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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】脱バインダと焼結中の部品の支持体
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/43 20210101AFI20240703BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20240703BHJP
   B22F 10/16 20210101ALI20240703BHJP
   B22F 10/66 20210101ALI20240703BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240703BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240703BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
B22F10/43
B22F10/25
B22F10/16
B22F10/66
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021531292
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 IL2019051362
(87)【国際公開番号】W WO2020129049
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】62/780,273
(32)【優先日】2018-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519383061
【氏名又は名称】トリトン テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRITONE TECHNOLOGIES LTD.
【住所又は居所原語表記】12 Amal Street, Park Afek Industrial Zone, Rosh HaAyin, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ズール、オフェル
(72)【発明者】
【氏名】ペレド、ハガイ
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203331(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0269320(US,A1)
【文献】特表2018-505309(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107257719(CN,A)
【文献】特開平08-081701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0075619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0303654(US,A1)
【文献】特開2018-031037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品又は製品用の部品を製造する方法であって、
前記製品又は前記部品が、積層造形を使用して作製された型の層毎の充填によって形成され、一旦形成された前記製品又は前記部品は焼結を必要とし、
前記製品又は前記部品と相補的な形状を有する支持部材を、積層造形を使用して作製された型の層毎の充填によって製造することと、
前記焼結を行うことと、
前記製品又は前記部品を前記相補的な形状に嵌合させることによって、前記焼結中に前記製品又は前記部品を支持することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記製品又は前記部品が、バインダ中に金属粉末を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持部材が、前記製品又は前記部品の焼結温度よりも高い融点を有するように選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支持部材が、前記焼結温度での前記製品又は前記部品の膨張係数と同じ膨張係数を有する材料を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記製品又は前記部品がステンレス鋼を含み、前記支持部材Al を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記製品又は前記部品がチタンを含み、前記支持部材ZrO を含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記製品又は前記部品と前記支持部材とが、同じ材料を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記同じ材料が金属を含むか、又は前記同じ材料がセラミックを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記製品又は前記部品を焼結するための前記嵌合の前に、前記支持部材を用いて焼結を行うことを含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記製品又は前記部品と前記支持部材とを、マルチステーションマシンの異なるステーションで単一のプロセスを使用して作製することを含む、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記製品又は前記部品と前記支持部材とを、単一の積層造形プロセスにおいて一緒に作製することと、前記製品又は前記部品と前記支持部材とを、別々に前記焼結に持っていくことと、を含む、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記製品又は前記部品と前記支持部材とを、単一の印刷ファイルを用いて作製することを含む、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記製品又は前記部品と前記支持部材との共通表面を前記印刷ファイルから特定することと、前記製品又は前記部品と前記支持部材の、それぞれ反対側から埋められた前記共通表面の版を印刷して、前記相補的な形状を画定することと、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記製品又は前記部品と前記支持部材のうちの少なくとも1つが、
積層造形を使用して第1の型を印刷して、前記製品、前記部品又は前記支持部材の1つの層を画定することと、
前記第1の型にペースト材料を充填して、第1の層を形成することと、
前記第1の層の上に第2の型を印刷して、第2の層を画定することと、
前記第1の層の上の前記第2の層にペースト材料を充填して、成形された層状の製品、部品又は支持部材を形成することと、
によって製造される、
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年12月16日出願の米国仮特許出願第62/780,273号からの優先権の利益を主張するものであり、米国仮特許出願第62/780,273号の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、脱バインダ及び焼結中の部品のための支持体に関し、より詳細には、これに限定されるものではないが、積層造形(Additive manufacture)を含むプロセスを使用して達成することができる部品の比較的複雑な形状に適した支持体に関する。
【背景技術】
【0003】
積層造形は、異なる材料から構成される部品を製造するプロセスの全体又は一部として、様々な方法で使用され得る。
【0004】
場合によっては、積層造形で製造された部品は、製造後に様々な種類の熱処理を必要とする。したがって、例えば、未焼結の金属部品(green metal parts)は、粉末とバインダとの混合物として製造され得、バインダを除去し、金属粉末を結合させるために、脱バインダ及び焼結が必要となる場合がある。
【0005】
高温焼結プロセス中に、未焼結の部品は約10%~25%収縮する。部品が収縮している間であって部品が最終的な密度に完全に到達する前に、部品が適切に支持されていない場合、重力と摩擦力とで部品が歪んでしまう可能性がある。高温、特に融点に近い温度では、部品はたわみや歪みの影響を受けやすくなる。
【0006】
これを避けるために、金属射出成形などの粉末冶金技術では、大きく平坦な表面を持つ部品を設計したり、共通の平面を持ついくつかの部品の特徴を設計することで、焼結中に平坦な表面を標準的な支持部材で支持したり、互いに支持し合ったりすることが一般的である。
【0007】
未焼結の部品は、熱プロセスの間、未焼結の部品と相互作用しない材料で作られたプレート上に配置することが一般的である。例えば、ステンレス製の部品は、脱バインダ及び焼結プロセスの間、例えば、その耐火性で知られているアルミナ製のセラミックプレート上に配置される。
【0008】
図1は、平坦な表面と円筒状の延長部とを有する部品14を支持するドリル穴12を備えたセラミックプレート10を示しており、部品14の下側の面は符号16で示されている。
【0009】
図2は、今度は機械加工された支柱22を備えた別のセラミックプレート20を示している。この支柱22は、部品24の凹形状に嵌合しており、部品24の下側の面は符号26で示されている。
【0010】
上記のいずれも適切でない場合は、カスタムな支持体や部品固有の支持体が必要になるが、これらの支持体は、製造に費用がかかり、追加の工具コストを表す可能性がある。使用される特殊な支持体には様々なタイプがある。最も単純なタイプの脱バインダ及び焼結用の支持体は、図3の30で示すようなセラミックストリップである。ストリップは、完成部品32の寸法要件を満たすために、異なる高さ及び幅で提供される。
【0011】
設計が許せば、成形された支持体を設けることができるが、これは部品に非機能的な特徴を追加することになる。
【0012】
図4は、成形された支持体42を有する部品40を示す。代替として、支持体は機械加工されていてもよい。図5は、標準プレート52上に支持された部品50の別の例を示す。
【0013】
積層造形では、複雑な幾何学的形状が製造されるため、高精度で安定した部品の製造のためには、適切な支持体が必要になる。しかしながら、既存の技術のカスタマイズされた製品(図3及び図4)でさえ、複雑な幾何学的形状に適した支持体を提供していない。
【発明の概要】
【0014】
本実施形態は、焼結支持体が、焼結を必要とする部品と同じプロセスで製造されるプロセスに関する。一実施形態では、部品及び支持体が、積層造形を含む統合プロセスで提供されてもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、製品又は製品の部品を製造する方法であって、製品又は部品が、積層造形を用いたプロセスで製造され、一旦形成された製品又は部品が焼結を必要とする方法が提供される。この方法は、積層造形を使用するプロセスを用いて、製品又は部品と相補的な形状を有する支持部材を製造することと、製品又は部品を相補的な形状に嵌合させることによって、焼結中に製品又は部品を支持することと、を含む。
【0016】
一実施形態では、製品又は部品がバインダ中に金属粉末を含む。
【0017】
一実施形態では、支持部材(support components)が、製品又は部品の焼結温度よりも高い融点を有するように選択された材料から作製されている。
【0018】
一実施形態では、支持体部分(support part)が、焼結温度における製品又は部品の膨張係数に近い膨張係数を有する材料から作製されている。
【0019】
一実施形態では、製品又は部品がステンレス鋼を含み、支持体がAlを含む。
【0020】
一実施形態では、製品又は部品がチタンを含み、支持体がZrOを含む。
【0021】
一実施形態では、製品又は部品と支持体とが同じ材料を含む。
【0022】
一実施形態では、同じ材料が金属を含むか、又は同じ材料がセラミックを含む。
【0023】
本方法は、製品又は部品を焼結するための嵌合の前に、支持体を用いて焼結を行うことを含むことができる。
【0024】
本方法は、製品又は部品と支持体とを、マルチステーションマシンの異なるステーション上で単一のプロセスを使用して製造することを含んでもよい。
【0025】
本方法は、製品又は部品と支持体とを、単一の積層造形プロセスで一緒に作製することと、製品又は部品と支持体とを、別々に焼結プロセスに持っていくことと、を含むことができる。
【0026】
本方法は、製品又は部品と支持体とを、単一の印刷ファイルを用いて作製することを含むことができる。
【0027】
本方法は、製品又は部品と支持体との共通表面を、印刷ファイルから特定することと、製品又は部品と支持体の、それぞれ反対側から埋められた共通表面の版を印刷して、それによって相補的な形状を画定することと、を含むことができる。
【0028】
一実施形態では、製品又は部品と支持体の少なくとも1つは、
積層造形を使用して第1の型を印刷し、製品、部品、又は支持体の1つの層を画定し、
第1の型にペースト材料を充填して、第1の層を形成し、
第1の層の上に第2の型を印刷し、第2の層を画定し、
第1の層の上の第2の層にペースト材料を充填して、成形された層状の製品、部品、又は支持体を形成する、ことによって製造される。
【0029】
一実施形態では、支持体と部品との嵌合は、部品と支持体との間に屈折層を設けることを含む。
【0030】
一実施形態では、屈折層がペーストであり、コーティングによって塗布されるか、又は屈折層がスプレーであり、スプレーによって塗布される。
【0031】
本実施形態のさらなる態様によれば、積層造形を用い、焼結を必要とするプロセスにおいて、製品、製品の部品、又は支持体部分を製造するための装置であって、焼結中に支持体部分が製品又は製品を支持する、装置が提供される。
本装置は、
プロセスのそれぞれの工程を実行するための複数のステーションと、
前記複数のステーションの間で印刷トレイを搬送するように構成された搬送部材と、
コントローラと、を含み、
ステーションのうちの1つが、積層造形を用いて部品の層を画定する型を印刷するように構成された積層造形ステーションであり、
前記ステーションのうちの1つが、型内に画定された空間に第1のペーストを広げるように構成された第1のペースト供給ステーションであり、
前記ステーションのうちの1つが、ペーストを乾燥するように構成された乾燥ステーションであり、
コントローラは、搬送部材を操作して、部品が完成するまでトレイをステーションに連続的に提示するように構成されている。
【0032】
一実施形態では、搬送部材は回転部材であり、ステーションは回転部材の回転経路の周りに配置されている。
【0033】
本装置は、第2のペースト供給ステーションを備えてもよい。第2の空間供給ステーションは、第2のペーストを型内に画定された空間に広げるように構成されており、第2のペーストは第1のペーストとは異なり、第1のペースト供給ステーションは製品又は製品の部品に供給するように制御可能であり、第2のペースト供給ステーションは支持体部分に供給するように構成されている。
【0034】
本装置は、真空ステーションを備えていてもよく、真空ステーションは、それぞれのトレイを真空フードで覆い、真空を印加して第1のペースト又は第2のペーストを乾燥させるように構成されている。
【0035】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験で使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に説明する。矛盾する場合には、定義を含む特許明細書が優先される。また、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定的であることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、本明細書において単に例示として説明される。ここで図面を詳細に参照すると、示される特定の事項は例示であり、本発明の実施形態の説明を目的としたものであることが強調される。これに関連して、図面を参照した説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにするものである。
図1図1は、ドリル穴又はポケットを備えた従来技術のセラミック支持プレートを示す簡略図である。
図2図2は、機械加工された支柱を備えた従来技術のセラミック支持プレートを示す簡略図である。
図3図3は、従来技術のセラミックストリップを示す簡略図である。
図4図4は、従来技術の成形された支持体を示す簡略図である。
図5図5は、部品が挿入された従来技術のセラミック支持プレートを示す簡略図である。
図6図6は、カスタムメイドの支持体が必要とされる、積層造形を使用して製造された部品を示す簡略図である。
図7図7は、本実施形態に従って同じ又は類似の積層造形プロセスで製造された、図6の部品のためのカスタムメイドの支持体を示す簡略図である。
図8図8は、本実施形態による焼結のために、互いに嵌合させた図6の部品と図7の支持体とを示す簡略図である。
図9図9は、本実施形態に係る統合製造プロセスにおいて、部品を製造する処理ステーションと部品に対してカスタマイズされた支持体とを備えた回転テーブル装置を上方から見た簡略図である。
図10図10は、本実施形態に係る統合製造プロセスの簡略フローチャートであり、図9の回転テーブル装置に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、脱バインダ及び焼結中の部品のための支持体に関し、これに限定されるものではないが、より詳細には、積層造形を含むプロセスを使用して実現可能な比較的複雑な形状の部品に適した支持体に関する。
【0038】
本実施形態は、製品又は部品が積層造形を使用するプロセスで製造され、焼結を必要とする、製品又は製品のための部品を製造するための方法を提供する。この方法は、積層造形も含む関連プロセスにおいて、製品又は部品を支持するために相補的な形状、又は少なくともカスタマイズされた形状を有する支持部材を製造することと、焼結のために炉内に配置する前に、製品又は部品を相補的な形状に嵌合させることによって、焼結中に製品又は部品を支持することと、を含む。
【0039】
本発明者らによる先行する未公開の提案は、成形された層状の製品を製造するための方法及び装置を教示している。この方法は、積層造形を使用して型(mold)を印刷し、製品の1つの層を画定すること、ペースト材料又は鋳造材料などを型に充填し、第1の層を形成することと、再び積層造形を使用して第1の層の上に第2の型を印刷し、第2の層を画定することと、第1の層の上の第2の型に同じペースト材料又は鋳造材料を充填することと、を含む。成形された層状の製品又は部分製品が形成されるまで、型の印刷ステップとペースト(pasting)ステップとを交互に繰り返す。
【0040】
上記のプロセスでは、最終製品に脱バインダ及び焼結が必要となることが多い。本実施形態では、同じモールド&ペーストプロセスを使用してカスタマイズされた支持体部分を提供することができる。
【0041】
一実施形態では、製品部分と製品部分のためのカスタムメイドの支持体とが、積層造形を含む単一のプロセスで一緒に製造される統合プロセスが提供される。製品部分は、従来の積層造形を使用して製造されてもよく、又は上述の提案を使用して製造されてもよい。また、支持体は、同じプロセス又は非常に類似したプロセスを使用して製品部分と一緒に製造されてもよい。
【0042】
実施形態では、支持体は、製品部分と同じ材料ではなく、製品部分の材料の焼結温度よりも高い融点を有する材料から製造される。しかしながら、支持体部分の膨張係数は、焼結温度以上で、製品部分の膨張係数にできるだけ近くてもよい。
【0043】
上記のプロセスでは、支持体は部品と一緒に焼結され、1回限りの使用になる。支持体は、部品とは異なる材料であってもよい。あるいは、部品と支持体の両方に対して同じ膨張係数を保証するために、支持体が部品と同じ材料であってもよい。この場合、焼結プロセス中の融解を防止するために、支持体の界面表面が異なる材料で軽くコーティングされてもよい。
【0044】
別の実施形態では、支持体は、部品とは異なる材料から予め作製され、使用前に焼結される。この場合、支持体は複数回使用することができる。
【0045】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の明細書に記載され、及び/又は、図面及び/又は実施例に示される、部材及び/又は方法の構成及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、或いは、様々な方法で実施又は実行され得る。
【0046】
図6を参照すると、図6は例示的な部品60を示しており、この部品60は、特に鋼又はチタンを含む金属から作製されていてもよく、又はセラミックから作製されていてもよい。部品(component or part)は、積層造形を使用して製造されてもよく、例えば、各層のために型を印刷し、次の層に進む前にペーストを充填するという上述の先行提案の技術を用いて製造されてもよい。上記の材料は、金属又はセラミックが、バインダと一緒にペースト中の粉末として提供されてもよいので、この技術に特に適している。型を取り除いた後、バインダは脱バインダ処理で除去され、粉末は焼結中に融合する。
【0047】
図示されている例示的な部品は、より小さな半径の中間円筒64によって支持された下部円筒62を含む形状を有しており、この中間円筒64は、略矩形の形状66を支持している。2つの小さな円筒68は、略矩形の形状66から延在しており、小さな穴70は、略矩形の形状において中間円筒64の上方に配置されている。図6の例示的な部品に類似した部品は、機械的構造においてしばしば必要とされ、非常に正確な仕様に従って注文されることが多い。
【0048】
部品60を下から見ると、外側の輪郭は下部円筒62の底部に沿い、次いで、下部円筒の外周の周りを上昇する。次いで、輪郭は、上側の矩形の形状66の下面まで上昇する。したがって、下部円筒の周囲に嵌合し、矩形の形状を下から保持するように延びる肩部を有する支持体が必要とされる。より詳細には、上側の矩形の形状66の下面は、宙に浮い
ているため、加熱により軟化すると重力によって撓んで歪む可能性がある。したがって、矩形の形状には支持体が必要である。というのは、非常に高い温度では、材料が柔らかく、ヤング率が相対的に非常に低いからである。
【0049】
図7は、例示的な部品60を支持するための解決策を提供する形状を有する支持体80を示している。支持体80は、例えばAl(アルミナ)等のセラミックから作製されており、セラミックの材料は、部品60の焼結温度よりも高い融点を有するように選択される。また、この材料は、少なくとも焼結温度に対して、部品60の係数に近い膨張係数を有するように選択される。
【0050】
支持体80は、その基部84に円形の切り欠き82を有しており、この基部は下部円筒62と相補的であり、下部円筒62が円形の切り欠き82に嵌合するようになっている。2つの肩部86は、上方に延在し、略矩形の形状66の下面に到達する。肩部は、略矩形の形状66の下側全体にわたって延在する必要はなく、すべてを網羅する嵌合ではなく支持嵌合のみが必要であることに留意されたい。
【0051】
図8を参照すると、図8は、脱バインダ及び焼結の準備のために、支持体70と嵌合させた部品60を示している。上述したように、部品60の下部円筒62は、支持体の基部84の円形の切り欠き82に嵌まる。肩部86は、上方に延在して、略矩形の形状66の下面に到達する。こうして、部品60の全ての下向きの表面は、焼結プロセス中に支持される。
【0052】
図9を参照すると、図9は、統合プロセスにおいて、金属部品と支持体とを一緒に印刷するマルチステーション印刷機90を示す簡略図である。この印刷機は、ここでは4つのステーション94.1・・・94.4を有する回転テーブル92を備えているが、4つのステーションは単に例示的なものであり、プロセスに適した任意の数のステーションを設けてもよいことに留意されたい。テーブルには、テーブルと一緒に回転する印刷パレット又は印刷プレート96.1・・・96.4があり、ステーションは、印刷プロセスのそれぞれの工程を実行する。これについては、図10で以下に説明する。様々なステーションは、製品又は部品とこれに対応する支持体部分とを並列に印刷するために協働することができる。矢印98は、テーブル92の回転方向を示している。1つの層を作るために実行されるいくつかのプロセスがあり、特定のプロセスは部品及び支持体に共通であり、他のプロセスはそれぞれに固有である。
【0053】
したがって、製品及び支持体が異なる材料を使用する場合、必要とされ得るシーケンスは、型の印刷と、部品へのペーストの塗布(この工程は、金属部品に対して行われ、支持体に対しては行われない)と、支持体へのペーストの塗布(この工程は、セラミック部品に対してのみ行われる)と、乾燥と、真空を用いた硬化(Hardening)と、を含み得る。
【0054】
これらのプロセスの各々は、特定のステーションで提供される。従って、5つのステーションを与えることができる。特定のトレイでは、5つのステーションのうち4つのステーションだけがアクティブになる。このようにして、統合された生産プロセスでは、1つの生産プロセスで部品と支持体の両方を並行して製造することができる。
【0055】
図10を参照すると、図10は上述の提案による積層造形を含むプロセスの様々な工程を示す簡略化された図であり、図9の回転テーブル上で部品及び支持体を一緒に製造するために本実施形態に適用することができる。第1のボックス100は、印刷される層を画定するために型を印刷することを示す。型は、公知の積層造形技術と、インクジェットノズルを用いた印刷ヘッドを使用して印刷することができる。ボックス102は、ペースト材料を広げて、ボックス100で印刷された型を充填することを示す。スキージやブレードを使用して、ペースト材料を型全体にスムーズに広げることができる。その後、ペースト材料は、最終的に成形される層状部品の層を形成することができるが、この時点では、かなりの液体を含有した柔らかい状態である。
【0056】
図9に関して上述したように、部品及び支持体には異なるペースト材料を使用することができ、したがって、異なるステーションで処理することができる。
【0057】
ボックス104では、この層を温風の流れで乾燥させる。次いで、印刷プレートの上に真空チャンバを配置し、この層を予め設定された時間真空に曝すことができる(106)。真空により、ペースト内の水又は他の液体が沸点を超えてペーストから蒸発し、硬化が起きる。この時点で、この層を平面化することができる。
【0058】
ボックス108では、製品部分、又は支持体が完成するまで、プロセスの結果が、後続の層を印刷するために送られる(112)。
【0059】
完成すると、部品と支持体とが嵌合され(110)、焼結のために炉に入れられる。実施形態では、部品と支持体との間に界面層を追加してもよい。界面層は、セラミックであってもよく、ペースト又はスプレーとして添加されてもよい。
【0060】
型は、ペースト材料を保持するのに十分な強度を有する、任意の標準的な型印刷材料を使用して印刷することができる。実施形態では、層は鋳造(cast)されてもよく、その場合、型は、鋳造温度及び他の鋳造条件で鋳造材料を保持することが必要とされてもよい。
【0061】
型の印刷には、熱溶解積層法(FDM:fused deposition modeling)又はインクジェット印刷などの任意の標準的な3D印刷技術を用いることができる。
【0062】
実施形態では、型印刷材料は、ペースト材料、鋳造材料、又は他の充填材料の融点よりも低い融点温度を有しており、その結果、製品ができあがると、加熱して型を除去することができる。或いは、適切な溶媒に溶解することによって、型を除去することができる。
【0063】
鋳造材料は、型に充填することができ、その後、例えば乾燥若しくは冷却によって、又は任意のエネルギー活性化遷移反応によって硬化させることができるか、又は焼結して製品に必要な性状を付与することができる、任意の材料であってもよい。しかしながら、本実施形態では、特に焼結を対象としている。実施形態では、鋳造材料又はペーストは、バインダと、セラミック粉末、金属粉末、又は材料の混合物のいずれかとの混合物であってもよい。バインダは、硬化性を付与するために活性化されたワックス、モノマー、又はオリゴマー、或いは、乾燥して鋳造材料を硬化させるポリマーエマルジョンや溶解ポリマーなどである。典型的には、部品に金属粉末が使用され、支持体にセラミック粉末が使用されるが、いくつかの製品では、同様に、製品にセラミックを使用することができるし、また、いくつかの製品では、支持体に金属を使用することができる。
【0064】
型に充填するために使用される材料は、セラミック粒子又は金属粒子(任意選択で数種類の粉末の混合物)を、水や有機溶媒(ポリオレフィン、アルコール、グリコール、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、グリコールエーテルアセテートなど)等の液体キャリア中に懸濁させた、スリップ、スラリー、又はペースト混合物を含んでいてもよい。そして、鋳造材料は、粉体又は粉体混合物を60重量%~95重量%で含む水又は溶媒ベースの組成物などの、混合物を含むことができる。
【0065】
実施形態では、型印刷材料が、ペースト材料又は他の充填材料の粘度より高い粘度を有してもよく、その結果、ペースト材料が広げられたときに型はそのまま残る。ペースト材料は、型を充填するために良好な湿潤特性を有していてもよい。
【0066】
ペーストの塗布、鋳造、又は注入は、必要な機械的特性を提供するために材料を厳密に制御しながら、高温で実施することができる。注入には、供給制御ユニットからなる液体供給システムを使用することができる。充填材料の量は、容積、オーバーフロー係数など、供給されるサブモールドパラメータに応じて設定することができる。次に、ペースト材料は、上述したスキージやブレードのような機械的手段によって、又は任意の振動手順を用いたそれ自体の自己レベリング特性の下で水平にされてもよい。
【0067】
その後、サブモールド、すなわち個々の層の型は、アセンブリをより高い温度に曝すことによって、例えば酸を使用した化学溶解プロセスによって、溶剤に浸漬して型材料を溶解することによって、又は他のプロセスによって除去され得る。ワックスベースの型の場合、適切な温度は100℃~200℃の範囲であり得る。
【0068】
脱バインダ及び焼結の工程は、鋳造材料の活性部分の脱バインダ及び焼結を可能にするために、温度を上昇させることを含み得る。脱バインダ及び焼結の典型的な温度は、最終製品の正確な材料と要求される機械的特性とに応じて、200℃~1800℃の範囲である。
【0069】
支持体の材料は、セラミック材料であってもよく、ある実施形態では金属部品と一緒に焼結される。したがって、セラミック製の支持体部分は、金属部品と同様に未焼結の段階にある。このような場合、支持体の材料は、両方の材料の収縮率が同様になるように選択される。このような支持体は、1回限りの使用となる。
【0070】
あるいは、支持体の材料は、すでに焼結されたセラミック材料である。支持体は熱処理のために部品に取り付けられるが、すでに焼結されているので、支持体部分は全く変化しない可能性がある。支持体部分は、多くのプロセスで複数回にわたって使用することができる。
【0071】
さらなる代替として、支持体部分は、部品自体と同じ金属材料から作製され、金属部品と一緒に焼結されてもよい。支持体部分は、部品と同様に未焼結の段階にある。
【0072】
焼結プロセスにおいて部品が支持体と融合するのを防止するために、支持体部分にAl のような微細な耐火材料でコーティング又は噴霧して、界面層として機能させてもよい。もちろん、両方の部分の収縮率は同様であるが、耐火性材料の層は、一緒に融合することからアセンブリを保護する。
【0073】
実施形態では、支持体は、バインダと共に粉末を含むペーストを成形する製品部分と同じ方法で構築される。実施形態では、異なるペーストが使用される。
【0074】
脱バインダ及び焼結の間、部品はそのカスタマイズされた支持体と嵌合され、2つの部分は炉内に一緒に配置される。熱処理後、支持体部分は取り外される。
【0075】
本出願から得られる特許の存続期間中に、セラミックや金属を扱う技術を含む、関連する多くの積層造形技術やモールド技術が開発されることが予想されるが、対応する用語の範囲は、このような新しい技術のすべてを先験的に含むことが意図される。
【0076】
すなわち、「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「having」、及びそれらの結合は、「~を含むが、~に限定されない」という意味である。
【0077】
「consisting of」という用語は、「~を含み、~に限定される」という意味である。
【0078】
本明細書では、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の参照を含む。
【0079】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に、任意の適切なサブコンビネーションで、又は本発明の任意の他の説明された実施形態において適切なものとして提供されてもよい。いずれの場合も、本明細書は、そのような実施形態が明示的に規定されているかのように解釈されるべきである。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、それらの要素がないと実施形態が動作しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0080】
本発明をその具体的な実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替物、修正、及び変形が当業者には明白であろうことは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にある、そのような代替物、修正、及び変形のすべてを包含することが意図される。
【0081】
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書に組み込まれるように具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。加えて、本出願における任意の引用文献又は特定文献は、これらの文献が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0082】
さらに、本出願の任意の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

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