(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】流体性状センサ及び流体性状センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20240703BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G01N27/22 B
G01N27/06 A
(21)【出願番号】P 2022049998
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2024-04-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
(72)【発明者】
【氏名】永井 勇冴
(72)【発明者】
【氏名】中村 瞭平
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067319(JP,A)
【文献】特開2005-091223(JP,A)
【文献】特開2013-033034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象流体の性状を検出する流体性状センサであって、
筒状の外側電極と、
中空部を有し、前記外側電極の内側に設けられ前記外側電極との間の電気的特性に基づいて前記検出対象流体の第一性状値を検出するための内側電極と、
貫通孔を有し、前記外側電極及び前記内側電極が電気的に接続される第一基板と、
前記第一基板の前記貫通孔を挿通するリード線に接続されて前記内側電極の前記中空部に挿入され前記検出対象流体の第二性状値を検出する検出部と、を備え、
前記貫通孔は、
前記内側電極の前記中空部に連通して設けられる第一部分と、
前記第一部分と連続して設けられるとともに前記内側電極の前記中空部に連通しない第二部分と、を有することを特徴とする流体性状センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体性状センサであって、
前記貫通孔の前記第二部分は、前記第一基板の側面に開口して設けられるスリットであることを特徴とする流体性状センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の流体性状センサであって、
前記第二部分の幅は、前記第一部分の内径よりも小さく、前記検出部の幅よりも大きいことを特徴とする流体性状センサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の流体性状センサであって、
前記リード線が電気的に接続されるとともに前記第一基板から信号が入力される第二基板をさらに備え、
前記第一基板には、前記第一基板と前記第二基板とを電気的に接続する端子部材と、前記外側電極と前記端子部材とを電気的に接続するとともに前記内側電極と前記端子部材とを電気的に接続する配線部と、が設けられ、
前記第二部分は、前記第一基板において前記配線部が設けられない非配線部に設けられることを特徴とする流体性状センサ。
【請求項5】
請求項1に記載の流体性状センサであって、
前記外側電極及び前記内側電極が前記第一基板を中継して電気的に接続されるとともに、前記リード線を介して前記検出部と電気的に接続され
る第二基板をさらに備え、
前記第二基板は、前記内側電極の軸方向に沿って延在し、
前記第一基板は、前記内側電極の中心軸に対して垂直に延在するとともに前記第二基板と隣接し、
前記第二部分は、前記第一基板における前記第二基板と反対側に設けられることを特徴とする流体性状センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の流体性状センサの製造方法であって、
前記リード線に接続された前記検出部を、前記第二部分に挿入したのち前記第二部分から前記第一部分に向けて移動させることにより、前記内側電極の前記中空部に挿入する工程と、
前記第二部分から前記第一部分に向けて接着剤を塗布することにより、前記リード線を固定する工程と、を有することを特徴とする流体性状センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体性状センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケースの内部に配置され、筒状に形成される外側電極と、外側電極の径方向内側に配置されケースの軸方向に延在する内側電極と、を有し、液体の状態を検出するセンサが開示されている。内側電極は、略有底円筒状に形成され、閉塞された一端部には温度センサが設けられる。温度センサから延出するケーブルは、中継基板の連通孔を通過して第一基板に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような流体性状センサでは、組み立て時に、予め第一基板に接続された温度センサを内側電極の中空部に挿入する。温度センサを内側電極の中空部に挿入するには、中継基板の連通孔を通さなければならないため、温度センサを内側電極の中空部に挿入しにくい。そのため、流体性状センサの組み立て性について、改善の余地がある。
【0005】
さらに、特許文献1に記載のような流体性状センサでは、内側電極の中空部に挿入された温度センサ及びケーブルが振動しないように中継基板の連通孔内に接着剤を塗布しようとしても、連通孔が小さいと連通孔の表面にしか接着剤を塗布することができず、温度センサ及びケーブルの振動を十分には抑制できないことが考えられる。そのため、流体性状センサの耐振性について、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体性状センサを組み立てやすくするとともに耐振性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検出対象流体の性状を検出する流体性状センサであって、筒状の外側電極と、中空部を有し、外側電極の内側に設けられ外側電極との間の電気的特性に基づいて検出対象流体の第一性状値を検出するための内側電極と、貫通孔を有し、外側電極及び内側電極が電気的に接続される第一基板と、第一基板の貫通孔を挿通するリード線に接続されて内側電極の中空部に挿入され検出対象流体の第二性状値を検出する検出部と、を備え、貫通孔は、内側電極の中空部に連通して設けられる第一部分と、第一部分と連続して設けられるとともに内側電極の中空部に連通しない第二部分と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、貫通孔が、内側電極の中空部に連通して設けられる第一部分に加えて、第一部分と連続して設けられるとともに内側電極の中空部に連通しない第二部分を有する。そのため、流体性状センサの組み立ての際に、検出部を貫通孔の第二部分から第一部分に向けて移動させることにより、容易に内側電極の中空部に挿入できる。さらに、接着剤を第二部分から第一部分に向けて塗布することで、第一部分内に接着剤を容易に塗布することができる。これにより、接着剤によって固定されるリード線の領域が増加し、検出部及びリード線の振動を抑制できる。
【0009】
また、本発明は、貫通孔の第二部分は、第一基板の側面に開口して設けられるスリットであることを特徴とする。
また、本発明は、第二部分の幅は、第一部分の内径よりも小さく、検出部の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
これらの発明では、流体性状センサの組み立ての際に、リード線によって第二基板に接続された検出部をより容易に内側電極の中空部に挿入できるとともに、接着剤を容易に第一部分に塗布できる。
【0011】
また、本発明は、リード線が電気的に接続されるとともに第一基板から信号が入力される第二基板をさらに備え、第一基板には、第一基板と第二基板とを電気的に接続する端子部材と、外側電極と端子部材とを電気的に接続するとともに内側電極と端子部材とを電気的に接続する配線部と、が設けられ、第二部分は、第一基板において配線部が設けられない非配線部に設けられることを特徴とする。
【0012】
この発明では、第一基板のデッドスペースである非配線部に第二部分が設けられる。これにより、第一基板を大きくせずに、流体性状センサの組み立ての際に、リード線によって第二基板に接続された検出部を容易に内側電極の中空部に挿入できるとともに検出部及びリード線の振動を抑制できる。
また、本発明は、外側電極及び内側電極が第一基板を中継して電気的に接続されるとともに、リード線を介して検出部と電気的に接続される第二基板をさらに備え、第二基板は、内側電極の軸方向に沿って延在し、第一基板は、内側電極の中心軸に対して垂直に延在するとともに第二基板と隣接し、第二部分は、第一基板における第二基板と反対側に設けられることを特徴とする。
また、本発明は、流体性状センサの製造方法であって、リード線に接続された検出部を、第二部分に挿入したのち第二部分から第一部分に向けて移動させることにより、内側電極の中空部に挿入する工程と、第二部分から第一部分に向けて接着剤を塗布することにより、リード線を固定する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体性状センサを組み立てやすくするとともに耐振性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体性状センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体性状センサ100について説明する。
【0016】
流体性状センサ100は、例えば、作動油を作動流体として駆動する油圧シリンダ等の流体圧機器に直接、または、油圧シリンダ等に接続される配管に取り付けられ、作動油の性状を検出するものである。なお、流体性状検出装置の検出対象となる検出対象流体は、作動油に限定されず、潤滑油や切削油、燃料、溶媒、化学薬品といった種々の液体や気体であってもよい。以下では、流体性状検出装置が検出対象流体として作動油の性状を検出する場合について説明する。
【0017】
図1,2に示すように、流体性状センサ100は、ケースユニット12と、ケースユニット12に収容される検出ユニット20と、を有する。流体性状センサ100は、検出ユニット20が検出した検出値を外部のコンピュータ等(図示せず)へ出力する。具体的には、検出ユニット20が有する外側電極52と内側電極62との間の電流値から作動油の比誘電率及び導電率を演算し、検出値として外部のコンピュータ等へ出力する。なお、
図1においては、検出ユニット20の後述する検出基板80及び制御基板90の図示を省略し、
図2においては、後述するモールド体32の延設部32cの図示を省略している。
【0018】
ケースユニット12は、ケースユニット12の本体を構成するケース14と、ケース14から突出する外側電極52及び内側電極62の先端部を覆うカバー18と、を有する。
【0019】
ケース14は、例えば金属で形成される。ケース14は、小径部14aと、大径部14bと、を有する円筒状に形成される。小径部14aは、ケース14の先端部(
図1,2における左側)に設けられ、大径部14bと同軸上に設けられる。小径部14aには、外側電極52及び内側電極62が収容され、大径部14bには、検出ユニット20の後述する検出基板80及び制御基板90が収容される。ケース14は、一方の開口部(
図1における左側)にカバー18が設けられ、他方の開口部(
図1,2における右側)に蓋部16が設けられる。蓋部16は、例えば金属で形成され、ネジS1により大径部14bに固定される。蓋部16には、外部と接続するための接続端子(図示せず)が設けられる。
【0020】
カバー18は、例えば金属で形成される。カバー18は、有底円筒状に形成される。カバー18の側面には、複数の孔18aが、径方向に貫通して設けられる。また、カバー18の底面の中央には、孔18bが設けられる。カバー18の内部と外部とは、孔18a及び孔18bにより連通する。
【0021】
ケース14内には、樹脂等の絶縁体により形成されるモールド体32が設けられる。モールド体32は、ケース14の小径部14aに充填される充填部32aと、ケース14の小径部14aと大径部14bとの間の段部に沿って設けられるフランジ部32bと、フランジ部32bから大径部14b内を軸方向に延びて設けられる延設部32cと、を有する。モールド体32により、検出ユニット20がケース14内に保持されるとともに、検出ユニット20とケースユニット12とが絶縁される。
【0022】
検出ユニット20は、筒状の外側電極52と、外側電極52の内側に設けられ外側電極52との間の電気的特性に基づいて作動油の第一性状値としての比誘電率及び導電率を検出するための内側電極62と、リード線70に接続されて内側電極62の中空部62aに挿入され作動油の第二性状値としての温度を検出する検出部としての温度センサ102と、を備える。外側電極52及び内側電極62は、モールド体32により保持される。
【0023】
外側電極52は、円筒状に形成され、モールド体32の充填部32aと一体に形成される。外側電極52は、ケース14の小径部14aと接触せずにモールド体32の充填部32aにより保持されるため、ケース14と絶縁される。外側電極52は、一端部(
図1,2における左側)が小径部14a及び充填部32aから突出してカバー18内に設けられる。外側電極52の一端部には、複数の孔52aが径方向に貫通して設けられる。外側電極52は、他端部(
図1,2における右側)が外側ターミナル54と溶接等により連結される。
【0024】
外側ターミナル54は、屈曲部54aを有する棒状に形成され、外側電極52の軸方向に延びて設けられる。外側ターミナル54は、モールド体32の充填部32a及びフランジ部32bと一体に形成される。外側ターミナル54は、ケース14と接触せずにモールド体32の充填部32a及びフランジ部32bにより保持されるため、ケース14と絶縁される。外側ターミナル54は、一端部(
図1における左側)が外側電極52に連結され、他端部(
図1における右側)がフランジ部32bを貫通する。
【0025】
内側電極62は、中空部62aを有する有底筒状に形成され、モールド体32の充填部32a及びフランジ部32bと一体に形成される。内側電極62は、外側電極52の径方向内側でかつ外側電極52と同軸上に設けられ、モールド体32の充填部32a及びフランジ部32bを軸方向に貫通する。内側電極62は、ケース14及び外側電極52と接触せずにモールド体32の充填部32a及びフランジ部32bにより保持されるため、ケース14及び外側電極52と絶縁される。内側電極62は、先端側(
図1,2における左側)が小径部14a及び充填部32aから突出して外側電極52内に設けられる。中空部62aには、詳しくは後述するようにリード線70に接続された温度センサ102が挿入され、温度センサ102は作動油の温度を検出する。温度センサ102は、内側電極62における充填部32aから突出した部分に位置するように、中空部62aに挿入される。内側電極62と外側電極52との間には、カバー18の孔18a、孔18b、及び外側電極52の孔52aを通じて作動油が導かれる。これにより、内側電極62と外側電極52が導通する。また、内側電極62と外側電極52との間に作動油が導かれると、内側電極62において温度センサ102が設けられる部分が作動油に浸されるため、温度センサ102により作動油の温度が検出される。内側電極62は、開口部側(
図1,2における右側)が内側ターミナル64と溶接等により連結される。
【0026】
内側ターミナル64は、外側ターミナル54と同様に、屈曲部64aを有する棒状に形成され、内側電極62の軸方向に延びて設けられる。内側ターミナル64は、モールド体32の充填部32a及びフランジ部32bと一体に形成される。内側ターミナル64は、ケース14と接触せずにモールド体32の充填部32a及びフランジ部32bにより保持されるため、ケース14と絶縁される。内側ターミナル64は、一端部(
図1,2における左側)が内側電極62に連結され、他端部(
図1,2における右側)がフランジ部32bを貫通する。内側ターミナル64は、内側電極62の中心軸を挟んで外側ターミナル54と対向するように設けられる。言い換えれば、外側ターミナル54と内側ターミナル64とは、内側電極62を中心として周方向に互いに180度離間して設けられる。
【0027】
図2,3に示すように、検出ユニット20は、モールド体32のフランジ部32bに設けられる支持部85と、支持部85に設けられ外側電極52及び内側電極62が電気的に接続される第一基板としての中継基板86と、中継基板86から信号が入力される第二基板としての検出基板80と、作動油の第一性状値としての導電率及び比誘電率を演算する制御基板90と、を備える。検出基板80、中継基板86、及び制御基板90は、外側電極52及び内側電極62と同様に、モールド体32により保持される。中継基板86、検出基板80、及び制御基板90は、配線部が形成されるプリント基板である。検出基板80及び制御基板90は、内側電極62の軸方向に沿って延在するとともに、内側電極62の中心軸を挟んで互いに対向して設けられる。中継基板86は、内側電極62の中心軸に対して垂直に延在し、検出基板80と制御基板90の間に設けられる。
図3においては、図の奥側に検出基板80が位置し、図の手前側に図示しない制御基板90が位置する。
【0028】
支持部85は、例えば樹脂によって形成され、内側電極62の軸方向に対して垂直な方向に延びて形成される。支持部85は、モールド体32のフランジ部32bの表面にフランジ部32bと一体に設けられる。
図3に示すように、支持部85は、中継基板86が設けられる本体部85aと、本体部85aの幅方向(
図3における奥行き方向)に延びて設けられる一対の固定フランジ85bと、を有する。本体部85aには、外側ターミナル54及び内側ターミナル64がそれぞれ挿通される支持部側ターミナル挿通孔85c,85d(
図1参照)と、内側電極62の中空部62aと同心状の孔85eと、が設けられる。孔85eは、中空部62aと同径に設けられ、中空部62aと連通する。孔85eは、中空部62aよりも大径に設けられてもよい。一対の固定フランジ85bは、フランジ部32bに向けて突出する係合部(図示せず)をそれぞれ有し、係合部がフランジ部32bと係合することで支持部85がフランジ部32bに固定される。
【0029】
中継基板86は、外側電極52と検出基板80、及び内側電極62と検出基板80との間をそれぞれ中継し、電気的に接続するために設けられる。中継基板86には、中継基板86と検出基板80とを電気的に接続する端子部材としてのピンヘッダ86aと、外側ターミナル54とピンヘッダ86aとを電気的に接続する第一配線部86bと、内側ターミナル64とピンヘッダ86aとを電気的に接続する第二配線部86cと、中継基板86を貫通し外側ターミナル54及び内側ターミナル64がそれぞれ挿通される一対の基板側ターミナル挿通孔86d,86eと、中継基板86を貫通する貫通孔87と、が設けられる。基板側ターミナル挿通孔86d,86eは、貫通孔87を挟んで対向するように設けられる。
【0030】
ピンヘッダ86aは、中継基板86において検出基板80に向けて突出する突出部86fに設けられる。言い換えれば、ピンヘッダ86aは、中継基板86における検出基板80と隣接する位置に設けられる。また、第一配線部86bは、基板側ターミナル挿通孔86dから突出部86fまで延びて設けられ、第二配線部86cは、基板側ターミナル挿通孔86eから突出部86fまで延びて設けられる。ピンヘッダ86aは、このように設けられる第一配線部86b及び第二配線部86cと、検出基板80の配線部(図示せず)と、に電気的に接続される。これにより、外側電極52は、外側ターミナル54、第一配線部86b、及びピンヘッダ86aを通じて検出基板80と電気的に接続される。また、内側電極62は、内側ターミナル64、第二配線部86c、及びピンヘッダ86aを通じて検出基板80と電気的に接続される。
【0031】
貫通孔87は、内側電極62の中空部62aに連通して設けられる第一部分としての連通部87aと、連通部87aと連続して設けられるとともに、内側電極62の中空部62aに連通しない第二部分としてのスリット87bと、を有する。本実施形態では、連通部87aは、内側電極62と同心状に形成される円形の貫通孔であり、中空部62aと同径に設けられる。言い換えれば、連通部87aは、内側電極62の軸方向視において内側電極62の中空部62aと重なるように設けられる。中継基板86と内側電極62の間には、支持部85が設けられるものの、支持部85には中空部62aと連通する孔85eが設けられるため、連通部87aは支持部85の孔85eを介して内側電極62の中空部62aに連通する。なお、連通部87aは、中空部62aよりも大径に設けられてもよい。
【0032】
スリット87bは、連通部87aから延びて中継基板86の側面に開口して設けられる。スリット87bは、幅(
図3における左右方向の寸法)が一様となるように設けられる。スリット87bの幅は、連通部87aの内径よりも小さく、温度センサ102よりも大きい。また、スリット87bは、連通部87aに対して中継基板86の突出部86fとは反対側に向かって延びて設けられ、制御基板90と隣接する側面に開口する。連通部87aに対して突出部86fとは反対側の領域は、中継基板86において配線部86b,86cが設けられない非配線部86gである。つまり、スリット87bは、非配線部86gに設けられる。スリット87bは、支持部85の孔85eには連通しない。つまり、スリット87bは、内側電極62の中空部62aに連通しない。スリット87bは、後述するように、リード線70に接続された温度センサ102を内側電極62の中空部62aに挿入する際に利用される。
【0033】
図2に示すように、検出基板80は、内側電極62の軸方向に沿って延びて設けられる。検出基板80は、モールド体32の延設部32cに設けられるナット46,48(
図1参照)にネジ(図示せず)が螺合することにより、四隅が固定されてモールド体32の延設部32cに保持される。検出基板80は、ケーブル(図示せず)等により制御基板90と電気的に接続される。検出基板80には、ピンヘッダ86aを通じて中継基板86から外側電極52及び内側電極62から信号が入力される。検出基板80は、検出基板80に実装される検出回路(図示せず)において、外側電極52と内側電極62との間を流れる電流値を検出する。検出回路で検出された電流値は、作動油の電気的特性として、制御基板90に出力される。また、検出基板80には、温度センサ102に接続されたリード線70を通じて温度センサ102からの信号が入力される。
【0034】
制御基板90は、検出基板80と同様に、内側電極62の軸方向に沿って延びて設けられる。制御基板90は、モールド体32の延設部32cに設けられるナット46,48にネジ(図示せず)が螺合することにより、四隅が固定されてモールド体32の延設部32cに保持される。制御基板90には、制御回路(図示せず)が実装される。制御回路は、マイクロコンピュータであり、検出基板80の検出回路から入力された外側電極52と内側電極62との間の電気的特性値に基づいて、作動油の第一性状値としての導電率及び比誘電率を演算する演算部と、演算部で演算された導電率及び比誘電率等を記憶可能な記憶部と、演算部で用いられるプログラム等を記憶するROMやRAM等の補助記憶部と、入出力インタフェースと、を有する。演算部は、いわゆる中央演算処理装置(CPU)であり、記憶部は、書き換え可能なEEPROM等の不揮発性メモリである。制御回路は、演算部による演算結果を流体性状センサ100の外部に配置される外部制御装置(図示せず)に出力する。
【0035】
演算部は、検出基板80の検出回路での検出結果に基づいて、外側電極52と内側電極62との間の静電容量を演算し、演算した静電容量に基づいて作動油の比誘電率を演算する。また、演算部は、検出回路での検出結果に基づいて、外側電極52と内側電極62との間の抵抗値を演算し、演算した抵抗値に基づいて作動油の導電率を演算する。
【0036】
このように、流体性状センサ100では、外側電極52と内側電極62により、作動油の第一性状値として導電率及び比誘電率が検出され、温度センサ102により、作動油の第二性状値として温度が検出される。
【0037】
ここで、流体性状センサ100の組み立てにおいては、検出基板80に温度センサ102が予め接続される。そして、固定された状態の検出基板80に接続された温度センサ102を内側電極62の中空部62aに挿入する。温度センサ102を内側電極62の中空部62aに挿入するには、中継基板86の貫通孔87を通さなければならない。本実施形態においては、貫通孔87が、内側電極62の中空部62aに連通して設けられる連通部87aに加えて、連通部87aと連続して設けられるスリット87bを有する。そのため、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70に接続された温度センサ102をまず貫通孔87のスリット87bに挿入したのち、スリット87bから連通部87aに向けて移動させることにより、リード線70と検出基板80との接続部に負荷を与えることなく、容易に温度センサ102を連通部87aに挿入することができる。言い換えれば、スリット87bにより温度センサ102を連通部87aにガイドすることができる。これにより、容易に温度センサ102を内側電極62の中空部62aに挿入できる。
【0038】
また、流体性状センサ100の組み立てにおいては、内側電極62の中空部62aに挿入された温度センサ102及びリード線70が振動しないように中継基板86の貫通孔87内に接着剤を塗布する。接着剤の塗布は、ノズルを用いて、ノズルの先端から接着剤を吐出して行われる。本実施形態においては、貫通孔87が、連通部87aに加えてスリット87bを有する。そのため、スリット87bにノズルを挿入した状態で、スリット87bから連通部87aに向けて接着剤を塗布することで、連通部87a内に接着剤を容易に塗布することができる。具体的には、連通部87aの表面だけでなく、連通部87aの表面から離れた深い部分にまで、中継基板86の厚さ方向の全体にわたって接着剤を容易に塗布することができる。これにより、接着剤によって固定されるリード線70の領域が増加し、温度センサ102及びリード線70の振動を抑制できる。
【0039】
さらに、流体性状センサ100の組み立てにおいては、中継基板86及び検出基板80が固定されたのち、制御基板90を取り付ける。スリット87bは、中継基板86における制御基板90側の側面に開口するため、制御基板90が取り付けられる前の状態において、温度センサ102を内側電極62の中空部62aに容易に挿入できるとともに、連通部87a内に接着剤を容易に塗布することができる。
【0040】
また、流体性状センサ100では、貫通孔87のスリット87bは、中継基板86の側面に開口して設けられる。そのため、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70によって検出基板80に接続された温度センサ102を、開口からスリット87b内に挿入させることができるため、温度センサ102を内側電極62の中空部62aに容易に挿入できる。また、開口からスリット87b内に接着剤を塗布することができるため、接着剤を連通部87aに容易に塗布できる。
【0041】
さらに、流体性状センサ100では、貫通孔87の連通部87aの内径は、内側電極62の中空部62a及び支持部85の孔85eと同径である。また、スリット87bの幅は、連通部87aの内径よりも小さい。これにより、スリット87bに挿入された温度センサ102を内側電極62の中空部62aにスムーズにガイドすることができる。なお、連通部87aの径及びスリット87bの幅は、スリット87bに挿入された温度センサ102を内側電極62の中空部62aにガイドできれば、上記に限らない。
【0042】
また、流体性状センサ100では、スリット87bは、中継基板86において配線部86b,86cが設けられない非配線部86gに設けられる。つまり、流体性状センサ100では、中継基板86のデッドスペースである非配線部86gにスリット87bが設けられる。これにより、中継基板86を大きくせずに、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70によって検出基板80に接続された温度センサ102を容易に内側電極62の中空部62aに挿入できるとともに温度センサ102及びリード線70の振動を抑制できる。
【0043】
なお、本実施形態では、中継基板86に設けられる貫通孔87は、内側電極62と同心状に形成される円形の貫通孔である連通部87aと、連通部87aから延びて中継基板86の側面に開口して設けられるスリット87bと、を有する。これに限らず、連通部87aは円形でなくてもよく、スリット87bは中継基板86の側面に開口して設けられなくてもよい。スリット87bは、連通部87aと連続して設けられるとともに、少なくとも一部が内側電極62の中空部62aに連通しない構成であればよい。言い換えれば、スリット87bの一部は、内側電極62の中空部62aに連通してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、中継基板86が支持部85を介してモールド体32に設けられる。これに限らず、支持部85を設けずに中継基板86が直接モールド体32に設けられてもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0045】
また、本実施形態では、流体性状センサ100の組み立てにおいては、固定された状態の検出基板80に接続された温度センサ102を内側電極62の中空部62aに挿入する。これに限らず、固定される前の状態の検出基板80に接続された温度センサ102を内側電極62の中空部62aに挿入してもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0046】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0047】
流体性状センサ100では、貫通孔87が、内側電極62の中空部62aに連通して設けられる連通部87aに加えて、連通部87aと連続して設けられるとともに少なくとも一部が内側電極62の中空部62aに連通しないスリット87bを有する。そのため、流体性状センサ100の組み立ての際に、温度センサ102をスリット87bから連通部87aに向けて移動させることにより、容易に温度センサ102を連通部87aに挿入することができる。さらに、接着剤をスリット87bから連通部87aに向けて塗布することで、接着剤によって固定されるリード線70の領域が増加し、温度センサ102及びリード線70の振動を抑制できる。
【0048】
流体性状センサ100では、貫通孔87のスリット87bは、中継基板86の側面に開口して設けられる。そのため、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70によって検出基板80に接続された温度センサ102をより容易に内側電極62の中空部62aに挿入できるとともに、接着剤を容易に連通部87aに塗布できる。
【0049】
流体性状センサ100では、中継基板86のデッドスペースである非配線部86gにスリット87bが設けられる。これにより、中継基板86を大きくせずに、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70によって検出基板80に接続された温度センサ102を容易に内側電極62の中空部62aに挿入できるとともに温度センサ102及びリード線70の振動を抑制できる。
【0050】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0051】
検出対象流体の性状を検出する流体性状センサ100であって、筒状の外側電極52と、中空部62aを有し、外側電極52の内側に設けられ外側電極52との間の電気的特性に基づいて検出対象流体の第一性状値を検出するための内側電極62と、貫通孔87を有し、外側電極52及び内側電極62が電気的に接続される中継基板86と、中継基板86の貫通孔87を挿通するリード線70に接続されて内側電極62の中空部62aに挿入され検出対象流体の第二性状値を検出する温度センサ102と、を備え、貫通孔87は、内側電極62の中空部62aに連通して設けられる第一部分としての連通部87aと、連通部87aと連続して設けられるとともに内側電極62の中空部62aに連通しない第二部分としてのスリット87bと、を有する。
【0052】
この構成では、貫通孔87が、内側電極62の中空部62aに連通して設けられる連通部87aに加えて、連通部87aと連続して設けられるとともに内側電極62の中空部62aに連通しないスリット87bを有する。そのため、流体性状センサ100の組み立ての際に、温度センサ102をスリット87bから連通部87aに向けて移動させることにより、容易に内側電極62の中空部62aに挿入できる。さらに、接着剤をスリット87bから連通部87aに向けて塗布することで、連通部87a内に接着剤を容易に塗布することができる。これにより、接着剤によって固定されるリード線70の領域が増加し、温度センサ102及びリード線70の振動を抑制できる。
【0053】
また、流体性状センサ100では、貫通孔87の第二部分は、中継基板86の側面に開口して設けられるスリット87bである。
【0054】
この構成では、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70によって検出基板80に接続された温度センサ102をより容易に内側電極62の中空部62aに挿入できるとともに、接着剤を容易に連通部87aに塗布できる。
【0055】
また、流体性状センサ100では、リード線70が電気的に接続されるとともに中継基板86から信号が入力される検出基板80をさらに備え、中継基板86には、中継基板86と検出基板80とを電気的に接続するピンヘッダ86aと、外側電極52とピンヘッダ86aとを電気的に接続するとともに内側電極62とピンヘッダ86aとを電気的に接続する配線部86b,86cと、が設けられ、スリット87bは、中継基板86において配線部86b,86cが設けられない非配線部86gに設けられる。
【0056】
この構成では、中継基板86のデッドスペースである非配線部86gにスリット87bが設けられる。これにより、中継基板86を大きくせずに、流体性状センサ100の組み立ての際に、リード線70によって検出基板80に接続された温度センサ102を容易に内側電極62の中空部62aに挿入できるとともに温度センサ102及びリード線70の振動を抑制できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0058】
52・・・外側電極、62・・・内側電極、62a・・・中空部、86・・・中継基板(第一基板)、86a・・・ピンヘッダ、86b・・・第一配線部(配線部)、86c・・・第二配線部(配線部)、86g・・・非配線部、87・・・貫通孔、87a・・・連通部(第一部分)、87b・・・スリット(第二部分)、70・・・リード線、80・・・検出基板、102・・・温度センサ(検出部)