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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】超音波洗浄器
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20240703BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B08B3/12 Z
B06B1/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021540954
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2020031186
(87)【国際公開番号】W WO2021033696
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019152268
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大谷 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】宮島 実
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-157941(JP,A)
【文献】特開2005-329345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/06、3/12
D06F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用パルス波形の印加によって超音波振動を発生させる振動発生部と、
被洗浄物に接触可能であり、前記振動発生部で発生した振動を当該被洗浄物に伝達する振動伝達部と、
前記振動発生部に印加する所定の周期および振幅の前記駆動用パルス波形を生成する駆動パルス生成部とを備えており、
前記駆動用パルス波形においては、前記振動発生部に駆動パルスが印加されるON時間と、駆動パルスが印加されないOFF時間とが交互に発生し、
前記ON時間とは、前記駆動パルスが複数個連続して含まれる時間であり、かつ前記ON時間において、前記駆動パルスのデューティ比が一定であり、
前記OFF時間の長さは、前記ON時間における前記駆動パルスの前記所定の周期の整数倍であることを特徴とする超音波洗浄器。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波洗浄器であって、
前記ON時間から前記OFF時間への切り替え、および前記OFF時間から前記ON時間への切り替えは、駆動用パルス波形の電圧極性が入れ替わるタイミングで行われることを特徴とする超音波洗浄器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波洗浄器であって、
前記ON時間から前記OFF時間に切り替わる直前の駆動パルスの極性と、前記OFF時間から前記ON時間に切り替わる直後の駆動パルスの極性とが、互いに逆極性であることを特徴とする超音波洗浄器。
【請求項4】
駆動用パルス波形の印加によって超音波振動を発生させる振動発生部と、
被洗浄物に接触可能であり、前記振動発生部で発生した振動を当該被洗浄物に伝達する振動伝達部と、
前記振動発生部に印加する所定の周期の前記駆動用パルス波形を生成する駆動パルス生成部とを備えており、
前記駆動用パルス波形においては、前記振動発生部に駆動パルスが印加されるON時間と、駆動パルスが印加されないOFF時間とが交互に発生し、
前記振動伝達部における負荷の有無を検出する負荷検出部を備えており、
前記駆動パルス生成部は、負荷がない場合の前記駆動用パルス波形における前記OFF時間を、負荷がある場合の前記駆動用パルス波形における前記OFF時間よりも長くすることを特徴とする超音波洗浄器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンディタイプの超音波洗浄器に関する。本願は、2019年8月22日に、日本に出願された特願2019-152268号に基づき優先権を主張し、その内容をここで援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣類の部分洗いなどに使用でき、超音波振動により汚れを落とすハンディタイプの超音波洗浄器が製品化されている。このような超音波洗浄器は、圧電体などを用いた超音波振動素子に振動部品(例えば超音波ホーン)を取り付けた構成とされており、超音波振動素子を駆動して、振動部品に超音波周波数の振動を与える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-11424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンディタイプの超音波洗浄器は、通常、電池(充電池を含む)によって駆動される。このため、連続使用時間を長くするためには、低消費電力での駆動が要求される。消費電力を抑える手段としては、駆動電圧や駆動時間の低減などが考えられる。例えば、超音波振動素子をパルス波形で駆動する場合は、駆動用パルス波形において駆動パルスのデューティ比を小さくしてパルス幅を小さくする。すなわち、フルパワーで駆動する場合の駆動用パルス波形が図9(a)に示す波形(例えば、デューティ比100%)である場合、省電力駆動時の駆動用パルス波形は図9(b)に示す波形(例えば、デューティ比50%)としている。
【0005】
しかしながら、単に駆動電圧や駆動時間を低減すると、駆動パワーも下がってしまい、洗浄力が低下するといった問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低消費電力での駆動と洗浄力低下の抑制とを両立することのできる超音波洗浄器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様の超音波洗浄器は、駆動用パルス波形の印加によって超音波振動を発生させる振動発生部と、被洗浄物に接触可能であり、前記振動発生部で発生した振動を当該被洗浄物に伝達する振動伝達部と、前記振動発生部に印加する所定の周期の前記駆動用パルス波形を生成する駆動パルス生成部とを備えており、前記駆動用パルス波形においては、前記振動発生部に駆動パルスが印加されるON時間と、駆動パルスが印加されないOFF時間とが交互に発生することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、ON時間中はフルパワー駆動並みの駆動パルスを印加することで最大の洗浄力が発揮でき、OFF時間中は振動伝達部の振動を慣性的に維持することでON時間中とほぼ同様の洗浄力が発揮できる。このため、駆動用パルス波形にOFF時間を設けることでOFF時間に応じた電力消費量を削減しながら、洗浄力の低下も抑制できる。
【0009】
また、上記超音波洗浄器では、前記OFF時間の長さは、前記ON時間における前記駆動パルスの前記所定の周期の整数倍である構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、繰り返し発生する全てのON時間において同じ位相の駆動パルスを印加することができ、位相のずれによる無駄な消費電力を防止することができる。
【0011】
また、上記超音波洗浄器では、前記ON時間から前記OFF時間への切り替え、および前記OFF時間から前記ON時間への切り替えは、駆動用パルス波形の電圧極性が入れ替わるタイミングで行われる構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、振動伝達部が最大振幅位置(振動中心から最も離れた位置)にあるときに、ON時間からOFF時間およびOFF時間からON時間への切り替えを行うことができ、切り替え時に振動伝達部の振幅が小さくなることを防止できる。
【0013】
また、上記超音波洗浄器は、前記ON時間から前記OFF時間に切り替わる直前の駆動パルスの極性と、前記OFF時間から前記ON時間に切り替わる直後の駆動パルスの極性とが、互いに逆極性である構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、OFF時間からON時間に切り替わるタイミングでのパワー損失を防止することができる。
【0015】
また、上記超音波洗浄器は、前記振動伝達部における負荷の有無を検出する負荷検出部を備えており、前記駆動パルス生成部は、負荷がない場合の前記駆動用パルス波形における前記OFF時間を、負荷がある場合の前記駆動用パルス波形における前記OFF時間よりも長くする構成とすることができる。
【0016】
上記の構成によれば、振動伝達部における負荷がない場合、すなわち超音波洗浄器が洗浄を行っていない場合には、OFF時間を長くすることで消費電力のさらなる削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様の超音波洗浄器は、駆動用パルス波形にOFF時間を設け、OFF時間中は振動伝達部の振動を慣性的に維持することで、低消費電力での駆動と洗浄力低下の抑制とを両立することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1に係る超音波洗浄器の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は底面図である。
図2図1(a)のA-A断面図である。
図3】超音波洗浄器の回路構成を示すブロック図である。
図4】電源ON状態とされている超音波洗浄器の駆動用パルス波形を示す波形図である。
図5】超音波洗浄器の洗浄力-消費電力特性を示すグラフである。
図6】(a)は実施の形態2に係る位相制御の行われた駆動用パルス波形を示す波形図であり、(b)は位相制御の行われていない駆動用パルス波形を示す波形図である。
図7】(a)は1周期分の駆動用パルス波形を示す波形図であり、(b)は振動している超音波ホーンの位置を模式的に示す図である。
図8】超音波ホーンにおける振動発生部およびホーン部の振動を模式的に示す図であり、(a)はON時間中の振動、(b)はOFF時間中の振動、(c)はOFF時間からON時間に切り替わった直後の振動を示している。
図9】従来の超音波洗浄器の駆動用パルス波形を示す波形図であり、(a)はフルパワーで駆動する場合の駆動用パルス波形、(b)は省電力駆動時の駆動用パルス波形を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まずは、本実施の形態1に係る超音波洗浄器10(以下、単に洗浄器10と称する)の基本構造を図1および図2を参照して説明する。図1は、洗浄器10の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図、(d)は底面図である。図2は、図1(a)のA-A断面図である。ここでは、説明の便宜上、洗浄器10の長手方向を上下方向とし、先端部12の設けられた側を上方としている。
【0020】
図1に示すように、洗浄器10の外観は、把持部11と先端部12とで構成されている。把持部11は、使用者によって把持される部分であり、長手方向に直交する断面が略矩形形状を有している。把持部11は、アルミニウムなどの金属で構成されている。
【0021】
先端部12は、把持部11との接続側から先端に向けて先細りする形状とされており、その先端(上端)には、細長い矩形状の開口121が設けられている(図1(c)参照)。開口121からは、平板状のホーン部22が外部に突出するように配置されている。また、先端部12は、洗浄器10の不使用時にはキャップ(図示せず)を被せることでホーン部22を保護できるようになっている。
【0022】
洗浄器10の底面には、押しボタンスイッチ13および電源カバー14が設けられている(図1(d)参照)。押しボタンスイッチ13は、使用者による押圧操作を受けるたびに洗浄器10の電源のON/OFFを切り替えるものである。電源カバー14は、その内側にある電源ジャック(図示せず)を覆うように設けられている。洗浄器10は、電源カバー14を外して電源ジャックに電源プラグを差し込むことで、バッテリー30(図2参照)に対して充電が行えるようになっている。尚、洗浄器10は、電源を用いた有接点充電以外に、付属の充電台に洗浄器10を載せることで無接点充電を行うことが可能であってもよい。
【0023】
また、図2に示すように、洗浄器10の内部には、超音波ホーン20、バッテリー30、メイン回路基板40、操作回路基板41および昇圧トランス50などが収容されている。メイン回路基板40には、超音波ホーン20、バッテリー30、操作回路基板41および昇圧トランス50の各々が接続され、制御マイコン63(図3参照)により制御されるようになっている。
【0024】
超音波ホーン20は、洗浄器10の先端側、すなわち先端部12の内側に配置されており、振動発生部21と振動伝達部であるホーン部22とを有している。振動発生部21は、圧電体を有しており、この圧電体に所定の駆動信号が印加されることにより、所定の周波数および振幅の超音波振動が発生するようになっている。本実施の形態1に係る洗浄器10では、振動発生部21が衣類の洗浄に適した30~40kHzの振動を発生するように駆動されている。
【0025】
ホーン部22は、金属で構成されており、上述したように、その先端が先端部12の開口121から外部に突出している。すなわち、ホーン部22は、洗浄器10の使用時に、その先端を被洗浄物(衣類など)に接触させることで、振動発生部21で発生した振動を被洗浄物に伝達する。また、ホーン部22は共振周波数を有しており、ホーン部22の共振周波数は振動発生部21で発生させる所定の周波数と同一または近似している。これにより、振動発生部21で発生した振動をホーン部22にて増幅する。
【0026】
操作回路基板41は、押しボタンスイッチ13による操作を検出し、これをメイン回路基板40に伝達するものである。
【0027】
続いて、洗浄器10を駆動するための回路構成に関し、図3を参照して説明する。図3は、洗浄器10の回路構成を示すブロック図である。
【0028】
バッテリー30は、昇圧回路61および充電制御回路62を間に介して充電端子60と接続されている。充電端子60は、ここでは上述した電源ジャックに相当し、例えばアダプタを介して5Vの電圧が印加される。昇圧回路61は、充電端子60に印加された電圧を昇圧する。充電制御回路62は、昇圧された電源でバッテリー30が適切に充電されるように制御を行う。
【0029】
制御マイコン63は、洗浄器10の駆動を全体的に制御する主制御部である。制御マイコン63には、表示部64、押しボタンスイッチ13、駆動回路(駆動パルス生成部)65、電圧検知部66および電流検知部67が接続されている。尚、制御マイコン63、駆動回路65、電圧検知部66および電流検知部67は、メイン回路基板40に搭載されているものとする。
【0030】
表示部64は、詳細は後述するが、洗浄器10の駆動状態などを表示によって使用者に報知する手段である。押しボタンスイッチ13は、使用者の押圧操作によって制御マイコン63を駆動させる。駆動回路65は、制御マイコン63から入力される駆動信号の駆動周波数に基づき、超音波ホーン20の駆動用信号、すなわち駆動用パルス波形を生成する。昇圧トランス50は、バッテリー30、駆動回路65および超音波ホーン20に接続されており、駆動回路65から入力される駆動用パルス波形に基づいてバッテリー30からの電圧を昇圧し、超音波ホーン20(詳細には振動発生部21)に交流電圧を印加する。ここで、超音波ホーン20に印加される交流電圧波形は駆動用パルス波形を反映しているので、昇圧された駆動用パルス波形と見なすことができる。
【0031】
電圧検知部66は、バッテリー30の電圧を検知して、その検知電圧を制御マイコン63に入力する。制御マイコン63は、電圧検知部66の検知電圧が一定以下の電圧になると、バッテリー不足を検出して洗浄器10の電源をOFFとする。電流検知部67は、超音波ホーン20の駆動電流(例えば、駆動回路65に生じる駆動電流)を検知し、その検知電流を制御マイコン63に入力する。
【0032】
洗浄器10を使用するときには、押しボタンスイッチ13を操作して洗浄器10の電源をON状態とし、振動の生じているホーン部22の先端を被洗浄物の洗浄箇所に押し当てる。このとき、被洗浄物の洗浄箇所は、洗浄媒体(水、または洗剤を含んだ水)を含んだ状態とされている。ホーン部22の振動は洗浄媒体を介して被洗浄物に伝達され、被洗浄物に付着した汚れを浮かせて洗浄媒体に流出させる。これにより、被洗浄物に付着した汚れが除去される。
【0033】
本実施の形態1に係る洗浄器10は、低消費電力での駆動と洗浄力低下の抑制とを両立することのできる駆動方法に特徴を有するものである。以下、この特徴点について詳細に説明する。
【0034】
図4は、電源ON状態とされている洗浄器10の駆動用パルス波形を示す波形図である。図4に示すように、洗浄器10の駆動用パルス波形には、ON時間とOFF時間とが交互に発生する。
【0035】
駆動用パルス波形のON時間中は、各駆動パルスのデューティ比は変化させず、図9(a)に示すフルパワー駆動時と同様の駆動パルス(例えば、デューティ比100%の駆動パルス)が印加される。すなわち、ON時間中の洗浄器10は、最大の洗浄力が発揮できる。一方、駆動用パルス波形のOFF時間中は、駆動パルスが印加されない(デューティ比0%)。但し、このOFF時間中は、ON時間中における超音波ホーン20の振動がホーン部22の共振によって慣性的に維持され、多少の減衰は生じるものの、ON時間中とのほぼ同様の周波数および振幅で超音波ホーン20が振動する。すなわち、OFF時間中の洗浄器10においても、ON時間中とほぼ同様の洗浄力が発揮できる。
【0036】
このように、本実施の形態1に係る洗浄器10は、電源ON状態の駆動用パルス波形にOFF時間を設けることで、OFF時間に応じた電力消費量を削減できる。また、OFF時間中も超音波ホーン20を慣性的に動作させることで、低消費電力でありながら、洗浄力の低下を抑制することができる。尚、本願発明者による実験では、ONデューティ(全駆動時間(ON時間+OFF時間)に対するON時間の時間比率)が80%までは、ONデューティが100%のフルパワー駆動時と同等の洗浄力を維持できることが確認できた。
【0037】
また、本実施の形態1に係る洗浄器10は、ある程度の洗浄力低下を許容すれば、ONデューティをさらに小さくすることで消費電力をさらに削減することも可能である。ここで、洗浄器10において、ONデューティを変化させて消費電力を低減させた場合の洗浄力の評価結果を以下の図5に示す。尚、図5においては、ONデューティを変化させるに当たって、ON時間を2.7msに固定しながら、OFF時間を変化させた。また、駆動用パルス波形の周波数は約38kHzとしている。
【0038】
図5に示すように、洗浄器10の洗浄力は、消費電力が小さくなる(消費電力の削減量が大きくなる)に従って低下する。図5の結果に示されるように、洗浄器10における洗浄力低下の許容限界に応じて、消費電力を削減することができる。例えば、洗浄器10における洗浄力が80%まで許容できる場合、ONデューティを小さくすることで、消費電力は30%(消費電力の削減量は70%)に削減することができる。
【0039】
さらに、本実施の形態1に係る洗浄器10は、洗浄力を異ならせた複数のパワーレベルを有していてもよい。例えば、図5に示す結果に基づけば、洗浄力が100%(消費電力が約80%となるONデューティ)の場合をパワーレベル“大”、洗浄力が90%(消費電力が約60%となるONデューティ)の場合をパワーレベル“中”、洗浄力が80%(消費電力が約30%となるONデューティ)の場合をパワーレベル“小”とし、使用者が任意のパワーレベルを選択できるようにしてもよい。これにより、洗浄器10の使用時に、被洗浄物の汚れ具合や被洗浄物の布質などに応じて、使用者が洗浄器10のパワーレベルを落とすことも可能となる。また、ユーザの選択したパワーレベルは、表示部64の表示(例えばインジケータ表示)によって通知されることが好ましい。また、洗浄器10は、使用者が選択できるパワーレベルの一つとして、駆動用パルス波形にOFF時間を設けない(ONデューティが100%)のフルパワーレベルを有していてもよい。
【0040】
また、上述の駆動方法においては、ON時間およびOFF時間の切替サイクルも適切に設定される必要がある。すなわち、切替サイクルが長ければ、それに応じてON時間およびOFF時間が長くなり、OFF時間中の超音波ホーン20の振動減衰が大きくなって洗浄力の低下に繋がる。このため、超音波ホーン20の振動減衰が大きくなりすぎないように、ON時間を適切な長さに調整する必要がある(OFF時間はON時間を基準に決定される)。但し、適切なON時間は、超音波ホーン20の減衰振動特性に依存するものであって、適切なON時間の許容範囲は、洗浄器10の設計寸法などに応じて適切に設定されるものである。例えば、超音波ホーン20が大きく、減衰振動時間が長い場合には、超音波ホーン20に対する慣性力が大きくなるため、超音波ホーン20が小さい場合に比べてON時間を長くする(切替サイクルを長くする)。
【0041】
また、ON時間は駆動用パルス波形が複数個連続して含まれる時間以上であることが好ましく、例えば、10パルス以上含まれる時間とする。これにより、超音波ホーン20が共振するために必要な振動を効率よく与えることができる。また、ON時間は、ON時間とOFF時間との合計からなる周期が、長すぎないようにすることが好ましい。例えば、ON時間とOFF時間との合計からなる周期が20ms以上とならないように、より好ましくは10ms以上とならないようにする。これにより、洗浄器10が低周波振動を起こしてユーザに不快感を与えることを防止できる。
【0042】
〔実施の形態2〕
上記実施の形態1では、洗浄器10の基本的な駆動方法を説明したが、間欠駆動が超音波ホーン20の慣性による振動を阻害してしまうと、超音波ホーン20を効率よく振動させることができず、無駄な消費電力が発生する。この無駄な消費電力を防止するためには、駆動用パルス波形の位相制御を行うことが好ましい。本実施の形態2では、駆動用パルス波形の位相制御について説明する。
【0043】
実施の形態1で説明したように、洗浄器10の駆動方法では、駆動用パルス波形においてON時間とOFF時間とを交互に発生させる。このとき、OFF時間からON時間になるタイミングで印加される駆動パルスの位相が、その前のON時間に印加されていた駆動パルスの位相に対してずれていると、超音波ホーン20の慣性による振動を阻害して無駄な消費電力に繋がる。
【0044】
このような超音波ホーン20の慣性振動の阻害を防止するために、本実施の形態では、図6(a)に示すように、ON時間中に印加される駆動パルスの位相が、繰り返し発生する全てのON時間において同じ位相となるように制御される。言い換えれば、OFF時間の長さが、ON時間における駆動パルスの1周期の整数倍に設定される。
【0045】
図6(b)に示す駆動用パルス波形は比較例であり、位相制御が行われておらず、1回目のON時間と2回目のON時間とで駆動パルスの位相が互いにずれている場合を示している。図6(b)に示す駆動用パルス波形において、1回目のON時間において生じる超音波ホーン20の振動は、その後のOFF時間においても慣性的に持続している。すなわち、OFF時間において生じている超音波ホーン20の振動は、その前のON時間の駆動用パルス波形と同じ位相の仮想パルスが与えられて生じている振動と見なすことができる。このOFF時間から2回目のON時間に切り替わったときに印加される駆動用パルス波形の位相が仮想パルスからずれていれば、OFF時間において生じていた振動を阻害するような作用が生じる。すなわち、OFF時間からON時間に切り替わるタイミングで、超音波ホーン20の振動周波数が変化したり振幅量が低減したりする(すなわち、慣性振動が阻害される)。駆動用パルス波形がこの状態から元の振動に戻すために電力を消費するため、無駄な消費電力が発生する。
【0046】
一方、図6(a)に示す駆動用パルス波形においては、1回目のON時間において生じる超音波ホーン20の振動は、その後のOFF時間において慣性的に持続する。そして、2回目のON時間において印加される駆動パルスの位相が、1回目のON時間において印加される駆動パルスと同じ位相であり、OFF時間中の仮想パルスと同じ位相である。そのため、OFF時間からON時間に切り替わるときに、OFF時間において生じていた振動が阻害されることがない。その結果、無駄な消費電力を発生させずに、超音波ホーン20の振動をスムーズに持続させることができる。
【0047】
さらに、本実施の形態2に係る洗浄器10においては、以下の位相制御を行うことがより好ましい。尚、図6(a)に示す駆動用パルス波形は、これらの位相制御も併せて実施するものとなっている。
(1) ON時間からOFF時間への切り替え、およびOFF時間からON時間への切り替えは、電圧極性が入れ替わるタイミング(ゼロクロスのタイミング)で行う。
(2) ON時間からOFF時間に切り替わる直前の駆動パルスの極性と、OFF時間からON時間に切り替わる直後の駆動パルスの極性とが、互いに逆極性となる。
【0048】
上記(1)の制御により、超音波ホーン20が最大振幅位置(振動中心から最も離れた位置)にあるときに、ON時間からOFF時間およびOFF時間からON時間への切り替えを行うことができる。これを、図7を参照して具体的に説明する。
【0049】
超音波ホーン20は、図7(a)に示す1周期分の駆動パルスが与えられることで1往復分の振動が生じる。図7(b)は、振動している超音波ホーン20の位置を模式的に示す図であり、20Aは振動中心(基準位置)にある超音波ホーン20を示し、20Bおよび20Cは最大振幅位置にある超音波ホーン20を示している。超音波ホーン20に+極性のパルスが印加されるとき(図7(a)におけるP1~P3の区間)、超音波ホーン20は図7(b)における右方向に移動する(20Bから20Cへの移動)。そして、超音波ホーン20に-極性のパルスが印加されるとき(図7(a)におけるP3~P5の区間)、超音波ホーン20は図7(b)における左方向に移動する(20Cから20Bへの移動)。尚、図7は模式的な図であり、超音波ホーン20の移動方向はこの図に限るものではない。
【0050】
すなわち、超音波ホーン20は、図7(a)におけるP1およびP5のタイミングでは20Bの位置にあり、P3のタイミングでは20Cの位置にあり、P2およびP4のタイミングでは20Aの位置にある。これより、ON時間からOFF時間への切り替え、およびOFF時間からON時間への切り替えを駆動用パルス波形のゼロクロスのタイミング(P1、P3またはP5のタイミング)で行うと、超音波ホーン20が最大振幅位置にあるときに切り替えが行われることになる。
【0051】
これに対し、駆動用パルス波形がゼロクロスでないタイミング、例えばP2またはP4のタイミングで切り替えを行うと、超音波ホーン20が最大振幅の位置でないときに切り替えが行われる。その結果、この駆動パルス波形による超音波ホーン20の駆動が不十分となり、超音波ホーン20の振幅が小さくなる。
【0052】
また、上記(2)の制御により、OFF時間からON時間に切り替わるタイミングでのパワー損失を防止することができる。これを、図8を参照して具体的に説明する。尚、図8も模式的な図であり、超音波ホーン20の移動方向はこの図に限るものではない。
【0053】
ON時間において超音波ホーン20に駆動パルスが印加されているとき、この駆動パルスは超音波ホーン20の振動発生部21に作用して、振動発生部21に振動を生じさせる。そして、振動発生部21に生じた振動がホーン部22に伝達される。このときの状態を図8(a)に示す。
【0054】
ON時間からOFF時間に切り替わると、振動発生部21は振動を停止し、ホーン部22のみが慣性的に振動する。このときの状態を図8(b)に示す。このとき、振動発生部21の停止位置は、ON時間からOFF時間に切り替わる直前の駆動パルスの極性に依存する。図8(b)の例では、切り替わる直前の駆動パルスの極性は+極性であり、振動発生部21は+極性のパルス印加時の移動方向(右方向)の終端(右端)で停止している。
【0055】
続いて、OFF時間からON時間に切り替わると、再び駆動パルスが印加されて振動発生部21が振動を開始する。但し、OFF時間からON時間に切り替わる直後の駆動パルスの極性が、ON時間からOFF時間に切り替わる直前の駆動パルスの極性と同じ+極性である場合、振動発生部21は+極性のパルス印加時の移動方向の終端で停止しているため、振動発生部21は駆動パルスの印加直後において、これ以上は移動できずにパワー損失が発生する。
【0056】
一方、OFF時間からON時間に切り替わる直後の駆動パルスの極性が、ON時間からOFF時間に切り替わる直前の駆動パルスの極性と逆の極性である場合、振動発生部21は駆動パルスの印加直後から移動可能となるため、パワー損失が発生しない。
【0057】
本実施の形態2で説明した位相制御において、制御マイコン63は、タイマー(図示せず)を用いた時間制御によりON時間およびOFF時間の切り替えタイミングを制御する。このとき、タイマーは、駆動用パルス波形用の発振源(クロック)を用いてカウントする構成とする。これにより、駆動用パルス波形とタイマーとのずれを防止できる。また、制御マイコン63が直接駆動用パルス波形を生成してもよい。
【0058】
〔実施の形態3〕
本実施の形態3では、洗浄器10におけるさらに好適な駆動制御について説明する。具体的には、洗浄器10の駆動時における負荷(水や被洗浄物との接触)の有無に応じてOFF時間を変化させ、消費電力のさらなる削減を図る方法について説明する。
【0059】
洗浄器10の使用時において、洗浄器10の先端(すなわちホーン部22)は常に水や被洗浄物と接触しているわけではなく、洗浄器10において常に負荷が生じているわけではない。このため、洗浄器10に負荷の有無を検出する負荷検出部を設け、負荷のないときには、負荷のあるときに比べて自動的にOFF時間を長くすることで、消費電力のさらなる削減を図ることができる。また、負荷のない状態が所定時間以上検出された場合には、オートパワーオフにより洗浄器10を停止状態(ONデューティが0%の状態)としてもよい。
【0060】
洗浄器10において、負荷の有無を検出する方法は特に限定されるものではないが、一例として、超音波ホーン20の駆動電流に基づいて検出を行う方法が挙げられる。この場合、図3に示す電流検知部67が、ON時間中の駆動電流を検知して制御マイコン63に入力する。負荷があるときの駆動電流は、負荷のないときの駆動電流に比べて増加する。このため、制御マイコン63は、電流検知部67から入力される駆動電流を所定の閾値と比較し、駆動電流が閾値以上である場合には負荷があると判定し、駆動電流が閾値未満である場合には負荷がないと判定することができる。この例では、電流検知部67および制御マイコン63が、特許請求の範囲に記載の負荷検出部に相当する。尚、洗浄器10において負荷がなく、OFF時間が長くされているときやオートパワーオフとされたときには、表示部64の表示(例えばインジケータ表示)によってこれを通知することが好ましい。
【0061】
また、洗浄器10における負荷の有無を検出する他の方法としては、例えば、昇圧トランス50における二次側の電圧と電流との位相差に基づいて判定する方法がある。この方法では、負荷がある場合には電圧と電流との位相が同位相に近づくが、負荷がない場合には電圧と電流との位相が90°ずれる。これにより、洗浄器10における負荷の有無を検出することができる。
【0062】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。

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