(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
E02F9/24 B
(21)【出願番号】P 2021553670
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040512
(87)【国際公開番号】W WO2021085503
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019199405
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】溝口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】穴原 圭一郎
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007867(JP,A)
【文献】特開平05-028382(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117268(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42-3/43
3/84-3/85
9/00-9/28
G08B 19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体、及び、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体により構成された車体を備えた作業機械において、
前記下部走行体、及び、前記上部旋回体を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置と、
前記車体の周囲の物体を検知するセンサと、
前記車体の動作を制限する安全支援装置と、
前記センサの検知信号に基づいて前記安全支援装置を制御する制御装置と、を備え、
前記センサの検知範囲は、前記下部走行体の走行性能に基づいて予め定められた検知範囲である第一検知範囲と、前記第一検知範囲の内側で前記上部旋回体の旋回範囲に基づいて予め定められた検知範囲である第二検知範囲と、で構成され、
前記制御装置は、前記センサにより検知された前記物体の位置が前記第一検知範囲である場合には前記下部走行体の走行動作を制限し、前記第二検知範囲である場合には前記上部旋回体の前記下部走行体に対する旋回動作を制限するように前記安全支援装置を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
前記センサは、前記上部旋回体の後方、左側方、及び、右側方にそれぞれ配置され、
前記制御装置は、
前記センサにより検知された前記物体の位置が前記第一検知範囲である場合には、前記上部旋回体の前記下部走行体に対する旋回動作を制限せずに、前記下部走行体の走行動作を制限し、
前記センサにより検知された前記物体の位置が前記第二検知範囲である場合には、前記走行動作を制限せずに、前記旋回動作を制限するように前記
安全支援装置を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械において、
前記安全支援装置は前記オペレータに警報を発する警報装置を有し、
前記制御装置は、前記センサにより検知された前記物体の位置が前記第一検知範囲と前記第二検知範囲の何れであるかに応じて、前記オペレータに異なる種類の警報を発するように前記警報装置を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械において、
前記第一検知範囲は、前記下部走行体の走行動作における最大速度に応じて設定されることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械においては、運転支援に関する技術として、車体に設けたカメラで得られる画像を運転室のモニタに表示することで、オペレータによる作業機械の周囲監視を補助するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、走行体と、前記走行体に搭載された旋回体と、前記旋回体の周囲の所定の範囲を撮像する撮像手段と、前記所定の範囲に含まれる第1の範囲において所定の物体を検知する物体検知手段とを備えるショベルが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、作業機械の周囲に前記作業機械に近くなるにつれて危険度が高くなる複数の仮想危険度ポテンシャルゾーンを設定するポテンシャルゾーン設定手段と、前記作業機械に対する検出対象物の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段により検出された位置が複数の前記仮想危険度ポテンシャルゾーンのいずれかのゾーンに入っているかを判定する判定手段と、警報を発生する警報手段とを備え、前記判定手段の判定結果に応じて前記検出対象物が複数の前記仮想危険度ポテンシャルゾーンのうち低い危険度から高い危険度のゾーンへ移動したことを検出して前記警報手段を駆動し、警報を発生する作業機械の警報システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-206952号公報
【文献】特開平5-028382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油圧ショベルのような作業機械においては、フロント作業機の動作だけではなく、旋回動作や走行動作などの種々の動作を行うことで作業を行う。このため、油圧ショベルの各部の動作範囲に応じて検知範囲を設定し周囲監視を行う必要がある。しかしながら、上記従来技術においては、作業機械の動作範囲を考慮した場合に非常に広い検知範囲を設定する必要があるため、検知が不要な範囲まで対象物を検知してしまい、過剰な警報によってオペレータの作業を阻害してしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、作業機械の動作範囲に応じて検知範囲を設定することで検知精度を向上しつつ、作業を行うオペレータへの過剰な警報による影響を低減することができる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、下部走行体、及び、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体により構成された車体を備えた作業機械において、前記下部走行体、及び、前記上部旋回体を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置と、前記車体の周囲の物体を検知するセンサと、前記車体の動作を制限する制限装置または前記オペレータへの警報を行う警報装置の少なくとも何れか一方を有する安全支援装置と、前記センサの検知信号に基づいて前記安全支援装置を制御する制御装置とを備え、前記センサの検知範囲は、前記下部走行体の走行性能に基づいて定められる第一検知範囲と、前記上部旋回体の後端の旋回半径に沿って定められる第二検知範囲と、で構成されるものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機械の動作範囲に応じて検知範囲を設定することで検知精度を向上しつつ、作業を行うオペレータへの過剰な警報による影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す側面図である。
【
図2】作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す上面図である。
【
図3】運転室を抜き出して示す部分断面斜視図である。
【
図4】油圧ショベルに適用される油圧回路システムの一部を関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。
【
図5】油圧ショベルの周囲監視システムに係る構成を抜き出して模式的に示す機能ブロック図である。
【
図6】制御装置から電磁弁に出力される電磁弁電流とアクチュエータ速度との関係の一例を示す図である。
【
図8】センサの検知可能範囲と車体の周囲に設定された検知範囲とを示す上面図である。
【
図9】検知位置判定部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図10A】第1の実施の形態に係る動作制限判定部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図10B】第2の実施の形態に係る動作制限判定部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図11】警報制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図12】第3の実施の形態に係る検知位置判定部の処理内容を示すフローチャートである。
【
図13】油圧ショベルの周囲監視システムに係る構成を抜き出して模式的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の一実施の形態を
図1~
図11を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、作業機械の一例とし、油圧ショベルを示して説明するが、クレーンのような他の作業機械やホイールローダのような道路機械にも本発明を適用することが可能である。
【0012】
図1及び
図2は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を概略的に示す図であり、
図1は側面図、
図2は上面図である。また、
図3は、運転室を抜き出して示す部分断面斜視図である。
【0013】
図1及び
図2において、油圧ショベル100は、クローラ式の下部走行体1及び下部走行体1に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2により構成された車体と、上部旋回体2の前側に俯仰動可能に設けられたフロント作業機3とから概略構成されている。なお、
図2においては、図示の簡単のため、フロント作業機3の一部を省略して示す。
【0014】
フロント作業機3は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム3a、アーム3b、及びバケット3c)を連結して構成されている。ブーム3aの基端は上部旋回体2の前部に回動可能に支持されている。また、ブーム3aの先端にはアーム3bの一端が回動可能に連結されており、アーム3bの他端(先端)にはバケット3cが回動可能に連結されている。ブーム3a、アーム3b、及びバケット3cは、油圧アクチュエータであるブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、及び、バケットシリンダ3fによってそれぞれ駆動される。
【0015】
下部走行体1は、左右一対のクローラフレーム1c,1dにそれぞれ掛け回された一対のクローラ1e,1fと、クローラ1e,1fを図示しない減速機構等を介してそれぞれ駆動する油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ1a,1bとから構成されている。なお、
図1において、下部走行体1の各構成については、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
【0016】
上部旋回体2は、基部となる旋回フレーム上に各部材を配置して構成されており、旋回フレームが油圧アクチュエータである旋回油圧モータ10により下部走行体1に対して旋回駆動されることにより、上部旋回体2が下部走行体1に対して旋回可能となっている。また、図示しないが、下部走行体1と上部旋回体2の連結部には、下部走行体1に対する上部旋回体2の相対角度を検出する旋回角度センサが設けられている。
【0017】
上部旋回体2の旋回フレーム上の前側には、オペレータが搭乗して油圧ショベル100の操作を行うための運転室4が配置されているほか、原動機であるエンジン25、エンジン25により駆動される油圧ポンプ26及びパイロットポンプ27、各油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1a,1b、旋回油圧モータ10、ブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、バケットシリンダ3f)を駆動するための油圧回路システムが搭載されている(後の
図4参照)。また、上部旋回体2には、油圧ショベル100の全体の動作を制御する制御装置20が配置されている。
【0018】
図3に示すように、運転室4内には、オペレータが着座する座席4a、フロント作業機3の駆動操作や上部旋回体2の旋回操作、下部走行体1の走行操作などを行う操作装置4b,4c,4d,4e、ゲートロックレバー4f、及び、座席4aに着座したオペレータが見やすい位置であって外部視野の妨げにならない位置に配置されたモニタ4gが設けられている。
【0019】
上部旋回体2の上部の左右および後方には、上部旋回体2の周囲の物体を検知するための複数のセンサ14,15,16が搭載されている。センサ14,15,16は、油圧ショベル100におけるオペレータの運転支援として周囲監視を行う周囲監視システム(後述)の一部を構成している。複数のセンサ14,15,16は、その配置に応じて、それぞれ、右側方センサ14、後方センサ15、及び、左側方センサ16と称する。すなわち、複数のセンサ14,15,16は、上部旋回体2の左側の運転室4の後方に設けられて上部旋回体2の前方及び左側方を検知範囲とする左側方センサ16と、上部旋回体2の右側方に設けられて上部旋回体2の前方及び右側方を検知範囲とする右側方センサ14と、上部旋回体2の後方に設けられて上部旋回体2の左右の側方及び後方を検知範囲とする後方センサ15とを有して構成されている。
【0020】
図4は、油圧ショベルに適用される油圧回路システムの一部を関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。なお、
図4においては、油圧ショベル100の複数の油圧アクチュエータの代表として旋回油圧モータ10に係る構成を示しているが、走行油圧モータ1a,1b、ブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、及び、バケットシリンダ3fについても同様に構成されている。
【0021】
図4において、油圧回路システムは、原動機であるエンジン25と、エンジン25によって駆動される油圧ポンプ26及びパイロットポンプ27と、油圧ポンプ26から吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータ(ここでは、旋回油圧モータ10のみを図示)と、油圧ポンプ26から複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する複数の方向切換弁(ここでは、旋回油圧モータ10に係る方向切換弁28のみを図示)と、複数の油圧アクチュエータの動作を指示し、複数の方向切換弁を切り換えるパイロット圧(操作信号)を生成する油圧パイロット式の複数の操作装置(ここでは、旋回操作に係る操作装置4bのみを図示)とを備えている。
【0022】
方向切換弁28は、センタバイパス型であり、センタバイパスライン28a上に位置するセンタバイパス通路を有している。センタバイパス通路は、センタバイパスライン28aに直列に接続されており、方向切換弁28のスプールが中立位置にあるときはセンタバイパス通路をセンタバイパスライン28aと連通し、方向切換弁28のスプールが
図4中左側又は右側の切換位置に切り換えられるとセンタバイパス通路をセンタバイパスライン28aから遮断するようになっている。センタバイパスライン28aの上流側は油圧ポンプ26の吐出ライン26aに接続され、センタバイパスライン28aの下流側はタンクライン29aを介して圧油タンク29に接続されている。
【0023】
方向切換弁28は、操作装置4bからのパイロット圧(操作信号)によって切り換えられる。操作装置4bは、操作量に応じてパイロットポンプ27の吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対のパイロット弁を有している。したがって、例えば、操作装置4bを中立位置から左旋回に対応する方向(例えば左側)に操作すると、その操作量に応じて一方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が操作信号として方向切換弁28の
図4中右側の受圧部へ出力され、これによって方向切換弁28が
図4中右側の切換位置に切り換えられ、旋回油圧モータ10が回転して、上部旋回体2が下部走行体1に対して左方向に旋回するようになっている。一方、例えば、操作装置4bを中立位置から右旋回に対応する方向(例えば右側)に操作すると、その操作量に応じて他方のパイロット弁で生成されたパイロット圧が操作信号として方向切換弁28の
図4中左側の受圧部へ出力され、これによって方向切換弁28が
図4中左側の切換位置に切り換えられ、旋回油圧モータ10が回転して、上部旋回体2が下部走行体1に対して右方向に旋回するようになっている。
【0024】
操作装置4bから方向切換弁28の2つの受圧部への管路には、それぞれ、電磁弁23a,23bが設けられている。電磁弁23a,23bは、操作装置4bから方向切換弁28に出力されるパイロット圧(操作信号)を制限する制限装置を構成するものであり、後述する制御装置20からの電磁弁電流(指令信号)に基づいてパイロット圧(操作信号)を制限することにより油圧アクチュエータである旋回油圧モータ10の動作速度を制限する。
【0025】
図6は、制御装置から電磁弁に出力される電磁弁電流とアクチュエータ速度との関係の一例を示す図である。
図6において、横軸は制御装置20から電磁弁23a,23bに出力される電磁弁電流の予め定めた値に対する割合を示している。ここでは、電磁弁23a,23bが全閉となる電磁弁電流の値を100%とする場合を例示している。また、
図6において、縦軸は操作装置4bから方向切換弁28に出力されるパイロット圧が制限されない場合の油圧アクチュエータの速度をV1とする場合を例示している。すなわち、
図6においては、電磁弁電流が0(ゼロ)%の場合には、操作装置4bから出力されるパイロット圧に応じた速度V1で油圧アクチュエータが動作し、電磁弁電流が増加して予め定めた割合(例えば、A%)を超えると油圧アクチュエータの速度が電磁弁電流の増加に伴って減少し、電磁弁電流が50%になると油圧アクチュエータの速度がV2(<V1)まで制限され、電磁弁電流が100%になると油圧アクチュエータの速度が0(ゼロ)に制限されることを示している。
【0026】
パイロットポンプ27の吐出ライン27aには、パイロットポンプ27の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁(図示せず)が設けられている。また、パイロットポンプ27の吐出ライン27aにはロック弁27bが設けられており、このロック弁27bは、ゲートロックレバー4fの操作に応じて切り換えられる。ゲートロックレバー4fは、ゲートロックレバー4fがロック解除位置(下降位置)にある場合に閉じ状態、ロック位置(上昇位置)にある場合に開き状態となるポジションスイッチ(図示せず)を有している。例えば、ゲートロックレバー4fが加工位置に操作されてポジションスイッチが閉じ状態になると、ポジションスイッチを介してロック弁27bのソレノイド部が通電され、ロック弁27bが連通位置に切り換えられる。これにより、パイロットポンプ27の吐出ライン27aが連通されて、パイロットポンプ27の吐出圧が操作装置4bなどに導入される。すなわち、操作装置4bなどの操作によるパイロット圧の生成が可能となり、油圧アクチュエータを作動させることができる(作業可能状態)。一方、ゲートロックレバー4fが上昇位置に操作されてポジションスイッチが開き状態になると、ロック弁27bが遮断位置に切り換えられる。これにより、パイロットポンプ27の吐出ライン27aが遮断される。すなわち、操作装置4bなどを操作してもパイロット圧が生成されない状態となり、油圧アクチュエータが作動しないようになっている(作業不可状態)。
【0027】
なお、
図4に図示しない左右の走行油圧モータ1a,1b、ブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、及び、バケットシリンダ3fに係る油圧回路システムもほぼ同様の構成を備えている。
【0028】
また、少なくとも走行操作に係る操作装置4d,4eから走行油圧モータ1a,1bのそれぞれの方向切換弁(図示せず)の2つの受圧部への管路には、それぞれ、電磁弁24a,24bが設けられており、制御装置20からの電磁弁電流(指令信号)に基づいてパイロット圧(操作信号)を制限することにより油圧アクチュエータである走行油圧モータ1a,1bの動作速度を制限する。
【0029】
以上のように構成した本実施の形態の油圧ショベル100は、センサ14,15,16の検知結果に基づいて油圧ショベル100の周囲監視を行うことでオペレータの運転支援を行う周囲監視システムを有している。
【0030】
図5は、本実施の形態に係る油圧ショベルの周囲監視システムに係る構成を抜き出して模式的に示す機能ブロック図である。
【0031】
図5において、周囲監視システムは、複数のセンサ14,15,16と、制限装置としての電磁弁23a,23b,24a,24bと、警報装置としての第一ブザー30及び第二ブザー31と、複数のセンサ14,15,16の検知結果(検知信号)に基づいて電磁弁23a,23b,24a,24bへの指令信号と第一ブザー30及び第二ブザー31への指令信号とを生成して出力する制御装置20とから構成されている。
【0032】
ここで、制限装置(電磁弁23a,23b,24a,24b)及び警報装置(第一ブザー30及、第二ブザー31)は、周囲監視システムにおいてオペレータの運転支援を行う安全支援装置の一部を構成している。制限装置は、センサ14,15,16の検知結果に応じて油圧ショベル100の走行動作や旋回動作を制限することでオペレータの運転支援を行う。また、警報装置は、センサ14,15,16の検知結果に応じてオペレータに警報を発することでオペレータの運転支援を行う。なお、本実施の形態においては、周囲監視システムの安全支援装置において作業機械の動作の制限やオペレータへの警報等の発報によって運転支援を行う場合を例示したが、オペレータの運転支援を行う他の機能を周囲監視システムに追加して構成しても良い。
【0033】
センサ14,15,16は、センサ14,15,16から物体までの距離および方向を検知し、検知した物体の3次元座標系における位置を検知結果として出力するものであり、例えば、赤外線深度センサである。センサ14,15,16の上部旋回体2に対する相対的な取り付け位置は設計情報などにより予め定められているので、設計情報とセンサ14,15,16の検知結果とから、検知した物体の上部旋回体2に対する相対位置(3次元座標系における相対位置)を特定することができる。
【0034】
図7は、センサの検知可能範囲を示す図であり、検知可能範囲のセンサを含む垂直平面における断面を示している。
図7では、センサ14,15,16のうち右側方センサ14の検知可能範囲を代表して示している。また、
図8は、センサの検知可能範囲と車体の周囲に設定された検知範囲とを示す上面図である。
【0035】
図7及び
図8に示すように、センサ14の検知可能範囲40は、センサ14を頂点とする錐体状の空間となっており、車体(下部走行体1及び上部旋回体2)に上下方向および前後方向に沿う位置から所定の距離までを含んでいる。センサ15,16についても同様である。
【0036】
図8に示すように、油圧ショベル100の車体の周囲には、第一検知範囲TRと第二検知範囲SWとがセンサ14,15,16の検知可能範囲40に含まれるように設定されている。
【0037】
第一検知範囲TRは、油圧ショベル100の下部走行体1の走行性能に基づいて設定されている。具体的には、まず、下部走行体1が最大走行速度で走行したと想定した場合に車体が到達可能な初期位置からの距離(到達可能距離)を算出する。続いて、第一検知範囲TRの外周を定める境界として、上部旋回体2の左右側面にそれぞれ沿うように前後方向に延在する境界と、後端面に沿うように左右方向に延在する境界とを定める。このとき、第一検知範囲TRの各境界は、上部旋回体2から到達可能距離となるように設定する。このようにして設定した境界の内側(車体側)を第一検知範囲TRとする。
【0038】
なお、本実施の形態では第一検知範囲TRの形状を上部旋回体2の側面及び後端に沿う直線で構成した多角形とする場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、第一検知範囲TRの形状を旋回角度センサの検出結果に基づいて変更するように構成してもよい。
【0039】
また、第二検知範囲SWは、上部旋回体2の旋回範囲に基づいて設定されている。具体的には、上部旋回体2の後端の旋回動作時における軌跡(旋回半径)に沿って第二検知範囲SWの境界を定め、この境界の内側(車体側)を第二検知範囲SWとする。このとき、第二検知範囲SWの境界は、上部旋回体2の後端から外側に一定の距離をもつ位置となるように設定しても良い。
【0040】
制御装置20は、周囲監視システムに係る機能部として、検知位置判定部20aと、動作制限判定部20bと、警報制御部20cとを有している。
【0041】
検知位置判定部20aは、センサ14,15,16の検知結果に基づいて、検知された物体の検知位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかを判定し、判定結果を動作制限判定部20b及び警報制御部20cに出力する。検知位置判定部20aは、第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの情報を有しており、センサ14,15,16の検知結果(位置情報)と第一検知範囲TR及び第二検知範囲SWとを比較することで、検知された物体が第一検知範囲TR及び第二検知範囲SWの何れの位置にあるかを判定することができる。
【0042】
動作制限判定部20bは、検知位置判定部20aの判定結果、すなわち、検知された物体の位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかに基づいて、操作装置4b,4c,4d,4eから出力される操作信号を制限する制限装置としての電磁弁23a,23b,24a,24bを制御することにより、下部走行体1の走行動作と上部旋回体2の下部走行体1に対する旋回動作との少なくとも何れか一方を制限する。
【0043】
警報制御部20cは、検知位置判定部20aの判定結果、すなわち、検知された物体の位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかに応じて、第一ブザー30及び第二ブザー31を制御することにより、オペレータに異なる種類の警報を発する。
【0044】
図9は、検知位置判定部の処理内容を示すフローチャートである。また、
図10Aは、動作制限判定部の処理内容を示すフローチャートであり、
図11は警報制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
図9に示すように、検知位置判定部20aは、まず、センサ14,15,16からの検知結果に基づいて物体が第一検知範囲TR又は第二検知範囲SWにおいて検知されたか否かを判定する(ステップS100)。ステップS100での判定結果がNOの場合には、物体が検知されるまでステップS100の処理を繰り返す。
【0046】
また、ステップS100での判定結果がYESである場合には、物体を検知した位置が第二検知範囲SWであるかどうかを判定し(ステップS110)、判定結果がYESの場合には検知フラグとしてFswを動作制限判定部20b及び警報制御部20cに出力し(ステップS111)、処理を終了する。また、ステップS110での判定結果がNOの場合、すなわち、物体の検知位置が第一検知範囲TRである場合には、検知フラグとしてFtrを動作制限判定部20b及び警報制御部20cに出力して(ステップS112)、処理を終了する。
【0047】
図10Aに示すように、動作制限判定部20bは、検知位置判定部20aから出力された検知フラグがFswであるか否かを判定し(ステップS200)、判定結果がYESである場合には、旋回用の電磁弁23a,23bに出力する電磁弁電流を100%にするとともに、走行用の電磁弁24a,24bに出力する電磁弁電流を0(ゼロ)%とすることで、走行動作を制限せずに、旋回動作の速度を制限(停止)し(ステップS201)、処理を終了する。すなわち、上部旋回体2の旋回範囲に基づいて定めた第二検知範囲SWで物体(例えば、作業者)が検知された場合には、走行動作を
維持しつつ旋回動作を停止することで、作業効率の低下を抑制しつつ、油圧ショベル100の物体(作業者)との接触を適切に防止することができる。
【0048】
また、ステップS200において、判定結果がNOである場合、すなわち、検知位置判定部20aから出力された検知フラグがFtrである場合には、旋回用の電磁弁23a,23bに出力する電磁弁電流を0(ゼロ)%とするとともに、走行用の電磁弁24a,24bに出力する電磁弁電流を100%とすることで、旋回動作の動作速度を維持するとともに、走行動作を制限(停止)し(ステップS202)、処理を終了する。すなわち、下部走行体1の走行性能に基づいて定めた第一検知範囲TRで物体(例えば、作業者)が検知された場合には、旋回速度を維持するとともに、走行動作を制限(停止)することで、作業効率の低下を抑制しつつ、油圧ショベル100の物体(作業者)との接触を適切に防止することができる。
【0049】
図11に示すように、警報制御部20cは、検知位置判定部20aから出力された検知フラグがFswであるか否かを判定し(ステップS300)、判定結果がYESである場合には、第一ブザー30及び第二ブザー31にブザーパターン(Bsw)で鳴動するように指示信号を出力し(ステップS301)、処理を終了する。また、ステップS300での判定結果がNOの場合、すなわち、物体の検知位置が第一検知範囲TRである場合には、第一ブザー30及び第二ブザー31にブザーパターン(Btr)で鳴動するように指示信号を出力し(ステップS302)、処理を終了する。なお、各ブザーパターン(ブザーパターン(Btr)及び(Bsw))における第一ブザー30及び第二ブザー31の鳴動方法は任意に設定可能であるが、例えば、ブザーパターン(Bsw)においては第一ブザー30及び第二ブザー31が途切れなく断続的に鳴動するよう設定し、ブザーパターン(Btr)においては一定間隔で第一ブザー30及び第二ブザー31が鳴動と停止を繰り返すよう設定することが考えられる。
【0050】
なお、本実施の形態においては、警報装置として警報音を発するブザー(第一ブザー30及び第二ブザー31)を例示して説明したが、警報装置はオペレータに対して警報を発することができれば良く、例えば、ブザー音以外の音声やメロディ、光、振動、画像表示、或いは、これらの組み合わせによってオペレータに警報を発する装置を用いても良い。
【0051】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0052】
油圧ショベルのような作業機械においては、フロント作業機の動作だけではなく、旋回動作や走行動作などの種々の動作を行うことで作業を行う。このため、油圧ショベルの各部の動作範囲に応じて検知範囲を設定し周囲監視を行う必要がある。しかしながら、従来技術においては、作業機械のフロント作業機の動作範囲をもとにセンサからの検知距離を設定するので検知範囲が広範囲となり、オペレータの注意が及ぶ範囲まで対象物を検知してしまい、過剰な警報によってオペレータの作業を阻害してしまう。
【0053】
これに対して本実施の形態においては、下部走行体1、及び、下部走行体1に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2により構成された車体と、上部旋回体2の前側に俯仰動可能に設けられたフロント作業機3とを備えた油圧ショベル100において、下部走行体1、上部旋回体2、及び、フロント作業機3を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置4b,4c,4d,4eと、車体の周囲の物体を検知するセンサ14,15,16と、オペレータの運転支援を行う安全支援装置と、センサ14,15,16の検知結果に基づいて安全支援装置を制御する制御装置20とを備え、制御装置20は、センサ14,15,16により物体が検知された場合に、物体の検知位置が、下部走行体1の走行性能に基づいて予め定めた第一検知範囲TRと、第一検知範囲TRの内側に上部旋回体2の旋回範囲に基づいて予め定めた第二検知範囲SWの何れであるかに基づいて、安全支援装置を制御するように構成したので、作業機械の動作範囲に応じて検知範囲を設定することで検知精度を向上しつつ、作業を行うオペレータへの過剰な警報による影響を低減することができる。
【0054】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を
図10Bを参照しつつ説明する。
【0055】
第1の実施の形態は、第一検知範囲TRで物体(例えば、作業者)が検知された場合に、旋回速度を維持するとともに走行動作を制限(停止)するものであるが、本実施の形態は、旋回動作及び走行動作を制限(停止)するものである。
【0056】
図10Bに示すように、動作制限判定部20bは、検知位置判定部20aから出力された検知フラグがFswであるか否かを判定し(ステップS200)、判定結果がYESである場合には、旋回用の電磁弁23a,23bに出力する電磁弁電流を100%にするとともに、走行用の電磁弁24a,24bに出力する電磁弁電流を0(ゼロ)%とすることで、走行動作を制限せずに、旋回動作の速度を制限(停止)し(ステップS201)、処理を終了する。すなわち、上部旋回体2の旋回範囲に基づいて定めた第二検知範囲SWで物体(例えば、作業者)が検知された場合には、走行動作を
維持しつつ旋回動作を停止することで、作業効率の低下を抑制しつつ、油圧ショベル100の物体(作業者)との接触を適切に防止することができる。
【0057】
また、ステップS200において、判定結果がNOである場合、すなわち、検知位置判定部20aから出力された検知フラグがFtrである場合には、旋回用の電磁弁23a,23bに出力する電磁弁電流を100%とするとともに、走行用の電磁弁24a,24bに出力する電磁弁電流を100%とすることで、旋回動作及び走行動作を制限(停止)し(ステップS202A)、処理を終了する。すなわち、下部走行体1の走行性能に基づいて定めた第一検知範囲TRで物体(例えば、作業者)が検知された場合には、旋回動作及び走行動作を制限(停止)することで、油圧ショベル100と物体(作業者)との接触を適切に防止することができる。
【0058】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0059】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を
図12を参照しつつ説明する。
【0061】
第1の実施の形態では、第一検知範囲TR及び第二検知範囲SWのみを物体の検知を行う対象範囲とした場合を例示して説明したが、本実施の形態では、検知可能範囲40の全体を物体の検知を行う対象範囲とした場合を示すものである。
【0062】
図12は、本実施の形態に係る検知位置判定部の処理内容を示すフローチャートである。である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図12に示すように、検知位置判定部20aは、まず、センサ14,15,16からの検知結果に基づいて物体が検知可能範囲40において検知されたか否かを判定する(ステップS100A)。ステップS100
Aでの判定結果がNOの場合には、物体が検知可能範囲40において検知されるまでステップS100
Aの処理を繰り返す。
【0064】
また、ステップS100Aでの判定結果がYESの場合には、物体を検知した位置が第二検知範囲SWであるかどうかを判定し(ステップS110)、判定結果がYESの場合には検知フラグとしてFswを動作制限判定部20b及び警報制御部20cに出力し(ステップS111)、処理を終了する。
【0065】
また、ステップS110での判定結果がNOの場合には、検知位置が第一検知範囲TRであるかどうかを判定し(ステップS120)、判定結果がYESの場合には検知フラグとしてFtrを動作制限判定部20b及び警報制御部20cに出力し(ステップS112)、処理を終了する。
【0066】
また、ステップS120での判定結果がNOの場合、すなわち、物体の検知位置が第一検知範囲TR及び第二検知範囲SWの何れでもない場合には、処理を終了する。
【0067】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0068】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を
図13を参照しつつ説明する。
【0070】
第1~第3の実施の形態では、センサ14,15,16の検知結果に基づいて制御装置20で検知位置の判定を行う場合を例示して説明したが、本実施の形態は、センサ14,15,16のそれぞれにおいて検知位置の判定を行う場合を示すものである。
【0071】
図13は、本実施の形態に係る油圧ショベルの周囲監視システムに係る構成を抜き出して模式的に示す機能ブロック図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0072】
図13において、周囲監視システムは、複数のセンサ14A,15A,16Aと、制限装置としての電磁弁23a,23b,24a,24bと、警報装置としての第一ブザー30及び第二ブザー31と、複数のセンサ14
A,15
A,16
Aからの検知フラグに基づいて電磁弁23a,23b,24a,24bへの指令信号と第一ブザー30及び第二ブザー31への指令信号とを生成して出力する制御装置20Aとから構成されている。
【0073】
ここで、制限装置(電磁弁23a,23b,24a,24b)及び警報装置(第一ブザー30及、第二ブザー31)は、周囲監視システムにおいてオペレータの運転支援を行う安全支援装置の一部を構成している。制限装置は、センサ14A,15A,16Aの検知結果に応じて油圧ショベル100の走行動作や旋回動作を制限することでオペレータの運転支援を行う。また、警報装置は、センサ14A,15A,16Aの検知結果に応じてオペレータに警報を発することでオペレータの運転支援を行う。
【0074】
センサ14A,15A,16Aは、それぞれ、センサ14A,15A,16Aから物体までの距離および方向を検知する物体検知部141,151,161と、物体検知部141,151,161で検知された物体の位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかを判定する検知位置判定部142,152,162とを有している。なお、
図13においては、センサ14A,15A,16Aを1つのブロックで代表して示している。
【0075】
物体検知部141,151,161は、センサ14A,15A,16Aから物体までの距離および方向を検知し、検知した物体の3次元座標系における位置を検知するものであり、例えば、赤外線深度センサである。センサ14A,15A,16Aの上部旋回体2に対する相対的な取り付け位置は設計情報などにより予め定められているので、設計情報と物体検知部141,151,161の検知結果とから、検知した物体の上部旋回体2に対する相対位置(3次元座標系における相対位置)を特定することができる。物体検知部141,151,161は、検知結果を検知位置判定部142,152,162に出力する。
【0076】
検知位置判定部142,152,162は、物体検知部141,151,161の検知結果に基づいて、検知された物体の検知位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかを判定し、判定結果を制御装置20Aに出力する。検知位置判定部142,152,162は、第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの情報を有しており、物体検知部141,151,161の検知結果(位置情報)と第一検知範囲TR及び第二検知範囲SWとを比較することで、検知された物体が第一検知範囲TR及び第二検知範囲SWの何れの位置にあるかを判定することができる。
【0077】
検知位置判定部142,152,162は、例えば、
図12のフローチャートで示すような処理を行う。すなわち、検知位置判定部142,152,162は、物体検知部141,151,161からの検知結果に基づいて物体が検知可能範囲40において検知されたかどうかを判定する。物体が検知可能範囲40において検知された場合には、続いて、物体を検知した位置が第一検知範囲TRであるか、第二検知範囲SWであるか、或いは、その他の領域であるかどうかを判定し、検知位置が第二検知範囲SWである場合には検知フラグとしてFswを制御装置20Aに出力する。また、検知位置が第一検知範囲TRである場合には検知フラグとしてFtrを制御装置20Aに出力する。また、検知位置がその他の領域である場合には、処理を終了する。
【0078】
制御装置20Aは、周囲監視システムに係る機能部として、動作制限判定部20bと、警報制御部20cとを有している。
【0079】
動作制限判定部20bは、センサ14A,15A,16Aからの検知フラグを受信した場合、受信した検知フラグの内容に応じて、すなわち、検知された物体の位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかに基づいて、操作装置4b,4c,4d,4eから出力される操作信号を制限する制限装置としての電磁弁23a,23b,24a,24bを制御することにより、下部走行体1の走行動作と上部旋回体2の下部走行体1に対する旋回動作との少なくとも何れか一方を制限する。
【0080】
警報制御部20cは、センサ14A,15A,16Aからの検知フラグを受信した場合、受信した検知フラグの内容に応じて、すなわち、検知された物体の位置が第一検知範囲TRと第二検知範囲SWの何れであるかに応じて、第一ブザー30及び第二ブザー31を制御することにより、オペレータに異なる種類の警報を発する。
【0081】
以上のように構成した本実施の形態の特徴を説明する。
【0082】
(1)上記の実施の形態では、下部走行体1、及び、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2により構成された車体を備えた作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記下部走行体1、及び、前記上部旋回体2を操作する操作信号をオペレータの操作に基づいて出力する操作装置4b,4c,4d,4eと、前記車体(例えば、下部走行体1及び上部旋回体2)の周囲の物体を検知するセンサ14,15,16と、前記車体の動作を制限する制限装置(例えば、電磁弁23a,23b,24a,24b)または前記オペレータへの警報を行う警報装置の少なくとも何れか一方を有する安全支援装置と、前記センサの検知信号に基づいて前記安全支援装置を制御する制御装置20とを備え、前記センサの検知範囲は、前記下部走行体の走行性能に基づいて定められる第一検知範囲TRと、前記上部旋回体の後端の旋回範囲に沿って定められる第二検知範囲SWと、で構成されるものとした。
【0083】
これにより、作業機械の動作範囲に応じて検知範囲を設定することで検知精度を向上しつつ、作業を行うオペレータへの過剰な警報による影響を低減することができる。
【0084】
(2)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記安全支援装置は前記車体1Bの動作を制限する制限装置(例えば、電磁弁23a,23b,24a,24b)を有し、前記制御装置20は、前記センサ14,15,16により検知された前記物体の位置が前記第一検知範囲TRである場合には前記下部走行体1の走行動作を制限し、前記第二検知範囲である場合には前記上部旋回体2の前記下部走行体1に対する旋回動作を制限するように前記制限装置(例えば、電磁弁23a,23b,24a,24b)を制御するものとした。
【0085】
(3)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記センサ14,15,16は、前記上部旋回体2の後方、左側方、及び、右側方にそれぞれ配置されたものとした。
【0086】
(4)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記安全支援装置は前記オペレータに警報を発する警報装置(例えば、第一ブザー30及、第二ブザー31)を有し、前記制御装置20は、前記センサ14,15,16により検知された前記物体の位置が前記第一検知範囲TRと前記第二検知範囲SWの何れであるかに応じて、前記オペレータに異なる種類の警報を発するように前記警報装置を制御するものとした。
【0087】
(5)また、上記の実施の形態では、上記(1)の作業機械(例えば、油圧ショベル100)において、前記第一検知範囲TRは、前記下部走行体1の走行動作における最大速度に応じて設定されるものとした。
【0088】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…下部走行体、1a,1b…走行油圧モータ、1c,1d…クローラフレーム、1e,1f…クローラ、2…上部旋回体、3…フロント作業機、3a…ブーム、3b…アーム、3c…バケット、3d…ブームシリンダ、3e…アームシリンダ、3f…バケットシリンダ、4…運転室、4a…座席、4b,4c,4d,4e…操作装置、4f…ゲートロックレバー、4g…モニタ、10…旋回油圧モータ、14,14A…右側方センサ、15,15A…後方センサ、16,16A…左側方センサ、20,20A…制御装置、20a,142,152,162…検知位置判定部、20b…動作制限判定部、20c…警報制御部、23a,23b,24a,24b…電磁弁、25…エンジン、26…油圧ポンプ、26a…吐出ライン、27…パイロットポンプ、27a…吐出ライン、27b…ロック弁、28…方向切換弁、28a…センタバイパスライン、30…第一ブザー、31…第二ブザー、29…圧油タンク、29a…タンクライン、100…油圧ショベル、TR…第一検知範囲、SW…第二検知範囲、141,151,161…物体検知部