(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】炭素-またはグラファイト発泡体部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20240703BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240703BHJP
C01B 32/205 20170101ALI20240703BHJP
C04B 38/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C04B38/00 304Z
C01B32/05
C01B32/205
C04B38/02 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097470
(22)【出願日】2022-06-16
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】10 2021 116 378.1
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2021 132 040.2
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522242292
【氏名又は名称】ニッポン・コルンマイヤー・カーボン・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・コルンマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ゲラーツ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104310373(CN,A)
【文献】特開2009-173540(JP,A)
【文献】特開2004-217446(JP,A)
【文献】特開平03-187985(JP,A)
【文献】特開昭63-209837(JP,A)
【文献】特開平07-277719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C04B 38/00-38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空または保護ガス下での高温断熱のための、
断熱材料としての、またはフィルター材料としての、高い純度を有する炭素-またはグラファイト発泡体部品を製造するための方法であって、
乾燥した発泡性デンプン(1)を、頂部が解放された、円形または角形の断面を有する容器(2)に、容器(2)の底面(3)がデンプン(1)
で均一に覆われ、容器
(2
)が
10%~30%まで部分的に満たされるまで、入れること、
デンプン(1)で部分的に満たされた容器(2)をオーブン(4)内に入れ、容器(2)を
200℃以上の発泡温度
に、170℃~200℃の温度範囲では漸増させて、加熱して、容器(2)が炭素発泡体(6)で完全に満たされるまでデンプン(1)を発泡させること、
容器(2)をオーブン(4)から取り
、炭素発泡体(6)を
炭素発泡体(6)の冷却後に取り出すこと、および
取り出した炭素発泡体(6)を、炭素発泡体部品(6.1)に分けること、
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
デンプン(1)として、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、米デンプンまたはジャガイモデンが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オーブン(4)内でのデンプン(1)の発泡プロセスの間に、水蒸気が供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
デンプン(1)の発泡が、8時間を超える時間にわたって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
発泡が、それぞれが12時間までの10℃ずつのステップで行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
炭素発泡体部品(6.1)が、真空において1000℃以上の温度で炭化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
炭素発泡体部品(6.1)が、
少なくとも1,700℃の温度で黒鉛化されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
黒鉛化のための炭素発泡体部品(6.1)の熱処理が、>500mbarの
圧力で行われることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
炭素発泡体部品(6.1)が、黒鉛化のための熱処理の前に、当該熱処理の間に揮発性成分を揮発させるために、真空炉内で平坦な加熱勾配を用いて500℃以下に予熱されることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
黒鉛化された炭素発泡体部品(6.1)を、オーブン(4)において、>1,200℃の温度で、30mbarの圧力で、キャリアガスとしてのアルゴンと共にSiOを供給しながら、SiCに変換することを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
変換温度が
1,520~1,600℃であることを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
炭素発泡体部品(6.1)が
アルミニウム箔、または紙、
またはオーブンシートまたは布で覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
炭素発泡体部品(6.1)にPVA接着剤を含浸させることを特徴とする、請求項1または
10に記載の方法。
【請求項14】
前記断熱材料またはフィルター材料が、立方体またはプレートの形態で製造されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空または保護ガス下での高温断熱のための、断熱材料としての、またはフィルター材料としての、高い純度を有する炭素-またはグラファイト発泡体部品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素-またはグラファイト発泡体を、合成樹脂、例えばフェノール樹脂またはウレタン樹脂から、これらの樹脂を発泡させ、加熱することにより、製造できることは公知である(US3121050(特許文献1)、US3342555(特許文献2)、US3302999(特許文献3))。このような炭素発泡体の主な欠点は、加熱中の低い炭化速度のために、最大75%まで樹脂発泡体の収縮が生じ得ることである。従って、正確にフィットする炭素-またはグラファイト発泡体部品を製造することは困難である。さらに、フェノール樹脂およびウレタン樹脂は、部分的に毒性のもしくは危険な出発物質、例えばホルムアルデヒドとの化学反応の生成物である。
【0003】
加熱時の収縮を少なくとも低減するために、フェノール-またはウレタン樹脂発泡体に、グラファイトまたはカーボンブラックを添加することができるが、これは、添加剤の高い密度のために比較的重い樹脂発泡体をもたらす。
【0004】
従って、DE2231454A(特許文献4)では、フェノール-またはウレタン樹脂に中空の炭素マイクロビーズを添加し、混合物を発泡させ、次いで発泡体を加熱して、炭化または黒鉛化をもたらすことを提案している。その結果、収縮が減少し、高い強度を有する炭素-またはグラファイト発泡体が得られる。
【0005】
しかしながら、このような炭素-またはグラファイト発泡体の製造は、非常に複雑かつ高価であり、従って、大規模な用途にはあまり適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US3121050
【文献】US3342555
【文献】US3302999
【文献】DE2231454A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、真空または保護ガス下での高温断熱のための、またはフィルター用途のための、または断熱材料、航空機構造としての、または宇宙航空学における、炭素-またはグラファイト発泡体部品を、安価に、高精度で製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の根底にある当該課題は、真空または保護ガス下での高温断熱のための、断熱材料としての、またはフィルター材料としての、炭素-またはグラファイト発泡体部品を製造する方法において、
乾燥した発泡性デンプンを、頂部が解放された、円形または角形の断面を有する容器に、当該容器の底面がデンプンで十分かつ均一に覆われるまで入れること、
デンプンで部分的に満たされた容器をオーブン内に入れ、前記容器を少なくとも約170℃の発泡温度に数時間という比較的長い時間にわたって加熱して、前記容器が炭素発泡体で完全に満たされるまで前記デンプンを発泡させること、
前記炭素発泡体で満たされた容器をオーブンから取り、十分に冷却した後、前記炭素発泡体を取り出すこと、および
前記炭素発泡体を、炭素発泡体部品に分けること、
によって解決される。
【0009】
前記方法の結果、十分な寸法安定性を有し、残留元素の量が非常に少なく、残留元素の典型的な含有量が<20ppmである、褐色を帯びた炭素発泡体部品が生成する。
【0010】
実現することが特に容易であるこの方法では、任意の大きさの(褐色を帯びた)炭素発泡体部品を、立方体またはプレートの形態で製造することができる。これらの炭素発泡体部品はまた、機械的に(例えば、のこぎり、ドリル等により)容易に加工することができる。特に、炭素発泡体プレートは、型として、高い直方体形態で頂部が解放された、小さい底面積を有する容器を用いて、特に容易に製造することができる。
【0011】
あるいは、もちろん、本発明による方法で製造された炭素発泡体立方体を、のこぎりまたは他の加工方法、例えばレーザー-もしくはウォータージェット切断によって、炭素発泡体プレートまたは他の構造部品に分割または変形することもできる。
【0012】
好ましくは、炭素発泡体部品の製造のために、デンプンとして、トウモロコシ-または小麦デンプンを使用されるが、タピオカデンプン、ジャガイモデンプンまたは他の発泡性デンプン、例えば米デンプンも使用することができ、異なるコンシステンシーを有する炭素発泡体部品を製造することができる。ここで使用される粒状化トウモロコシデンプンは、高い純度を有するべきであり、残留元素(外的元素)の量は約300ppmを超えるべきではない。
【0013】
オーブン内でのデンプンの発泡プロセスの間に、水蒸気を供給して、炭素発泡体部品の最終構造に影響を及ぼすこともでき、水蒸気は容易に、発泡プロセスの間にオーブン中に一緒に置かれる水で満たされたビーカーによって容易に生成することができる。
【0014】
型から泡立ってあふれるのを避けるために、型は約20%までデンプンで満たすことが適切である。
【0015】
本発明の一実施態様において、デンプンの発泡は、型が発泡体で完全に満たされるまで、数時間の期間、例えば8時間を超える期間にわたって行われる。
【0016】
本発明の一実施形態では、発泡温度は200℃以上であってよく、時間の長さおよび温度は炭素発泡体部品の密度に影響を及ぼし、より高い温度は炭素発泡体のより発泡した状態をもたらす。
【0017】
デンプン、例えば小麦デンプンの発泡は、170℃~200℃の温度範囲で、好ましくは10℃ずつのステップ(これらはそれぞれ数時間にわたって、例えばそれぞれ12時間まで保持される)で、漸増させて行うこともできる。それにより、特に小麦デンプンを特に均質に発泡させることができる。
【0018】
本発明の特定の実施形態では、炭素発泡体部品は、後処理において、真空炉内で、真空中で1000℃以上の温度で炭化される。
【0019】
このようにして製造された炭素発泡体部品は、1,700℃~2,400℃を超える温度で、真空中で問題なく黒鉛化することができる。
【0020】
特に、炭化または黒鉛化のための炭素発泡体部品の熱処理は、>500mbarの圧力で、好ましくは約1013mbarの大気圧で行われる。
【0021】
炭素発泡体部品が、炭化または黒鉛化のための熱処理の前に、さらなる熱処理の前に揮発性成分を揮発させるために、真空炉内で平坦な加熱勾配(flachen Heizrampe)を用いて約500℃に予熱されることが有利である。これにより、発泡体部品における亀裂の発生を防止することができる。
【0022】
より良好な取り扱い性のために、炭素発泡体部品は、有機材料、例えば紙、オーブンシート(Backpapier)または布で覆うことができ、あるいは、表面にPVA接着剤を含浸させることができる。
【0023】
褐色を帯びた炭素発泡体部品はまた、アルミニウム箔で覆うこともでき、この場合、炭化または黒鉛化によるさらなる処理は不可能である。これに対して、有機材料で覆われた炭素発泡体部材は、熱的にさらに処理することができる。
【0024】
前記の覆われたまたは含浸された発泡体部品は、それらの取扱いにおいて、摩耗が少ししか生じないか、またはほとんど生じないという利点を有する。
【0025】
本発明の特定の実施態様は、黒鉛化炭素発泡体部品を、オーブンで、>1,200℃の温度で、30mbarの圧力で、キャリアガスとしてのアルゴンと共にSiOを供給しながら、問題なくSiC-発泡体部品に変換することにある。このプロセスのために好ましい変換温度は、1,520℃以上約1600℃までである。
【0026】
そのようにして製造された炭素-、グラファイト-またはSiC-発泡体部品は、建物用の断熱材として、航空機構造においてまたは宇宙航空学において特に好適であり、真空または保護ガス下での高温断熱材としての使用もまた非常に良好に可能である。
【0027】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。添付の図面において以下を示す:
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】高純度グラファイト発泡体の製造方法の詳細;
【
図2】例えば7×35×20cmの寸法を有する、型で製造された炭素発泡体プレート;
【
図3】のこぎりで切断したグラファイト発泡体プレートの構造;
【
図4】より黒みがかった構造(デンプンが最初にあった領域である)を下に、ならびにその上にある発泡領域の構造を有するグラファイト発泡体プレート。右側の小さい図は、ベース構造ならびに発泡領域(矢印)を示す;
【
図5】例えばアルミニウム箔で覆われたグラファイト発泡体プレート;および
【
図6】>2,000℃での高温処理後のグラファイト様発泡体。
【0029】
図2~
図6は、それぞれ2つの画像、すなわち、全面的に実物に対応する画像と、構造を明確に強調させたさらなる画像とを含む。
【実施例】
【0030】
真空または保護ガス下での高温断熱のための、
断熱材料としての、またはフィルター材料としての、高い純度を有する炭素-またはグラファイト発泡体部品の製造は、乾燥した発泡性デンプン1を、頂部が解放された、円形または角形の断面を有する容器2(型)に、容器2の底面3がデンプン1で十分かつ均一に覆われるまで、該容器がデンプン1で約20%まで、すなわち10%~30%満たされるまで、入れることによって容易に行われる。好ましくは、炭素発泡体部品の製造のために、デンプンとして、トウモロコシ-または小麦デンプンを使用することができるが、タピオカデンプン、ジャガイモデンプンまたは他の発泡性デンプンをベースとする材料、例えば米デンプンも使用することができる。
図1は、高い純度を有する炭素発泡体6を製造するためのプロセス過程の詳細を示す。
【0031】
次に、デンプン1で部分的に満たされた容器2をオーブン4に入れ、そこにおいて容器2の加熱により>180℃の発泡温度にし、当該温度を、容器2が炭素発泡体6で完全に満たされるまで、デンプンの発泡のために数時間という比較的長い時間にわたって保持する。
【0032】
オーブン4内でのデンプン1の発泡プロセスの間に、水蒸気を供給して、炭素発泡体6またはそこから製造される炭素発泡体部品6.1の均質な最終構造を得ることもでき、水蒸気は容易に、発泡プロセスの間にオーブン4中に一緒に置かれる水で満たされたビーカー5によって容易に生成することができる。
【0033】
この発泡プロセスの持続時間は、とりわけ、炭素発泡体6で満たされるべき容器2のサイズに依存しており、数時間、任意選択的に、8時間まで続くことができる。
【0034】
デンプン、例えば小麦デンプンの発泡は、170℃~200℃の温度範囲で、好ましくは10℃ずつのステップ(これらはそれぞれ数時間にわたって、例えばそれぞれ12hまで保持される)で、漸増させて行うこともできる。それにより、特に小麦デンプンを特に均質に発泡させることができる。
【0035】
図4は、発泡プロセスの進行を一目瞭然に示しており(上方に向かって指す矢印を参照。これは発泡領域を記号で表す)、炭素発泡体6の下部領域において、元々容器2に導入されたデンプン1が、ベース構造7として認められる。
【0036】
炭素発泡体6で満たされた容器2を、十分な冷却の後に、オーブン4から取り、褐色を帯びた炭素発泡体部品6.1を該容器2から取り出すことができる(
図2)。引き続き、取り出した炭素発泡体部品6.1を適切な切断方法、例えばのこぎり、ウォータージェット切断またはレーザー切断によって、任意の構造部品に変形することができる(
図3)。
【0037】
より良好な取り扱い性のために、炭素発泡体部品6.1は、有機被覆8、例えば紙、オーブンシート、またはプラスチックまたは布で覆うことができ、あるいは、表面にPVA接着剤を含浸させることができる(
図5)。
【0038】
アルミニウム箔を用いた褐色を帯びた炭素発泡体部品6.1の被覆8も可能であるが、ただしこれは熱的なさらなる処理、例えば、黒鉛化を不可能にし、なぜならそのために必要な温度ではアルミニウムが溶融するからである。
【0039】
覆われたまたは含浸された炭素発泡体部品6.1の特別な利点は、それらの取扱いにおいて、摩耗が少ししか生じないか、またはほとんど生じず、その結果、炭素発泡体部品6.1ははるかに良好に取扱いが可能である点に見られる。
【0040】
デンプン1で部分的に充填する前に、最初にアルミニウム箔で容器2の内側を覆い、デンプン1の発泡時に同時に、アルミニウム箔への表面的結合が生じることにより、アルミニウム箔による被覆を特に容易な方法で実施することができる。アルミニウム箔は炭素発泡体部品6.1には付着するが、容器2には付着しないので、発泡し、アルミニウム箔で被覆された炭素発泡体部品6.1は、より容易に容器2から取り出すことができる、という点にさらなる利点が見られる。
【0041】
炭素発泡体部品6.1のグラファイト発泡体9への安定化は、必須ではないが、可能である。その際、黒鉛化は、高すぎる真空下で行われるべきではなく、なぜなら、さもなければ、炭素発泡体部品6.1は破裂することがあり、同時に、黒鉛化温度に達するまでゆっくりとした加熱傾斜が有利なためである。
図6は、真空下、>2,000℃での高温処理後のグラファイト発泡体部品9を示す。
【0042】
炭素発泡体部品6.1では、黒鉛化の際に、ガスが材料から拡散し、当該ガスが真空下でより迅速に拡散すると、裂け目または破損が生じ得る。いずれにせよ、真空下での裂け目または破損の発生の危険性は、より高い圧力下の場合よりも大きい。
【0043】
この理由から、黒鉛化は、>500mbarの圧力、例えば750mbarで行われ、この圧力では構造が安定であり(ただし、より高い圧力、例えば1013mbarでの標準圧力もまた有利であり得る)、1000℃以上の温度(炭化)で、および1,700℃~2,400℃を超える温度(黒鉛化)で行われ得る。
【0044】
このようにして製造されたグラファイト発泡体プレート9は、同様に、種々の被覆8、例えばアルミニウム箔または紙、オーブンシート、布、プラスチック箔で覆うことができ、あるいは、PVA接着剤(木工用接着剤(Holzleim))を含浸させることもできる。
【0045】
上記の方法に従って製造された炭素発泡体部品6.1、あるいは前記の炭化された炭素発泡体部品または前記のグラファイト発泡体部品9は、多くの用途の場合に適している。
【0046】
例えば、プレートの形態の、本発明により製造された炭素発泡体部品6.1または黒鉛発泡体部品9は、非常に良好に建物等のための断熱材として使用するため適している。
【0047】
炭素発泡体部品6.1の製造に使用される型の内側をアルミニウム箔で覆い、引き続きその中で炭素発泡体6が製造されると、アルミニウム箔が発泡体上にしっかりと固着する。
【0048】
本発明に従って製造された炭素発泡体部品6.1は、炭化後、真空または保護雰囲気下での高温断熱材として使用することができる。
【0049】
炭素発泡体部品6.1の黒鉛化後、これを炭化ケイ素発泡体部品に容易に変換することもでき、これは、SiCへの変換後、約1,500℃までの温度で酸化性雰囲気中で使用することができる。
【0050】
SiCへの変換は、オーブン4において、>1200℃の温度で、30mbarの圧力において、キャリアガスとしてのアルゴンとともにガス状SiOの供給下で行われ、それによってSiCが形成される。このプロセスに好ましい温度は1520℃である。
【0051】
グラファイト発泡体部品9のSiC発泡体部品への変換は、950mbarのような高圧でも行うことができる。実際に使用される圧力が、変換の均一性および速度に影響を及ぼす。
【0052】
SiC発泡体部品の利点は、それらがグラファイト発泡体部品9から容易かつ安価に製造されること、それらが断熱材料として良好な断熱値を有すること、およびそれらが簡単に加工できることに認められる。
【0053】
グラファイト発泡体部品9またはSiC発泡体部品の格別の利点は、それらが耐火性であること、およびSiC発泡体部品の製造には有機原料が使用されることに認められる。
【0054】
SiC発泡体部品の欠点は、それらが容易に砕けることであるが、これは上記のような適切な被覆によって回避することができる。
【0055】
炭化ケイ素(SiC)-発泡体部品は、多様に使用可能であり、すなわち、建物用の断熱材料として、真空/不活性ガス下で約2,500℃までの、および酸化性雰囲気下で1,500℃までの高温システム用の断熱として使用することができ、他方、グラファイト発泡体は、真空/不活性ガス(アルゴン)下で約3,000℃まで使用可能である。
【0056】
さらに、前記の炭化ケイ素発泡体部品は、低い重量のために、航空学および宇宙航空学のための断熱材料としての使用に特に適している。
【0057】
グラファイト発泡体部品9は、高い多孔性のために、フィルターとしても良好に適している。
【0058】
炭素-またはグラファイト発泡体部品の製造方法
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.真空または保護ガス下での高温断熱のための、絶縁材料としての、またはフィルター材料としての、高い純度を有する炭素-またはグラファイト発泡体部品を製造するための方法であって、
乾燥した発泡性デンプン(1)を、頂部が解放された、円形または角形の断面を有する容器(2)に、容器(2)の底面(3)がデンプン(1)で十分かつ均一に覆われ、容器2が10%超まで満たされるまで、入れること、
デンプン(1)で部分的に満たされた容器(2)をオーブン(4)内に入れ、容器(2)を>180℃の発泡温度に数時間の比較的長い時間にわたって加熱して、容器(2)が炭素発泡体(6)で完全に満たされるまでデンプン(1)を発泡させること、
容器(2)をオーブン(4)から取り、十分な冷却後に、炭素発泡体(6)を取り出すこと、および
炭素発泡体(6)を、炭素発泡体部品(6.1)に分けること、
を特徴とする、前記方法。
2.デンプン(1)として、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、米デンプンまたはジャガイモデンが使用されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.オーブン(4)内でのデンプン(1)の発泡プロセスの間に、水蒸気が供給されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
4.容器(2)がデンプン(1)で10%~30%満たされることを特徴とする、上記1に記載の方法。
5.デンプン(1)の発泡が、8時間を超える時間にわたって行われることを特徴とする、上記1に記載の方法。
6.デンプン(1)のための発泡温度が200℃以上であることを特徴とする、上記1に記載の方法。
7.発泡が、170℃~200℃の温度範囲で、好ましくはそれぞれが数時間にわたる10℃ずつのステップ、例えばそれぞれが12時間までの10℃ずつのステップで、漸増させて行われることを特徴とする、上記1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.炭素発泡体部品(6.1)が、真空において1000℃以上の温度で炭化されることを特徴とする、上記1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.炭素発泡体部品(6.1)が、1,700℃~2,400℃を超える温度で黒鉛化されることを特徴とする、上記1~7のいずれか1つに記載の方法。
10.黒鉛化のための炭素発泡体部品(6.1)の熱処理が、>500mbarの圧力、好ましくは標準圧力で行われることを特徴とする、上記9に記載の方法。
11.炭素発泡体部品(6.1)が、黒鉛化のための熱処理の前に、当該熱処理の間に揮発性成分を揮発させるために、真空炉内で平坦な加熱勾配を用いて500℃以下に予熱されることを特徴とする、上記10に記載の方法。
12.黒鉛化された炭素発泡体部品(6.1)を、オーブン(4)において、>1,200℃の温度で、30mbarの圧力で、キャリアガスとしてのアルゴンと共にSiOを供給しながら、SiCに変換することを特徴とする、上記9~11のいずれか1つに記載の方法。
13.変換温度が約1,600℃であることを特徴とする、上記12に記載の方法。
14.炭素発泡体部品(6.1)が箔、例えばアルミニウム箔、または紙、オーブンシートまたは布で覆われていることを特徴とする、上記1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.炭素発泡体部品(6.1)にPVA接着剤を含浸させることを特徴とする、上記1~13のいずれか1つに記載の方法。
16.上記1~12のいずれか1つに記載の炭素発泡体部品(6.1)またはグラファイト発泡体部品(9)の、断熱材としての使用。
17.上記1~12のいずれか1つに記載の炭素発泡体部品(6.1)またはグラファイト発泡体部品(9)の、真空または保護ガス下での高温断熱材としての使用。
【符号の説明】
【0059】
符号リスト
1 デンプン
2 容器(型)
3 底面
4 オーブン
5 ビーカー
6 炭素発泡体
6.1 炭素発泡体部品
7 ベース構造
8 被覆
9 グラファイト発泡体部品