(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】風力タービンギアボックス構成要素における観察可能な損傷のリスクを予測するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
F03D 80/50 20160101AFI20240703BHJP
G01M 13/021 20190101ALI20240703BHJP
【FI】
F03D80/50
G01M13/021
(21)【出願番号】P 2021538485
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 US2019069140
(87)【国際公開番号】W WO2020142542
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521287027
【氏名又は名称】センティエント サイエンス コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】510282837
【氏名又は名称】アクシオナ エネルヒア,ソシエダッド アノニマ
【氏名又は名称原語表記】ACCIONA ENERGIA,S.A.
【住所又は居所原語表記】Avenida de la Innovacion,5,E-31621 Sarriguren(Navarra),Spain
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ヴィジャヤント
(72)【発明者】
【氏名】ボーランダー,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】アウアー,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】サラカイン,イニゴ
(72)【発明者】
【氏名】イルージョ、メルセデス
(72)【発明者】
【氏名】イリアルテ、エンリケ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517288(JP,A)
【文献】特開2015-088154(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199210(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/229897(WO,A1)
【文献】特開2012-053830(JP,A)
【文献】特開2013-007388(JP,A)
【文献】国際公開第2018/169652(WO,A1)
【文献】特開2018-178968(JP,A)
【文献】特表2022-500745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0106510(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0034856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 7/00
F03D 17/00
G01M 13/00
G01M 99/00
G05B 23/02
G06F 11/28
G06F 11/34
G06F 15/00
G06F 17/02
G06F 17/10
G06L 3/00
G06Q 50/10
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンの風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するための方法であって、
損傷状態診断を生成すること
を含み、
前記損傷状態診断を生成することは、
前記風力タービンから測定データセットを取得することと、
現場操作者提供の現場インテリジェンスを前記測定データセットに統合することと、
前記風力タービンギアボックスの既知の故障挙動に関して前記測定データセットを正規化して、正規化された測定データセットを生成することと、
正規化された前記測定データセットを前記既知の故障挙動と組み合わせて、前記損傷状態診断を生成することと
を含んでおり、さらに、
動作データ及び状態遷移関数を使用して前記風力タービンギアボックスの損傷進行モデ
ルを生成することと、
ハイブリッドプログノスティックモデルを使用して前記損傷状態診断を前記損傷進行モデルと組み合わせて、現在の損傷状態推定の確率分布を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ハイブリッドプログノスティックモデルが、サンプルベースの予測因子を含み、前記方法が、前記
ハイブリッドプログノスティックモデルを使用して、未来状態予測を生成することを更に含み、前記未来状態予測が、
前記風力タービンギアボックスが予測範囲の致命的損傷閾値に達する確率
と、
前記予測範囲に達するまでの時間
と、
1つのタイムステップ
における前記風力タービンギアボックスのシステム状態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記損傷進行モデルが、物理学ベースのモデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記物理学ベースのモデルが、有限要素分析、計算流体力学、多体力学、又は線形弾性破壊力学のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記損傷進行モデルが、機械学習ベースのモデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記現場操作者提供の現場インテリジェンスが、操作者によって発見された、これまで確認された故障又は損傷を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記操作者によって発見された、これまで確認された故障又は損傷が、ボアスコープ分析に存在しない事例を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記測定データセットが、直接測定データ、間接測定データ、大域的挙動データ、又は動作データ、のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定データセットが、直接測定データを含み、前記測定データセットを取得することが、測定ユニットを使用して直接測定を行って、前記直接測定データを取得することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定ユニットが、ボアスコープを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記測定データセットが、間接測定データを含み、前記測定データセットを取得することが、温度センサ又は振動センサを使用して間接測定を行うことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
大域的挙動データが、前記風力タービンと同様に構成された1つ以上の類似する風力タービンの動作データの比較を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
動作データが、SCADAデータを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記SCADAデータが、システム入力データ、システム出力データ、又はシステムログの時系列、のうちの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記SCADAデータが、システム入力データを含み、前記システム入力データが、風速又は風向のうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SCADAデータが、システム出力データを含み、前記システム出力データが、発生した電力を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記SCADAデータが、前記システムログの時系列を含み、前記システムログの時系列が、風力タービンの状態又は障害の時系列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
動作データが、監視制御及びデータ収集(SCADA)データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
SCADAデータが、システム入力データ、システム出力データ、又はシステムログの時系列、のうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記SCADAデータが、システム入力データを含み、前記システム入力データが、風速又は風向のうちの1つ以上を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記SCADAデータが、システム出力データを含み、前記システム出力データが、発生した電力を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記SCADAデータが、前記システムログの時系列を含み、前記システムログの時系列が、風力タービンの状態又は障害の時系列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記既知の故障挙動が、履歴データから導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記履歴データが、保守記録、現場故障情報、根本原因分析、又は材料表データを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備える、風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するためのシステム。
【請求項26】
プロセッサによって実施されたときに、請求項1~24のいずれかに記載の方法を前記プロセッサに行わせる命令を有する、有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年12月31日に出願された米国仮出願第62/786,817号に対する優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、風力タービンに関する。より具体的には、本開示は、概して、風力タービンギアボックス構成要素の観察可能な損傷のリスクを評価する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
風力タービン構成要素の損傷蓄積の予測及び軽減は、設置された風力タービン基礎における指数関数的成長を大域的に考慮すれば、数十億ドルの好機である。世界で稼働している風力タービンの数のここ数年にわたる急増は、そうした風力タービンの風力タービンギアボックス(wind turbine gearbox、WTG)構成要素が、予想よりも速い損傷蓄積を示し、その結果としてのギアボックスの故障の増加は、運用及びメンテナンス(operation and maintenance、O&M)の支出において数百万ドルの増加をもたらした、といった、現場で実証された現実に至っている。その結果、不確実性を低減させた損傷開始の早期警戒及び損傷進行の追跡、特定の損傷/故障モードと密にリンクされたインテリジェントアセットアクション、並びに長期の保守及び構成要素の購入戦略を最適化するための真のデータに基づく信頼性分析を提供することができるソリューションに対する需要が高まっている。
【0004】
様々な予測アルゴリズムが開発され、WTG構成要素の損傷蓄積を予測するために適用されてきた。そのような方法は、単に物理学ベースのもの又は単にデータ/統計ベースのもののいずれかであり、しばしば、追加の高価な後付けの一組のセンサの統合に依存していた。センサの後付けに依存して、物理学ベースの方法を統計的なデータ駆動の手法と組み合わせようと試みたいくつかのハイブリッド方法が提案されてきた。これらの方法は、拡張性の不足、高い不確実性(すなわち、低い予測精度)、及び高価な後付けセンサ(例えば、CMS)の要件に起因する経済的な非実用性を被った。これらの欠点の主な理由としては、副構成要素レベルの物理学及び多体駆動トレインの相互作用の正確な表現の不足。風力タービンSCADAシステムからの時系列データ(「ビッグデータ」)を使用した純粋なデータ駆動予測に対する過剰な依存。デジタル化された「スモールデータ」(すなわち、現場及び顧客に特有の情報(例えば、アラームログ、現場のO&Mの過去ログ、材料情報表、地理空間的情報、及び構成情報))の最小限の統合。様々なデータ入力において大量の未検出のノイズ及び矛盾する情報につながる不十分なデータ管理、並びに実際の現場での操作者の経験から導出される定量化された現場インテリジェンスの最小限の統合、が挙げられる。
【0005】
したがって、WTG構成要素における観察可能な損傷のリスクを正確に評価するための改善された方法及びシステムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、風力タービンの風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するための方法であり得る。本方法は、損傷状態診断を生成する(すなわち、発生させること)ことと、動作データ及び状態遷移関数を使用して風力タービンギアボックスの損傷進行モデルを生成することと、ハイブリッドプログノスティックモデルを使用して損傷状態診断を損傷進行モデルと組み合わせて、現在の損傷状態推定値の確率分布を生成する(すなわち、発生させる)ことと、を含み得る。
【0007】
一実施形態は、風力タービンの風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するためのシステムであり得る。本システムは、プロセッサを備え得る。本プロセッサは、損傷状態診断を生成することと、動作データ及び状態遷移関数を使用して風力タービンギアボックスの損傷進行モデルを生成することと、ハイブリッドプログノスティックモデルを使用して損傷状態診断を損傷進行モデルと組み合わせて、現在の損傷状態推定値の確率分布を生成することと、を含む方法を実行するように構成され得る。
【0008】
一実施形態は、そこに命令を有する有形の非一時的コンピュータ可読媒体であり得る。本命令は、プロセッサによって実施されると、プロセッサに、風力タービンの風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するための方法であって、損傷状態診断を生成することと、動作データ及び状態遷移関数を使用して風力タービンギアボックスの損傷進行モデルを生成することと、ハイブリッドプログノスティックモデルを使用して損傷状態診断を損傷進行モデルと組み合わせて、現在の損傷状態推定値の確率分布を生成することと、を含む方法を行わせ得る。
【0009】
損傷状態診断を生成することは、風力タービンから測定データセットを取得することと、現場操作者提供のインテリジェンスを測定データセットに統合することと、風力タービンギアボックスの既知の故障挙動に関して測定データセットを正規化して、正規化された測定データセットを生成することと、正規化された測定データセットを既知の故障挙動と組み合わせて、損傷状態診断を生成することと、を含み得る。
【0010】
ハイブリッドプログノスティックモデルは、サンプルベースの予測因子を含み得る。本方法は、システムのプロセッサ上で行われるか、実行されるか、又は有形の非一時的コンピュータ可読媒体からの命令としてプロセッサによって実施されるかどうかにかかわらず、ハイブリッドプログノスティックモデルを使用して、未来状態予測を生成することを更に含み得る。未来状態予測は、風力タービンギアボックスが予測範囲の致命的損傷閾値に達する確率、予測範囲に達するまでの時間、及び予測範囲に達するまでの時間のタイムステップでの風力タービンギアボックスのシステム状態を含み得る。
【0011】
損傷進行モデルは、物理学ベースのモデルを含み得る。物理学ベースのモデルは、有限要素分析、計算流体力学、多体力学、又は線形弾性破壊力学のうちの1つ以上を含み得る。
【0012】
損傷進行モデルは、機械学習ベースのモデルを含み得る。
【0013】
現場操作者提供の現場インテリジェンスは、操作者によって発見された、これまで確認された故障又は損傷を含み得る。操作者によって発見された、これまで確認された故障又は損傷は、ボアスコープ分析に存在しない事例を含み得る。本方法は、システムのプロセッサ上で行われるか、実行されるか、又は有形の非一時的コンピュータ可読媒体からの命令としてプロセッサによって実施されるかどうかにかかわらず、操作者によって発見された、これまで確認された故障又は損傷を使用して、モデルを構築すること、又はデータ表現を構築することを更に含み得る。
【0014】
測定データセットは、直接測定データ、間接測定データ、大域的挙動データ、又は動作データ、のうちの1つ以上を含み得る。
【0015】
測定データセットは、直接測定データを含み得る。測定データセットを取得することは、測定ユニットを使用して直接測定を行って、直接測定データを取得することを含み得る。測定ユニットは、ボアスコープを備え得る。
【0016】
測定データセットは、間接測定データを含み得、測定データセットを取得することは、温度センサ又は振動センサを使用して間接測定を行うことを含み得る。
【0017】
大域的挙動データは、風力タービンと同様に構成された1つ以上の類似する風力タービンの動作データの比較を含み得る。
【0018】
動作データは、監視制御及びデータ収集(supervisory control and data acquisition、SCADA)データを含み得る。SCADAデータは、システム入力データ、システム出力データ、又はシステムログの時系列、のうちの1つ以上を含み得る。SCADAデータは、システム入力データを含み得、システム入力データは、風速又は風向のうちの1つ以上を含み得る。SCADAデータは、システム出力データを含み得、システム出力データは、発生した電力を含み得る。SCADAデータは、システムログの時系列を含み得、システムログの時系列は、風力タービンの状態又は障害の時系列を含み得る。
【0019】
既知の故障挙動は、履歴データから導出され得る。履歴データは、保守記録、現場故障情報、根本原因分析、又は材料表データを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の性質及び目的をより完全に理解するために、下記の詳細な説明を、添付図面と
併せて参照するべきである。
【
図2】データ融合を組み込んだ有用な寿命フレームワークを維持する、一実施形態のハイブリッドを示す。
【
図3】
ハイブリッドプログノスティックモデルの例示的な実装形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特許請求される主題は、特定の実施形態に関して説明されるが、本明細書に記載される利点及び特徴の全てを提供しない実施形態を含む他の実施形態もまた、本開示の範囲内である。様々な構造的ステップ、論理的ステップ、プロセスステップ、及び電子的変化は、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得る。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0022】
本開示は、ベアリング及びギアなどのWTG構成要素に存在する観察可能な損傷のリスクを予測するための方法、システム、及び装置を提供する。観察可能な損傷は、経時的な損傷蓄積によって生じる単一又は複数のギアボックス副構成要素の視覚的に特定可能な物理的損傷の存在を指し得る。損傷蓄積は、ロータから発電機にトルクを伝達するWTG内の構成要素が、繰り返される負荷サイクルの下で成長する顕微鏡的な亀裂の形成により経時的に劣化するプロセスを指し得る。
【0023】
本開示の実施形態は、材料科学、データ科学、及び現場エクスペリエンスインサイトの新しい組み合わせを実施して、WTG構成要素の損傷蓄積リスクの正確な予測を送達し、次に、風力タービンの動作保守の効率的な最適化及び寿命延長を駆動する。これらの実施形態は、風力タービンの信頼性を予測するための異種の情報セットを利用するプロセスを含み得る。追加的に、そのような実施形態は、設計者用のツール、サイトマネージャ、アセットマネージャ、及びリスクマネージャを提供して、高価で時間のかかる試験に依存する必要なく、様々なシナリオ-様々な材料、製造プロセス、及び動作条件-の下で、WTG構成要素の性能を評価し得る。本開示によるデータ融合プロセスを使用した実施形態の方法及びシステムへの入力としては、材料物理学モデル、データ科学モデル、及び現場エクスペリエンスインサイトが挙げられ得る。
【0024】
材料物理学駆動モデルは、物理学の法則を使用して、計算モデルを通した損傷の開始及び伝搬に関与する物理的プロセスの因果的理解を表し得る。
【0025】
材料物理学モデルは、連続センサ測定のいかなる要件も伴うことなく、単に物理学ベースの理解を通して、課題及び故障モードを表すそれらの能力において強みを有し得る。それらは、リスク調整された意思決定を可能にするための不確実性の測度と共に、損傷蓄積及び故障までの時間の長期的な確率的視点を提供することができる。それらは、高度に説明可能かつ解釈可能であり得る。すなわち、設計者及び考案者は、出力が物理的ルールの結果であるので、出力が特定の振る舞いを見せる及びとる理由を明確に理解し得る。
【0026】
材料物理学モデルは、個々のモデルを通して明示的に表される故障モードの表現に限定され得る。したがって、この手法は、WTGの設計(例えば、製造、設計に起因する課題、又は現地固有の動作の課題)から得られる物理学ベースの原因結果経路が未知又は不十分のいずれかである故障モデルを表す又は予測することができない。材料物理学モデルはまた、高い計算コストがかかり得、しばしば、スーパーコンピュータ又は多数のメモリ負荷の高いクラウドノードを必要とし得、したがって、本質的にスケールのソリューションに不適切であり得る。
【0027】
データ科学モデルは、異常検出及び決定木タイプの技術に焦点を当てた一群の統計学的学習技術を指し得る。そのようなモデルは、単にセンサから導出された特徴及びそれらの相関/関連付けを使用して、損傷の蓄積及び進行を予測することを目的とし得る。物理学駆動モデルとは異なり、データ駆動モデルは、データ駆動モデルが因果関係ではなく相関に依存するので、予測アルゴリズムの基礎を形成するために、原因結果経路を必要としないことに留意されたい。
【0028】
データ科学モデルは、関連する特徴の識別を必要とすることなく、データ内の複数の予測パターンを特定するそれらの能力の強みを有し得る。それらは、異常検出及び分類木タイプの方法などの技術を通して、短期的な損傷予測問題に高度に適し得る。それらは、比較的低い、かつスケールのソリューションに適した計算コストを有し得る。それらは、様々なデータを単一の予測モデル(例えば、センサデータセット、ログタイプデータセット、又はエキスパートルールを通した現場インテリジェンス、など)に統合することができる。
【0029】
データ科学モデルは、データの一次関数として限定され得、また、偽陽性につながり得るオーバーフィッティングなどの課題が生じる傾向が大きい。それらは、訓練、試験、及び実施するために、大量のデータを必要とし得る。それらは、ドメイン知識を通してフィルタ処理されない場合、ノイズ及び信号の両方を同様に学習することができるデータモデルにおいてノイズに大きく影響され得る。それらは、類似する種類の故障を予測することを可能にするために、以前の既知の故障の発生を必要とし得る。それらは、モデルを訓練するために使用されるデータに存在していないものを予測することができない場合がある。
【0030】
現場エクスペリエンスインサイトは、様々な条件及び場所で風力発電所を動作させている間に様々な故障及び課題を扱う際の、現場の人事/アセットマネージャエクスペリエンスの蒸留を指し得る。そのような現場エクスペリエンスインサイトは、予測的な材料物理学及びデータ科学モデルを組み込ンで、全体的なデータ融合モデルを精緻化することができる。
【0031】
本明細書で提示する手法は、現場エクスペリエンスが導出したインテリジェンスによって誘導される材料物理学駆動モデリング及びデータ科学のデータ融合(すなわち、組み合わせ)に依存し得る。このデータ融合手法は、データ融合に対する入力の各々の強度及び制限を最適化することに基づいて構築され得る。
【0032】
データ融合は、現在の損傷状態を推定し得、残存耐用年数(remaining useful life、RUL)の予測を提供し得、また、決定レベルの融合として説明することができ、様々な予測技術及び現場インテリジェンスを組み合わせて使用して、視認可能な損傷の予測されたリスクと関連付けられた時間窓の半独立した決定を提供する。データ融合の中心的な利点は、材料物理学モデリングフレームワークの使用に起因し得、構成要素の劣化に関与する実際の物理的プロセスは、単に収集されたデータの統計分析だけに依存するのではなく、モデル化され得る。
【0033】
本開示による材料物理学モデリング手法は、パラメータ依存性又は損傷蓄積の直線性を前提とすることなく、多種多様な入力パラメータを組み合わせてシミュレーションすることができる。これは、損傷蓄積プロセスを駆動する応力及び圧力の高忠実度のモデリング表現を埋め込んで、転がり接触疲労及び摩耗などの共通のWTG構成要素の故障モードを補償することによって可能になり得る。
【0034】
材料物理学駆動モデリング手法は、ギアボックス構成要素の損傷蓄積プロセスの様々な寄与段階に適用される、以下の技術が考えられ得る。この一意の組み合わせは、より正確でフレキシブルな損傷進行の予測を可能にし得る。技術としては、とりわけ、風速、ウインドシア、乱流強度、及び空気密度の影響を含む空力弾性シミュレーションソフトウェアを使用して計算した風荷重、シャフト及びギアボックスハウジングの撓曲を含む、ギアボックスを通したロータから発電機への荷重伝達の多体動的分析、並びに本体に接触するトライボロジー挙動を左右する状態のシミュレーションを含む、副構成要素レベルに対するマクロレベル負荷の分布を正確に説明することができる高忠実度の構成要素負荷モデル、が挙げられ得る。
【0035】
データ融合手法のデータ科学構成要素は、複数の予測フレームワークを通して、予測決定データストリームに変換される異種の「ビッグ」データ及び「スモール」データを利用し得る。そのようなデータストリームの例としては、とりわけ、風力タービンの様々なセンサからの時系列データ(通常は、監視制御及びデータ収集(SCADA)データと称される)、様々な動作ログ(例えば、障害/警報のログ、タービン動作状態のログ、又は現場の保守技術者によって手動で入力される現地の注記)、以前の既知の損傷/故障診断及び報告(例えば、ボアスコープ画像、油の分析、又は根本原因の分析報告、など)のデジタル化された記録、各風力タービンの保守の履歴及び交換事象(例えば、ベアリングの交換、ギアボックスの交換、又は定期保守)、風力発電所全体を含む、各タービンの地理座標又は他の地理データセット(土地利用、地形、など)を含む、地理空間的情報、風力発電所内のポイント位置(及び、それらの座標)からの気象データの時系列データ、又は利用できない場合は、風力発電所に対して予想される天気関連のリスクを評価するために使用される、測定した気候学的状態を説明する文書、及び/又は各WTGの材料表(bill of materials、BOM)、が挙げられ得る。
【0036】
これらの入力データセットの各々は、様々な異なる予測データ科学モデルを通して、風力タービン動作挙動の特定の態様に関する特定の情報及び忠実度のパーセンテージ表現に基づく入力データセットの分割に基づいて利用され得る。データ融合手法のデータ科学構成要素は、統計モデルと共に時系列タイプの分類及び回帰モデルのアンサンブルを実行させることを含み得、質的な危険因子を定量化可能な指標に変換し得る。例えば、SCADAシステムに属するポイント測定は、回転する風力タービンが遭遇する荷重及び環境条件の3次元エンベロープ全体を表すことができない。したがって、統計モデルは、地形情報、風力タービン座標の経験的ルール、及び現地レベルの風向時系列を、風力発電所の密度及び急傾斜地形の両方からの高い乱流荷重のリスクを表す、タービンレベルのリスク指標に組み合わせることができる。同様に、既知のタービンレベルのアラームログは、損傷リスク特徴として使用することができる時間ベースの集合スコアに変換され得る。全てのそのような特徴は、時系列データセットから導出された標準特徴と共に、様々なタービンに関する既知の過去の故障記録に対して訓練モードで分析され得る。このステップは、分類タイプモデル又は回帰タイプ異常検出器モデルのいずれかにおいて表されたときに、使用した特徴が既知の損傷/故障事象に対する予測力を有するかどうかを操作者に知らせることができる。アンサンブル内の各データ科学モデルは、全てのモデル化された風力タービンの損傷の大きさ及び損傷の時間窓を含む、リスクランクを生成し得る。
【0037】
材料物理学モデル及びサポートするデータ科学モデル両方の実行を通して、様々なモデリング出力が、ハイブリッドRUL評価フレームワークを通して、発生され、組み合わせられ得る。
【0038】
RULフレームワークは、任意の所与の時間ポイントで、タービンギアボックスを損傷又は故障させ得る全ての既知の方法が、フレームワークに埋め込まれた様々な損傷進行及び測定モデルを通して表されるわけではないという事実を認識し得る。損傷を生じさせる課題のこの不完全な表現は、誤った予測-風力タービンギアボックスについてギアボックスボアスコープ分析(直接測定)又は他の既知の故障に対する比較を通して誤っているとみなす-を通して明らかにされ得る。したがって、本開示は、第3の入力、すなわち、タービンの操作者及びマネージャから取得される現場インテリジェンスを利用し得る。
【0039】
図1は、実施形態の方法を示すフロー図でこれを提示する。例えば、誤った予測が生じるたびに、法医学分析が行われ、エクスペリエンスベースの現場インテリジェンスと直接比較され得る。これは、RULフレームワークに表されない損傷又は故障の特定の原因を明らかにし得る。新しい原因のそのような任意の決定は、仮説を形成し、それを新しい損傷測定/進行モデルとして表すために、詳細な分析及びモデリング研究を通して更に入念に調査され得る。
【0040】
現在の損傷状態の評価又は予測が、損傷事象の現場検査に直接結び付けられ得ることに留意することが重要である。損傷推定方法からトリガされる現場検査の結論に基づいて、フレームワークは、未来予測RULを更新することができ、又は誤った予測の場合には、法医学分析及び現場インテリジェンスのモデルへの統合を通して埋め込みモデルの強化につなげることができる。
【0041】
データ融合を組み込んだ一実施形態のハイブリッドRULフレームワークを
図2に示す。予測の精度を最大化するために、多数の異種のデータストリームが同時に利用され得る。「履歴データ」としても知られる以前の事象1からのデータは、保守記録、現場故障情報、根本原因分析、BOMデータ、などを含み得る。履歴データを使用して、損傷状態が判定される風力タービンに類似する構成を有する類似の風力タービンなどの、同様に設置され、利用されるシステム及び/又は構成要素(すなわち、アセット)に以前に生じた損傷に関する相対的な情報が抽出され得る。以前の事象からのこれらのデータは、いくつかの例が2~4に示される、現在のアセットの直接又は間接測定から導出された情報ストリームとは別のものであり得る。
【0042】
アセットの現在の損傷状態は、直接物理的検査を通して評価され得、その間、設置された状態に対する損傷状態を、測定器具を使用して定量化することができる。これらの測定の正確度及び精度は、使用される器具に依存し得る。例えば、ボアスコープ撮像2は、しばしば、ギアボックスの構成要素を検査するために、風力タービン技術者によって使用される。損傷領域の画像を使用して、観察した損傷領域の大きさに従って、一般に損傷状態(例えば、損傷クラス1~4)が分類され得る。直接測定は、器具の誤差に影響され得る。
【0043】
損傷状態の間接測定3は、動作中にアセットを監視しているセンサを通して取得され得る。センサ測定は、変化する損傷状態に関数的に依存する、システムパラメータの時系列データを提供することができる。例えば、WTG内に設置された温度センサは、温度の時系列を測定することができ、過去の既知の故障の付随する研究は、より高い温度と関連付けられた相当な数のそのような事象を明らかにし得る。これは、これまで、異常検出器データ科学モデルと称されていた。例えば、クラスタ化技術は、特定の関連する温度変数(以前の既知の故障からの時系列のデータ分析に基づく)の「正常な挙動」を定義することができ、回帰タイプの予測因子モデルからの全ての温度異常を通して作成された損傷閾値の同調測度は、損傷状態の間接測度を提供するために使用されるそのような異常の累積的な測度を得ることができる。間接測定は、2つの主な誤差源、すなわち、測定誤差及びマッピング誤差に影響され得る。測定誤差は、較正、ドリフト、EMI、などを伴う課題を指し得る。マッピング誤差は、測定された変数を対象の潜在的な変数(すなわち、損傷状態)と関連付けるプロセスを通して導入される不確実性を指し得る。
【0044】
別の間接測定は、大域的システム挙動の測定を使用するデータ科学モデルを通して取得することができる。システムの大域的挙動は、アセットの状態が低下するにつれて経時的に変化し得るので、このデータストリームは、アセットの現在の健全性状態の理解を増大させるために使用することができる有用な独立したデータストリームであり得る。風力タービン用途のためのそのような大域的システム挙動データ4の例は、警報/障害コードであり得る。障害コードは、正常挙動対異常挙動を定義するルールに従って、コントローラによって生成され得る。例えば、温度超過障害は、1つ以上のセンサがいくつかの事前に定義した値を超える温度を測定したときに、コントローラによって発生し得る。本開示による方法は、過去の既知の損傷/故障事象に対する一連の様々な障害コード間の検証された関係に基づいて、訓練されたデータ科学モデルを利用し得る。したがって、様々なアラームコードの時間集計された特徴セットで実行されるそのようなモデルの出力は、現在の損傷状態の別の間接測定を表すことができる。
【0045】
対象のアセットに関連する故障モードの物理的モデルの理解を使用して、どのようにアセットが経時的に及び使用状況により劣化するかを説明するモデルを開発することができる。そのような物理学ベースのモデル6は、関与する物理学に応じて様々な形態をとることができる。共通の物理学ベースのモデリング技術のいくつかの例としては、有限要素分析(finite element analysis、FEA)、計算流体力学(computational fluid dynamics、CFD)、多体力学(multi-body dynamics、MBD)、及び線形弾性破壊力学(Linear Elastic Fracture Mechanics、LEFM)が挙げられる。物理的構成要素に関連する「損傷」という用語は、通常、構成材料の状態の変化に関連し、したがって、効率的なモデルを開発するためには、動作状態(材料科学)に対する材料の反応の十分な理解が必要である。モデルは、真の物理的システムに近似するので、モデル不確実性源の理解も必要である。
【0046】
測定システム3~4並びに材料物理学ベースのモデルは、動作データ5を使用し、これは、アセットの使用状況の状態を説明する情報を提供する。そのようなデータは、センサ時系列測定を含み得る。風力タービンでは、監視制御及びデータ収集(SCADA)システムは、この機能を行い、システム入力データ(例えば、風速、方向)、システム出力(例えば、発生した電力)、システムログの任意の時系列(例えば、状態/障害、など)を取得し得る。動作データは、局所測定(例えば、目視検査)、遠隔測定(センサデータ)で構成され得る。動作データはまた、Met Mast(すなわち、気象測定機器を収容しているタワー)又は複数のタービンに対するアセットの比較も可能にすることができる、単一のアセットの局所的挙動及び大域的挙動データを提供することにも分けられ得る。
【0047】
アセットの「致命的損傷レベル」の定義は、いくつかの要因によって大きく異なり得る。概して、致命的損傷レベルは、アセットがもはやその意図する機能を安全に行うことができない損傷の状態を定義する。履歴データは、部分的に使用して、類似のアセットがサービスによって除去された損傷の状態を定義することができる。例えば、アセット材料表、既知の動作条件/使用状況、保守記録、などを収容しているデータベースの分析は、対象のアセット及び故障モードと本質的に類似する既知の故障7の集団を抽出することができる。
【0048】
上述のように、現場で検証される損傷の直接測定(例えば、ボアスコープ)に加えて、様々なデータ科学モデルが、現在の損傷状態の測定を提供するための直接測定オブジェクトとしての役割を果たし得る。
【0049】
測定データ融合プロセス8の出力は、(例えば、類似のWTGの過去の性能に基づいて)WTGの既知の故障挙動7に関して正規化して(0≦D≦1)、損傷状態診断11を発生させ得る。損傷状態「診断」は、動作中のアセットの単一の測定(すなわち、観察)として定義され得る。診断データは、関連する不確実性の測度と共に報告されなければならない。例えば、ガウス不確実性を示す診断データは、分布の平均及びばらつきに関して報告され得る。
【0050】
損傷進行モデル9は、状態遷移関数に関して定義され得、システム入力は、損傷進行速度に関数的に関連付けられる。そのような関数は、(一部の例外を除いて)本質的に単調であり得、ギア又はベアリングは、時間/使用状況の増加したときに、「未摩耗」ではない。損傷進行モデルは、物理学ベース6であり得るか、又はデータ分析(機械学習)から導出され得る。
【0051】
未来損傷状態の予測を行うためには、未来使用状況の理解が必要である。未来入力予測因子モデル10は、アセットが経験した以前の動作状態を分析して、未来使用パターンを外挿するために使用され得る。風力タービン例において、以前のSCADAデータを研削して、月ごとのその特定のアセットを表す風荷重のヒストグラムを決定し、したがって、季節による変動を考慮することを可能にし得る。
【0052】
測定(診断)及び損傷進行モデル両方からの情報は、ハイブリッドプログノスティックモデル12において組み合わせることができる。ハイブリッドプログノスティックモデル12は、一般に、現在状態及び未来状態の確率的な評価を生成するために、下層の損傷進行関数と併せて、複数の独立したデータストリームからの証拠を利用するものと定義することができる。
【0053】
いくつかの異なる状態推定アルゴリズムを用いて、診断観察データを、損傷進行モデル(カルマンフィルタ、アンセンテッドカルマンフィルタ、粒子フィルタ、など)と組み合わせることができ、出力は、現在損傷状態推定値13の確率分布である。次いで、サンプルベースの予測アルゴリズムを使用して、未来状態予測15を生成する(すなわち、発生させる)ことができ、これは、WTGが所与の予測範囲の致命的損傷閾値に達する確率、範囲に達するまでの時間、及び各未来タイムステップでの(例えば、範囲に達するまでの)WTGのシステム状態を含み得る。
【0054】
適用に際して、懸念する損傷レベルを操作者に示す現在状態評価13は、現場の専門家が、手動検査プロセス又は他の保守行動をトリガし得る。エクスペリエンスを通して得られた名目的挙動の経験的知識は、プログノスティックモデル(prognostic model)を「同調させる」ために使用することができるリソースである。現場インテリジェンス16は、予想外の損傷進行に寄与し得る特定のアセットの非名目的状態を特定するために使用することができる。そのような状態は、しばしば、オンラインデータストリームで感知不能であり得(例えば潤滑剤汚染、アセンブリ課題、二次構成要素の損傷、など)、更に、名目的損傷進行挙動からの相当な逸脱をもたらし得る。現場インテリジェンスをフィードバック源としてプログノスティック予測プロセスに統合することは、アセットの真の条件に基づいてアルゴリズムを調整するための形式的機構を提供し得る。
【0055】
図3は、
ハイブリッドプログノスティックモデル12の例示的な実装形態を提示する。プログノサ(prognoser)オブジェクトの目的は、共同の状態パラメータ評価及び不確実性管理のための機能を封入することである。プログノサオブジェクトは、初期状態評価を使用して初期化され得る(22)。所与の例示的な粒子フィルタの実装形態では、初期粒子状態変数は、初期診断からサンプリングされ得る(21)。この時点で、プログノサはまた、データストリーム診断に対するフック(25)、アセット動作状態データベースに対するフック(26)も備え得、1つ以上の損傷進行モデルが割り当てられ得る(27
)。次いでプログノサオブジェクトは、後の使用のために記憶され得る(23)。
【0056】
新しい診断データポイントが検出されると(24)、プログノサは、最初に、評価を確立するために損傷進行モデルを使用して(27)、最後の更新(Ti-1)の時間から現在の時間(Ti)までの動作データを利用して、モデル状態変数を更新し得る(26)。ここで用いられる粒子フィルターアルゴリズムは、サンプリングインポータンスリサンプリング(Sampling Importance Resampling、SIR)に基づき得、文献に容易に見出すことができる。次いで、所与の診断観察の可能性に基づいて(28)、粒子重量が更新され得る(29)。少数の粒子が高い重量を有し、残りが非常に低い重量を有する場合、粒子の変質が生じ得る。変質の課題を回避するために、粒子は、重量計算に続いて再サンプリングされ得る(30)。したがって、更新され、再サンプリングされた加重粒子は、現在の損傷状態評価を別個の確率分布として表す(31)。
【0057】
寿命末期(end of life、EOL)の前方予測又は残存耐用年数(remaining useful life、RUL)が所望される場合(32)は、未来動作状態(34)及び損傷進行モデル(27)を使用して損傷状態が臨界レベルを超えるまで、サンプルベースの予測因子(33)を使用して、各粒子状態を時間的に前方に伝搬することができる。モデル動作条件及び未来動作条件両方における不確実性のため、未来状態予測(35)はまた、別個の確率密度関数によっても説明され得る。RUL(36)は、現在の時間と未来状態分布のいくつかの測度(例えば、平均値)との差として計算することができる。
【0058】
例示的な一実施形態では、風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するための方法は、損傷状態診断を生成することを含み得る。損傷状態診断は、風力タービンの測定データセットを取得することと、現場操作者提供の現場インテリジェンスを測定データセットに統合することと、既知の故障挙動に関して測定データセットを正規化して、正規化された測定データセットを生成することと、正規化された測定データセットを既知の故障挙動と組み合わせて、損傷状態診断を生成することと、によって生成され得る。現場操作者提供の現場インテリジェンスの例としては、操作者によって発見された、これまで確認された故障又は損傷が挙げられ得(例えば、任意の現在のボアスコープに存在しない事例)、それを使用して、モデルを構築すること、又はデータに表すことができる。
【0059】
測定データセットは、1つ以上の直接測定データ、間接測定データ、大域的な挙動、及び動作データを含み得る。直接測定は、測定を使用することを含み得、測定ユニットは、例えば、ボアスコープである。間接測定の例としては、温度センサ又は振動センサを使用することが挙げられ得る。大域的挙動の例としては、同様に構成された風力タービンの動作データの比較が挙げられ得る。動作データは、例えば、監視制御及びデータ収集(SCADA)データを含み得、SCADAデータは、例えば、システム入力データ、システム出力データ、又はシステムログの時系列が挙げられ得る。システム入力データとしては、例えば、風速又は風向が挙げられ得る。システム出力データとしては、例えば、対象の風力タービンによって発生した電力が挙げられ得る。システムログの時系列としては、例えば、風力タービン状態及び/又は障害の時系列が挙げられ得る。
【0060】
既知の故障挙動は、例えば、履歴データから導出され得、それは、例えば、保守記録、現場故障情報、根本原因分析、及び/又は材料表データを含み得る。
【0061】
本方法は、風力タービンギアボックスのための損傷進行モデルを生成するために、動作データ及び状態遷移関数を使用することを更に含み得る。ハイブリッドプログノスティックモデルは、損傷状態診断を損傷進行モデルと組み合わせて、現在損傷状態推定値の確率分布を生成するために使用され得る。いくつかの実施形態では、ハイブリッドプログノスティックモデルは、未来状態予測を生成するために、サンプルベースの予測因子を更に使用し得る。未来状態予測は、予測範囲の致命的損傷閾値に達する確率、予測範囲に達するまでの時間、及びタイムステップでのシステム状態、のうちの1つ以上を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、損傷進行モデルは、例えば、有限要素分析、計算流体力学、多体力学、及び/又は線形弾性破壊力学を組み込んだ物理学ベースのモデルであり得る。いくつかの実施形態では、損傷進行モデルは、機械学習ベースのモデルであり得る。いくつかの実施形態では、損傷進行モデルは、物理学ベースのモデル及び機械学習モデル両方の構成要素を含むことができる。
【0063】
本開示は、風力タービンギアボックスの損傷状態を判定するためのシステムとして具現化され得、本システムは、本明細書で説明する方法のいずれかを実装し得る。そのようなシステムは、例えば、開示する方法のいずれかを行うようにプログラムされたプロセッサであり得る。そのようなシステムは、SCADAデータ、直接測定データ、間接測定データ、動作データ、などのうちの1つ以上を受信するための通信リンクを更に含み得る。
【0064】
プロセッサは、メモリと通信し得、及び/又はそれを含み得る。メモリは、例えば、ランダムアクセスメモリ(Random-Access Memory、RAM)(例えば、ダイナミックRAM、スタティックRAM)、フラッシュメモリ、リムーバブルメモリ、及び/又は類似のものであり得る。いくつかの場合では、本明細書で説明する動作を行うことと関連付けられた命令(例えば、画像センサを動作させる、ホログラフィック画像から複数のパッチを抽出する)を、メモリ及び/又は記憶媒体内(いくつかの実施形態では、命令が記憶されるデータベースを含む)に記憶することができ、命令は、プロセッサで実行される。
【0065】
いくつかの場合では、プロセッサは、1つ以上のモジュール及び/又は構成要素を含み得る。プロセッサによって実行される各モジュール/構成要素は、ハードウェアベースのモジュール/構成要素(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)、特定用途向け集積回路(kapplication specific integrated circuit、ASIC)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP))、ソフトウェアベースのモジュール(例えば、メモリに及び/若しくは又はデータベースに記憶された、並びに/又はプロセッサで実行される、コンピュータコードのモジュール)、並びに/又はハードウェアベースのモジュール及びソフトウェアベースのモジュールの組み合わせ、の任意の組み合わせであり得る。プロセッサによって実行される各モジュール/構成要素は、本明細書で説明する1つ以上の特定の機能/動作を行うことが可能であり得る。いくつかの場合では、プロセッサに含まれ、実行されるモジュール/構成要素は、例えば、プロセス、アプリケーション、仮想マシン、及び/又はいくつかの他のハードウェア若しくはソフトウェアモジュール/構成要素であり得る。プロセッサは、それらのモジュール/構成要素を走らせる及び/又は実行するように構成された任意の好適なプロセッサであり得る。プロセッサは、一組の命令又はコードを走らせる及び/又は実行するように構成された任意の好適な処理デバイスであり得る。例えば、プロセッサは、汎用プロセッサ、中央演算処理装置(CPU)、アクセラレーテッドプロセッシングユニット(accelerated processing unit、APU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及び/又は同類のものであり得る。
【0066】
本明細書で説明するいくつかの例は、様々なコンピュータ実装動作を行うための命令又はコンピュータコードを有する非一時的コンピュータ可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体とも称され得る)を有するコンピュータ記憶装置製品に関し得る。コンピュータ可読媒体(又はプロセッサ可読媒体)は、それ自体が一時的な伝搬信号(例えば、空間又はケーブルなどの伝送媒体上で情報を搬送する伝搬電磁波)を含まないという点で非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コードとも称され得る)は、特定の1つ又は複数の目的で設計及び構築されるものであり得る。非一時的コンピュータ可読媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク、及び磁気テープなどの磁気記憶媒体。コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク-リードオンリーメモリ(CD-ROM)、及びホログラフィックデバイスなどの光学記憶媒体。光ディスクなどの磁気光学記憶媒体。搬送波信号処理モジュール、並びに特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、リードオンリーメモリ(ROM)、及びランダム-5アクセスメモリ(RAM)デバイスなどの、プログラムコードを記憶及び実行するように特に構成されたハードウェアデバイス、が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で説明する他の例は、コンピュータプログラム製品に関し得、例えば、本明細書で論じる命令及び/又はコンピュータコードを含むことができる。
【0067】
コンピュータコードの例としては、マイクロコード又はマイクロ命令、コンパイラなどによって生成される機会命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、及びインタプリタを使用してコンピュータによって実行される高水準命令を含むファイルが挙げられ得るが、それらに限定されない。例えば、例は、Java、C++、.NET、又は他のプログラミング言語(例えば、オブジェクト指向プログラミング言語)、及び開発ツールを使用して実装され得る。コンピュータコードの追加的な例としては、制御信号、暗号化コード、及び圧縮コードが挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示は、プロセッサによって実施されたときに、又は本明細書で開示する方法のいずれかをプロセッサに行わせる命令を有する有形の非一時的コンピュータ可読媒体として具現化され得る。
【0069】
本明細書で開示する様々な実施形態及び実施例において説明する方法のステップは、本発明の方法を実行するのに十分である。したがって、一実施形態では、本方法は、本明細書で開示する方法のステップの組み合わせから本質的になる。別の実施形態では、本方法は、そのようなステップから成る。