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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/04 20060101AFI20240703BHJP
   C08L 101/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C09J201/04
C08L101/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022177195
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2021509541の分割
【原出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2023012530
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2019060958
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196669(WO,A1)
【文献】特開平08-109231(JP,A)
【文献】特開2014-014808(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020949(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039587(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111635(WO,A1)
【文献】特開昭59-204676(JP,A)
【文献】特開2019-211770(JP,A)
【文献】特開平09-110909(JP,A)
【文献】特開2011-215366(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C09J 9/00 - 201/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性成分及び重合開始剤を含有し、
前記重合性成分が、ハロゲン元素を含む重合性モノマーと、原子番号が9以上の元素を有しない架橋剤と、を含有し、
前記重合性モノマーの含有量が、前記重合性成分100質量部に対して、50~95質量部であり、
前記架橋剤の含有量が、前記重合性成分100質量部に対して、5~50質量部であり、
硬化体における平均自由体積が0.1nm以下である、接着剤。
【請求項2】
前記硬化体の空孔率が20体積%以下である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記硬化体のガラス転移温度が60℃以上である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記硬化体の架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記硬化体の85℃における比重が1.2~3.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項6】
前記ハロゲン元素が、塩素元素、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される1種以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項7】
前記ハロゲン元素の含有量が、前記重合性モノマーに含まれる元素の総量に対して、10~50質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項8】
前記硬化体の透湿度が0.01~300g/(m・24時間)であり、
前記透湿度は、厚み100μmの前記硬化体について、JIS Z0208に準拠して、温度85℃、相対湿度85%の条件下で測定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項9】
前記硬化体の全光線透過率が95%以上であり、
前記全光線透過率は、波長380~1000nmの領域において測定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。例えば、本発明は、樹脂組成物及びその硬化体、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材、並びに有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示素子や有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた有機光デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着法や溶液塗布法等により簡便に作製できるため、生産性に優れる。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体を有する。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。有機EL表示素子は、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有する。
【0004】
ところが、このような有機EL表示素子は、有機発光材料層や電極が外気に曝されるとその発光特性が急激に劣化し寿命が短くなるという問題があった。したがって、有機EL表示素子の安定性及び耐久性を高めることを目的として、有機EL表示素子においては、有機発光材料層や電極を大気中の水分や酸素から遮断する封止技術が不可欠となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、上面発光型有機EL表示素子等において、有機EL表示素子基板の間に光硬化性の封止剤を満たし、光を照射して封止する方法が開示されている。特許文献2には、有機ELディスプレイにおいて、発光体を封止するフリットガラスからなるシール材を有することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、電子部品等の気密性を要求される包装材料に用いられ得る、少なくともプラスチックフィルムの片面に無機薄膜層を有した透明バリアフィルムに関して無機層を陽電子消滅法で求めるSパラメータの無機薄膜における極大値が0.51以下であることを特徴とする透明バリアフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-357973号公報
【文献】特開平10-74583号公報
【文献】特開2015-42487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載されている封止剤又はシール材においては、防湿性を更に高め、有機EL表示素子に対する十分な信頼性及び耐久性を実現することについて、更なる改善の余地がある。
【0009】
特許文献3に記載されるバリアフィルムは、基材への接着性が不十分であり、基材の凹凸に対する追従性が低いという問題があった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、防湿性に優れ、かつ、基板との接着性に優れた封止材を形成可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、いくつかの側面において下記<1>~<19>を提供する。
<1> 重合性成分及び重合開始剤を含有し、硬化体における平均自由体積が0.1nm以下である、組成物。
<2> 硬化体の空孔率が20体積%以下である、<1>に記載の組成物。
<3> 硬化体のガラス転移温度が60℃以上である、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4> 硬化体の架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上である、<1>~<3>のいずれかに記載の組成物。
<5> 硬化体の85℃における比重が1.2~3.0である、<1>~<4>のいずれかに記載の組成物。
<6> 重合性成分が、原子番号が9以上の元素からなる群より選択される1種以上を含む重合性モノマーを含有する、<1>~<5>のいずれかに記載の組成物。
<7> 上記の元素がハロゲン元素である、<6>に記載の組成物。
<8> ハロゲン元素が、塩素元素、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される1種以上である、<7>に記載の組成物。
<9> 上記の元素の含有量が、重合性モノマーに含まれる元素の総量に対して、10~50質量%である、<6>~<8>のいずれかに記載の組成物。
<10> 重合性成分が、架橋剤を含有する、<1>~<9>のいずれかに記載の組成物。
<11> 硬化体の透湿度が0.01~300g/(m・24時間)であり、透湿度は、厚み100μmの硬化体について、JIS Z0208に準拠して、温度85℃、相対湿度85%の条件下で測定される、<1>~<10>のいずれかに記載の組成物。
<12> 硬化体の全光線透過率が95%以上であり、全光線透過率は、波長380~1000nmの領域において測定される、<1>~<11>のいずれかに記載の組成物。
<13> 有機エレクトロルミネッセンス表示素子の封止剤として用いられる、<1>~<12>のいずれかに記載の組成物。
<14> <1>~<13>のいずれか一項に記載の組成物を含有する接着剤。
<15> <1>~<13>のいずれかに記載の組成物を硬化してなる、硬化体。
<16> <15>に記載の硬化体を含む有機物層を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材。
<17> 無機物層を更に備える、<16>に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材。
<18> 有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、<16>又は<17>に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材と、を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
<19> 基板に、<1>~<13>のいずれかに記載の組成物を付着させて光を照射する工程と、光照射された樹脂組成物を介して、基板と有機エレクトロルミネッセンス表示素子とを貼合する工程と、を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防湿性に優れ、かつ、基板との接着性に優れた封止材を形成可能な組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、他の類似表現においても同様である。単官能(メタ)アクリレートとは、1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートをいう。多官能(メタ)アクリレートとは、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートをいう。
【0015】
一実施形態に係る組成物としては、樹脂組成物が好ましい。
【0016】
<樹脂組成物>
一実施形態に係る樹脂組成物は、重合性成分及び重合開始剤を含有し、当該樹脂組成物の硬化体における平均自由体積が0.1nm以下である。
【0017】
高分子の自由体積を求める手法として、陽電子消滅法が知られている(高分子 42巻 12月号(1993)参照)。一般に、高分子に陽電子(e)を入射させると、陽電子は電子(e)と結合してポジトロニウム(Ps)を生成する。
【0018】
陽電子は電子の反粒子であり、電子と同じ質量を有するが、反対符号の電荷をもつ素粒子である。高分子のようなアモルファス固体中では、陽電子が電子と対を形成することがあり、これがポジトロニウムと呼ばれる。ポジトロニウムが消滅する際に、消滅γ線が二方向に放出される。この消滅γ線強度の時間変化を測定することにより、陽電子の寿命が測定される。
【0019】
ポジトロニウムにはパラポジトロニウムとオルソポジトロニウムがあり、オルソポジトロニウムの平均寿命は140ns程度であるが、物質中の他の電子を奪い取るピックオフ過程を経る場合には1ns~5nsにまで短縮化する。固体内の自由体積空間内にオルソポジトロニウムが存在する際には、その空間の大きさとオルソポジトロニウムの寿命は正の相関関係にあり、オルソポジトロニウムのピックオフ消滅による寿命を測定することにより、空孔サイズの情報を得ることができる。
【0020】
陽電子消滅法とは、ポジトロニウム(Ps)の3/4を占めるオルソポジトロニウム(半径0.1nm、以下、「o-Ps」ともいう)が、高分子の空孔に入り込んだ際の寿命(τ3)を測定することで、高分子の自由体積を求める手法である。o-Psの寿命(τ3)は、o-Psが高分子中に存在する空孔の壁と衝突したときに、o-Psの陽電子(e)と空孔の壁の中の電子(e)が重なる確率で決まり、高分子の空孔が大きいほど、o-Psの寿命(τ3)が長くなる。空孔を無限高さの球状井戸型ポテンシャルと考え、空孔の壁面に厚さΔRの電子層があると仮定して、この電子層とo-Psの波動関数との重なりを計算することによって得られる陽電子(e+)消滅の速度を求めるモデルが、本発明において好適に用いられる。高分子の空孔径Rが0.16~0.8nm程度である場合、o-Psの寿命τ3と空孔径Rとの間で、下記式(1)の関係が成り立つ。
【数1】

[上記式(1)において、τ3は測定したオルソポジトロニウム(o-Ps)の寿命、Rは高分子の空孔径、ΔRは空孔の壁面の厚さを示す。]
【0021】
すなわち、陽電子消滅法を用いた場合、オルソポジトロニウム(o-Ps)の寿命(τ3)を求めることにより、上記式(1)に基づき高分子の空孔径Rが求められる。さらに、求めた高分子の空孔径Rの値から、高分子の平均自由体積(空孔体積)を下記式(2)により算出できる。
平均自由体積=4/3πR (2)
【0022】
陽電子消滅法により解析される自由体積は、樹脂組成物の硬化体を形成する分子鎖に占有されない領域を示しており、樹脂組成物の硬化体を形成する分子鎖が変化した際に、その分子鎖近傍に生ずる体積を反映する。具体的には、陽電子を試料に入射させてから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数密度等に関する情報を非破壊的に観察する手法により求めることが可能である。
【0023】
本発明者らは鋭意検討の結果、重合性成分と重合開始剤とを含有する樹脂組成物について、硬化体の平均自由体積を0.1nm以下とすることにより、防湿性(以下、低透湿性ということもある)に優れ、かつ、凹凸追従性が良好で、ガラス基板等の基板との接着性に優れることを見出した。
【0024】
樹脂組成物における硬化体の平均自由体積は、防湿性に優れ、基板との接着性にも優れた硬化体を得やすくする観点から、好ましくは0.1nm以下、より好ましくは0.095nm以下、更に好ましくは0.09nm以下、特に好ましくは0.085nm以下、尚更好ましくは0.08nm以下であり、好ましくは0.001nm以上、より好ましくは0.003nm以上、更に好ましくは0.005nm以上、特に好ましくは0.01nm以上、尚更好ましくは0.05nm以上である。樹脂組成物の硬化体における平均自由体積は、例えば、モノマーを構成する原子のファンデルワールス半径の大きさに影響を受ける。例えば、後述する重合性モノマー(X)が原子番号9以上の元素を含むことで、上述の好適な平均自由体積が得られやすくなる。
【0025】
硬化体の平均自由体積は、上記の観点から、0.001~0.1nm、0.003~0.1nm、0.005~0.1nm、0.01~0.1nm、0.05~0.1nm、0.001~0.095nm、0.003~0.095nm、0.005~0.095nm、0.01~0.095nm、0.05~0.095nm、0.001~0.09nm、0.003~0.09nm、0.005~0.09nm、0.01~0.09nm、0.05~0.09nm、0.001~0.085nm、0.003~0.085nm、0.005~0.085nm、0.01~0.085nm、0.05~0.085nm、0.001~0.08nm、0.003~0.08nm、0.005~0.08nm、0.01~0.08nm、又は0.05~0.08nmであってもよい。
【0026】
本実施形態に係る樹脂組成物においては、防湿性により優れ、基板との接着性にも優れた硬化体を得やすくする観点から、硬化体における空孔率が、好ましくは20体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下であり、更に好ましくは10体積%以下である。硬化体の空孔率は、好ましくは0体積%以上であり、より好ましくは1体積%以上である。硬化体の空孔率は、陽電子の寿命を非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ1、τ2、τ3とし、それに応じた強度をI1、I2,I3(I1+I2+I3=100%)としたときに、次の式(3)により定義される。
空孔率(体積%)=I3/(I1+I2+I3) (3)
【0027】
本実施形態に係る樹脂組成物が含有する重合性成分は、重合性官能基を有する化合物を含有する。重合性成分は、硬化体の平均自由体積が0.01nm以下となるような成分であれば限定されない。一実施形態において、重合性成分は、原子番号が9以上の元素からなる群より選択される1種以上を含む重合性モノマー(以下、重合性モノマー(X)ともいう。)を含有する。なお、重合性モノマーとは、重合性官能基を有するモノマーである。
【0028】
重合性モノマー(X)に含まれる、原子番号が9以上の元素は、原子番号が53以下の元素、又は35以下の元素であってもよい。原子番号が9以上の元素は、好ましくはハロゲン元素である。ハロゲン元素は、好ましくは、塩素元素、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される1種以上であり、より好ましくは、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される1種以上である。
【0029】
重合性モノマー(X)が、原子番号が9以上の元素を含む場合、原子番号が9以上の元素の数は、モノマー1分子あたり、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。原子番号が9以上の元素の数の上限は特に限定されないが、モノマー1分子あたり、例えば40以下であってよく、30以下であってもよい。
【0030】
重合性モノマー(X)における、原子番号が9以上の元素の含有量は、重合性モノマー(X)に含まれる元素の総量に対して、好ましくは10~50質量%である。原子番号が9以上の元素の含有量は、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。当該元素の含有量が10質量%以上であることにより、硬化体が低透湿となり、防湿性に更に優れる。原子番号が9以上の元素の含有量は、重合性モノマー(X)に含まれる元素の総量に対して、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。当該元素の含有量が50質量%以下であることにより、樹脂組成物の硬化性が優れる。
【0031】
上記の観点から、重合性モノマー(X)における、原子番号が9以上の元素の含有量は、重合性モノマー(X)に含まれる元素の総量に対して、15~50質量%、20~50質量%、10~45質量%、15~45質量%、20~45質量%、10~40質量%、15~40質量%、又は20~40質量%であってもよい。
【0032】
重合性モノマー(X)における重合性官能基は、好ましくは、カチオン重合性官能基及び/又はラジカル重合性官能基である。カチオン重合性官能基としては、グリシジルエーテル基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。エポキシ基は、脂環式エポキシ基であってもよい。ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基からなる群の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。重合性モノマー(X)としては、重合性官能基を1個有するモノマーが好ましい。
【0033】
重合性モノマー(X)がカチオン重合性官能基を有する化合物である場合、重合性モノマー(X)としては、ブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、臭素化クレジルグリシジルエーテル等のハロフェニルグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
重合性モノマー(X)がラジカル重合性官能基を有する化合物である場合、重合性モノマー(X)としては、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、トリフルオロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、トリクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモロフェニル(メタ)アクリレート等のハロフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
重合性成分中の重合性モノマー(X)の含有量は、重合性成分100質量部に対して、好ましくは50~95質量部、より好ましくは52.5~85質量部、更に好ましくは55~80質量部である。重合性モノマー(X)の含有量が50質量部以上であれば、硬化体がより低透湿となり、95質量部以下であれば硬化性に優れる。
【0036】
重合性成分は、他の一実施形態において、架橋剤(Y)を含有する。架橋剤(Y)は、重合性官能基を2個以上有する化合物であって、上述した重合性モノマー(X)以外の化合物(架橋性化合物)である。架橋剤(Y)は、カチオン重合性官能基を有する化合物、及び/又はラジカル重合性官能基を有する化合物であってよい。
【0037】
カチオン重合性基を有する化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、カチオン重合性ビニル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0038】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する脂環式化合物、エポキシ基を有する芳香族化合物、ジグリシジルエーテル化合物、オキセタン化合物、カチオン重合性ビニル化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0039】
エポキシ基を有する脂環式化合物(以下、脂環式エポキシ化合物ということもある)としては、少なくとも1個のシクロアルカン環(例えば、シクロへキセン環、シクロペンテン環、ピネン環等)を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物又はその誘導体が挙げられる。または、脂環式エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等)を水素化して得られる水素化エポキシ化合物等も挙げられる。これらの化合物は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0040】
脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等)、(3、3’、4、4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
脂環式エポキシ化合物の中では、1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物の中では、下記式(A1-1)で表される化合物が好ましい。
【化1】

[式(A1-1)中、R11は単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示し、連結基は、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、又は、これらが複数個連結した基である。]
【0042】
11は連結基が好ましい。連結基の中では、エステル結合を有する官能基が好ましい。これらの中では、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0043】
脂環式エポキシ化合物の分子量は、低透湿性や保存安定性の点で、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下が更に好ましく、300未満が一層好ましく、100~280が尚更好ましい。
【0044】
脂環式エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、脂環式エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
・溶媒(移動相):THF
・脱気装置:ERMA社製ERC-3310
・ポンプ:日本分光社製PU-980
・流速:1.0ml/min
・オートサンプラ:東ソー社製AS-8020
・カラムオーブン:日立製作所製L-5030
・設定温度:40℃
・カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumnMP(×L)6.0mmID×4.0cm 2本、及び東ソー社製TSK-GELMULTIPORE HXL-M 7.8mmID×30.0cm 2本、計4本
・検出器:RI 日立製作所製L-3350
・データ処理:SIC480データステーション
【0045】
エポキシ基を有する芳香族化合物(以下、芳香族エポキシ化合物ということもある)としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用可能であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、これらの変性物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、下記式(A2-1)で表される化合物が好ましい。
【化2】

[(A2-1)中、nは0.1~30の実数を示し、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素原子数1~5のアルキル基を表す。]
【0046】
21、R22、R23、R24は、水素原子又はメチル基が好ましい。R21、R22、R23、R24は、互いに同一の原子又は基であることが好ましい。
【0047】
ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0048】
芳香族エポキシ化合物の分子量は、硬化体の低透湿性等の点で、100~5000が好ましく、150~1000がより好ましく、200~450が更に好ましい。
【0049】
芳香族エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、芳香族エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により上述した測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0050】
ジグリシジルエーテル化合物としては、アルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等)、多価アルコールのポリグリシジルエーテル(例えば、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等)が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の脂肪族系が挙げられる。
【0051】
オキセタン化合物としては、特に限定されないが、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT-121等)、ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(同OXT-221等)等が挙げられる。架橋剤(Y)に用いられるオキセタン化合物は、分子内に2個以上のオキセタン環を有する化合物である。
【0052】
カチオン重合性ビニル化合物としては、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。ビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0053】
カチオン重合性基を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーの何れもが使用できる。
【0054】
ラジカル重合性基を有する化合物は、(メタ)アクリレート化合物、アリル化合物、ラジカル重合性ビニル化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種以上を選択して使用してもよい。ラジカル重合性基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましく用いられ、フッ素原子を有しない(メタ)アクリレート化合物がより好ましく用いられる。
【0055】
(メタ)アクリレート化合物としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
アリル化合物としては、トリアリル(メチル)シラン等が挙げられる。
【0057】
ラジカル重合性ビニル化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。ラジカル重合性ビニル化合物は、ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物等であってもよい。
【0058】
重合性成分中の架橋剤(Y)の含有量は、重合性モノマー100質量部に対して、好ましくは5~60質量部、より好ましくは7.5~55質量部、更に好ましくは10~50質量部である。架橋剤(Y)の含有量が5質量部以上であれば優れた硬化性が得られ、60質量部以下であれば接着耐久性が低下しにくい。
【0059】
重合性成分は、上述した重合性モノマー(X)のみを含有してよく、架橋剤(Y)のみを含有してもよく、重合性モノマー(X)及び架橋剤(Y)を含有してもよい。
【0060】
重合性成分は、上述した重合性モノマー(X)及び/又は架橋剤(Y)に加えて、他の重合性モノマー(Z)を含有してもよい。他の重合性モノマー(Z)としては、重合性モノマー(X)のうち、ハロゲン元素を含まない重合性モノマーをいうこともある。
【0061】
他の重合性モノマー(Z)としては、オキセタン化合物、カチオン重合性ビニル化合物、(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0062】
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名アロンオキセタンOXT-101等)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT-211等)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT-212等)の単官能オキセタン化合物等が挙げられる。
【0063】
カチオン重合性ビニル化合物としては、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテルo-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物、ラウリルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル化合物、ビニルアミン、スチレン等が挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリレート化合物としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
本実施形態に係る樹脂組成物は、重合開始剤を必須成分とする。
【0066】
重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、本実施形態の樹脂組成物は、紫外線等のエネルギー線照射により硬化可能となる。
【0067】
重合開始剤は、光カチオン重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光カチオン重合開始剤を用いる場合、カチオン重合性官能基の重合が可能となり、光ラジカル重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合性官能基の重合が可能となる。
【0068】
光カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、LW-S1、ダブルボンド社製のチバキュアー1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP-2074)、アレン-イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤等が挙げられる。光カチオン重合開始剤のカチオン種としては、式(B-1)で表されるオニウム塩が好ましい。
【化3】

[AはVIA族~VIIA族の原子価mの元素を示す。mは1~2を示す。pは0~3を示す。m、pは整数が好ましい。RはAに結合している有機基を示す。Dは下記式(B-1-1):
【化4】

で表される2価の基を示す。式(B-1-1)中、Eは2価の基を表し、Gは-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレン又はフェニレン基(R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基)を示す。aは0~5を示す。a+1個のE及びA個のGはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。aは整数が好ましい。Xはオニウムの対イオンであり、その個数は1分子当りp+1である。]
【0069】
式(B-1-1)のオニウムイオンは特に限定されないが、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等が挙げられる。
【0070】
RはAに結合している有機基である。Rは、例えば、炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基を表し、これらはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Rの個数はm+p(m-1)+1であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。2個以上のRが互いに直接又は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-NR’-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~3のアルキレンもしくはフェニレン基を介して結合して、元素Aを含む環構造を形成してもよい。ここで、R’は炭素数1~5のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基である。
【0071】
上記において炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基等の単環式アリール基及びナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノン、アントラキノン等の縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0072】
上記の炭素数6~30のアリール基、炭素数4~30の複素環基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基又は炭素数2~30のアルキニル基は少なくとも1種の置換基を有してもよく、置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクダデシル等の炭素数1~18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル等の炭素数1~18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の炭素数3~18のシクロアルキル基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2-メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2-メチルブタノイル、3-メチルブタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル等の炭素数2~18の直鎖又は分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル、ナフトイル等の炭素数7~11のアリールカルボニル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタデシロキシカルボニル等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等の炭素数7~11のアリールオキシカルボニル基;フェニルチオカルボニル、ナフトキシチオカルボニル等の炭素数7~11のアリールチオカルボニル基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等の炭素数2~19の直鎖又は分岐のアシロキシ基;フェニルチオ、2-メチルフェニルチオ、3-メチルフェニルチオ、4-メチルフェニルチオ、2-クロロフェニルチオ、3-クロロフェニルチオ、4-クロロフェニルチオ、2-ブロモフェニルチオ、3-ブロモフェニルチオ、4-ブロモフェニルチオ、2-フルオロフェニルチオ、3-フルオロフェニルチオ、4-フルオロフェニルチオ、2-ヒドロキシフェニルチオ、4-ヒドロキシフェニルチオ、2-メトキシフェニルチオ、4-メトキシフェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ、4-[4-(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4-[4-(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4-(フェニルチオ)フェニルチオ、4-ベンゾイルフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-クロロフェニルチオ、4-ベンゾイル-3-メチルチオフェニルチオ、4-ベンゾイル-2-メチルチオフェニルチオ、4-(4-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(2-メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-メチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-エチルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-イソプロピルベンゾイル)フェニルチオ、4-(p-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ等の炭素数6~20のアリールチオ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチル等の炭素数6~10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等の炭素数4~20の複素環基;フェノキシ、ナフチルオキシ等の炭素数6~10のアリールオキシ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec-ブチルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert-ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニル等の炭素数6~10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert-ペンチルスルホニル、オクチルスルホニル等の炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、トリルスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニル等の炭素数の6~10のアリールスルホニル基;式(B-1-2)
【化5】

で表されるアルキレンオキシ基(Qは水素原子又はメチル基を表し、kは1~5の整数を表す);非置換のアミノ基;炭素数1~5のアルキル及び/又は炭素数6~10のアリールでモノ置換もしくはジ置換されているアミノ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン等が挙げられる。
【0073】
式(B-1)中のpは[D-Am-1]結合の繰り返し単位数を表し、0~3の整数であることが好ましい。
【0074】
式(B-1)中のオニウムイオン[A]として好ましいものはスルホニウム、ヨードニウム、セレニウムであるが、代表例としては以下のものが挙げられる。
【0075】
スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0076】
これらのオニウムイオンの中では、スルホニウムイオンとヨードニウムイオンからなる1種以上が好ましく、スルホニウムイオンがより好ましい。スルホニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウムからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0077】
式(B-1)においてXは対イオンである。その個数は1分子当りp+1である。対イオンは、特に限定されないが、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物、メチド化合物等が挙げられる。Xとしては、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲンイオン;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO 等のスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2-等の硫酸イオン類;HCO 、CO 2-等の炭酸イオン類;HPO 、HPO 2-、PO 3-等のリン酸イオン類;PF 、PFOH、フッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等のフルオロリン酸イオン類;BF 、B(C 、B(CCF 等のホウ酸イオン類;AlCl ;BiF 等が挙げられる。その他にはSbF 、SbFOH等のフルオロアンチモン酸イオン類、AsF 、AsFOH等のフルオロヒ素酸イオン類等が挙げられる。
【0078】
フッ素化アルキルフルオロリン酸イオンとしては、式(B-1-3)等で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
[(Rf)PF6-b (B-1-3)
【0079】
式(B-1-3)において、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。Rfの個数bは、1~5であり、整数であることが好ましい。b個のRfはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rfの個数bは、2~4がより好ましく、2~3が最も好ましい。
【0080】
式(B-1-3)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸イオンにおいて、Rfはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1~8、更に好ましい炭素数は1~4である。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;更にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられる。具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFC等が挙げられる。
【0081】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンとしては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF及び[(CFCFCFCFPF等が挙げられる。
【0082】
光カチオン重合開始剤は、エポキシ化合物、エポキシ樹脂への溶解を容易にするため、あらかじめ溶剤類に溶解したものを用いてもよい。溶剤類としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられる。
【0083】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種以上を選択して使用してもよい。
【0084】
(B)光カチオン重合開始剤のアニオン種としては、ホウ素化合物、リン化合物、アンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのアニオン種は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、光硬化性に優れ、接着性、接着耐久性が向上する点で、フッ化物が好ましい。フッ化物の中では、ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
【0085】
(B)光カチオン重合開始剤の中では、式(B-2)で表されるトリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート、式(B-3)で表されるジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートからなる1種以上が好ましく、トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートがより好ましい。
【化6】

【化7】
【0086】
光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン及びその誘導体;ベンジル及びその誘導体;アントラキノン及びその誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン型光重合開始剤;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン型光重合開始剤;ジエトキシアセトフェノン、4-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン型光重合開始剤;2-ジメチルアミノエチルベンゾエート;p-ジメチルアミノエチルベンゾエート;ジフェニルジスルフィド;チオキサントン及びその誘導体;カンファーキノン、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-ブロモエチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-メチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸クロライド等のカンファーキノン型光重合開始剤;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン型光重合開始剤;ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤;フェニル-グリオキシリックアシッド-メチルエステル;オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル;オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル;等が挙げられる。
【0087】
重合開始剤の含有量は、重合性成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であれば硬化性が悪くなることを抑制でき、5質量部以下であれば接着耐久性を低下させることを抑制できる。
【0088】
本実施形態の樹脂組成物は、光増感剤を含有してもよい。光増感剤とは、エネルギー線を吸収して、光カチオン重合開始剤からカチオンを効率よく発生させる化合物をいう。光増感剤は、重合開始剤を除くことが好ましく、光カチオン重合開始剤を除くことがより好ましい。
【0089】
光増感剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェニルケトン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサンテン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、トリアリルメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。これらの中では、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のフェニルケトン誘導体及び/又は9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。アントラセン誘導体の中では、9,10-ジブトキシアントラセンが好ましい。
【0090】
光増感剤の含有量は、光硬化性が悪くならず、貯蔵安定性が低下しない点で、重合性成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.02~3質量部がより好ましい。
【0091】
本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有することにより、本実施形態の樹脂組成物は、優れた接着性や接着耐久性を示す。
【0092】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種以上を選択して使用してもよい。これらの中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0093】
シランカップリング剤の使用量は、接着性や接着耐久性が得られる点で、重合性成分100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
【0094】
本実施形態の樹脂組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤を含有することで、樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0095】
酸化防止剤としては、例えば、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクタデシル、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノtert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジtert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジtert-ブチル-p-ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール及び2,6-ジtert-ブチル-p-クレゾール等が挙げられる。酸化防止剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0096】
酸化防止剤としては、樹脂組成物の貯蔵安定性及び硬化体の透明性の観点からは、フェノール系酸化防止剤が好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0097】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクタデシル、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクタデシル及び2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)の両方を含むことがより好ましい。3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクタデシルとしては、BASFジャパン社製「Irganox 1076」等が挙げられる。2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノールとしては、住友化学工業社製「SUMILIZER MDP-S」等が挙げられる。
【0098】
酸化防止剤の含有量は、重合性成分100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましい。これにより、樹脂組成物の貯蔵安定性が顕著に向上する傾向がある。また、酸化防止剤の含有量は、重合性モノマー(X)の総量100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。これにより、樹脂組成物の接着性及び硬化性がより向上する傾向がある。
【0099】
本実施形態の樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーを含有することで、樹脂組成物の硬化体がより低透湿となり、防湿性が更に向上する傾向がある。
【0100】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、マイカ、カオリン、タルク、酸化アルミニウム等の粒子が挙げられる。
【0101】
無機フィラーの平均粒子径(以下、粒子径ということもある)は、1~50μmが好ましい。平均粒子径は、マイクロトラック(レーザー回折・散乱法)により測定することが好ましい。平均粒子径は、粒子径分布における累積50%粒子径(d50)であることが好ましい。
【0102】
無機フィラーの含有量は、硬化体の低透湿性が得られる点で、重合性成分100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、20~40質量部がより好ましい。
【0103】
本実施形態に係る樹脂組成物は、他の成分として当該術分野で用いられる公知の添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、例えば、金属不活性化剤、安定剤、中和剤、滑剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0104】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法については、上記の成分を十分に混合できれば特に制限されない。各成分の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で好ましい。
【0105】
本実施形態に係る樹脂組成物は、低透湿性の点で、硬化体におけるガラス転移温度(Tg)が、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、更に好ましくは85℃以上である。ガラス転移温度(Tg)について、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは200℃以下である。
【0106】
本明細書中、硬化体のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性スペクトルから求められる値を示す。動的粘弾性スペクトルでは、該硬化体に昇温速度一定で応力及び歪みを加え、損失正接(以下、tanδと略す)のピークトップを示す温度をガラス転移温度とすることができる。なお、-150℃程度の十分に低い温度からある温度(Ta℃)まで昇温してもtanδのピークが現れない場合、ガラス転移温度としては、-150℃以下又はある温度(Ta℃)以上と考えられるが、ガラス転移温度が-150℃以下である硬化体は考えられないため、ある温度(Ta℃)以上と判断できる。
【0107】
本実施形態に係る樹脂組成物においては、硬化体における架橋密度が、1.0×10-3mol/cm以上であることが好ましく、2.0×10-3mol/cm以上であることがより好ましく、3.0×10-3mol/cm以上であることが更に好ましい。架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上であると、硬化体中の結合点が多く、ポリマー中のミクロブラウン運動が抑制され、硬化体が低透湿となるため好ましい。架橋密度は、1.0mol/cm以下(1000×10-3mol/cm以下)であることが好ましく、0.1mol/cm以下(100×10-3mol/cm以下)であることがより好ましく、0.05mol/cm以下(50×10-3mol/cm以下)であることが更に好ましい。架橋密度が1.0mol/cm以下であると、硬化体が脆くならないため好ましい。
【0108】
硬化体における架橋密度は、上記の観点から、1.0×10-3~1.0mol/cm、2.0×10-3~1.0mol/cm、3.0×10-3~1.0mol/cm、1.0×10-3~0.1mol/cm、2.0×10-3~0.1mol/cm、3.0×10-3~0.1mol/cm、1.0×10-3~0.05mol/cm、2.0×10-3~0.05mol/cm、又は3.0×10-3~0.05mol/cmであってもよい。
【0109】
本明細書中、硬化体の架橋密度は、動的粘弾性スペクトルから求められる値を示し、下記の方法により求められる。厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とする。この試験片について、温度範囲-50℃~200℃、昇温速度2℃/分、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行い、温度と貯蔵弾性率(G’)の関係を把握する。架橋密度は、Tg+40℃の温度をT(K)、T(K)における貯蔵弾性率(G’)をG’Tg+40、気体定数をR、フロント係数をφ(=1)として、以下の式(4)により算出される。
架橋密度(ρ)=G’Tg+40/3φRT (4)
【0110】
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化体における比重が、1.2~3.0であることが好ましく、1.3~3.0であることがより好ましく、1.3~2.0であることが更に好ましい。
【0111】
本実施形態に係る樹脂組成物においては、硬化体における透湿度が、0.01~300g/(m・24時間)であることが好ましい。透湿度は、好ましくは200g/(m・24時間)以下であり、より好ましくは150g/(m・24時間)以下であり、更に好ましくは120g/(m・24時間)以下である。透湿度は、0.1g/(m・24時間)以上、1g/(m・24時間)以上、又は10g/(m・24時間)以上であってもよい。本明細書中、透湿度は、樹脂組成物から得られる厚み100μmの硬化体について、JIS Z0208に準拠して、温度85℃、相対湿度85%の条件下で測定された値である。透湿度が低いと、硬化体が有機エレクトロルミネッセンス素子の封止材(以下、封止材は、有機物層や無機物層等の層を包含することもある)に用いる場合には、有機発光材料層への水分の到達によるダークスポットの発生を抑制できる。
【0112】
硬化体における透湿度は、上記の観点から、0.1~300g/(m・24時間)、1~300g/(m・24時間)、10~300g/(m・24時間)、0.01~200g/(m・24時間)、0.1~200g/(m・24時間)、1~200g/(m・24時間)、10~200g/(m・24時間)、0.01~150g/(m・24時間)、0.1~150g/(m・24時間)、1~150g/(m・24時間)、10~150g/(m・24時間)、0.01~120g/(m・24時間)、0.1~120g/(m・24時間)、1~120g/(m・24時間)、又は10~120g/(m・24時間)であってもよい。
【0113】
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化体の透明性にも優れる。具体的には、樹脂組成物は、硬化体について、波長380~1000nm以下の紫外-可視光線領域において測定される全光線透過率が、厚さ10μm当たりで、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。この光透過率が95%以上であると、硬化体が有機エレクトロルミネッセンス素子の封止材に用いられる場合には、輝度及びコントラストに優れた有機EL表示装置が得られやすくなる。
【0114】
なお、上記<樹脂組成物>の項において記載した、硬化体における特性(平均自由体積、空孔率、ガラス転移温度等)の好ましい範囲は、後述の実施例に記載の条件で樹脂組成物を硬化して得られる硬化体における特性の好ましい範囲を意味する。
【0115】
<硬化体>
上述した樹脂組成物の硬化体は、上述した樹脂組成物に光を照射することにより得られる。
【0116】
本実施形態の樹脂組成物の硬化に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光重合開始剤の反応波長に対応するエネルギー線の照射を効率よく行うことができる点で、好ましい。
【0117】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。また、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0118】
上記光源の照射としては、直接照射、反射鏡やファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0119】
本実施形態の樹脂組成物は、光照射後の硬化速度を促進するために、後加熱処理をしてもよい。後加熱の温度は、樹脂組成物を有機エレクトロルミネッセンス表示素子の封止に用いる場合には、有機エレクトロルミネッセンス表示素子にダメージを与えない点で、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。後加熱の温度は、40℃以上が好ましい。
【0120】
硬化体の平均自由体積は、防湿性により優れ、かつ、ガラス基板等の基板との接着性により優れる観点から、好ましくは0.1nm以下、より好ましくは0.095nm以下、更に好ましくは0.09nm以下、特に好ましくは0.085nm以下、尚更好ましくは0.08nm以下であり、好ましくは0.001nm以上、より好ましくは0.003nm以上、更に好ましくは0.005nm以上、特に好ましくは0.01nm以上、尚更好ましくは0.05nm以上である。
【0121】
硬化体の平均自由体積は、上記の観点から、0.001~0.1nm、0.003~0.1nm、0.005~0.1nm、0.01~0.1nm、0.05~0.1nm、0.001~0.095nm、0.003~0.095nm、0.005~0.095nm、0.01~0.095nm、0.05~0.095nm、0.001~0.09nm、0.003~0.09nm、0.005~0.09nm、0.01~0.09nm、0.05~0.09nm、0.001~0.085nm、0.003~0.085nm、0.005~0.085nm、0.01~0.085nm、0.05~0.085nm、0.001~0.08nm、0.003~0.08nm、0.005~0.08nm、0.01~0.08nm、又は0.05~0.08nmであってもよい。
【0122】
硬化体の空孔率は、防湿性により優れ、基板との接着性にも優れた硬化体を得やすくする観点から、硬化体の体積全量基準で、好ましくは20体積%以下であり、より好ましくは15体積%以下であり、更に好ましくは10体積%以下である。
【0123】
硬化体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、更に好ましくは85℃以上である。
【0124】
硬化体の架橋密度は、1.0×10-3mol/cm以上であることが好ましく、2.0×10-3mol/cm以上であることがより好ましく、3.0×10-3mol/cm以上であることが更に好ましい。架橋密度が1.0×10-3mol/cm以上であると、硬化体中の結合点が多く、ポリマー中のミクロブラウン運動が抑制され、硬化体が低透湿となるため好ましい。架橋密度は、1.0mol/cm以下(1000×10-3mol/cm以下)であることが好ましく、0.1mol/cm以下(100×10-3mol/cm以下)であることがより好ましく、0.05mol/cm以下(50×10-3mol/cm以下)であることが更に好ましい。架橋密度が1.0mol/cm以下であると、硬化体が脆くなったりすることがないため好ましい。
【0125】
硬化体における架橋密度は、上記の観点から、1.0×10-3~1.0mol/cm、2.0×10-3~1.0mol/cm、3.0×10-3~1.0mol/cm、1.0×10-3~0.1mol/cm、2.0×10-3~0.1mol/cm、3.0×10-3~0.1mol/cm、1.0×10-3~0.05mol/cm、2.0×10-3~0.05mol/cm、又は3.0×10-3~0.05mol/cmであってもよい。
【0126】
硬化体の比重は、1.2~3.0であることが好ましく、1.3~3.0であることがより好ましく、1.3~2.0であることが更に好ましい。
【0127】
硬化体の透湿度は、0.01~300g/(m・24時間)であることが好ましい。透湿度は、好ましくは200g/(m・24時間)以下であり、より好ましくは150g/(m・24時間)以下であり、更に好ましくは120g/(m・24時間)以下である。透湿度は、0.1g/(m・24時間)以上、1g/(m・24時間)以上、又は10g/(m・24時間)以上であってもよい。
【0128】
硬化体における透湿度は、0.1~300g/(m・24時間)、1~300g/(m・24時間)、10~300g/(m・24時間)、0.01~200g/(m・24時間)、0.1~200g/(m・24時間)、1~200g/(m・24時間)、10~200g/(m・24時間)、0.01~150g/(m・24時間)、0.1~150g/(m・24時間)、1~150g/(m・24時間)、10~150g/(m・24時間)、0.01~120g/(m・24時間)、0.1~120g/(m・24時間)、1~120g/(m・24時間)、又は10~120g/(m・24時間)であってもよい。
【0129】
硬化体における、波長380~1000nm以下の紫外-可視光線領域において測定される全光線透過率が、厚さ10μm当たりで、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。この光透過率が95%以上であると、硬化体が有機エレクトロルミネッセンス素子の封止材に用いられる場合には、輝度及びコントラストに優れた有機EL表示装置が得られやすくなる。
【0130】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0131】
本発明の他の一側面は、上述の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材であってよい。この封止材は、硬化体のみを含む有機物層からなるものであってよく、樹脂組成物の硬化体と他の構成材料とを含むものであってもよい。他の構成材料としては、例えば、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素等の無機物層等が挙げられる。この場合、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材は、樹脂組成物の硬化体を含む有機物層と、無機物層とを備える。
【0132】
また、本発明の更に他の一側面は、有機エレクトロルミネッセンス素子と、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用封止材と、を備える、有機エレクトロルミネッセンス表示装置であってよい。
【0133】
また、本発明において、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、基板に、上述の樹脂組成物を付着させてから、付着させた樹脂組成物に光を照射する照射工程と、光照射された樹脂組成物を介して、基板と有機エレクトロルミネッセンス表示素子とを貼合する貼合工程と、を有するものであってよい。この製造方法において、基板はガラス基板等であってよい。この製造方法における各工程の条件等は、上述の実施形態の記載に基づいて適宜選択してよい。
【0134】
より具体的には、本実施形態の樹脂組成物を用いて有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造する方法としては、例えば、一方の基板上(背面板)に本実施形態の樹脂組成物を塗布し、該樹脂組成物に光を照射して活性化させた後に、光を遮断し、該組成物を介して背面板とエレクトロルミネッセンス表示素子を形成した基板を貼り合せる方法等が挙げられる。この方法により、有機エレクトロルミネッセンス表示素子を光や熱に晒すことなく封止できる。
【0135】
本実施形態に係る樹脂組成物は、接着剤として用いてもよい。本実施形態の接着剤は、有機エレクトロルミネッセンス表示素子等のパッケージ等の接着に、好適に用いることができる。
【0136】
本実施形態の樹脂組成物を用いる基材の接着方法としては、例えば、樹脂組成物を一方の基材の全面又は一部に塗布する塗布工程と、樹脂組成物が塗布された基材の樹脂組成物に光を照射する照射工程と、前記光を照射された樹脂組成物が硬化するまでの間に、前記一方の基材に他方の基材を貼合する貼合工程と、前記樹脂組成物により貼合された基材を硬化させる硬化工程と、を有する。これにより、基材を光や熱に晒すことなく接着できる。
【0137】
本実施形態の樹脂組成物を用いて、一方の基板に本実施形態の樹脂組成物を塗布し、樹脂組成物を介して、他方の基板を貼り合せ、本実施形態の樹脂組成物に光を照射する方法を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することもできる。
【実施例
【0138】
以下、実験例を挙げて、本実施形態を更に詳細に説明する。本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例では、特記しない限り、23℃、相対湿度50質量%の環境下で試験した。
【0139】
実施例及び比較例においては、下記の化合物を使用した。
[重合性成分]
[重合性モノマー(X)]
(X-1):ジブロモフェニルグリシジルエーテル(日本化薬社製「BR-250」、臭素元素の含有量51質量%、モノマー比重1.8)
(X-2):臭素化クレジルグリシジルエーテル(日本化薬社製「BROC」、臭素元素の含有量50質量%、モノマー比重1.8)
(X-3):TBBPAエポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、DIC社製「エピクロン152」、臭素元素の含有量48質量%、比重1.7)
(X-4):臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「BREN-105」、臭素元素の含有量36質量%、比重1.7)
(X-5)ペンタフルオロフェニルアクリレート(東京化成工業社製「ペンタフルオロフェニルアクリレート」、比重1.5)
(X-6)アクリル酸2,4,6-トリブロモフェニル(東京化成工業社製「トリブロモフェニルアクリレート」、比重2.1)
【0140】
[架橋剤(Y)]
(Y-1):3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」、比重1.2)
(Y-2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、分子量360~390、比重1.2)
(Y-3):シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「CHDVE」、比重0.9)
(Y-4):ポリオキシアルキレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX-946L」、比重0.9)
(Y-5):1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学社製「HD-N」、比重1.0)
(Y-6):トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学社製「DCP」、比重1.1)
【0141】
[他の重合性モノマー(Z)]
(Z-1)ラウリルグリシジルエーテル(四日市合成社製「エポゴーセーLA(D)」、比重0.9)
(Z-2)ラウリルアクリレート(大阪有機社製「LA」、比重1.1)
【0142】
[重合開始剤]
・トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「アデカオプトマーSP-170」、アニオン種はヘキサフルオロアンチモネート)
・トリアリールスルホニウム塩(ジフェニル4-チオフェノキシフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、サンアプロ社製「CPI-200K」、アニオン種はリン化合物)
・2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(BASFジャパン社製「TPO」)
・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン社製「I-184」)
【0143】
[光増感剤]
9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製「ANTHRACURE UVS-1331」)
【0144】
[シランカップリング剤]
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-403」)
【0145】
[無機フィラー]
微粒子タルク、粒子径(d50):4.5μm(松村産業社製「#5000PJ」)
【0146】
[実験例]
表1~2に示す種類の原材料を、表1~2に示す組成割合で混合し、実施例及び比較例の樹脂組成物を調製した。組成割合の単位は質量部である。なお、実施例1-1~1-7、及び比較例1-1~1-3は、重合性成分としてカチオン重合性官能基を有する化合物を使用した例であり、実施例2-1~2-2、及び比較例2-1~2-2は、重合性成分としてラジカル重合性官能基を有する化合物を使用した例である。
【0147】
実施例及び比較例の樹脂組成物について、下記の各測定を行った。その結果を表1~2に示す。
【0148】
〔粘度〕
樹脂組成物の粘度(せん断粘度)はE型粘度計(1°34’×R24のコーンローター)を用い、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。
【0149】
樹脂組成物を下記の条件にて硬化させて、得られた硬化体について下記の各測定を行った。その結果を表1~2に示す。なお、比較例1-3、及び比較例2-2の樹脂組成物は硬化しなかったため、各物性を評価することができなかった。
【0150】
〔光硬化条件〕
樹脂組成物の硬化体における物性及び接着性の評価に際し、下記光照射条件により、樹脂組成物を硬化させた。無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)により、365nmの波長の積算光量4,000mJ/cmの条件にて、樹脂組成物を光硬化させた後、80℃のオーブン中で、30分間の後加熱処理を実施し、硬化体を得た。
【0151】
〔平均自由体積及び空孔率〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、厚み10.1mmの硬化体を幅10mm×長さ10mmに切り出し、10枚重ねて固定したものを試験サンプルとした。
線源を22NaClとして、下記の条件にて陽電子消滅寿命と相対強度を測定した。
陽電子線源:22NaCl(強度0.6MBq)、
ガンマ線検出器:フッ化バリウムシンチレーター及び光電子倍増管、
装置分解能:250ps、
測定温度:25℃、
カウント数:1,000,000、
陽電子線源の両側を、2個の試験サンプルで挟み込んで測定した。上記測定条件に沿って陽電子寿命の測定を行い、平均自由体積及び空孔率を算出した。
【0152】
〔硬化体の比重(85℃)〕
厚さ1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS K7112 B法に準拠し、硬化体の比重を測定した。浸漬液として、温度は85℃の水を使用した。
【0153】
〔Tg、Tg+40℃の弾性率〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とした。この試験片について、温度範囲-50℃~200℃、昇温速度2℃/分、引っ張りモード(周波数1Hz、歪み0.05%)の条件で、動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率を測定した。上記動的粘弾性測定で測定されたtanδ(損失正接)のピークトップの温度を、硬化体のガラス転移温度(Tg)とした。動的粘弾性は、セイコー電子産業社製、動的粘弾性測定装置「DMS210」を用いて測定した。
【0154】
〔架橋密度〕
上述した動的粘弾性測定から、架橋密度を算出した。架橋密度は、Tg+40℃の温度をT(K)、T(K)における貯蔵弾性率(G’)をG’Tg+40、気体定数をR、フロント係数をφ(=1)として、以下の式で算出した。
架橋密度(ρ)=G’Tg+40/3φRT
【0155】
〔透明性〕
樹脂組成物を、0.1mmスペーサーを用いて、2枚のガラス板(大きさ:40mm×20mm)で貼り合せた。前記光硬化条件にて樹脂組成物を硬化したものを試験片とした。分光光度計(日本分光株式会社製)を用いて、波長400nmの光透過率(%)を測定した。
【0156】
〔透湿度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度85℃、相対湿度85%の条件で測定した。透湿度が300g/(m・24時間)以下であると、硬化体の防湿性が優れているといえる。
【0157】
〔引張せん断接着強さ〕
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス)を2枚用い、接着面積0.5cm、接着厚み80μmで、上記の光硬化条件にて樹脂組成物を硬化させた。硬化後、樹脂組成物で接合した試験片を用い、引張せん断接着強さ(単位:MPa)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で測定した。引張せん断接着強さは、万能試験機を使用して、測定した。
【0158】
〔有機ELの評価〕
〔有機EL素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板をアセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
・陽極 ITO、陽極の膜厚250nm
・正孔注入層 銅フタロシアニン 厚さ30nm
・正孔輸送層 N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチルベンジジン(α-NPD) 厚さ20nm
・発光層 トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(金属錯体系材料)、発光層の膜厚1000Å
・電子注入層 フッ化リチウム 厚さ1nm
・陰極 アルミニウム、陽極の膜厚250nm
【0159】
〔有機EL素子の作製〕
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、窒素雰囲気下、塗工装置にてガラスに塗布し、有機EL表示素子基板と貼り合わせ、接着厚み10μmで前記光硬化条件にて、この樹脂組成物を硬化させ、有機EL表示素子を作製した。有機EL表示素子基板の陽極側を、樹脂組成物を介してガラスに貼り付けた。
【0160】
〔有機EL評価〕
〔初期〕
作製した直後の有機EL素子に、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0161】
〔高温高湿度〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下にて1000時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0162】
ダークスポットの直径は、300μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、ダークスポットはないことが最も好ましい。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】