期信頼性が高い。
同様に、本実施形態の太陽電池モジュール1によれば、シート状の封止材6bと、薄膜状の第2集電極35の間に優先的に凝集破壊される第2界面剥離層36が介在している。すなわち、第2集電極35上にあえて凝集破壊しやすい部分を作り、第2集電極35の凝集破壊を抑制しているため、第2集電極35の第2界面剥離層36が覆っている部分は、封止材6bに浮きが発生しても、裏側電極層22から第2集電極35の第2バスバー電極部50が剥がれにくい。そのため、長期信頼性が高い。
【0066】
本発明の第2実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。なお、第1実施形態の太陽電池モジュール1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
本発明の第2実施形態の太陽電池モジュールは、いわゆるPERC型の太陽電池モジュールであり、太陽電池セルが第1実施形態と異なる。
【0068】
第2実施形態の太陽電池セル110は、
図12のように、一導電型半導体基板111(以下、単に半導体基板111ともいう)の一方の主面上に逆導電型半導体層112、反射防止層113、及び第1集電極25を備えている。太陽電池セル110は、半導体基板111の他方の主面上に裏面電界層116、保護層117、裏側電極層118、及び第2集電極35を備えている。
そして、太陽電池セル110は、反射防止層113、逆導電型半導体層112、半導体基板111、裏面電界層116、及び保護層117によって光電変換部120を構成している。
すなわち、太陽電池セル110は、光電変換部120の表側に第1集電極25が形成され、光電変換部120の裏側に裏側電極層118及び第2集電極35が形成されている。
【0069】
半導体基板111は、n型又はp型の半導体基板であり、例えばp型又はn型のシリコン基板などが使用できる。
逆導電型半導体層112は、半導体基板111とは逆の導電型をもつ半導体基板であり、例えば、n型又はp型のシリコン薄膜層などが使用できる。
本実施形態の太陽電池セル110は、半導体基板111がp型のシリコン基板で構成され、逆導電型半導体層112がn型シリコン薄膜層で構成されており、半導体基板111と逆導電型半導体層112でPN接合が形成されている。
【0070】
反射防止層113は、太陽電池セル110の受光面での反射率を低減する層であり、光を光電変換部120に入射した光を光電変換部120内に封じこめる層である。
反射防止層113は、絶縁性を有した絶縁層であり、例えば、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化アルミニウム層などが使用できる。
【0071】
裏面電界層116は、いわゆるBSF(Back Surface Field)層であり、半導体基板111と同一の導電型を有した半導体層である。
裏面電界層116は、ドーパント濃度が半導体基板111よりも高く、内部電界を形成する層である。
裏面電界層116は、例えば、半導体基板111の他方の主面にボロンやアルミニウムなどのドーパント元素を拡散させることによって形成できる。
本実施形態の裏面電界層116は、ドーパント元素としてアルミニウムを使用している。
【0072】
保護層117は、パッシベーション層であり、半導体基板111との界面において少数キャリアの再結合の原因となる欠陥凖位を低減する層である。
保護層117は、絶縁性を有した絶縁層であり、例えば、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化アルミニウム層などが使用できる。
保護層117は、半導体基板111がp型の場合、酸化アルミニウム等の負の固定電荷を有する材料で形成されていることが好ましい。一方、保護層117は、半導体基板111がn型の場合、窒化シリコン等の正の固定電荷を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0073】
裏側電極層118は、光電変換部120から電気を集める電極であり、配線部材11に電気を取り出す取出電極でもある。
裏側電極層118は、導電性を有した導電層であり、例えば、アルミニウムや銀、金、白金、パラジウム等の金属やこれらの合金が使用できる。
【0074】
続いて、第2実施形態の太陽電池モジュールの各部材の位置関係について説明する。主に太陽電池セル110を中心に説明し、第1実施形態と同様のものについては説明を省略する。
【0075】
太陽電池セル110は、
図12~
図14のように、半導体基板111の一方の主面上に逆導電型半導体層112、反射防止層113及び第1集電極25が積層されている。太陽電池モジュールは、
図12のように、反射防止層113を貫通し、逆導電型半導体層112を底部とする表側有底穴121を備えている。
第1集電極25は、表側有底穴121内に充填されており、表側有底穴121の内部で逆導電型半導体層112と接している。すなわち、第1集電極25は、表側有底穴121を介して逆導電型半導体層112と電気的に接続されている。
具体的には、表側有底穴121は、第1バスバー電極部40の延び方向に連続的又は間欠的に延びた有底溝である。
表側有底穴121以外の部分では、逆導電型半導体層112上を反射防止層113が覆っている。
【0076】
第1界面剥離層26は、第1バスバー電極部40の延び方向に対して直交する断面で断面視したときに、幅方向(横方向X)において、第1はんだ層12の両側から広がり、第1バスバー電極部40の端面を経て、反射防止層113上まで延びている。
【0077】
太陽電池セル110は、
図12~
図14のように、半導体基板111の他方の主面上に裏面電界層116、保護層117、及び裏側電極層118が積層されている。
太陽電池セル110は、保護層117を貫通し、裏面電界層116を底部とする裏側有底穴122を備えている。そして、裏側有底穴122には、裏側電極層118が充填されており、裏側有底穴122の内部で裏側電極層118と裏面電界層116が接している。すなわち、裏側電極層118は、裏面電界層116と電気的に接続されている。
具体的には、裏側有底穴122は、第2バスバー電極部50の延び方向に連続的又は間欠的に延びた有底溝である。
裏側有底穴122以外の部分では、裏側電極層118と半導体基板111との間に保護層117が介在しており、裏側電極層118と半導体基板111は、直接接続されていない。
【0078】
第2界面剥離層36は、
図12,
図14のように、第2バスバー電極部50の延び方向に対して直交する断面で断面視したときに、幅方向(横方向X)において、第2はんだ層13の両側の端面と接触し、第2はんだ層13の両側から広がっている。また、第2界面剥離層36は、第2バスバー電極部50の張出部52,53上を経て、第2バスバー電極部50の端面を覆い、さらに裏側電極層118上まで延びている。
【0079】
図12に示される封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度は、反射防止層113と第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きい。すなわち、封止材6aと第1界面剥離層26の界面は、反射防止層113と第1界面剥離層26の界面よりも剥がれにくい。
封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度は、裏側電極層118と第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きい。すなわち、封止材6bと第2界面剥離層36の界面は、裏側電極層118と第2界面剥離層36の界面よりも剥がれにくい。
【0080】
続いて、第2実施形態の太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
【0081】
まず、従来のPERC型の太陽電池セルと同様、光電変換部120を形成し、光電変換部120の裏側に裏側電極層118を形成し、さらに逆導電型半導体層112上に第1集電極25、裏側電極層118上に第2集電極35を形成して太陽電池セル110を形成する(集電極形成工程)。
【0082】
続いて、
図15のように、太陽電池セル110のバスバー電極部40,50に流動性を持つフラックス70を塗布する(塗布工程)。
具体的には、太陽電池セル110の表側では、バスバー電極部40上から反射防止層113上に跨るように、第1バスバー電極部40上から意図的にはみ出して塗布する。同様に、太陽電池セル10の裏側でも、第2バスバー電極部50上から裏側電極層118上に跨るように、バスバー電極部50上から意図的にはみ出して塗布する。
このとき、第1実施形態と同様、表側では、第1バスバー電極部40の側面から反射防止層113上をバスバー電極部40の幅W1の0.5倍以上の範囲までフラックス70を塗布し、裏側では、第2バスバー電極部50の側面から裏側電極層118上を第2バスバー電極部50の幅W3の0.5倍以上の範囲までフラックス70を塗布する。
【0083】
フラックス70で覆われたバスバー電極部40,50上に表面にはんだ71が形成された配線部材11のコネクター部60,61を載せて加熱してはんだ71を溶かし、はんだ71によってバスバー電極部40,50に対して配線部材11のコネクター部60,61を接着する(接着工程)。
【0084】
そして、表面に封止材6a,6bが形成された基材2,3を封止材6a,6b同士が対向し太陽電池セル110を挟むように接着して封止し、必要に応じて端子ボックス等を設けることで太陽電池モジュールが完成する。
【0085】
第2実施形態の太陽電池モジュールによれば、第1バスバー電極部40と第1界面剥離層26の界面の接着強度が封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きく、封止材6aと第1界面剥離層26の界面の接着強度は、反射防止層113と第1界面剥離層26の界面の接着強度よりも大きい。そのため、第1基材2を引っ張って太陽電池ストリング5から剥がしたときに、第1界面剥離層26は、第1バスバー電極部40と接する部分が残り、反射防止層113と接する部分が優先的に剥がれる。その結果、第1バスバー電極部40が反射防止層113から実質的に剥がれない。
また、第2実施形態の太陽電池モジュールによれば、第2バスバー電極部50と第2界面剥離層36の界面の接着強度は、封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きく、封止材6bと第2界面剥離層36の界面の接着強度は、裏側電極層118と第2界面剥離層36の界面の接着強度よりも大きい。そのため、第2基材3を引っ張って太陽電池ストリング5から剥がしたときに、第2界面剥離層36は、第2バスバー電極部50と接する部分が残り、裏側電極層118と接する部分が優先的に剥がれる。その結果、第2バスバー電極部50が裏側電極層118から実質的に剥がれない。
このように、第2実施形態の太陽電池モジュールによれば、基材2,3及び封止材6a,6bを太陽電池ストリング5から剥がした場合でも、通電に寄与する部分が基材2,3及び封止材6a,6bに追随して剥がれないので、初期不良等の評価を正確に行うことができる。
【0086】
第2実施形態の太陽電池モジュールによれば、第1界面剥離層26が第1バスバー電極部40上から光電変換部120上に跨って設けられ、第1バスバー電極部40の側面から第1バスバー電極部40の幅W1の0.5倍以上の範囲まで広がっているため、第1バスバー電極部40が光電変換部120上から剥がれにくい。
【0087】
第2実施形態の太陽電池モジュールによれば、第2界面剥離層36が第2バスバー電極部50上から裏側電極層118上に跨って設けられ、第2バスバー電極部50の側面から第2バスバー電極部50の幅W3の0.5倍以上の範囲まで広がっているため、第2バスバー電極部50が裏側電極層118上から剥がれにくい。
【0088】
本発明の第3実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。
【0089】
第3実施形態の太陽電池モジュールは、
図16のように、第1実施形態の太陽電池モジュールにおいて、光電変換部21を基準として配線部材11の外側を覆う界面剥離層246,256をさらに備えている。
界面剥離層246,256は、第1界面剥離層26と同様、透光性を有し、主成分としてロジン化合物を含む有機化合物層であり、フラックス70が硬化したフラックス層である。
【0090】
続いて、第3実施形態の太陽電池モジュールの各部材の位置関係について説明する。
【0091】
界面剥離層246,256は、
図16のように、第1バスバー電極部40の延び方向に対して直交する断面で断面視したときに、光電変換部21を基準として、配線部材11,11の外側に位置している。また、界面剥離層246,256は、配線部材11,11と封止材6a,6bとの間に介在しており、配線部材11,11の側面及び外側面を覆っている。すなわち、界面剥離層246,256は、配線部材11,11の界面剥離層26,36からの露出部分を覆っており、さらに界面剥離層26,36の一部も覆っている。
【0092】
ここで、バスバー電極部40,50と界面剥離層26,36,246,256と封止材6a,6bとの接着強度の関係について説明する。
【0093】
配線部材11,11と界面剥離層246,256の界面の接着強度は、界面剥離層246,256と封止材6a,6bの界面の接着強度よりも大きい。
はんだ層12,13を介した配線部材11,11とバスバー電極部40,50の接着強度は、配線部材11,11と界面剥離層246,256の界面の接着強度よりも大きい。
すなわち、配線部材11,11とバスバー電極部40,50の界面は、配線部材11,11と界面剥離層246,256の界面よりも剥がれにくく、界面剥離層246,256と封止材6a,6bの界面の接着強度よりも剥がれにくい。
【0094】
第3実施形態の太陽電池モジュールの製造方法は、第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法とほぼ同様であり、接着工程後に再度、フラックス70を配線部材11に塗布し、その後、封止材6a,6bが形成された基材2,3で挟んで封止する。
【0095】
第3実施形態の太陽電池モジュールによれば、配線部材11,11とバスバー電極部40,50の界面は、配線部材11,11と界面剥離層246,256の界面よりも剥がれにくく、界面剥離層246,256と封止材6a,6bの界面の接着強度よりも剥がれにくい。そのため、第1基材2を引っ張って封止材6aを太陽電池ストリング5から剥がしたときに、界面剥離層246は、
図17(a)のように、凝集破壊されるか、封止材6a,6bと界面で優先的に剥がれる。その結果、第1バスバー電極部40の延び方向に対して直交する断面において、配線部材11と接する部分が残り、封止材6aと接する部分が優先的に剥がれる。それ故に、配線部材11が第1バスバー電極部40から実質的に剥がれない。同様に、第2基材3を引っ張って封止材6bを太陽電池ストリング5から剥がしたときに、界面剥離層256は、
図17(b)のように、凝集破壊されるか、封止材6a,6bと界面で優先的に剥がれる。その結果、第2バスバー電極部50の延び方向に対して直交する断面において、配線部材11と接する部分が残り、封止材6bと接する部分が優先的に剥がれる。それ故に、配線部材11が第2バスバー電極部50から実質的に剥がれない。
【0096】
第3実施形態の太陽電池モジュールによれば、封止材6a,6bと配線部材11,11の間に優先的に凝集破壊される界面剥離層246,256が介在している。すなわち、配線部材11,11上にあえて凝集破壊しやすい部分を作っているので、第1界面剥離層26が覆っている配線部材11,11は、封止材6a,6bに浮きが発生しても、バスバー電極部40,50から配線部材11,11が剥がれにくい。そのため、長期信頼性が高い。
【0097】
本発明の第4実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。
【0098】
第4実施形態の太陽電池モジュールは、太陽電池ストリングの構造が第2実施形態と異なる。すなわち、第4実施形態の太陽電池ストリングは、
図18のように、太陽電池セル110と、配線部材11と、はんだ層12,13を備え、配線部材11の外側に第3実施形態と同様、界面剥離層246,256を備えている。
【0099】
上記した第1実施形態では、光電変換部21上に表側電極層20及び裏側電極層22が形成され、集電極25,35は、表側電極層20及び裏側電極層22を介して光電変換部21と電気的に接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。光電変換部21上に直接集電極25,35を形成してもよい。
【0100】
上記した実施形態では、集電極25,35は、フィンガー電極部41,51を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。集電極25,35は、フィンガー電極部41,51を備えていなくてもよい。
【0101】
上記した実施形態では、各太陽電池セルは、二本の配線部材11によって接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。一本の配線部材11によって接続されていてもよいし、三本以上の配線部材11によって接続されていてもよい。
【0102】
上記した実施形態では、はんだ層12,13は、配線部材11の表面にコーティングされたはんだ71によって形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。はんだ層12,13は、配線部材11とは別途用意されたはんだによって形成されていてもよい。
【0103】
上記した実施形態では、第1バスバー電極部40と第2バスバー電極部50は、異なる幅であったが、本発明はこれに限定されるものではない。第1バスバー電極部40と第2バスバー電極部50は、同じ幅であってもよい。
【0104】
上記した実施形態では、第1バスバー電極部40は、配線部材11の幅と同じ幅であったが、本発明はこれに限定されるものではない。第1バスバー電極部40は、配線部材11の幅よりも幅が広くてもよい。
また、上記した実施形態では、第2バスバー電極部50の幅は、配線部材11の幅よりも広いが、本発明はこれに限定されるものではない。第2バスバー電極部50は、配線部材11の幅と同じ幅であってもよい。
【0105】
上記した実施形態では、第1基材2の主面を受光面とする片面受光型の太陽電池モジュールの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1基材2の主面及び第2基材3の主面の両面を受光面とする両面受光型の太陽電池モジュールであってもよい。
【0106】
上記した実施形態では、界面剥離層をフラックスによって形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。界面剥離層を他の材料によって形成してもよい。
【0107】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0108】
1 太陽電池モジュール
2 第1基材
3 第2基材
5 太陽電池ストリング
6a,6b 封止材
10,10a,10b,110 太陽電池セル
11 配線部材
12,13 はんだ層
20 表側電極層
21 光電変換部
22 裏側電極層
25 第1集電極
26 第1界面剥離層
35 第2集電極
36 第2界面剥離層
40 第1バスバー電極部
41 第1フィンガー電極部
50 第2バスバー電極部
51 第2フィンガー電極部
52,53 張出部
111 一導電型半導体基板
112 逆導電型半導体層
113 反射防止層
116 裏面電界層
117 保護層
118 裏面電極層
120 光電変換部
246,256 界面剥離層