(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】工作機械制御及び工作機械に対する特性図に基づく誤差補償のための方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/404 20060101AFI20240703BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20240703BHJP
G05B 19/4155 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
G05B19/404 K
B23Q15/12 Z
G05B19/4155 V
(21)【出願番号】P 2022564031
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021060246
(87)【国際公開番号】W WO2021214061
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102020205031.7
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505377326
【氏名又は名称】ディッケル マホ ゼーバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,イネス
(72)【発明者】
【氏名】グルーデ,イザベラ
(72)【発明者】
【氏名】ダネク,ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ティンメ,アレクサンダー
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059073(JP,A)
【文献】特開2006-116663(JP,A)
【文献】特開2011-140098(JP,A)
【文献】特開平11-333670(JP,A)
【文献】特開平11-338527(JP,A)
【文献】Christian NAUMANN et al.,“Characteristic Diagram Based Correction Algorithms for the Thermo-elastic Deformation of Machine T,Procedia CIRP,2016年,Vol.41,p.801-805,DOI: 10.1016/j.procir.2015.12.029
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00 - 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御工作機械(100)の誤差を補償するための方法であって、前記数値制御工作機械は、1つ以上の機械加工デバイスに対して少なくとも1つの加工片を位置付けるための少なくとも1つの制御可能な機械軸を備え、前記方法は、
前記
数値制御工作機械(100)上のセンサによって前記
数値制御工作機械(100)の状態を記述する少なくとも1つの入力変数の実測値を取得するステップと、
前記
数値制御工作機械(100)の制御デバイス(200)によって評価される少なくとも1つの補償パラメータを前記
数値制御工作機械
(100)の前記制御デバイス(200)に提供するステップと、
前記制御デバイス(200)に提供された前記
評価される少なくとも1つの補償パラメータに基づいて前記
数値制御工作機械(100)における誤差を補償するステップとを含み、
前記
評価される少なくとも1つの補償パラメータを提供する前記ステップは、
各々が前記
数値制御工作機械(100)の構造的挙動及び/又は前記
数値制御工作機械(100)の機械部品の幾何学的配置をそれぞれの前記入力変数の関数として記述する、
複数の特性図を提供するステップと、
前記複数の特性図のうちの少なくとも2つを重ね合わせて合成特性図を形成することによって、前記合成特性図を提供するステップとを備え、重ね合わせに使用される少なくとも2つの前記複数の特性図の各々は、挙動のグループから前記数値制御工作機械(100)の異なる挙動を記述し、前記挙動のグループは、前記数値制御工作機械(100)の個々の又は複数の前記機械部品の温度挙動及び静的変位挙動及び動的変位挙動をそれぞれ含み、前記方法はさらに、
提供された前記
合成特性図
に基づいて、
並びに取得された前記実測値及
び前記制御デバイス(200)の1つ以上の制御パラメータ
のうちの1つまたは両方に基づいて、前記
数値制御工作機械(100)の前記制御デバイス(200)によって評価され
る補償パラメータを計算するように構成されるグローバル補正モデルを提供するステップと、
提供された前記
合成特性図
に基づいて、
並びに取得された前記実測値及
び1つ以上の前記制御パラメータ
のうちの1つまたは両方に基づいて、前記グローバル補正モデルを使用し
て補償パラメータを計算するステップと、
前記評価される
少なくとも1つの補償パラメータ
として計算された前記補償パラメータを前記
数値制御工作機械(100)の前記制御デバイス(200)に提供するステップとをさらに含む、方法。
【請求項2】
提供される前記特性図は各々、前記
数値制御工作機械(100)の個々の又は複数の前記機械部品の温度挙動、静的変位挙動及び/又は動的変位挙動を記述することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
数値制御工作機械(100)の状態を記述する前記入力変数は、少なくとも温度値、並びに付加的に位置値及び/又は加速度値及び/又は力値及び/又はトルク値及び/又は歪み値及び/又は湿度値及び/又は直接的に前記加工片上で測定された値であることを特徴とする、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性図及び/又は前記合成特性図の前記入力変数が、ベクトル変数の形態であることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記補償パラメータの前記計算及び/又はそれに基づく誤差の前記補償は、自由に選択可能な時間間隔をおいて実行されてもよいことを特徴とする、請求項1から
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記特性図は各々、前記入力変数の複数の基準測定値の取得に基づいて、及び/又はコンピュータ実装シミュレーションモデルを評価することによって、又は加工片を外部測定することによって提供されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記特性図及び/又は前記合成特性図は、取得された前記実測値及び/又は前記制御パラメータに基づいて調整されることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記特性図及び/又は前記合成特性図の前記調整は、コンピュータ実装ニューラルネットワーク又は別のAIアルゴリズムを使用して、前記実測値及び/又は前記制御パラメータに基づいて実行されることを特徴とする、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記特性図及び/又は前記合成特性図の前記調整は、
現在提供されている前記特性図の少なくとも一部及び/又は現在提供されている前記合成特性図の一部を前記
コンピュータ実装ニューラルネットワーク又は他のAIアルゴリズムに読み込むステップと、
前記実測値及び/又は前記制御パラメータを前記
コンピュータ実装ニューラルネットワーク又は他のAIアルゴリズムに読み込むステップと、
調整された特性図及び/又は調整された合成特性図を決定するステップとを含むことを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記特性図及び/又は前記合成特性図の前記調整は、所定の時間間隔をおいて自動的に実行される、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記
評価される少なくとも1つの補償パラメータは、調整された前記特性図又は合成特性図に基づいて前記グローバル補正モデルを使用して計算されることを特徴とする、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記実測値が、前記加工片が前記
数値制御工作機械(100)に挿入された状態で取得されることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記特性図及び/又は前記合成特性図の前記調整は
、
前記
数値制御工作機械
(100)によって加工される第1の加工片の目標幾何学的形状と測定された実際の幾何学的形状との間の1つ以上の幾何学的偏差を取得するステップと、
取得された前記実測値及び/又は前記少なくとも1つの制御パラメータ及び/又は取得された前記幾何学的偏差に基づいて前記特性図及び/又は前記合成特性図を調整するステップとを含むことを特徴とする、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の加工片の前記実際の幾何学的形状が、光学及び/又は接触測定デバイスによって取得されることを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記グローバル補正モデルを使用した前記
評価される少なくとも1つの補償パラメータの前記計算は、取得された前記実測値及び/又は前記制御パラメータに基づいて、前記合成特性図における補間
法を用いて実施されることを特徴とする、請求項1から
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
評価デバイスが、前記特性図を重ね合わせて前記合成特性図を形成し、及び/又は前記グローバル補正モデルを提供し、取得された前記実測値及び/又は前記制御パラメータを受信し、受信した前記実測値及び/又は前記制御パラメータに基づいて前記補償パラメータを計算し、計算された前記補償パラメータを前記
数値制御工作機械(100)の前記制御デバイスに提供するように構成されることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記特性図がクラウド内又は外部コンピュータ上で再計算され、再計算された前記特性図
が機械制御部において交換されることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
数値制御工作機械(100)の誤差を補償するための制御システムであって、
前記
数値制御工作機械の制御デバイス(200)と、
前記
数値制御工作機械(100)の状態を記述する1つ以上の入力変数の実測値を取得するために前記
数値制御工作機械に取り付けられた1つ以上のセンサとを備え、
前記制御システムは、請求項1から
17のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されることを特徴とする、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の特性図に基づく誤差補償のための方法及びデバイスに関する。さらに、本発明は、特性図に基づく補償に基づいて誤差を補償するように構成された機械制御部を有する工作機械、特にNC又はCNC工作機械を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の変形並びに構造的及び動的偏差は、加工精度に決定的な影響を及ぼす可能性がある。偏差を補償するための様々な方法が知られている。
【0003】
例えば、独国特許出願公開第102014202878号は、動作中に熱を発生させる機能構成要素が配置され、循環回路を形成するためにキャビティ構造が設けられた機械フレームを含む工作機械を開示している。冷却媒体が、工作機械の温領域と冷領域との間の温度バランスをもたらすために、キャビティ内の機械フレーム内で循環される。
【0004】
加えて、位置誤差を、機械制御部を用いることによって補正することができる。独国特許出願公開第102010003303号は、少なくとも1つの直線軸を有する工作機械上の温度依存位置変化を補償するための方法及びデバイスに関する。この発明によれば、工作機械の直線軸の温度測定位置において少なくとも1つの温度値が取得され、基準温度と取得された温度値との間の温度差値が計算され、補償値が温度差値の関数として決定され、温度依存位置変化、例えば工作機械にクランプされた工具若しくは加工片、又は工作機械の構成要素、又は工作機械の直線軸の温度依存変位が、決定された補償値の関数として工作機械の制御中に補償される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工作機械上の位置変化を補正するための上記の方法及びデバイスに関連して、本発明の目的は、工作機械上の誤差を補償するための改善されたデバイス及び改善された方法を提供することであり、それによって補償をより効率的かつ正確に達成することができる。加えて、改善された機械制御を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の本発明の目的は、独立請求項に記載されているように達成される。本発明の好ましい実施形態の特徴は、従属請求項に記載されている。
【0007】
例示的な態様によれば、数値制御工作機械の誤差を補償するための方法が提案され、上記工作機械は、1つ以上の機械加工デバイスに対して少なくとも1つの加工片を位置付けるための少なくとも1つの制御可能な機械軸を有する。本方法は、工作機械上のセンサによって工作機械の状態(特に、スピンドル位置、機械フレーム温度、マルチジョーチャックのクランプ経路監視、工具位置、スピンドル速度)を記述する少なくとも1つの入力変数の実際値(又は現在の測定値)を取得するステップと、工作機械の制御デバイスによって評価される少なくとも1つの補償パラメータを工作機械の制御デバイスに提供するステップと、制御デバイスに提供された補償パラメータに基づいて工作機械における決定された誤差又は偏差を補償するステップとを含むことができる。少なくとも1つの補償パラメータを提供するステップは、各々が工作機械の構造的挙動及び/又は工作機械の機械部品の幾何学的配置をそれぞれの入力変数の関数として記述することができる、1つ又は好ましくは複数の特性図(特に元の特性図)を提供するステップと、図を重ね合わせて合成図を形成するステップと、提供された合成特性図、取得された実測値及び/又は制御デバイスの1つ以上の制御パラメータに基づいて、工作機械の制御デバイスによって評価される補償パラメータを計算するように構成されるグローバル補正モデルを提供し、提供された単一の特性図及び/又は合成特性図、取得された実測値及び/又は制御パラメータに基づいて、グローバル補正モデルを使用して補償パラメータを計算し、工作機械の制御デバイスにおいて制御デバイスによって評価される補償パラメータを提供するステップとをさらに含むことができる。ここで、補償パラメータは、必要とされる目標状態と(測定又はシミュレートされた)実際の状態との間の差であってもよい。補償パラメータはまた、現在の制御パラメータと最適化された制御パラメータとの間の差を示してもよく、最適化された制御パラメータを使用して工作機械の実際の状態を目標状態に対して調整/近似することができ、したがって工作機械の誤差を低減又は排除することができる。工作機械上の偏差の非常に迅速かつ効率的な補償は、本発明による特性図に基づく補償によって達成される。したがって、工作機械の加工精度を大幅に向上させると同時に、機械制御部の計算能力を最適化することができる。
【0008】
特性図に基づく補償は、幾何学的誤差(回転軸及び直線軸に関する)などの誤差の空間補償、及び機械のダイナミクスに起因する誤差の補償を含むように特に有利に拡張される。したがって、1つ以上の重ね合わせ図に基づく直接的に機械制御部における包括的な補償が提案される。したがって、数値制御工作機械における誤差の特性図に基づく補正が達成される。したがって、機械制御部の計算及び通信負荷を大幅に増加させることなく、加工正確度を大幅に改善することができる。
【0009】
加えて、誤差補償は、合成特性図に基づいて直接的に機械制御部において実行されてもよく(すなわち、工作機械上の位置付け誤差などの誤差の特性図に基づく補正)、合成特性図は、工作機械のグローバル補正モデルに統合されてもよい。特に好ましくは、合成特性図は、ニューラルネットワークを使用して少なくとも1回又は数回調整されてもよい。これは、提供された特性図に基づいて工作機械制御部上でリアルタイムで効率的かつユーザフレンドリであるだけでなく、極めて迅速かつ正確に補償を実行することができるという相乗的な利点を有する。特性図は、実測値と組み合わせたFEシミュレーション(すなわち、対応する特性図を生成するための工作機械のシミュレーション結果と実測値との組合せ)に基づいて作成されてもよい。有利には、合成特性図はまた、ニューラルネットワークによって常に最適化されてもよい。したがって、数値制御工作機械の誤差を補償するための方法は、コンピュータ実装ニューラルネットワーク(人工ニューラルネットワーク)を使用して合成特性図を調整するステップをさらに含むことができる。
【0010】
グローバル補正モデルは、好ましくは、工作機械の振動補償のための少なくとも1つの特性図を含む。振動を低減するための補償パラメータは、提供された合成特性図(振動補償のための特性図を含む)及び取得された実測値に基づいて、グローバル補正モデルによって決定される。振動補償について、工作機械における決定された誤差は、制御デバイスに提供される補償パラメータに基づいて補償される。特に好ましくは、工作機械の騒音及び振動補償(誤差補償)のための補償パラメータが決定される。ここで、補償パラメータは、工作機械制御部を介して工作機械を対応して制御することによって、工作機械における誤差に直接かつ能動的に影響を及ぼすために使用される。この目的のために、工作機械の軸の対応する制御に加えて、例えば、加工片加工中の機械加工によって引き起こされる振動を低減するために、能動機械軸受及び/又は能動吸収器も設けられる。したがって、数値制御工作機械において、効率的に誤差を補償することができ、その結果、加工精度を向上させることができる。
【0011】
提供される特性図は各々、工作機械の個々の又は複数の機械部品の温度挙動、静的変位挙動及び/又は動的変位挙動を記述することができる。特に、測定値及び補間に基づいて決定される多次元特性図が使用される。
【0012】
合成特性図は、2つ以上の特性図を重ね合わせることによって提供されてもよい。特性図は、図のグループから選択することができ、上記グループは、3つ以上の図を含む。これらは、例えば、工作機械の個々の又は複数の機械部品のそれぞれの温度挙動、静的変位挙動及び/又は動的変位挙動を記述することができる。この特性図の重ね合わせにより、工作機械の包括的な説明を可能にする多次元特性図を提供することができる。幾何学的誤差を補償するための特性図は、合成特性図を形成するために、温度特性図、電力特性図、速度特性図などの他の特性図と有利に重ね合わされる。
【0013】
合成特性図は、2つ以上の特性図を重ね合わせるか又は組み合わせることによって生成することができ、その結果、多次元特性図空間が展開される。特性図は、工作機械の個々の機械部品又は複数の機械部品の温度挙動、静的変位挙動及び動的変位挙動を記述することができる。
【0014】
温度値に加えて、工作機械の状態を記述する入力変数はまた、位置値及び/又は加速度値及び/又は力値及び/又はトルク値及び/又は歪み値であってもよい。特に、加工片上で測定された湿度及び寸法及び位置の値も含まれてもよい。特性図の正確度をさらに向上させるために、測定技術の観点からトレーサビリティを有する外部測定機を使用することがさらに有利に提案される。
【0015】
特性図及び合成特性図の入力変数は、好ましくはベクトル変数の形態である。多次元特性図は、好ましくは、最初に実験において決定され、後で機械制御部に統合される。動作中、多次元図は動的に調整することができる。特性図の個々のパラメータはまた、合成特性図を拡張するために、後に機械制御部に統合されてもよい。したがって、合成特性図は、多大な労力なしに特性図のその後の拡張が可能であるように構成される。図が拡張されると、特性図調整のために新たな基準点が特性図に追加され得る。
【0016】
本発明の特定の発展では、常に可能な限り完全に特性図のために確保されたメモリ空間を使用し、また長時間の訓練後に特性図の調整可能性を維持するために、好ましくは新しい入力の前に別の参照点が削除される。この目的のために、情報内容が最小である基準点を選択することが好ましい。基準点が省略され、その位置が補間されるときに生じる誤差の絶対値が、この基準点の情報内容の評価基準である。
【0017】
補償パラメータの計算及び/又はそれに基づく誤差の補償は、所定の時間間隔をおいて実行されてもよい。特性図は各々、入力変数の複数の基準測定値の取得に基づいて、及び/又はコンピュータ実装シミュレーションモデルを評価することによって、又は加工片若しくは工具を外部測定することによって提供されてもよい。
【0018】
特性図及び/又は合成特性図は、取得された実測値及び/又は制御パラメータに基づいて調整されてもよい。特に好ましくは、特性図は、ニューラルネットワークを使用して少なくとも1回調整されてもよい。これは、提供された特性図に基づいて工作機械制御部においてリアルタイムで効率的かつユーザフレンドリであるだけでなく、極めて迅速かつ正確に補償を実行することができるという相乗的な利点を有する。特に有利には、特性図は、実測値と組み合わせたFEシミュレーション(すなわち、対応する特性図を生成するための工作機械のシミュレーション結果と実測値との組合せ)に基づいて作成されてもよい。有利には、合成特性図はまた、ニューラルネットワークによって常に最適化されてもよい。特性図及び/又は合成特性図は、コンピュータ実装ニューラルネットワーク又は別のAIアルゴリズムを使用して、実測値及び/又は制御パラメータに基づいて調整されてもよい。この特別な組合せは、広範囲かつ非常に精密な補正値を出力することができるように、グローバル補正モデルと共に使用するのに理想的に適した包括的な特性図を得ることを可能にする。
【0019】
特性図を調整するステップはまた、現在提供されている特性図の少なくとも一部及び/又は現在提供されている合成特性図の一部をニューラルネットワーク又は他のAIアルゴリズム上で読み取るステップと、実測値及び/又は制御パラメータをニューラルネットワーク又は他のAIアルゴリズムに読み込むステップと、調整された特性図及び/又は調整された合成特性図を決定するステップとを含んでもよい。
【0020】
特性図及び/又は合成特性図の調整は、所定の時間間隔をおいて自動的に実行されてもよい。
【0021】
少なくとも1つの補償パラメータは、調整された特性図又は合成特性図に基づいてグローバル補正モデルを使用して計算することができる。
【0022】
実測値は、加工片が工作機械に挿入された状態で、取得されることができる。
【0023】
合成特性図の調整はまた、工作機械によって加工される第1の加工片の目標幾何学的形状と測定された実際の幾何学的形状との間の1つ以上の幾何学的偏差を取得するステップと、取得された実測値及び/又は少なくとも1つの制御パラメータ及び/又は取得された幾何学的偏差に基づいて特性図及び/又は合成特性図を調整するステップとを含むことができる。
【0024】
加工片の実際の形状は、光学及び/又は接触測定デバイスによって取得されてもよい。
【0025】
補償パラメータは、取得された実測値及び/又は制御パラメータに基づいて、合成特性図における補間によって、グローバル補正モデルを使用して計算することができる。
【0026】
加えて、特性図を重ね合わせて合成特性図を形成し、及び/又はグローバル補正モデルを提供し、記録された実測値及び/又は制御パラメータを受信し、受信した実測値及び/又は制御パラメータに基づいて補償パラメータを計算し、計算された補償パラメータを工作機械の制御デバイスに提供するように構成される評価デバイスを提供することができる。
【0027】
評価デバイスは、制御デバイスの一部として一体的に形成されてもよい。特性図は、好ましくは、直接的に制御部において再計算されてもよい。あるいは、再計算は、クラウド内又は外部コンピュータ上で実行されてもよい。再計算された特性図は、制御部において交換されてもよく、又はいくつかの特性図が記憶されてもよく、その後、適応的に選択されてもよい。
【0028】
工作機械の誤差を補償するための制御システムは、工作機械の制御デバイスと、工作機械の状態を記述する1つ以上の入力変数の実測値を取得するために工作機械に取り付けられた1つ以上のセンサとを備えることができ、制御システムは、誤差を補償する方法を実行するように構成されることができる。制御システムは、制御統合された方法でリアルタイムに工作機械の誤差を補正するように構成されてもよい。特に好ましくは、データを収集するだけでなく、それらを解釈して通信することもできるインテリジェントセンサも、センサとして提供される。加えて、制御システムを備える工作機械が提案される。
【0029】
グローバル補正モデルはまた、その構造的変動性を含む工作機械の弾性挙動を描写する物理学に基づくモデルを含むことができる。合成特性図を使用することによって、外乱に対する補正の感受性及び予測される残留誤差を効率的に決定することも可能である。本発明による方法はまた、工作機械の動作中及び動作と動作の間の連続計算を可能にする。
【0030】
工作機械を動作させる方法は、補償方法を含むことができ、駆動信号を補正することができ、少なくとも1つの駆動信号を特性曲線又は特性図によって補正することができ、特性曲線又は特性図は、動作点に応じてテストベンチ又は機械加工試験における補償のために決定される。少なくとも1つの制御信号が特性図を使用して補正されると有利である。このようにして、駆動信号の制御された補正を特に効率的に実施することができる。
【0031】
好ましい例示的な実施形態では、ニューラルネットワークは、工作機械の制御デバイスに設けられた特性図を制御することができる。工作機械の1つ以上のセンサからのセンサ値(例えば、工作機械上で実行される位置測定方法の位置測定値)は、特性図を調整するために、ニューラルネットワークの入力データとしてニューラルネットワークに転送することができる。
【0032】
工作機械の位置測定方法として、測定プローブが使用されてもよい。加えて、電磁測定デバイス及び/又は光学測定デバイス(例えば、レーザ測定デバイス、カメラデバイス)が提供されてもよい。加えて、特に好ましくは、工作機械のFEモデル及びシミュレーションを使用して、さらなる位置値を決定することができる。
【0033】
有利には、測定デバイスは、物理的接触に基づいてもよく、並びに/又は1次元、2次元及び/若しくは3次元構造を検出するための光学測定デバイスとして、並びに/又は超音波ベースの測定デバイスとして、並びに/又はレーダベースの測定デバイスとして、並びに/又はRFIDベースの測定デバイスとして、並びに/又はマイクロGPSベースの測定デバイスとして構成されてもよい。工作機械及び加工片の構造は、上述の測定デバイスを使用して精密に取得することができる。
【0034】
そのさらなる態様及び利点、並びに上記の態様及び特徴の利点及びより具体的な実施オプションは、添付の図面に関する以下の記述及び説明から明らかであり、これらは決して限定的であると理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】数値制御工作機械100の例示的な図である。
【
図3】特性図最適化による特性図制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
以下において、本発明の実施例及び例示的な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。図中の同一又は類似の要素は、同じ参照符号によって示される。なお、本発明は、以下に説明する例示的な実施形態及びその実施特徴に限定されるものではなく、特に独立請求項の範囲内において、例示的な実施形態の変更も含む。
【0037】
本発明の例示的な実施形態によれば、数値制御工作機械100における幾何学的、静的、動的及び熱的誤差の補償が、1つ以上の重ね合わせ特性図に基づいて提案される。したがって、幾何学的誤差(回転軸及び直線軸に関する)などの誤差の空間補償、及び機械のダイナミクスに起因する誤差の補償による特性図に基づく補償の調整が提案される。特に有利には、単一の補正モデル、いわゆるグローバル補正モデルにおけるすべての補正の制御が提案される。このようにして、低減された計算能力のみを必要とする数値制御工作機械における誤差の精密な特性図に基づく補正が達成される。したがって、機械制御部全体の計算及び通信労力を大幅に増加させることなく、加工正確度を大幅に改善することができる。
【0038】
本発明の例示的な実施形態による機械制御部を有する数値制御工作機械100が、
図1に一例として示されている。工作機械は、例としてフライス盤として示されている。しかしながら、本発明は、フライス盤に限定されるものではなく、他の種類の工作機械、例えば、例としてフライス盤、汎用フライス盤、旋盤、ターニングセンタ、自動旋盤、フライス/旋削機、マシニングセンタ、研削機、歯切り機などの、ドリル加工、フライス加工、旋削加工、研削加工による、加工片加工のために構成された金属切削工作機械にも使用することができる。
【0039】
工作機械100は、例えば、機械ベッド101及び機械スタンド102を含む機械フレームを備える。機械ベッド101には、例えば機械ベッド101上をZ方向(Z軸)に水平に移動できるように、例えば取り付けられた可動機械スレッド105が配置される。例えば、加工片WPは、例えば加工片テーブルを含むことができる機械スレッド105上にクランプされる。この目的のために、機械スレッド105又は工具テーブル上にクランプ手段を設けることもできる。加えて、さらなる例示的な実施形態では、機械スレッド105は、垂直軸及び/又はさらなる水平軸(任意選択の回動軸又は回転軸及び/又は枢動軸)を中心に回転又は枢動することができる回転テーブルを含むことができる。さらに(又は代替的に)、機械スレッド105は、Y軸によって水平Y方向(潜在的に図面の平面に垂直)に移動することができる。
【0040】
機械スタンド102は、例えば、機械スタンド102上でX方向に垂直に移動可能であり、例えば工具を担持するワークスピンドル104が保持されるスピンドルキャリアスレッド103を担持する。ワークスピンドル104は、ワークスピンドル104に保持された工具WZ(例えば、ドリル加工及び/又はフライス加工工具)を、スピンドル軸SAを中心に回転するように駆動するように構成されている。例えば、スピンドルキャリアスレッド103は、X軸によってX方向に垂直に移動することができる。さらに(又は代替的に)、スピンドルキャリアスレッド103は、Y軸によって水平Y方向(潜在的に図面の平面に垂直)に移動することができる。加えて、さらなる例示的な実施形態では、スピンドルキャリアキャリッジ103は、スピンドル104(任意選択の回動軸又は回転軸及び/又は枢動軸)を回転又は枢動させるために、回動軸及び/又は枢動軸を含むことができる。
【0041】
工作機械100はまた、例えば、工作機械100のオペレータによる操作のために、例えば画面210(例えば、タッチスクリーンとして構成される)及び入力ユニット220を含む機械制御部200を含む。入力ユニット220は、例えば、ボタン、スライダ、回転制御部、キーボード、スイッチ、マウス、トラックボール、及び場合によってはまた、1つ以上のタッチセンサ面(例えば、画面210と組み合わせることができるタッチスクリーン)などの、ユーザ入力のための、又はオペレータからユーザコマンドを受信するための手段を含んでもよい。オペレータは、機械制御部200を使用して、工作機械又は工作機械上の機械プロセスの動作を制御し、また械加工中に工作機械100の動作状態又は機械加工プロセスを監視することができる。機械制御部200は、例えば、NCコントローラ及びプログラマブル論理制御装置(SPS又はPLCとも)を含む。好ましい例示的な実施形態では、監視デバイスはまた、特に加工片が機械加工されている間に定期的に、機械制御部によって読み出された又は受信されたデータを入力データとして監視アプリケーションのニューラルネットワークNNに供給することができる。好ましい例示的な実施形態では、監視デバイスは、工作機械100が異常な動作状態にあるときに、プロセス中断、駆動停止、又は工具交換を実行するために、機械加工プロセスに影響を及ぼす制御データを機械制御システムに出力するように構成される。
【0042】
数値制御工作機械100において補償される誤差は、ここでは熱的位置付け誤差に限定されず、むしろ工作機械(全体)における多数の可能性のある誤差を含む(すなわち、本発明による補償は、工作機械における大域的な誤差の補償を可能にする)。誤差は、特に、スピンドルマウント、ツールスライド、機械スレッド105、及びスピンドルキャリアスレッド103などの、工作機械の可動機械部品の動的に引き起こされる位置偏差を含む。加えて、本発明による補償は、工作機械100の望ましくない振動(音響偏差も)の能動的補償を可能にする。数値制御工作機械において補償される誤差はまた、例えば、クランプされた加工片の重量又は変位した機械部品に起因する工作機械上の変化した重量分布から生じる、工作機械の機械部品の静的に誘導された位置偏差を含む。本発明によれば、好ましくは適応機械制御に統合される特性図ベースの制御が提案される。1つ以上の重ね合わせ特性図に基づく、数値制御工作機械100における幾何学的、静的、動的及び熱的誤差の補償が提案される。
【0043】
図2では、複数の特性図を簡略化して例示している。ここで、工作機械における異なる誤差の補償のために、異なる特性図が提供される。例えば、幾何学的誤差(例えば、直線軸及び回転軸の誤差)の空間補償のために、工作機械100(又は工作機械の機械部品)の対応する特性図を提供することができる。ピッチ補償などの、工作機械のダイナミクスによる誤差の補償のために、動的補償のための対応する特性図を提供することができる。例えば機械加工関連の温度上昇又は周囲温度の変化に起因する工作機械の温度関連誤差の補償のための、対応する特性図も提供される。有利には、これらの特性図はまた、合成特性フィールドを形成するために融合されてもよい。したがって、幾何学的誤差を補償するための特性図は、合成特性図を形成するために、温度特性図、電力特性図、速度特性図などの他の特性図と有利に重ね合わされる。したがって、工作機械の様々な誤差成分の制御に依存しない自由な補正を実現することができる。
【0044】
特性図は、例えば複数の特性曲線の形態で、又は多次元座標系で、複数の入力変数の関数として複数の特性曲線を表すことができる。特性曲線は、入力変数の関数として工作機械の挙動を記述する。特性曲線は、実際には、例えば動作点を決定し、特性曲線上の特定の点における線形近似を決定するために使用される。さらに、それらは、構成要素の電力損失を決定するために、又はセンサによって放出される信号を補正するために使用することができる。
【0045】
特性図に基づく補償の場合、特性図は、一次元若しくは多次元変位又は補償パラメータへの入力変数の連続的なマッピングとして理解することができる。最も重要な入力変数は、機械構造上に存在するパラメータ(例えば、機械構造のセンサ位置、例えば、機械ベッド上、工作機械の可動構成要素上、工作機械の回転可能又は枢動可能構成要素上などに配置された1つ以上のセンサによって記録又は測定される)及び機械軸の位置データである。測定値に加えて、特性図は、仮想工作機械に関するデータ処理プロセス若しくはシミュレーションに基づいて、又は工作機械のデジタルツインに基づいて、及び/又は試験動作における工作機械に関する実験的決定に基づいて計算又は決定されてもよい。
【0046】
本発明によれば、直線軸又は回転軸における系統的幾何学的誤差を補償し、温度関連誤差を補償し、ピッチ補償などの機械のダイナミクスによる誤差を補償するための特性図(又は合成多次元特性図)の統合適用が提案される。作業空間内の多数の測定点を使用して、及び/又はFEM若しくはマルチボディシミュレーションなどのコンピュータシミュレーションによって事前に決定された補正項が、機械制御システムの合成特性図から出力される。言い換えれば、幾何学的誤差を補償するための特性図は、合成特性図を形成するために、温度特性図、電力特性図、速度特性図などの他の特性図と重ね合わされる。したがって、工作機械の様々な誤差成分の制御に依存しない自由な補正を実現することができる。加えて、特性図は、好ましくは、機械静力学(幾何学的正確度)及び/又は電力学(位置付け正確度)を作成するパラメータによって補完され得る。特性図を精密に部品の範囲に対して調整するために、測定デバイス(測定機)を使用して部品(初期サンプル)の偏差を決定することによって、特性図を有利に補正/最適化することができる。
【0047】
例えば、合成特性図は、機械メモリに存在するいくつかの基準点によって表すことができる。重ね合わせ制御を使用して、動作点について読み出された図特性値の最適目標値からの偏差が決定される。合成特性図は、補償値を決定するためにグローバル補正モデルに組み込まれてもよい。本発明によるグローバル補正モデルは、提供された特性図、取得された実測値、及び制御デバイスの1つ以上の制御パラメータに基づいて、工作機械の制御デバイスによって評価される補償パラメータを計算するように構成される。
【0048】
グローバル補正モデルに基づいて、誤差を補正するために(変位補正など)、例えば位置の変化に対する多次元補正ベクトルを出力することができる。従来の空間補償とは対照的に、提供される特性図のみに基づいてグローバル補正モデルを使用して補償を実行することが特に有利である。このようにして、計算時間を短縮することができ、迅速かつ効率的な補償が達成される。また、制御に依存しない安定した補償が可能となる。
【0049】
本発明の例示的な実施形態による有利なさらなる発展では、誤差の制御部内部補償のための補正項又は1つ以上の補正パラメータを、入力された入力変数に基づいて、例えばセンサ及び/又は制御部内部データを評価することによって、グローバル補正モデルから機械制御部に周期的に転送することができ、次いで、機械制御部は、転送された補正項を使用して誤差補償を実行する。例えば、転送された補正項に基づいて工作機械の直線軸、回転軸及び/又は枢動軸の目標位置を調整することにより、幾何学的又は動的誤差を補償することが可能である。補償される数値制御工作機械の誤差は、熱的位置付け誤差に限定されず、工作機械の幾何学的、動的及び静的誤差など多数の誤差を含む(すなわち、本発明による補償は、工作機械の大域的な誤差の補償を可能にする)。
【0050】
特性図(元の特性図)及び/又はグローバル補正モデルを最適化するために、新しいデータを使用して特性図を更新できるニューラルネットワーク構造を実装することが好ましい。ニューラルネットワークは、機械制御部によって外部的に提供されてもよい。しかしながら、ニューラルネットワーク構造は、特に有利には、実際の機械制御部に統合される。
【0051】
ニューラルネットワークの新しい訓練データ又は入力データは、好ましくは、現実のプロセスから、又は工作機械の動作中に(例えば、工作機械の実験的試験動作及び/又は現実の機械加工プロセスにおいて)決定されてもよく、付加的又は代替的に、ニューラルネットワークの訓練データ又は入力データは、工作機械のコンピュータ実装シミュレーションから、例えば仮想工作機械上で、及び/又は工作機械のデジタルツインに基づいて決定されてもよい。FE解析、工作機械(仮想工作機械又はデジタルツイン)のコンピュータシミュレーション、及び/又は工作機械の実験的動作からの既存のデータと共に、ニューラルネットワークを用いることによって特性図を最適化する新しいデータを生成することができる。この最適化は、好ましくは周期的に実行される。したがって、自己監視工作機械のための制御部統合ソリューションが達成される。
【0052】
ニューラルネットワークによる1つ以上の特性図又は特性図の調整のために、特性図又は特性図内のエントリは、ニューラルネットワークの入力データとして機械制御部からニューラルネットワークに転送されてもよく、特性図又はその少なくとも一部がニューラルネットワークに読み込まれてもよい。加えて、新しいデータ又は入力変数は、工作機械から、工作機械内のセンサから、及び/又は工作機械の機械制御部から読み出されてもよい。次いで、特性図は、好ましくは、ニューラルネットワークのネットワーク構造に基づいて更新若しくは調整され、及び/又は特性図(複数可)の少なくとも1つ以上のエントリが更新若しくは調整される。ニューラルネットワークのネットワーク構造は、放射基底関数及び/又は補間関数(例えば線形及び非線形回帰法)に基づくことができる。例示的な実施形態による連続学習補償アルゴリズムは、好ましくはニューラルネットワーク及び/又は補間関数(例えば、線形及び/又は非線形回帰法、放射基底関数、多項式基底関数など)に基づく。加えて、補間関数のための補間基準点の独立した適合のための遺伝的アルゴリズムを組み込むことができる。したがって、工作機械の様々な誤差成分の制御に依存しない自由な補正を実現することができる。
【0053】
動作空間内の十分な測定点によって、好ましくはコンピュータシミュレーションによって事前に決定された補償パラメータは、機械制御部の特性図又はグローバル補正モデルから転送される。特性図はまた、好ましくは、特性図における経時的な工作機械の変化(例えば、摩耗)を考慮に入れ、したがってまた、経時的な幾何学的形状の変化を補償するために、経時的に更新又は最適化される。
【0054】
補償パラメータは、工作機械上の幾何学的、動的、静的、及び熱的に誘発された位置変化を補正又は補償するために、1つ以上の目標位置を調整するために使用される。ここで、それぞれの補償パラメータは、工作機械の個々の軸に使用することができる補正パラメータを指定してもよく、又は、また直交する個々の方向の補正パラメータを指定してもよい。
【0055】
さらなる例示的な実施形態では、例えば、入力変数を読み取り、出力変数を出力するPLCリアルタイムシステムを提供することができる。また、インデックスを算出するために、PLCシステムに接続されたIPCシステムも提供されてもよい。IPCシステムは、決定された誤差又は偏差に従ってリアルタイムシステムを介して工作機械に補償パラメータを出力するために、外部に記憶された特性図を考慮して、入力されたデータをインデックスの形態で処理するために使用される。
【0056】
第1のステップにおいて、入力変数が取得され、工作機械の状態を記述する測定値が検出され、読み取られる。温度値T1~T8、位置値POSなどのような複数の値が入力変数として読み取られる。加えて、圧力測定値(例えば、工作機械の液圧及び/又は空気圧システムにおける圧力測定値、工作機械の冷却回路システムにおける圧力測定値など)、揺動又は振動測定値(例えば、振動センサ又は揺動センサからの)、力測定値(例えば、力センサ、歪みゲージセンサなどからの)、トルク測定値(例えば、トルクセンサからの、又は力測定値に基づく計算に基づく)、有効電力値、加速度測定値(例えば、加速度センサからの)、固体伝搬ノイズ値(例えば、固体伝搬ノイズセンサから)などのような、さらなるセンサ値を入力変数として使用することができる。入力変数は、プロセスの開始時に少なくとも1回読み取られる。加えて、読み取りは、有利には、一定の時間間隔をおいて繰り返し実行されてもよい。機械制御部から取得されるか、又は機械制御部から決定若しくは評価されるパラメータは、例えば、工作機械の軸の目標位置値、工作機械の軸の決定された実際の位置値、回転速度(例えば、スピンドル速度)、モータ電流、モータ電力などを含むことができる。
【0057】
読み取られた入力変数は、データのロバストな処理を確実にし、例えば、早期に測定誤差を検出するために、リアルタイムシステムで妥当性チェックを受ける。さらなるステップにおいて、補償パラメータが提供される。補償パラメータを提供することは、特性図又は合成特性図を読み取ることと、特性図を重ね合わせて合成特性図を形成することとを含む。それによって補償パラメータが決定される工作機械のグローバル補正モデルは、特性図から作成される。特に、特性図の理想的なパラメータからの入力変数の偏差が記録される。補正パラメータ又は補償パラメータは、記録された差に基づいて計算される。補償パラメータは、例えば、転送された補償パラメータに基づいて工作機械の1つ以上の可動構成要素(例えば、工作機械の直線軸、回転軸及び/又は枢動軸)の目標位置を調整することによって、工作機械の誤差が補償されるように、機械制御部を介して工作機械の制御値に適用することができる。例えば、位置コマンドが、オフセットの補償パラメータを位置コマンドに追加することによって補償されてもよい。また、前回算出したオフセットの大きさと、今回のオフセットの大きさとの間の変化を、所定時間毎に判定することができる。
【0058】
いくつかの例示的な実施形態によれば、データ処理方法又はコンピュータベースのシミュレーションにおける工作機械の完全な解析は、機械又は工作機械の1つ以上のFEモデルの解析から開始して、好ましくは機械又は工作機械の温度挙動を記述する1つ以上の特性図を生成又は計算することができる。さらなる例示的な実施形態では、FEMベースのシミュレーションに基づく1つ以上の特性図の計算に加えて、又はその代替として、特性図はまた、工作機械のコンピュータシミュレーション(いわゆる仮想工作機械又はいわゆるデジタルツイン)に基づいて計算、決定、及び/又は調整することもできる。加えて、又は代替として、試験動作中の工作機械の実験的決定に基づいて特性図を決定及び/又は調整することもできる。
【0059】
図3は、工作機械の誤差補償のための特性図ベースの方法のための特性図最適化のためのニューラルネットワークの使用を示す図である。
【0060】
第1のステップでは、パラメータが決定又は読み出される。特に、第1のパラメータが決定され、特定の時間間隔をおいて周期的に読み取られる。これらの第1のパラメータは、例えば、温度並びに幾何学的及び動的偏差を含む。また、第2のパラメータが決定及び読み取られる。第2のパラメータは、制御リアルタイムで決定及び/又は読み出される。第2のパラメータは、例えば、工作機械の位置、速度、電力、回転速度などを含む。第1のステップでは、特性図の入力変数が読み取られる(例えば、機械制御部から、又は工作機械上のセンサからのセンサ値の直接送信によって)。
【0061】
好ましくは、更新される特性図の入力変数の一部又は全部が読み取られる。さらなる入力変数を読み取ることも可能である。代替的又は付加的に、センサデータはまた、工作機械のコンピュータ実装シミュレーション(例えば、仮想工作機械上で、又は工作機械のデジタルツインに基づいて)、すなわちいわゆる合成的に生成されたセンサデータから生成されてもよい。これは、好ましくは、工作機械の温度センサから温度測定値を読み取ることを含む。加えて、これは、例えば機械制御部又は工作機械の位置測定センサから、工作機械の可動構成要素(例えば、可動軸)の実際の位置に関する位置データを読み取ることを含むことができる。さらに、追加のセンサデータや制御データが読み取られてもよい。
【0062】
第2のステップでは、1つ以上の特性図が使用される。特に、補正パラメータは、第1のステップで決定されたパラメータに従ってリアルタイムで決定される。少なくとも1つの特性図は、外部コンピュータに記憶されてもよく、又は直接的に制御部に記憶されてもよい。使用される特性図は、工作機械の構造的挙動(特に幾何学的誤差を補償するための特性図)、動的挙動(速度特性図)、電力特性図、及び温度挙動(温度特性図)を記述する特性図を含む。特性図は、測定値及びFEモデルベースのシミュレーションに基づいて生成されていてもよく、好ましくは機械制御部において記憶されたデータ構造として(例えば、ルックアップテーブル又はルックアップマトリクスとして)提供される。言及した特性図に加えて、有利には、特別な特徴的加工片固有の特性図を読み取ることができる。加工片特有の特性図は、特別な所定の加工片を加工するときの機械挙動を記述する。また、特性図を組み合わせて、合成(多次元)特性図を形成することができる。これはその後、グローバル補正モデルの提供を可能にし、すべての補正を1つのモデルにマッピングすることができる。制御側では、これにより、計算能力が低下して精度が向上する。
【0063】
有利には、測定された入力変数の関数として温度を指定する特定の温度特性図は、モデル計算によって仮想的に計算される特性図によって拡張される。加えて、幾何学的誤差を補償するための特性図、電力特性図、及び速度特性図などの他の測定及び/又はシミュレートされた特性図を組み合わせることができる。特性図(シミュレート及び測定された)を合成特性図に融合することにより、仮想特性図に含まれるパラメータは、すべての入来変数の相互作用を含む工作機械のグローバル補正モデルが純粋に理論的な予測、並びに実験的サポートをほとんど必要としない記述を可能にするように適合させることができる。
【0064】
有利には、第2のステップはまた、
図3に示すように、特性図調整を含むことができる。まず、図調整のための訓練データが決定される。訓練データは、例えば、テストプログラム、機械測定、又は外部加工片測定によって決定することができる。訓練データは、ニューラルネットワークやAIアルゴリズムを訓練するために読み取られる。外部測定位置データを使用して、機械制御上の実際の位置及び目標位置を追加の位置測定値と比較することができる。加えて、工作機械のコンピュータ実装シミュレーションから訓練データを提供することもできる。
【0065】
次のステップでは、元の特性図(最適化前の初期状態の特性)がロードされる。元の特性図は、外部コンピュータに記憶されてもよく、又は直接的に機械制御部に記憶されてもよい。次のステップでは、少なくとも1つの(元の)特性図を調整することができる。図は、訓練データ及び以前に決定されたパラメータに基づいて、AIアルゴリズム又はニューラルネットワークを使用して調整又は最適化される。最終段階では、機械制御部の特性図(最適化された特性図)が提供され得る。最適化された特性図は、例えばグローバル補正モデルに統合され、それによって、工作機械に提供される。工作機械の制御デバイスは、最適化された特性図を含むグローバル補正モデルを使用して、使用される補償パラメータを算出してもよい。
【0066】
最後のステップでは、補正値が機械制御部に転送される。
【0067】
グローバル補正モデルは、工作機械全体の構造的、動的及び熱的挙動を記述及び補正するために使用することができる。まず、現在の測定値又は入力変数に基づいて、工作機械の現在の状態を決定することができる。各状態について、パラメータが入力変数uの関数として記憶されている特性図をマッピングするパラメータの別個のセットが存在する。パラメータは、例えば補間によって現在の入力変数u(tn)に基づいて決定される。次いで、工作機械を、制御デバイスに提供される補償パラメータに基づいて補償することができる。例えば、TCP(工具中心点;動作点アクティブ点、工具基準工具動作点)の変位を、グローバル補正モデルを使用して固定又は可変時間において決定することができる。次いで、計算された変位をオフセットとして使用することができる。グローバル補正モデルは、制御ループであってもよく、好ましくは、工作機械のブラックボックスモデル又はホワイトボックスモデルを含む。グローバル補正モデルはまた、工作機械の個々のシステムのチェーンを含むことができ、その出力変数は、測定要素によって測定され、目標値/実際値比較を介して機械制御システムにフィードバックされる。機械制御部と被制御システムとの間のインターフェースとしてのアクチュエータは、被制御システムの一部であってもよい。
【0068】
ここで、グローバル補正モデルは、偏差を自律的に補償することができるように、好ましくは直接的に機械制御部に統合される。したがって、直接的に工作機械上でほぼ瞬時の誤差補償が可能である。制御部に統合された補償により、グローバル補正モデルに基づいて変位を予測することも可能であり、回転速度などの特定の入力変数をNCコードから直接読み取ることができる。温度挙動、位置、及び変位はまた、工作機械の動作中に特定の限界内で予測されてもよく、その結果、補償パラメータは、誤差を最小限に抑えるために予測される誤差に容易に適合され得る。しかしながら、測定値を評価することによってさらなる偏差が決定される場合、補償パラメータをさらに調整することができる。測定時間中に発生する工作機械誤差はまた、工作機械の時変挙動も考慮されるように、グローバル補正モデルを使用して予期され得る。反復プロセスにおける入力変数の測定/決定及びグローバル補正モデルにおける値の処理の結合は、残差の最適な全体的最小化を可能にする。
【0069】
さらなる発展では、補償パラメータが生成され、補償パラメータが生成された時点で取得された工作機械のシステム状態に関連して記憶されることが提案される。後の時点において適切なシステム条件を認識すると、工作機械制御部は、以前に生成され記憶された補償パラメータを使用して工作機械機能のタイミングを調整することができ、結果、工作機械正確度を容易かつ効率的に改善することができる。
【0070】
特に有利なさらなる発展では、言及された特性図に加えて、特別な加工片固有の特性図が使用される。加工片特有の特性図は、特別な所定の加工片を加工するときの機械挙動を記述する。加工片特有の特性図を合成特性図に統合することにより、加工片特有の偏差が制御部において容易に予想されるため、定義された加工片を加工するときの工作機械の精度を大幅に改善することができる。したがって、これらの偏差又は誤差を実際に発生する前であっても事前に決定し、誤差が発生する前であっても機械制御システムを介して適切な補償を開始することも可能である。機械加工プロセス中に発生する追加の誤差は、リアルタイムで検出及び補償することができる。
【0071】
本発明の実施例又は例示的な実施形態及びその利点を、添付の図面を参照して上記で詳細に説明した。本発明は、上記の例示的な実施形態及びその実装特徴に決して限定又は制限されるものではなく、例示的な実施形態の変更、特に記載された実施例の特徴を変更することによって、又は記載された実施例の特徴の1つ以上を組み合わせることによって独立請求項の範囲に含まれる変更も含むことに再び留意されたい。