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特許7514271二輪車操舵機構に復元トルクを提供するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】二輪車操舵機構に復元トルクを提供するための装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 21/10 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B62K21/10
【請求項の数】 44
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022091506
(22)【出願日】2022-06-06
(65)【公開番号】P2022189760
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】10 2021 115 055.8
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2021 005 463.6
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2021 119 189.0
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522224807
【氏名又は名称】クリーバー ヨヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】クリーバー ヨヘン
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】実公昭33-012223(JP,Y1)
【文献】特開平09-301253(JP,A)
【文献】米国特許第04006915(US,A)
【文献】米国特許第01230801(US,A)
【文献】独国特許出願公開第03133098(DE,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0045285(KR,A)
【文献】英国特許出願公開第02573555(GB,A)
【文献】実公昭32-013415(JP,Y1)
【文献】中国実用新案第210149480(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109843710(CN,A)
【文献】特表2018-511526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車操舵機構に復元トルクを提供するための装置(100)であって、
・前記装置(100)を二輪車フレーム(2)に取り付けるための軸受装置(10)と、
・前記装置(100)をフォークシャフト(4)に結合するための結合装置(60)であって、回転軸(A)を有する、結合装置(60)と、
・復元力を蓄積するためのエネルギー貯蔵装置(30)と、
・前記エネルギー貯蔵装置(30)に操舵力を伝達するための力伝達装置(40)であって、前記回転軸(A)に対して偏心した力伝達点(P1)を有する、力伝達装置(40)と、
を備え、
前記力伝達装置(40)は、前記エネルギー貯蔵装置(30)に操舵力を伝達するために、前記エネルギー貯蔵装置(30)上の前記力伝達装置(40)の偏心した前記力伝達点(P1)及び作用点(P2)を通る力作用線(L)を形成し、
前記装置(100)の中立位置(N)において、前記力作用線(L)と、前記回転軸(A)及び前記作用点(P2)を通る直線(G)とが、角度(W)を形成し、さらに、
・前記中立位置(N)から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記エネルギー貯蔵装置(30)に作用する引張応力を補償するように配置された補償機構を備え、
前記補償機構は、前記引張応力を前記エネルギー貯蔵装置(30)の曲げ応力又は捩り応力に変換することができる、装置(100)。
【請求項2】
前記力伝達装置(40)が、前記エネルギー貯蔵装置(30)に前記操舵力を伝達するための2つの力伝達要素(42、42’)を有し、
前記力伝達要素(42、42’)はそれぞれ、前記回転軸(A)に対して偏心した力伝達点(P1、P1’)を有し、
右への操舵時に、前記エネルギー貯蔵装置(30)に前記操舵力を伝達するために、力作用線(L)が偏心した前記力伝達点(P1)と前記作用点(P2)とによって形成され、
左への操舵時に、前記エネルギー貯蔵装置(30)に前記操舵力を伝達するために、更なる力作用線(L’)が更なる偏心した前記力伝達点(P1’)と前記作用点(P2)とによって形成される、
請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記装置(100)は、前記中立位置(N)において、前記エネルギー貯蔵装置(30)にエネルギーを伝達するように配置されており、これによって、前記中立位置(N)において、前記力伝達装置(40)を介して、前記フォークシャフト(4)を安定させるための安定力を前記結合装置(60)に伝達することができる、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記力伝達装置(40)は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記復元トルクが漸増的に蓄積するように設定される、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記力伝達装置(40)は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記復元トルクが漸減的に蓄積するように設定される、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記力伝達装置(40)は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記復元トルクが漸増的に蓄積するように設定され、
前記力伝達装置(40)は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記復元トルクが漸減的に蓄積するように設定され、
前記復元トルクを漸増するために、前記中立位置(N)から前記所定の操舵角範囲に設定された操舵角は、前記復元トルクを漸減するために、前記所定の操舵角範囲から設定された操舵角より小さい、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記エネルギー貯蔵装置(30)が、前記軸受装置(10)と前記結合装置(60)とを弾性的に結合する、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記エネルギー貯蔵装置(30)が、復元力を貯蔵するための2つのエネルギー貯蔵要素(30’)を有し、
前記2つのエネルギー貯蔵要素(30’)のうちの一方は、右への操舵時に、復元力を貯蔵するように設計され、前記2つのエネルギー貯蔵要素(30’)のうちの他方は、左への操舵時に、復元力を貯蔵するように設計される、
請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記エネルギー貯蔵装置(30)が、張力エネルギーを貯蔵するための少なくとも1つのバネ(31)を有する、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記バネ(31)は、引張バネ(33)として設計される、請求項に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記装置(100)は、前記中立位置(N)において、バネ(31)にプレストレスを加えるように設定されており、これによって、前記中立位置(N)において、前記力伝達装置(40)を介して、前記フォークシャフト(4)を安定させるための安定力を前記結合装置(60)に伝達することができる、請求項に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記バネ(31)は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、曲げ応力を受けるように設定される、請求項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記力伝達装置(40)は、前記結合装置(60)と前記エネルギー貯蔵装置(30)とを結合し、前記操舵力に基づく引張力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達する引張機構を有する、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記引張機構が、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するための2つの引張要素(43、43’)を有し、
右への操舵時に、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するために、引張要素(43)によって力作用線(L)が形成され、
左への操舵時に、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するために、更なる引張要素(43’)によって更なる力作用線(L’)が形成される、
請求項13に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記引張機構は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記2つの引張要素(43,43’)に引張応力を受けるように設定される、請求項14に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記引張要素(43、43’)は、前記エネルギー貯蔵装置(30)上で互いに離間して配置される、請求項14に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記引張機構は、前記結合装置(60)と前記エネルギー貯蔵装置(30)とを台形接続部を介して接続し、前記台形接続部の短い基部側が前記エネルギー貯蔵装置(30)に配置され、前記台形接続部の長い基部側が前記結合装置(60)に配置される、請求項13に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記台形接続部の脚部が、前記エネルギー貯蔵装置(30)に前記操舵力を伝達するための引張要素(43、43’)によって形成される、請求項17に記載の装置(100)。
【請求項19】
前記引張要素(43、43’)の少なくとも1つが、前記結合装置(60)に接続されたバンドによって形成される、請求項14に記載の装置(100)。
【請求項20】
前記バンドが、可撓性バンドとして形成される、請求項19に記載の装置(100)。
【請求項21】
前記バンドは、プラスチック製バンドで構成される、請求項19に記載の装置(100)。
【請求項22】
前記力伝達装置(40)が、前記結合装置(60)に配置された力伝達要素(50)を有し、前記力伝達要素(50)には前記力伝達点(P1)が形成される、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項23】
前記力伝達要素(50)は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記エネルギー貯蔵装置(30)に前記操舵力を伝達するための力伝達を可変に調整するように設定される、請求項22に記載の装置(100)。
【請求項24】
前記力伝達要素(50)は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記復元トルクを漸減的に蓄積するための力伝達を行うように設定される、請求項22に記載の装置(100)。
【請求項25】
前記力伝達要素(50)がカム(54)である、請求項22に記載の装置(100)。
【請求項26】
前記結合装置(60)が、前記力伝達要素(50)と一体的に形成される、請求項22に記載の装置(100)。
【請求項27】
前記軸受装置(10)が、前記中立位置(N)におけるエネルギーを前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するための作動機構(20)を有する、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項28】
前記エネルギー貯蔵装置(30)が、張力エネルギーを貯蔵するための少なくとも1つのバネ(31)を有し、
前記軸受装置(10)が、前記中立位置(N)におけるエネルギーを前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するための作動機構(20)を有し、
前記作動機構(20)は、前記中立位置(N)で前記バネ(31)に張力エネルギーを伝達するように設定される、請求項1又は2に記載の装置(100)。
【請求項29】
前記作動機構(20)が回転作動可能な偏心体(22)を有し、前記偏心体(22)は、前記偏心体(22)の回転運動を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達可能なエネルギーに変換するために、前記エネルギー貯蔵装置(30)に作動的に接続される、請求項27に記載の装置(100)。
【請求項30】
前記作動機構(20)は、前記偏心体(22)に回転不能に接続された作動要素(25)を有し、そのことによって、前記偏心体(22)の回転運動は、工具なしに行うことができる、請求項29に記載の装置(100)。
【請求項31】
前記軸受装置(10)が、前記偏心体(22)の回転運動を案内するためのガイドを有する、請求項29に記載の装置(100)。
【請求項32】
前記軸受装置(10)は、前記中立位置(N)にある前記作動機構(20)が前記エネルギー貯蔵装置(30)に貯蔵された所定のエネルギーレベルを作用させる前記偏心体(22)の所定の回転位置を設定するための少なくとも1つの停止体を備える、請求項29に記載の装置(100)。
【請求項33】
前記軸受装置(10)が、前記偏心体(22)の回転運動を案内するためのガイドを有し、
前記軸受装置(10)は、前記中立位置(N)にある前記作動機構(20)が前記エネルギー貯蔵装置(30)に貯蔵された所定のエネルギーレベルを作用させる前記偏心体(22)の所定の回転位置を設定するための少なくとも1つの停止体を備え、
前記軸受装置(10)の前記ガイドが前記停止体を有する、請求項29に記載の装置(100)。
【請求項34】
前記力伝達装置(40)は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記復元トルクが漸増的に蓄積するように設定される、請求項3に記載の装置(100)。
【請求項35】
前記力伝達装置(40)は、操舵角を所定の操舵角範囲に調整したとき、前記復元トルクを漸減的に蓄積するように設定される、請求項に記載の装置(100)。
【請求項36】
前記力伝達装置(40)は、前記結合装置(60)と前記エネルギー貯蔵装置(30)とを結合し、前記操舵力に基づく引張力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達する引張機構を有し、
前記引張機構が、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するための2つの引張要素(43、43’)を有し、
右への操舵時に、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するために、引張要素(43)によって力作用線(L)が形成され、
左への操舵時に、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するために、更なる引張要素(43’)によって更なる力作用線(L’)が形成され、
前記引張機構は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記2つの引張要素(43,43’)に引張応力を受けるように設定される、
請求項3に記載の装置(100)。
【請求項37】
前記力伝達装置(40)は、前記結合装置(60)と前記エネルギー貯蔵装置(30)とを結合し、前記操舵力に基づく引張力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達する引張機構を有し、
前記引張機構が、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するための2つの引張要素(43、43’)を有し、
右への操舵時に、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するために、引張要素(43)によって力作用線(L)が形成され、
左への操舵時に、前記操舵力を前記エネルギー貯蔵装置(30)に伝達するために、更なる引張要素(43’)によって更なる力作用線(L’)が形成され、
前記引張機構は、前記中立位置(N)からの操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、前記2つの引張要素(43,43’)に引張応力を受けるように設定される、請求項に記載の装置(100)。
【請求項38】
前記引張要素(43、43’)は、前記エネルギー貯蔵装置(30)上で互いに離間して配置される、請求項15に記載の装置(100)。
【請求項39】
請求項1又は2に記載の装置(100)がフォークシャフト(4)と接続可能に取り付けられる、二輪車フレーム(2)。
【請求項40】
前記装置(100)が、前記二輪車フレーム(2)の少なくとも1つのフレーム構成要素に一体的に配置される、請求項39に記載の二輪車フレーム(2)。
【請求項41】
請求項1又は2に記載の装置(100)と、
前記装置(100)が結合されるフォークシャフト(4)と、
を有する、二輪車操舵。
【請求項42】
前記装置(100)は、二輪車フォークを介して、フォークシャフト(4)に結合される、請求項41に記載の二輪車操舵。
【請求項43】
請求項39に記載の二輪車フレーム(2)を有する、二輪車。
【請求項44】
請求項40に記載の二輪車フレーム(2)を有する、二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車操舵機構に復元トルクを提供するための装置に関する。また、本発明は、二輪車フレーム、二輪車操舵、及び二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の走行特性は、低速走行時に不安定になることがある。走行安定性が低下すると、二輪車の前輪が片側に傾きやすくなることがある。前輪が傾き、その結果ハンドルが横に振られると、危険な走行状態になる可能性がある。
【0003】
二輪車の前輪を上げた状態でも、前輪が横に傾き、ハンドルが横に振られることがある。例えば、二輪車を駐車したり、持ち上げたりすると、あるいは二輪車を運搬すると、このように障害が生じることも、二輪車の周囲に損傷を与えることがある。
【発明の概要】
【0004】
一側面において、本発明は、二輪車操舵機構に復元トルクを提供するための装置に関する。装置は、操舵角の関数として復元トルクを提供するように設定することができる。二輪車操舵機構は、自転車操舵機構であっても、バイク操舵機構であってもよい。
【0005】
復元トルクは、フォークシャフト又はそこに配置される二輪車ハンドルを復元するための復元トルクであってもよく、二輪車ハンドルバーは、自転車用であっても、バイク用であってもよい。したがって、復元トルクは、フォークシャフト復元トルク又はハンドルバー復元トルクであってもよいし、フォークシャフト復元トルク又はハンドルバー復元トルクを発生させてもよい。操舵角は、二輪車操舵機構の二輪車ハンドルのロック角に基づいてもよい。装置は、二輪車に後付け可能な二輪車部品であってもよい。装置は、二輪車フレームに取り付け可能であっても、二輪車のフォークシャフトに結合可能であってもよい。二輪車部品は、自転車部品及び/又はバイク部品であってもよい。
【0006】
戻りトルクによって、二輪車操舵機構は装置の中立位置に戻ることがある。中立位置は、二輪車を直進させることができる装置の状態であってもよい。また、中立位置は、装置が外部の操舵力を受けずにトルク平衡又は力平衡になることができる状態であってもよい。
【0007】
装置は、当該装置を二輪車フレームに取り付けるための軸受装置を有してもよい。軸受装置は、二輪車フレームに取り付け可能であってもよい。軸受装置は、二輪車フレームに固定的に取り付けるように設定されてもよい。あるいは、軸受装置は、二輪車フレームに装置を移動可能に取り付けるために、例えば、二輪車フレームに装置を揺動可能に取り付けるように設定されてもよい。例えば、軸受装置は、軸受ピンを有してもよく、この軸受ピンを介して装置が二輪車フレームに回転可能に取り付けられることができる。
【0008】
装置は、当該装置をフォークシャフトに回転不能に結合するための結合装置を有することができる。結合装置は、フォークシャフトと非ポジティブ及び/又はポジティブに結合するように設定することができる。例えば、結合装置は、丸型クランプ、又はハンドルシャフトに回転自在に固定できるクランプとすることができる。したがって、操舵角は、フォークシャフトの回転角度に対応することができる。二輪車ハンドルは、ハンドルバーステムを介してフォークシャフトに回転固定で接続することができる。したがって、操舵角は二輪車ハンドルの回転角にも対応することができる。
【0009】
結合装置は、回転軸を有していてもよく、この回転軸は、フォークシャフトの回転軸に対応していてもよい。回転軸は、フォークシャフトと結合装置の共通の回転軸であってもよい。フォークシャフトは、二輪車フレームのヘッドチューブに設けられたヘッドセットに、回転軸を中心として回転可能に取り付けてもよい。
【0010】
装置の一実施形態によれば、結合装置は、フロントフォークであってもよい。したがって、装置は、フロントフォークを介してフォークシャフトに結合することができる。結合装置は、例えば、フロントフォークのフォークアームであってもよい。したがって、装置は、フォークアームを介してフォークシャフトに結合することもできる。したがって、装置は、特にコンパクトに前輪に後付けすることができる。
【0011】
装置は、復帰力を貯蔵するためのエネルギー貯蔵装置を有していてもよい。復元力は、フォークシャフト又はこれに取り付けられた二輪車ハンドルを復元するための復元力であってもよい。したがって、復元力は、フォークシャフト復元力でもハンドル復元力でもよいし、フォークシャフト復元力又はハンドル復元力を発生させてもよい。エネルギー貯蔵装置は、結合装置が回転したときに蓄積される復元力を提供又は送達するように配置されてもよい。結合装置の回転は、ハンドルシャフトの回転に基づくものであってもよいし、二輪車ハンドルの旋回(Einschlagen)に基づくものであってもよい。
【0012】
装置は、エネルギー貯蔵装置に操舵力を伝達するための力伝達装置を有してもよい。また、力伝達装置は、復元力を結合装置に伝達するように配置されてもよい。エネルギー貯蔵装置は、貯蔵された復元力を力伝達装置に導入するように配置されてもよい。
【0013】
力伝達装置は、回転軸に対して偏心した力伝達点を有していてもよい。力伝達点は、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するため、又は復元トルクを提供するためのフォースレバーの力作用点を形成することができる。フォースレバーは、回転軸と力伝達点の間に片側フォースレバーとして設計又は作用させることができる。
【0014】
力伝達装置は、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するために、エネルギー貯蔵装置上の力伝達装置の偏心した力伝達点及び作用点を通る力作用線を形成することができる。力作用線は、操舵力に基づいて引張力を伝達するように配置されてもよい。また、力線は、エネルギー貯蔵装置から結合装置へ復元力を伝達するように配置されてもよい。
【0015】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達点及び/又は作用点は、フレームの長手方向軸上又はフレームの中心に配置可能又は配置することができる。あるいは、力伝達点及び/又は作用点は、フレームの長手方向軸からオフセットして、又はフレームの中心より外側に配置可能又は配置することができる。
【0016】
装置の中立位置では、力作用線と、回転軸と作用点を通る直線とが角度を形成することができる。力作用線は、閉じ込められた角度で直線と交差することがある。この角度は、180°でない角度である。この角度は、特に鋭角である。力線は、中立位置から操舵角を設定したときに作用する力線とすることができる。
【0017】
本発明による装置では、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、復元トルクを蓄積する際に、エネルギー貯蔵装置の直接応答挙動を有利な態様で作り出すことが可能である。回転軸と作用点を通る直線から離れた位置に力伝達点があり、その結果、力作用線が直線に対して斜めに形成されることで、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するための有効な接続部を直接設けることができる。そのため、中立位置から所定の操舵角範囲に移行する操舵角における力伝達の初期不感帯を低減又は解消することができる。
【0018】
本発明では、有利な効果として、二輪車の走行挙動の改善を達成することができる。特に、本発明では、二輪車の走行挙動をより安定させることができる。さらに、本発明では、自転車の操作性の改善も達成することができる。特に、前輪の浮き上がりによるたわみを防止することができる。
【0019】
本発明のさらに特に有利な効果は、本発明による装置を備えた二輪車のハンドリングの改善と走行安定性の向上により、二輪車のステアリングジオメトリパラメータの設計に大きな自由度を提供することである。したがって、本発明により、二輪車のステアリングジオメトリパラメータを、二輪車の走行安定性を損なわずに、より大きなパラメータ範囲で変更することができる。例えば、本発明では、前輪操舵システムのステアリングヘッド角、前輪径、フォークベンド、又はキャスターの調整又は変更に、より大きな範囲を提供する。
【0020】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達装置は、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するための2つの力伝達要素を有してもよい。本実施形態によれば、力伝達要素は、それぞれ回転軸に対して偏心した力伝達点を有してもよい。本実施形態によれば、偏心した力伝達点と、右への操舵時にエネルギー貯蔵装置に操舵力を伝達するための作用点とによって力作用線が形成されてもよい。力伝達装置は、エネルギー貯蔵装置において、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するための作用点をさらに有してもよい。更なる作用点は、作用点から離れたエネルギー貯蔵装置上に形成されてもよい。また、左への操舵時に操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するための、更なる偏心した力伝達点と作用点又は更なる作用点により、更なる力作用線が形成されてもよい。装置の中立位置において、更なる偏心した力伝達点を通る力作用線と、回転軸と更なる作用点を通る更なる直線は、更なる角度を形成することができる。更なる角度は、上述した角度と同様に形成されてもよい。
【0021】
力作用線は、作用点における角度を形成することができ、この角度は、力作用線と、回転軸と作用点を通る直線との間の角度の2倍に相当する。力伝達要素は、中立位置において、作用点と回転軸を通る直線に対して軸対称に配置されてもよい。さらに、中立位置では、力伝達点を回転軸から等間隔に配置してもよい。そのため、右への操舵と左への操舵に対称的に対応する復元トルクを提供することができる。
【0022】
装置の更なる実施形態によれば、装置は、中立位置においてエネルギーをエネルギー貯蔵装置に伝達するように配置することができ、これにより、フォークシャフトを安定させるための安定化力が中立位置において力伝達装置を介して結合装置に伝達することができる。エネルギー貯蔵装置に伝達されるエネルギーは、軸受装置及び/又は、力伝達装置から、エネルギー貯蔵装置に伝達することができる。安定化力は、装置に作用する引張力であってもよく、力伝達装置は、中立位置で引張状態であってもよい。安定化力は、操舵機構のたわみを打ち消すことができる。そのため、装置は、中立位置でも、二輪車の走行安定性及びハンドリングを向上させることができる。
【0023】
装置の更なる実施形態によれば、装置は補償機構を有してもよく、補償機構は、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、エネルギー貯蔵装置に作用する引張応力を補償するように配置される。補償機構は、引張応力をエネルギー貯蔵装置の別の形態の応力、例えば、曲げ応力や捩り応力に変換することができる。したがって、復元トルクは、応力の更なる形態に応じて、中立位置から所定の操舵角範囲内に設定されている操舵角の間に形成することができる。補償機構は、復元トルクの蓄積、特に復元トルクの漸増的な蓄積が、中立位置からの操舵時に円滑に生じるように設定することができる。
【0024】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達装置は、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したときに、復元トルクが漸増的に蓄積するように設定されてもよい。所定の操舵角範囲に隣接する更なる操舵角範囲において、漸増的な蓄積は、復元トルクの比例的な蓄積又は漸減的な蓄積に変更してもよい。漸増的な蓄積は、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、復元トルクに対するエネルギー貯蔵装置の即時応答挙動を向上させることができる。
【0025】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達装置は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、復元トルクの漸減的な蓄積を提供するように設定されてもよい。装置の更なる実施形態によれば、復元トルクの漸増的な蓄積を提供するための所定の操舵角範囲における中立位置からの操舵角設定は、復元トルクの漸減的な蓄積を提供するための所定の操舵角範囲における操舵角設定よりも小さくすることが可能である。所定の操舵角範囲は、互いに隣接していてもよいし、互いに角度的な距離を有していてもよい。
【0026】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達装置は、操舵角が所定の操舵角範囲に設定されたとき、復元トルクの比例的な蓄積を提供するように設定することができる。力伝達装置は、復元トルクの比例的な蓄積が復元トルクの漸減的な蓄積から調整され得るように設定することができ、復元トルクの漸増的な蓄積と復元トルクの漸減的な蓄積とを結びつけることができる。復元トルクの漸増的な蓄積又は復元トルクの漸減的な蓄積は、力伝達装置における可変的な力伝達によってもたらすことができ、可変的な力伝達は、対応する所定の操舵角範囲に形成することができる。特に、漸減的な蓄積により、大きな操舵角でもエネルギー貯蔵装置の応答挙動を維持することができる。
【0027】
装置の更なる実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置は、軸受装置と結合装置とを弾性的に結合させてもよい。エネルギー貯蔵装置は、少なくとも1つの弾性エネルギー貯蔵要素を有してもよい。エネルギー蓄積要素は、例えば、バネであってもよい。したがって、エネルギー伝送装置のエネルギー貯蔵要素は、非弾性に、特に引張剛性に形成することもできる。弾性エネルギー貯蔵要素の代替又は追加として、力伝達要素も少なくとも部分的に弾性的に形成することもできる。更なる実施形態によれば、力伝達装置は、更なる又は追加のエネルギー貯蔵要素を有してもよい。弾性変形可能なエネルギー貯蔵装置は、有利には、装置における操舵時に生じる復元力及び長さの変化を提供するために、弾性復元を提供することができる。
【0028】
更なる実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置は、復元力を貯蔵するための2つのエネルギー貯蔵要素を有してもよい。2つのエネルギー貯蔵要素のうち少なくとも1つは、弾性エネルギー貯蔵要素のように設計することができる。2つのエネルギー貯蔵要素のうちの一方は、右への操舵時に復元力を貯蔵するように構成されてもよく、2つのエネルギー貯蔵要素のうちの他方は、左への操舵時に復元力を貯蔵するように構成されてもよい。2つのエネルギー貯蔵装置のうちの一方は、右への操舵時に結合装置が回転することで蓄積される復元力を提供又は解放するように設定することができる。したがって、2つのエネルギー貯蔵要素のうちの他方は、右への操舵時に復元力を貯蔵するように設定されてもよい。力作用線は、偏心した力伝達点と、右への操舵時に操舵力をエネルギー貯蔵要素に伝達するための作用点とで形成されてもよい。2つのエネルギー貯蔵要素のうちの他方は、左への操舵時に結合装置が回転する際に蓄積される復元力を提供又は解放するように設定されてもよい。したがって、他方のエネルギー貯蔵要素は、左への操舵時に復元力を貯蔵するように設定されてもよい。2つのエネルギー貯蔵要素は、有利なことに、二輪車フレームに露出した形で後付けすることができる。更なる力作用線は、左への操舵時に操舵力を他方のエネルギー貯蔵要素に伝達するための更なる偏心した力伝達点と更なる作用点により形成することができる。
【0029】
更なる実施形態によれば、軸受装置は、装置を二輪車フレームに取り付けるための2つの軸受要素を有することができる。エネルギー貯蔵要素は、2つの軸受要素のうちの一方を介して二輪車フレームに取り付け可能であっても、取り付けることができてもよい。他方のエネルギー貯蔵要素は、2つの軸受要素のうちの他方を介して二輪車フレームに取り付け可能であっても、取り付けることができてもよい。軸受要素は、二輪車フレーム、例えば、フレームチューブに互いに距離をおいて装着可能であっても、装着することができてもよい。軸受要素は、フレームチューブに露出した形で、又は外側から装着可能であっても、装着することができてもよく、例えば、フレームチューブの凹部に取り付け可能であっても、取り付けることができてもよい。
【0030】
装置の更なる実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置は、張力エネルギーを貯蔵するための少なくとも1つのバネを有してもよい。2つのエネルギー貯蔵要素のうち少なくとも1つは、バネを有してもよい。エネルギー貯蔵装置は、例えば、一対のバネを有してもよい。装置の更なる実施形態によれば、バネは、引張バネとして構成されてもよい。装置の更なる別の実施形態によれば、バネは、圧縮バネとして構成されてもよい。少なくとも1つのバネは、コイルバネであってもよく、コイルバネから構成されていてもよい。代替又は追加として、少なくとも1つのバネは、エラストマーバネであってもよく、又はエラストマーバネから構成されてもよい。バネに蓄えられた張力エネルギーは、復元力を与える、あるいは引き起こすことができる。
【0031】
装置の更なる実施形態によれば、装置は、中立位置においてバネにプレストレスを加えるように配置することができ、このプレストレスにより、フォークシャフトを安定させるための安定力を、中立位置において力伝達装置を介して結合装置に伝達することができる。軸受装置及び/又は力伝達装置は、バネにプレストレスを加えるように配置されてもよい。バネのプレストレスは、復元トルクの漸増的な蓄積をさらに向上させることができる。
【0032】
装置の更なる実施形態によれば、バネは、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、曲げ応力を受けるように設定することができる。そのため、バネは、引張応力を補償するための補償機構の一部とすることができる。中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したときのバネの曲げ応力は、所定の操舵角範囲に隣接する操舵角範囲におけるバネの引張応力に合流してもよいし、引張応力に重なってもよい。曲げ応力は、引張要素によって引き起こすことができ、これは、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、操舵角でバネに作用でき、引張要素が共同で引張力をバネに作用させ、曲げ応力を引き起こすことができる。
【0033】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達装置は、操舵力に基づく引張力をエネルギー貯蔵装置に伝達するために、結合装置とエネルギー貯蔵装置とを連結する引張機構を有してもよい。引張機構は、結合装置及びエネルギー貯蔵装置に張力が掛からないように付けられてもよい。
【0034】
装置の更なる実施形態によれば、引張機構は、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するために2つの引張要素を有してもよい。力伝達要素は、引張要素を有してもよいし、そのように設計されてもよい。本実施形態によれば、右への操舵時に操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するために引張要素によって、1つの力作用線が形成されてもよい。左への操舵時に操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するために更なる引張要素によって、更なる力作用線が形成されてもよい。引張力は、それぞれの力作用線に沿ってエネルギー貯蔵装置に導入することができる。したがって、偏心した力伝達点による操舵力から生じる引張力は、左右への操舵時にエネルギー貯蔵装置に導入され、対応する復元力を生じさせることができる。
【0035】
装置の更なる実施形態によれば、引張機構は、中立位置から操舵角を所定の操舵角範囲に設定したとき、両方の引張要素が引張応力を受けるように設定することができる。このような引張応力は、中立位置でエネルギー貯蔵装置に伝達されるエネルギーに起因することがある。例えば、引張応力は、バネに加えることができるプレストレスに起因することがある。
【0036】
装置の更なる実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置上の引張要素は、互いに離間して配置されてもよい。このような離間した配置は、補償機構の一部を構成してもよい。さらに、バネにかかる曲げ応力は、離間した配置に基づくものであってもよい。装置の別の実施形態によれば、引張機構は、4点接続、特に台形接続を介して、結合装置とエネルギー貯蔵装置とを接続してもよい。一実施形態によれば、結合装置とエネルギー貯蔵要素とは、4点接続、特に台形接続を介して接続されてもよい。台形接続部の短い基部側は、エネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵要素上に配置することができ、台形接続部の長い基部側は、結合装置上に配置することができる。装置の更なる実施形態によれば、台形接続部の脚部は、操舵力をエネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵要素に伝達するための引張要素によって形成することができる。引張要素は、操舵力に基づく引張力をエネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵要素に導入するように配置されてもよい。引張要素は、力伝達点を介して又は力伝達点において、結合装置をエネルギー貯蔵装置に又はエネルギー貯蔵要素に張力が掛からないように接続できる少なくとも1つの引張バンドを有することができる。
【0037】
引張バンドの代替又は追加として、張力要素は、力伝達点を介して又は力伝達点において、結合装置をエネルギー貯蔵装置に張力が掛からないように接続できる少なくとも1つの引張ロッドを有することができる。特に、両引張要素は、引張バンド又は引張ロッドで形成することもできる。引張要素は、少なくとも一部の領域で、引張剛性引張要素として形成することもできる。代替又は追加として、引張要素は、少なくともいくつかの領域で弾性引張要素、例えば、引張バネとして形成することもできる。引張要素は、力伝達点又は結合装置において移動可能に取り付けられ、又は案内されることができる。そのため、装置内の操舵力に起因する引張力を効率よくエネルギー貯蔵装置に導入することができる。
【0038】
装置の更なる実施形態によれば、引張要素の少なくとも1つは、結合装置に接続されるバンドによって形成されてもよい。バンドは、説明されている引張バンドであってもよいし、その逆であってもよい。両引張要素は、バンドによって形成されてもよく、バンドは、連続的なバンド部分によって形成されてもよい。バンドは、右への操舵時と、左への操舵時にバンドに張力がかかるように、結合装置とエネルギー貯蔵装置とを接続することができる。バンドは、少なくとも一部の領域で引張剛性及び/又は弾性バンドとして形成されてもよい。
【0039】
装置の更なる実施形態によれば、バンドは、可撓性バンドとして形成されてもよい。バンドは、回転軸に対して半径方向に変形可能であり、力伝達点から離間して取付点で結合装置に取り付けてもよい。したがって、力伝達点は、力伝達要素、引張要素又はバンドを配置することができる力伝達点であってもよい。バンドは、力伝達点で広げたり、回転軸に対して放射状に伸ばしたりすることができる。したがって、バンドは、力伝達のために可変的に配置することができ、同時に耐張力性を有する引張要素を形成することができる。
【0040】
装置の更なる実施形態によれば、バンドは、プラスチック製バンド、特にアラミド繊維製バンドで構成することができる。したがって、二輪車部品として形成できる装置の重量は、引張強度を維持しながら効率的に減らすことができる。
【0041】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達装置は、結合装置上に配置された力伝達要素を有してもよく、この力伝達要素において、力伝達点が形成される。力伝達要素は、フォースレバーを形成してもよい。力伝達要素は、回転軸に対して半径方向に形成された輪郭を有するか、又はそのような輪郭に従うことができ、それによって、操舵角を設定すると、力伝達点は、輪郭上を移動すること、又は可変的に調整することができる。
【0042】
更なる実施形態によれば、力伝達要素は、前輪フォークに配置されてもよい。前輪フォークは、力伝達要素を有すること、又は形成することができる。前輪フォークと力伝達要素は、一体的に形成されていてもよい。力伝達要素は、さらに前輪フォークに統合されてもよい。
【0043】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達要素は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したときに、操舵力をエネルギー貯蔵装置に伝達するための力伝達を可変に調整するように配置されてもよい。装置の更なる実施形態によれば、力伝達要素は、操舵角を所定の操舵角範囲に設定したときに、復元トルクの漸減的な蓄積のための力伝達を提供するように設定することができる。したがって、所定の操舵角範囲は、特に、中立位置から復元トルクの漸増的な蓄積を提供することができる操舵角範囲とすることができる。
【0044】
復元トルクの漸減的な蓄積のために設定された力伝達の代替又は追加として、力伝達要素は、所定の操舵角範囲に設定された操舵角において、復元トルクの漸増的な蓄積のための力伝達を行うように設定することもできる。所定の操舵角範囲は、特に、復元トルクの漸減的な蓄積が提供される操舵角範囲とすることもできる。力伝達要素は、輪郭を有するように設定して、それに応じて力伝達を提供することもできる。
【0045】
装置の更なる実施形態によれば、力伝達要素は、カムであってもよいし、カムで構成されてもよい。装置は、2つの力伝達要素を有することができ、そのそれぞれに、説明した力伝達点のうちの1つを配置することができる。そのため、装置は、ダブルカムを有することもある。記載された輪郭は、カムに形成されてもよい。
【0046】
装置の更なる実施形態によれば、結合装置は、力伝達要素と一体的に形成されてもよい。したがって、結合装置は、カム又はダブルカムを有すること、又は形成することができる。そのため、結合装置を二輪車フレームに省スペースで設置できるように、装置の設置スペースを縮小することができる。
【0047】
装置の更なる実施形態によれば、軸受装置は、中立位置のエネルギーをエネルギー貯蔵装置に伝達するための作動機構を有してもよい。作動機構は、エネルギー貯蔵装置に力、例えば、引張力を加えるように配置されてもよい。したがって、エネルギー貯蔵装置は、エネルギー又は力、例えば、安定化力を、中立位置の力伝達装置に伝達するように配置されてもよい。装置の更なる実施形態によれば、作動機構は、中立位置のバネに張力エネルギーを伝達するように配置されてもよい。作動機構は、バネに力、例えば引張力を加えるように配置されてもよい。したがって、バネは、エネルギー又は力、例えば、安定化力を、中立位置の力伝達装置に伝達するように配置されてもよい。
【0048】
装置の更なる実施形態によれば、作動機構は、回転操作可能な偏心体を有してもよく、偏心体は、偏心体の回転運動をエネルギー貯蔵装置に伝達可能なエネルギーに変換するために、エネルギー貯蔵装置に作動的接続されてもよい。偏心体は、偏心体を二輪車フレームに取り付けることができる軸受要素を有してもよい。軸受装置は、偏心体を形成する偏心して取り付けられたシリンダを有してもよい。エネルギー貯蔵装置は、偏心体又はシリンダが回転可能に取り付けられるレセプタクルを有してもよい。したがって、偏心体の回転運動をレセプタクルの並進運動に変換し、その力をエネルギー貯蔵装置に伝えることができる。レセプタクルは、円筒形のレセプタクルであってもよい。.このような偏心体によって、中立位置にあるエネルギーを伝達するための作動機構を、特に省スペースで二輪車フレームのフレーム構成要素に配置することができる。
【0049】
装置の更なる実施形態によれば、作動機構は、並進作動可能な作動要素を有してもよく、この作動要素は、作動要素の並進運動をエネルギー貯蔵装置に伝達可能なエネルギーに変換するために、エネルギー貯蔵装置に作動的に接続される。作動要素は、作動要素を二輪車フレーム上で直線的に案内することができるガイド要素を有してもよい。作動要素は、摺動要素であってもよく、摺動要素は、摺動要素に作用するスラスト力をエネルギー貯蔵装置に伝達するために、エネルギー貯蔵装置に引張剛性方式で接続される。摺動要素は、バネに引張力を伝達するために、引張剛性方式でバネに接続されてもよい。摺動要素は、手動で操作できるように配置されてもよい。例えば、フレーム部品に配置されたスロット穴により、摺動要素を作動させることができる。フレーム部品と一体化した摺動要素により、フレーム部品の露出を避けることができる。
【0050】
装置の更なる実施形態によれば、作動機構は、作動要素、特に作動レバーを有することができ、この作動レバーは、回転不能に偏心体に接続され、この作動レバーを用いて、工具なしで偏心体の回転運動がもたらすことができる。作動要素は、手動で操作できるように配置されてもよい。また、作動要素は、作動装置を二輪車フレームに取り付けるための軸受要素を形成してもよい。作動要素は、偏心体に回転不能に接続され、回転運動を偏心体に伝達することができる。装置の更なる実施形態によれば、軸受装置は、偏心体の回転運動を案内するためのガイド、特に湾曲したガイド溝を有してもよい。ガイドは、レセプタクルに形成してもよいし、偏心体に形成してもよい。
【0051】
装置の更なる実施形態によれば、軸受装置は、偏心体の所定の回転位置を設定するための少なくとも1つの停止体を有してもよく、この場合、中立位置にある作動機構は、エネルギー貯蔵装置に貯蔵されている所定のエネルギーレベルをもたらす。このように、中立位置では、特に安定した力を発揮するために、所定のエネルギーレベルをすでに提供することができる。したがって、復元トルクが所定の操舵角範囲の中立位置から蓄積されるとき、漸増的な蓄積及びエネルギー貯蔵装置の即時応答挙動をさらに改善することができる。装置の更なる実施形態によれば、ガイドは、停止体から構成されてもよい。そのため、軸受装置は、特にコンパクトな構造とすることができる。
【0052】
別の態様では、本発明は、二輪車フレームに関し、先行する態様による装置が、フォークシャフトと接続可能に取り付けられる。二輪車フレームは、自転車フレームであってもよいし、バイクフレームであってもよい。装置は、二輪車フレームの少なくとも1つのフレームチューブ、例えば、二輪車フレームのフレームトップチューブ及び/又はフレームダウンチューブに取り付けてもよい。
【0053】
二輪車フレームの一実施形態によれば、装置は、二輪車フレームの少なくとも1つのフレーム構成要素に一体的に配置することができる。エネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵要素は、二輪車フレームに一体的に配置することができる。あるいは、エネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵要素は、二輪車フレームの外側に配置されてもよい。装置は、二輪車フレームの少なくとも1つのフレームチューブに、例えば、二輪車フレームのフレームトップチューブ及び/又はフレームダウンチューブに少なくとも部分的に一体的に配置することができる。エネルギー貯蔵装置及び/又はエネルギー貯蔵要素は、二輪車フレームの少なくとも1つのフレームチューブ、例えば、二輪車フレームのフレームトップチューブ及び/又はフレームダウンチューブに、少なくとも部分的に一体化されて配置することができる。あるいは、エネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵要素は、二輪車フレームの少なくとも1つのフレームチューブの外側、例えば、二輪車フレームのフレームトップチューブの外側及び/又はフレームダウンチューブの外側に配置することができる。装置は、フレームトップチューブ及び/又はフレームダウンチューブに取り付けてもよい。装置は、二輪車フレームのヘッドチューブに少なくとも部分的に一体化されて配置することもできる。装置は、ヘッドチューブと離間して配置することも、接触させずに配置することもできる。
【0054】
別の態様では、本発明は、二輪車操舵に関する。二輪車操舵は、対応する態様に係る装置を有する。二輪車操舵は、装置が結合されるフォークシャフトで構成されてもよい。二輪車操舵は、自転車の操舵であっても、バイクの操舵であってもよい。二輪車操舵の更なる実施形態によれば、装置は、二輪車フォークを介してフォークシャフトに結合されてもよい。装置は、例えば、二輪車フォークのフォークアームを介してフォークシャフトに結合されてもよい。
【0055】
別の態様では、本発明は、二輪車に関する。二輪車は、対応する態様に係る二輪車フレーム及び/又は対応する態様に係る二輪車操舵を有する。二輪車は、自転車、ペダルスクーター、モータースクーター、オートバイのいずれであってもよい。
【0056】
本発明において、説明された態様の1つの実施形態及び特徴は、説明された態様とは別の態様の対応する実施形態及び特徴を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1a】本発明を説明するための実施形態による復元トルクを提供するための装置を概略図で示す。
図1b】本発明を説明するための更なる実施形態による復元トルクを提供するための装置を概略図で示す。
図2】本発明の実施形態による復元トルクを提供するための装置を透視図で示す。
図3図2の装置を分解図で示す。
図4図2の装置を断面図で示す。
図5】本発明の更なる説明のためにエネルギー貯蔵装置のエネルギー状態における図2の装置を断面図で示す。
図6図2の装置を上面図で示す。
図7】本発明の更なる説明のために結合装置の第一の操舵状態における図2の装置を上面図で示す。
図8】本発明の更なる説明のために結合装置の第二の操舵状態における図2の装置を上面図で示す。
図9】本発明の更なる説明のために結合装置の第三の操舵状態における図2の装置を上面図で示す。
図10図2の装置を二輪車フレームとハンドルシャフト上に組み立てた状態で示す。
図11】本発明の更なる実施形態による復元トルクを提供するための装置を透視図で示す。
図12図11の装置を分解図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1aは、図示しない二輪車操舵機構に復元トルクを提供するための装置100を概略図で示す。装置100は、上面図で概略的に示す。装置100は、装置100の中立位置Nに示されている。図示されている中立位置Nでは、二輪車操舵機構によって直線的に偏向させることができる。中立位置Nでは、二輪車操舵機構は、操舵角を形成しない状態であってもよい。装置100は、図示の中立位置Nでは、復元トルクを与えない。装置100は、中立位置Nにおいて、装置100に外部から操舵力を作用させることなく、力平衡状態となってもよい。
【0059】
装置100は、二輪車フレーム2に装着される軸受装置10を有する。装置100は、二輪車操舵機構のフォークシャフト4に回転不能に結合される結合装置60をさらに有する。結合装置60は、フォークシャフト4の回転軸に対応し得る回転軸Aを有する。このように、装置100は、二輪車フレーム2上の軸受装置10の軸受点と、結合装置60の回転軸Aとの間に配置又は拘束されてもよい。
【0060】
装置100は、復元トルクを与える復元力を蓄えるためのエネルギー貯蔵装置30を有する。結合装置60は、エネルギー貯蔵装置30を介して軸受装置10に接続されている。装置100は、二輪車操舵機構に加えられる、又は二輪車操舵機構から生じる操舵力をエネルギー貯蔵装置30に伝達するように配置された力伝達装置40をさらに有する。
【0061】
力伝達装置40は、回転軸Aに対して偏心した力伝達点P1を有し、この力伝達点P1に操舵力を伝達するために、結合装置60に作動的に接続されている。エネルギー貯蔵装置30上の力伝達装置40の偏心した力伝達点P1と作用点P2とは、特に右への操舵時に、操舵力をエネルギー貯蔵装置30に伝達可能な力作用線Lを形成している。力伝達点P1及び力作用線Lは、特に二輪車操舵機構による操舵が生じた場合に、右への操舵を生じさせるために作用する操舵力をエネルギー貯蔵装置30に伝達し、これに対応する復元力を与えることができるように配置されている。
【0062】
力伝達装置40は、回転軸Aに対して偏心した力伝達点P1’をさらに有し、この力伝達点P1’に操舵力を伝達するために、結合装置60に作動的に接続されている。エネルギー貯蔵装置30上の力伝達装置40の偏心した力伝達点P1’と作用点P2は、特に左への操舵時に、操舵力をエネルギー貯蔵装置30に伝達できる更なる力作用線L’を形成している。更なる力伝達点P1’及び更なる力作用線L’は、特に二輪車操舵機構によって左への操舵がもたらされた場合に、操舵をもたらすために二輪車操舵機構に作用する操舵力を、対応する復元力を保持可能なエネルギー貯蔵装置30へ伝達するために設定される。
【0063】
装置100の図示の中立位置Nにおいて、力作用線Lと、回転軸Aと作用点P2とを通る直線Gとは、180°より小さく、図示の実施形態では90°より小さく、特に鋭角として45°より小さい角度Wを形成している。角度Wは、回転軸A、作用点P2、力伝達点P1で囲まれ、作用点P2において形成される。角度Wは、鋭角であってもよい。また、角度Wは、直線G上で鏡面化され、力伝達点P1’、作用点P2、回転軸Aで囲まれ、作用点P2において角度W’として形成することも可能である。力作用線L、L’は、直線Gに対して対称に配置することができる。また、回転軸Aと力伝達点P1,P1’との間の作用接続部は、直線Gに対して対称に配置することができる。力作用線L、L’及び作用接続部は、三角形又は台形にまたがることができ、それによって台形の場合、互いに離間した2つの作用点がエネルギー貯蔵装置30に作用することができる。
【0064】
図1Bに示す装置100の実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置30は、2つのエネルギー貯蔵要素30’を有する。さらに、装置100は、2つの離間した作用点P2、P2’を有し、これらの作用点を介して、二輪車操舵機構に作用する、又はそれから生じる操舵力を、力伝達装置40によってエネルギー貯蔵装置30に伝達することができる。装置100の図示された中立位置Nにおいて、力作用線L’と、回転軸Aと更なる作用点P2’を通る更なる直線G’は、角度W’を取り囲む。2つのエネルギー貯蔵要素30’のうち一方は、右への操舵時に、操舵力をエネルギー貯蔵装置30に伝達するように配置されている。2つのエネルギー貯蔵要素30’のうち他方は、左への操舵時に、操舵力をエネルギー貯蔵装置30に伝達するように配置されている。本実施形態によれば、結合装置60は、図示しない二輪車フォークであってもよい。エネルギー貯蔵要素30’は、二輪車フォークに引っ掛けることができる引張バネを有することができる。
【0065】
図1bに示す装置100の実施形態によれば、軸受装置10は、2つの軸受要素10’を有する。2つの軸受要素10’は、二輪車フレーム2上に露出して配置されている。軸受要素10’は、フレームチューブに外付けされてもよい。エネルギー貯蔵要素30’は、フレームチューブに取り付けられた軸受要素10’を有することもできる。エネルギー貯蔵要素30’が引張バネを有する場合、これらの引張バネは、フレームチューブから吊り下げられていてもよい。
【0066】
図2及び図3は、一実施形態における装置100を示す。図2は、装置100が中立位置Nにある状態を透視図で示す。図3は、装置100を分解して示す。
【0067】
結合装置60は、クランプリング62を有し、クランプリング62は、クランプネジ63でフォークシャフト4にクランプすることができる。結合装置60には、力伝達要素50が配置され、その上に力伝達点P1が形成される。結合装置60には、更なる力伝達要素50’が配置され、その上に更なる力伝達点P1’が形成される。力伝達要素50、50’は、結合装置60に互いに対向して配置することができる。したがって、力伝達点P1,P1’は、結合装置60に互いに対向して形成することができる。力伝達要素50、50’は、それぞれのカム54、54’として形成することができる。力伝達要素50、50’は、エネルギー貯蔵装置30に面するカム面56、56’を有していてもよい。結合装置60が回転軸Aを中心に回転するとき、力伝達点P1、P1’の少なくとも一方は、カム面56、56’に形成されてもよい。
【0068】
力伝達装置40は、2つの力伝達要素42,42’を有し、これに基づいて、力作用線L,L’が形成される。力伝達要素42,42’は、引張要素43,43’として形成され、二輪車操舵機構によって右又は左への操舵時に、操舵力を引張力としてエネルギー貯蔵装置30に導入する。
【0069】
力伝達装置40は、引張要素43、43’を形成する引張バンド44をさらに有する。引張要素43、43’は、引張バンド44のバンド部によって形成されてもよい。引張バンド44は、一体に形成することができ、少なくともいくつかの領域で力伝達要素50、50’の周囲を走行することができる。引張バンド44は、結合装置60に取り付けてもよく、この場合、引張バンド44は、例えば取付プレート36などの取付要素を介して、結合装置60に、例えば、ネジ止めで取り付けされてもよい。引張バンド44は、エネルギー貯蔵装置30から離れる方向に面する側で結合装置60に取り付けてもよい。
【0070】
また、引張バンド44は、エネルギー貯蔵装置30に取り付けてもよい。エネルギー貯蔵装置30は、2つの引張バネ33を有していてもよい。引張バンド44は、エネルギー貯蔵装置30に接続されるホルダ34に取り付けてもよい。引張バンド44は、取付要素、例えば、取付プレート36を介して、ホルダ34に、例えばネジ止めで取り付けることができる。引張バンド44が一体的に形成されている場合、引張バンド44は、バンド重なり領域46でホルダ34にネジ止めされてもよい。
【0071】
ホルダ34は、2つのネジ山38を有してもよく、そこに、コイルバネとして設計された引張バネ33をネジ込むことができる。引張要素43、43’は、離間して引張バネ33と係合し、引張バンド44は、エネルギー貯蔵装置30と力伝達要素42、42’との間で台形に広がっていてもよい。
【0072】
軸受装置10は、円筒状のレセプタクル26内に配置された偏心体22を有してもよく、この偏心体22は、例えば偏心ネジ接続などのセンタリング手段16を介してレセプタクル26内に偏心して取り付けてもよい。軸受装置10は、偏心体22がセンタリング手段16に対して偏心して回転することができる作動機構20を有することもできる。この目的のために、軸受装置10は作動レバー24を有することができ、作動レバー24は、偏心体22の係合領域14を介して、偏心体22のセンタリング手段16に対して偏心して形成された偏心係合領域23に係合することができる。偏心体22は、偏心係合領域23に係合領域14が積極的に係合することにより、作動レバー24を介して回転させることができる。作動レバー24は、二輪車フレーム2に取り付け可能な軸受ピン28を有することができる。偏心体22を回転させることで、レセプタクル26を二輪車フレーム2に対して相対的に移動させることができる。偏心体22の回転中、係合領域14は、レセプタクル26に配置することができるガイド溝12に沿って移動又は案内することができる。
【0073】
エネルギー貯蔵装置30は、レセプタクル26に取り付けることができる。エネルギー貯蔵装置30が引張バネ33を有する場合、二輪車フレーム2に対するレセプタクル26の相対移動により、引張バネ33にプレストレスを伝達することができる。引張バネ33は、レセプタクル26に配置されたネジ山38によって固定されてもよい。レセプタクル26の移動は、作動レバー24の係合領域14を受けるガイド12によって案内されてもよい。したがって、中立位置Nにおいて、エネルギーは既にエネルギー貯蔵装置30に伝達されるか、又はハンドルシャフト4に安定化力を伝達するために引張バネ33に引張応力を発生させることができる。
【0074】
図4及び図5は、直線Gに沿った断面における装置100を示す。図4において、軸受装置10のレセプタクル26は、偏心体22の回転位置によって結合装置60と反対方向に変位した位置にあるのを示し、この位置でエネルギー貯蔵装置30の引張バネ33にプレストレスが生じている。図5において、軸受装置10のレセプタクル26は、偏心体22の結合装置60の方向への回転位置によって変位した位置にあり、エネルギー貯蔵装置30の引張バネ33が図4に示すプレストレス状態に比べて緩和された状態である。図5に示す状態は、組立状態であっても緩和状態Eであってもよく、そこでは、引張バネ33のプレストレスが、図4に示す引張バネ33のプレストレス状態と比較して低減又は除去されている。
【0075】
図6は、図4に示したエネルギー貯蔵装置30の引張バネ33のプレストレス状態における装置100を上面図で示す。装置100は中立位置Nにあり、この位置では、力伝達点P1、P1’から始まって引張バネ33上の共通の作用点P2までの引張要素43、43’は、長さが等しく、引張応力が等しい状態である。力伝達点P1,P1’は、カム54,54’又は力伝達要素50,50’にそれぞれ対称に形成されている。力伝達点P1、P1’は、カム54、54’のそれぞれの最大半径上に形成されている。
【0076】
図7は、図6に示す状態と比較して変化させた状態における装置100を上面図で示す。図7に示す状態では、結合装置60は、設定された右への操舵によって右方向に回転する。この状態では、図6に示す状態と比較して、2つの引張要素43、43’がまだ引張応力を受けており、引張バネ33が曲げ応力を受けている。復元トルクは、図6図7の状態の間で漸増的に蓄積される。復元トルクは、図6の中立位置Nから直接、漸増的に蓄積することができる。
【0077】
図8は、図7に示す状態と比較して、さらに変更した状態における装置100を上面図で示す。図8に示す状態では、結合装置60は、大きな右への操舵によって、さらに右に回転している。この状態では、引張要素43、43’のうち引張要素43のみが、引張応力を受ける。引張応力を受けない引張要素がバンドである場合、このバンドは、弛んでいることがある。引張バネ33は、図6に示す状態と比較して、より強い引張応力を受ける。
【0078】
図9は、図8に示す状態と比較して、さらに変更した状態における装置100を上面図で示す。図9に示す状態では、図8に示す状態と比較して、結合装置60は、さらに大きな右への操舵によって、さらに右に回転されている。この状態では、力伝達点P1は力伝達要素50上又はカム面56上で変位しており、その結果、力伝達点P1はカム54の半径の小さい部分に形成されている。そのため、力の伝達が変化し、復元トルクが漸減的に蓄積するように変化することがある。引張バネ33は、図8に示す状態と比較して、より強い引張応力を受ける。
【0079】
図10は、装置100を組み立てた状態で示す。結合装置60は、クランプリング62を介してフォークシャフト4に取り付けられる。結合装置60は、二輪車フレーム2のヘッドチューブ6に一体的に配置されている。軸受装置10は、軸受ピン28を介して二輪車フレーム2のトップチューブ8に取り付けられる。図示の実施形態では、軸受ピン28は、さらに、二輪車フレーム2のダウンチューブ9に取り付けられる。装置100は、二輪車フレーム2と一体化した状態で搭載される。力伝達装置40は、二輪車フレーム2に一体化されており、力伝達装置40は、ヘッドチューブ6及びトップチューブ8に一体的に配置されていてもよい。作動レバー24は、中立位置Nにおいて、エネルギー貯蔵装置30にエネルギーを伝達する装置100の唯一の構成要素として、二輪車フレーム2から突出していてもよい。
【0080】
図11及び図12は、更なる実施形態における装置100を示す。図11は、装置100が中立位置Nにある状態を透視図で示したものである。図12は、装置100を分解して示す。
【0081】
図11及び図12に示す装置100の実施形態は、力伝達装置40の設計、エネルギー貯蔵装置30の設計及び軸受装置10の設計が、図2図10に示す装置100の実施形態と異なる。
【0082】
図2図10に示す実施形態の力伝達装置40に対して、図11及び図12に示す実施形態の力伝達装置40は、作用点P2においてエネルギー貯蔵装置30に作用する引張要素43、43’を有しており、エネルギー貯蔵装置30と力伝達要素42、42’との間の引張バンド44が三角形として広がることが可能である。
【0083】
図2図10に示す実施形態のエネルギー貯蔵装置30に対して、図11及び図12に示す実施形態のエネルギー貯蔵装置30は、コイルバネとして設計された圧縮バネ32を有する。圧縮バネ32は、左又は右への操舵時に、押圧ロッド39を介して圧縮を受けることができる。押圧ロッド39はバンド44に接続されているので、バンド44に引張応力がかかると、押圧ロッド39に引張応力がかかり、圧縮バネ32が圧縮される。圧縮バネ32は、軸受装置10に接続されるバネケージ35に配置されてもよい。押圧ロッド39は、バネケージ35上で案内されてもよい。
【0084】
図2図10に示すエネルギー貯蔵装置30の実施形態とは対照的に、図11及び図12に示す実施形態の軸受装置10は、例えば六角などの工具で作動可能な作動要素25を有している。偏心体22は、ガイド12を有し、このガイド12は、偏心体22の回転を制限するための停止体を有してもよい。
【符号の説明】
【0085】
2:二輪車フレーム
4:フォークシャフト
6:ヘッドチューブ
8:トップチューブ
9:ダウンチューブ
10:軸受装置
10’:軸受要素
12:ガイド溝
14:係合領域
16:センタリング手段
20:作動機構
22:偏心体
23:偏心係合領域
24:作動レバー
25:作動要素
26:レセプタクル
28:軸受ピン
30:エネルギー貯蔵装置
30’:エネルギー貯蔵要素
31:バネ
32:圧縮バネ
33:引張バネ
34:ホルダ
35:バネケージ
36:取付プレート
38:ネジ山
39:押圧ロッド
40:力伝達装置
42,42’:力伝達要素
43,43’:引張要素
44:引張バンド
46:バンド重なり領域
50,50’:力伝達要素
54,54’:カム
56:カム面
60:結合装置
62:クランプリング
63:クランプネジ
100:装置
E:緩和状態
G,G’:直線
L,L’:力作用線
N:中立位置
P1,P1’:力伝達点
P2,P2’:作用点
W,W’:角度
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12