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▶ エナジャイザー ブランズ リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電気化学セルグロメット
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/586 20210101AFI20240703BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20240703BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240703BHJP
   H01M 50/59 20210101ALI20240703BHJP
【FI】
H01M50/586
H01M12/06 A
H01M50/184 E
H01M50/59
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021534172
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019066406
(87)【国際公開番号】W WO2020124053
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】62/780,162
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516268286
【氏名又は名称】エナジャイザー ブランズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】モーテンセン エリク
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー トッド
(72)【発明者】
【氏名】コーリス マイケル
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0138705(US,A1)
【文献】特開昭63-294664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/183-198
H01M 50/572-598
H01M 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学ボタンセルで使用するための、前記ボタンセルのアノード缶をカソード缶から電気的に絶縁するグロメットであって、
長手方向軸の周りに延びる上部及び下部を有する略管状の側壁であって、前記上部が前記下部から離れて上方に延びるにつれて前記長手方向軸から離れて方に拡がり、前記下部が、前記略管状の側壁から離れて半径方向内方に延びる脚部を有している、前記略管状の側壁と、
互いに離間して配置され、不連続プルリングを形成する複数の突起であって、前記不連続プルリングは前記上部の上面に近接して配置され、前記複数の突起は前記略管状の側壁の前記上部から前記長手方向軸に向かって半径方向内方に延び、前記複数の突起は4つ以下の突起を含む、前記複数の突起と、
を備え
前記複数の突起のうちの少なくとも1つの突起が、頂点を有する三角形断面形状によって定められ、前記頂点は、前記上部において前記不連続プルリングを有しない部位よりも1.2~2.0倍厚い、前記上部における最大材料厚さの部位を定める、グロメット。
【請求項2】
前記複数の突起における各突起は、2つの隣接する突起からほぼ等しい量だけ角度方向に離間して配置されている、請求項に記載のグロメット。
【請求項3】
前記各突起が前記上部から内方に凸状に延びる、請求項1に記載のグロメット。
【請求項4】
前記各突起は、前記長手方向軸に向かって内方に延びて、前記長手方向軸から極小距離に位置する頂点を定める、請求項に記載のグロメット。
【請求項5】
前記複数の突起の各々の突起の断面は、前記略管状の側壁から離れて内方に延びるにつれて変化する、請求項に記載のグロメット。
【請求項6】
前記グロメットが誘電体材料で形成される、請求項1に記載のグロメット。
【請求項7】
前記上部の材料の厚さが、前記下部から離れて延びるにつれて増加する、請求項1に記載のグロメット。
【請求項8】
前記各突起の前記頂点の軸方向位置が、前記上部における前記最大材料厚さの部位を定める、請求項に記載のグロメット。
【請求項9】
前記複数の突起の各突起が、前記各突起軸方向位置が同じになるように整列している、請求項1に記載のグロメット。
【請求項10】
前記各突起は、前記略管状の側壁において弦部を定める外縁を含む、請求項1に記載のグロメット。
【請求項11】
前記各突起は、第1の端部及び第2の端部を含むベースによって定められ、前記第1の端部及び前記第2の端部は、前記略管状の側壁の前記上部において互いに約15度~約45度の間で角度方向に離間して配置される、請求項1に記載のグロメット。
【請求項12】
前記第1の端部及び前記第2の端部は、約30度だけ角度方向に離間して配置されている、請求項11に記載のグロメット。
【請求項13】
電気化学セルであって、
底壁と、ベースから上方に延びる側壁とを有する導電性カソード缶を含み、前記底壁及び前記側壁が協働して前記カソード缶のキャビティを定める、カソードと、
上壁と該上壁から離れて延びる側壁とを有する導電性アノード缶を含むアノードであって、前記アノードの前記上壁及び前記側壁が協働して前記アノード缶のキャビティを定め、前記アノード缶が前記カソード缶内に少なくとも部分的に配置され、前記アノード缶側壁の少なくとも一部が前記カソード缶側壁の少なくとも一部と略対向する関係にある、アノードと、
前記カソード缶側壁と前記アノード缶側壁との間に配置されたグロメットと、
を備え、
前記グロメットが、
長手方向軸の周りに延びる上部及び下部を有する略管状の側壁であって、前記部が前記略管状の側壁から離れて半径方向内方に延びる脚部を有する、前記略管状の側壁と、
互いに離間して配置され、不連続プルリングを形成する複数の突起であって、前記不連続プルリングは前記上部の上面に近接して配置され、前記複数の突起は前記略管状の側壁の前記上部から前記長手方向軸に向かって半径方向内方に延び、前記複数の突起は4つ以下の突起を含む、前記複数の突起と、
備え
前記複数の突起のうちの少なくとも1つの突起が、頂点を有する三角形断面形状によって定められ、前記頂点は、前記上部において前記不連続プルリングを有しない部位よりも1.2~2.0倍厚い、前記上部における最大材料厚さの部位を定める、
電気化学セル。
【請求項14】
電気化学セルであって、
導電性カソード缶を含むカソードと、
前記カソード缶内に少なくとも部分的に配置された導電性アノード缶を含むアノードと、
前記アノード缶内に配置された電気化学材料と、
前記カソード缶と前記アノード缶の間に配置されたグロメットと、
を備え、
前記グロメットが、
長手方向軸の周りに延びる上部及び下部を有する略管状の側壁であって、前記下部が前記略管状の側壁から離れて半径方向内方に延びる脚部を有する、前記略管状の側壁と、
互いに離間して配置され、不連続プルリングを形成する複数の突起であって、前記不連続プルリングは前記上部の上面に近接して配置され、前記複数の突起は前記略管状の側壁から前記長手方向軸に向かって半径方向内方に延び、前記複数の突起は4つ以下の突起を含む、前記複数の突起と、
備え
前記複数の突起のうちの少なくとも1つの突起が、頂点を有する三角形断面形状によって定められ、前記頂点は、前記上部において前記不連続プルリングを有しない部位よりも1.2~2.0倍厚い、前記上部における最大材料厚さの部位を定める、
電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2018年12月14日に出願された「電気化学セルグロメット」と題された米国仮特許出願第62/780,162号の利益及び優先権を主張し、その内容は引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
電気機械式のボタンセルは、通常、補聴器、時計、電卓、ペースメーカー、及び他の小型電動デバイスなど、電池に利用可能なスペースが最小限の用途で用いるのに適した小型の単セル電池である。「ボタンセル」は、衣服のボタンのようにディスク状のセルの形状に関連する一般的な記述用語である。
【0003】
金属空気セルは、高エネルギー密度を有する一般的に使用されているタイプのボタンセルである。金属空気セルは、金属含有アノードと空気カソードを有する。給電されるデバイスのサイズ又は接続場所によって生じるサイズの制約は、ボタンセルの許容サイズに影響を与え、これはまた、各セルの全体的な容量を制限する。カソードのサイズ及び形状は、一般に、各それぞれのパッケージサイズ分類において全てのボタンセルで均一であるので、誘電体及びアノードを含む内部構成要素の形状及びサイズを操作して、ボタンセルのエネルギー容量を調整する。エネルギー密度が比較的高い場合でも、金属空気セルの電気化学反応材料のサイズが小さく且つ量が制限されていることにより、電池の有効耐用年数が制限される。これらの制限を克服するために、金属空気セルは、容易に交換可能で大量生産可能であるように作られる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般に、グロメット及びグロメットを有する電気機械式ボタンセルに関する。グロメットは、ボタンセルにおいてカソード缶からアノード缶を電気的に絶縁するのに使用される。グロメットは、誘電材料から構成され、略管状の側壁と、側壁から半径方向内方に延びる不連続なプルリングとを含む。不連続プルリングは、部品の積み重ねを抑制し、構成要素の積み重ね及び散発的なモールド排出を含む、グロメットの大量生産に関連する幾つかの問題を克服する。不連続プルリングは、成形作業後に処理されるときに、部品が互いに積み重なること又は入れ子になるのを抑制するのにより効果的である。突起は、単一点で最大の内方突起を有するので、電池の閉鎖プロセス中に圧縮又は変位する必要のあるプラスチックの量は、連続プルリングと比較して大幅に削減される。この構成により、金属缶と金属トップとの間のギャップを大きくする必要性が軽減され、セル内部容積が最大になる。不連続プルリングはまた、成形助剤としても十分に使用され、射出成形金型が分離されると、内方の突起を作成するのに使用されるコアピン内の金属製の戻り止めがグロメットをコアピンと共に引っ張って、各グロメットが金型を完全に分離した後にコアピンに完全に取り付けられたままになる。グロメットは、コアピンから簡単に引き出して更に処理することができる。
【0005】
幾つかの実施形態では、電気化学ボタンセルで使用するためのグロメットが提供される。グロメットは、略管状の側壁を有する。側壁は、長手方向軸の周りに延びる上部と下部を有する。上部は、下部から離れて外方及び上方に向かって先細になっている。複数の突起が、略管状の側壁の上部から長手方向軸に向かって半径方向内方に延びる。複数の突起は、互いに角度方向に離間して配置される。幾つかの実施例では、複数の突起は、グロメットの円周周りに角度方向で隣接する突起から等間隔に離間して配置された少なくとも4つの突起を含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、電気化学セルが提供される。電気化学セルは、カソード、アノード、及びグロメットを含む。カソードは、底壁と底部から上方に延びる側壁とを有する導電性カソード缶を含む。底壁と側壁が協働して、カソード缶のキャビティを定める。アノードは、上壁と上壁から延びる側壁とを有する導電性アノード缶を含む。アノード缶の上壁と側壁は協働して、アノード缶のキャビティを定める。アノード缶は、カソード缶内に少なくとも部分的に配置される。アノード缶側壁の少なくとも一部は、カソード缶側壁の少なくとも一部と略対向する関係にある。グロメットは、略管状の側壁を有する。側壁は、長手方向軸の周りに延びる上部及び下部を有する。上部は、下部から離れて外方及び上方に向かって先細になっている。複数の突起が、略管状の側壁の上部から長手方向軸に向かって半径方向内方に延びる。複数の突起は、互いに角度方向に離間して配置される。グロメットの側壁は、アノード缶側壁とカソード缶側壁の対向する部分の間に配置される。
【0007】
幾つかの実施形態では、電気化学セルが提供される。電気化学セルは、カソード、アノード、電気化学材料、及びグロメットを含む。カソードは、導電性カソード缶を含む。アノードは、カソード缶内に少なくとも部分的に配置された導電性アノード缶を含む。電気化学材料は、アノード缶内に配置される。グロメットは、カソード缶とアノード缶の間に位置付けられ、長手方向軸の周りに延びる略管状の側壁を含む。互いに離間して配置された複数の突起は、略管状の側壁から長手方向軸に向かって半径方向内方に延びる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本開示の実施形態による電気化学ボタンセルの上面図である。
図1B図1Aの線1B~1Bに沿って見た、図1Aの電気化学ボタンセルの断面図である。
図2A図1Aの電気化学ボタンセルに存在するグロメットの斜視図である。
図2B図2Aのグロメットの上面図である。
図2C図2Bの線2C~2Cに沿って見た、図2Aのグロメットの断面図である。
図2D図2Cの断面図の斜視図である。
図3A】互いに積み重ねられた2つの従来技術のグロメットの断面図である。
図3B図3Aの破線ボックス3B~3Bから見た、図3Aの従来技術のグロメット間の相互作用の詳細断面図である。
図4図2Aに示されるグロメットのうちの2つの間の相互作用の詳細断面図である。
図5図1の電気化学ボタンセルに組み込むことができる別のグロメットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定の例示的な実施形態を詳細に示す図に移る前に、本開示は、明細書に記載され又は各図に例示されている詳細事項又は方法に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、説明の目的に過ぎず、限定と見なされるべきではない点を理解されたい。
【0010】
図1A及び図1Bを参照すると、電気化学ボタンセル100が、本開示の実施形態に従って示されている。ボタンセル100は、導電性カソード缶104に受けられた導電性アノード缶102を含む金属空気ボタンセルである。空気カソード組立体106は、セル100内のカソード缶104の底壁108を覆い、カソード缶104と電気的に接触している。金属粉末(例えば、亜鉛、リチウム)と電解質(例えば、水酸化カリウムと水の溶液)の混合物とすることができるアノード材料110は、アノード缶102内に収容され、アノード缶102と電気的に接触している。セパレータ112は、空気カソード組立体106をアノード材料110から分離する。アノード缶102の上壁114及びカソード缶104の底壁108は、例えば、電子デバイスの1又は2以上の端子によって係合することができる。
【0011】
アノード缶102は、上壁114と、上壁114から離れて(例えば、図示の向きで下方に)延びる側壁116と、を有する。幾つかの実施形態では、側壁116は、上壁114から離れて下方及び外方の両方に延びて、アノード材料110を受け入れ及び/又は貯蔵することができるキャビティ118を定めることができる。側壁116及び上壁114は協働して、略ベル形のアノード缶102を定めることができる。アノード缶102は、カソード缶104のキャビティ120内に少なくとも部分的に受け入れられる。幾つかの実施形態では、カソード缶104は、略平坦な底壁108と、底壁108から離れて(例えば、図示の方向で上向きに)延びてキャビティ120を定める側壁122とを有する。側壁122は、例えば、底壁108から直交して離れて延びることができる。以下に説明するように、側壁122の上部124が半径方向内方に湾曲して、底壁108の一部の上に延びて、アノード缶102及びグロメット200をキャビティ120内に保持し、電気化学アノード材料110をボタンセル100内に密封するのを助けるように、側壁122を圧着することができる。
【0012】
一般に円筒形、より具体的には環状である、薄壁誘電体(例えば、非導電性の)グロメット200(一般に「ガスケット」又は「シール」とも呼ばれる)は、カソード缶104との直接の電気的接触からアノード缶102を電気的に絶縁する。例えば、グロメット200は、アノード缶102及びカソード缶104それぞれの対向する側壁116、122の間に配置することができる。次に、グロメット200は、アノード缶102とカソード缶104との間にシールを形成して、セル100内に反応性材料を封入し固定することができる。図2A~2Dに更に詳細に示されるグロメット200は、長手方向軸X-Xの周りに延びる環状又は略管状の側壁202を有する。一体的に形成された脚部204は、管状側壁202から半径方向内方に延びて、セル100が組み立てられるときにアノード缶102の末端端部(例えば、下端)126を支持することができる環状ショルダー206を定める。カソード缶104の末端端部(例えば、上端)128は、アノード缶102の上部の端縁を覆って圧着されて、セル100を組み立て構成で固定する。グロメット200及びボタンセル100は、一般に、「不均一な厚さの側壁を有する電気化学セルグロメット」と題された米国特許第8,003,251号にて図示及び記載された製造プロセスを使用して形成することができ、当該米国特許は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0013】
セル100が放電されているときには、セル100は、カソード缶104の底部に形成された開口部130を通して大気中の酸素を取り込み、電解質との相互作用によって、空気カソード組立体106内で酸素をヒドロキシルイオンに変換する。次に、ヒドロキシルイオンは、アノード材料110に移動し、ここでイオンは、金属アノード材料110と相互作用して、酸化反応を受けて、例えば、酸化亜鉛を形成すると同時に、エネルギーを放出する。酸化反応中に放出されたエネルギーは、アノード缶102を介してセル端子(図示せず)に移送され、例えば、電子デバイスに電力を供給することができる。
【0014】
エネルギー放出プロセスは、セル100内に収容される金属アノード材料110の酸化に依存するので、セル100の全体的な容量(例えば、耐用年数)は、一般に、セル100の内部に含まれる電気化学反応性材料の量(例えば、アノード材料の体積)に関係する。カソード缶104のサイズ制限によって決定される各セル100の有限のアノード材料110の貯蔵限度は、電池セル100が、電力を供給することを意図しているデバイスよりも長持ちしないようなものである。単一の電子デバイスにその寿命にわたって電力を供給するために複数の電池セル100が必要となる可能性があるので、電池セル100は、取り外し可能、交換可能、及び大量生産可能であるように設計されている。
【0015】
電池セル100の製造容易性は、グロメット200の設計に密接に関連しており、これは、図2A~2Dに更に詳細に示されている。グロメット200の輪郭は、射出成形プロセスを通じてグロメット200の迅速且つ大量の生産を容易にするように設計されている。例えば、2ピースのコアピンモールドを使用して、ナイロン-6,6(例えば、デュポン社から商業的に入手可能なZytel(登録商標) 101)などの誘電体材料からグロメット200を作成することができる。以下に説明するように、追加機能をグロメット200に組み込んで、各グロメット200を金型から効率的に排出するのを助け、構成要素の積み重ねを含む、グロメットの大量生産中に発生することが多い他の問題を排除又は軽減することができる。グロメット200に関する上述及び以下の構造的記載は、図5に示されるグロメット200’にも適用される、これは、以下で説明するように、異なるように構成されたプルリング214、214’のみグロメット200と異なる。
【0016】
上述のように、グロメット200は、長手方向軸X-Xの周りに延びる略管状の側壁202を有する。略管状の側壁202は、下部208と、下部208から離れて延びる上部210とを含む。上部210は、下部208から軸方向に(例えば、上方に)延びるにつれて、長手方向軸X-Xから離れて外方に先細になっている。逆に、下部208は、脚部204を除いて、ほぼ一定の半径で定義することができる。下部208のほぼ一定の断面は、下部208と上部210との間に屈曲部212を生成することができ、これは、下部208から離れて延びるにつれてサイズが変化する(例えば、増加する)半径によって定められる。下部208に対する上部210の先細は、射出成形装置からのグロメット200の排出を容易にし、セル100の組み立て中にアノード缶102をグロメット200に導くのを助けることができる。幾つかの実施形態では、側壁202の材料の厚さは、上記で検討され引用により本明細書に組み込まれる組み込まれた米国特許第8,003,251号特許において詳細に説明されるように、上部210が下部208から離れて上方及び外方に延びるにつれて増加する。
【0017】
不連続プルリング214は、側壁202の上部210に形成され、射出成形金型からのグロメット200の除去を更に容易にする。プルリング214は、コアピン(図示せず)が各射出成形金型の同じ部分からグロメット200を一貫して係合及び排出するための係合点を提供することができる。例えば、プルリング214は、コアピンに形成された金属の戻り止めと係合することができる。射出成形プロセスが完了すると、コアピンが金型のキャビティ側から引き離される。プルリング214とコアピンの金属戻り止めとの係合により、各グロメットがコアピンと協働して金型キャビティから共通の完成部品位置まで引き寄せられる。次いで、グロメット200は、コアピンから排出することができる。次に、成形グロメット200は、ボタンセル100の組み立てのために、より簡単に収集、選別、及び輸送することができる。
【0018】
不連続プルリング214は、管状壁202から長手方向軸X-Xに向かって半径方向内方に延びる突起216のグループによって形成される。プルリング214内の突起216は、上部210の周りで他の突起216から角度方向に離間している。幾つかの実施形態では、プルリング214は、上部210から内方に延びる2又は3以上の突起216を含む。例えば、4つの突起216は、側壁202の上部210の周りで互いに等間隔に離間して配置することができる。任意選択的に、図5に示すように、プルリング214’は、グロメット200’の周りに離間して配置された6つの突起216’を含むことができる。幾つかの実施形態では、プルリング214、214’の各突起216、216’は、均一なサイズであり、プルリング214、214’において互いの突起216、216’と軸方向に整列している。
【0019】
突起216は、第1の端部220及び第2の端部222を有するベース218によって定義することができる。ベース218は、側壁202の内面と一致して、第1の端部220と第2の端部222との間に延びることができる。幾つかの実施形態では、突起216は、凸状下面224及び凸状上面226を含む。凸状下面224及び凸状上面226の各々は、第1の端部220と第2の端部222との間に延びる。下面224は、第1の端部220から離れて延び、軸方向下方に管状側壁202の下部208に向かって湾曲している。第1の端部220と第2の端部222との間の中点228において、下面224は、突起216の最下部点に対応する最小値に達することができる。下面224は、中点228から離れて第2の端部222に向かって延びるので、下面224は、第2の端部222に到達するまで、軸方向上方に湾曲することができる。反対の様式で、上面226は、第1の端部220から離れて延び、グロメット200の上面230に向かって軸方向上方に湾曲することができる。第1の端部220と第2の端部222との間の中点232において、上面226は、突起216の最上点に対応する最大値に達することができる。上面226が中点232から離れて第2の端部222に向かって延びると、上面226は、第2の端部222に達するまで軸方向下方に湾曲する。
【0020】
縁部234は、上面226と下面224との間の接合部にて各突起216に形成することができる。幾つかの実施形態では、縁部234は、凸形状を有する円弧によって定められる。例えば、縁部234は、第1の端部220から離れて半径方向内方に長手方向軸X-Xに向かって、及び第2の端部222に向かって湾曲することができる。縁部234は、極大値236まで内方に延び、これは、第1の端部220と第2の端部222との間の中間点に形成することができる。極大値236は、突起216上の最も内側の点(例えば、長手方向軸に最も近い)に対応することができる。次に、縁部234は、極大値236から離れて、半径方向外方に第2の端部222に向かって湾曲することができる。幾つかの実施形態では、突起216の縁部234は、第1の端部220と第2の端部222との間に弦部を形成する。
【0021】
下面224、上面226、及び縁部234の組み合わせにより、各突起216に略三角形断面を与えることができる。上記のように、縁部234が凸形状である場合、各突起216の断面は、側壁202から内方に延びるにつれて変化する。各突起216の断面は、第1の端部220から離れて延びるにつれて極大値236に達するまでサイズが大きくなる。突起216の断面は、極大値236で最大になり、これはまた、側壁202の上部210上に最大材料厚さの部位を生成する。材料の最大厚さの部位は、例えば、突起216を除いて、上部210上の何れかの部位よりも約1.2~2.0倍厚く、又は約1.4~約1.7倍厚くすることができる。その後、突起216の断面は、第2の端部222に近づくにつれてサイズが減少する。
【0022】
不連続プルリング214内の各突起216間の角度間隔は、各突起のサイズに依存する可能性がある。幾つかの実施形態では、各突起216の第1の端部220及び第2の端部222は、側壁202の周りで約5度~約60度の間で角度方向に互いに離間して配置されている。例えば、各端部220、222は、20度~40度、又は約30度の間で角度方向に離間して配置することができる。各極大値236は、例えば、4つの突起216が不連続プルリング214を構成する場合、隣接する各最大値236から約90度離れて角度方向に離間して配置することができる。図5に示すように、6つの突起216’が不連続プルリング210’を構成する場合。各極大値236は、隣接する各最大値から約60度離れて角度方向に離間して配置することができる。幾つかの実施形態では、不連続プルリング214内の突起216は、隣接する突起216から可変的に離間して配置することができる。
【0023】
突起216は、グロメット200を射出成形金型から取り外すとき、又はグロメット200をボタンセル100組立体に輸送又は他の方法で準備するときに発生する可能性がある構成要素の入れ子を低減又は防止することができる。入れ子は、図3A及び3Bに示されるように、従来技術のグロメット及びボタンセルを製造するときに一般的に遭遇する問題である。側壁302から離れて延びるプルリング304の場合でも、グロメット300の下部306は、別のグロメット300の上部308に嵌まり込むか又は入れ子になる傾向がある。入れ子になったグロメット300は、ボタンセルを組み立てることができる前にグロメット300を個別に分離する時間を費やす必要があるので、製造及び組み立てプロセス内で非効率を引き起こす。
【0024】
入れ子は通常、従来技術のグロメット300内で発生し、これは、連続プルリング304の直径と各グロメット300の下部306との間に最小量の干渉(例えば、重なり)が存在することに起因する。連続プルリング304の直径は、グロメット300内に受け入れることができるアノード缶102のサイズを制限し、その結果、グロメット300を使用して製造された結果として得られるボタンセルの容量を制限するので、プルリング304のサイズを大きくすることは実行可能な解決策ではない。プルリング304の連続的な性質はまた、グロメット300のプルリング304全体及び側壁302を補強し、これは、各グロメット300の弾性を低下させ、アノード缶(例えば、アノード缶102)に利用可能なサイズを更に制限する。プルリング304は、グロメット300全体の周りに延びることにより、各グロメット300の上部308の真円度も向上する。各グロメット300の上部308及び下部306の両方の真円度は、構成要素の入れ子が発生する可能性を更に高める略相補的な形状を生成する。
【0025】
突起216は、グロメット200内のアノード缶容量を著しく犠牲にすることなく、グロメット200間に追加の干渉を生成することによって、グロメット200における入れ子の可能性を防止又は大幅に低減することができる。図4に示されるように、突起216は、上面230に近接して配置され、これにより、別のグロメット200が各グロメット200の上部210に入る可能性の程度を制限する。突起216は、半径方向内方に延びて、各極大値236で別のグロメット200の脚部204との最大干渉の別個の点を生成する。各極大値236は、連続プルリング304と従来技術のグロメット300との間の干渉よりも2.5~3.0倍大きいグロメット200間の最大干渉点を生成する。例えば、グロメット200、300は各々、ほぼ同じアノード缶容量を有するが、グロメット200は、約0.0081インチ(0.21mm)の干渉を提供するのに対し、グロメット300は、わずか0.0030インチ(0.076mm)の干渉しか提供しない。
【0026】
グロメット200のアノード缶容量は、プルリング304よりも大きな屈曲を提供する突起216の輪郭によって維持される。プルリング214は不連続であるので、セルの閉鎖(ボタンセル100の組み立て)中に圧縮する必要のある誘電体材料(例えば、ナイロン-6,6)の全体積が大幅に最小限にされ、アノード缶102とカソード缶104との間の所用のギャップに影響を及ぼさない。各突起216の材料は、グロメット200全体の周りの連続リングによって補強されていないので、各突起216の圧縮は、各それぞれの突起216を取り囲む側壁202の一部に局所化することができる。グロメット200の上部210から連続補強リングを排除することにより、上部210は、全体として、グロメット300上で追加の弾力性を保持し、これによりアノード缶102の容量を実質的に犠牲にすることなく、プルリング214間の著しく大きな干渉を可能にする。
【0027】
プルリング214の不連続な性質はまた、上部210において有限量の楕円形(すなわち、非円形性)を導入又は可能にし、入れ子を更に抑制する。各突起216が互いに離間して配置されるので、上部210の延長部分は補強されない。これにより、連続プルリング304を使用する従来技術のグロメット300よりも、上部210を楕円形に弛緩させることができる。上部210の楕円形は、他の場合には入れ子の傾向になる可能性がある各グロメット200の下部208と上部210との間にわずかに不一致のグロメット200形状を作成することによって、他のグロメット200との入れ子を更に防ぐことができる。より円形の下部208とより楕円形の上部210と間の相違により、各グロメット200のより円形の下部208と上部210との間に追加の干渉が生成され、これは入れ子を更に抑制する。不連続プルリング214を使用して、グロメット200は、構成要素が入れ子になる可能性を低減しながら、効率的に製造し、輸送して、ボタンセル100に組み立てることができる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ほぼ」、「約」、「実質的に」、及び同様の用語は、本開示の主題が関係する当業者によって一般に認められた使用法と一致して広義の意味を有することを意図している。これらの用語は、これらの特徴の範囲を提供される正確な数値範囲に限定することなく、記載及び特許請求される特定の特徴の説明を可能にすることを意図していることは、本開示を検討する当業者によって理解されるはずである。従って、これらの用語は、記載及び特許請求された主題のわずかな又は重要でない修正又は変更が、添付の請求項に記載される本開示の範囲内と見なされることを示すと解釈されるべきである。本明細書で様々な実施形態を説明するために使用される用語「例示的」及びその変形形態は、このような実施形態が、実施可能な実施例、表現、又は実施可能な実施形態の例示であることを示すものである(及びこのような用語は、このような実施形態が必然的に並外れた又は最上級の実施例であることを一般的に意味することを意図しない)ことに留意されたい。本明細書で使用される「結合された」という用語及びその変形形態は、2つの要素を互いに直接的又は間接的に接合することを意味する。このような接合は、固定(例えば、永続的又は固定)又は移動可能(例えば、取り外し可能又は解放可能)とすることができる。このような接合は、2つの部材を直接結合するか、別個の介在部材を使用して2つの要素を互いに結合し、追加の中間部材を互いに結合するか、又は2つの部材のうちの1つと単一の単一体として一体的に形成される介在部材を使用して互いに結合される2つの要素を用いて実現することができる。「結合」又はその変形形態が追加の用語によって変更された場合(例えば、直接結合された)、上記の「結合された」の一般的な定義は、追加の用語の平易な言語的意味によって変更され(例えば、「直接結合された」は、何らかの別個の介在要素なしで2つの要素を接合することを意味する)、上記の「結合された」の一般的な定義よりも狭い定義となる。このような結合は、機械的、電気的、又は流体的とすることができる。本明細書における要素の位置(例えば、「上部」、「底部」、「上方」、「下方」)への言及は、図中の様々な要素の方向を説明するのに単に使用されている。様々な要素の配向は、他の例示的な実施形態に従って異なる可能性があり、このような変形形態は、本開示に含まれることが意図されている点に留意されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5