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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20240703BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20240703BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/233
B60N2/427
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022535267
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024880
(87)【国際公開番号】W WO2022009757
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2020118749
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】中島 敦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010169(WO,A1)
【文献】特開2014-136452(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138954(WO,A1)
【文献】特表2020-501971(JP,A)
【文献】特開2017-140945(JP,A)
【文献】特開2003-246255(JP,A)
【文献】特開2014-080169(JP,A)
【文献】国際公開第2017/068941(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0110297(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/233
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに装備されるエアバッグ装置であって、
前記車両用シートのサイドフレームに固定され、膨張ガスを発生するインフレータと、
前記サイドフレームに沿って収容され、前記インフレータから放出される膨張ガスによって膨張・展開するエアバッグと、を備え、
前記エアバッグは、前記車両用シートの側部から前方に向かって展開するメインチャンバと、当該メインチャンバの乗員側において当該メインチャンバと車両用シートの幅方向で重なるように展開するインナーチャンバと、前記インフレータのガスを前記メインチャンバ及び前記インナーチャンバに導くガスガイド(52)とを含み、
前記ガスガイド(52)は、前記インフレータを受け入れるインフレータ挿入部と、前記インフレータから放出されたガスを少なくとも互いに反対方向を向いている2方向に導くガス分岐構造部(54)とを含み、前記ガス分岐構造部は、前記メインチャンバ内に配置された第1のガイド領域(56)と前記インナーチャンバ内に配置された第2のガイド領域(58)を含み、前記ガス分岐構造部の当該第1と第2のガイド領域の中間部分において前記インフレータ挿入部が設けられており、
前記ガスガイドの前記第1のガイド領域(56)は、前記メインチャンバの後縁側において上下方向に延びるダクト部に連通し、
前記ガス分岐構造部(54)は、前記インフレータから放出された膨張ガスを前記第1のガイド領域(56)側と前記第2のガイド領域(58)側に導くように構成され、
前記第1のガイド領域(56)において、前記膨張ガスを前記ダクト部の上下方向に導く第1の開口部が形成され、
前記第2のガイド領域(58)において、前記膨張ガスを前記インナーチャンバの上下方向に導く第2の開口部が形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記インナーチャンバは、前記メインチャンバの後縁部から後方に突出するように連結され、前記メインチャンバ側に折り畳まれた状態で収容されることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記インフレータは、前記サイドフレームの乗員と反対側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記インナーチャンバは、前記メインチャンバとは反対側の縁部に固定用のタブを備えることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記タブは、前記サイドフレームの前縁を乗り越えて当該サイドフレームの内側まで延びることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記タブは、前記サイドフレームを貫通する前記インフレータのスタッドボルトに連結されることを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記タブは、前記サイドフレームの一部に連結されることを特徴とする請求項5又は6に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグは、概ね同一形状の2枚のパネルを重ねて縫製することによって成形され、
前記メインチャンバ及び前記インナーチャンバは、平面的に一体成形されることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
前記エアバッグの前記メインチャンバは、前記エアバッグの展開時に主に乗員の腰部から胸部付近を保護する側部領域と、主に乗員の頭部付近を保護する上部領域とを含み、
前記側部領域は、前記車両用シートの左右両側に配置され、
前記上部領域は、これら左右両側の側部領域の上端部分を連結するように配置されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項10】
前記エアバッグにおいて、左右に配置された前記側部領域と、前記上部領域とは一体的に連続して成形され、
収容状態の前記インナーチャンバ以外の部分は、全て前記サイドフレームの外側に配置されることを特徴とする請求項9に記載のエアバッグ装置。
【請求項11】
車両用シートに装備されるエアバッグ装置であって、
前記車両用シートのサイドフレームに固定され、膨張ガスを発生するインフレータと、
前記サイドフレームに沿って収容され、前記インフレータから放出される膨張ガスによって膨張・展開するエアバッグと、を備え、
前記エアバッグは、前記車両用シートの側部から前方に向かって展開するメインチャンバと、当該メインチャンバの乗員側において当該メインチャンバと車両用シートの幅方向で重なるように展開するインナーチャンバと、前記インフレータのガスを前記メインチャンバ及び前記インナーチャンバに導くガスガイド(52)とを含み、
前記ガスガイド(52)は、前記インフレータを受け入れるインフレータ挿入部と、前記インフレータから放出されたガスを少なくとも互いに反対方向を向いている2方向に導くガス分岐構造部(54)とを含み、前記ガス分岐構造部は、前記メインチャンバ内に配置された第1のガイド領域(56)と前記インナーチャンバ内に配置された第2のガイド領域(58)を含み、前記ガス分岐構造部の当該第1と第2のガイド領域の中間部分において前記インフレータ挿入部が設けられており、
前記ガス分岐構造部は、前記中間部分の上下方向において前記インフレータと対向する位置に、前記インフレータ側に突出している先端部(54a)を有することを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項12】
前記ガス分岐構造部は、前記中間部分の上下方向において前記インフレータと対向する位置に、前記インフレータ側に突出している先端部(54a)を有することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに装備されるエアバッグ装置に関する。特に、座席に着座した乗員の姿勢に関わらず、当該乗員を確実に拘束可能なエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグは、例えば、ステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。
【0003】
近年では、車両の自動運転技術の進歩に伴い、乗員がシートを大きくリクライニングしてリラックスした姿勢で着座するなど様々な着座姿勢を採ることが想定され、そのような状況においても乗員を適切に保護する必要がある。そのため、シートに装備されるエアバッグの改良がこれまで以上に重要となる。
【0004】
車両用シートに搭載される周知のサイドエアバッグ装置においては、展開したエアバッグがドアの内面からの反力を受けて適切な展開挙動・展開姿勢を保つ場合が多い。しかしながら、シートがドアから遠く離れている場合や、シート自体が回転するような構造となった場合には、展開するエアバッグはドアからの反力を受けることができず、シートに着座している乗員を適切に保護することが困難となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、シートに着座した乗員の姿勢に関わらず、当該乗員を確実に拘束可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の他の目的は、シートの向きに関わらず、当該シートに着座している乗員を確実に拘束可能なエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、上記課題を解決するための手段に及び、その効果について説明する。なお、本発明において、乗員が正規の姿勢で進行方向を向いてシートに着座した際に、乗員が向いている方向(シートの前側)を「前方」、その反対方向(シートバック側)を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢でシートに着座した際に、乗員の右側(シートの右側)を「右方向」、乗員の左側(シートの左側)を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、乗員が正規の姿勢でシートに着座した際に、乗員の頭部方向(ヘッドレスト側)を「上方」、乗員の腰部方向(座面側)を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車両用シートに装備されるエアバッグ装置であって、前記車両用シートのサイドフレームに固定され、膨張ガスを発生するインフレータと、前記サイドフレームに沿って収容され、前記インフレータから放出される膨張ガスによって膨張・展開するエアバッグと、を備える。前記エアバッグは、前記車両用シートの側部から前方に向かって展開するメインチャンバと、当該メインチャンバの乗員側において当該メインチャンバと車両用シートの幅方向で重なるように展開するインナーチャンバと、前記インフレータのガスを前記メインチャンバ及び前記インナーチャンバに導くガスガイドとを含む。前記ガスガイドは、前記インフレータを受け入れるインフレータ挿入部と、前記インフレータから放出されたガスを少なくとも異なる2方向に導くガス分岐構造部とを含む。そして、前記インナーチャンバは、前記ガス分岐構造部によって分岐されたガスを導入するガス導入部を有する構造となっている。
【0009】
ガスガイドに挿入されたインフレータから放出された膨張ガスは、ガスガイドの分岐構造部によってメインチャンバとインナーチャンバに導かれる。このように、本発明においては、インナーチャンバを介してメインチャンバにガスが流れ込むものではなく、ガスガイドにおいて直接的にガスの流れを調整するものである。このため、当該装置の作動時に、膨張ガスが速やかにメインチャンバ及びインナーチャンバの両方に供給されることになり、メインチャンバ及びインナーチャンバが速やかに展開し、乗員の拘束性能が向上するものである。
【0010】
また、インナーチャンバはメインチャンバと乗員との間において、メインチャンバに重なるように展開する構造であるため、メインチャンバを反力面として利用し、乗員側に確実に展開することができる。
【0011】
前記インナーチャンバは、前記メインチャンバの後縁部から後方に突出するように連結され、前記メインチャンバ側に折り畳まれた状態で収容することができる。
【0012】
ここで、メインチャンバの後縁とは、乗員の背中側又はシートバックの背面側を含む意味である。インナーチャンバをメインチャンバから後方に突出するように成形し、収容時には、インナーチャンバはメインチャンバ側に折り畳まれるため、簡素な構成でインナーチャンバを成形し、十分な拘束性能を発揮させることが可能となる。
【0013】
前記インフレータは、前記サイドフレームの乗員と反対側(外側)に配置することができる。
【0014】
また、前記インナーチャンバは、前記メインチャンバとは反対側の縁部(後縁部)に固定用のタブを備えることができる。
【0015】
前記タブは、前記サイドフレームの前縁を乗り越えて当該サイドフレームの内側まで延びるように構成することができる。
【0016】
そして、前記タブは、前記サイドフレームを貫通する前記インフレータのスタッドボルトに連結させたり、前記サイドフレームの一部に連結することができる。
【0017】
インナーチャンバのタブがサイドフレームの前縁を乗り越えてサイドフレームの内側まで延び、そこで、インフレータのスタッドボルトやサイドフレーム自体に連結させることにより、インナーチャンバはサイドフレームの内面を反力面として乗員側に展開するようになる。また、インナーチャンバの端部が固定されることにより、インナーチャンバの展開挙動及び展開形状が安定することになる。
【0018】
前記エアバッグは、概ね同一形状の2枚のパネルを重ねて縫製することによって成形し、前記メインチャンバ及び前記インナーチャンバは、平面的に一体成形することができる。ここで、「平面的に一体成形」とは、2枚のパネルを平置きの状態で重ね合わせた時に、メインチャンバとインナーチャンバとが厚み方向に重なることなく、1枚のパネル内で成形される意味である。
【0019】
前記ガスガイドは、前記メインチャンバ内に配置された第1のガイド領域と、前記インナーチャンバ内に配置された第2のガイド領域とを含み、前記インフレータ挿入部は、前記第1及び第2のガイド領域の境界部分において共通に設けることができる。
【0020】
このとき、前記ガスガイドの前記第1のガイド領域は、前記メインチャンバの後縁側において上下方向に延びるダクト部に連通するように構成する。そして、前記第1のガイド領域(56)において、前記膨張ガスを前記ダクト部の上下方向に導く第1の開口部が形成され、前記第2のガイド領域(58)において、前記膨張ガスを前記インナーチャンバの上下方向に導く第2の開口部が形成されるように構成することができる。
【0021】
前記ガスガイドは、前記メインチャンバ内に配置され、当該メインチャンバの後縁側において上下方向に延びるダクト部に連通する構成とする。また、前記ガス分岐構造部は、前記膨張ガスを前記ダクト部の上方を向く第1のガス噴出口と、下方を向く第2のガス噴出口とを含む構成とする。そして、前記インナーチャンバの前記ガス導入部が、前記第1のガス噴出口と前記第2のガス噴出口の少なくとも一方の近傍に位置する構成とすることができる。
【0022】
前記インナーチャンバは、前記メインチャンバの上下方向に概ね平行に延びるチャンバ本体部を有する構造とすることができる。
【0023】
前記インナーチャンバは、第1及び第2のガス導入部を有する筒状に成形され、前記インナーチャンバの前記第1及び第2のガス導入部は、前記第1のガス噴出口と前記第2のガス噴出口の各々の近傍に位置する構成とすることができる。
【0024】
前記エアバッグの前記メインチャンバは、前記エアバッグの展開時に主に乗員の腰部から胸部付近を保護する側部領域と、主に乗員の頭部付近を保護する上部領域とを含む構成とする。そして、前記側部領域が、前記車両用シートの左右両側に配置され、前記上部領域は、これら左右両側の側部領域の上端部分を連結するように配置される構成とすることができる。
【0025】
この場合、左右の側部領域と中央の上部領域とが繋がった状態となり、エアバッグ(メインチャンバ)はドーム状に展開し、シートに着座している乗員の側部及び上部を完全に覆うようになる。その結果、少なくとも左右方向、上方向、斜め上方向への乗員の移動を確実に拘束でき、乗員の頭部から腰部に渡って適切に保護することが可能となる。
【0026】
このとき、左右に配置された前記側部領域と、前記上部領域とは一体的に連続して成形され、収容状態の前記インナーチャンバ以外の部分は、全て前記サイドフレームの外側に配置される構造とすることができる。
【0027】
なお、「サイドフレームの内側」とは、上下方向に延びるサイドフレームの乗員側を意味し、「サイドフレームの外側」とは、乗員と反対側を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明に係るエアバッグ装置を搭載可能な車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグ装置の図示は省略する。
図2図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、エアバッグ装置の図示は省略する。
図3図3は、本発明に係るエアバッグ装置を車両用シートに搭載した様子を示す側面図(A)、正面図(B)であり、車両用シートに関しては透視で示すものとする。
図4図4は、本発明に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を示すものであり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が正面から見た様子を示すものである。
図5図5は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグを展開した状態(収容前に平置きした状態)を示す平面図である。
図6図6は、図5の一部(X)を拡大して示した平面図である。
図7図7は、第1実施例に係るエアバッグを展開した状態(収容前に平置きした状態)において、インナーチャンバをメインチャンバ側に折り重ねた状態を示す平面図である。
図8図8は、第1実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
図9図9(A)、(B)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグを展開した状態(収容前に平置きした状態)の一部を示す平面図であり、(A)図が固定用のタブを備えたもの、(B)図が固定用のタブを備えないものである。
図10図10は、第2実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
図11図11(A)、(B)は、本発明の第3実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグを展開した状態(収容前に平置きした状態)の一部を示す平面図であり、(A)図が固定用のタブを備えたもの、(B)図が固定用のタブを備えないものである。
図12図12は、第3実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
図13図13(A)、(B)は、本発明の第4実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグを展開した状態(収容前に平置きした状態)の一部を示す平面図であり、(A)図が固定用のタブを備えたもの、(B)図が固定用のタブを備えないものである。
図14図14は、第4実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、繰り返しになるが、各図に表示する「前」とは車両用シートの前方、「後」とは車両用シートの後方を意味するものであり、必ずしも車両の進行方向とは一致しない。また、「内」とは車両用シートの幅方向の内側(乗員側)、「外」とは車両用シートの幅方向外側(乗員と反対側)をそれぞれ示す。
【0030】
図1は、本発明に係るエアバッグ装置を適用可能な車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグ装置の図示は省略する。図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、ここでも、エアバッグ装置の図示は省略する。
【0031】
図1に示すように、車両用シートを部位として観たときには、乗員が着座する部分のシートクッション2と;背もたれを形成するシートバック1と;シートバック1の上端に連結されるヘッドレスト3とを含んでいる。
【0032】
図2に示すように、シートバック1の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム1fが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド、表皮(図示せず)が設けられている。シートクッション2についても、シートバック1と同様に、着座フレーム2fの上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド、表皮(図示せず)が設けられている。なお、着座フレーム2fとシートバックフレーム1fとは、リクライニング機構4を介して連結されている。
【0033】
シートバックフレーム1fは、図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10L,10Rと、これらのサイドフレーム10L,10Rの上端部を連結する上部フレーム11と、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。
【0034】
図3は、本発明に係るエアバッグ装置を車両用シートに搭載した様子を示す側面図(A)、正面図(B)であり、車両用シートに関しては透視で示すものとする。なお、本発明の特徴に関わるエアバッグのチャンバ構成(メインチャンバ、インナーチャンバについては、図5以降の実施例で詳細に説明することとし、図3及び図4では説明を省略する。
【0035】
本発明に係るエアバッグ装置は、シートバック1の左右側部に収容され、膨張ガスを発生する一対のインフレータ12L,12Rと、ロールされ、又は折り畳まれた状態でシートバッグ1内に収容され、インフレータ12L,12Rから放出される膨張ガスによって展開するエアバッグ14とを備えている。なお、図3においては、シートバック1はヘッドレスト3と分離しているが、本発明に係るエアバッグ装置は、ヘッドレスト一体型のシートバックにも適用することができる。
【0036】
エアバッグ14は、車両用シートの側部から前方に向かって展開するメインチャンバ(16L,16R,18)と、当該メインチャンバの乗員側において当該メインチャンバと車両用シートの幅方向で重なるように展開するインナーチャンバ(50,150,250,350)とを含む。そして、収容状態のエアバッグ14において、メインチャンバ(16L,16R,18)は、左右のサイドフレーム10L,10Rの外側に沿って配置される。なお、図3及び図4において、符号20L,20Rはインフレータ12L,12Rの導入部を示すものである。
【0037】
メインチャンバ(16L,16R,18)は、エアバッグの展開時に主に乗員の腰部から胸部付近を保護する側部領域16L,16Rと、主に乗員の頭部付近を保護する上部領域18とを含む構成となっている。そして、側部領域16L,16Rが、車両用シートの左右両側部の外側に配置され、上部領域18が側部領域16L,16Rの上端部分を連結するように配置される。
【0038】
この場合、左右の側部領域16L,16Rと中央の上部領域18とが繋がった状態となり、エアバッグ(メインチャンバ)14はドーム状に展開し、シートに着座している乗員の側部及び上部を完全に覆うようになる。その結果、少なくとも左右方向、上方向、斜め上方向への乗員の移動を確実に拘束でき、乗員の頭部から腰部に渡って適切に保護することが可能となる。
【0039】
図3(B)に示すように、インフレータ12L,12Rは、サイドフレーム10L,10Rの外側に配置され、スタッドボルト(12a)によってサイドフレーム10L,10Rに対して固定される。エアバッグ14の上部領域18は、サイドフレーム10L,10Rの外側を通って、シートフレーム11の上部に配置される。シートフレーム11上の上部領域18aは、例えば、オメガ(Ω)状に折り畳まれた状態で収容される。
【0040】
エアバッグ14をサイドフレーム10L,10Rに対して固定する際には、エアバッグ14を細長く圧縮した状態でサイドフレーム10L,10Rの外側に配置し、インフレータ12L,12Rを、スタッドボルト(12a)によってサイドフレーム10L,10Rに固定する。後述するが、この状態で、インナーチャンバ(50,150,250,350)をサイドフレーム10L,10Rの内側に折込む(巻き込む)ことになる。
【0041】
図4は、本発明に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を示すものであり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が正面から見た様子を示すものである。
【0042】
車両の側面衝突等が発生すると、インフレータ12L,12Rから膨張ガスが放出されて、エアバッグ14が膨張・展開する。エアバッグ14の膨張が始まると、ガスが側部領域16L,16Rと上部領域18に流れ込む。エアバッグ14の側部領域16L,16Rは、サイドフレーム10L,10Rの外側から前方(進行方向)に向かって展開する。
【0043】
一方、エアバッグ14の上部領域18は、シートバック1の上端からヘッドレスト3を飛び越えて前方に展開し、乗員の後頭部の後ろから前方に向かって覆い被さるようになる。このため、上部領域18がエアバッグ14の展開時に乗員の頭部に直接衝撃を与えることを回避できるとともに、乗員の頭部周辺の広い範囲に保護領域を形成することが可能となる。
【0044】
(実施例)
以下、本発明の第1~第4実施例について説明する。なお、何れの実施例についても、図1図4に示したタイプのエアバッグ装置のみならず、サイドエアバッグ装置等の車両用シートに装備される他のタイプのエアバッグ装置に適用可能である。
また、各実施例において、同一又は対応する構成要素については、同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。
【0045】
(第1実施例)
図5は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグ14を展開した状態(収容前に平置きした状態)を示す平面図である。図6は、図5の一部(X)を拡大して示した平面図である。
【0046】
本実施例に係るエアバッグ装置は、車両用シートのサイドフレーム10L,10Rに固定され、膨張ガスを発生するインフレータ12L,12Rと、サイドフレーム10L,10Rに沿って収容され、インフレータ12L,12Rから放出される膨張ガスによって膨張・展開するエアバッグ14とを備える。
【0047】
エアバッグ14は、車両用シートの側部から前方に向かって展開するメインチャンバ16L,16R,18と、メインチャンバ16L,16Rの乗員側において当該メインチャンバ16L,16Rと車両シート幅方向で重なるように展開するインナーチャンバ50と、インフレータ12L,12Rのガスをメインチャンバ16L,16R,18及びインナーチャンバ50に導くガスガイド52とを備えている。インフレータ12L,12Rは、サイドフレーム10L,10Rの乗員と反対側に配置する。
【0048】
エアバッグ14は、概ね同一形状の2枚のパネルを重ねて(又は、1枚のパネルを折り重ねて)縫製することによって成形される。そして、メインチャンバ16L,16R,18及びインナーチャンバ50は、平面的に一体成形することができる。ここで、「平面的に一体成形」とは、2枚のパネルを平置きの状態で重ね合わせた時に、メインチャンバ16L,16R,18とインナーチャンバ50とが厚み方向に重なることなく成形される意味である。
【0049】
ガスガイド52は、インフレータ12Lを受け入れるインフレータ挿入部20Lと、インフレータ12Lから放出されたガスを異なる2方向(反対方向)に導くガス分岐構造部54とを備えている。図6に示すように、ガスガイド52は、前後方向(図の上下方向)の端部が概ね矩形に成形され、その中間部分にインフレータ挿入部20Lが形成されている。ガス分岐構造部54は、内側(インフレータ12L側)に鋭利に突出した先端部54aを備え、先端部54aは上下方向においてンフレータ12Lと対向するように形成される。ガス分岐構造部54の先端部(54a)の形状としては、平面、湾曲面等とすることができる。なお、符号55は補強用のパネルを固定するための縫製である。
【0050】
ガスガイド52は、メインチャンバ16Lのダクト部60内に配置された第1のガイド領域56と、インナーチャンバ50内に配置された第2のガイド領域58とを含み、インフレータ挿入部20Lは、第1及び第2のガイド領域56,58の境界部分において共通に設けられている。
【0051】
第1のガイド領域56は、メインチャンバ16Lの後縁側において上下方向に延びるダクト部60に連通するようになっている。第1のガイド領域56において、膨張ガスをダクト部60の上下方向に導く一対の第1の開口部56a,56bが形成される。同様に、第2のガイド領域58において、膨張ガスをインナーチャンバ50の上下方向に導く一対の第2の開口部62a.62bが形成される。
【0052】
ガスガイド52は、例えば、エアバッグ14とは別に成形したものを、エアバッグ14を構成する2枚のパネルの間に挟み込むように配置し、必要箇所を縫製することによって固定することができる。あるいは、エアバッグ14を構成する2枚のパネルに対して、縫製のみによって、内部の空間を区画し、ガスガイドとして利用することも可能である。
【0053】
インナーチャンバ50は、メインチャンバ16L,16R,18と一体に成形され、メインチャンバ16Lの後方に突出した形状で構成される。インナーチャンバ50は、また、メインチャンバ16Lとは反対側の縁部に固定用のタブ64を備えている。
【0054】
インフレータ12Lから放出された膨張ガスは、ガスガイド52の分岐構造部54によって、前後方向に分岐され、メインチャンバ16Lとインナーチャンバ50に導かれる。本実施例においては、インナーチャンバを介してメインチャンバにガスが流れ込むものではなく、ガスガイド52において直接的にガスの流れを調整するものである。このため、当該装置の作動時に、膨張ガスが速やかにメインチャンバ16L及びインナーチャンバ50に供給されることになり、メインチャンバ16L及びインナーチャンバ50の両方が速やかに展開し、乗員の拘束性能が向上する。
【0055】
図7は、第1実施例に係るエアバッグ14を展開した状態(収容前に平置きした状態)において、インナーチャンバ50をメインチャンバ16L側に折り重ねた状態を示す平面図である。図8は、第1実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
【0056】
図5図6に示したように、インナーチャンバ50は、メインチャンバ16Lの後縁部から後方に突出するように連結されている。そして、図7に示すように、インナーチャンバ50は、メインチャンバ16L側に折り畳まれた状態で収容される。実際には、メインチャンバ16L,16R,18をロール状にして、サイドフレーム10L,10Rに仮固定した後に、インナーチャンバ50をメインチャンバ16L側に折り重ねる。
【0057】
インナーチャンバ50をメインチャンバ16Lから後方に突出するように成形し、収容時には、インナーチャンバ50はメインチャンバ16L側に折り畳まれるため、簡素な構成でインナーチャンバ50を成形でき、エアバッグ14の展開初期の段階で乗員を速やかに拘束するという機能を十分に発揮させることが可能となる。
【0058】
インナーチャンバ50の後端部に設けられたタブ64は、サイドフレーム10Lの前縁を乗り越えて当該サイドフレームの内側まで延びるように構成されている。タブ64は、サイドフレーム10Lを貫通するインフレータ12Lのスタッドボルト12aに連結され、あるいは、サイドフレーム10Lに直接連結させることもできる。なお、本実施例においては、インナーチャンバ50にタブ64を設け、当該タブ64をサイドフレーム10Lに連結させる構造としているが、タブ64を用いることなく、単にインナーチャンバ50をサイドフレーム10Lの内側(乗員側)折り重ねるように構成することも可能である。
【0059】
本実施例においては、インナーチャンバ50のタブ64がサイドフレーム10Lの前縁を乗り越えてサイドフレーム10Lの内側まで延び、そこで、インフレータ12Lのスタッドボルト12aやサイドフレーム10L自体に連結させているため、図8(B)に示すように、インナーチャンバ50はサイドフレーム10Lの内面を反力面として乗員側に展開するようになる。また、インナーチャンバ50の端部が固定されることにより、インナーチャンバ50の展開挙動及び展開形状が安定することになる。
【0060】
(第2実施例)
図9(A)、(B)は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグ114を展開した状態(収容前に平置きした状態)の一部を示す平面図であり、(A)図が固定用のタブ164a,164bを備えたもの、(B)図が固定用のタブを備えないものである。図10は、第2実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
【0061】
本実施例においては、インナーチャンバ150は、「コ」の字チューブ状に成形され、メインチャンバ16Lの上下方向(ダクト部60の長手方向)に概ね平行に延びるチャンバ本体部151を有する構造となっている。また、インナーチャンバ150のガス導入部150a,150bは、ダクト部60に連通している。
【0062】
インナーチャンバ150は、メインチャンバ16L,16R,18と一体に成形され、メインチャンバ16Lの後方に突出した形状で構成される。インナーチャンバ150は、また、メインチャンバ16Lとは反対側の縁部に一対の固定用のタブ164a,164bを備えている。
【0063】
ガスガイド152は、インフレータ12Lから放出されたガスを上下方向に分岐するように「Y」又は「く」の字状に成形され、このような形状によってガス分岐構造部が形成される。
【0064】
ガスガイド152は、膨張ガスをダクト部60の上方を向く第1のガス噴出口152aと、下方を向く第2のガス噴出口152bとを備えている。そして、インナーチャンバ150のガス導入部150a,150bの各々が、第1のガス噴出口152aと第2のガス噴出口152bの近傍に位置するようになっている。
【0065】
ガスガイド152は、例えば、エアバッグ114とは別に成形したものを、エアバッグ114を構成する2枚のパネルの間に挟み込むように配置し、必要箇所を縫製することによって固定することができる。あるいは、エアバッグ114を構成する2枚のパネルに対して、縫製のみによって、内部の空間を区画し、ガスガイドとして利用することも可能である。
【0066】
インフレータ12Lから放出された膨張ガスは、ガスガイド152によって、上下方向に分岐され、メインチャンバ16Lとインナーチャンバ150に導かれる。本実施例においては、インナーチャンバ150を介してメインチャンバにガスが流れ込むものではなく、ガスガイド152において直接的にガスの流れを調整するものである。このため、当該装置の作動時に、膨張ガスが速やかにメインチャンバ16L(16R,18)及びインナーチャンバ150に供給されることになり、メインチャンバ16L,16R,18及びインナーチャンバ150の両方が速やかに展開し、乗員の拘束性能が向上する。
【0067】
繰り返しになるが、図9に示すように、インナーチャンバ150は、メインチャンバ16Lの後縁部から後方に突出するように連結され、インナーチャンバ150は、第1実施例(図7)と同様にメインチャンバ16L側に折り重ねられた状態で収容される。実際には、メインチャンバ16L,16R,18をロール状にして、サイドフレーム10L,10Rに仮固定した後に、インナーチャンバ150をメインチャンバ16L側に折り重ねる。
【0068】
インナーチャンバ150の後端部に設けられたタブ164a,164bは、サイドフレーム10Lの前縁を乗り越えて当該サイドフレーム10Lの内側まで延びるように構成されている。そして、一方のタブ164aがサイドフレーム10Lに直接連結され、他方のタブ164bがサイドフレーム10Lを貫通するインフレータ12Lのスタッドボルト12aに連結される。
【0069】
本実施例においては、インナーチャンバ150のタブ164a,164bがサイドフレーム10Lの前縁を乗り越えてサイドフレーム10Lの内側まで延び、そこで、インフレータ12Lのスタッドボルト12aやサイドフレーム10L自体に連結させているため、インナーチャンバ150はサイドフレーム10Lの内面を反力面として乗員側に展開するようになる。また、タブ164a,164bによって、インナーチャンバ150の端部が固定されることにより、インナーチャンバ150の展開挙動及び展開形状が安定することになる。
【0070】
図9(B)に示すように、インナーチャンバ150にタブ(164a,164b)を設けない場合には、単にインナーチャンバ150をサイドフレーム10Lの内側(乗員側)折り返すことになる。
【0071】
(第3実施例)
図11(A)、(B)は、本発明の第3実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグ214を展開した状態(収容前に平置きした状態)の一部を示す平面図であり、(A)図が固定用のタブ264a,264bを備えたもの、(B)図が固定用のタブを備えないものである。図12は、第3実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
【0072】
本実施例においては、インナーチャンバ250は、「L」字チューブ状に成形され、メインチャンバ16Lの上下方向に概ね平行に延びるチャンバ本体部251を有する構造となっている。また、インナーチャンバ250のガス導入部250aは、ダクト部60に連通している。
【0073】
インナーチャンバ250は、メインチャンバ16L,16R,18と一体に成形され、メインチャンバ16Lの後方に突出した形状で構成される。インナーチャンバ250は、また、メインチャンバ16Lとは反対側の縁部に一対の固定用のタブ264a,264bを備えている。
【0074】
ガスガイド252は、インフレータ12Lから放出されたガスを上下方向に分岐するように「Y」又は「く」の字状に成形され、このような形状によってガス分岐構造部が形成される。
【0075】
ガスガイド252は、膨張ガスをダクト部60の上方を向く第1のガス噴出口252aと、下方を向く第2のガス噴出口252bとを備えている。そして、インナーチャンバ250のガス導入部250aが、第1のガス噴出口252aの近傍に位置するようになっている。
【0076】
ガスガイド252は、例えば、エアバッグ214とは別に成形したものを、エアバッグ214を構成する2枚のパネルの間に挟み込むように配置し、必要箇所を縫製することによって固定することができる。あるいは、エアバッグ214を構成する2枚のパネルに対して、縫製のみによって、内部の空間を区画し、ガスガイドとして利用することも可能である。
【0077】
インフレータ12Lから放出された膨張ガスは、ガスガイド252によって、上下方向に分岐され、メインチャンバ16L,18とインナーチャンバ250に導かれる。本実施例においては、インナーチャンバ250を介してメインチャンバにガスが流れ込むものではなく、ガスガイド252において直接的にガスの流れを調整するものである。このため、当該装置の作動時に、膨張ガスが速やかにメインチャンバ16L(16R,18)及びインナーチャンバ250に供給されることになり、メインチャンバ16L,16R,18及びインナーチャンバ250の両方が速やかに展開し、乗員の拘束性能が向上する。
【0078】
繰り返しになるが、図11に示すように、インナーチャンバ250は、メインチャンバ16Lの後縁部から後方に突出するように連結され、インナーチャンバ250は、第1実施例(図7)と同様にメインチャンバ16L側に折り重ねられた状態で収容される。実際には、メインチャンバ16L,16R,18をロール状にして、サイドフレーム10L,10Rに仮固定した後に、インナーチャンバ250をメインチャンバ16L側に折り重ねる。
【0079】
インナーチャンバ250の後端部に設けられたタブ264a,264bは、サイドフレーム10Lの前縁を乗り越えて当該サイドフレームの内側まで延びるように構成されている。そして、一方のタブ264aがサイドフレームに直接連結され、他方のタブ264bがサイドフレーム10Lを貫通するインフレータ12Lのスタッドボルト12aに連結される。
【0080】
本実施例においては、図12(B)に示すように、インナーチャンバ250のタブ264a,264bがサイドフレーム10Lの前縁を乗り越えてサイドフレーム10Lの内側まで延び、そこで、インフレータ12Lのスタッドボルト12aやサイドフレーム10L自体に連結させているため、インナーチャンバ250はサイドフレーム10Lの内面を反力面として乗員側に展開するようになる。また、タブ264a,264bによって、インナーチャンバ250の端部が固定されることにより、インナーチャンバ250の展開挙動及び展開形状が安定することになる。
【0081】
図11(B)に示すように、インナーチャンバ250にタブ(264a,264b)を設けない場合には、単にインナーチャンバ250をサイドフレーム10Lの内側(乗員側)折り返すことになる。
【0082】
(第4実施例)
図13(A)、(B)は、本発明の第4実施例に係るエアバッグ装置に採用されるエアバッグ314を展開した状態(収容前に平置きした状態)の一部を示す平面図であり、(A)図が固定用のタブ364a,364bを備えたもの、(B)図が固定用のタブを備えないものである。図14は、第4実施例に係るエアバッグ装置の作動状態(エアバッグの展開状態)を概略的に示す説明図であり、(A)が車両用シートの幅方向の側面から見た様子を示し、(B)が(A)図のA-A方向の断面を示す。
【0083】
本実施例においては、インナーチャンバ350は、「L」字チューブ状に成形され、メインチャンバ16Lの上下方向に概ね平行に延びるチャンバ本体部351を有する構造となっている。また、インナーチャンバ350のガス導入部350aは、ダクト部60に連通している。
【0084】
インナーチャンバ350は、メインチャンバ16L,16R,18と一体に成形され、メインチャンバ16Lの後方に突出した形状で構成される。インナーチャンバ350は、また、メインチャンバ16Lとは反対側の縁部に一対の固定用のタブ364a,364bを備えている。
【0085】
ガスガイド352は、インフレータ12Lから放出されたガスを上下方向に分岐するように「Y」又は「く」の字状に成形され、このような形状によってガス分岐構造部が形成される。
【0086】
ガスガイド352は、膨張ガスをダクト部60の上方を向く第1のガス噴出口352aと、下方を向く第2のガス噴出口352bとを備えている。そして、インナーチャンバ350のガス導入部350aが、第2のガス噴出口352bの近傍に位置するようになっている。
【0087】
ガスガイド352は、例えば、エアバッグ314とは別に成形したものを、エアバッグ314を構成する2枚のパネルの間に挟み込むように配置し、必要箇所を縫製することによって固定することができる。あるいは、エアバッグ314を構成する2枚のパネルに対して、縫製のみによって、内部の空間を区画し、ガスガイドとして利用することも可能である。
【0088】
インフレータ12Lから放出された膨張ガスは、ガスガイド352によって、上下方向に分岐され、メインチャンバ16L,18とインナーチャンバ350に導かれる。本実施例においては、インナーチャンバ350を介してメインチャンバにガスが流れ込むものではなく、ガスガイド352において直接的にガスの流れを調整するものである。このため、当該装置の作動時に、膨張ガスが速やかにメインチャンバ16L(16R,18)及びインナーチャンバ350に供給されることになり、メインチャンバ16L,16R,18及びインナーチャンバ350の両方が速やかに展開し、乗員の拘束性能が向上する。
【0089】
繰り返しになるが、図13に示すように、インナーチャンバ350は、メインチャンバ16Lの後縁部から後方に突出するように連結されており、インナーチャンバ350は、第1実施例(図7)と同様にメインチャンバ16L側に折り畳まれた状態で収容される。実際には、メインチャンバ16L,16R,18をロール状にして、サイドフレーム10L,10Rに仮固定した後に、インナーチャンバ350をメインチャンバ16L側に折り重ねる。
【0090】
インナーチャンバ350の後端部に設けられたタブ364a,364bは、サイドフレーム10Lの前縁を乗り越えて当該サイドフレームの内側まで延びるように構成されている。そして、一方のタブ364aがサイドフレーム10Lに直接連結され、他方のタブ364bがサイドフレーム10Lを貫通するインフレータ12Lのスタッドボルト12aに連結される。
【0091】
本実施例においては、図14(B)に示すように、インナーチャンバ350のタブ364a,364bがサイドフレーム10Lの前縁を乗り越えてサイドフレーム10Lの内側まで延び、そこで、インフレータ12Lのスタッドボルト12aやサイドフレーム10L自体に連結させているため、インナーチャンバ350はサイドフレーム10Lの内面を反力面として乗員側に展開するようになる。また、タブ364a,364bによって、インナーチャンバ350の端部が固定されることにより、インナーチャンバ350の展開挙動及び展開形状が安定することになる。
【0092】
図13(B)に示すように、インナーチャンバ350にタブ(364a,364b)を設けない場合には、単にインナーチャンバ350をサイドフレーム10Lの内側(乗員側)折り返すことになる。
【0093】
本発明について実施例を参照して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的思想の範囲を逸脱することなく、適宜変更可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14